(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100642
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】外壁タイルの修復方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20220629BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220629BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
E04G23/02 H
E04F13/08 101S
E04F13/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214737
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】500472187
【氏名又は名称】パル・ユニット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】白井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅憲
【テーマコード(参考)】
2E110
2E176
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AA51
2E110AA52
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA02
2E110BA12
2E110BB05
2E110BB33
2E110BC04
2E110CA03
2E110DA12
2E110DC22
2E110GB06W
2E110GB43Z
2E110GB44Z
2E176AA05
2E176BB25
(57)【要約】
【課題】補修シートの美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる外壁タイルの修復方法を提供すること。
【解決手段】外壁タイルの修復方法は、建築物の壁面に貼り付けられた陶磁製の外壁タイルであって、修復する外壁タイルの表面を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程により洗浄された前記外壁タイルの表面に一液性樹脂系の接着剤を塗布して、前記外壁タイルの表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、前記外壁タイルの前記接着剤層の表面に、前記外壁タイルと略同一形状の補修シート2であって、一方の面に粘着剤層30が形成され、他方の面に塗膜層20が形成された補修シート2の粘着剤層30を貼り付ける貼り付け工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に貼り付けられた陶磁製の外壁タイルであって、修復する外壁タイルの表面を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程により洗浄された前記外壁タイルの表面に一液性樹脂系の接着剤を塗布して、前記外壁タイルの表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
前記外壁タイルの前記接着剤層の表面に、前記外壁タイルと略同一形状の補修シートであって、一方の面に粘着剤層が形成され、他方の面に塗膜層が形成された補修シートの前記粘着剤層を貼り付ける貼り付け工程と、
を含む外壁タイルの修復方法。
【請求項2】
建築物の壁面に貼り付けられた陶磁製の外壁タイルであって、修復する外壁タイルの表面を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程により洗浄された前記外壁タイルの表面に一液性樹脂系の接着剤を塗布して、前記外壁タイルの表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
前記外壁タイルの前記接着剤層の表面に、前記外壁タイルと略同一形状の補修シートであって、一方の面に粘着剤層が形成され、他方の面に塗膜層が形成された補修シートの前記粘着剤層を部分的に貼り付け、前記外壁タイルと前記補修シートとの位置合わせを行いながら、前記補修シートを前記外壁タイルに貼り付ける貼り付け工程と、
を含む外壁タイルの修復方法。
【請求項3】
前記貼り付け工程の後、前記補修シートを押圧して、前記外壁タイルの表面に前記補修シートを密着させる仕上げ工程を含む請求項1又は2に記載の外壁タイルの修復方法。
【請求項4】
前記一液性樹脂系は、ビフェニールA型エポキシ樹脂を、キシレン、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈化した溶液である請求項1から3のいずれかに記載の外壁タイルの修復方法。
