(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100703
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】身障者用の介護用具機構
(51)【国際特許分類】
A61G 1/00 20060101AFI20220629BHJP
A61G 1/044 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61G1/00 702
A61G1/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214833
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】518054630
【氏名又は名称】一般社団法人ReFREL
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】山本 智恵子
(57)【要約】
【課題】従来の介護用抱っこ具は抱える補助を行うものにすぎず用具を用いて持ち上げると同時に両手の支えが必要となる欠点があった。また、従来の介護用抱っこ具は、肩に掛けて抱えるものが多く長時間の介護が困難な場合があった。
【解決手段】本発明は、身障者受け体と介護者装着固定具と連結機構部とより構成したことで、身障者を介護者の体躯前面に確実に保持することができ、介護者は身障者を抱えながらにしてフリーハンドで介護作業や運搬作業を行うことができる身障者用の介護具機構に関する。また、荷重の分散を行い長時間の介護を可能とする身障者用の介護具機構に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略U字状で身障者の略体躯長さとし、かつ、介護者の体躯前面に位置するように構成した身障者受け体と、
身障者受け体を介護者の体躯前面に配設固定するために身障者の腰部近傍に装着するための介護者装着固定具と、
身障者受け体と介護者装着固定具とを一体に連結するための連結機構部とより構成すると共に、
介護者装着固定具は介護者の腰部に巻いて固定するように構成した巻きバンド部により構成し、
身障者受け体は始端部に形成し身障者の頭部を載置する頭部受部と終端部に形成し身障者の股部を支持する股割れ部とより構成し、
連結機構部は左右背後バンドと左右の前部バンド等から構成したことを特徴とする身障者用の介護用具機構。
【請求項2】
介護者装着固定具は、被りシートを前後二つ折りに形成し頭からかぶって介護者頭部を折部分から突出するために被りシートに形成した頭部突出孔と、二つ折りの折部分から背後面を伝って伸延した左右背後バンドと、左右背後バンドを介護者装着固定具の被りシート背面で左右に分岐させるための中継リングとより構成し、左右背後バンドの一方は中継リングを介して左右に分岐して終端を身障者受け体の終端部に着脱自在に連結すると共に、左右背後バンドの他方は中継リングを介して身障者受け体の始端部に着脱自在に連結して構成したことを特徴とする請求項1に記載の身障者用の介護用具機構。
【請求項3】
二つ折りの介護者装着固定具の中継リングを介して左右背後バンドを左右肩部から伸延したバンドを左右前部バンドとし、該左右前部バンドの一方は身障者受け体の終端部上方に、他方は身障者受け体の始端部上方にそれぞれ着脱自在に連結したことを特徴とする請求項1、2に記載の身障者用の介護用具機構。
【請求項4】
身障者受け体と介護者装着固定具とはメッシュ状の合成樹脂素材から主に構成することにより介護時に介護者と共に身障者も一緒に入浴可能に構成したことを特徴とする請求項1~3に記載の身障者用の介護用具機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護者が幼児から低学年の身障者を抱えて介護したり、入浴させたり、容易にフリーハンド状態で搬送する際に使用することができる身障者用の介護用具機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護者が幼児から低学年