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特開2022-100618レジスト下層膜形成用組成物及半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100618
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成用組成物及半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20220629BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20220629BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/26 511
H01L21/30 573
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214702
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 優貴
(72)【発明者】
【氏名】平澤 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】平林 洋紀
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 龍一
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
5F146
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196KA08
2H196KA19
2H225AM61N
2H225AN02N
2H225AN22N
2H225AN34N
2H225CA12
5F146NA01
5F146NA12
5F146NA17
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れたレジスト下層膜形成用組成物及び半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせと、金属化合物と、溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせと、金属化合物と、溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項2】
上記オルトエステルが下記式(1)で表される、請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、
は、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
複数のRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。)
【請求項3】
上記レジスト下層膜形成用組成物が上記オルトエステルを含有する、請求項1又は2に記載のレジスト下層膜形成用組成物
【請求項4】
上記レジスト下層膜形成用組成物における上記オルトエステルの含有割合が50質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
上記金属化合物に含まれる金属原子が、周期表第3族~第16族に属する、請求項1~4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項6】
上記金属原子が、周期表第4族に属する、請求項1~5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項7】
基板に、直接又は間接に、レジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に、直接又は間接に、レジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記レジスト下層膜にパターンを形成する工程と
を含み、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせと、金属化合物と、溶媒とを含有する、半導体基板の製造方法。
【請求項8】
上記レジストパターン形成工程より前に、
上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に、直接又は間接に、有機下層膜を形成する工程
をさらに含む、請求項7に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
上記レジストパターン形成工程より前に、
上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に、直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する工程
をさらに含む請求項7又は請求項8に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成用組成物及び半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用素子等の製造においては、金属アルコキシドの加水分解縮合物を用いることが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、上述の従来の金属アルコキシドの加水分解縮合物では、その保存安定性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-134592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、保存安定性に優れたレジスト下層膜形成用組成物及び半導体基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明は、オルトエステル(以下、「[D]化合物」ともいう)、有機酸(以下、「[E]有機酸」ともいう)又はこれらの組み合わせと、金属化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)と、溶媒(以下、「[C]溶媒」ともいう)とを含有するレジスト下層膜形成組成物(以下、「組成物(J)」ともいう)である。
【0006】
本発明は、一実施形態において、
オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせと、金属化合物と、溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、別の実施形態において、
基板に、直接又は間接に、レジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程と、
上記塗工工程により形成されたレジスト下層膜に、直接又は間接に、レジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンをマスクとしたエッチングにより上記レジスト下層膜にパターンを形成する工程と
を含み、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせと、金属化合物と、溶媒とを含有する、半導体基板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
当該のレジスト下層膜形成用組成物は、塗工性の保存安定性、溶解性の保存安定性、膜厚の保存安定性及び酸素系ガスエッチング耐性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。当該半導体基板の製造方法は、当該レジスト下層膜形成用組成物を用いるため、半導体基板を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<組成物(J)>
組成物(J)は、オルトエステル(以下、「[D]化合物」ともいう)、有機酸(以下、「[E]有機酸」ともいう)又はこれらの組み合わせと、金属化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)と、溶媒(以下、「[C]溶媒」ともいう)とを含有する。組成物(J)は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0010】
以下、組成物(J)が含有する各成分について説明する。
【0011】
[[A]化合物]
[A]化合物は、金属原子と酸素原子とを含む化合物をいう。[A]化合物を構成する金属原子としては、例えば、周期表第3族~第16族の金属原子(但し、ケイ素原子を除く)等等をあげることができる。[A]化合物は、1種又は2種以上の金属原子を有していてもよい。
【0012】
第3族の金属原子としては、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム等が、
第4族の金属原子としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等が、
第5族の金属原子としては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル等が、
第6族の金属原子としては、例えば、クロム、モリブデン、タングステン等が、
