(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100616
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】積層シートおよび容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20220629BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220629BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/18 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214697
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂泉 広太
(72)【発明者】
【氏名】中野 康宏
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AD06
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB51
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100AK07A
4F100AK07B
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4F100AR00C
4F100BA04
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4F100JL01
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】金属製品の容器とした場合に高い防錆性能を有し、かつ、作業時の易開封性を有する積層シート。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂と気化性防錆剤とを含有する表面層11と、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする第1の基材層12と、ガスバリア層14と、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする第2の基材層13と、をこの順で有する積層シート10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と気化性防錆剤とを含有する表面層と、
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする第1の基材層と、
ガスバリア層と、
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする第2の基材層と、をこの順で有する積層シート。
【請求項2】
前記気化性防錆剤は、バイオマス由来の防錆剤を含有する請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記気化性防錆剤の含有量は、前記表面層に対して5質量%以上25質量%以下である請求項1または請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂からなる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項5】
前記表面層、前記第1の基材層、および前記第2の基材層のうち少なくとも一つの層において、バイオプラスチックを含有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記表面層、前記第1の基材層、第1の接着層、前記ガスバリア層、第2の接着層、前記第2の基材層の順で積層されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項7】
内部空間を形成する凹部と、前記凹部の周縁部に形成されるフランジ部と、を含み、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の積層シートが、前記表面層が内容物側になるように成形された容器。
【請求項8】
前記フランジ部に接合される蓋体を有し、
前記蓋体は気化性防錆剤を含む、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
ポリオレフィン系樹脂と気化性防錆剤とを含有する表面層と、
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする第1の基材層と、
ガスバリア層と、
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする第2の基材層と、をこの順で有する積層シートが、前記表面層が内容物側になるように成形された容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートおよび容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製品を保管したり輸送したりする際に製品に錆が発生することを抑制するために、気化性防錆剤を使用した防錆処理を製品に施す技術が知られている。気化性防錆剤は、常温で気化性を有する金属腐食抑制剤であり、金属製品の表面に付着することで防錆効果を発揮する。
しかしながら、粉末状あるいは液体状の気化性防錆剤を、金属製品に対し直接散布したり塗布したりする方法や、気化性防錆剤を塗布又は浸漬させた防錆紙を用いる方法では、気化性防錆剤が包装体外に揮発してしまい、期待する防錆効果が得られなかったり、人体に悪い影響を与える可能性があるという課題がある。
【0003】
このような課題に対応するべく、特許文献1および特許文献2には、気化性防錆剤を含有する層を有する多層樹脂層である積層シート、およびこの積層シートを成形することによって得られる容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-61731号公報
