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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100597
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214670
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小泉 望
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA01
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】精度良く電流値を測定可能な電流センサを提供する。
【解決手段】電流センサ1は、少なくとも2本の導体10に対して、互いに同じ方向を向く検出面53に入力される磁束の磁束密度を検出する少なくとも2つの磁気検出素子52が設けられ、当該少なくとも2つの磁気検出素子52の夫々の検出面53に入力される磁束の検出面53に直交する直交成分の磁束密度の差分に応じた信号を出力する少なくとも2つの磁電変換ユニット20を備え、少なくとも2本の導体10の夫々は第1方向に直交する第2方向に沿って延出する延出部30と、第1方向に沿って延出する直交部分41を有し延出部30に対して第1方向に凹んだ凹状部40とが設けられ、少なくとも2つの磁電変換ユニット20の夫々は、検出面53が第1方向及び第2方向の双方に直交する第3方向に沿って凹状部40の夫々の直交部分41に対向した状態で設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の導体と、
前記導体に対して、互いに同じ方向を向く検出面を有し、当該検出面に入力される磁束の磁束密度を検出する少なくとも2つの磁気検出素子が設けられ、当該少なくとも2つの磁気検出素子の夫々の前記検出面に入力される前記磁束の前記検出面に直交する直交成分の前記磁束密度の差分に応じた信号を出力する少なくとも2つの磁電変換ユニットと、を備え、
前記少なくとも2本の導体の夫々は、互いに隣接する2本の導体の隣接方向である第1方向に直交する第2方向に沿って延出する延出部と、前記第1方向に沿って延出する直交部分を有し前記延出部に対して前記第1方向に凹んだ凹状部とが設けられ、
前記少なくとも2つの磁電変換ユニットの夫々は、前記検出面が前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に沿って前記凹状部の夫々の前記直交部分に対向した状態で設けられている電流センサ。
【請求項2】
前記凹状部は、前記第1方向に沿って延出する第1曲げ部と前記第1曲げ部から前記第2方向に沿って延出する第2曲げ部と前記第2曲げ部から前記第1方向に沿って延出する第3曲げ部とを有し、
前記互いに隣接する2本の導体の一方の前記凹状部に設けられる前記磁電変換ユニットは、前記第3方向に沿って前記第1曲げ部と対向し、前記互いに隣接する2本の導体の他方の前記凹状部に設けられる前記磁電変換ユニットは、前記第3方向に沿って前記第3曲げ部と対向する状態で設けられる請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記互いに隣接する2本の導体の一方の前記第1曲げ部は、前記互いに隣接する2本の導体の他方の前記第2曲げ部における前記第2方向に沿う中央部側にオフセットした状態で設けられる請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記少なくとも2本の導体は、三相モータに接続される3本のバスバーであって、前記3本のバスバーは、前記延出部が前記第1方向に沿って一列に並んでいる請求項1から3のいずれか一項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体を流れる電流を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体を流れる電流を測定する際に、導体を流れる電流に応じて当該導体の周囲に生じる磁界の磁束密度を磁気検出素子で検出し、その検出された磁束密度に基づいて導体に印加された電流を演算して求める技術が利用されてきた。このような技術を利用した電流センサとして、例えば下記に出典を示す特許文献1及び2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、電流センサが開示されている。この電流センサは、電流計測対象の第1バスバと、電流非計測対象の第2バスバと、感磁面が第2バスバの側面と対向するとともに当該感磁面が第1バスバの側面と直交するように配置されている磁電変換素子とを備えて構成される。
【0004】
特許文献2には、電流センサが開示されている。この電流センサは、互いに平行に配置され、夫々に切欠が設けられている2本のバスバと、各バスバの切欠に配置される磁電変換素子とを備えて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-152418号公報
