(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100803
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】可食シートの製造装置及び可食シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220629BHJP
【FI】
A23L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215008
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】592061902
【氏名又は名称】株式会社永谷園ホールディングス
(71)【出願人】
【識別番号】399131677
【氏名又は名称】トーキョーメンキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】辰野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】丸藤 謙二
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE06
4B035LG21
4B035LG33
4B035LG34
4B035LP01
4B035LP33
4B035LP55
4B035LT11
(57)【要約】
【課題】容易に厚さを管理できる可食シートの製造装置、及び可食シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】一形態にかかる可食シートの製造装置は、ヒータを有し、食品を挟んで回転することにより圧縮する一対のロールを備え、加熱及び圧延によりシート状に成形するヒートロール装置を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを有し、食品を挟んで回転することにより圧縮する一対のロールを備え、
加熱及び圧延によりシート状に成形するヒートロール装置を備える、可食シートの製造装置。
【請求項2】
前記ヒートロール装置は、一対の前記ロールの間隔を調節する調節装置を備える、請求項1に記載の可食シートの製造装置。
【請求項3】
前記ロールの回転速度、温度及びロール線圧は、1~100m/分の周速で40~250℃の加熱と20,000kgf/m以下の圧力に設定され、
前記食品を厚さ1,000μm以下のシート状に加熱及び圧延する、請求項1または2に記載の可食シートの製造装置。
【請求項4】
前記ヒートロール装置は、
一対の前記ロールの荷重を検出する荷重センサと、
温度を検出する温度センサと、
検出した荷重及び温度に基づき、前記ロールの間隔、前記ロールの回転速度、及び前記ヒータの温度を制御する制御部と、を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の可食シートの製造装置。
【請求項5】
前記ヒートロール装置の送り方向の一次側に配され、澱粉を含有する食材を含む粉体と液体とを混合した組成物を、帯状材に成形する圧延装置を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の可食シートの製造装置。
【請求項6】
前記ヒートロール装置の送り方向の一次側に配され、澱粉を含有する食材を含む粉体と液体とを混合した組成物を前記圧延装置に供給する供給部を備える、請求項5に記載の可食シートの製造装置。
【請求項7】
食品組成物を、ヒータを有する一対のロールによって挟んで1~100m/分の周速で40~250℃の加熱及びロール線圧20,000kgf/m以下の圧力での圧縮を同時に行うことで、厚さ1,000μm以下に圧延する、可食シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食シートの製造装置、及び可食シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食材をシート状に加工したシート状食品が提供されている。たとえば、海苔、昆布等のような天然の皮膜類は勿論、澱粉、野菜、大豆蛋白質等を主原料とするシート状食品など、多種多様な可食シートがある。
【0003】
このような可食シートの製造方法として、溶液又は懸濁液を加熱されたドラムに塗布し、蒸発及び濃縮しながらドラム表面に薄膜状に付着させ、ドラムが回転する間に焼成により連続シート状の乾燥皮膜とする方法が知られている。あるいは、ブランチングした野菜を細断した後、寒天等の結着材含有溶液に混合し、得られた混合物をシート状に広げて乾燥する方法も知られている。他に、水溶液又は懸濁液を塗布、押し出し、又は流し込みなどにより製膜した後、加熱乾燥してシートを得る方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-97359号公報
【特許文献2】特開平5-64562号公報
【特許文献3】特開昭60-149355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、容易に厚さを管理できる可食シートの製造装置、及び可食シートの製造方法を提供することを目的とする。従来法のシート成形では澱粉やたんぱく質を加熱によりシート状に成形しているが、加熱時間が長く、装置が大型化し、加工時の加熱により風味の失われやすい素材のシート成形は難しかった。また、製麺機などで用いられるロールプレスによる成形では生産効率を考慮して実用範囲となる1m/分以上の周速では十分にプレスされず、1,000μm以下の薄い可食シートの成形は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る可食シートの製造装置は、 ヒータを有し、食品を挟んで回転することにより圧縮する一対のロールを備え、
