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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100720
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20220629BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D1/185
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214864
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
【テーマコード(参考)】
3D030
3D333
【Fターム(参考)】
3D030DD65
3D333CB02
3D333CB29
3D333CB42
3D333CB46
3D333CC30
3D333CD23
3D333CE05
3D333CE40
3D333CE55
(57)【要約】
【課題】操舵装置100の全体の長さの短縮化を図る。
【解決手段】操作部材240の操作に基づき電気的に転舵輪210を転舵させるステアバイワイヤ方式の操舵装置100であって、操作部材240を保持するコラムシャフト110と、コラムシャフト110とは軸心が異なる位置関係で配置されるトーションバー150と、コラムシャフト110とトーションバー150とをトルクの伝達を可能に接続する伝達装置140と、トーションバー150、および伝達装置140を介してコラムシャフトにトルクを与える駆動装置130と、トーションバー150の捩れ量に基づきトルクを検出するトルクセンサ160と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材の操作に基づき電気的に転舵輪を転舵させるステアバイワイヤ方式の操舵装置であって、
前記操作部材を保持するコラムシャフトと、
前記コラムシャフトとは軸心が異なる位置関係で配置されるトーションバーと、
前記コラムシャフトと前記トーションバーとをトルクの伝達を可能に接続する伝達装置と、
前記トーションバー、および前記伝達装置を介して前記コラムシャフトにトルクを与える駆動装置と、
前記トーションバーの捩れ量に基づきトルクを検出するトルクセンサと、
を備える操舵装置。
【請求項2】
前記コラムシャフトは、
前記操作部材が進出し後退できるように伸縮する伸縮構造を備える
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記伝達装置は、
前記駆動装置が発生させるトルクを増大させて前記コラムシャフトに伝達する減速機能を備える
請求項1または2に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイール等の操作部材の操作を電気的な操作情報に変換し、当該操作情報に基づき転舵輪を転舵させる操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、トーションバーを、ステアリングシャフトと同軸に配置せず、トーションバーが配置されていた位置に遊星歯車装置をトーションバーと同軸に配置し、トーションバーは遊星歯車装置内に配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-331487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の自動運転においてシステムが全責任をもつ自動運転レベル4以上の状態では、ステアリングホイールを大きく移動させて運転者の前方の空間を広く確保すると、運転者の快適性を高めることが出来る。ステアリングホイールを大きく移動させるためにはステアリングホイールを保持するコラムシャフトはシャフトの軸方向に対して短い方が好ましい。
【0005】
ところが、自動運転を可能とするコラムシャフトには、ステアリングホイールに反力を与えるモーターや、マニュアル運転中のステアリングホイールの操作状態を取得するためのトーションバーなどがシャフトと同軸上に連結され、コラムシャフト全体としてシャフトの軸方向に長さを短くすることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ステアリングホイール等の操作部材を保持するコラムシャフトをシャフトの軸方向に対して短くすることができる操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つである操舵装置は、操作部材の操作に基づき電気的に転舵輪を転舵させるステアバイワイヤ方式の操舵装置であって、前記操作部材を保持するコラムシャフトと、前記コラムシャフトとは軸心が異なる位置関係で配置されるトーションバーと、前記コラムシャフトと前記トーションバーとをトルクの伝達を可能に接続する伝達装置と、前記トーションバー、および前記伝達装置を介して前記コラムシャフトにトルクを与える駆動装置と、前記トーションバーの捩れ量に基づきトルクを検出するトルクセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操舵装置をシャフトの軸方向に対して短くすることができ、コラムシャフトが保持する操作部材を大きく移動させることができる。また、運転者が操作部材を操作するトルクと駆動装置が発生させるトルクの差分、または合計トルクを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ステアバイワイヤ方式の操舵装置と転舵輪とを示す斜視図である。
図2】操舵装置全体を示す斜視図である。
図3】ジャケット、ハウジングを省略して操舵装置を示す斜視図である。
図4】操舵装置の断面図である。
図5】トーションバー近傍を示す断面図である。
図6】第一シャフト、第二シャフトの係合関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る操舵装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0011】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0012】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0013】