第7族の金属原子としては、マンガン、レニウム等が、
第8族の金属原子としては、鉄、ルテニウム、オスミウム等が、
第9族の金属原子としては、コバルト、ロジウム、イリジウム等が、
第10族の金属原子としては、ニッケル、パラジウム、白金等が、
第11族の金属原子としては、銅、銀、金等が、
第12族の金属原子としては、亜鉛、カドミウム、水銀等が、
第13族の金属原子としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム等が、
第14族の金属原子としては、ゲルマニウム、スズ、鉛等が、
第15族の金属原子としては、アンチモン、ビスマス等が、
第16族の金属原子としては、テルル等をあげることができる。
【0013】
上記[A]化合物を構成する金属原子としては、第3族~第14族の金属原子が好ましく、第4族、第5族及び第14族の金属原子がより好ましく、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、スズ及びこれらの組み合わせがさらに好ましい。
【0014】
上記[A]化合物を構成する金属原子以外の成分(以下、「[X]化合物ともいう)としては、有機酸(以下、「[a]有機酸」ともいう)、ヒドロキシ酸エステル、β-ジケトン、α,α-ジカルボン酸エステル、アミン化合物が好ましい。ここで、「有機酸」とは、酸性を示す有機化合物をいい、「有機化合物」とは、少なくとも1個の炭素原子を有する化合物をいう。
【0015】
[a]有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、有機ホスフィン酸、有機ホスホン酸、フェノール類、エノール、チオール、酸イミド、オキシム、スルホンアミド等等をあげることができる。
【0016】
上記カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、trans-2,3-ジメチルアクリル酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、サリチル酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、没食子酸、シキミ酸等のモノカルボン酸があげられ、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、メチルマロン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、酒石酸等のジカルボン酸等があげられ、また、クエン酸等の3以上のカルボキシ基を有するカルボン酸等等をあげることができる。
【0017】
上記スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等をあげることができる。
【0018】
上記スルフィン酸としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、p-トルエンスルフィン酸等をあげることができる。
【0019】
上記有機ホスフィン酸としては、例えば、ジエチルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等をあげることができる。
【0020】
上記有機ホスホン酸としては、例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、フェニルホスホン酸等をあげることができる。
【0021】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、2,6-キシレノール、ナフトール等の1価のフェノール類;
カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,2-ナフタレンジオール等の2価のフェノール類;
ピロガロール、2,3,6-ナフタレントリオール等の3価以上のフェノール類等をあげることができる。
【0022】
上記エノールとしては、例えば、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテン、3-ヒドロキシ-4-メチル-3-ヘキセン等をあげることができる。
【0023】
上記チオールとしては、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール等をあげることができる。
【0024】
上記酸イミドとしては、例えば、マレイミド、コハク酸イミド等のカルボン酸イミドがあげられ、また、ジ(トリフルオロメタンスルホン酸)イミド、ジ(ペンタフルオロエタンスルホン酸)イミド等のスルホン酸イミド等をあげることができる。
【0025】
上記オキシムとしては、例えば、ベンズアルドキシム、サリチルアルドキシム等のアルドキシムがあげられ、また、ジエチルケトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等のケトキシム等をあげることができる。
【0026】
上記スルホンアミドとしては、例えば、メチルスルホンアミド、エチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド等をあげることができる。
【0027】
[a]有機酸としては、カルボン酸が好ましく、モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸及び安息香酸がさらに好ましい。
【0028】
上記ヒドロキシ酸エステルとしては例えば、グリコール酸エステル、乳酸エステル、2-ヒドロキシシクロヘキサン-1-カルボン酸エステル、サリチル酸エステル等をあげることができる。
【0029】
上記β-ジケトンとしては、例えば、2,4-ペンタンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン等をあげることができる。
【0030】
上記β-ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸エステル、α-アルキル置換アセト酢酸エステル、β-ケトペンタン酸エステル、ベンゾイル酢酸エステル、1,3-アセトンジカルボン酸エステル等をあげることができる。
【0031】
上記β-ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸エステル、α-アルキル置換アセト酢酸エステル、β-ケトペンタン酸エステル、ベンゾイル酢酸エステル、1,3-アセトンジカルボン酸エステル等をあげることができる。
【0032】
アミン化合物としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等をあげることができる。
【0033】
上記[A]化合物としては、金属原子及び[a]有機酸により構成される金属化合物が好ましく、第4族、第5族及び第14族の金属原子とカルボン酸とにより構成される金属化合物がより好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、タングステン又はスズと、メタクリル酸又は安息香酸とにより構成される金属酸化物がさらに好ましい。
【0034】
[A]化合物は、上記金属化合物を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0035】
[A]化合物は、[a]有機酸を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0036】
[A]化合物の含有割合の下限としては、組成物(J)に含有される全成分に対して、2質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、6質量%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、組成物(J)に対して、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。
【0037】
[[A]化合物の合成方法]
[A]化合物は、例えば、[b]金属含有化合物を用いて加水分解縮合反応を行う方法、[b]金属含有化合物を用いて配位子交換反応を行う方法等により合成することができる。ここで「加水分解縮合反応」とは、[b]金属含有化合物が有する加水分解性基が加水分解して-OHに変換され、得られた2個の-OHが脱水縮合して-O-が形成される反応をいう。
【0038】
([b]金属含有化合物)
[b]金属含有化合物は、加水分解性基を有する金属化合物(I)、加水分解性基を有する金属化合物(I)の加水分解物、加水分解性基を有する金属化合物(I)の加水分解縮合物又はこれらの組み合わせである。金属化合物(I)は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
上記加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等をあげることができる。
【0040】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等をあげることができる。
【0041】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシブトキシ基等をあげることができる。
【0042】
