(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100796
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】眼科用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4375 20060101AFI20220629BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20220629BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220629BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220629BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220629BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K31/4375
A61K31/355
A61K31/07
A61K47/18
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/28
A61K47/10
A61K9/08
A61P27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214997
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 花奈
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】椛嶋 恭平
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 昌利
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB05
4C076CC10
4C076DD07F
4C076DD22
4C076DD30
4C076DD37
4C076DD38E
4C076DD49
4C076DD50
4C076DD50N
4C076DD70E
4C076EE23F
4C076EE30E
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA58
4C086NA11
4C086ZA33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA78
4C206NA11
4C206ZA33
(57)【要約】
【課題】(A)、(B)及び(D)成分を含有する眼科用組成物を凍結融解を繰り返すことによる、眼科用組成物の透過率悪化が抑制された、ベルベリン又はその塩を含有する眼科用組成物を提供する。
【解決手段】(A)ベルベリン又はその塩、
(B)(B1)ビタミンA及び(B2)ビタミンEから選ばれる1種以上、
(C)フェニレフリン又はその塩、及び
(D)ノニオン界面活性剤
を含有する眼科用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベルベリン又はその塩、
(B)(B1)ビタミンA及び(B2)ビタミンEから選ばれる1種以上、
(C)フェニレフリン又はその塩、及び
(D)ノニオン界面活性剤
を含有する眼科用組成物。
【請求項2】
下記式で表される含有質量比が、2.4≦((C)+(D))/((A)+(B))≦23である請求項1記載の眼科用組成物。
【請求項3】
(A)成分の含有量が、0.01~0.025w/v%、
(B1)成分の含有量が、0.02~0.04w/v%、
(B2)成分の含有量が、0.02~0.05w/v%、
(C)成分の含有量が、0.1~0.6w/v%、及び
(D)成分の含有量が、0.14~0.56w/v%
である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
【請求項4】
さらに、(E)コンドロイチン硫酸及びその塩、グリチルリチン酸及びその塩、ならびにプロピレングリコールから選ばれる1種以上を含有する請求項1~3のいずれか1項記載の眼科用組成物。
【請求項5】
下記式で表される含有質量比が、2.0≦((D)+(E))/((A)+(B))≦20である請求項4記載の眼科用組成物。
【請求項6】
(E)成分の含有量が、0.05w/v%以上である請求項4又は5記載の眼科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルベリン又はその塩を含有する眼科用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルベリン又はその塩は、抗炎症作用や細菌に対する高い抗菌性を持つことが知られている。一方、ビタミンAは上皮細胞の増殖・分化に必須な物質として知られており、ムチン産生を促進する作用、角膜創傷を治癒する作用が報告されている(特許文献1:特許第5673531号公報)。また、ビタミンEは、抗酸化成分等として有用な成分である。以上のことから、ベルベリン又はその塩と、ビタミンA又はビタミンEとを併用する眼科用組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(A)ベルベリン又はその塩と、(B)(B1)ビタミンA及び(B2)ビタミンEから選ばれる1種以上と、(D)ノニオン界面活性剤とを併用した場合、凍結融解を繰り返すと、眼科用組成物の透過率が悪化するという課題が生じた。以下、凍結融解を繰り返すと、眼科用組成物の透過率が悪化することを、「凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化」と記載する場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、上記(A)、(B)及び(D)成分を含有する眼科用組成物において、凍結融解を繰り返すことによる眼科用組成物の透過率悪化が抑制された、ベルベリン又はその塩を含有する眼科用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、上記(A)、(B)及び(D)成分を含有する眼科用組成物に、(C)フェニレフリン又はその塩を配合することで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記眼科用組成物を提供する。
1.(A)ベルベリン又はその塩、
(B)(B1)ビタミンA及び(B2)ビタミンEから選ばれる1種以上、
(C)フェニレフリン又はその塩、及び
(D)ノニオン界面活性剤
を含有する眼科用組成物。
2.下記式で表される含有質量比が、2.4≦((C)+(D))/((A)+(B))≦23である1記載の眼科用組成物。
3.(A)成分の含有量が、0.01~0.025w/v%、
(B1)成分の含有量が、0.02~0.04w/v%、
(B2)成分の含有量が、0.02~0.05w/v%、
(C)成分の含有量が、0.1~0.6w/v%、及び
(D)成分の含有量が、0.14~0.56w/v%
である1又は2記載の眼科用組成物。
4.さらに、(E)コンドロイチン硫酸及びその塩、グリチルリチン酸及びその塩、ならびにプロピレングリコールから選ばれる1種以上を含有する1~3のいずれかに記載の眼科用組成物。
5.下記式で表される含有質量比が、2.0≦((D)+(E))/((A)+(B))≦20である4記載の眼科用組成物。
