(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100685
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】気密材及び建物の気密構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20220629BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
E04B1/76 400B
E04B9/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214804
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】関谷 佳子
(72)【発明者】
【氏名】梅本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林本 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DC02
2E001DD01
2E001FA01
2E001FA15
2E001GA15
2E001HD11
2E001LA16
(57)【要約】
【課題】 建物の気密性を高めることが可能な気密材、及び、建物の気密構造を提供する。
【解決手段】 気密材1及び建物の気密構造である。気密材1は、プラスチックダンボールで形成された基材を含む。基材14は、変形容易部20と、変形容易部20に対して第2方向の一方側に位置する第1部分21と、変形容易部20に対して第2方向の他方側に位置する第2部分22とを含む。変形容易部20は、折り曲げラインL1上で基材14を貫通する複数の切断部25と、切断部25の間に位置する非切断の曲げ剛性低下部26とを含む。曲げ剛性低下部26は、第1部分21を折り曲げラインL1で折り曲げたときに、第1部分21の切断部25に面する切断端面21Cが折り曲げラインL1よりも第2部分の側に位置するように、折り曲げラインL1よりも第2部分22側に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の梁と天井形成材との間に配されて、前記建物の気密性を向上させるための気密材であって、
互いに平行に延びるリブで仕切られた中空部を内部に複数備えるプラスチックダンボールで形成された面材状の基材を含み、
前記基材は、前記基材の長手方向に対応する第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを規定し、
前記プラスチックダンボールの前記リブは、前記第2方向に延びており、
前記基材は、
前記基材を前記第1方向と略平行な折り曲げラインで折り曲げるための変形容易部と、
前記変形容易部に対して前記第2方向の一方側に位置し、かつ、前記梁の下面に当接させるための第1部分と、
前記変形容易部に対して前記第2方向の他方側に位置し、かつ、前記梁の下面から前記天井形成材側に垂下させるための第2部分とを含み、
前記変形容易部は、前記折り曲げライン上で前記基材を貫通する複数の切断部と、前記切断部の間に位置する非切断の曲げ剛性低下部とを含み、
前記曲げ剛性低下部は、前記第1部分を前記折り曲げラインで折り曲げたときに、前記第1部分の前記切断部に面する切断端面が前記折り曲げラインよりも前記第2部分の側に位置するように、前記折り曲げラインよりも前記第2部分側に形成されている、
気密材。
【請求項2】
前記第2方向において、前記曲げ剛性低下部と、前記折り曲げラインとの間の距離は、前記基材の厚さと略等しい、請求項1に記載の気密材。
【請求項3】
前記天井形成材は、野縁を含み、
前記第2部分の前記第1部分と反対側の縁部には、前記野縁を嵌め込み可能な開口縁を備える、請求項1又は2に記載の気密材。
【請求項4】
前記開口縁の周囲には、開口面積を大きくするためのスリットが形成されている、請求項3に記載の気密材。
【請求項5】
前記スリットは、前記開口縁から前記第1方向に沿って延びる、請求項4に記載の気密材。
【請求項6】
前記スリットは、前記第2方向に隔設されている、請求項4又は5に記載の気密材。
【請求項7】
前記スリットは、前記開口縁の前記第1方向の両側に設けられる、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の気密材。
