(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100770
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】電子写真機器用帯電ロール
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
G03G15/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214963
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154483
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和寛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁宏
(72)【発明者】
【氏名】村井 愛実
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA16
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB43
2H200HB45
2H200MA04
2H200MA11
2H200MA20
(57)【要約】
【課題】表層材料による画像のムラが抑えられる電子写真機器用帯電ロールを提供する。
【解決手段】軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備え、表層16が、バインダーポリマーと、粗さ形成用粒子と、表面改質剤と、を含み、表面改質剤が、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤である、電子写真機器用帯電ロール10とする。表面改質剤は、フッ素系のノニオン性改質剤がより好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、
前記表層が、バインダーポリマーと、粗さ形成用粒子と、表面改質剤と、を含み、
前記表面改質剤が、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤である、電子写真機器用帯電ロール。
【請求項2】
前記粗さ形成用粒子が、カルボニル基を有するポリマーで構成される、請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記バインダーポリマーが、カルボニル基を有するポリマーで構成される、請求項1または請求項2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記表面改質剤が、前記粗さ形成用粒子の周りに偏在している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
前記表層の前記粗さ形成用粒子が存在している部分の表面における前記表面改質剤の量が、前記表層の前記粗さ形成用粒子が存在していない部分の表面における前記表面改質剤の量よりも多くなっている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
前記表面改質剤が、フッ素系のノニオン性改質剤である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項7】
前記表層における前記粗さ形成用粒子の粒子間距離の平均値が10μm以上50μm以下であり、前記表層における前記粗さ形成用粒子の粒子間距離の偏差値σが30以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真機器の帯電ロールとしては、芯金などの軸体の外周面上にゴム弾性を有する弾性体層を有し、その弾性体層の外周面上に表層を有するものが知られている。また、帯電ロールでは、例えば荷電特性などから、表層のバインダーポリマーに粗さ形成用粒子を添加することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表層のバインダーポリマーには、帯電性を確保するために、誘電率の高い材料が用いられる。このため、ロール表面の表面エネルギーが高くなり、トナーや紙粉などの汚れ物質が静電的にロール表面に付着し、ロール表面が汚れることで帯電性が変化し、耐久後の画像にムラが出やすくなる。また、表層のバインダーポリマーが誘電率の高い材料であると、バインダーポリマーと粗さ形成用粒子の界面エネルギーの差が大きくなり、表層形成前の材料中において粗さ形成用粒子が互いに吸着しあって凝集する。これにより、表層の粗さ形成用粒子の分散性が悪くなり、ロール表面の帯電性にムラが出て、画像にムラが出やすくなる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、表層材料による画像のムラが抑えられる電子写真機器用帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記表層が、バインダーポリマーと、粗さ形成用粒子と、表面改質剤と、を含み、前記表面改質剤が、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤である。
【0007】