上記アシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、エチリルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、t-ブチリルオキシ基、t-アミリルオキシ基、n-ヘキサンカルボニルオキシ基、n-オクタンカルボニルオキシ基等をあげることができる。
【0043】
上記加水分解性基としては、アルコキシ基及びアシロキシ基が好ましく、イソプロポキシ基及びアセトキシ基がより好ましい。
【0044】
[b]金属含有化合物が金属化合物(I)の加水分解縮合物である場合には、この金属化合物(I)の加水分解縮合物は、本発明の効果を損なわない限り、加水分解性基を有する金属(I)と半金属原子を含む化合物との加水分解縮合物であってもよい。すなわち、金属化合物(I)の加水分解縮合物には、本発明の効果を損なわない範囲内で半金属原子が含まれていてもよい。上記半金属原子としては、例えば、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン、テルル等をあげることができる。金属化合物(I)の加水分解縮合物における半金属原子の含有率は、この加水分解縮合物中の金属原子及び半金属原子の合計に対し、通常50原子%未満である。上記半金属原子の含有率の上限としては、上記加水分解縮合物中の金属原子及び半金属原子の合計に対し、30原子%が好ましく、10原子%がより好ましい。
【0045】
金属化合物(I)としては、例えば、下記式(A)で表される化合物(以下、「[M]化合物」ともいう)等をあげることができる。
【0046】
【化1】
【0047】
上記式(A)中、Mは、金属原子である。Lは、配位子である。aは、0~2の整数である。aが2の場合、複数のLは同一でも異なっていてもよい。Yは、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアシロキシ基から選ばれる加水分解性基である。bは、2~6の整数である。複数のYは同一でも異なっていてもよい。なお、LはYに該当しない配位子である。
【0048】
Mで表される金属原子としては、例えば、[A]化合物の含む金属酸化物を構成する金属原子として例示したものと同様の金属原子等をあげることができる。
【0049】
Lで表される配位子としては、単座配位子及び多座配位子をあげることができる。
【0050】
上記単座配位子としては、例えば、ヒドロキソ配位子、カルボキシ配位子、アミド配位子、アンモニア等をあげることができる。
【0051】
上記アミド配位子としては、例えば、無置換アミド配位子(NH)、メチルアミド配位子(NHMe)、ジメチルアミド配位子(NMe)、ジエチルアミド配位子(NEt)、ジプロピルアミド配位子(NPr)等をあげることができる。
【0052】
上記多座配位子としては、例えば、ヒドロキシ酸エステル、β-ジケトン、β-ケトエステル、β-ジカルボン酸エステル、π結合を有する炭化水素、ジホスフィン等をあげることができる。
【0053】
上記ヒドロキシ酸エステルとしては、例えば、グリコール酸エステル、乳酸エステル、2-ヒドロキシシクロヘキサン-1-カルボン酸エステル、サリチル酸エステル等をあげることができる。
【0054】
上記β-ジケトンとしては、例えば、2,4-ペンタンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン等をあげることができる。
【0055】
上記β-ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸エステル、α-アルキル置換アセト酢酸エステル、β-ケトペンタン酸エステル、ベンゾイル酢酸エステル、1,3-アセトンジカルボン酸エステル等をあげることができる。
【0056】
上記β-ジカルボン酸エステルとしては、例えば、マロン酸ジエステル、α-アルキル置換マロン酸ジエステル、α-シクロアルキル置換マロン酸ジエステル、α-アリール置換マロン酸ジエステル等をあげることができる。
【0057】
上記π結合を有する炭化水素としては、例えば、
エチレン、プロピレン等の鎖状オレフィン;
シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状オレフィン;
ブタジエン、イソプレン等の鎖状ジエン;
シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;
ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサメチルベンゼン、ナフタレン、インデン等の芳香族炭化水素等をあげることができる。
【0058】
上記ジホスフィンとしては、例えば、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等をあげることができる。
【0059】
Yで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等をあげることができる。
【0060】
Yで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等をあげることができる。
【0061】
Yで表されるアシロキシ基としては、例えば、アセトキシ基、エチリルオキシ基、ブチリルオキシ基、t-ブチリルオキシ基、t-アミリルオキシ基、n-ヘキサンカルボニロキシ基、n-オクタンカルボニロキシ基等をあげることができる。
【0062】
Yとしては、アルコキシ基及びアシロキシ基が好ましく、イソプロポキシ基及びアセトキシ基がより好ましい。
【0063】
bとしては、3及び4が好ましく、4がより好ましい。
【0064】
[b]金属含有化合物としては、加水分解も加水分解縮合もしていない金属アルコキシド、及び加水分解も加水分解縮合もしていない金属アシロキシドが好ましい。
【0065】
[b]金属含有化合物としては、ジルコニウム・テトラn-ブトキシド、ジルコニウム・テトラn-プロポキシド、ジルコニウム・テトライソプロポキシド、ハフニウム・テトラエトキシド、インジウム・トリイソプロポキシド、ハフニウム・テトライソプロポキシド、ハフニウム・テトラブトキシド、タンタル・ペンタエトキシド、タンタル・ペンタブトキシド、タングステン・ペンタメトキシド、タングステン・ペンタブトキシド、タングステン・ヘキサエトキシド、タングステン・ヘキサブトキシド、塩化鉄、亜鉛・ジイソプロポキシド、酢酸亜鉛二水和物、オルトチタン酸テトラブチル、チタン・テトラn-ブトキシド、チタン・テトラn-プロポキシド、ジルコニウム・ジn-ブトキシド・ビス(2,4-ペンタンジオナート)、チタン・トリn-ブトキシド・ステアレート、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)タングステンジクロリド、ジアセタト[(S)-(-)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル]ルテニウム、ジクロロ[エチレンビス(ジフェニルホスフィン)]コバルト、チタンブトキシドオリゴマー、アミノプロピルトリメトキシチタン、アミノプロピルトリエトキシジルコニウム、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシジルコニウム、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシジルコニウム、3-イソシアノプロピルトリメトキシジルコニウム、3-イソシアノプロピルトリエトキシジルコニウム、トリエトキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-i-プロポキシモノ(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-i-プロポキシモノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジn-ブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジn-ブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ(3-メタクリロキシプロピル)メトキシジルコニウム、トリ(3-アクリロキシプロピル)メトキシジルコニウム、スズ・テトライソプロポキシド、スズ・テトラブトキシド、酸化ランタン、酸化イットリウム等をあげることができる。
【0066】
これらの中で、金属アルコキシド及び金属アシロキシドが好ましく、金属アルコキシドがより好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、タングステン及びスズのアルコキシドがさらに好ましい。
【0067】
[A]化合物の合成に有機酸を用いる場合、上記有機酸の使用量の下限としては、[b]金属含有化合物100質量部に対し、10質量部が好ましく、30質量部がより好ましい。一方、上記有機酸の使用量の上限としては、[b]金属含有化合物100質量部に対し、1,000質量部が好ましく、700質量部がより好ましく、200質量部がさらに好ましく、100質量部が特に好ましい。
【0068】
[A]化合物の合成反応の際、金属化合物(I)及び[a]有機酸に加えて、上記式(A)の化合物におけるLで表される多座配位子になり得る化合物や架橋配位子になり得る化合物等を添加してもよい。上記架橋配位子になり得る化合物としては、例えば、複数個のヒドロキシ基、イソシアネート基、アミノ基、エステル基及びアミド基を有する化合物等をあげることができる。