【請求項8】
前記第1部分は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の気密材。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の気密材が、前記梁と前記天井形成材との間に配されており、
前記第1部分は、前記折り曲げラインで折り曲げられて、前記梁の下面に当接する、
建物の気密構造。
【請求項10】
前記第1部分の前記第2部分の反対側の縁部は、前記建物の屋外側を向いている、請求項9記載の建物の気密構造。
【請求項11】
前記第2部分は、前記天井形成材の上面に当接可能な当接部が形成されており、
前記第2部分の前記第1部分と反対側の縁部は、前記建物の屋外側を向いている、請求項9又は10に記載の建物の気密構造。
【請求項12】
前記天井形成材は、野縁を含み、
前記第2部分の前記第1部分と反対側の縁部には、前記野縁が嵌め込まれる、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の建物の気密構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密材及び建物の気密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気調和機(エアコン)の負荷を低減するために、建物の高気密化が進んでいる。関連する技術としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の梁と天井形成材との間には、建物の気密性を低下させる隙間が形成されることがある。したがって、建物の気密性を高めるには、前記隙間を低減させて、外気の進入を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、建物の気密性を高めることが可能な気密材、及び、建物の気密構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、建物の梁と天井形成材との間に配されて、前記建物の気密性を向上させるための気密材であって、互いに平行に延びるリブで仕切られた中空部を内部に複数備えるプラスチックダンボールで形成された面材状の基材を含み、前記基材は、前記基材の長手方向に対応する第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを規定し、前記プラスチックダンボールの前記リブは、前記第2方向に延びており、前記基材は、前記基材を前記第1方向と略平行な折り曲げラインで折り曲げるための変形容易部と、前記変形容易部に対して前記第2方向の一方側に位置し、かつ、前記梁の下面に当接させるための第1部分と、前記変形容易部に対して前記第2方向の他方側に位置し、かつ、前記梁の下面から前記天井形成材側に垂下させるための第2部分とを含み、前記変形容易部は、前記折り曲げライン上で前記基材を貫通する複数の切断部と、前記切断部の間に位置する非切断の曲げ剛性低下部とを含み、前記曲げ剛性低下部は、前記第1部分を前記折り曲げラインで折り曲げたときに、前記第1部分の前記切断部に面する切断端面が前記折り曲げラインよりも前記第2部分の側に位置するように、前記折り曲げラインよりも前記第2部分側に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記気密材において、前記第2方向において、前記曲げ剛性低下部と、前記折り曲げラインとの間の距離は、前記基材の厚さと略等しくてもよい。
【0008】
本発明に係る前記気密材において、前記天井形成材は、野縁を含み、前記第2部分の前記第1部分と反対側の縁部には、前記野縁を嵌め込み可能な開口縁を備えてもよい。
【0009】
本発明に係る前記気密材において、前記開口縁の周囲には、開口面積を大きくするためのスリットが形成されていてもよい。
【0010】
本発明に係る前記気密材において、前記スリットは、前記開口縁から前記第1方向に沿って延びていてもよい。
【0011】
本発明に係る前記気密材において、前記スリットは、前記第2方向に隔設されていてもよい。
【0012】
本発明に係る前記気密材において、前記スリットは、前記開口縁の前記第1方向の両側に設けられていてもよい。
【0013】
本発明に係る前記気密材において、前記第1部分は、前記梁の下面に固着するための固着部が形成されていてもよい。
【0014】