【特許文献2】特開2016-38203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、バスバに矩形の切欠き部を設け、この切欠き部内に磁電変換素子が配置される。この切欠き部が設けられる部分は、他の部分に比べて断面積が小さくなるため抵抗値が増大し、切欠き部が設けられる部分における発熱量が増大する可能性がある。また、磁電変換素子がバスバから熱を受け、磁電変換素子の検出結果に温度変動が含まれ、精度良く電流値を測定できない可能性がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、磁電変換素子が実装される基板は切欠に合わせて形成される。このため、切欠の位置に応じて磁電変換素子が設けられる位置も定まるので、その分、基板のサイズが大きくなり(特許文献2におけるX方向の長さが長くなり)、基板のコストアップの要因となる。また、特許文献1に記載の技術と同様に、バスバに切欠を設けることによる発熱量の増大に起因して精度良く電流値を測定できない可能性もある。
【0008】
そこで、精度良く電流値を測定することが可能な電流センサが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電流センサの特徴構成は、少なくとも2本の導体と、前記導体に対して、互いに同じ方向を向く検出面を有し、当該検出面に入力される磁束の磁束密度を検出する少なくとも2つの磁気検出素子が設けられ、当該少なくとも2つの磁気検出素子の夫々の前記検出面に入力される前記磁束の前記検出面に直交する直交成分の前記磁束密度の差分に応じた信号を出力する少なくとも2つの磁電変換ユニットと、を備え、前記少なくとも2本の導体の夫々は、互いに隣接する2本の導体の隣接方向である第1方向に直交する第2方向に沿って延出する延出部と、前記第1方向に沿って延出する直交部分を有し前記延出部に対して前記第1方向に凹んだ凹状部とが設けられ、前記少なくとも2つの磁電変換ユニットの夫々は、前記検出面が前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向に沿って前記凹状部の夫々の前記直交部分に対向した状態で設けられている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、導体に対して第3方向に沿って対向するように磁電変換ユニットを設けるので、導体を切り欠くことなく、導体を流れる電流に起因する磁束を磁電変換素子の検出面に入力させることができる。このため、導体において、電流が流れることにより発する熱が所定の個所に集中することがないので、導体を切り欠く構成に比べて、磁電変換ユニットが導体から受ける熱による影響を低減することが可能となる。したがって、精度良く電流値を測定することが可能となる。
【0011】
また、前記凹状部は、前記第1方向に沿って延出する第1曲げ部と前記第1曲げ部から前記第2方向に沿って延出する第2曲げ部と前記第2曲げ部から前記第1方向に沿って延出する第3曲げ部とを有し、前記互いに隣接する2本の導体の一方の前記凹状部に設けられる前記磁電変換ユニットは、前記第3方向に沿って前記第1曲げ部と対向し、前記互いに隣接する2本の導体の他方の前記凹状部に設けられる前記磁電変換ユニットは、前記第3方向に沿って前記第3曲げ部と対向する状態で設けられると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、例えば、互いに隣接する導体の夫々の第1曲部の位置を第2方向に互いにずらして構成することで、互いに隣接する導体のうちの一方の導体に設けた磁電変換ユニットを、当該互いに隣接する導体のうちの他方の導体の第2曲部に近接させ、互いに隣接する導体のうちの他方の導体に設けた磁電変換ユニットを、当該互いに隣接する導体のうちの一方の導体の第2曲部に近接させるように配置することができる。これにより、磁電変換ユニットの検出面に対して直交方向から入力される、隣接する導体を流れる電流に起因した磁束を低減することが可能となる。したがって、検出対象でない磁束密度に係る磁束の影響を低減できるので、精度良く電流値を測定することが可能となる。
【0013】
また、前記互いに隣接する2本の導体の一方の前記第1曲げ部は、前記互いに隣接する2本の導体の他方の前記第2曲げ部における前記第2方向に沿う中央部側にオフセットした状態で設けられると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、検出対象である導体に隣接する他の導体に起因する外乱をキャンセルすることが可能となる。したがって、精度良く磁束密度を検出することができ、精度良く電流値を測定することが可能となる。また、集磁コア及びシールドコアを不要とし、導体と磁電変換ユニットとで電流センサを構成できるので、複数の導体の夫々を流れる電流を検出する電流センサの小型化が可能であって、安価な構成で実現することが可能となる。
【0015】