図1は、操舵装置と転舵輪とを示す斜視図である。図2は、操舵装置全体を示す斜視図である。図3は、ジャケット、ハウジングを省略して操舵装置を示す斜視図である。図4は、操舵装置の断面図である。操舵装置100は、運転者が車両を操向するために操作する操作部材240が取り付けられ、操作部材240と二つの転舵輪210とは機械的に接続されていない。操舵装置100は、操作部材240が操作された際の操作量が情報としてコントローラ230に処理され、操作量に基づき二つの転舵輪210の転舵角がそれぞれ制御されるいわゆるSBW(Steer By Wire)システムが採用されている。操舵装置100は、コラムシャフト110と、駆動装置130と、伝達装置140と、トーションバー150と、トルクセンサ160と、を備えている。本実施の形態の場合、操舵装置100は、ジャケット170と、伸縮装置180と、を備えている。操舵装置100は、手動運転と自動運転とを切り替えることができる自動車、バス、トラック、建機、農機などの車両に取り付けられている。
【0014】
操作部材240は、手動運転時において運転者に操作され転舵輪210の角度(転舵角)を指示するための部材である。操作部材240の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、操作部材240は、円環状の部材であり、コラムシャフト110と接続するためのスポーク部を備えている。
【0015】
コラムシャフト110は、操作部材240を保持する部材である。本実施の形態の場合、コラムシャフト110は、トーションバー150の位置を基準として操作部材240が運転者に向かって進出しダッシュボード(車両の前方)に向かって後退できるように伸縮する伸縮構造を備えている。具体的にコラムシャフト110は、操作部材240に連結されるトップシャフト111と、ミドルシャフト112と、ベースシャフト113とを備えている。トップシャフト111とミドルシャフト112、およびミドルシャフト112とベースシャフト113は、スプライン嵌合、セレーション嵌合など軸(図中Y軸)周りの回転に対しトルクを伝達でき、かつ軸方向には伸縮可能ないわゆるテレスコピック構造を備えている。
【0016】
本実施の形態の場合、コラムシャフト110は、筒状のジャケット170の内側に刺し通された状態で配置され、軸受179を介してジャケット170に回転可能に保持されている。ジャケット170は、トップジャケット171、ミドルジャケット172、ベースジャケット173を備え、コラムシャフト110と同様に伸縮可能である。
【0017】
伸縮装置180は、コラムシャフト110を伸縮させる装置である。伸縮装置180の構造は特に限定されるものではないが、例えばボールねじ、送りねじ、または滑りねじなどを複数段に組み合わせ、シャフト、またはナットを回転させる事により伸縮装置180全体の長さを変化させることができる構造を例示することができる。本実施の形態の場合、伸縮装置180は、ジャケット170、および軸受179を介してトップシャフト111に接続されており、伸縮装置180が伸縮することに伴ってコラムシャフト110、およびジャケット170が伸縮する。
【0018】
トーションバー150は、棒状の部材であり、トーションバー150が捩られる方向に力を受けると反発力を発生させて元に戻ろうとするばねの一種であり、いわゆるねじりばねである。トーションバー150は、コラムシャフト110とは軸心が異なる位置関係で配置され、運転者が操作部材240に加えるトルクと駆動装置130が発生させるトルクとの関係に基づきねじれが発生する。
【0019】
本実施の形態の場合、トーションバー150は、コラムシャフト110の軸心と平行になるように配置されている。トーションバー150の操作部材240側の端部は、第一シャフト151、および伝達装置140を介してコラムシャフト110のベースシャフト113と接続され、駆動装置130側の端部は、駆動装置130の出力軸131と第二シャフト152を介して接続されている。トーションバー150の両端部は、軸周りにおいていずれも同方向、または逆方向に回転可能である。つまり、トーションバー150の両端部は、いずれもトルクが入力される場合がある。
【0020】
伝達装置140は、減速機能を備え(詳細は後述)、コラムシャフト110に発生したトルクを減少させてトーションバー150に伝達するため、トーションバー150は、コラムシャフト110の途中において介在状態で直接接続されるトーションバーよりもばね定数(ねじり剛性)が低く設定されている。
【0021】
伝達装置140は、コラムシャフト110とトーションバー150とをトルクの伝達を可能に接続する装置である。伝達装置140の具体的な構造は、特に限定されるものではなく、歯車を組み合わせた構造、リンクを利用した構造などを例示することができる。伝達装置140は、トルクの入力側、およびトルクの出力側が頻繁に入れ替わり、順回転、逆回転のどちらの回転も伝達するものであるため、順効率、および逆効率が同等のものが望ましい。本実施の形態の場合、伝達装置140は、ベルトドライブ方式が採用されており、第一プーリー141、第二プーリー142、無端ベルト143、ハウジング144を備えている。伝達装置140は、駆動装置130が発生させるトルクを増大させてコラムシャフト110に伝達する減速機能を備えており、第一プーリー141の径が第二プーリー142の径よりも大きく設定されている。ベルトドライブ方式は、ウォーム減速機などに比べて、伝達装置140によるトルクの減衰を抑制でき、駆動装置130側にトーションバー150を配置してもトルクセンサ160により正確なトルクを検知することが可能となる。
【0022】
ハウジング144は、第一プーリー141、第二プーリー142、および無端ベルト143を収容する筐体であり、第一プーリー141、および第二プーリー142を回転可能に保持している。本実施の形態の場合、ハウジング144は、ベースジャケット173に固定されている。
【0023】
駆動装置130は、トーションバー150、および伝達装置140を介してコラムシャフト110に与えるトルクを発生させる装置である。駆動装置130の種類は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、駆動装置130は、サーボモーターなどの電動モーターが採用されている。電動モーターの出力軸131は、トーションバー150と同軸上で連結されており、トーションバー150の一端部に同軸上でトルクを付与している。駆動装置130は、例えばベースジャケット173、伝達装置140のハウジング144等と共に車体に固定される。