本発明は、上記いずれかに記載の気密材が、前記梁と前記天井形成材との間に配された建物の気密構造であって、前記第1部分は、前記折り曲げラインで折り曲げられて、前記梁の下面に当接することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る前記建物の気密構造において、前記第1部分の前記第2部分の反対側の縁部は、前記建物の屋外側を向いていてもよい。
【0016】
本発明に係る前記建物の気密構造において、前記第2部分は、前記天井形成材の上面に当接可能な当接部が形成されており、前記第2部分の前記第1部分と反対側の縁部は、前記建物の屋外側を向いていてもよい。
【0017】
本発明に係る前記建物の気密構造において、前記天井形成材は、野縁を含み、前記第2部分の前記第1部分と反対側の縁部には、前記野縁が嵌め込まれていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の気密材は、上記の構成を採用することにより、建物の気密性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】気密材が配された建物の気密構造の一例を示す部分断面図である。
【
図3】折り曲げラインで折り曲げられた基材の一例を示す部分斜視図である。
【
図4】野縁が嵌め込まれた気密材の一例を示す部分斜視図である。
【
図5】(a)~(c)は、建物の気密構造の施工方法の一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0021】
[建物の気密構造]
図1は、気密材1が配された建物2の気密構造(以下、単に「気密構造」ということがある。)3の一例を示す部分断面図である。本実施形態の気密構造3では、建物2の梁7と天井形成材8との間に、気密材1が配されることにより、梁7と天井形成材8との間の気密性が高められる。
【0022】
[建物]
建物2は、例えば、住宅やビル等である場合が例示される。本実施形態の建物2は、上階部分(例えば、二階部分)4に対して、下階部分(例えば、一階部分)5が屋外側6に突出しており、いわゆる部分平屋である場合が例示される。なお、建物2は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、上階部分4と下階部分5とが、建物2の水平方向(
図1のz軸方向)で同一の位置に設けられるものでもよい。
【0023】
建物2は、梁7と天井形成材8とを含んで構成されている。
【0024】
[梁]
本実施形態の梁7は、屋根梁7Aと、床梁7Bとを含んで構成されている。本実施形態では、下階部分5の屋根梁7Aと、上階部分4の床梁7Bとが、建物2の垂直方向(
図1のy軸方向)において、略同一の位置に設けられているが、互いに位置ずれしていてもよい。屋根梁7Aと床梁7Bとの間には、天井形成材8の上部に、断熱材9が配されている。
【0025】
[天井形成材]
天井形成材8は、野縁11と、天井仕上材12とを含んで構成されている。
【0026】
[野縁]
本実施形態の野縁11は、断面略矩形状(
図4に示す)に形成されているが、このような態様に限定されない。本実施形態の野縁11は、床梁7Bの長手方向(
図1の奥行方向(x軸方向))に対して、直交する方向(
図1において、屋内側から屋外側6に向かう方向(z軸方向))に延びている。さらに、野縁11は、床梁7Bの長手方向において、間隔を空けて複数設けられている。
[天井仕上材]
天井仕上材12は、例えば、石膏ボードなどの面材として構成されている。
【0027】
[野縁及び天井仕上材の固定]
野縁11及び天井仕上材12は、建物2の施工時において、梁7(床梁7B)側に持ち上げられる。そして、野縁11は、図示しない固定部材を介して、梁7(床梁7B)に固定される。一方、天井仕上材12は、野縁11の下面に固定される。本実施形態では、床梁7Bと、天井形成材8(野縁11及び天井仕上材12)とが、垂直方向(
図1のy軸方向)において互いに離間している(すなわち、隙間10が形成されている)。
【0028】
[気密材]
本実施形態の気密構造3では、梁7と天井形成材8(野縁11及び天井仕上材12)との間(すなわち、隙間10)に、気密材1が配されている。
図2は、気密材1の一例を示す部分斜視図である。
図3は、折り曲げラインL1で折り曲げられた基材14の一例を示す部分斜視図である。
【0029】
[基材]