また、前記少なくとも2本の導体は、三相モータに接続される3本のバスバーであって、前記3本のバスバーは、前記延出部が前記第1方向に沿って一列に並んでいると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、三相モータに流れる三相の電流を小型の電流センサで検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電流センサの展開図である。
図2】電流センサの平面図である。
図3】電流センサの側面図である。
図4】磁電変換ユニットの検出面を示す図である。
図5】検出面に入力される磁束密度の一例を示す図である。
図6】磁電変換ユニットのブロック図である。
図7】その他の実施形態に係る電流センサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る電流センサは、コアを用いることなくコンパクトに構成される。以下、本実施形態の電流センサ1について説明する。ここで、導体に電流が流れる場合には、当該電流の大きさに応じて導体を軸心として磁界が発生する(アンペールの右ネジの法則)。本電流センサ1は、このような磁界における磁束の磁束密度を検出し、検出された磁束密度に基づいて導体に流れる電流(電流値)を測定する。
【0019】
図1は電流センサ1の展開図であり、図2は電流センサ1の平面図であり、図3は電流センサ1の側面図である。電流センサ1は、少なくとも2本の導体10と、少なくとも2つの磁電変換ユニット20とを備えて構成される。
【0020】
本実施形態では、少なくとも2本の導体10が、三相モータに接続される3本のバスバーであるとして説明する。より具体的には、導体10は、三相モータの3つの端子の夫々と当該三相モータを流れる電流を制御するインバータの3つの端子の夫々とを電気的に接続する。このため、以下では少なくとも2本の導体10は、3本の導体10として説明し、3つの導体10の夫々を区別する場合には、導体11、導体12、導体13として説明する。
【0021】
3本の導体10の夫々は、延出部30と凹状部40とが設けられる。延出部30は、互いに隣接する2本の導体10の隣接方向である第1方向に直交する第2方向に沿って延出する。互いに隣接する2本の導体10とは、互いに隣接する導体11と導体12との2つの導体10、及び互いに隣接する導体12と導体13との2つの導体10である。導体11と導体12とが隣接する方向、及び導体11と導体12とが隣接する方向が隣接方向にあたり、図1図3におけるX方向が相当する。
【0022】
本実施形態では、このような隣接方向は第1方向と称される。第2方向は、この第1方向に直交する方向であり、本実施形態では図1図3におけるY方向が相当する。
【0023】
凹状部40は、第1方向に沿って延出する直交部分41を有し延出部30に対して第1方向に凹んだ状態で構成される。本実施形態では、第1方向はX方向である。凹状部40は、このようなX方向に沿って延出するように直交部分41が設けられる。したがって、延出部30と直交部分41とは、図2に示されるように互いに直交した状態で構成され、凹状部40は、直交部分41を介して延出部30に対してX方向に凹んだ形状を呈するように構成される。本実施形態では、導体11、導体12、及び導体13の夫々の凹状部40は、X方向に沿って全て同じ側に凹んだ状態で構成される。
【0024】
ここで、本実施形態では、凹状部40はZ方向視が図2に示されるようにU字状(本実施形態ではU字状の開口部分とは反対側の底部側に2つの角部を有する形状)で形成される。したがって、1つの凹状部40は、互いに対向する2つ直交部分41と、2つの直交部分41で挟まれる1つの底部42とを有して構成される。理解を容易にするために、以下では2つの直交部分41の夫々を区別する場合には、2つの直交部分の一方を直交部分41Aとし、他方を直交部分41Bとして説明する。本実施形態では、互いに対向する2つの直交部分41のうち、一方の直交部分41Aは、第1方向に沿って延出する第1曲げ部に相当し、底部42は、第1曲げ部から第2方向に沿って延出する第2曲げ部に相当し、互いに対向する2つの直交部分41のうち、他方の直交部分41Bは、第2曲げ部から第1方向に沿って延出する第3曲げ部に相当する。
【0025】
ここで、本実施形態では、導体11、導体12、導体13は、図1図3に示されるように、夫々の延出部30が第1方向に沿って一列に並んで設けられる。第1方向に沿って一列に並んでいるとは、夫々の延出部30が、互いに平行であって、X方向視において互いに重複する部分を有するように並んでいることをいう。
【0026】
少なくとも2つの磁電変換ユニット20は、導体10の夫々に設けられる。本実施形態では、導体10は導体11、導体12、導体13の3本で構成される。磁電変換ユニット20は、導体10の夫々、すなわち、導体11、導体12、導体13に各別に設けられることから、電流センサ1において3つの磁電変換ユニット20が備えられる。このため、本実施形態においては、少なくとも2つの磁電変換ユニット20は、3つの磁電変換ユニット20として説明し、3つの磁電変換ユニット20の夫々を区別する場合には、導体11に対応する磁電変換ユニット21、導体12に対応する磁電変換ユニット22、導体13に対応する磁電変換ユニット23として説明する。