【0024】
駆動装置130は、操作部材240を運転者が回して操舵する際に、運転者の力に反するトルクを操作部材240に付与する。この駆動装置130は、タイヤと操作部材240とが機械的に接続されていた従来の車両において運転者が操舵に必要な力の感覚などを再現するいわゆる反力モーターである。
【0025】
トルクセンサ160は、トーションバー150の捩れ量に基づきトルクを検出するセンサである。トルクセンサ160の種類は、特に限定されるものではないが、トーションバー150は、操作部材240の操作に伴って一端部が回転し、駆動装置130によって他端部が回転し、両端部の回転が逆方向の場合、同方向の場合が存在するため、トルクセンサ160は、トーションバー150の両端部の位相ズレを電気的、または磁気的に検知することができるセンサを備えている。
【0026】
具体的には、図5に示すように、第一シャフト151の駆動装置130側の端部は、第二シャフト152の操作部材240側の端部に相対回転可能に挿入されている。第二シャフト152、および第一シャフト151は、トーションバー150の両端部に圧入などによりそれぞれ固定されている。すなわち、トーションバー150は、有底円筒状の第二シャフト152、および第一シャフト151内に収容されている。
【0027】
第一シャフト151、および第二シャフト152の嵌合部の周囲には、トルクセンサ160が配置されている。トルクセンサ160は、第二シャフト152から操作部材240側に向かって突出するように第二シャフト152に取り付けられた磁気ヨーク161と、第一シャフト151の外周に取り付けられたマグネット162とを備え、第一シャフト151、および第二シャフト152の相対回転量に応じて変化する磁気抵抗に基づきトルクを検出する。
【0028】
また、図6に示すように、第二シャフト152の内周には外側に向かって窪み軸方向に延在する溝153が設けられ、第一シャフト151の外周には溝153に挿入されるストッパ154が突出状に設けられている。ストッパ154が溝の壁面に当接することにより一定角以上のトーションバー150のねじれを規制している。
【0029】
以上の実施の形態にかかる操舵装置100によれば、操作部材240を保持するコラムシャフト110の軸方向の全体の長さを短くすることができ、操舵装置100を車体に取り付ける位置に関する設計の自由度を向上させることが可能となる。
【0030】
また、トーションバー150の存在に影響されることなくコラムシャフト110を多段の伸縮構造としてストロークを十分に確保することができ、操作部材240を例えば運転者が操作する位置からダッシュボード内まで大きく移動させることができ、自動運転時における運転者の快適性を向上させることができる。また、自動運転時において、比較的大型の操作部材240を運転者から隔離することができるため、誤操作防止となり、安全が確保される。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0032】
例えば実施の形態において、コラムシャフト110、およびジャケット170の伸縮構造としてテレスコピック構造を示したが、コラムシャフト110などの伸縮構造は、複数のレールの組み合わせなど任意の構造を採用することができる。
【0033】
また、2段階で伸縮するコラムシャフト110を例示したが、コラムシャフト110の伸縮は1段であってもよく、第一ミドルシャフト、第二ミドルシャフトなどを備え、3段階以上で伸縮させてもかまわない。
【0034】
また、コラムシャフト110が伸縮する場合を説明したが、パンタグラフ機構などのリンク機構を採用し、コラムシャフト110が折れ曲がる等により操作部材240を出退させるものでもかまわない。
【0035】
また、トーションバー150よりも操作部材240側においてトーションバー150に負荷トルクを与える負荷手段を備えてもかまわない。具体的には、伝達装置140のハウジング144と、第二プーリー142、トーションバー150との間に摩擦トルクを発生させる摩擦部材を配置する場合などが例示できる。これにより、トーションバーの捻じれ量を増やすことができ、トルクセンサ160による測定精度を向上させることが可能となる。摩擦部材がトーションバー150に及ぼす摩擦トルクは、伝達装置140に大きな影響を与えることがないように、伝達装置140の最大発生トルクの10%未満であることが望ましい。
【0036】
また、駆動装置130とトーションバー150との間、およびトーションバー150と伝達装置140との間の少なくとも一方を第二のシャフトを用いて接続してもかまわない。
【0037】
また、駆動装置130の出力軸131とトーションバー150とを同軸上に配置する場合を説明したが、出力軸131とトーションバー150との間に第二の伝達装置を介在接続し、出力軸131軸とトーションバー150軸とが交差、または捩れの位置に配置されてもかまわない。
【0038】
また、操作部材240は、円環状に限定されるわけではなく、楕円、長円、多角形等でもよく、これらを組み合わせたものでもかまわない。
【0039】
また、操舵装置100は、車体に対して傾動するチルト機構を備えてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、手動運転が可能であり、かつ自動運転が可能な自動車、バス、トラック、農機、建機など車輪、または無限軌道などを備えた車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
100…操舵装置、110…コラムシャフト、111…トップシャフト、112…ミドルシャフト、113…ベースシャフト、130…駆動装置、131…出力軸、140…伝達装置、141…第一プーリー、142…第二プーリー、143…無端ベルト、144…ハウジング、150…トーションバー、160…トルクセンサ、170…ジャケット、171…トップジャケット、172…ミドルジャケット、173…ベースジャケット、179…軸受、180…伸縮装置、210…転舵輪、230…コントローラ、240…操作部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6