本実施形態の気密材1は、面材状に形成された基材14を含んで構成されている。本実施形態の基材14は、長尺状に形成されている。このような基材14は、基材14の長手方向に対応する第1方向(図において、x軸方向)と、第1方向と直交する第2方向(図において、y軸方向)とが規定されている。さらに、本実施形態では、基材14の厚さ方向(図においてz軸方向)が規定されている。
【0030】
[プラスチックダンボール]
本実施形態の基材14は、プラスチックダンボール15で形成されている。プラスチックダンボール15の内部には、一対のライナー16a、16bの間において、互いに平行に延びるリブ17で仕切られた中空部18が、複数備えられている。このようなプラスチックダンボール15は、気密性、耐久性及び断熱性に優れている。
【0031】
本実施形態のプラスチックダンボール15は、ポリプロピレンで形成されるが、特に限定されない。本実施形態のリブ17は、第1部分21が折り曲げられる前において、第2方向(y軸方向)に延びている。
【0032】
本実施形態の基材14は、変形容易部20と、第1部分21と、第2部分22とを含んで構成される。
【0033】
[変形容易部]
図3に示されるように、変形容易部20は、第1方向(x軸方向)と略平行な折り曲げラインL1(
図2で一点鎖線で示す)で、基材14を折り曲げるためのものである。本明細書において、「略平行」とは、製造工程上の誤差が許容されるものであり、具体的には、平行に対し±5°の角度範囲が許容される。変形容易部20は、複数の切断部25と、非切断の曲げ剛性低下部26とを含んで構成されている。
【0034】
[第1部分]
図2に示されるように、第1部分21は、梁7の下面7s(
図1に示す)に当接させるためのものである。第1部分21は、変形容易部20に対して、第2方向(y軸方向)の一方側(図において、上側)に位置している。
図3に示されるように、第1部分21は、基材14が折り曲げラインL1(変形容易部20)で折り曲げられることにより、基材14の厚さ方向の一方側の面(一方側のライナー16a)が、梁7の下面7sに当接されうる。本実施形態の気密構造3では、第1部分21の第2部分22の反対側の縁部(以下、単に「第1縁部」ということがある。)21sが、建物の屋外側6(
図1に示す)を向くように、第1部分21が、梁7の下面7sに当接されている。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、本実施形態の第1部分21には、梁7の下面7s(
図1に示す)に固着するための固着部28が形成されている。本実施形態の固着部28は、一方側のライナー16aに設けられた粘着層として構成されている。これにより、第1部分21は、固着部28を介して、梁7の下面7sに安定して固着されうる。粘着層(固着部28)は、特に限定されないが、両面テープで構成されうる。
【0036】
固着部(粘着層)28は、気密材1の製造段階で設けられるのが望ましい。これにより、建物2(
図1に示す)の施工現場での固着部28の形成が不要となるため、施工性を向上させうる。
【0037】
[第2部分]
図1に示されるように、第2部分22は、梁7の下面7sから天井形成材8側に垂下させるためのものである。
図2に示されるように、第2部分22は、変形容易部20に対して、第2方向(y軸方向)の他方側(図において、下側)に位置している。
【0038】
[切断部]
複数の切断部25は、折り曲げラインL1上で基材14(本例では、一対のライナー16a、16b、リブ17及び中空部18)を貫通している。本実施形態の切断部25は、折り曲げラインL1に沿って隔設されている。切断部25は、基材14の第1方向(x軸方向)の両端部に、それぞれ設けられるのが望ましい。これにより、変形容易部20は、折り曲げラインL1で、基材14を容易に折り曲げることが可能となる。
【0039】
[曲げ剛性低下部]
曲げ剛性低下部26は、第1方向(x軸方向)で隣接する切断部25、25の間に位置している。曲げ剛性低下部26は、基材14の厚さ(図において、z軸方向)が薄く形成された罫線(折り曲げ線)である場合が例示される。このような曲げ剛性低下部26は、基材14の折り曲げを容易に行うのに役立つ。なお、曲げ剛性低下部26は、このような罫線に限定されるわけではなく、ライナー16a、16bに小さい穴が並べられたミシン目(図示省略)等であってもよい。
【0040】
図2に示されるように、曲げ剛性低下部26は、折り曲げラインL1よりも第2部分22側に形成されている。これは、