の身障者を抱えて介護したり、搬送したりするとき使用する用具としては、身障者を抱えるように形成した籠状の身障者収納具に介護者が把持しやすい取手を設けたものや肩掛け具を利用して蛇腹状に畳み込まれた本体部を広げて身障者を包み介護者の体躯前面に保持するように構成した抱っこ具が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の抱っこ具は、蛇腹状に畳み込まれた布製の本体部を広げ身障者の体躯を包み、本体部の中央から上下方向に一本ずつ伸びるバンド状の肩掛け具をそれぞれの端部に設けた接続部材にてループ状とし介護者の肩に掛けることで身障者を介護者の体躯に接するように保持するものである。
【0004】
そのため、前記抱っこ具は身障者を一本の肩掛け具で支えるものであって、常に肩掛け具で身障者を支え続けることは介護者の負担や肩掛け具の強度から難しく、補助的に介護者が両手で身障者の体躯下方を支える必要がある。
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、緊急の災害等の発生時に身障者を急に移動する必要が生じた場合等には身障者と共に介護のための道具や日用品も持参しなければならない事態が生じる。かかる事態では介護者は身障者を搬送しながら両手に各種の介護用具等も持参しながらの避難行動をとらねばならない。
【0007】
そのためにフリーハンドで確実に身障者を抱えたまま避難行動ができるような用具が求められるが、実際には簡単に、しかも安全確実に身障者を抱きかかえたままフリーハンドで各種の動作が行える用具がなく、しかも介護者の体躯に無理な負荷をかけないで身障者を安全に保護しながら避難行動が行える介護用具の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、断面略U字状で身障者の略体躯長さとし、かつ、介護者の体躯前面に位置するように構成した身障者受け体と、身障者受け体を介護者の体躯前面に配設固定するために身障者の腰部近傍に装着することを可能とした介護者装着固定具と、身障者受け体と介護者装着固定具とを一体に連結するための連結機構部とより構成することで上記課題を解決した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る身障者用の介護用具機構は、断面略U字状で身障者の略体躯長さとし、かつ、介護者の体躯前面に位置するように構成した身障者受け体と、身障者受け体を介護者の体躯前面に配設固定するために身障者の腰部近傍に装着するための介護者装着固定具と、身障者受け体と介護者装着固定具とを一体に連結するための連結機構部とより構成すると共に、介護者装着固定具は介護者の腰部に巻いて固定するように構成した巻きバンド部により構成し、身障者受け体は始端部に形成し身障者の頭部を載置する頭部受部と終端部に形成し身障者の股部を支持する股割れ部とより構成し、連結機構部は左右背後バンドと左右前部バンド等より構成したことを特徴とする。
【0010】
また、介護者装着固定具は、被りシートを前後二つ折りに形成し頭からかぶって介護者頭部を折部分から突出するために被りシートに形成した頭部突出孔と、二つ折りの折部分から背後面を伝って伸延した左右背後バンドと、左右背後バンドを介護者装着固定具の被りシート背面で左右に分岐させるための中継リングとより構成している。
【0011】
また、二つ折りの介護者装着固定具の左右背後バンドが中継リングを介して左右に分岐し左右肩部から伸延した前部バンドの一方は身障者受け体の終端部に、他方は身障者受け体の始端部にそれぞれ着脱自在に連結したことにも特徴を有する。
【0012】
また、身障者受け体と介護者装着固定具とはメッシュ状の合成樹脂素材から主に構成することにより介護時に介護者と共に身障者も一緒に入浴可能に構成したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、身障者受け体は断面略U字状で身障者の略体躯長さとして始端部の頭部受部と終端部の股割れ部を構成し、介護者装着固定具は介護者の腰部に巻いて固定するように構成した巻きバンド部により構成したことにより、確実に身障者を抱きかかえた姿勢で介護者は動くことができるので緊急事態下での身障者を伴った避難行動が可能となり、かつフリーハンドで身障者を保持することができ必要な用具も持参して動けるため身障者を安全確実に避難させることができる効果がある。
