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特開2022-100769完全閉鎖型灌流液送液系および完全閉鎖型灌流液循環システム
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  • 特開-完全閉鎖型灌流液送液系および完全閉鎖型灌流液循環システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100769
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】完全閉鎖型灌流液送液系および完全閉鎖型灌流液循環システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220629BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20220629BHJP
   C12N 5/07 20100101ALN20220629BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M3/00 Z
C12M1/00 C
C12N1/00 B
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214962
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】595040205
【氏名又は名称】株式会社東海ヒット
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】泉 賢二
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA27
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC08
4B029DA04
4B029DC07
4B029DF07
4B029DG06
4B029GB02
4B065AA90X
4B065BC25
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】血液中のヘモグロビン等を潰さず、血液に接触せずに連続的な送液を、小型で安価に構築したもので実現できる、完全閉鎖型灌流液送液系の提供。
【解決手段】可撓性チューブ11の空気封入路側に取付けられたローラーポンプ13に、可撓性チューブ11がしごかれると接液面S側の空気Aが接液面Sを押し下げて血液Kを押し出す。可撓性チューブ5で構成された送液流路は、一対の逆止弁7a、7bで一方向のみ流れが許容されているので、血液Kが押し出されると、送液方向下流側の逆止弁7bを通って培養容器3側に送液される。同時に、可撓性チューブ11の閉止側には負圧が発生する。可撓性チューブ11は先端が閉止されているので、圧閉状態が解除されたときに血液Kを押し出した側が吸引されて接液面Sを押し上げる。可撓性チューブ5で構成された送液流路は、一対の逆止弁7a、7bで一方向のみ流れが許容されているので、血液Kの吸引分だけ送液方向上流側の逆止弁7aを通って血液Kが供給される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌流液を流す送液流路に介装され、送液方向にのみ流れを許容する一対の逆止弁と、前記一対の逆止弁の間で一端側が前記送液流路に連通され、他端側が閉止されて、連通側で前記灌流液と接液状態で空気が封入された空気封入路と、前記空気封入路の空気封入容積を減少・復元させる容積往復変動手段とを備え、前記容積の減少・復元の繰り返しに追従する空気の連通側への押しと戻りの繰り返しにより前記灌流液が脈動送液されることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系。
【請求項2】
請求項1に記載した完全閉鎖型灌流液送液系において、
空気封入路は可撓性チューブで構成され、容積往復変動手段は前記チューブを圧閉・復元する往復押圧機構で構成されていることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系。
【請求項3】
請求項2に記載した完全閉鎖型灌流液送液系において、
往復押圧機構はローラーを1つ設けたローラーポンプで構成されていることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した完全閉鎖型灌流液送液系において、
灌流液は血液であることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系。
【請求項5】
組織等が収容された培養容器と、前記培養容器に灌流液を送液する請求項1から4のいずれかに記載した完全閉鎖型灌流液送液系と、前記培養容器から前記灌流液を回収する灌流液回収系と、前記灌流液を貯留する貯留タンクとで構成された完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、