図3に示されるように、気密材1が、第1部分21を折り曲げラインL1で折り曲げたときに、第1部分21の切断部25に面する切断端面21Cを、折り曲げラインL1よりも第2部分22の側(
図3において下側)に位置させるためである。これにより、第1部分21の切断端面21Cに設けられた中空部18は、第2部分22によって塞がれうる。
【0041】
このように、本実施形態の気密材1(気密構造3)では、第1部分21の切断端面21Cが、第2部分22で塞がれるため、気密材1の両側(屋内外)における中空部18を通じた空気の流通を防止することができる。これにより、本実施形態では、建物2の気密性(すなわち、梁7と天井形成材8との間の気密性)を向上させることが可能となる。なお、曲げ剛性低下部26に設けられた中空部18は、折り曲げラインL1での折り曲げによって塞がれている(潰れている)ため、上記のような中空部18を通じた空気の流通を防止することができる。
【0042】
図2に示されるように、第2方向(y軸方向)において、曲げ剛性低下部26と、折り曲げラインL1との間の距離(最短距離)D1は、基材14の厚さW1と略等しいのが望ましい。これにより、気密材1(気密構造3)は、
図3に示したように、第1部分21を折り曲げラインL1で折り曲げたときに、第2部分22の切断部25に面する切断端面22Cと、第1部分21の厚さ方向の一方側の面(ライナー16a)とを略面一にし得る。したがって、本実施形態の第2部分22の切断端面22Cは、第1部分21に対して、梁7の下面7s(
図1に示す)側に突出するのを防ぐことができるため、梁7の下面7sに、第1部分21を隙間なく当接することができる。したがって、気密材1(気密構造3)は、建物2の気密性を向上させうる。
【0043】
上記のような作用を効果的に発揮させるために、
図2に示されるように、距離D1は、厚さW1の0.8倍~1.2倍に設定されるのが望ましい。これにより、気密材1は、距離D1と厚さW1とを略等しくすることができ、第1部分21が折り曲げラインL1で折り曲げられたときに、第2部分22の切断端面22Cと、第1部分21の一方側の面(ライナー16a)とを略面一にすることができる。なお、本実施形態のように、第1部分21に、固着部(粘着層)28が配置される場合には、その固着部28の厚さ(図示省略)と基材14の厚さW1とを足し合わせた合計厚さが、距離D1と略等しく設定されてもよい。
【0044】
図2に示されるように、第1方向(x軸方向)において、曲げ剛性低下部26の長さL3の合計長さは、切断部25の長さL2の合計長さよりも小さいのが望ましい。これにより、変形容易部20は、曲げ剛性低下部26の割合を相対的に小さくできるため、折り曲げラインL1において、基材14を容易に折り曲げることが可能となる。
【0045】
図3に示されるように、本実施形態の気密材1(気密構造3)は、第1部分21を折り曲げラインL1で折り曲げた後、第1部分21の切断端面21Cと第2部分22との当接(摩擦力)により、曲げ剛性低下部26で生じる復元力に対して抵抗することができる。これにより、気密材1は、折り曲げた状態が安定して維持されうる。
【0046】
[当接部]
図2及び
図3に示されるように、本実施形態の気密材1には、第2部分22に、
図1に示した天井形成材8の上面8s(本例では、天井仕上材12の上面12s)に当接可能な当接部30が形成されている。
【0047】
本実施形態の当接部30は、第1方向(x軸方向)と略平行に折り曲げ可能な第1折り曲げ部31において、第2部分22が折り曲げられることにより、第2部分22の第1部分21と反対側の縁部(以下、単に「第2縁部」ということがある。)22s側に形成される。これにより、当接部30は、基材14の厚さ方向の一方側の面(一方側のライナー16a)の少なくとも一部を、天井仕上材12の上面12s(
図1に示す)に当接させることができる。したがって、気密材1(気密構造3)は、天井仕上材12との密着性を高めることができ、建物2の気密性を高めることが可能となる。
【0048】
第1折り曲げ部31は、第2部分22を折り曲げることができれば、適宜形成されうる。本実施形態の第1折り曲げ部31は、一方側のライナー16a及びリブ17を切断(所謂、ハーフカット)することで形成されている。このような第1折り曲げ部31は、他方側のライナー16bによって基材14の気密性を維持しつつ、第2部分22を容易に折り曲げることが可能となる。