【0014】
更には、介護者装着固定具は介護者の腰部に巻いて固定するように構成した巻きバンド部としたことにより確実に身障者受け体を介護者の腰の部分で保持して介護者体躯に極端な負荷をかけることなくフリーハンド状態で容易に避難行動が可能となる効果がある。
【0015】
請求項2の発明によれば、介護者装着固定具は、被りシートを前後二つ折りに形成し頭からかぶって介護者頭部を折部分から突出するために被りシートに形成した頭部突出孔と、二つ折りの折部分から背後面を伝って伸延した左右背後バンドと、左右背後バンドを介護者装着固定具の被りシート背面で左右に分岐させるための中継リングとより構成し、左右背後バンドの一方は中継リングを介して左右に分岐して左右一方の終端を介護者の腰部に沿って身障者受け体の終端部に着脱自在に連結すると共に、左右背後バンドの左右他方の終端は中継リングを介して介護者の腰部に沿って身障者受け体の始端部に着脱自在に連結して構成したことにより、被りシートを確実に介護者の上半身に装着保持することができ、左右背後バンドを中継リングによって被りシートの背面で分岐して該バンドの終端と始端を身障者受け体の終端部と始端部に連結するために身障者の全体重がかかる身障者受け体を確実に各バンドによって支持し、安定した身障者の搬送や介護が行うことができる効果がある。
【0016】
請求項3の発明によれば、二つ折りの介護者装着固定具の中継リングを介して左右背後バンドを左右肩部から伸延したバンドを左右前部バンドとし、該左右前部バンドの一方は身障者受け体の終端部上方に、他方は身障者受け体の始端部上方にそれぞれ着脱自在に連結したことにより、左右前部バンドは二つ折りの被りシートの左右肩部から伸延して身障者受け体に連結されるために身障者受け体の全重量は被りシートの肩部、すなわち介護者の左右肩部と前記左右背後バンドによって介護者の腰部とで受け止めることができることになり介護者に大きな重量負荷をかけることなく安定して介護者の全身で受け止めることができる効果がある。
【0017】
請求項4の発明によれば、身障者受け体と介護者装着固定具とはメッシュ状の合成樹脂素材から主に構成することにより介護時に身障者と共に介護者も一緒に入浴可能に構成したことにより、単に身障者の搬送や抱きかかえたままでの介護だけではなく身障者介護において最も介護者負荷が大きいとされる入浴介護を介護者と共にスキンシップしながら行える効果があり、身障者にとっては介護者への信頼と安心を得ることができるという介護事業にとって最大の目標を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の身障者用の介護用具機構に係る身障者受け体の展開状態を示す模式的平面図である。
【
図2】本発明の身障者用の介護用具機構に係る身障者受け体の組立状態を示す模式的斜視図である。
【
図3】本発明の身障者用の介護用具機構に係る股割れ部の稼働域を示す模式的側面図である。
【
図4】本発明の身障者用の介護用具機構に係る介護者装着固定具の展開状態を示す模式的平面図である。
【
図5】本発明の身障者用の介護用具機構に係る介護者装着固定具の装着状態を示す模式的正面図である。
【
図6】本発明の身障者用の介護用具機構に係る介護者装着固定具の装着状態を示す模式的背面図である。
【
図7】本発明の身障者用の介護用具機構に係る介護者装着固定具に連結機構部を装着した状態を示す模式的展開平面図である。
【
図8】本発明の身障者用の介護用具機構を示す模式的斜視図である。
【
図9】本発明の身障者用の介護用具機構の他の実施例を示す模式的斜視図である。
【