前記貯留タンクが送液方向下流側の逆止弁と前記培養容器との間に、脈動抑制用のバッファ部を兼ねて設けられていることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システム。
【請求項6】
請求項5に記載した完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、
貯留タンク内では空気が弾性的に圧縮自在な流体として封入量変更可能に封入されており、封入空気量により脈動抑制の度合いを調整できることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システム。
【請求項7】
請求項6に記載した完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、
一端が圧力センサの感圧面で封止され、他端が貯留タンクの脈動由来の変動液面の常に上側にくる位置で密封連通する空気チューブを備え、送液流路に流す灌流液の脈動に対して生じる前記空気チューブを含めた空気密封空間の空気の圧縮と復元を前記感圧面が受ける非接触式灌流圧測定部を備えることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システム。
【請求項8】
請求項7に記載した完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、
圧力センサからのセンサデータと目標値に基づいて、容積往復変動手段の制御信号を作成して送出するコントローラを備えることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞、組織、臓器、動物等の生体試料に血液を含む灌流液を流す送液系および当該送液系を組み込んだ灌流液循環システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から血液送液系で使用されている専用の送液ポンプは、臨床用途が多く、特許文献1に記載のように、遠心ポンプなどどれも複雑で高価であり、動物実験用に手軽に使用したいような小型で安価なものがない。
そのため、動物実験用には、市販の比較的小型で安価なローラーポンプやシリンジポンプが代用されている。而して、ローラーポンプは、可撓性チューブをローラーで圧閉する方式なので、血液中のヘモグロビン等が潰れてしまう。シリンジポンプは、シリンジを押し出す方式のため、連続送液ができない。シリンジを2つ使用し、電磁バルブで切り替えることで連続使用を可能にしているものもあるが、それだと複雑で高価なものとなる。
その他、ダイヤフラム式やピストン式のポンプでも市販の比較的小型で安価なタイプがあり、ヘモグロビン等を潰したりせず、連続送液も可能になっているが、ダイヤフラムやピストンが血液に接触するため、これらの腐食や血液のコンタミネーションにつながるので、送液ポンプとしては実際のところ使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-325750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、血液中のへモグロビン等を潰さず、血液に接触せずに連続的な送液を、小型で安価に構築したもので実現できる、新規且つ有用な完全閉鎖型灌流液送液系を提供することを、その目的とする。
また、本発明は、上記完全閉鎖型灌流液送液系を組み込んだ完全閉鎖型灌流液循環システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、灌流液を流す送液流路に介装され、送液方向にのみ流れを許容する一対の逆止弁と、前記一対の逆止弁の間で一端側が前記送液流路に連通され、他端側が閉止されて、連通側で前記灌流液と接液状態で空気が封入された空気封入路と、前記空気封入路の空気封入容積を減少・復元させる容積往復変動手段とを備え、前記容積の減少・復元の繰り返しに追従する空気の連通側への押しと戻りの繰り返しにより前記灌流液が脈動送液されることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した完全閉鎖型灌流液送液系において、空気封入路は可撓性チューブで構成され、容積往復変動手段は前記チューブを圧閉・復元する往復押圧機構で構成されていることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載した完全閉鎖型灌流液送液系において、往復押圧機構はローラーを1つ設けたローラーポンプで構成されていることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した完全閉鎖型灌流液送液系において、灌流液は血液であることを特徴とする完全閉鎖型灌流液送液系である。
【0009】