前記粗さ形成用粒子は、カルボニル基を有するポリマーで構成されるとよい。前記バインダーポリマーは、カルボニル基を有するポリマーで構成されるとよい。前記表面改質剤は、前記粗さ形成用粒子の周りに偏在しているとよい。前記表層の前記粗さ形成用粒子が存在している部分の表面における前記表面改質剤の量は、前記表層の前記粗さ形成用粒子が存在していない部分の表面における前記表面改質剤の量よりも多くなっているとよい。前記表面改質剤は、フッ素系のノニオン性改質剤であるとよい。前記表層における前記粗さ形成用粒子の粒子間距離の平均値は10μm以上50μm以下であり、前記表層における前記粗さ形成用粒子の粒子間距離の偏差値σは30以下であるとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールによれば、表層が、バインダーポリマーと、粗さ形成用粒子と、表面改質剤と、を含み、表面改質剤が、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤であることから、表層材料による画像のムラが抑えられる。
【0009】
前記粗さ形成用粒子がカルボニル基を有するポリマーで構成されると、誘電率の高い材料で前記粗さ形成用粒子が構成されるため、ロール表面の帯電性が向上する。
【0010】
前記バインダーポリマーがカルボニル基を有するポリマーで構成されると、誘電率の高い材料で前記バインダーポリマーが構成されるため、ロール表面の帯電性が向上する。
【0011】
前記表面改質剤が前記粗さ形成用粒子の周りに偏在していると、前記粗さ形成用粒子の凝集が抑えられる。これにより、表層の粗さ形成用粒子の分散性がよくなり、ロール表面の帯電性のムラが抑えられ、画像のムラが抑えられる。
【0012】
前記表層の前記粗さ形成用粒子が存在している部分の表面における前記表面改質剤の量が、前記表層の前記粗さ形成用粒子が存在していない部分の表面における前記表面改質剤の量よりも多くなっていると、前記粗さ形成用粒子の凝集が抑えられる。これにより、表層の粗さ形成用粒子の分散性がよくなり、ロール表面の帯電性のムラが抑えられ、画像のムラが抑えられる。
【0013】
前記表面改質剤がフッ素系のノニオン性改質剤であると、ロール表面の防汚性および粗さ形成用粒子の凝集抑制効果により優れる。
【0014】
前記表層における前記粗さ形成用粒子の粒子間距離の平均値が10μm以上50μm以下であり、前記表層における前記粗さ形成用粒子の粒子間距離の偏差値σが30以下であると、粗さ形成用粒子の分散性に優れる。これにより、ロール表面の帯電性のムラが抑えられ、画像のムラが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【
図3】実施例1の帯電ロール表層の拡大断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
図2は、表層の拡大断面図である。
【0017】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、帯電ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は帯電ロール10の表面に現れる層となっている。なお、特に図示しないが、必要に応じて、抵抗調整層等の中間層が、弾性体層14と表層16の間に形成されていてもよい。
【0018】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0019】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。
【0020】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0021】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0022】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0023】
非極性ゴムとしては、シリコーンゴム(Q)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。非極性ゴムのうちでは、低硬度でへたりにくい(弾性回復性に優れる)などの観点から、シリコーンゴムがより好ましい。
【0024】
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0025】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0026】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0027】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0028】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0029】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2-メルカプトベンゾチアゾール塩、2-メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0030】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0031】