【請求項5】
前記補修シートは、アルミシートを基材とする請求項1から4のいずれかに記載の外壁タイルの修復方法。
【請求項6】
修復する前記外壁タイルは、変色、傷、ひび割れ、欠け及びアンカー穴跡のうち、少なくとも1つを有する請求項1から5のいずれかに記載の外壁タイルの修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁面に貼り付けられた外壁タイルの修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁面に敷き詰められた外壁タイルには、経年により変色、傷、ひび割れ、欠け等の外観不良が生じるため、その都度修復が必要となる。既設の外壁タイルを修復する場合、例えば、外壁タイルにひび割れが生じた場合には、ひび割れの箇所に充填剤を注入したり、充填剤を塗り込んだりすることが行われている。しかし、このような修復工事では、修復箇所が跡形として残るため、建築物の美観を損なってしまう。これを解決するため、既存の外壁タイルの修復跡の表面に、外壁タイルの模様や色彩と近似した塗膜層を有する補修シートを貼り付ける修復方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記修復方法は、既設の外壁タイルを同じ意匠の予備タイルに張り替える方法に比べて簡便で低コストではあるが、貼り付けた補修シートに位置ずれが生じた場合、位置ずれの修正が難しい。とくに、補修シートの貼り付け作業に、後述するブランコを用いた場合、作業者の手元が不安定になりやすいため、経験の少ない作業者のみならず、熟練した作業者であっても、補修シートを外壁タイルの輪郭と一致するように貼り付けることが難しい。そのため、補修シートの美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる補修方法が要望されている。
【0005】
本発明の目的は、補修シートの美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる外壁タイルの修復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、建築物の壁面に貼り付けられた陶磁製の外壁タイルであって、修復する外壁タイルの表面を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程により洗浄された前記外壁タイルの表面に一液性樹脂系の接着剤を塗布して、前記外壁タイルの表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、前記外壁タイルの前記接着剤層の表面に、前記外壁タイルと略同一形状の補修シートであって、一方の面に粘着剤層が形成され、他方の面に塗膜層が形成された補修シートの前記粘着剤層を貼り付ける貼り付け工程と、を含む外壁タイルの修復方法に関する。
【0007】
第2の発明は、建築物の壁面に貼り付けられた陶磁製の外壁タイルであって、修復する外壁タイルの表面を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程により洗浄された前記外壁タイルの表面に一液性樹脂系の接着剤を塗布して、前記外壁タイルの表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、前記外壁タイルの前記接着剤層の表面に、前記外壁タイルと略同一形状の補修シートであって、一方の面に粘着剤層が形成され、他方の面に塗膜層が形成された補修シートの前記粘着剤層を部分的に貼り付け、前記外壁タイルと前記補修シートとの位置合わせを行いながら、前記補修シートを前記外壁タイルに貼り付ける貼り付け工程と、を含む外壁タイルの修復方法に関する。
【0008】
上記発明において、前記貼り付け工程の後、前記補修シートを押圧して、前記外壁タイルの表面に前記補修シートを密着させる仕上げ工程を含めてもよい。
【0009】
上記発明において、前記一液性樹脂系は、ビフェニールA型エポキシ樹脂を、キシレン、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈化した溶液であってもよい。
【0010】
上記発明において、前記補修シートは、アルミシートを基材としてもよい。
【0011】
上記発明において、修復する前記外壁タイルは、変色、傷、ひび割れ、欠け及びアンカー穴跡のうち、少なくとも1つを有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る外壁タイルの修復方法によれば、補修シートの美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】保護シート付補修シート1の層構成を示す概略断面図である。