【特許文献2】特開2019-155611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の積層シートは金属製品に面する面とは反対側の最外層がポリエチレン系樹脂で形成されているため、剛性に劣るという課題がある。また、特許文献2に記載の積層シートは最外層がポリエステル系樹脂で形成されているため、防湿性に劣るという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、金属製品の容器とした場合に高い防錆性能を有し、かつ、作業時の易開封性を有する積層シートおよび容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]ポリオレフィン系樹脂と気化性防錆剤とを含有する表面層と、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする第1の基材層と、ガスバリア層と、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする第2の基材層と、をこの順で有する積層シート。
[2]気化性防錆剤は、バイオマス由来の防錆剤を含有する[1]に記載の積層シート。
[3]気化性防錆剤の含有量は、表面層に対して5質量%以上25質量%以下である[1]または[2]に記載の積層シート。
[4]ガスバリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂からなる[1]から[3]のいずれか一項に記載の積層シート。
[5]表面層、第1の基材層、および第2の基材層のうち少なくとも一つの層において、バイオプラスチックを含有する、[1]から[4]のいずれか一項に記載の積層シート。
[6]表面層、第1の基材層、第1の接着層、ガスバリア層、第2の接着層、第2の基材層の順で積層されている、[1]から[5]のいずれか一項に記載の積層シート。
[7]内部空間を形成する凹部と、凹部の周縁部に形成されるフランジ部と、を含み、[1]から[6]のいずれか一項に記載の積層シートが、表面層が内容物側になるように成形された容器。
[8]フランジ部に接合される蓋体を有し、蓋体は気化性防錆剤を含む、[7]に記載の容器。
[9]ポリオレフィン系樹脂と気化性防錆剤とを含有する表面層と、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする第1の基材層と、ガスバリア層と、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする第2の基材層と、をこの順で有する積層シートが、表面層が内容物側になるように成形された容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属製品の容器とした場合に高い防錆性能を発揮し、かつ、作業時の開封性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態の積層シートの構造を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る容器の部分断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る容器の部分断面図である。
【
図5】本発明の第4の実施形態に係る容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1の実施形態〕
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
なお、本明細書において、積層シートの各層を形成する樹脂組成物の主成分は、その層を形成している樹脂組成物の中で最も含有率が多い樹脂成分を意味する。従って、樹脂組成物は主成分に加えて他の成分を含んでもよい。主成分は、例えばIR法によって確認することができる。本明細書において、積層シートの各層を形成する樹脂組成物の成分の含有率は、別途記載がない限りその層を形成する樹脂組成物全体に対する質量%で表記する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層シートの構造を示す模式的な断面図である。
図1に示されるように、積層シート10は、基材層12,13の間に、ガスバリア層14が位置し、第1の基材層12のガスバリア層14とは反対側に表面層11が積層され、ガスバリア層14と基材層12,13とは第1および第2の接着層141,142を介して接着されている構成である。
以下、各層の構成について説明する。なお、積層シート10は、容器を構成するのに適した厚み、具体的には例えば0.2mm以上、1.4mm以下の厚みで形成されるが、この例には限定されない。
【0013】
表面層11は、積層シート10が容器に成形されたときに、ヒートシールなどによって蓋体に接合される層である。
表面層11は、ポリオレフィン系樹脂と、気化性防錆剤とを含有する層である。
ポリオレフィン系樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン系樹脂、ランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)またはホモポリプロピレン(HPP)などのポリプロピレン系樹脂で形成することができる。また、表面層11は、バイオプラスチックを含有してもよい。表面層11に含有されるバイオプラスチックとしては、バイオポリエチレンやバイオポリプロピレンが好ましい。
【0014】
気化性防錆剤は、常温で気化性を有する金属腐食抑制剤であり、金属製品の表面に付着することで防錆効果を発揮する。気化性防錆剤としては、脂肪族または芳香族酸の各級アンモニウム塩の1種または複数種から選択されるものがある。また、鉄鋼用気化性防錆剤としては、アミン類の亜硝酸塩類やアミン類のカルボン酸塩類、アミン類のクロム酸塩類、カルボン酸のエステル類があり、これらの混合物が挙げられる。銅および銅合金用気化性防錆剤としては、複素環状化合物やチオ尿素類、メルカプト基を有するものが挙げられる。複素環状化合物としては、トリアゾール環やピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を有するものが挙げられる。
また、気化性防錆剤は、バイオマス由来の防錆剤を含有することが好ましい。
気化性防錆剤の含有量について、表面層11に対して、下限は例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは4質量%以上、最も好ましくは6質量%以上である。上限は例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
バイオマス由来の防錆剤は、植物由来の成分を使用することが好ましい。具体的には、バイオマス由来の防錆剤は、脂肪酸から防錆成分を抽出したものである。本実施形態の防錆剤には、アミン類の亜硝酸塩類を使用していない。