弾性体層14には、導電性付与のため、導電剤を配合することができる。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物としては、導電性チタン酸化物、導電性亜鉛酸化物、導電性スズ酸化物などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。また、弾性体層14には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0032】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて102~1010Ω・cm、103~109Ω・cm、104~108Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0033】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0034】
表層16は、バインダーポリマーと、粗さ形成用粒子18と、表面改質剤と、を含む。
【0035】
バインダーポリマーは、表層16を構成するベースポリマーである。バインダーポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB)、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物、シリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ニトリルゴム、ウレタンゴムなどを挙げることができる。
【0036】
バインダーポリマーとしては、カルボニル基を有するポリマーが好ましい。カルボニル基を有するポリマーは、比較的誘電率の高い材料であり、帯電ロール10が優れた帯電性を確保しやすいからである。カルボニル基を有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ウレタンゴムなどを挙げることができる。これらのうちでは、耐摩耗性に優れるなどの観点から、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマーが特に好ましい。ポリアミド樹脂は、変性されたものであってもよい。変性ポリアミドとしては、N-メトキシメチル化ナイロンなどのアルコキシ化ポリアミドなどを挙げることができる。
【0037】
粗さ形成用粒子18は、表層16の表面に粗さを付与するための粒子である。つまり、表層16の表面に凹凸を付与するための粒子である。表層16の粗さ形成用粒子18が存在している部分は16aであり、表層16の粗さ形成用粒子18が存在していない部分は16bである。表層16の粗さ形成用粒子18が存在している部分16aは、表層16の粗さ形成用粒子18が存在していない部分16bよりも径方向外側に突出している。表層16の表面凹凸は、感光体と帯電ロール10との間における放電空間を増加させ、放電を促す。これにより、帯電性を向上させ、横スジやムラなどの画像不具合を抑えることができる。
【0038】
粗さ形成用粒子18は、樹脂製粒子などが用いられる。粗さ形成用粒子18の材料は、特に限定されるものではない。粗さ形成用粒子18は、カルボニル基を有するポリマーで構成されることが好ましい。カルボニル基を有するポリマーは、比較的誘電率の高い材料であり、帯電ロール10が優れた帯電性を確保しやすいからである。カルボニル基を有するポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ウレタンゴムなどを挙げることができる。これらのうちでは、耐摩耗性に優れるなどの観点から、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマーが特に好ましい。
【0039】
粗さ形成用粒子18の大きさは、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、平均粒子径3.0μm以上50μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径5.0μm以上30μm以下のものが好ましい。粗さ形成用粒子18の平均粒子径は、表層16の表面をレーザー顕微鏡にて観察し、表面観察時に見える粗さ形成用粒子16の直径を粒径とし、任意の20点の平均で表す。
【0040】
粗さ形成用粒子18の表層16における含有量は、特に限定されるものではないが、均一な帯電性を確保しやすいなどの観点から、表層16のバインダーポリマー100質量部に対し、3質量部以上50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0041】
表面改質剤は、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤である。ノニオン性の表面改質剤は、アニオン性やカチオン性の基を有していないものである。ノニオン性の表面改質剤には、アニオン性の表面改質剤、カチオン性の表面改質剤、両性の表面改質剤は含まれない。ノニオン性の表面改質剤は、ノニオン性の基を有するが、ノニオン性の基は、オリゴマーまたはポリマーで構成されるとよい。すなわち、ノニオン性の基は、複数個のモノマーが結合した重合体で構成されるとよい。オリゴマーは一般的に100個以下のモノマーが結合した重合体であり、ポリマーは一般的に100個以上のモノマーが結合した重合体である。また、ノニオン性の基は、炭化水素基であることが好ましい。ノニオン性の炭化水素基の炭素数としては、2~21が好ましい。より好ましくは2~8である。