請求項5の発明は、組織等が収容された培養容器と、前記培養容器に灌流液を送液する請求項1から4のいずれかに記載した完全閉鎖型灌流液送液系と、前記培養容器から前記灌流液を回収する灌流液回収系と、前記灌流液を貯留する貯留タンクとで構成された完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、前記貯留タンクが送液方向下流側の逆止弁と前記培養容器との間に、脈動抑制用のバッファ部を兼ねて設けられていることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システムである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載した完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、貯留タンク内では空気が弾性的に圧縮自在な流体として封入量変更可能に封入されており、封入空気量により脈動抑制の度合いを調整できることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システムである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載した完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、一端が圧力センサの感圧面で封止され、他端が貯留タンクの脈動由来の変動液面の常に上側にくる位置で密封連通する空気チューブを備え、送液流路に流す灌流液の脈動に対して生じる前記空気チューブを含めた空気密封空間の空気の圧縮と復元を前記感圧面が受ける非接触式灌流圧測定部を備えることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システムである。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載した完全閉鎖型灌流液循環システムにおいて、圧力センサからのセンサデータと目標値に基づいて、容積往復変動手段の制御信号を作成して送出するコントローラを備えることを特徴とする完全閉鎖型灌流液循環システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の完全閉鎖型灌流液送液系によれば、灌流液が血液の場合でも、血液中のヘモグロビン等を潰さず、血液に接触せずに連続的な送液を、小型で安価に構築したもので実現できる。
また、上記完全閉鎖型灌流液送液系を組み込んだ完全閉鎖型灌流液循環システムを実現できる。更に、完全閉鎖型灌流液循環システムに非接触式灌流圧測定部を組み込むことで、完全閉鎖型でありながら、圧力の連続的なモニタリングを精度の高い所定圧での送液に生かせる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る完全閉鎖型灌流液送液系のイメージ図である。
図2】本発明の実施の形態に係る第1例の完全閉鎖型灌流液循環システムのイメージ図である。
図3】本発明の実施の形態に係る第2例の完全閉鎖型灌流液循環システムのイメージ図である。
図4】本発明の実施の形態に係る第3例の完全閉鎖型灌流液循環システムのイメージ図である。
図5図4のコントロールユニットの筐体内部の電気的構成図である。
図6】本発明の実施の形態に係る第4例の完全閉鎖型灌流液循環システムのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る完全閉鎖型灌流液送液系について、図面にしたがって説明する。
図1に示すこの完全閉鎖型灌流液送液系1は、細胞、組織、臓器、動物等の生体試料のうち特に組織Tに灌流液として血液Kを送液する構成でイメージ的に示されている。
符号3は培養容器を示し、この培養容器3には組織Tが密閉された状態で収容されている。但し、培養容器3には外部との連通用にポートが設けられている。収容された組織Tには送血用カニューレ(図示省略)が留置されている。符号5は可撓性チューブを示し、この可撓性チューブ5の一端側はポートを介して培養容器3に入り込んで、このカニューレに接続されている。この可撓性チューブ5の中間部には一対の逆止弁7a、7bが介装されており、矢印に示す送液方向にのみ血液Kの流れが許容されている。可撓性チューブ5で送液流路が構成されている。
【0016】
可撓性チューブ5の他端側には貯留タンク9が接続されている。この貯留タンク9は血液Kが送液可能な密閉型になっており、そこに血液Kが貯留されている。この血液Kが可撓性チューブ5を通って培養容器3に収容された組織Tに送液される。
一対の逆止弁7a、7bの間にT字ジョイント部(図示省略)を介して、別の被しごき性に優れた可撓性チューブ11が連通接続されている。この可撓性チューブ11の先端は閉止されている。可撓性チューブ11は可撓性チューブ5に対して逆T字状をなすように上方に立ち上がった状態で保持される。
可撓性チューブ11には先端閉止側に寄せて空気が封入されて、空気封入路が構成されている。封入空気量が調整されており、後述のように封入された空気Aが圧縮・復元の弾性挙動を示すストローク範囲では接液面Sは常に可撓性チューブ11側に留まっている。
【0017】