【0069】
[b]金属含有化合物を用いて加水分解縮合反応を行う方法としては、例えば、[b]金属含有化合物を、水を含む溶媒中で加水分解縮合反応させる方法等をあげることができる。この場合、必要に応じて加水分解性基を有する他の化合物を添加してもよい。この加水分解縮合反応に用いる水の量の下限としては、[b]金属含有化合物等が有する加水分解性基に対し、0.2倍モルが好ましく、1倍モルがより好ましく、3倍モルがさらに好ましい。上記水の量の上限としては、20倍モルが好ましく、15倍モルがより好ましく、10倍モルがさらに好ましい。
【0070】
[b]金属含有化合物を用いて配位子交換反応を行う方法としては、例えば、[b]金属含有化合物及び[a]有機酸を混合する方法等をあげることができる。この場合、溶媒中で混合してもよく、溶媒を用いずに混合してもよい。また、上記混合では、必要に応じてトリエチルアミン等の塩基を添加してもよい。上記塩基の添加量としては、[b]金属含有化合物及び[a]有機酸の合計使用量100質量部に対し、例えば、1質量部以上200質量部以下である。
【0071】
[A]化合物の合成反応に用いる溶媒(以下、「[B]溶媒」ともいう)としては、特に限定されず、例えば、後述する[C]有機溶媒として例示するものと同様の溶媒を用いることができる。これらの中で、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及び炭化水素系溶媒が好ましく、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒がより好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒、モノカルボン酸エステル系溶媒及び環状エーテル系溶媒がさらに好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル及びテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0072】
[A]化合物の合成反応に有機溶媒を用いる場合、使用した有機溶媒を反応後に除去してもよいが、反応後に除去することなく、そのまま当該レジスト下層膜形成組成物の[C]有機溶媒とすることもできる。
【0073】
[[C]溶媒]
[C]溶媒としては、少なくとも[A]化合物、オルトエステル、有機酸、その他の任意成分等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。組成物(J)は、1種又は2種以上の[C]溶媒を含有することができる。
【0074】
[C]溶媒としては、有機溶媒をあげることができる。有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒等をあげることができる。
【0075】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール等のモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒等をあげることができる。
【0076】
ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン系溶媒、シクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒等をあげることができる。
【0077】
エーテル系溶媒としては、例えば、n-ブチルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル系溶媒等の多価アルコールエーテル系溶媒、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等をあげることができる。
【0078】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸モノエステル系溶媒、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶媒、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル系溶媒等をあげることができる。
【0079】
含窒素系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド等の鎖状含窒素系溶媒、N-メチルピロリドン等の環状含窒素系溶媒等をあげることができる。
【0080】
その他、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒等をあげることができる。
【0081】
[C]溶媒としては、エーテル系溶媒及び/又はエステル系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテル系溶媒及び/又は多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。
【0082】
組成物(J)中の[C]溶媒の含有量の下限としては、[A]化合物100質量部に対して、300質量部がより好ましく、500質量部が好ましく、700質量部がより好ましい。上記含有量の上限としては、[A]化合物100質量部に対して、5,000質量部が好ましく、3,000質量部がより好ましく、2000質量部がより好ましい。
【0083】
組成物(J)中の[C]溶媒の含有量の下限としては、組成物(J)に対して、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、組成物(J)に対して、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
【0084】
[C]溶媒の含有量を上記範囲とすることで、組成物(J)の調製を容易にすることができる。
【0085】
[[D]オルトエステル]
[D]オルトエステルは、オルトカルボン酸のエステル体である。[D]オルトエステルは、水と反応して、カルボン酸エステル等を与える。組成物(J)は、[D]オルトエステルを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
[D]オルトエステルとしては、例えば、下記式(4)で表される化合物等をあげることができる。
【0087】
【化2】
(式(1)中、
は、水素原子又は置換若しくは非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
複数のRは、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基である。)
【0088】
で表される置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換の炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、置換又は非置換の炭素数3~20の2価の脂肪族環状炭化水素基、置換又は非置換の炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0089】
非置換の炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基等の鎖状飽和炭化水素基、エテンジイル基、プロペンジイル基等の鎖状不飽和炭化水素基等をあげることができる。
【0090】
非置換の炭素数3~20の2価の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、シクロブタンジイル基等の単環式飽和炭化水素基、シクロブテンジイル基等の単環式不飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジイル基等の多環式飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテンジイル基等の多環式不飽和炭化水素基等をあげることができる。
【0091】
非置換の炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、フェニレンエチレン基、ナフチレン基等をあげることができる。
【0092】
で表される置換の炭素数1~20の2価の炭化水素基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基等をあげることができる。
【0093】
としては、水素原子又は非置換の炭化水素基が好ましく、水素原子又は非置換の鎖状炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がさらに好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0094】
で表される置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換の炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、置換又は非置換の炭素数3~20の2価の脂肪族環状炭化水素基、置換又は非置換の炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基等をあげることができる。
【0095】