【0027】
本実施形態では、磁電変換ユニット20には、2つの磁気検出素子52が設けられている。磁気検出素子52とは、磁束の磁束密度を検出する機能を有するデバイスであって、例えばホール素子が相当する。本実施形態では、磁電変換ユニット20は図4に示されるような、複数の電極50を有する樹脂パッケージ51内に2つの磁気検出素子52を内包して構成される。
【0028】
2つの磁気検出素子52の夫々は、上述した検出対象である磁束密度に応じた磁束が入力される検出面53を有する。2つの磁気検出素子52は、夫々の検出面53が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、本実施形態における検出面53は、空間上の面を示すものではなく、単に磁束密度を検出する機能部、すなわち検出部分を示すものである。したがって、検出面53は、検出部分と読み替えても良い。
【0029】
ここで、導体10に電流が流れる場合には、当該電流の大きさに応じて導体10を中心に磁界が発生する。磁気検出素子52は、このような磁界における磁束の磁束密度を検出する。また、3つの磁電変換ユニット20の夫々は、図3に示されるように、検出面53が第1方向及び第2方向の双方に直交する第3方向に沿って凹状部40の夫々の直交部分41に対向した状態で設けられる。本実施形態では、第1方向とはX方向であり、第2方向とはY方向である。このため、第3方向は、図1図3におけるZ方向が相当する。したがって、3つの磁電変換ユニット20の夫々は、2つの検出面53が第1方向に沿って並んだ状態で設けられる。また、本実施形態では、導体11に設けられる磁電変換ユニット21の2つの検出面53の夫々から導体11における直交部分41までの距離と、導体12に設けられる磁電変換ユニット22の2つの検出面53の夫々から導体12における直交部分41までの距離と、導体13に設けられる磁電変換ユニット23の2つの検出面53の夫々から導体13における直交部分41までの距離とが、ここでは互いに等しくなるように配置されるが、これに限定されない。
【0030】
本実施形態では、互いに隣接する2本の導体10の一方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20は、第3方向に沿って第1曲げ部と対向し、互いに隣接する2本の導体10の他方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20は、第3方向に沿って第3曲げ部と対向する状態で設けられる。互いに対向する2本の導体10の一方とは、例えば導体11であり、互いに隣接する2本の導体10の一方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20とは、磁電変換ユニット21である。「第3方向に沿って第1曲げ部と対向し」とは、導体11が有する凹状部40における直交部分41Aに対してZ方向に沿って所定の間隔を有して、当該直交部分41Aと対向することを意味する。また、互いに隣接する2本の導体10の他方とは、例えば導体12であり、互いに隣接する2本の導体10の一方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20とは、磁電変換ユニット22である。「第3方向に沿って第3曲げ部と対向する」とは、導体12が有する凹状部40における直交部分41Bに対してZ方向に沿って所定の間隔を有して、当該直交部分41Bと対向することを意味する。
【0031】
したがって、図2に示されるように、導体11の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット21は、導体11が有する凹状部40における直交部分41Aに対してZ方向に沿って所定の間隔を有して、当該直交部分41Aと対向する状態で設けられ、導体12の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット22は、導体12が有する凹状部40における直交部分41Bに対してZ方向に沿って所定の間隔を有して、当該直交部分41Bと対向する状態で設けられる。同様に、導体13の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット23は、導体13が有する凹状部40における直交部分41Aに対してZ方向に沿って所定の間隔を有して、当該直交部分41Aと対向する状態で設けられる。
【0032】
例えば、導体10に図5の矢印で示される向きの電流が流れると、磁電変換ユニット20に対向する直交部分41では、破線で示すような向きの磁束が生じる。このため、2つの磁気検出素子52のうちの一方の磁気検出素子52の検出面53には、直交部分41から当該検出面53に向かう方向の磁束が入力され、2つの磁気検出素子52のうちの他方の磁気検出素子52の検出面53には、当該検出面53から直交部分41に向かう方向の磁束が入力される。