可撓性チューブ11の空気封入路側にローラーポンプ13が取付けられている。このローラーポンプ13の加圧部材と円形状の内周を有する外側部材の間に可撓性チューブ11が挟まれており、加圧部材をなすローラー13aが公転しつつ自転することで、可撓性チューブ11をしごくように圧閉しながら黒塗り矢印に示すように回転する。そして、回転が進んでその圧閉状態が解除される位置まで到達すると、可撓性チューブ11は弾性的に復元する。更に、回転して、可撓性チューブ11を再びしごく。この繰り返しにより、可撓性チューブ11の圧閉と復元が交互に繰り返される。
【0018】
可撓性チューブ11がしごかれると接液面S側の空気Aが接液面Sを押し下げて血液Kを押し出す。可撓性チューブ5で構成された送液流路は、一対の逆止弁7a、7bで一方向のみ流れが許容されているので、血液Kが押し出されると、その分だけ送液方向下流側の逆止弁7bを通って培養容器3側に送液される。
同時に、可撓性チューブ11の閉止側には負圧が発生する。通常の送液用では、可撓性チューブは液体供給源と繋がっているので、この負圧により次に送液すべき液体が液体供給源から吸引されるが、この場合には可撓性チューブ11は閉止されているので、圧閉状態が解除されたときに血液Kを押し出した側が吸引されて接液面Sを押し上げる。
可撓性チューブ5で構成された送液流路は、一対の逆止弁7a、7bで一方向のみ流れが許容されているので、血液Kの吸引分だけ送液方向上流側の逆止弁7aを通って血液Kが供給される。
【0019】
上記のように、空気Aの与圧を血液Kの押し出しに利用し、空気Aの負圧を血液Kの吸引に利用しており、この空気Aの与圧方向と負圧方向の往復変動がローラーポンプ13の使用で実現されており、接液面Sが白抜き矢印に示すように上下方向に往復移動し、血液Kは矢印に示すように送られる。
【0020】
血液Kは貯留タンク9側から培養容器3側に向かって脈動送液されており、この脈動は、モーターの回転数を調整することで、疑似拍動化することができる。
この完全閉鎖型灌流液送液系1では、ローラーポンプ13のローラー13aがしごいて圧閉する可撓性チューブ11内には血液Kが通されていないので、血液中のヘモグロビン等を潰さず、連続的に送液できる。
また、既存のローラーポンプから余分なローラーを取り外すだけの改造で本発明のローラーポンプ13になるので、完全閉鎖型灌流液送液系1を小型で安価に構築できる。
【0021】
本発明の実施の形態に係る完全閉鎖型灌流液循環システムについて、図面にしたがって説明する。
図2に示す完全閉鎖型灌流液循環システム15は、上記の完全閉鎖型灌流液送液系1を組み込んで回路状にしたものである。培養容器3に収容された組織Tに脱血用カニューレ(図示省略)が更に留置されている。符号17は可撓性チューブを示し、この可撓性チューブ17の一端側はポートを介して培養容器3に入り込んで、このカニューレに接続されている。この可撓性チューブ17の他端側には貯留タンク9が接続されており、矢印に示すように、培養容器3側から血液Kが回収される灌流液回収系が構成されている。可撓性チューブ5と可撓性チューブ17は同じ種類のものである。
貯留タンク9が、培養容器3から送液方向上流側の逆止弁7aに向かう送液流路の間に設けられており、血液Kが脈動送液状態のまま培養容器3側に送液される。従って、この脈動を疑似拍動化したい場合にはこの配置が推奨される。
【0022】
図3に示す完全閉鎖型灌流液循環システム19は、上記の完全閉鎖型灌流液循環システム15と、貯留タンク9の接続位置が異なっている。
すなわち、貯留タンク9が送液方向下流側の逆止弁7bと培養容器3との間に設けられている。貯留タンク9の内部上側には空気Aが封入されて空気室になっており、脈動抑制用のバッファ部を兼ねている。
【0023】
ローラーポンプ13が血液Kの押し出し行程の際には、その押し出し圧力により貯留タンク9内の空気Aが圧縮され、血液Kが増える。一方、血液Kの戻し行程の際には、押し出し圧力が掛からないため、圧縮空気の開放圧力によって貯留タンク9内の血液Kが押し出される。このメカニズムで脈動が抑制される。
可撓性チューブ5は貯留タンク9の流入側と流出側とで分断されており、それぞれの端部が貯留タンク9に接続されているが、バッファ効果を確保するために、血液Kの流入側の可撓性チューブ5の先端の高さが、流出側の可撓性チューブ5の先端の高さよりも高くなっている。
脈動を抑制したい場合にはこの配置が推奨される。
【0024】
図4に示す完全閉鎖型灌流液循環システム21は、上記の完全閉鎖型灌流液循環システム19に、非接触式灌流圧測定方式を採用した圧力制御機構が更に組み込まれている。
空気チューブ25の一端側が貯留タンク9の上側の常に空気Aで満たされている空間に密封連通されている。空気チューブ25の他端側は圧力センサ27の感圧面27aで封止される。
【0025】
符号29はコントロールユニットを示し、上記したローラー13aを含むローラーポンプ13は、このコントロールユニット29の筐体31の正面に設けられている。また、空気チューブ25の他端側は筐体31の内部に挿入されている。圧力センサ27は内部に収納されており、内部で上記したように空気チューブ25の他端側が封止されている。