【0015】
表面層11を形成する樹脂組成物は、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などを含んでもよい。限定的でない例として、容器の開封時に表面層11が破断される場合、表面層11の厚みは、下限は例えば10μm以上である。上限は例えば40μm以下、好ましくは30μm以下である。
なお、シール層である表面層11に接合される蓋体は、ポリオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(ガスバリア層)とからなる。また、蓋体の内部空間に接する層に気化性防錆剤を含有させることで、防錆効果の向上を図ることができる。この気化性防錆剤も、バイオマス由来の防錆剤を含有することが好ましい。
【0016】
第1の基材層12は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする水蒸気バリア層である。具体的には、第1の基材層12は、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂の少なくとも一方を主成分とする樹脂組成物で形成される。第1の基材層12は、ポリプロピレン系樹脂が主成分であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の含有量について、下限は例えば60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
第1の基材層12は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の他、各種ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの混合物などを含有してもよい。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、低い方が成形性が良く、0.1g/10分以上5.0g/10分以下とすることが好ましい。0.1g/10分未満となると、シート成膜時に押出温度を上げる必要があり、これにより気化防錆剤の気化が促進されてしまうため、好ましくない。この範囲とすることで、気化防錆剤の効果を最大限に生かすことができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、アイソタクティックペンタッド分率が80mol%以上のポリプロピレンである高立体規則性ポリプロピレンを含んでもよい。高立体規則性ポリプロピレンのアイソタクティックペンタッド分率は、87mol%以上であることが好ましく、92mol%以上であることがより好ましく、95mol%以上であることがさらに好ましく、97mol%以上であることが特に好ましい。アイソタクティックペンタッド分率の上限値は、特に限定されないが、例えば、100mol%である。アイソタクティックペンタッド分率をより高くすることによって、防湿性をより向上させることができる。第1の基材層12の高立体規則性ポリプロピレンの含有率は、例えば5質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。上限値は、通常99質量%以下である。
【0017】
第1の基材層12は、バイオプラスチックを含有してもよい。第1の基材層12が含有するバイオプラスチックとしては、バイオマスポリエチレンやバイオポリプロピレンが好ましい。バイオマスポリエチレン、バイオポリプロピレンの含有量について、基材層12に対して、下限は例えば0.1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。上限は例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
第1の基材層12は、無機充填剤(例えばタルク、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム)が含有されてよい。無機充填剤が含有されることによって、剛性とバリア性が向上する。また、無機充填剤が含有される場合は、剛性が向上するため、ポリエチレン系樹脂を多く含有させることができる。
基材層12には、各種機能を付与するため、必要に応じて、公知の添加剤、例えば安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、または着色剤などが添加されてもよい。例えば着色剤を添加することによって、第1の基材層12を目隠しとして機能させたり、第1の基材層12に意匠性を付与したりすることができる。
積層シート10全体の厚みに対する第1の基材層12の厚みの比(層比)は、10%~48%が好ましく、18%~46%がより好ましく、30%~45%がさらに好ましい。
【0018】
第2の基材層13は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする水蒸気バリア層である。ポリプロピレン系樹脂の含有量について、下限は例えば60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
第2の基材層13は、ポリプロピレン系樹脂の他、各種ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの混合物などを含有してもよい。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、低い方が成形性が良く、0.1g/10分以上5.0g/10分以下とすることが好ましい。0.1g/10分未満となると、シート成膜時に押出温度を上げる必要があり、これにより気化防錆剤の気化が促進されてしまうため、好ましくない。この範囲とすることで、気化防錆剤の効果を最大限に生かすことができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、アイソタクティックペンタッド分率が80mol%以上のポリプロピレンである高立体規則性ポリプロピレンを含んでもよい。高立体規則性ポリプロピレンのアイソタクティックペンタッド分率は、87mol%以上であることが好ましく、92mol%以上であることがより好ましく、95mol%以上であることがさらに好ましく、97mol%以上であることが特に好ましい。アイソタクティックペンタッド分率の上限値は、特に限定されないが、例えば、100mol%である。アイソタクティックペンタッド分率をより高くすることによって、防湿性をより向上させることができる。第1の基材層12の高立体規則性ポリプロピレンの含有率は、例えば5質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。上限値は、通常99質量%以下である。