【
図2】既存の外壁タイルに補修シート2を貼り付ける作業の様子を示す概念図である。
【
図3】(A)及び(B)は、外壁タイル3及び洗浄工程を説明する図である。
【
図4】(A)及び(B)は、外壁タイル3に対する接着剤層形成工程を説明する図である。
【
図5】保護シート付補修シート1から保護シート40を剥離する様子を示す図である。
【
図6】(A)及び(B)は、外壁タイル3に対する補修シート2の貼り付け工程を説明する図である。
【
図7】(A)~(C)は、外壁タイル3に貼り付けた補修シート2の位置ずれを説明する図である。
【
図8】外壁タイル3に貼り付けた補修シート2に対する仕上げ工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る外壁タイルの修復方法の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
【0015】
図1は、保護シート付補修シート1の層構成を示す概略断面図である。
図1に示すように、保護シート付補修シート1は、基材10、塗膜層20及び粘着剤層30からなる補修シート2と、保護シート40とを備えている。
なお、本明細書では、補修シート2に保護シート40が積層されている形態を「保護シート付補修シート1」といい、保護シート付補修シート1から保護シート40が剥離された形態を「補修シート2」という。また、修復のために補修シート2を貼り付ける既設の外壁タイル3を「外壁タイル3」ともいう。
【0016】
基材10は、補修シート2のベースとなる部材である。基材10としては、例えば、アルミシート、プラスチックシート等を用いることができる。これらの材料は、それぞれ単独で使用してもよいが、アルミシートとプラスチックシートとを組み合わせた積層体としてもよい。本実施形態では、基材10としてアルミシートを用いる例について説明するが、基材10としてプラスチックシートを用いる場合には、例えば、ポリ塩化ビニルシートを用いることができる。基材10の厚みは、特に制限されないが、基材10としてアルミシートを用いた場合には、例えば、0.1mm程度である。
【0017】
塗膜層20は、基材10の表側(
図1では、上側)に形成される層である。塗膜層20は、外壁タイル3(
図3参照)の模様や色彩と近似した意匠となるように、複数回の塗り重ねにより形成される。塗膜層20は、例えば、アクリルシリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の樹脂塗料に、色彩の元となる色彩の原料を混ぜることにより作製することができる。色彩の元となる原料として、例えばトナーがある。各種の色のトナーを樹脂塗料に混ぜることにより、様々な色の樹脂塗料を作製することができる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の塗膜層20は、第1工程塗膜層21、第2工程塗膜層22、第3工程塗膜層23、第4工程塗膜層24及び第5工程塗膜層25により構成されている。第1工程塗膜層21~第5工程塗膜層25は、プライマー、各種の色彩を含む樹脂塗料等を、例えば、スプレーガンで吹き付けることにより形成することができる。より具体的には、塗膜層20は、前述した特許文献1(特許第4778979号公報)に開示された塗膜形成方法により作製することができる。
【0019】
粘着剤層30は、基材10の裏面側(
図1では、下側)に形成される層である。粘着剤層30は、例えば、粘着剤組成物の硬化物により形成される。粘着剤組成物は、例えば、主剤としてのアクリル系樹脂と、硬化剤と、を含有する。好ましいアクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させたアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、粘着剤層30は、基材10及び外壁タイル3に実用上問題とならない程度に貼り合せできる粘着力を有していればよく、アクリル系樹脂に限らず、どのような材料で形成してもよい。なお、
図1と、後述する
図5、
図6及び
図8では、粘着剤層30にハッチングを付している。
【0020】
保護シート40は、粘着剤層30に仮積層される剥離シートである。保護シート40は、補修シート2を外壁タイル3に貼り合せる際に、粘着剤層30を露出させるために、保護シート付補修シート1から剥離される。保護シート40としては、例えば、シリコン離型タイプのポリエチレンテレフタレート(PET)、未処理のポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンのほか、上質紙、ポリエチレン層等を含む積層構成のセパレータ等が挙げられる。
上述した保護シート付補修シート1は、外壁タイル3とほぼ同一形状となるように作製される。例えば、ロールに巻き取られた保護シート付補修シート1をロールから引き出しながら、外壁タイル3の1つ分に相当する寸法に連続的に切断するようにしてもよい。