図2では、他方側のライナー16bから見た第1折り曲げ部31が、破線で示されている。
【0049】
図3に示されるように、本実施形態の気密構造3では、第2部分22の第2縁部22sが、建物の屋外側6(
図1に示す)を向くように、第2部分22を天井形成材8の上面8s(
図1に示す)に当接させている。このため、第2縁部22sには、第2縁部22sで露出する中空部18を閉じるための閉塞部33が設けられるのが望ましい。これにより、気密構造3(気密材1)は、気密材1の両側(屋内外)における中空部18を通じた空気の流通を防止することができるため、建物2の気密性を維持することができる。
【0050】
閉塞部33は、第2縁部22sからの外気A1の進入を防ぐことができれば、特に限定されない。本実施形態の閉塞部33は、気密性を有する粘着テープで構成されている。このような閉塞部33は、第2縁部22sで露出する中空部18を、低コストかつ容易に閉じることができる。
【0051】
[開口縁]
図2に示されるように、本実施形態の気密材1には、第2部分22の第2縁部22sに、野縁11(
図1に示す)を嵌め込み可能な開口縁34が備えられている。これにより、気密構造3(気密材1)は、野縁11が開口縁34に嵌め込まれることにより、野縁11と天井仕上材12とで形成される天井形成材8の凹凸に沿って、第2部分22の第2縁部22sを配置することができる。したがって、気密構造3(気密材1)は、建物2の気密性を向上させることができる。
【0052】
本実施形態の開口縁34は、一対の第1開口縁34a、34aと、一対の第1開口縁34a、34aを継ぐ第2開口縁34bとを含んで構成されている。一対の第1開口縁34a、34aは、第2縁部22sから第1部分21側に向かって、第2方向(y軸方向)に沿って延びている。第2開口縁34bは、一対の第1開口縁34a、34aの第1部分21側の端部を継ぐように、第1方向(x軸方向)に沿って延びている。これにより、開口縁34は、野縁11の断面(
図4に示す)と同様に、正面視において、略矩形状に形成されている。
【0053】
[スリット]
本実施形態の気密材1は、開口縁34の周囲に、開口面積を大きくするためのスリット35が形成されている。開口面積は、例えば、開口縁34(一対の第1開口縁34a、34a及び第2開口縁34b)と、第2縁部22bの仮想線(図示省略)で囲まれる領域(開口部)の面積として特定されうる。
【0054】
本実施形態のスリット35は、開口縁34(本例では、第1開口縁34a、34a)から第1方向(x軸方向)に沿って延びている。本実施形態のスリット35は、基材14を貫通している。さらに、本実施形態のスリット35は、第2方向(y軸方向)に隔設されている。
【0055】
図2及び
図3に示されるように、第2方向(y軸方向)で隣接するスリット35、35には、基材14の開口縁34側に、中空部18が設けられる第2方向に沿って、基材14の厚さ方向(z軸方向)に折り曲げ可能な折り曲げ片37が形成される。これらの折り曲げ片37が折り曲げられることにより、気密材1は、開口縁34の開口面積を大きくすることができる。したがって、気密材1(気密構造3)は、例えば、隣接する野縁11、11の間隔(
図1においてx軸方向の間隔)や、野縁11の断面積(
図4に示す)に誤差が生じたとしても、それらの誤差を吸収することができ、その野縁11を確実に嵌め込むことができる。
図4は、野縁11が嵌め込まれた気密材1の一例を示す部分斜視図である。
【0056】
開口面積は、折り曲げ片37(スリット35)が折り曲げられる前の状態(
図2に示す)において、野縁11の断面積よりも予め小さく設定されていてもよい。これにより、
図4に示されるように、気密材1(気密構造3)は、野縁11の大きさや配置位置に応じて、折り曲げ片37が適宜折り曲げられることにより、野縁11を嵌め込みつつ、基材14と野縁11との隙間を小さくできる。したがって、気密材1は、建物2の気密性を高めることができる。
【0057】
折り曲げ片37には、折り曲げられる前の状態に戻ろうとする復元力が作用する。これにより、気密材1(気密構造3)は、折り曲げ片37を、野縁11に密着させることができるため、建物2の気密性を高めることができる。なお、復元力は、例えば、プラスチックダンボール15の隣接するリブ17、17間で折り曲げられることによって作用する。
【0058】