第2の基材層13は、バイオプラスチックを含有してもよい。第2の基材層13が含有するバイオプラスチックとしては、バイオマスポリエチレンやバイオポリプロピレンが好ましい。バイオマスポリエチレン、バイオポリプロピレンの含有量について、基材層13に対して、下限は例えば0.1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。上限は例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下、20質量%以下である。なお、第2の基材層13に含有されるバイオプラスチックの組成は、第1の基材層12に含有されるバイオプラスチックの組成と同じでなくてよい。
積層シート10全体の厚みに対する第2の基材層13の厚みの比(層比)は、10%~48%が好ましく、18%~46%がより好ましく、30%~45%がさらに好ましい。
積層シート10全体に対する第1の基材層12および第2の基材層15の合計の層比は、20%~96%が好ましく、36%~92%がより好ましく、60%~90%がさらに好ましい。
【0019】
ガスバリア層14は、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのエチレンビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド系樹脂またはポリアクリロニトリルなどを含む層である。ガスバリア層14は、酸素バリア性を有することが好ましい。
第1の接着層141および第2の接着層142は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成されるが、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。第1の接着層141と第2の接着層142とは、同じ材質でもよいし、異なる材質でもよい。
【0020】
なお、以上で説明した積層シート10において、基材層12,13に加えて、原料構成が異なる少なくとも一つの層を追加してもよい。例えば、第1の基材層12とガスバリア層14との間に、第3の基材層として、例えばポリエチレン系樹脂を主成分とする層を設けてもよい。
また、第1の基材層12を、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする複数の層からなるものとし、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂を主成分とする層を複数の第1の基材層12の間に配置してもよい。この場合、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする複数の層の原料構成は異なっていても、同じでもよい。
また、上記層比は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層を対象としたものである。
また、例えば必要とされる剛性やバリア性に応じて追加の層が含まれてもよい。
【実施例0021】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制約されるものではない。
実施例および比較例では、積層シートを、共押出し積層シート製造装置を用い、具体的条件を以下の記載および表1の条件で製造した。以下で説明する実施例および比較例では、上記で
図1を参照して説明したような積層シートにおいて、全層厚み600μm、表面層の厚み30μm、第1および第2の基材層の厚み530μm(各層265μm)、ガスバリア層の厚み24μmとなるように調整し、積層シートから容器を成形した。
【0022】
【0023】
表1に記載する原料の詳細を以下に記載する。
HPP1:ホモポリプロピレン MFR=0.5g/分、アイソタクティックペンタッド分率92mol%
RPP:メタロセン系ランダムポリプロピレン MFR=2g/10分、融点=128℃
LD1:低密度ポリエチレン MFR=4g/10分、密度=0.93g/cm3、融点=128℃
HPP2:ホモポリプロピレン MFR=3g/分、アイソタクティックペンタッド分率92mol%
LD2:低密度ポリエチレン MFR=0.35g/10分、密度=0.92g/cm3
VCI:気化性防錆剤 BioCorマスターバッチ(GSIクレオス製)
【0024】
接着層およびガスバリア層の原料の詳細は以下とする。
接着層:接着性樹脂 無水マレイン酸変性ポリプロピレン、商品名 モディックAP P674V(三菱化学株式会社製)
ガスバリア層:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、商品名 エバールJ171B(株式会社クラレ製)
【0025】
さらに、真空圧空成形法により、積層シートをフランジ部を有する直径95mmのカップ形状に成形し容器本体とした。容器本体は、フィルム状の蓋体で封止した。蓋体は、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、およびポリエチレンで形成され、容器本体のフランジ部にヒートシールまたは超音波シールなどを用いて接合して、容器本体の内部空間を密閉した。
【0026】
実施例および比較例において作成された積層シート(容器)を、以下の項目について評価した結果を表1に示す。
(1)防錆評価
容器本体と蓋体とからなる容器の内部空間に防錆評価基材を封入し、防錆評価基材の状態を観察することにより、防錆評価を行った。
防錆評価基材は、錆びやすい素材であるSPCC(冷間圧延鋼板)とした。防錆評価基材を洗剤で洗浄した後、ヤスリを用いて表面を削り、純水で再洗浄することで、機械油を除去した。
【0027】
具体的な評価基準は、容器の内部空間に防錆評価基材を封入した後、恒温槽(50℃、95%RH)にて6時間保存後、錆の付着のないものをAとし、錆の付着が目視で認められるものをBとした。
【0028】
なお、評価に先立ち、上記した防錆評価基材が評価基材としての適性を調べるため、防錆評価基材を包装することなく恒温槽(45℃、80%RH)に1週間保管した。その結果、防錆評価基材に、錆が発生するのを確認した。その際、防錆評価基材に重量の変化はなかった。