【0021】
図2は、既存の外壁タイルに補修シート2を貼り付ける作業の様子を示す概念図である。
外壁タイルの修復は、主に建築物の上層部分(地上数メートルから数十メートル)の外壁タイルに対して行われることも多い。建築物の上層部分は、下層部分に比べて直射日光が当たりやすく、雨、風、雪等にも晒される。また、建築物の上層部分は、地震等による揺れの影響を受けやすく、壁面に飛来物が衝突することもあり得る。そのため、建築物の上層部分の外壁タイルには、下層部分に比べて変色、傷、ひび割れ、欠け等が発生しやすい。一方、外壁タイルの修復は、例えば、
図2に示すような形態で行われることが多い。
図2は、作業者PがブランコSに座りながら、外壁タイル3の表面に接着剤(後述)を塗布する様子を示している。ブランコによる作業は、ゴンドラや足場を設置する場合に比べて工事費用が安くなるうえ、隣接する建築物との間が狭い場合でも作業がしやすいというメリットがある。
【0022】
しかし、ブランコは、屋上から垂らしたロープに取り付けられるため、ゴンドラや足場を使った作業に比べて、作業者の姿勢、特に手元が不安定になりやすい。そのため、ブランコによる建築物の上層部分での作業には、外壁タイルに貼り付けた補修シートに位置ずれが生じやすいという特有の課題がある。後述するように、本実施形態の外壁タイルの修復方法によれば、上記のような不安定な作業環境下においても、補修シートの美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる。
【0023】
次に、本実施形態の外壁タイルの修復方法について説明する。
図3~
図8は、本実施形態における外壁タイルの修復方法を説明する図である。
図3(A)及び(B)は、外壁タイル3及び洗浄工程を説明する図である。
図4(A)及び(B)は、外壁タイル3に対する接着剤層形成工程を説明する図である。
図5は、保護シート付補修シート1から保護シート40を剥離する様子を示す図である。
図6(A)及び(B)は、外壁タイル3に対する補修シート2の貼り付け工程を説明する図である。
図7(A)~(C)は、外壁タイル3に貼り付けた補修シート2の位置ずれを説明する図である。
図8は、外壁タイル3に貼り付けた補修シート2に対する仕上げ工程を説明する図である。
【0024】
本実施形態の外壁タイルの修復方法では、
図3(A)及び(B)に示すように、ひび割れの発生した外壁タイル3を修復する例について説明するが、修復する外壁タイル3の外観不良は、変色、傷、欠け(部分的な剥がれ)等であってもよい。外壁タイル3に傷がある場合は、その傷が埋まるように充填剤を塗布し、表面が平坦面となるように成形する。また、外壁タイル3に欠けがある場合は、欠けた部分をパテで成形することにより、元の形状に復元する。
なお、本実施形態において、修復する外壁タイル3は、陶器製又は磁器製(陶磁製)であるが、これに限らず、外壁タイル3は、例えば、樹脂製であってもよい。
【0025】
(洗浄工程)
図3(A)及び(B)は、補修シート2を貼り付ける外壁タイルの一例として、ひび割れ部分が充填剤3aにより補修された外壁タイル3を示している。
図3において、(A)は外壁タイル3の側面図、(B)は外壁タイル3の平面図である。なお、外壁タイル3は、実際には壁面に埋め込まれ、且つ、規則的に敷き詰められている。
図3(A)に示すように、補修された外壁タイル3の表面(図中、上側の面)は、ほぼ平坦な面となっている。
【0026】
洗浄工程においては、
図3に示すようなひび割れ部分が補修された外壁タイル3の表面を洗浄する。外壁タイル3の洗浄は、例えば、高圧洗浄機により高圧の水を吹き付けてもよいし、外壁用の洗浄剤を使って手作業で行ってもよい。なお、洗浄工程は、ひび割れ等の発生した外壁タイル3を補修する前に行ってもよい。この場合、補修後に、外壁タイル3の表面に残った破片、塵等を除去することが望ましい。
【0027】
(接着剤層形成工程)
次に、
図4(A)及び(B)に示すように、洗浄工程により洗浄された外壁タイル3の表面に、一液性樹脂系の接着剤を塗布して、外壁タイル3の表面に接着剤層50を形成する。一液性樹脂系の接着剤としては、例えば、一液性エポキシ樹脂を用いることができる。より具体的には、ビフェニールA型エポキシ樹脂を、キシレン、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈化した溶液(混合物)を用いることができる。この接着剤の各成分の含有量は、例えば、ビフェニールA型エポキシ樹脂が20~30%、キシレンが50%、メチルエチルケトンが14.2%、トルエンが7.7%である。接着剤層形成工程では、上記接着剤(溶液)を、例えば、刷毛により外壁タイル3の表面に塗布する。一液性エポキシ樹脂の接着剤は、速乾性であるため、外壁タイル3の表面に塗布した後、すぐに乾燥状態となる。なお、