図10】本発明の身障者用の介護用具機構の他の実施例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の要旨は、断面略U字状で身障者の略体躯長さとし、かつ、介護者の体躯前面に位置するように構成した身障者受け体と、身障者受け体を介護者の体躯前面に配設固定するために身障者の腰部近傍に装着するための介護者装着固定具と、身障者受け体と介護者装着固定具とを一体に連結するための連結機構部とより構成すると共に、介護者装着固定具は介護者の腰部に巻いて固定するように構成した巻きバンド部により構成し、身障者受け体は始端部に形成し身障者の頭部を載置する頭部受部と終端部に形成し身障者の股部を支持する股割れ部とより構成し、連結機構部は左右背後バンドと左右前部バンド等から構成したことにある。
【0020】
また、介護者装着固定具は、二つ折りに形成し折部分に介護者の頭部を挿通するために形成した頭部突出孔と、二つ折りの折部分から背後を伝って伸延した左右背後バンドと、左右背後バンドを介護者装着固定具の背面で左右に分岐させるための中継リングとより構成し、左右背後バンドの一方は中継リングを介して左右方向に分岐して終端を身障者受け体の終端部に着脱自在に連結すると共に左右背後バンドの他方終端は中継リングを介して身障者受け体の始端部に着脱自在に連結して構成したことにも特徴を有する。
【0021】
また、二つ折りの介護者装着固定具の中継リングを介して左右背後バンドを左右肩部から伸延したバンドを左右前部バンドとし、該左右前部バンドの一方は身障者受け体の終端部上方に、他方は身障者受け体の始端部上方にそれぞれ着脱自在に連結したことにも特徴を有する。
【0022】
また、身障者受け体と介護者装着固定具とはメッシュ状の合成樹脂素材から主に構成することにより介護時に介護者と共に身障者も一緒に入浴可能に構成したことにも特徴を有する。
【0023】
以下、本発明に係る身障者用の介護用具機構の実施例を図面に基づいて詳説する。
図1~3は本発明の身障者受け体の説明図であり、展開状態、組立状態、股割れ部の稼働状態をそれぞれ示すものである。
【0024】
身障者用介護具機構Mは、主に身障者を保持するための身障者受け体1と、身障者受け体1を介護者が支えるための介護者装着固定具2と、身障者受け体1と介護者装着固定具2とを連結するための連結機構部3とより構成される。
以下詳細に各部材の構成と機能を説明する。
【0025】
・ 身障者受け体
身障者受け体1は
図1に示すように、身障者の頭部を載置するために始端部に形成した頭部受部11と、身障者の股部を支持するために終端部に形成した股割れ部12と、身障者が身障者受け体1の側面から落下しないように頭部受部の左右縁部に形成した左右壁部13とより構成される。
【0026】
頭部受部11は、略長方形で1辺を円弧状に膨出させ形成した頭部受部本体111と、頭部受部本体111の表面に貼設した補強板112と、頭部受部本体111を横架する3本の補強板固定バンド113と、補強板固定バンド113のうちどれか1本と接続金具114を介して接続された前部連結バンド115aと、頭部受部本体111の始端部近傍左右からそれぞれ延出された前部連結バンド115bと、前部連結バンド115bの下方に設けた背後バンド連結部116とからなる。
【0027】
頭部受部本体111は、メッシュ状の合成樹脂素材を用い略長方形に形成され、略長方形の短手のうち1辺を始端部とし、身障者の頭を受けるために円弧状に膨出した形状としている。また、略長方形の長手方向の長さは身障者の略体躯長さとしている。
【0028】
補強板112は、可撓性を有したプラスチック板を頭部受部本体111と同様の形状かつやや小さく形成され、またプラスチック板の可撓性を高めるために複数個の穿設加工がされている。
【0029】
前記補強板112は、頭部受部本体111の表面、すなわち身障者と接しない外側の面に補強板固定バンド113によって貼設される。
【0030】
頭部受部本体111に貼設された補強板112は、頭部受部本体111の補強とともに、身障者の荷重によって頭部受部本体111が変形し偏奇荷重となることを防ぐ効果がある。
【0031】
補強板固定バンド113は、引張強度の高いナイロン、炭素繊維、ガラス繊維等の化学繊維素材でできており、頭部受部本体111の長手方向の略中央から下方に所定間隔で3本のバンド部材を短手方向に横架するように形成される。