【0029】
(2)全ピール強度
容器本体を固定し、蓋体の端部のうち、開封の起点となる開封起点部を有する端部(タブ部)を測定用治具により保持する。次に、容器本体を固定したまま測定用治具を移動させることにより、蓋体を容器本体のフランジ面に対して135°の方向に引っ張り、蓋体が容器本体のフランジ部から剥離し始めた瞬間の開封起点部における引張強度を測定し、全ピール強度とした。
具体的な評価基準は、全ピール強度が0.3kgf~1.5kgfである場合にAとし、全ピール強度が1.6kgf以上である場合にBとした。容器の全ピール強度の好ましい範囲は0.3kgf以上であり、3.0kgf以下が好ましく、2.0kgf以下がより好ましく、1.5kgf以下がさらに好ましい。
【0030】
[実施例1]
実施例1の積層シートは、表面層が、ホモポリプロピレン(48質量%)と、メタロセン系ランダムポリプロピレン(18質量%)と、低密度ポリエチレン(24質量%)と、気化性防錆剤(10質量%)とからなるものとした。
[実施例2]
実施例2の積層シートは、表面層が、ホモポリプロピレン(45質量%)と、メタロセン系ランダムポリプロピレン(17質量%)と、低密度ポリエチレン(18質量%)と、気化性防錆剤(20質量%)とからなるものとした。
すなわち、実施例1の積層シートは、表面層における気化性防錆剤の含有量を10質量%とし、実施例2の積層シートは、表面層における気化性防錆剤の含有量を20質量%とした。
[比較例]
比較例の積層シートは、表面層に気化性防錆剤を含まないものとした。
【0031】
上記の各実施例および各比較例に係る積層シートの各特性を評価した結果を、表1に示す。
この結果より、積層シートの表面層に気化性防錆剤を含有しない比較例では、防錆評価基材に錆が発生する一方で、表面層に気化性防錆剤を含有する実施例では、防錆評価基材に錆が発生することなく、防錆性能が発揮されていることがわかった。
また、実施例および比較例の容器では、安定的かつ容易に開封可能であることが示された。
【0032】
このように、本発明の実施形態では、表面層11に気化性防錆剤を含有させることで、防錆性能に優れ、かつ、作業時の開封性を高めることができる積層シート10を得ることができた。
なお、上記実施例では、蓋体の構成をポリオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(ガスバリア層)とからなるものとしたが、内部空間を向く面に気化性防錆剤を加えることで、防錆効果の向上を図ることができる。
【0033】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、本発明の積層シートを容器に適用した形態である。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。
図2に示されるように、容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、例えば図示されたような略円形の平面形状を有し、カップ状の凹部111と、凹部111の周縁部に形成されるフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される環状の接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。
【0034】
図3は、
図2に示す容器の部分断面図である。
図3に示されるように、容器本体110は、基材層12,13、ガスバリア層14(以下、主要層10Aと呼ぶ)および表面層11を含む積層シート10を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。
主要層10Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面層11は、容器本体110の内側、すなわち内部空間SP(内容物)に面する側に位置する。接合領域140において、蓋体130は積層シート10の表面層11に接合される。後述するように、接合領域140における蓋体130と表面層11との間の接合強度は、積層シート10における主要層10Aと表面層11との間の層間接合強度よりも強い。
【0035】
さらに、本実施形態では、容器本体110のフランジ部112に、接合領域140に沿う切り込み115が形成される。切り込み115は、接合領域140よりも凹部111側のフランジ部112で、少なくとも積層シート10の表面層11に形成される。後述するように、切り込み115は、表面層11の欠落部の例である。図示された例では切り込み115がちょうど表面層11だけを貫通して主要層10Aには達していないが、切り込み115は主要層10Aの一部に達していてもよい。あるいは、切り込み115は表面層11を貫通せず、表面層11が容器の開封時に容易に破断できる程度の厚さで残されてもよい。なお、切り込み115の断面形状は図示された例ではV字形であるが、U字形またはI字形などの他の形状であってもよい。
【0036】
蓋体130は、外層131Aおよび表面層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。表面層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に面する側に位置し、接合領域140で容器本体110を構成する積層シート10の表面層11に接合される。外層131Aと表面層131Bとは互いに接合されている。なお、積層体131に追加の層が含まれてもよい。
ここで、積層体131の外層131Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。また、積層体131の表面層131Bは、例えばランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成される。
【0037】
次に、
図3に示した容器の開封動作について説明する。
図3(A)よび
図3(B)に示すように、ユーザは延出した蓋体130の端部を摘持し、ここから蓋体130を引き剥がすことによって容器の開封を開始することができる。
【0038】
ここで、上述のように、接合領域140における蓋体130と表面層11との間の接合強度は、積層シート10の主要層10Aと表面層11との間の層間接合強度よりも強い。従って、上記のようにユーザが蓋体130を引き剥がすと、積層シート10の端部に近い接合領域140で蓋体130に接合された表面層11が蓋体130とともに引き剥がされる一方で、積層シート10の主要層10Aと表面層11との間は層間剥離する。