6.(E)成分の含有量が、0.05w/v%以上である4又は5記載の眼科用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、凍結融解を繰り返すことによる眼科用組成物の透過率悪化が抑制された、ベルベリン又はその塩を含有する眼科用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分はベルベリン又はその塩であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ベルベリン又はその塩としては、例えば、ベルベリン硫化物やベルベリン塩化物等の硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。また、水和物等であってもよい。例えば、日本薬局方:ベルベリン塩化物水和物、アルプス工業(株)製等を用いることができる。
【0010】
(A)成分の含有量は、眼科用組成物中0.005w/v%(質量/体積%、g/100mL)以上が好ましく、凍結融解における析出及び凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、0.1w/v%以下が好ましく、0.01~0.025w/v%がより好ましい。
【0011】
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、(B1)ビタミンA及び(B2)ビタミンEから選ばれる1種以上であり、2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
(B-1)ビタミンA
ビタミンAは、角膜・結膜や皮膚粘膜の角化症、角膜上皮障害等の予防や治療に有効な成分であり、涙液油層安定化効果も有する。特に、コンタクトレンズ使用者は角膜上皮障害を受けやすいため、ビタミンAは有用である。ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100~180万国際単位/g(以下、I.U./gと略記する場合がある。ものが市販されており、具体的には、DSM社製レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g)]、シグマアルドリッチ社製パルミチン酸レチノール等が挙げられる。
【0013】
(B-2)ビタミンE
ビタミンEとしては、酢酸トコフェロール(酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール)が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、酢酸d-α-トコフェロールが好ましい。具体的には、理研ビタミン(株)製酢酸d-α-トコフェロール、理研Eアセテートα等が挙げられる。
【0014】
(B)成分全体の含有量は、眼科用組成物中0.01w/v%以上が好ましく、凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、0.09w/v%以下が好ましい。(B1)成分の含有量は、0.005~0.08w/v%が好ましく、0.02~0.04w/v%がより好ましい。(B2)成分の含有量は0.005~0.08w/v%が好ましく、0.02~0.05w/v%がより好ましい。174万I.U./gを用いた場合は、8,700~139,200国際単位/100mLが好ましく、348,000~87,000国際単位/100mLがより好ましい。
【0015】
[(C)成分]
(C)成分は、フェニレフリン及びその塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、フェニレフリン塩としては、フェニレフリン塩酸塩、フェニレフリン酢酸塩等の医薬的に許容される塩が挙げられる。フェニレフリン塩酸塩としては、例えば、岩城製薬(株)製の日本薬局方 フェニレフリン塩酸塩等が挙げられる。
【0016】
(C)成分の含有量は、凍結融解における析出及び凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、眼科用組成物中0.08~0.8w/v%が好ましく、0.1~0.6w/v%がより好ましい。
【0017】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は非イオン性界面活性剤であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ビタミンA保存安定性の観点から、2種以上を適宜組み合わせて用いることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0018】
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3~60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンヒマシ油35が好ましい。
【0019】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5~100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましい。
【0020】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
【0021】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)は特に限定されるものではなく、医薬品添加物規格(薬添規)に記載されたものを用いることができる。エチレンオキシドの平均重合度は4~200が好ましく、20~200がより好ましく、プロピレンオキシドの平均重合度は5~100が好ましく、20~70がより好ましく、ブロック共重合体でもランダム重合体でもよい。具体的には、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール:Lutrol F127(BASF社製)、ユニルーブ70DP-950B(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール:プルロニックF-87(BASF社製)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール:プルロニックF-68(BASF社製)、プロノン#188P(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール:プルロニックP123(BASF社製)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール:プルロニックP85(BASF社製)、プロノン#235P(日本油脂(株)製)等、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール:プルロニックL-44、テトロニック(BASF社製)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールが好ましい。
【0022】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリエチレングリコール-25、ステアリン酸ポリエチレングリコール-40等が挙げられ、中でもステアリン酸ポリエチレングリコール-40が好ましい。