【0042】
フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤としては、ノニオン性のフッ素系界面活性剤、ノニオン性のシリコーンオイル、フッ素変性されたノニオン性のアクリル系ポリマー、シリコーン変性されたノニオン性のアクリル系ポリマー、フッ素変性されたノニオン性のアクリル系オリゴマー、シリコーン変性されたノニオン性のアクリル系オリゴマーなどが挙げられる。
【0043】
フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤において、ノニオン性の基は、バインダーポリマーとの親和性が高く、フッ素含有基またはシリコーン基は、バインダーポリマーとの親和性が低い。このため、フッ素含有基またはシリコーン基は粗さ形成用粒子18の近くに配置され、ノニオン性の基は粗さ形成用粒子18から遠くに配置されるように、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤は配向する。これにより、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤は、粗さ形成用粒子18の周りを取り囲み、粗さ形成用粒子18の周りに偏在することで、粗さ形成用粒子18を独立させ、粗さ形成用粒子18の凝集を抑えて粗さ形成用粒子18の分散性を向上することができる。したがって、表面改質剤は、このように粗さ形成用粒子18の周りに偏在しているとよい。
【0044】
また、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤は、フッ素含有基またはシリコーン基を有することで、表層16の表面近くに偏在することができる。これにより、ロール表面において汚れ物質の付着を抑えることができる。この場合、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤は、粗さ形成用粒子18の周りにも偏在することから、表層16の粗さ形成用粒子18が存在している部分16aの表面における表面改質剤の量が、表層16の粗さ形成用粒子18が存在していない部分16bの表面における表面改質剤の量よりも多くなっている。
【0045】
このように、表層16がフッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤を含むことで、バインダーポリマー中において粗さ形成用粒子18の凝集が抑えられる。これにより、表層16の粗さ形成用粒子18の分散性がよくなり、ロール表面の帯電性のムラが抑えられ、画像のムラが抑えられる。また、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤は、非ノニオン性のフッ素系またはシリコーン系の表面改質剤と比較して、比較的誘電率の高いバインダーポリマーを用いることによる汚れ物質の付着を抑える効果も高い。汚れ物質とは、トナーやトナー外添剤、紙粉などである。
【0046】
表面改質剤は、フッ素系のノニオン性改質剤が特に好ましい。フッ素系のノニオン性改質剤としては、ノニオン性のフッ素系界面活性剤、フッ素変性されたノニオン性のアクリル系ポリマー、フッ素変性されたノニオン性のアクリル系オリゴマー、フッ素変性されたノニオン性のウレタン系オリゴマーなどが挙げられる。フッ素系のノニオン性改質剤は、フッ素含有基を有することから、粗さ形成用粒子16の周りや表層16の表面により偏在しやすく、ロール表面の防汚性および粗さ形成用粒子18の凝集抑制効果により優れる。また、表層16のタック性を抑え、汚れ物質の付着を抑えることができる。
【0047】
表層16は、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤(特定の表面改質剤)以外の他の表面改質剤を含んでいてもよいし、他の表面改質剤を含んでいなくてもよい。表層16は、他の表面改質剤を含んでいないほうがより好ましい。表層16が特定の表面改質剤と他の表面改質剤の両方を含む場合、特定の表面改質剤と他の表面改質剤の相互作用により、特定の表面改質剤による粗さ形成用粒子18の凝集抑制効果等の効果が低下するおそれがあるからである。また、表層16は、特定の表面改質剤の1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。表層16は、特定の表面改質剤の1種のみ含んでいるほうがより好ましい。種類の異なる特定の表面改質剤どうしの相互作用により、特定の表面改質剤による粗さ形成用粒子18の凝集抑制効果等の効果が低下するのを抑えられるからである。特定の表面改質剤の1種のみとは、フッ素系のノニオン性改質剤のみ、シリコーン系のノニオン性改質剤のみをいう。さらに、フッ素系のノニオン性改質剤のみにおいて、構造の同じフッ素含有基で構成されるフッ素系のノニオン性改質剤のみをいう。また、シリコーン系のノニオン性改質剤のみにおいて、構造の同じシリコーン基で構成されるシリコーン系のノニオン性改質剤のみをいう。
【0048】