図4と、後述する
図6及び
図8では、接着剤層50にハッチングを付している。
【0028】
(貼り付け工程)
次に、
図5に示すように、保護シート付補修シート1から保護シート40を剥離する。保護シート付補修シート1から保護シート40を剥離することにより、粘着剤層30が露出した補修シート2を得ることができる。続いて、
図6(A)に示すように、補修シート2を、外壁タイル3の輪郭と一致するように貼り付ける。このとき、
図6(B)に示すように、補修シート2の一部分(例えば、中央部分)を外壁タイル3の表面に貼り付けることが好ましい。補修シート2の全部(全面)を外壁タイル3の表面に一度に貼り付けた場合、後述する理由により、補修シート2の位置ずれを修正しにくくなるためである。
【0029】
本実施形態の補修シート2は、裏面側に粘着剤層30が形成されているため、補修シート2の一部分を外壁タイル3の表面に貼り付けることにより、外壁タイル3の表面に形成された接着剤層50と粘着剤層30との間に生じる接着力により、補修シート2を外壁タイル3に仮止めすることができる。一方、裏面側に粘着剤層が形成されていない補修シートの場合、その一部分を外壁タイル3の表面に貼り付けたとしても、外壁タイル3と補修シートとの間に生じる接着力が弱いため、補修シートを外壁タイル3に仮止めすることが出来ないか、出来たとしても、すぐに剥がれ落ちてしまう。これに対して、本実施形態の補修シート2は、その一部分を貼り付けることにより外壁タイル3に仮止めすることができるため、作業者は、外壁タイル3に補修シート2を仮止めしたまま、補修シート2の全体を外壁タイル3に貼り付けることができる。
【0030】
上述のように、補修シート2は、一部分を外壁タイル3に仮止めできるため、補修シート2を外壁タイル3に仮止めしたときに、外壁タイル3の輪郭と一致している場合には、そのまま補修シート2の全体を外壁タイル3に貼り付けることができる。一方、補修シート2の一部分を外壁タイル3に貼り付けた際、補修シート2の粘着剤層30と外壁タイル3の接着剤層50とが接触した部分では、補修シート2の粘着剤層30と外壁タイル3の接着剤層50とが、互いの層に含まれる溶剤により一時的に溶解した状態となる。そのため、補修シート2と外壁タイル3とが接触している部分の粘着剤層30と接着剤層50とが完全に固着するまでの間であれば、外壁タイル3に仮止めした補修シート2の位置ずれを修正することができる。なお、補修シート2の一部分を外壁タイル3に仮止めせずに、全部(全面)を外壁タイル3に貼り付けてしまうと、粘着剤層30と接着剤層50との溶解により生じる粘性が高くなりすぎるため、補修シート2の位置ずれが修正しにくくなる。
【0031】
外壁タイル3の表面に補修シート2を貼り付けて仮止めしたときに、例えば、
図7(A)に示すように、外壁タイル3に対して補修シート2が傾いている場合には、補修シート2を矢印方向に回転させることにより、補修シート2の位置ずれを修正することができる。また、
図7(B)に示すように、外壁タイル3に対して補修シート2が水平方向(図中、横方向)や垂直方向(図中、縦方向)にずれている場合は、補修シート2をそれぞれ矢印方向に移動することにより、外壁タイル3に対する補修シート2の位置ずれを修正することができる。
図7(B)では、外壁タイル3に対して補修シート2が水平方向と垂直方向にそれぞれ位置ずれしている様子を示している。なお、
図7(A)及び(B)では、外壁タイル3と補修シート2とを区別しやすくするため、外壁タイル3の輪郭を太線で示している。外壁タイル3に仮止めした補修シート2の位置ずれの修正は、粘着剤層30と接着剤層50とが完全に固着するまでの間であれば、繰り返し行うことができる。そのため、
図2に示すような不安定な作業環境下においても、作業者は、補修シート2の美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる。
【0032】
なお、実際の貼り付け工程では、
図7(A)及び(B)に示す例に限らず、様々な方向に補修シート2の位置ずれが生じる。しかし、本実施形態の補修シート2においては、外壁タイル3に対してどのような位置ずれが生じても、粘着剤層30と接着剤層50とが完全に固着するまでの間であれば、補修シート2を外壁タイル3の輪郭と一致するように移動することにより、位置ずれを簡単に修正することができる。
外壁タイル3に対する補修シート2の位置ずれを修正した後、補修シート2の全体を外壁タイル3に貼り付けることにより、貼り付け工程が完了する。
【0033】
(仕上げ工程)
次に、
図8に示すように、貼り付けた補修シート2の上をハンドローラ60で押圧して、補修シート2を外壁タイル3の表面に密着させる。本実施形態の補修シート2は、延性に優れたアルミシートを基材10としているため、補修シート2を外壁タイル3の表面に均一に密着させることができる。また、ハンドローラ60に、布やゴムシート等を巻き付けて押圧することにより、補修シート2と外壁タイル3との隙間を少なくできるため、補修シート2を外壁タイル3の表面により均一に密着させることができる。このほか、指先に布やゴムシート等を巻き付けて押圧するようにしてもよい。