【0023】
中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせが好ましい。
【0024】
(D)成分の含有量は、凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、眼科用組成物中0.02~2w/v%が好ましく、0.07~0.9w/v%がより好ましく、0.14~0.56w/v%がさらに好ましい。
【0025】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合、眼科用組成物中0.01~1.0w/v%が好ましく、0.05~0.8w/v%がより好ましく、0.1~0.5w/v%がさらに好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの場合、0.01~1.0w/v%が好ましく、0.02~0.1w/v%がより好ましく、0.04~0.06w/v%がさらに好ましい。
【0026】
[(E)成分]
本発明の眼科用組成物には、凍結融解における析出を抑制する点から、(E)コンドロイチン硫酸及びその塩、グリチルリチン酸及びその塩、ならびにプロピレングリコールから選ばれる1種以上を配合することが好ましい。(E)成分は1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。コンドロイチン硫酸及びその塩としては、例えば、マルハニチロ社(株)製のコンドロイチン硫酸エステルナトリウム:局外規コンドロイチン硫酸ナトリウム、生化学工業(株)製のコンドロイチン硫酸ナトリウム、日本バイオコン(株)製のコンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。グリチルリチン酸塩としては、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸三カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウムが挙げられる。
【0027】
(E)成分を配合する場合、凍結融解における析出を抑制する点から、眼科用組成物中0.05w/v%以上が好ましく、凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、1.25w/v%以下が好ましく、0.1~1.25w/v%がより好ましい。
【0028】
下記式で表される含有質量比は、凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、2.4≦((C)+(D))/((A)+(B))≦23が好ましく、2.5~10がより好ましく、2.6~8.0がさらに好ましい。
【0029】
下記式で表される含有質量比は、2.0≦((D)+(E))/((A)+(B))≦20が好ましく、2.5~18がより好ましい。凍結融解における析出を抑制する点から、2.0以上が好ましく、凍結融解を繰り返すことによる透過率悪化を抑制する点から、20以下が好ましい。
【0030】
[その他の成分]
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては下記のものが例示され、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0031】
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を配合する場合の含有量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0032】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、トロメタモール、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン-アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム)等が挙げられる。中でも、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモールが好ましい。緩衝剤を配合する場合の含有量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~2w/v%がより好ましく、0.001~1w/v%がさらに好ましい。
【0033】
pH調整剤としては、例えば、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。具体的には、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは、涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、3.5~8.0が好ましく、5.5~8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM-25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
【0034】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60~2.00が好ましく、0.60~1.55がより好ましく、0.83~1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
【0035】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。VA安定性の観点からエデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、亜硫酸塩、ジブチルヒドロキシトルエンを配合することが好ましい。安定化剤を配合する場合の含有量は、組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0036】
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤を配合する場合の含有量は、組成物中0.0001~0.2w/v%が好ましい。
【0037】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。中でも、グリセリン、ブチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。多価アルコールを配合する場合の含有量は、眼科用組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0038】
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その含有量は組成物中0.001~5.0w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0039】
防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジン、グルコン酸、パラオシキ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。これらは、組成物中0.005w/v%以下が好ましく、0.001w/v%以下がより好ましく、0.0001w/v%以下がさらに好ましく、配合しなくてもよい。かわき目やドライアイ症状を有する場合、またその予防のためには、防腐剤を配合しないことが好ましい。