非置換の炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基等の鎖状飽和炭化水素基、エテンジイル基、プロペンジイル基等の鎖状不飽和炭化水素基等をあげることができる。
【0096】
非置換の炭素数3~20の2価の脂肪族環状炭化水素基としては、例えば、シクロブタンジイル基等の単環式飽和炭化水素基、シクロブテンジイル基等の単環式不飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジイル基等の多環式飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテンジイル基等の多環式不飽和炭化水素基等をあげることができる。
【0097】
非置換の炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、フェニレンエチレン基、ナフチレン基等をあげることができる。
【0098】
で表される置換の炭素数1~20の2価の炭化水素基における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基等をあげることができる。
【0099】
としては、非置換の炭化水素基が好ましく、非置換の鎖状炭化水素基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0100】
[D]オルトエステルとしては、例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルトギ酸プロピル、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等のオルトギ酸エステル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルト酢酸プロピル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル等のオルト酢酸エステル、オルトプロピオン酸メチル、オルトプロピオン酸エチル、オルトプロピオン酸プロピル等のオルトプロピオン酸エステル等をあげることができる。これらの中で、オルトギ酸エステル又はオルト酢酸エステルが好ましく、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル又はオルト酢酸エチルがより好ましい。
【0101】
組成物(J)は、上記オルトエステルを含有することが好ましい。
【0102】
[D]オルトエステルの含有量の下限としては、[A]化合物100質量部に対して、10質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、300質量部がさらに好ましく、500質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、10,000質量部が好ましく、5,000質量部がより好ましく、2,000質量部がさらに好ましく、1,000質量部が特に好ましい。[D]オルトエステルの含有量を上記範囲とすることで、組成物(J)の保存安定性をより向上させることができる。
【0103】
組成物(J)中の[D]オルトエステルの含有量の下限としては、組成物(J)に対して、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、2質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、組成物(J)に対して、60質量%が好ましく、55質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。
【0104】
[[E]有機酸]
[E]有機酸としては、上記[a]有機酸として例示するものと同様の有機酸を用いることができる。
【0105】
組成物(J)は、[a]有機酸を1種又は2種以上含有していてもよい。
【0106】
[その他の任意成分]
組成物(J)は、上記したもの以外の他の成分として、例えば、酸発生剤、高分子添加剤、重合禁止剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
【0107】
組成物(J)がその他の任意成分を含有する場合、組成物(J)におけるその他の任意成分の含有量は用いるその他の任意成分の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0108】
酸発生剤は、放射線の照射及び/又は加熱により酸を発生する化合物である。組成物(J)は、1種又は2種以上の酸発生剤を含有することができる。
【0109】
酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等をあげることができる。
【0110】
組成物(J)は、高分子添加剤を含有することで、基板や有機下層膜への塗工性や膜の連続性をより高めることができる。組成物(J)は、1種又は2種以上の高分子添加剤を含有することができる。
【0111】
高分子添加剤としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレン系高分子化合物、含フッ素系高分子化合物、非フッ素系高分子化合物等をあげることができる。
【0112】
(ポリ)オキシアルキレン系高分子化合物としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類、ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、炭素数12~14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3-メチル-1-ブチン-3-オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類、ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類、(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類等をあげることができる。
【0113】
含フッ素系高分子化合物としては、例えば、特開2011-89090号公報に記載された化合物をあげることができる。含フッ素系高分子化合物としては、例えば、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、2以上(好ましくは5以上)のアルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位とを含む化合物等をあげることができる。
【0114】
非フッ素系高分子化合物としては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐状のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(-(CHCHO)-構造を有する、n=1~17)(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー等に由来する繰り返し単位を1種又は2種以上含む化合物等をあげることができる。
【0115】
組成物(J)は、重合禁止剤を含有することで、組成物(J)の保存安定性を高めることができる。組成物(J)は、1種又は2種以上の重合禁止剤を含有することができる。
【0116】
重合禁止剤としては、例えば、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びそのアルミニウム塩等のニトロソ化合物等をあげることができる。
【0117】
組成物(J)は、界面活性剤を含有することで、基板や有機下層膜への塗工性や膜の連続性をより高めることができる。組成物(J)は、1種又は2種以上の界面活性剤を含有することができる。
【0118】
界面活性剤の市販品としては、例えば、「Newcol 2320」、「Newcol 714-F」、「Newcol 723」、「Newcol 2307」、「Newcol 2303」(以上、日本乳化剤(株))、「パイオニンD-1107-S」、「パイオニンD-1007」、「パイオニンD-1106-DIR」、「ニューカルゲンTG310」、「ニューカルゲンTG310」、「パイオニンD-6105-W」、「パイオニンD-6112」、「パイオニンD-6512」(以上、竹本油脂(株))、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール2502」(以上、日本エアープロダクツ(株))、「メガファックF171」、「同F172」、「同F173」、「同F176」、「同F177」、「同F141」、「同F142」、「同F143」、「同F144」、「同R30」、「同F437」、「同F475」、「同F479」、「同F482」、「同F562」、「同F563」、「同F780」、「同R-40」、「同DS-21」、「同RS-56」、「同RS-90」、「同RS-72-K」(以上、DIC(株))、「フロラードFC430」、「同FC431」(以上、住友スリーエム(株))、「アサヒガードAG710」、「サーフロンS-382」、「同SC-101」、「同SC-102」、「同SC-103」、「同SC-104」、「同SC-105」、「同SC-106」(以上、AGC(株))、「FTX-218」、「NBX-15」((株)ネオス)等をあげることができる。