【0034】
上述した仕上げ工程を完了させることにより、外壁タイル3の修復が完了する。この修復により、外見的には、外壁タイル3のひび割れ部分が基材10(アルミシート)で覆われると共に、実質的に既存の外壁タイル3と同じ意匠を再現することができる。
なお、補修する外壁タイル3が複数ある場合には、対象となる各外壁タイル3について、それぞれ上述した洗浄工程~仕上げ工程を実施すればよい。
【0035】
上述した本実施形態の外壁タイルの修復方法によれば、補修シート2の一部分を外壁タイル3に補修シート2を貼り付けて仮止めすることができる。そのため、作業者は、仮止めした補修シート2が外壁タイル3の輪郭と一致している場合には、補修シート2を外壁タイル3に仮止めしたまま、補修シート2の全体を外壁タイル3に貼り付けることができる。また、仮止めした補修シート2が外壁タイル3の輪郭と一致していない場合でも、仮止めした補修シート2の粘着剤層30と外壁タイル3の接着剤層50とが完全に固着するまでの間であれば、補修シート2の位置ずれを修正することができる。これによれば、経験の少ない作業者が貼り付けを行った場合や、作業者が不安定な作業環境下で貼り付けを行った場合でも、補修シート2の位置ずれの修正を簡単に行うことができるため、補修シート2の美観に優れた貼り付けを容易に行うことができる。
【0036】
本実施形態の外壁タイルの修復方法によれば、補修シート2を外壁タイル3に貼り付けた後、補修シート2に押圧力を付与しながら、外壁タイル3の表面に補修シート2を密着させる仕上げ工程を実施するため、補修シート2を外壁タイル3の表面により密着させることができる。
本実施形態の外壁タイルの修復方法によれば、一液性樹脂系の接着剤として、ビフェニールA型エポキシ樹脂を、キシレン、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈化した溶液を用いている。この接着剤は、速乾性であるため、補修シート2の貼り付けを、より速やかに行うことができる。
本実施形態の外壁タイルの修復方法によれば、延性に優れたアルミシートを基材10としているため、補修シート2を外壁タイル3の表面により均一に密着させることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0038】
(変形形態)
実施形態では、ひび割れの発生した外壁タイル3を修復する例について説明したが、修復する外壁タイル3の外観不良は、変色、傷、欠け等のほか、アンカー穴の跡であってもよい。アンカー穴の跡とは、足場継ぎ工事により建築物の壁面にアンカーを装填するために開けられた穴の跡である。一般に、ビル等の建築物の壁面で修復作業を行う場合、建築物の周囲に足場を設置する。その際、足場を確実に固定するために、建築物の壁面に穴を開けてアンカーボルトを装填し、連結用の部材を介して足場と壁面とを連結する。このように、建築物の壁面に穴を開けた場合、作業後に穴の跡が残るため、キャップで穴を塞ぐことが行われている。しかし、壁面に貼り付けられた外壁タイルの模様等によっては、キャップの位置が目立ってしまい、建築物の美観が悪化する。このような場合に、キャップの上に修復シートを貼り付けることにより、建築物の美観が悪化することを抑制することができる。
【0039】
また、外壁タイルに浮きが生じた場合に、外壁タイルに穴を開けてアンカーピンを装填して、外壁タイルの浮きを補修することも行われている。この場合も、作業後にアンカーピンの穴が残るため、その穴をキャップで塞いだ後に、キャップの上に修復シートを貼り付けることにより、建築物の美観が悪化することを抑制することができる。
上述のように、本発明に係る外壁タイルの修復方法は、外壁タイルに生じた変色、傷、ひび割れ、欠け等の補修だけでなく、外壁タイルに残ったアンカー穴が見えないようにする補修にも適用することができる。
【0040】
実施形態では、塗膜層20を5層(第1工程塗膜層21~第5工程塗膜層25)とした例について説明したが、これに限定されない。塗膜層20は、6層以上であってもよいし、単層であってもよい。また、塗膜層20の最外層に、表面保護層を設けてもよい。
実施形態では、一液性樹脂系の接着剤として、ビフェニールA型エポキシ樹脂を、キシレン、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈化した溶液を用いる例について説明したが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0041】
1 保護シート付補修シート
2 補修シート
3 外壁タイル
10 基材
20 塗膜層
30 粘着剤層
40 保護シート
50 接着剤層