上記するように、粗さ形成用粒子18は、表面改質剤により、表層16において分散性が向上する。粗さ形成用粒子18の分散性の観点から、表層16における粗さ形成用粒子18の粒子間距離の平均値は10μm以上50μm以下であり、表層16における粗さ形成用粒子18の粒子間距離の偏差値σは30以下であるとよい。より好ましくは、粒子間距離の平均値は15μm以上、20以上、40μm以下、30μm以下、粒子間距離の偏差値σは20以下、15以下である。表層16における粗さ形成用粒子18の粒子間距離は、表層16の表面をレーザー顕微鏡にて撮影し、撮影した画像に任意の直線を1本引き、その直線上にある粒子と粒子の間の中心間距離dとする。粒子間距離の平均値および偏差値σは、その直線上にある粒子と粒子の間の中心間距離100点から算出する。
【0049】
表層16には、導電性付与のため、導電剤を配合することができる。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物としては、導電性チタン酸化物、導電性亜鉛酸化物、導電性スズ酸化物などが挙げられる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。また、表層16には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、可塑剤、レベリング剤、充填剤、加硫促進剤、加工助剤、離型剤などを挙げることができる。
【0050】
表層16の体積抵抗率は、帯電性などの観点から、半導電領域に設定するとよい。具体的には、例えば、1.0×107~1.0×1010Ω・cmの範囲内に設定するとよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。表層16の厚さは、特に限定されるものではなく、0.1~3.0μmの範囲などに設定するとよい。表層16の厚さは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から表層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0051】
弾性体層14は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。
【0052】
表層16は、表層16の形成材料を用い、これを弾性体層14の外周面に塗工し、乾燥処理などを適宜行うことにより形成することができる。表層16の形成材料は、希釈溶媒を含んでもよい。希釈溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0053】
以上の構成の帯電ロール10によれば、表層16に含まれる表面改質剤がフッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤であることから、バインダーポリマー中において粗さ形成用粒子18の凝集が抑えられ、表層16における粗さ形成用粒子18の分散性がよくなり、ロール表面の帯電性のムラが抑えられ、画像のムラが抑えられる。また、フッ素系またはシリコーン系のノニオン性改質剤は、非ノニオン性のフッ素系またはシリコーン系の表面改質剤と比較して、比較的誘電率の高いバインダーポリマーを用いることによる汚れ物質の付着を抑える効果も高い。このため、表層材料による画像のムラが抑えられる。
【実施例0054】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0055】
(実施例1~6、比較例1~3)
<導電性ゴム組成物の調製>
ヒドリンゴム(ECO、ダイソー製「エピクロマーCG102」)100質量部に対し、加硫助剤(酸化亜鉛、三井金属製「酸化亜鉛2種」)を5質量部、カーボン(ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンブラックEC300J」)を10質量部、加硫促進剤(2-メルカプトベンゾチアゾール、大内新興化学工業社製「ノクセラーM-P」)を0.5質量部、硫黄(鶴見化学工業社製、「サルファックスPTC」)を2質量部、充填剤(炭酸カルシウム、白石工業製「白艶華CC」)を50質量部添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して導電性ゴム組成物を調製した。
【0056】
<弾性体層の作製>
成形金型(パイプ状)に芯金(直径8mm)をセットし、上記組成物を注入し、180℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0057】
<表層の作製>
表に記載の配合組成(質量部)となるように粗さ形成用粒子とバインダーポリマーと、表面改質剤と、を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に厚さ1.0μmの表層を形成した。これにより、実施例1~6の帯電ロールを作製した。
【0058】
(実施例7)
<導電性ゴム組成物の調製>
イソプレンゴム100質量部に対し、カーボンブラック30質量部、酸化亜鉛6質量部、ステアリン酸2質量部、硫黄1質量部、チアゾール系加硫促進剤0.5質量部、チラウム系加硫促進剤0.5質量部、重質炭酸カルシウム50質量部を配合し、50℃ に温度調節した密閉型ミキサーを用いて10分間混練し、導電性ゴム組成物を調製した。
【0059】
導電性ゴム組成物の材料として、以下の材料を準備した。
・イソプレンゴム(IR):JSR製「JSR IR2200」
・カーボンブラック:キャボットジャパン製「ショウブラックN762」