【0039】
さらにユーザが蓋体130を引き剥がすと、
図3(B)に示すように、切り込み115で表面層11が蓋体130から離れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、上述のように、切り込み115が表面層11を貫通して形成されているか、または切り込み115によって表面層11が容易に破断できる程度の厚さにされているためである。
【0040】
本実施形態に係る容器は、上記のような手順によって開封される。積層シート10の主要層10Aと表面層11との間の層間接合強度を弱めれば、開封時にユーザが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では、内部空間SPの内圧は接合領域140、より具体的には接合領域140の凹部111側の端縁部に集中する。切り込み115は接合領域140の端縁部から離隔しているため、集中した内圧が切り込み115を起点にして積層シート10を層間剥離させるように作用することが防止される。それゆえ、上記のように層間接合強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体130と表面層11との間の接合強度を強くすることによって高い内圧に対抗することができる。このようにして、本実施形態に係る容器では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。なお、密封性を保つために、層間剥離の表面層(上記の例では表面層11)の厚みは、一例として10μm~200μmであることが好ましく、50μm~150μmであることがより好ましい。
【0041】
〔第3の実施形態〕
次に、
図4を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下で説明する点を除いて、本実施形態の構成は上記の第2の実施形態の構成と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0042】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る容器の部分断面図である。本実施形態において、容器本体110は、
図4に示されるように、主要層10B(第2の基材層13、ガスバリア層14)、第1の基材層12(表面下層)および表面層11を含む積層シート10を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。主要層10Bは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。第1の基材層12は、主要層10Bと表面層11との間にあり、それぞれの層に接合されている。表面層11は、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。
【0043】
ここで、積層シート10の基材層12,13とガスバリア層14は、第1の実施形態の基材層12,13とガスバリア層14と同様の構成とすることができる。
【0044】
一方、積層シート10の表面層11は、例えばエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくともいずれかを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物で形成される。この場合、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部から50質量部、特に好ましくは15質量部から40質量部程度、添加すればよい。
【0045】
なお、図示された例において積層シート10は主要層10B、第1の基材層12および表面層11の3つの層を含むが、他の例において積層シート10は追加の層を含んでもよい。例えば、積層シート10は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の層同士を接着する接着層とを含んでもよい。接着層の構成は、第1の実施形態の接着層141,142と同様である。
【0046】
蓋体130は、外層131Aおよび表面層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。積層体131の構成は、第2の実施形態の積層体131と同様である。
【0047】
ここで、本実施形態において、積層シート10の表面層11の凝集強度は、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層シート10および積層体131を構成する表面層11以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層シート10および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。つまり、第1の基材層12を第1層、表面層11を第2層、表面層131Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第2層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第3層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。これによって、後述するように、本実施形態では表面層114Cを凝集破壊層とすることによって容器を容易に開封することができる。なお、本明細書において、凝集強度は、積層体の各層を構成する樹脂を結合させている分子間力(凝集力)によって発揮される強度を意味する。
【0048】
さらに、本実施形態では、
図4に示されるように、接合領域140の凹部111側の端縁部に、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が形成される。第1樹脂溜まり部121は、積層シート10の第1の基材層12および表面層11を形成する樹脂からなり、凹部111側に傾いた瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部122は、蓋体130の表面層131Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部121よりも凹部111側に位置する瘤状断面を有する。図示されているように、表面層11は、第1樹脂溜まり部121の表面に沿って、かつ第1樹脂溜まり部121と第2樹脂溜まり部122との隙間を通るように形成される。以下の本実施形態の説明では、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を総称して樹脂溜まり部120ともいう。