図5に示すように、圧力センサ27はゲージ圧タイプになっており、その感圧面27aで受けた圧力はアナログ制御信号としてコントローラ33に送出される。このコントローラ33は、上記アナログ制御信号を灌流圧の測定値(センサデータ)v1として受取り、目標値(設定値)v2に一致させるように、内蔵のMCUにより演算し、アナログ制御信号を作成・送出する。この送出先はパルス変換機35になっており、ここでパルス電圧信号に変換されて、最終的にローラーポンプ13のモーター駆動基盤13bに送出される。モーター駆動基盤13bは、パルス電圧信号の周波数に応じた回転数でモーター(図示省略)を回転させてローラーポンプ13のローラー13aを運動させる。モーター駆動基盤13bはモーターと共に筐体31の内部に配置されている。
【0026】
血液Kが培養容器3側で何らかの事情で詰まり、ローラーポンプ13の押し出し圧力よりも高い圧力を受けて貯留タンク9内の空気Aが圧縮されると、この圧縮に伴って上がった空気圧の圧力上昇を圧力センサ27の感圧面27aが受け止めて、コントローラ33が目標値v2よりも高くなった測定値v1を検知する。コントローラ33はその検知結果に基づいてモーターの回転数を下げる。これにより、ローラーポンプ13による血液Kの送液量が少なくなり、灌流圧の測定値v1が下がり、目標値v2に戻っていく。
【0027】
そして、詰まりが解消されて解放されると、空気圧の圧力下降を圧力センサ27の感圧面27aが受け止めて、コントローラ33が目標値v2よりも低くなった測定値v1を検知する。コントローラ33はその検知結果に基づいてモーターの回転数を上げる。これにより、ローラーポンプ13による血液Kの送液量が多くなり、灌流圧の測定値v1が上がり、目標値v2に戻っていく。
実際の灌流圧の変動に速やかに追従して空気Aの空気圧が変動し、モーターの回転数がこのようなフィードバック制御方式で調整されるので、詰まり等の発生等の状況にかかわらず、血液Kの所定圧での送液状態が精度高く維持される。
【0028】
筐体31の正面にはディスプレイ(表示部)23が設けられており、このディスプレイ23には、コントローラ33で作成された表示信号に基づいて、測定値(センサデータ)v1が遂次更新されながら目標値(設定値)v2と併せて表示されており、制御状況が視認可能になっている。
【0029】
完全閉鎖型灌流液循環システム21では、圧力センサ27に繋がっている空気チューブ25にも空気Aが封入されているので、余分になっている。従って、図3に示す完全閉鎖型灌流液循環システム19と同じ貯留タンク9が使用されていても、空気チューブ25に余分に封入されている空気Aの分だけ、脈動を抑制する効果も結果的に増大している。
【0030】
図6に示す完全閉鎖型灌流液循環システム37では、上記の完全閉鎖型灌流液循環システム21と、貯留タンク9内に封入する空気Aの量が異なっている。
空気Aの量を少な目にすることで、脈動を抑制する効果が減少している。
脈動を生かす場合には、図2に示すように、貯留タンク9が、培養容器3から送液方向上流側の逆止弁7aに向かう送液流路の間に設けられることが好ましいが、非接触式灌流圧測定方式を採用した圧力制御機構を備えるとなると、貯留タンク9の位置が制限される。しかしながら、空気量を少な目にすることで脈動抑制の効果を減じることは可能であり、生体試料の種類や用途によっては脈動有りのタイプとして採用できる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、ローラーポンプ13では可撓性チューブ11をしごくので、横方向だけでなく、下方への押し出し方向にも力が加えられており、血液Kの押し出し及び吸引が効率良く実現されており、かつ、可撓性チューブ11に取り付けるローラーポンプ13を複数取り付けて送液量を容易に増やすことができるので、最も推奨される往復押圧機構になっているが、横方向からのみ力を往復的に加えるようなものであっても、それによって血液Kの押し出し及び吸引が許容される程度に実現できるものであればよい。
また、構成はいずれもイメージ図面で示されているが、実際に具体化する際には、例えば、貯留タンク9としてガラス瓶を使用し、その蓋体に可撓性チューブに接続した針管を刺入する等、適宜必要かつ常識的な工夫が加えられることになるが、それらも本発明の範囲の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…完全閉鎖型灌流液送液系(脈動有り)
3…培養容器 5…可撓性チューブ 7a、7b…逆止弁 9…貯留タンク
11…可撓性チューブ 13…ローラーポンプ 13a…ローラー
13b…モーター駆動基盤
15…完全閉鎖型灌流液循環システム(脈動有り)
17…可撓性チューブ
19…完全閉鎖型灌流液循環システム(脈動無し)
21…完全閉鎖型灌流液循環システム(脈動無し、圧力制御)
23…ディスプレイ(表示部) 25…空気チューブ 27…圧力センサ
27a…感圧面 29…コントロールユニット 31…筐体
33…コントローラ 35…パルス変換機
37…完全閉鎖型灌流液循環システム(脈動有り、圧力制御)
A…空気 K…血液 S…接液面 T…組織
図1
図2
図3
図4
図5
図6