【0032】
補強板固定バンド113は、頭部受部本体111との間に補強板112を挟むようにして貼設することができる。
【0033】
前部連結バンド115aは、補強板固定バンド113と同様に引張強度の高い化学繊維素材で形成され、補強板固定バンド113のうちどれか1本に接続金具114を介して接続される。
【0034】
前部連結バンド115aは、後述する身障者受け体1を介護者装着固定具2に連結するための連結機構部3の左右前部バンド312のどちらか一方に連結するためのものである。
【0035】
前部連結バンド115aは、先端部に左右前部バンド312を受けるための受け金具と、中途部に長さ調整の調整具とを有している。
【0036】
前部連結バンド115bは、頭部受部本体111の円弧状に膨出した始端部近傍の左右から延出したバンド部材であり、引張強度の高い化学繊維素材で形成される。
【0037】
前部連結バンド115bは、後述する身障者受け体1を介護者装着固定具2に連結するための連結機構部3の左右前部バンド312の前部連結バンド115aと連結したもう一方に連結するためのものである。
【0038】
また、前部連結バンド115bは頭部受部本体111の始端部近傍、すなわち身障者の頭部近傍を左右のバンド部材で支える構成となっており、より安定した身障者の保持に働くことができる。
【0039】
前部連結バンド115bは、先端部に左右前部バンド312を受けるための受け金具と、中途部に長さ調整の調整具とを有している。
【0040】
背後バンド連結部116は、化学繊維素材の短いバンド部材とその先端部に取付けた輪状の金具とで構成され、前部連結バンド115bの下方に左右それぞれ設けられる。
【0041】
背後バンド連結部116は、後述する身障者受け体1を介護者装着固定具2に連結するための連結機構部3の左右背後バンド311の一方に連結するためのものである。
【0042】
股割れ部12は、頭部受部本体111を下方に延出するように略長方形に形成した股割れ部本体121と、股割れ部本体の左右縁部に延出形成した接着形成部122と、股割れ部本体121の下方に横架した背後バンド連結部123と、股割れ部本体121の下方に設け下方に延出する前部連結バンド124とからなる。
【0043】
股割れ部本体121は、メッシュ状の合成樹脂素材を用い略長方形に頭部受部本体111から延出するように形成され、身障者の尻部から腿裏部を支持するものである。
【0044】
接着形成部122は、股割れ部本体121の左右縁部よりそれぞれ延出し、メッシュ状の合成樹脂素材を用いて略長方形に形成される。
【0045】
また、接着形成部122はそれぞれの表面、すなわち身障者に接しない面全体に面ファスナー122aを有しており、後述する左右壁部13に貼設した面ファスナー131にそれぞれ接着することで身障者受け体1を籠状に組立可能としている。
【0046】
背後バンド連結部123は、股割れ部本体121の下方に横架し引張強度の高い化学繊維素材で形成されたバンド部材であり、後述する身障者受け体1を介護者装着固定具2に連結するための連結機構部3の左右背後バンド311と連結可能とするための金具を両端部に有する。
【0047】
前部連結バンド124は、股割れ部本体121の下方中央付近に形成した挿通孔124aに表側から挿通し裏側下方へ向けて伸びる引張強度の高い化学繊維素材で形成したバンド部材である。
【0048】
前部連結バンド124の下端部には、後述する身障者受け体1を介護者装着固定具2に連結するための連結機構部3の左右前部バンド312と連結可能とする金具を有し、かつ中途部には長さを調節するための調節具を有する。
【0049】
左右壁部13は、メッシュ状の合成樹脂素材を頭部受部11の左右縁部から略三角形に延出して形成される。
【0050】
左右壁部13の下方裏側、すなわち股割れ部12近傍の身障者と接する面には面ファスナー131を有する。
【0051】
面ファスナー131は、股割れ部12の接着形成部122に貼設した面ファスナー122aとそれぞれ張り合わせることで、
図2に示すように身障者受け体1を籠状に組み立てることができる。