【0033】
2つの磁気検出素子52は、2つの磁気検出素子52の夫々の検出面53に入力される磁束のうち、検出面53に直交する直交成分の磁束密度を検出する。すなわち、2つの磁気検出素子52は、図5におけるZ方向に沿う方向の磁束の磁束密度を検出する。
【0034】
ここで、本実施形態では、2つの磁気検出素子52の夫々の検出面53に入力される磁束の直交成分の向きは互いに逆方向である。そこで、磁電変換ユニット20は、2つの検出面53に入力される磁束の直交成分の磁束密度の差分に応じた信号を出力するように構成される。具体的には、磁電変換ユニット20は、図6に示されるように、2つの磁気検出素子52が配線される。すなわち、2つの磁気検出素子52の検出結果の夫々は、増幅器AMP1の反転端子と非反転端子とに入力され、差動磁束が検出される。更に、この差動磁束は後段の増幅器AMP2により増幅され、磁電変換ユニット20の信号として出力される。これにより、磁電変換ユニット20が直交部分41に流れる電流に起因して生じる磁束の磁束密度を検出することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態では、図2に示されるように互いに隣接する2本の導体10の一方の第1曲げ部は、互いに隣接する2本の導体10の他方の第2曲げ部における第2方向に沿う中央部側にオフセットした状態で設けられる。互いに隣接する2本の導体10の一方の第1曲げ部とは、導体11の直交部分41Aである。互いに隣接する2本の導体10の他方の第2曲げ部とは、導体12の底部42である。第2方向とは、Y方向である。したがって、導体11の直交部分41Aは、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部側にオフセットした状態で設けられる。本実施形態では、導体11の直交部分41Aは、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部にオフセットした状態、すなわち、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部をX方向に沿って延長した線上に導体11の直交部分41Aが位置するように設けられる。これにより、導体11の直交部分41AにZ方向に沿って対向して設けられる磁電変換ユニット21を、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部にオフセットした状態で配置することが可能となる。
【0036】
同様に、導体13の直交部分41Aは、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部にオフセットした状態、すなわち、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部をX方向に沿って延長した線上に導体11の直交部分41Aが位置するように設けられる。これにより、導体13の直交部分41AにZ方向に沿って対向して設けられる磁電変換ユニット23を、導体12の底部42におけるY方向に沿う中央部にオフセットした状態で配置することが可能となる。
【0037】
また、図2に示されるように、導体11の直交部分41AにZ方向に沿って対向して設けられる磁電変換ユニット21と、導体13の直交部分41AにZ方向に沿って対向して設けられる磁電変換ユニット23とは、X方向に沿って一列に並んだ状態で設けられる。したがって、磁電変換ユニット21、磁電変換ユニット22、及び磁電変換ユニット23の夫々は、X方向に沿って、一つ置きにY方向の位置をずらしながら、千鳥状に配置される。
【0038】
本実施形態では、例えば、導体12の直交部分41Aを流れる電流に起因する磁界及び直交部分41Bを流れる電流に起因する磁界が、導体11に配置された磁電変換ユニット21が感磁する方向において互いに相殺され、また、導体12の底部42を流れる電流に起因する磁界は、磁電変換ユニット21内の2つの磁気検出素子52が互いに同じ方向で、且つ、互いに同じ値を検知するため、磁電変換ユニット21が差動を取ることにより、合成磁界が零となる。したがって、磁電変換ユニット21の測定結果に、導体12を流れる電流の影響を低減することが可能となる。また、磁電変換ユニット21に対する導体13から発生される磁界の影響は、磁電変換ユニット21と導体13との間隔が広く設定され、影響が小さなものとなる。したがって、磁電変換ユニット21の測定結果に、導体13を流れる電流の影響を無視できる。
【0039】
本実施形態では、図1に示されるように、磁電変換ユニット20は1枚の基板60において、互いに同一の面に実装される。本実施形態では、基板60を後述するハウジング2に固定した際に、基板60におけるハウジング2と対向する側の面に実装される(なお、図2及び図3では、ハウジング2が省略されている)。図1に示されるように、導体10は延出部30が突出する状態で、凹状部40がハウジング2内に収容される。このハウジング2は、例えば樹脂成形により凹状部40を支持するように構成すると好適である。図1におけるハウジング2のZ方向に直交する面2Aには切欠部2Bが構成され、基板60がハウジング2に固定された際に、この切欠部2Bに磁電変換ユニット20が収容される。これにより、ハウジング2と磁電変換ユニット20との干渉を防止することが可能となる。なお、基板60は、ボルト61を介してハウジング2に締結固定することが可能である。