図4に示されるように、折り曲げ片37(スリット35)、及び、当接部30の双方が折り曲げられる場合、当接部30の折り曲げ片37が、野縁11に対して、他の折り曲げ片37の外側に配置され(重ねられ)てもよい。これにより、気密材1(気密構造3)は、野縁11と折り曲げ片37との密着性を維持しつつ、当接部30と天井仕上材12の上面12sとの密着性も維持しうる。
【0059】
図2及び
図3に示されるように、スリット35は、開口縁34の第1方向(x軸方向)の両側(本例では、第1開口縁34a、34a)に設けられるのが望ましい。これにより、気密材1(気密構造3)は、開口縁34の両側に折り曲げ片37が形成されるため、野縁11の大きさや配置位置(間隔)に左右されることなく、野縁11との密着性を高めつつ、野縁11を確実に嵌め込むことが可能となる。
【0060】
[第2折り曲げ部]
図2に示したように、本実施形態の気密材1には、第2部分22に、第1部分21側へ向かう力F(
図5(b)に示す)を受けたときに、第2部分22の第2方向(y軸方向)の寸法を減少させるように変形する少なくとも1つの第2折り曲げ部36が設けられる。なお、力Fは、建物2(
図1に示した)の施工時において、持ち上げられた天井形成材8(野縁11)から、第2部分22(開口縁34)に与えられる。
【0061】
本実施形態の気密材1(気密構造3)は、第2折り曲げ部36により、梁7と天井形成材8(本例では、野縁11)との間の寸法に応じて、第2部分22の第2方向(y軸方向)の寸法を柔軟に変化させることができる。したがって、本実施形態では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間の隙間10を効果的に低減することができ、建物2の気密性を向上させることができる。
【0062】
第2折り曲げ部36は、上述のような変形を可能にするものであれば、適宜形成することができる。本実施形態の第2折り曲げ部36は、第1折り曲げ部31と同様に、第1方向(x軸方向)と略平行に折り曲げ可能なように、一方側のライナー16a及びリブ17を切断(所謂、ハーフカット)することで形成されている。
図2では、他方側のライナー16bから見た第2折り曲げ部36が、破線で示されている。
【0063】
本実施形態の第2折り曲げ部36は、第1方向(x軸方向)で隣接する開口縁34(第2開口縁34b)を継ぐように、第1方向に沿って延びているが、このような態様に限定されない。また、第2折り曲げ部36は、第2部分22の第2方向(y軸方向)において、複数設けられてもよい。これにより、第2部分22の第2方向の寸法を、より柔軟に減少させることが可能となる。
【0064】
[気密構造の施工方法]
次に、気密構造3の施工方法の一例が説明される。
図5(a)~(c)は、建物2の気密構造3の施工方法の一例を示す部分断面図である。
【0065】
図5(a)に示されるように、本実施形態の施工方法では、先ず、野縁11が固定された梁7(床梁7B)の下面7sに、気密材1の第1部分21が固着される。床梁7Bの下面7sへの固着には、第1部分21に設けられた固着部(粘着層)28が用いられる。なお、固着部28が設けられていない場合には、図示しない接着剤等が塗布されてもよい。
【0066】
次に、本実施形態の施工方法では、
図3及び
図5(b)に示されるように、第1部分21が折り曲げラインL1で折り曲げられる。これにより、第1部分21の切断端面21Cを、折り曲げラインL1よりも第2部分22の側に位置させることができる。
【0067】
次に、
図4及び
図5(b)に示されるように、第2部分22の第2縁部22s(開口縁34)に、野縁11を嵌め込みながら、気密材1が下方に引っ張られる。このとき、野縁11の大きさや配置位置に応じて、スリット35によって形成された折り曲げ片37が、厚さ方向(z軸方向)折り曲げられる。これにより、本実施形態の気密材1(気密構造3)は、野縁11との密着性を高めつつ、野縁11が確実に嵌め込まれる。
【0068】
図5(b)では、気密材1が下方に引っ張られることにより、野縁11の上面に、第2開口縁34b(
図2に示す)が当接する。そして、第2折り曲げ部36は、第2部分22の第2方向(y軸方向)の寸法を減少させるように、第1方向(x軸方向)に沿って折れ曲がる(座屈する)。
【0069】
次に、本実施形態の施工方法では、
図5(c)に示されるように、天井仕上材12が、梁7(床梁7B)側に持ち上げられる。第2部分22の当接部30には、天井仕上材12の上面12sが当接される。本実施形態では、折り曲げられた当接部30が元の状態に戻ろうとする復元力を作用させることにより、天井仕上材12の上面12sに、当接部30を密着させることが可能となる。