【0052】
面ファスナー131と、接着形成部122の面ファスナー122aはそれぞれどちらが雄側雌側でも構わないが、
図2に示すように左右壁部13の面ファスナー131が身障者と接する面となるため、雌側にすることが好ましい。
【0053】
組み立てた身障者受け体1は、断面略U字状で長さを低学年の身障者の略体躯長さとすることで身障者の体躯を包み込むように受けることができる。
【0054】
また、股割れ部12は、身障者受け体1の断面略U字状を塞ぐように起こされることで、股割れ部本体121で身障者の尻部から上腿部裏側を支えることができる。
【0055】
前部連結バンド124は、股割れ部12の中央に位置することで、股割れ部12上方を左右の空間を形成する。形成された空間からそれぞれ身障者の左右の脚を身障者受け体1の外方へ突出させることができる。
【0056】
また、接着形成部122は表面全体に面ファスナー122aを有するように構成したことで股割れ部12の起きる角度を調整可能になっている。
【0057】
角度の調整ができることで、股割れ部12上方の空間から突出する脚の太さの変化に対応できると共に、身障者の股関節の角度を定期的に変化させることで疲れを軽減できる効果がある。
【0058】
身障者受け体1は上述してきた構成とすることで、通常身障者を介護する際に用いる抱きかかえ方、すなわち身障者を仰向けに寝た状態で介護者が体躯前で抱え上げた時と同様の姿勢をとることができる。
【0059】
身障者は、今まで通りと変わらず介護者を目視できることで安心することができ、更には荷重を身障者受け体1の全体で支えられ偏奇荷重とならない効果がある。
【0060】
介護者側も後述する介護者装着固定具2と連結機構部3によって身障者受け体を体躯前面に固定し抱えることで、介護者へかかる荷重の負担を低減することができ、身障者を常に目視で確認ができ介護するうえで変化に気づきやすくなる効果がある。
【0061】
・ 介護者装着固定具
図4は介護者装着固定具の展開状態を、
図5及び
図6は介護者装着固定具の装着状態をそれぞれ示したものである。
【0062】
介護者装着固定具2は、
図4に示すように介護者の頭部を挿通するために形成した頭部突出孔21と、後述する左右背後バンド311を介護者装着固定具2の背面で左右に分岐させるための中継リング22と、介護者装着固定具2を介護者の腰部に巻いて固定するように構成したバンド部23とより構成される。
【0063】
介護者装着固定具2はメッシュシート状の合成樹脂素材で形成され、シートを二つ折りにしその折り部に介護者の頭部が挿通できるよう頭部突出孔21を穿設する。
【0064】
介護者は、
図5及び
図6に示すように介護者装着固定具2を上方から被るようにし、頭部を頭部突出孔21から突出することで装着する。
【0065】
中継リング22は、
図4及び
図6に示すように介護者の背面で装着したとき腰付近に上下を固定したリング状の金具である。
【0066】
前記中継リング22は、後述する連結機構部3を中継し各バンド部材の向きを変更するためのものである。
【0067】
バンド部23は
図4に示すように、介護者装着固定具2の背面側の左右両端から延出したバンド部材であり裏面には面ファスナーを有している。
【0068】
介護者装着固定具2の腹部には略長方形のバンド受部24が形成され、該バンド受部24は前記バンド部23の面ファスナーと対となる面が一面に貼設されている。
【0069】
上記の構成により、介護者は
図5に示すように背後からバンド部23を体躯の前面へ回し腹部のバンド受部24に貼り合わせることで、介護者装着固定具2をしっかりと身体に合わせ装着固定することができる。
【0070】
・ 連結機構部
図7は連結機構部を装備した状態の介護者装着固定具の展開状態を、
図8は連結機構部によって身障者受け体と介護者装着固定具とを連結した状態を示す図である。
【0071】
連結機構部3は、
図7に示すように介護者装着固定具2に装備する左右一対の連結バンド31からなる。
【0072】
連結バンド31は、身障者受け体1と介護者装着固定具2とを連結し、身障者の荷重を支える機能を有するため、引張強度の高いナイロン、炭素繊維、ガラス繊維等の化学繊維素材から形成される。