【0119】
<レジスト下層膜形成用組成物の製造方法>
レジスト下層膜形成用組成物の製造方法は、オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせと、金属化合物と、溶媒とを混合する工程(以下、「混合工程」ともいう。)を含む。
【0120】
当該製造方法において、オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせ、有機酸、金属化合物、及び溶媒としては、レジスト下層膜形成用組成物におけるオルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせ、有機酸、金属化合物及び溶媒を好適に採用することができる。
【0121】
混合工程では、レジスト下層膜形成用組成物は、オルトエステル、有機酸又はこれらの組み合わせ、有機酸、金属化合物及び溶媒、並びに必要に応じて任意成分を所定の割合で混合する。その後、好ましくは、得られた混合物を孔径0.2μm以下のフィルター等でろ過することにより上記組成物を製造することができる。
【0122】
<レジスト下層膜>
本発明のレジスト下層膜は、当該レジスト下層形成組成物から形成される。当該レジスト下層膜は、保存安定性に優れる。
【0123】
<レジスト下層膜の形成方法>
本発明のレジスト下層膜は、基板に、直接又は間接に、当該レジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)を含むことができる。
【0124】
当該レジスト下層膜の形成方法によれば、上記塗工工程において当該レジスト下層膜形成用組成物を用いるため、保存安定性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【0125】
当該レジスト下層膜の形成方法は、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに含むことが好ましい。
【0126】
基板としては、例えば、シリコン基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、クロム基板、モリブデン基板、タングステン基板、銅基板、タンタル基板、チタン基板等の金属又は半金属基板等があげられ、これらの中でもシリコン基板が好ましい。上記基板は、窒化ケイ素膜、アルミナ膜、二酸化ケイ素膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜等が形成された基板でもよい。
【0127】
以下、各工程について説明する。
【0128】
[塗工工程]
【0129】
本工程では、基板に、直接又は間接に、当該レジスト下層膜形成用組成物を塗工する。上記塗工方法は回転塗工等で実施することができる。
【0130】
[加熱工程]
本工程では、上記塗工工程により形成された塗工膜を加熱する。これによりレジスト下層膜の形成が促進される。
【0131】
上記塗工膜の加熱は、通常、大気下で行われるが、窒素雰囲気下で行ってもよい。加熱における温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。上記温度の上限としては、600℃が好ましく、400℃がより好ましい。加熱における時間の下限としては、15秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、1,200秒が好ましく、600秒がより好ましい。
【0132】
形成されるレジスト下層膜の平均厚みとの下限としては、30nmが好ましく、50nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、3,000nmが好ましく、2,000nmがより好ましく、500nmがさらに好ましい。なお、平均厚みの測定方法は実施例の記載による。
【0133】
<半導体基板の製造方法>
当該半導体基板の製造方法は、
基板に、直接又は間接に、当該レジスト下層膜形成用組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、
上記塗工工程により形成された当該レジスト下層膜を有する基板に、直接又は間接に、レジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう)と、
を含む。
【0134】
当該半導体基板の製造方法によれば、上記塗工工程において保存安定性に優れる当該レジスト下層膜が形成されるため、良好なパターン形状を有する半導体基板を製造することができる。
【0135】
当該半導体基板の製造方法は、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う工程(以下、「エッチング工程」ともいう)とを含むことができる。
【0136】
当該半導体基板の製造方法は、必要に応じて、上記レジストパターン形成工程より前に、上記塗工工程により形成された当該レジスト下層膜を有する基板に、直接又は間接に、有機下層膜を形成する工程(以下、「有機下層膜形成工程」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0137】
当該半導体基板の製造方法は、必要に応じて、上記レジストパターン形成工程より前に、上記塗工工程により形成された当該レジスト下層膜を有する基板に、直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する工程(以下、「ケイ素含有膜形成工程」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0138】
以下、各工程について説明する。
【0139】
[塗工工程]
本工程では、基板に、直接又は間接に、当該レジスト下層膜形成用組成物を塗工する。本工程は、上述の当該レジスト下層膜の形成方法における塗工工程と同様である。
【0140】
[有機下層膜形成工程]
本工程では、当該レジスト下層膜を有する基板に、直接又は間接に、有機下層膜を形成する。
【0141】
有機下層膜は、有機下層膜形成用組成物の塗工等により形成することができる。有機下層膜を有機下層膜形成用組成物の塗工により形成する方法としては、例えば、有機下層膜形成用組成物を当該レジスト下層膜を有する基板に直接又は間接に塗工して形成された塗工膜を加熱や露光を行うことにより硬化等させる方法等をあげることができる。上記有機下層膜形成用組成物としては、例えば、JSR(株)の「HM8006」等を用いることができる。加熱や露光の諸条件については、用いる有機下層膜形成用組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0142】
[ケイ素含有膜形成工程]
本工程では、当該レジスト下層膜を有する基板に、直接又は間接に、ケイ素含有膜を形成する。
【0143】
当該レジスト下層膜を有する基板に間接にケイ素含有膜を形成する場合としては、例えば、当該レジスト下層膜上にレジスト下層膜の表面改質膜が形成された場合等をあげることができる。
【0144】
ケイ素含有膜は、ケイ素含有膜形成用組成物の塗工、化学蒸着(CVD)法、原子層堆積(ALD)等により形成することができる。ケイ素含有膜をケイ素含有膜形成用組成物の塗工により形成する方法としては、例えば、ケイ素含有膜形成用組成物を当該レジスト下層膜に、直接又は間接に、塗工して形成された塗工膜を、露光及び/又は加熱することにより硬化等させる方法等をあげることができる。上記ケイ素含有膜形成用組成物の市販品としては、例えば、「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」(以上、JSR(株)社製)等を用いることができる。化学蒸着(CVD)法又は原子層堆積(ALD)により、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜、アモルファスケイ素膜を形成することができる。
【0145】
[レジストパターン形成工程]
本工程では、当該レジスト下層膜に対し、直接又は間接に、レジストパターンを形成する。本工程を行う方法としては、例えば、レジスト組成物を用いる方法、ナノインプリント法を用いる方法、自己組織化組成物を用いる方法等をあげることができる。当該レジスト下層膜に間接にレジストパターンを形成する場合としては、例えば、上記半導体基板の製造方法が上記ケイ素含有膜形成工程を含む場合において、上記ケイ素含有膜上にレジストパターンを形成する場合等をあげることができる。
【0146】
上記レジスト組成物を用いる方法は、具体的には、形成されるレジスト膜が所定の厚みとなるようにレジスト組成物を塗工した後、プレベークすることによって塗工膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト膜を形成する。
【0147】
上記レジスト組成物としては、例えば、感放射線性酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とを含有するポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とを含有するネガ型レジスト組成物等をあげることができる。なお、本工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0148】
