(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100800
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】電子レンジ対応容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215005
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520495906
【氏名又は名称】株式会社カナオカホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100081949
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 欣正
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 孝行
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA21
3E013BB06
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF04
3E013BF25
3E013BF36
3E013BF42
3E013BG11
3E013CC06
(57)【要約】
【課題】 加熱により内圧を逃がすことのできる電子レンジ対応容器を低コストで実現すると共に、マイクロ波の過照射により包材が発火したり、焦げたりすることを防止する。
【解決手段】 ヒートシールにより容器本体2のフランジ部3に熱接着される蓋体1の容器本体のフランジ部との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性の発熱インキ層5を設けることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記発熱インキ付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器において、蓋体の一側に開封用のつまみ部4を突設するとともに、上記つまみ部と対向するフランジ部との接触箇所に発熱インキ層を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシールにより容器本体のフランジ部に熱接着される蓋体の容器本体のフランジ部との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性の発熱インキ層を設けることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記発熱インキ付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器において、蓋体の一側に開封用のつまみ部を突設するとともに、上記つまみ部と対向するフランジ部との接触箇所に発熱インキ層を設けたことを特徴とする電子レンジ対応容器。
【請求項2】
導電性の発熱インキ層は太さ0. 1~1. 5mm幅の線状のものを間隔を置いて連続して配置した集合体からなる請求項1記載の電子レンジ対応容器。
【請求項3】
蓋体は少なくとも基材層及びシーラント層の2 層以上からなる請求項1または2記載の電子レンジ対応容器。
【請求項4】
シーラント層がイージーオープンフィルムである請求項3記載の電子レンジ対応容器。
【請求項5】
イージーオープンフィルムであるシーラント層が80℃雰囲気下においてシール強度が常温時の1/2~1/3まで低下するものである請求項4記載の電子レンジ対応容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食品を電子レンジで加熱可能な容器内に収容された状態で流通に供する際に使用される電子レンジ対応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジに対応するカップ状やトレイ状の容器に食品を収容し、蓋体を被蓋・密封した状態で流通に供される容器詰め食品が公知である。この場合、食品を購入した消費者は蓋体を被蓋・密封した状態でそのまま電子レンジにかけて内部の食品を加熱するが、加熱による食品からの水分の蒸散により容器の内圧が高まり、容器が変形あるいは破裂し、レンジ内に食品等が散乱する事故の危険があった。
【0003】
この事故を防止するためには、予めその容器に前記加熱で発生する圧力を逃がすための弁体を装着する必要があるが、装着する手間、工程、費用などがかかり、一回限りで使い捨てされる包装用容器においては実用化し難い状況にあった。そのため、ヒートシールにより容器本体に密封される蓋体の容器本体との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性発熱部を設けることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記導電性発熱部付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器が提案されていた(特許文献1、2)。
【特許文献1】実公平6-15881号公報
【特許文献2】特開2007-119064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術の発明においては、食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす構造として弁体を装着する必要がないので低コストで電子レンジ対応容器を実現できる。しかしながら、電子レンジの加熱時間を誤って長時間マイクロ波を照射すると導電性発熱部が高温になり過ぎて包材が発火したり、焦げて異臭が発生するおそれがあった。