・酸化亜鉛:堺化学工業製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:日本油脂製「ステアリン酸さくら」
・硫黄:鶴見化学工業製「粉末硫黄」
・チアゾール系加硫促進剤:大内新興化学工業製「ノクセラーDM」
・チラウム系加硫促進剤:大内新興化学工業製「ノクセラーTRA」
・重質炭酸カルシウム:白石カルシウム製「ホワイトンB」、平均粒子径3.6μm
【0060】
<弾性体層の作製>
導電性ゴム組成物を変更した以外は実施例1と同様にして、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0061】
<表層の作製>
実施例1と同様にして、弾性体層の外周に厚さ1.0μmの表層を形成した。これにより、実施例7の帯電ロールを作製した。
【0062】
表層材料として用いた材料は以下の通りである。
・バインダーポリマー(PA):鉛市製「ファインレジンFR-101」
・バインダーポリマー(アクリル):DIC製「アクリディックA-1300」
・粗さ形成用粒子(PA):アルケマ製「オルガソール2001UDNAT1」平均粒子径5μm
・粗さ形成用粒子(アクリル):日本触媒製「エポスターMA1006」平均粒子径6μm
・表面改質剤<1>:フッ素系のノニオン性改質剤、AGCセイケミカル製「サーフロンS-647」
・表面改質剤<2>:シリコーン系のノニオン性改質剤、信越シリコーン製「KF-6048」
・表面改質剤<3>:フッ素系のアニオン性改質剤、DIC製「メガフェイスF-410」
・表面改質剤<4>:フッ素系のカチオン性改質剤、ネオス製「フタージェント320」
・表面改質剤<5>:フッ素系の両性改質剤、ネオス製「フタージェント400SW」
【0063】
作製した帯電ロールについて、表層における粗さ形成用粒子の粒子間距離を測定し、粒子間距離の平均値および偏差値σを算出した。また、表層における表面改質剤の分布状態を分析した。さらに、画像評価を行った。
【0064】
(粒子間距離)
表層における粗さ形成用粒子の粒子間距離は、表層16の表面をレーザー顕微鏡にて撮影し、撮影した画像に任意の直線を1本引き、その直線上にある粒子と粒子の間の中心間距離とした。粒子間距離の平均値および偏差値σは、その直線上にある粒子と粒子の間の中心間距離100点から算出した。
【0065】
(表面改質剤の分布状態)
表層における表面改質剤の分布状態は、表層断面の元素分析により行った。測定位置は、
図3の拡大断面写真に示す通りである。
図3は、実施例1の帯電ロールの表層16の拡大断面写真である。白枠で示す測定位置Aは、粗さ形成用粒子18上の表層16表面(表面から深さ1.5μmの位置)であり、黒枠で示す測定位置Bは、粗さ形成用粒子18の存在していない部分の表層16表面(表面から深さ1.0μmの位置)であり、黒枠で示す測定位置Cは、粗さ形成用粒子18下の表層16内部(弾性体層14の表面から上に1.0μmの位置)であり、黒枠で示す測定位置Dは、粗さ形成用粒子18の存在していない部分の表層16内部(弾性体層14の表面から上に1.5μmの位置)である。
<測定条件>
測定装置:アルバック・ファイ製 X線光電子分光分析装置(XPS)「PHI5000 VersaProbeII」
X-ray:Alモノクロ(200μmφ)
エネルギー:50W、15kV
光電子取出し角度:45°
中和銃:E-Neut+IG-Neut
【0066】
(画像評価)
作製した帯電ロールを実機(RICOH製「MP C6004」)のユニット(ブラック)に取り付け、10℃×10%RH環境下にて25%濃度ハーフトーンにて画出し50万枚耐久後の評価(均一性)を行った。画像にムラがなかったものを良好「〇」、画像にムラが生じたものを不良「×」とした。
【0067】
【0068】
比較例1は、表面改質剤がフッ素系のアニオン性改質剤である。比較例2は、表面改質剤がフッ素系のカチオン性改質剤である。比較例3は、表面改質剤がフッ素系の両性改質剤である。これらに対し、実施例1、3~7は、表面改質剤がフッ素系のノニオン性改質剤である。また、実施例2は、表面改質剤がシリコーン系のノニオン性改質剤である。粒子間距離の平均値および偏差値σの値から、比較例1~3は、粗さ形成用粒子の分散性が悪いのに対し、実施例1、3~7は、粗さ形成用粒子の分散性がよいことがわかる。また、表層断面の元素分析の結果から、比較例1~3は、表面改質剤が粒子上の表面、粒子の無いところの表面、粒子下の内部、粒子の無いところの内部にそれぞれ同じ程度に分布しているのに対し、実施例1、3~7は、表面改質剤が内部よりも表面に偏在しており、さらに、粒子の無いところの表面よりも粒子上の表面に偏在していることがわかる。そして、比較例1~3は、耐久画像にムラが生じているのに対し、実施例1、3~7は、耐久画像にムラが生じていない。以上より、表面改質剤がフッ素系のノニオン性改質剤であることで、バインダーポリマー中において粗さ形成用粒子の凝集が抑えられ、表層における粗さ形成用粒子の分散性がよくなり、ロール表面の帯電性のムラが抑えられ、画像のムラが抑えられることがわかる。また、実施例2から、表面改質剤がシリコーン系のノニオン性改質剤においても、実施例1、3~7と同様であることがわかる。そして、実施例1~2から、シリコーン系のノニオン性改質剤よりもフッ素系のノニオン性改質剤のほうが、表面により偏在しやすいことがわかる。
【0069】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。