次に、選択的な放射線照射により上記形成されたレジスト膜を露光する。露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される感放射線性酸発生剤の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波、電子線、分子線、イオンビーム等の粒子線等をあげることができる。これらの中で、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、Krエキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)又は極端紫外線(波長13.5nm等、以下、「EUV」ともいう)がより好ましく、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVがさらに好ましい。
【0149】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるためポストベークを行うことができる。このポストベークの温度及び時間は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0150】
次に、上記露光されたレジスト膜を現像液で現像してレジストパターンを形成する。この現像は、アルカリ現像であっても有機溶媒現像であってもよい。現像液としては、アルカリ現像の場合、アンモニア、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性水溶液をあげることができる。これらの塩基性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類等の水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適量添加することもできる。また、有機溶媒現像の場合、現像液としては、例えば、上述の当該組成物の[B]溶媒として例示した種々の有機溶媒等をあげることができる。
【0151】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0152】
[エッチング工程]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとしたエッチングを行う。エッチングの回数としては1回でも、複数回、すなわちエッチングにより得られるパターンをマスクとして順次エッチングを行ってもよいが、より良好な形状のパターンを得る観点からは、複数回が好ましい。複数回のエッチングを行う場合、ケイ素含有膜、有機下層膜、レジスト下層膜及び基板の順に順次エッチングを行う。エッチングの方法としては、ドライエッチング、ウエットエッチング等をあげることができる。これらの中で、基板のパターンの形状をより良好なものとする観点から、ドライエッチングが好ましい。このドライエッチングには、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマ等が用いられる。上記エッチングにより、所定のパターンを有する半導体基板が得られる。
【0153】
ドライエッチングとしては、例えば、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。ドライエッチングに使用するエッチングガスとしては、マスクパターン、エッチングされる膜の元素組成等により適宜選択することができ、例えば、CHF、CF、C、C、SF等のフッ素系ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、O、O、HO等の酸素系ガス、H、NH、CO、CO、CH、C、C、C、C、C、C、HF、HI、HBr、HCl、NO、NH、BCl等の還元性ガス、He、N、Ar等の不活性ガス等をあげることができる。これらのガスは混合して用いることもできる。レジスト下層膜のパターンをマスクとして基板をエッチングする場合には、通常、フッ素系ガスが用いられる。
【実施例0154】
以下、実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0155】
本実施例における[A]化合物を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度、[A]化合物を含む混合物中の加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)及び膜の平均厚みは下記の方法により測定した。
【0156】
[[A]化合物を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度]
[A]化合物を含む混合物を0.5gを250℃で30分間焼成した後の残渣の質量を測定し、この残渣の質量を[A]化合物を含む混合物の質量で除することにより、[A]化合物を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度(質量%)を算出した。
【0157】
[重量平均分子量(Mw)]
GPCカラム(東ソー(株)の「AWM-H」2本、「AW-H」1本及び「AW2500」2本)を使用し、流量:0.3mL/分、溶出溶媒:N,N-ジメチルアセトアミドにLiBr(30mM)及びクエン酸(30mM)を添加したもの、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0158】
[レジスト下層膜の平均厚み]
レジスト下層膜の平均厚みは、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて、レジスト下層膜の中心を含む5cm間隔の任意の9点の位置で膜厚を測定し、それらの膜厚の平均値を算出した値である。
【0159】
<[A]化合物の合成>
[A]化合物の合成に用いた[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒、及び[C]溶媒を以下に示す。以下の合成例においては特に断りのない限り、「質量部」は使用した[M]化合物の質量を100質量部とした場合の値を意味する。また、「モル比」は使用した[M]化合物の物質量を1とした場合の値を意味する。下記表1中の脱水剤における「―」は、脱水剤を使用しなかったことを示す。[A]化合物を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度(質量%)を表1に併せて示す。
【0160】
[M]化合物として、以下の化合物を用いた。
M-1:テトラ-n-プロポキシジルコニウム(IV)
M-2:テトラ-n-ブトキシジルコニウム(IV)
M-3:テトライソプロポキシハフニウム(IV)
M-4:テトライソプロポキシチタン(IV)
M-5:ペンタエトキシタンタル(V)
【0161】
[X]化合物として、以下の化合物を用いた。
X-1:プロピオン酸
X-2:酪酸
X-3:イソ酪酸
X-4:メタクリル酸
X-5:2-エチルヘキサン酸
X-6:アセチルアセトン
X-7:ジエタノールアミン
【0162】
[B]溶媒として、以下の化合物を用いた。
B-1:n-プロピルアルコール
B-2:エタノール
B-3:1-ブタノール
B-4:イソプロパノール
【0163】
[C]溶媒として、以下の化合物を用いた。
C-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
C-2:プロピレングリコールモノエチルエーテル
C-3:シクロヘキサノン
C-4:2-プロパノール
C-5:メシチレン
【0164】
[合成例1-1]([A]化合物(A-1)の合成)
窒素雰囲気下、反応容器内において化合物(M-1)、溶媒(B-1)(40質量部)を投入した。上記反応容器において、50℃で攪拌しながら、化合物(X-1)(モル比5)を20分かけて滴下した。次いで、80℃で反応を3時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却により得られた沈殿物をろ別し、n-ヘキサン(100質量部)で洗浄したのち、真空乾燥することにより化合物(A-1)を得た。
【0165】
[合成例1-2]([A]化合物(A-2)の合成)
窒素雰囲気下、反応容器内において化合物(M-1)、溶媒(B-1)(200質量部)を投入した。上記反応容器において、50℃で攪拌しながら、化合物(X-2)(モル比5)を20分かけて滴下した。次いで、80℃で反応を3時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-1)900質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、溶媒(B-1)、反応により生成したアルコール、及び余剰の溶媒(C-1)を除去した。次いで、得られた溶液に脱水剤としてのオルトギ酸トリメチル45質量部を加え、40℃で1時間反応させた後、反応容器内を30℃以下に冷却した。この反応容器に溶媒(C-1)を225質量部加えた後、エバポレーターを用いて、反応により生成したアルコール類、エステル類、オルトギ酸トリメチル及び余剰の溶媒(C-1)を除去し、化合物(A-2)を含む混合物を得た。[A]化合物(A-2)を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度は、14質量%であった。
【0166】