【0070】
そして、本実施形態では、天井仕上材12の上面12sに、当接部30を当接させたまま、野縁11の下面に天井仕上材12が固定される。これにより、梁7と天井形成材8との間の隙間10を低減させた気密構造3が形成される。したがって、本実施形態の気密材1(気密構造3)は、梁7と天井形成材8との間の隙間10を低減することができるため、建物2の気密性を向上させることができる。
【0071】
本実施形態の気密構造3(気密材1)は、
図3に示されるように、折り曲げラインL1で折り曲げられた第1部分21が、梁7の下面7s(
図5(a)に示す)に当接されることにより、第1部分21の切断端面21Cが、第2部分22で塞がれている。これにより、気密材1の両側(屋内外)における中空部18を通じた空気の流通を防止することができる。さらに、梁7の下面7sには、第1部分21が隙間なく当接される。したがって、本実施形態では、建物2の気密性(すなわち、梁7と天井形成材8との間の気密性)を向上させることが可能となる。
【0072】
図5(a)に示されるように、本実施形態の気密構造3では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間に気密材1が配された状態において、第1縁部21sが建物2の屋外側6を向くように、固着部28が折り曲げられている。これにより、
図5(c)に示されるように、気密構造3は、屋外側6から気密材1側に進入した外気A1を、第1部分(固着部28)側に案内することができるため、第1部分(固着部28)が梁7(床梁7B)の下面7s側に押し付けられる。これにより、気密構造3は、外気A1の進入による第1部分(固着部28)の位置ずれ、及び、第1部分(固着部28)と床梁7Bの下面7sとの間からの外気A1の進入を抑制することができる。
【0073】
図5(c)に示されるように、本実施形態の気密構造3では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間に気密材1が配された状態において、第2縁部22sが建物2の屋外側6を向くように、当接部30が折り曲げられている。これにより、気密構造3は、固着部28と同様に、屋外側6から進入する外気A1を当接部30側に案内することができる。したがって、気密構造3は、外気A1の進入による当接部30の位置ずれ、及び、当接部30と天井形成材8との間からの外気A1の進入を抑制することができる。
【0074】
図5(b)に示されるように、本実施形態の気密構造3では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間に気密材1が配された状態において、折り曲げ片37が、建物2の屋外側6を向くように、折り曲げられている。これにより、気密構造3は、固着部28や当接部30と同様に、屋外側6から進入する外気A1を折り曲げ片37側に案内することができる。したがって、気密構造3は、外気A1の進入による折り曲げ片37の位置ずれ、及び、折り曲げ片37と野縁11との間からの外気A1の進入を抑制することができる。
【0075】
本実施形態の気密材1(気密構造3)は、梁7と天井形成材8との間の寸法(y軸方向の寸法)に応じて、第2部分22の第2方向(y軸方向)の寸法を柔軟に変化させることができる。これにより、本実施形態では、梁7と天井形成材8(本例では、天井仕上材12)との間の隙間10を効果的に低減することができ、建物2の気密性を向上させることができる。
【0076】
[気密材(別実施例)]
図2に示されるように、これまでの実施形態の気密材1には、第2部分22の第2縁部22sに、野縁11を嵌め込み可能な開口縁34が設けられたが、このような態様に限定されない。例えば、野縁11が、床梁7Bの長手方向(
図1の奥行方向(x軸方向))に沿って延びており、気密材1が野縁11を嵌め込む必要がない場合には、開口縁34(及び、スリット35)が省略されてもよい。これにより、気密構造3は、気密材1の構成を簡素化しつつ、建物2の気密性を向上させることが可能となる。
【0077】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0078】
1 気密材
14 基材
20 変形容易部
21 第1部分
22 第2部分
25 切断部
26 曲げ剛性低下部