【0040】
油性成分としては、流動パラフィン、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、白色ワセリン、ミックストコフェロール、流動パラフィン、ワックスエステル、ステロールエステル等が挙げられる。油成分を配合する場合その含有量は、組成物中0.001~1.0w/v%が好ましく、0.001~0.5w/v%がより好ましく、0.001~0.25w/v%がさらに好ましい。
【0041】
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、アズレンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤等、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の含有量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、組成物中0.001~5w/v%が好ましく、0.001~1w/v%がより好ましく、0.001~0.1w/v%がさらに好ましい。
【0042】
水としては、精製水、滅菌水等を用いることができ、水の含有量は、組成物の残部とすることができる。具体的には、組成物中90~99.9w/v%が好ましく、93~98w/v%がより好ましい。
【0043】
[眼科用組成物]
本発明の眼科用組成物の透過率は90~100%が好ましい。本発明の透過率は、分光光度計(例えば、UV-1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率をいう。
【0044】
本発明の眼科用組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、25℃における粘度は、20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
【0045】
本発明の眼科用組成物は、そのまま液剤としてもよく、ゲル剤等に調製してもよい。使用形態としては、具体的には点眼剤(例えば、一般用点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤等)、洗眼剤(一般用洗眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤等)、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等が挙げられる。中でも、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等のコンタクトレンズ用眼科用組成物として好適である。ソフトコンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ等特に限定されない。
【0046】
本発明の眼科用組成物は、点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10~100μLを1~3滴、1日につき1~6回点眼することが好ましく、1回につき10~50μLを1~3滴、1日につき1~6回がより好ましい。1回につき10~30μLを1~3滴1日につき1~6回がさらに好ましい。洗眼剤として使用する場合、1回につき3~6mL、1日につき3~6回洗眼することが好ましい。
【0047】
また、本発明は、凍結融解を繰り返すことによる、眼科用組成物の透過率悪化を抑制する下記方法を提供する。
(A)ベルベリン又はその塩、
(B)(B1)ビタミンA及び(B2)ビタミンEから選ばれる1種以上、
(D)ノニオン界面活性剤
を含有する眼科用組成物に、(C)フェニレフリン又はその塩を配合する、凍結融解を繰り返すことによる、上記眼科用組成物の透過率悪化を抑制する方法。この方法において、好適な成分及び含有量等は上記と同じである。
【実施例0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。組成の「%」はw/v%(g/100mL)、組成の「%」はw/v%、比率は質量比(w/v%比と同じ値)を示す。
【0049】
[実施例、比較例]
下記表に示す各水性成分を1,000mLの水に溶解し、90℃、15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。別途、(B)成分及び(D)成分の混合溶液を作製し、90℃、15分間加熱混合した。次に、(B)成分及び(D)成分の混合溶液を上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃、15分間加熱混合した。同時に、(A)成分及び(C)成分の混合溶液を作製し40℃、10分間加温混合した。(A)成分及び(C)成分の混合溶液を上記水性成分水溶液に所定量加え混合した。その後、室温まで冷却し、1,000mLになるように水を加え、眼科用組成物を得た。なお、表中は100mL中の量で示す。得られた眼科用組成物について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0050】
[透過率(%)]
製造直後の眼科用組成物13mLをポリエチレンテレフタレート製点眼剤容器(15mL)に充填し試験サンプルとした。凍結(-20℃)・融解(25℃)の操作を5回繰り返し、以下を評価した。
[透過率(%)]
凍結後、融解させ、3日間室温暗所にて静置した後、紫外可視近赤外分光光度計(UV-1800、(株)島津製作所)を用いて、各試験サンプルの透過率(波長:600nm)を測定した。5回目の凍結融解において、90%以上の透過率の試験サンプルを「〇」(合格)とし、90%未満の場合「×」(不合格)とした。
【0051】
[凍結融解における析出(沈殿の有無)]
1~5回の凍結融解を繰り返し、全ての凍結融解後において沈殿物の有無を目視にて確認した。1~5回のいずれかの凍結融解後にて、顕著な沈殿が認められた場合は「×」、軽微な沈殿が認められた場合は「〇」、沈殿が全く認められなかった場合は「◎」と判断した。なお、析出物を分析したところ、(A)成分のベルベリンを含むことを確認した。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
ベルベリン塩化物水和物(日局 ベルベリン塩化物水和物、アルプス薬品工業社製)
レチノールパルミチン酸エステル(レチノールパルミチン酸エステル[174万I.U./g)]、DSM社製)
酢酸d-α-トコフェロール(理研Eアセテートα、理研ビタミン社製)
フェニレフリン塩酸塩:日本薬局方 フェニレフリン塩酸塩、岩城製薬社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO60、日本サーファクタント工業社製)
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(レオドールTW-O120V、花王社製)
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(局外規 コンドロイチン硫酸ナトリウム、マルハニチロ社製)
プロピレングリコール(日本薬局方 プロピレングリコール、ADEKA社製)
グリチルリチン酸二カリウム(局外規 グリチルリチン酸二カリウム、丸善製薬社製)