【0005】
この発明は以上の従来技術の問題点を解消するための電子レンジ対応容器を提供することを目的として創作されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は前記の問題を解消した電子レンジ対応容器を提供することを目的として創作されたものである。
【0007】
すなわち、本願発明の電子レンジ対応容器は、ヒートシールにより容器本体のフランジ部に熱接着される蓋体の容器本体のフランジ部との接触箇所に、マイクロ波により発熱可能な導電性の発熱インキ層を設けることにより、電子レンジによるマイクロ波照射に伴って上記発熱インキ付近のシーラント層を加熱融解して容器内部の食品の加熱によって上昇する内圧を逃がす電子レンジ対応容器において、蓋体の一側に開封用のつまみ部を突設するとともに、上記つまみ部と対向するフランジ部との接触箇所に発熱インキ層を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記の電子レンジ対応容器において、導電性の発熱インキ層は太さ0. 1~1. 5mm幅の線状のものを間隔を置いて連続して配置した集合体からなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、前記の電子レンジ対応容器において、蓋体は少なくとも基材層及びシーラント層の2 層以上からなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明は、前記の電子レンジ対応容器において、シーラント層がイージーオープンフィルムであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、前記の電子レンジ対応容器において、イージーオープンフィルムであるシーラント層が80℃雰囲気下においてシール強度が常温時の1/2~1/3まで低下するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、導電性の発熱インキ層を開封口と対向して備えることにより、発熱インキ層が発熱し蓋体、容器に熱による軟化、部分的な脆化が発生したとしても開封途中で蓋体が破断することを防止できる。
【0013】
導電性発熱インキ層を塗布することにより、蓋体を構成するシーラントフィルムおよび樹脂製の容器を部分的に加熱して、導電性の発熱インキ層を設けた個所とそれ以外の部分にてシール強度の差を作り出すこと(樹脂の性質上、高温化では軟化してシール温度が下がる)により、任意の場所から破裂することなく蒸気を逃がすことができる。
【0014】
従来、導電性の発熱インキ層の設け方として、ベタ柄で設けていたが、発熱量が柄面積と発熱インキの塗布量の2点に依存するため、製品の大きさ毎に発熱インキ部の大きさが変わり、発熱量が上がることによりフィルムや容器フランジを溶かしてしまうことがあった。
【0015】
これに対し、本願発明の場合は導電性の発熱インキ層を1 mm程度の細い線にして連続して設けているので、容器形状によって面積が異なるフランジ形状に対して容易に対応することが可能となる。
【0016】
また、シーラントフィルムを熱依存性が高く、80℃下において常温時の1/2~1/3使用することにより導電性発熱インキ層とその周辺部とのシール強度を作りやすく、蒸通パッケージとして安定した製品を供給可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本願発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1は本願発明の電子レンジ対応容器の一例を示す図である。図中符号2は内部に食品(図示せず)が収容される容器本体である。容器本体としてここではカップ状のものを図示しているが、形状はこれに限られない例えばトレー状のものであってももちろんである。上記容器本体1の開口部周側にはフランジ状の張り出し部3が延設され、この張り出し部が蓋体との接触部となる。
【0019】
図中符号1は蓋体である。蓋体は一側に開封用のつまみ部4を突設するものであるが、ここでは容器本体2は矩形なので、隅角部に配している。蓋体は少なくとも基材層及びシーラント層の2 層以上からなるものであり、ここではシーラント層をイージーオープンフィルムとしている。
【0020】
図中符号5は発熱インキ層であり、太さ0. 1~1. 5mm幅の線状のものを間隔を置いて連続して配置した集合体からなる。発熱インキ層5は上記つまみ部と対向(ここでは対角)するフランジ部3との接触箇所に配されるが、ここではフランジ部との接触箇所よりさらに中央に向かう領域に延設している。発熱インキ層5を構成する各線はここでは蓋体の中央に向くように縦に配置しているが、横に配置してもよい。
【0021】
また、ここではイージーオープンフィルムであるシーラント層を80℃雰囲気下においてシール強度が常温時の1/2~1/3まで低下するものとすることにより、導電性発熱インキ層とその周辺部とのシール強度を作りやすくして、蒸通パッケージとして安定した製品を供給可能としている。
【0022】
なお、本願発明に適さないシーラントフィルムとして、温度依存性が低い、耐熱性が高く高温時においても強いシール強度を保持したままのフィルムがある。そのようなフィルムを使用すると、導電性発熱インキ層を設けたところから安定して蒸気を逃がすことができず、蒸気が逃げるまでの間に容器包装が膨れ上がり爆発したり、蒸気排出後も形態が変形してしまうといった不具合が生じてしまう。
【符号の説明】
【0023】
1 蓋体
2 容器本体
3 フランジ部
4 つまみ部
5 発熱インキ層