【0073】
連結バンド31は、
図7に示すように一対のバンド部材をそれぞれ介護者装着固定具2の背面側の左右縁部、すなわち装着時に介護者の両脇から腰部中央へと装着される。
【0074】
介護者装着固定具2の腰部中央には前述した通り中継リング22があり、連結バンド31は中継リング22に挿通され向きを上方へと変更される。
【0075】
向きを変更された連結バンド31は、それぞれに介護者装着固定具2の頭部突出孔21の左右へ装着される。
【0076】
すなわち、向きを変更された連結バンド31は、介護者装着固定具2を装着した際に端部が両肩から垂れ下がるような状態となる。
【0077】
連結バンド31の装着状態において、介護者の背面部分に位置するバンド部材を左右背後バンド311、介護者の両肩から垂れ下がった部分を左右前部バンド312とする。
【0078】
左右背後バンド311は、その端部に背後バンド連結具311aを有する。
【0079】
背後バンド連結具311aは、左右どちらか一方を頭部受部11の背後バンド連結部116ともう一方を、股割れ部12の背後バンド連結部123にそれぞれ連結する。
【0080】
具体的には、介護者の正面右側に身障者の頭が来るように装着する際には、介護者の左脇の背後バンド連結具311aを頭部受部11の右側の背後バンド連結部116に設けた金具と連結し、介護者の右脇の背後バンド連結具311aを股割れ部12の背後バンド連結部123に設けた右側の金具に挿通したのちに左側の金具と連結するとよい。
【0081】
左右前部バンド312は、その端部に前部バンド連結具312aを有する。
【0082】
前部バンド連結具312aは、左右どちらか一方を頭部受部11の前部連結バンド115aと股割れ部12の前部連結バンド124ともう一方を、頭部受部11の前部連結バンド115bにそれぞれ連結する。
【0083】
具体的には、介護者の正面右側に身障者の頭が来るように装着する際には、介護者の右肩側の前部バンド連結具312aは頭部受部11の前部連結バンド115aと股割れ部12の前部連結バンド124と連結し、介護者の左肩側の前部バンド連結具312aは頭部受部11の前部連結バンド115bの2本ともを連結するとよい。
【0084】
連結機構部3は、左右背後バンド311によって身障者受け体1を介護者の腰部から支持し、左右前部バンド312によって身障者受け体1の荷重を介護者の両肩で受けることができる。
【0085】
前記のような連結構成としたことで、身障者を介護者の体躯前面に確実に保持すると共に荷重を両肩で受け、腰で支えることができ介護者の負担が軽減する効果がある。
【0086】
また、身障者受け体1の上方支持を4本のバンドで行い、身障者受け体1の前後の移動を左右背後バンド311で抑えることで常に安定し介護者の手を添えることなく身障者を抱えることができる。
【0087】
すなわち、介護者は身障者を抱えながらにしてフリーハンドとなるため、介護のしやすさが向上し、また、緊急時の避難では介護具や身の回りの用品を手にもって行うことができる。
【0088】
また、身障者用介護具機構Mの各部材の多くはメッシュ状の合成樹脂素材でできており、水に強く介護において一番の重労働である入浴時にも使用でき、介護の負担を軽減できる効果がある。
【0089】
次に、本発明の身障者用介護具機構にかかる他の実施例について図面を用いて詳説する。
図9及び
図10は、本発明の身障者用介護具機構にかかる他の実施例を示す模式的斜視図である。
【0090】
身障者用介護具機構Mは、主に身障者を保持するための身障者受け体1と、身障者受け体1を介護者が支えるための介護者装着固定具2と、身障者受け体1と介護者装着固定具2とを連結するための連結機構部3とより構成している。
【0091】
身障者受け体1は、全体をメッシュ素材で形成されており、身障者の頭部を載置するために始端部に形成した頭部受部11と、身障者の股部を支持するために終端部に形成した股割れ部12と、身障者が身障者受け体1の側面から落下しないように頭部受部の左右縁部に形成した左右壁部13とより構成される。