【0049】
次に、
図4に示した容器の開封動作について説明する。
図4(A)および
図4(B)に示すように、ユーザは延出した蓋体130の端部を摘持し、ここから蓋体130を引き剥がすことによって容器の開封を開始することができる。
【0050】
ここで、上述のように、表面層11の凝集強度は、接合領域140における蓋体130と表面層11との間の接合強度、積層シート10および積層体131の表面層114C以外の各層の凝集強度、ならびに積層シート10および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。従って、ユーザが蓋体130を引き剥がすと、接合領域140に対応する位置で蓋体130に引っ張られた表面層11が凝集破壊される。これによって、表面層11の一部が蓋体130とともに引き剥がされ、表面層11の残りの部分は第1の基材層12側に残る。
【0051】
さらにユーザが蓋体130を引き剥がすと、
図4(B)に示すように、樹脂溜まり部120で表面層11の凝集破壊が途切れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、樹脂溜まり部120において、表面層11の凝集破壊が、第1樹脂溜まり部121の形状に沿って進行するためである。第1樹脂溜まり部121の表面と第2樹脂溜まり部122の表面とが互いに離反する接合領域140の端縁140E付近で表面層11は両側から引っ張られて破断し、蓋体130側から離れる。
【0052】
本実施形態に係る容器は、上記のような手順によって開封される。積層シート10の表面層11の凝集強度を弱めれば、開封時にユーザが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では、内部空間SPの内圧は接合領域140に作用する。接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度は、表面層11の凝集強度よりも強くすることが可能であるため、上記のように表面層11の凝集強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体130と容器本体110との間の接合強度は強いままにして高い内圧に対抗することができる。加えて、接合領域140では第1樹脂溜まり部121の凹部111側の根元付近に応力が集中するため、接合領域140はより樹脂溜まり部が形成されない場合よりも高い内圧に対抗することが可能である。このようにして、本実施形態に係る容器では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。なお、密封性を保つために、凝集剥離の表面層(上記の例では表面層11)の厚みは、一例として10μm~200μmであることが好ましく、15μm~80μmであることがより好ましい。また、上記で説明したような樹脂溜まり部120を形成することは必須ではなく、樹脂溜まり部が形成されない場合でも、上記のような凝集強度と層間接合強度との関係が成り立てば、上記の例と同様に開封性と耐内圧性とを両立させることができる。
【0053】
〔第4の実施形態〕
次に、
図5を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、本発明の積層シートを容器に適用した形態である。なお、以下で説明する点を除いて、本実施形態の構成は上記の第3の実施形態の構成と同様であるため、重複した説明は省略する場合がある。
【0054】
図5は、本発明の第4の実施形態に係る容器の断面図である。
図5に示されるように、容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、例えば略円形の平面形状を有し、カップ状の凹部111と、凹部111の周縁部に形成されるフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される環状の接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。
容器本体110は、基材層12,13、ガスバリア層14および表面層11を含む積層シート10を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。
積層シート10は、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面層11は、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置する。接合領域140において、蓋体130は積層シート10の表面層11に接合される。接合領域140における蓋体130と表面層11との間の接合強度は、積層シート10と表面層11との間の層間接合強度よりも強い。
第3の実施形態では、表面層11の主成分をポリプロピレン系樹脂としたが、本実施形態の表面層11は、ポリエチレン系樹脂を主成分とし、表面下層である第1の基材層12の主成分をポリエチレン系樹脂としている。
図5に示された容器100では、蓋体130がフランジ部112に形成される接合領域140で例えばヒートシールなどによって容器本体110に接合されている。
【0055】
表面層11の主成分がポリエチレン系樹脂、第1の基材層12の主成分がポリエチレン系樹脂であるため、表面層11と第1の基材層12との間は剥離しやすい。これを利用して、容器100では、積層シート10の表面層11と第1の基材層12との間の層間接合強度を、接合領域140における蓋体130と表面層11との間の接合強度、および第1の基材層12とガスバリア層14との間の層間接合強度よりも弱くすることができる。これによって、ユーザが蓋体130の端部を摘持して引き剥がしたときに、接合領域140では表面層11が蓋体130とともに引き剥がされ、表面層11と第1の基材層12との間が層間剥離する。蓋体130および表面層11が接合領域140の内側の縁まで引き剥がされると、そこで表面層11が破断し(エッジ切れ)、以降は蓋体130のみが容器本体から引き剥がされる。
10…積層シート、11…表面層、12…第1の基材層,13…第2の基材層、14…ガスバリア層、141,142…接着層、100…容器、111…凹部、112…フランジ部、SP…内部空間。