【0040】
以上のように本電流センサ1によれば、3本の導体10の凹状部40の夫々に設ける磁電変換ユニット20を1枚の基板60に実装することで、容易に凹状部40に対する磁電変換ユニット20の位置決めを行うことができ、所期の位置に配置することが可能となる。また、導体10と磁電変換ユニット20とから電流センサ1を構成できるので、小型化することが可能となる。
【0041】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、導体10が3本である場合の例を挙げて説明したが、導体10は2本であっても良いし、4本以上であっても良い。いずれの場合であっても、磁性体コアを備えることなく、導体10を流れる電流を検出することが可能である。
【0042】
上記実施形態では、少なくとも2本の導体10は、三相モータに接続される3本のバスバーである場合の例を挙げて説明したが、少なくとも2本の導体10は、三相モータに接続される3本のバスバー以外であっても良い。また、少なくとも2本の導体10が三相モータに接続される3本のバスバーである場合には、3本のバスバーは延出部30が第1方向に沿って一列に並んでいなくても良い。また、図7に示されるように、4本以上のバスバー(図7にあっては、6本のバスバー)を並べた構成であっても良い。
【0043】
上記実施形態では、磁電変換ユニット20が基板60に実装される場合の例を挙げたが、この基板60は三相モータの駆動を制御する制御IC等が実装される基板(例えば三相モータの駆動を制御するECU基板)と併用することも可能である。
【0044】
上記実施形態では、凹状部40は、Z方向視がU字状の開口部分とは反対側の底部側に2つの角部を有する形状であるとして説明したが、凹状部40は、Z方向視が前記底部側が湾曲したU字状であっても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、凹状部40は、第1方向に沿って延出する第1曲げ部と第1曲げ部から第2方向に沿って延出する第2曲げ部と第2曲げ部から第1方向に沿って延出する第3曲げ部とを有するとして説明したが、凹状部40は、第1曲げ部、第2曲げ部、及び第3曲げ部以外の部位を備えて構成することも可能である。すなわち、例えば凹状部40はZ方向視が四角形状でなく、五角形などの多角形状で構成しても良い。
【0046】
上記実施形態では、磁電変換ユニット20に2つの磁気検出素子52が設けられているとして説明したが、磁電変換ユニット20には少なくとも2つの磁気検出素子52が設けられていると良い。すなわち、磁電変換ユニット20には3つ以上の磁気検出素子52が設けられていても良く、係る場合、磁電変換ユニット20の夫々は、少なくとも2つの磁気検出素子52の夫々(すなわち、磁電変換ユニット20の夫々に設けられる全ての磁気検出素子52の夫々)の検出面53に入力される磁束の検出面53に直交する直交成分の磁束密度の差分に応じた信号を出力すると良い。
【0047】
上記実施形態では、互いに隣接する2本の導体10の一方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20は、第3方向に沿って第1曲げ部と対向し、互いに隣接する2本の導体10の他方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20は、第3方向に沿って第3曲げ部と対向する状態で設けられるとして説明したが、互いに隣接する2本の導体10の一方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20は、第3方向に沿って第3曲げ部と対向し、互いに隣接する2本の導体10の他方の凹状部40に設けられる磁電変換ユニット20は、第3方向に沿って第2曲げ部と対向する状態で設けても良い。
【0048】
上記実施形態では、互いに隣接する2本の導体10の一方の第1曲げ部は、互いに隣接する2本の導体10の他方の第2曲げ部における第2方向に沿う中央部側にオフセットした状態で設けられるとして説明したが、互いに隣接する2本の導体10の一方の第1曲げ部は、互いに隣接する2本の導体10の他方の第2曲げ部における第2方向に沿う中央部側にオフセットした状態で設けなくても良い。
【0049】
本発明は、導体を流れる電流を検出する電流センサに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:電流センサ
10:導体
20:磁電変換ユニット
30:延出部
40:凹状部
41:直交部分
52:磁気検出素子
53:検出面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7