【0092】
また、左右壁部13の頭部受部11側と股割れ部12側とにそれぞれ一端を肩バンド締結具141によって着脱自在とした介護者肩掛け用バンド14を備えている。
【0093】
また、肩バンド締結具141より外方には後述する腰バンド締結具321と対を成す締結具15を備えている。
【0094】
また、介護者肩掛けバンド14は、第一の実施例に記載した、介護者装着固定具2と連結機構部3の左右前部バンド312と同様の役割を担う構成としている。
【0095】
すなわち、
図9及び
図10に示すように、2本の介護者肩掛けバンド14を交差させることで、第一の実施例に記載した被りシート形状のように、介護者の体躯に身に着ける構成とし、介護者肩掛け用ベルト14のうち介護者の体躯前面に回り込んだ部分が身障者受け体1と連結を行う左右前部バンド312として機能する。
【0096】
介護者肩掛け用バンド14は、ナイロン等の引張強度の高い素材から形成され、バンド長さを調節する調節具143と、上述した肩バンド締結具141の雌雄どちらか一方と、装着時に荷のかかる肩から肩甲骨あたりに当接して荷重負荷を和らげる肩パッド142とからなる。
【0097】
介護者装着固定具2は、メッシュ素材によって形成された腰巻きベルト25からなる。
また、腰巻きベルト25が第一の実施例に記載したバンド部23と同様に機能する。
【0098】
腰巻ベルト25は、略長方形の帯状としており、環状とするために両端部に面ファスナー251をそれぞれ貼着されている。
【0099】
連結機構部3は、身障者受け体1と介護者装着固定具2とを連結するためのものであり、介護者装着固定具2の左右へ延出した腰部連結バンド32からなる。
【0100】
また、腰部連結バンド32は、第一の実施例に記載した左右背後バンド311と同様に機能する。
【0101】
すなわち、左右背後バンド311が身障者受け体1と背後から支えるように連結するのと同じように、腰部連結バンド32が、介護者の腰部背面から身障者受け体1と連結し支えることができる。
【0102】
腰部連結バンド32は、ナイロン等の引張強度の高い素材で形成され、それぞれの一端を介護者装着固定具2と一体に縫製され、それぞれのもう一端には腰バンド締結具321を備えている。
【0103】
装着に際しては、介護者はまず介護者装着固定具2を自身の腰部に面ファスナー251により固定する。
【0104】
その後、身障者受け体1の介護者肩掛け用バンド14を背部で交差させるように体躯前面へ回し、肩バンド締結具141によって身障者受け体1を肩から体躯前へ下げるようにして抱える。
【0105】
最後に、連結機構部3である腰部連結バンド32の腰バンド締結具321と該腰バンド締結具321と対となる身障者受け体1に備えられた締結具15とで身障者受け体1を介護者の腰部付近に固定する。
【0106】
上述した構成によって、介護者は要介護者を収容した身障者受け体1を肩、背中、腰の3点にて分散して抱えることで、安定して手放し状態で抱きかかえることができる。
【0107】
更に、介護者装着固定具2を単にベルト状としていることで、装着が容易となり、緊急時でもすぐに装着し要介護者を抱きかかえることが可能となる。
【0108】
また、肩パッド142によって、一番荷重のかかる肩や背中への疲労を軽減し長時間の介護を可能とすることができる。
【0109】
また、身障者受け体1は、展開状態で左右対称な形状としている、すなわち、各締結部が左右壁部13のどちらにも備えたことで、介護者の体躯に対し左右どちらの向きにも連結可能としている。
【0110】
また、その他の実施例としては、身障者受け体1の裏側、すなわち身障者と接する面に、ウレタンや綿等からなるクッション材を取り外し可能に構成することも考えられる。
【0111】
また、上述した各種効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0112】
M 身障者用の介護用具
1 身障者受け体
11 頭部受部
12 股割れ部
13 左右壁部
2 介護者装着固定具
21 頭部突出孔
22 中継リング
23 バンド部
3 連結機構部
31 連結バンド