[合成例1-10、1-14]([A]化合物(A-10)、(A-10)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒を使用した以外は、合成例1-1と同様にして、[A]化合物(A-10)、(A-10)を得た。
【0167】
[合成例1-2~1-9、1-11~1-13及び1-17~1-18]([A]化合物(A-2)~(A-9)、(A-11)~(A-13)及び(A-17)~(A-18)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒、[C]溶媒及び脱水剤を使用した以外は、合成例1-2と同様にして、[A]化合物(A-2)~(A-9)、(A-11)~(A-13)及び(A-17)~(A-18)を得た。
【0168】
[合成例1-15]([A]化合物(A-15)の合成)
窒素雰囲気下、反応容器内において化合物(M-4)を投入した。上記反応容器において、室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、化合物(X-6)(モル比2)を30分かけて滴下した。次いで、60℃で反応を2時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液を、溶媒(B-1)(900質量部)で希釈した。5上記反応容器内において、室温(25℃~30℃)で攪拌しながら、水(モル比2)を10分かけて滴下した。次いで、60℃で加水分解縮合反応を2時間実施した。加水分解縮合反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-2)1,000質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、水、イソプロパノール、反応により生成したアルコール、水及び余剰の溶媒(C-2)を除去して、化合物(A-15)を含む混合物を得た[A]化合物(A-15)を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度は、13質量%であった。
【0169】
[合成例1-16]([A]化合物(A-16)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の[M]化合物、[X]化合物、[B]溶媒及び[C]溶媒を使用した以外は、合成例1-15と同様にして、[A]化合物(A-16)を含む混合物を得た。
【0170】
窒素雰囲気下、反応容器内において化合物(M-2)、溶媒(B-3)(200質量部)を投入した。上記反応容器において、50℃で攪拌しながら、化合物(X-4)(モル比5)を20分かけて滴下した。次いで、80℃で反応を3時間実施した。反応終了後、反応容器内を30℃以下に冷却した。冷却した反応溶液に、溶媒(C-1)900質量部を加えた後、エバポレーターを用いて、溶媒(B-3)、反応により生成したアルコール、及び余剰の溶媒(C-1)を除去した。次に、得られた溶液に脱水剤としてのモレキュラーシーブス3Aを45質量部加え、23℃で24時間脱水処理を行った。モレキュラーシーブス3Aを濾過により除去し、化合物(A-18)を含む混合物を得た。[A]化合物(A-18)を含む混合物中の溶媒以外の成分の濃度は、13質量%であった。
【0171】
【表1】
【0172】
<組成物(J)の調製>
組成物(J)の調製に用いた[D]オルトエステル、[E]有機酸、[F]その他の任意成分を以下に示す。
【0173】
[D]オルトエステルとして、以下の化合物を用いた。
D-1:オルトギ酸トリメチル
D-2:オルトギ酸トリエチル
D-3:オルト酢酸トリメチル
D-4:オルト酢酸トリエチル
【0174】
[E]有機酸として、以下の化合物を用いた。
E-1:n-ブタン酸
E-2:イソブタン酸
E-3:メタクリル酸
E-4:2-エチルヘキサン酸
【0175】
[F]その他の任意成分として、以下の化合物を用いた。
F-1:4-メトキシフェノール
【0176】
[実施例1-1]組成物(J-1)の調製
下記表2に示すように、[A]化合物(A-1)10質量部に対して、[C]溶媒が87質量部、[D]オルトエステル(D-1)が3質量部となるように混合した。得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、組成物(J-1)を調製した。
【0177】
[実施例1-2]組成物(J-2)の調製
下記表2に示すように、[A]化合物(A-2)を含む混合物と[C]溶媒としての(C-1)とを、[A]化合物(A-2)中の溶媒以外の成分10質量部に対して、[C]溶媒が87質量部([A]化合物を含む混合物に含まれる[C]溶媒も含む)、[D]オルトエステル(D-1)3質量部となるように混合した。得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、組成物(J-2)を調製した。
【0178】
[実施例1-3~1-35]組成物(J-2)~(J-35)の調製
各成分の種類及び含有量を下記表2に示す通りとした以外は、実施例1-1又は実施例1-2と同様に操作して、組成物(J-2)~(J-35)を調製した。
【0179】
[比較例1-1及び1-2]組成物(j-1)及び(j-2)の調製
各成分の種類及び含有量を下記表2に示す通りとした以外は、実施例1-2と同様に操作して、組成物(j-1)及び(j-2)を調製した。
【0180】
【表2】
【0181】
<評価>
上記調製した各組成物(J)を用い、塗工性の保存安定性、溶解性の保存安定性、膜厚の保存安定性、酸素系ガスエッチング耐性を下記方法に従って評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0182】
[塗工性の保存安定性]
組成物(J)の保存安定性を時間経過による塗工性の差異により評価した。上記調製した直後の組成物(J)(T=0)をシリコンウェハ(基板)上にスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)を用い、1,500rpm及び30秒間の条件で回転塗工法により塗工した後、得られた塗工膜を90℃で60秒間加熱することによりレジスト下層膜を形成した。塗工性について、形成されたレジスト下層膜を光学顕微鏡で観察し、塗工ムラが見られない場合は「A」(良好)と、塗工ムラが見られる場合は「B」(不良)と評価した。また、上記塗工性を評価した組成物を20℃で60日間保存したもの(T=60)について、上記同様に塗工性について評価した。
【0183】
[溶解性の保存安定性]
上記調製した直後(T=0)の組成物(J)を20℃及び5℃で60日間保存したものがともに透明である場合は、溶解性の保存安定性は、「A」(良好)と、20℃で60日間保存したものは透明であるが5℃で60日間保存したものは濁っている場合は「B」(やや良好)と、20℃及び5℃で60日間保存したもののいずれもが濁っている場合は「C」(不良)と評価した。
【0184】
[膜厚の保存安定性]
組成物(J)の膜厚の保存安定性を時間経過による膜厚の差異により評価した。上記調製した直後の組成物(J)(T=0)をシリコンウェハ(基板)上にスピンコーター(東京エレクトロン(株)の「CLEAN TRACK ACT8」)を用い、1,500rpm及び30秒間の条件で回転塗工法により塗工した後、得られた塗工膜を450℃で60秒間加熱することによりレジスト下層膜(a0)を形成し、その平均厚み(T0)を測定した。上記膜厚を評価した組成物を20℃で60日間保存したもの(T=60)について、上記同様にレジスト下層膜(a1)を形成し、その平均厚み(T1)を測定し、膜厚変化率(%)を下記式により求め、膜厚の保存安定性の指標とした。
膜厚変化率(%)=|T1-T0|×100/T0
【0185】
膜厚の保存安定性は、膜厚変化率が1.7%未満の場合は「A」(良好)と、1.7%以上の場合は「B」(不良)評価した。
【0186】
[酸素系ガスエッチング耐性]
12インチシリコンウェハ上に、上記調製した直後の組成物(J)(T=0)及び上記調製した組成物を、それぞれ、20℃で60日間保存したもの(T=60)を上記スピンコーターによる回転塗工法により塗工し、450℃で60秒間加熱した後、23℃で30秒間冷却することにより平均厚み30nmのレジスト下層膜を形成した。
【0187】
上記レジスト下層膜が形成された基板を、エッチング装置(東京エレクトロン(株)の「Tactras-Vigus」)を用いて、O=400sccm、PRESS.=25mT、HF RF(プラズマ生成用高周波電力)=200W、LF RF(バイアス用高周波電力)=0W、DCS=0V、RDC(ガスセンタ流量比)=50%、60secの条件にてエッチング処理し、処理前後の平均膜厚からエッチング速度(nm/分)を算出し、酸素系ガスエッチング耐性を評価した。酸素系ガスエッチング耐性は、上記エッチング速度が1.0nm/分未満の場合は「A」(良好)と、1.0nm/分以上3.0nm/分未満の場合は「B」(やや良好)と、3.0nm/分以上の場合は「C」(不良)評価した。
【0188】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物により、塗工性の保存安定性、溶解性の保存安定性、膜厚の保存安定性及び酸素系ガスエッチング耐性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。本発明の半導体基板の製造方法により、半導体基板を好適に製造することができる。