加熱及び圧延によりシート状に成形するヒートロール装置を備える。
【0007】
他の一形態に係る可食シートの製造装置において、前記ヒートロール装置は、一対の前記ロールの間隔を調節する調節装置を備える。
【0008】
他の一形態に係る可食シートの製造装置において、前記ロールの回転速度、温度及びロール線圧は、1~100m/分の周速で40~250℃の加熱と20,000kgf/m以下の圧力に設定され、前記食品を厚さ1,000μm以下のシート状に加熱及び圧延する。
【0009】
他の一形態に係る可食シートの製造装置において、前記ヒートロール装置は、一対の前記ロールの荷重を検出する荷重センサと、温度を検出する温度センサと、検出した荷重及び温度に基づき、前記ロールの間隔、前記ロールの回転速度、及び前記ヒータの温度を制御する制御部と、を備える。
【0010】
他の一形態に係る可食シートの製造装置は、前記ヒートロール装置の送り方向の一次側に配され、澱粉を含有する食材を含む粉体と液体とを混合した組成物を、帯状材に成形する圧延装置を備える。
【0011】
他の一形態に係る可食シートの製造装置は、前記ヒートロール装置の送り方向の一次側に配され、澱粉を含有する食材を含む粉体と液体とを混合した組成物を前記圧延装置に供給する供給部を備える。
【0012】
他の一形態に係る可食シートの製造方法は、食品組成物を、ヒータを有する一対のロールによって挟んで1~100m/分の周速で40~250℃の加熱及びロール線圧20,000kgf/m以下の圧力での圧縮を同時に行うことで、厚さ1,000μm以下に圧延する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態にかかる可食シートの製造装置の構成を示す側面図。
【
図2】同可食シートの製造装置の構成を示す平面図。
【
図3】同可食シートの製造装置のヒートロール装置の側面図。
【
図6】他の実施形態にかかる可食シートの製造装置の構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、第1実施形態に係る可食シートS2の製造装置1及び可食シートS2の製造方法について
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は本実施形態にかかる可食シートS2の製造装置1の構成を示す説明図であり、
図2は同平面図である。
図3は加熱圧延装置を示す側面図である。
図4は本実施形態にかかる可食シートS2の製造方法を示す工程図である。図中矢印X,Y,Zは、互いに直交する3方向である第1方向、第2方向、及び第3方向を、それぞれ示す。
【0015】
図1乃至
図3に示すように、可食シートS2の製造装置1は、組成物S0を帯状に成形して帯状材S1を得る圧延装置10と、帯状材S1を加熱圧延して帯状材S1よりも薄い可食シートS2を得るヒートロール装置20と、を備える。また、可食シートS2の製造装置1は、各部の動作を制御する制御部40、表示部31、及び操作部32を備える。なお、制御部40、表示部31、及び操作部32は、圧延装置10及びヒートロール装置20のそれぞれに設けられていてもよいし、圧延装置10及びヒートロール装置20に共通して1つ設けられていてもよい。
【0016】
一例として、本実施形態に係る製造方法は、調製された組成物S0をヒートロール装置20にて加熱圧延する前に、圧延装置10で組成物S0を圧延して予めシートよりも厚い帯状に成形し、得られた帯状材S1を加熱圧延してより薄く成形し、可食シートS2を得る例を示す。
【0017】
圧延装置10は、粉体材料を含む組成物S0を、帯状に成形する成形装置である。圧延装置10は、例えば、麺帯装置である。圧延装置10は、架台11と、供給部としての供給ホッパ12と、供給ホッパ12の二次側に配される第1プレス部13と、搬送部14と、を備える。
【0018】
架台11は供給ホッパ12及び第1プレス部13を所定高さに支持する。供給ホッパ12は、二次側が下方に位置するように傾斜する保持台12aを備える。保持台12aには、予め調整された組成物S0が載置される。なお、供給ホッパ12は、粉体と液体を混合することにより組成物S0を得るミキサー等の前処理装置をさらに備えていてもよい。保持台12a上に配された組成物S0を定量にて二次側に送る。
【0019】
第1プレス部13は、対向配置された一対のプレスロール15、16と、プレスロール15,16を駆動する駆動源17と、を備える。たとえば一対のプレスロール15,16は、所望の有効幅W1を有し、送り方向と直交する方向に沿って配される。プレスロール15,16はSUS製の円柱状に構成され、所定の間隔で対向配置される。プレスロール15,16はたとえば直径φ300mmとし、有効幅は200mmとする。ここで、プレスロール間隔はロール15,16の軸心同士の寸法から、ロール15,16の直径の和を差し引いた寸法であり、ロール同士の表面が接触する状態でプレスロール間隔=0となる。一例として第1プレス部13は、プレスロール間隔が0mmから8mmの範囲で一対のプレスロール15,16の位置を設定可能である。また、圧延装置10の仕様例として、圧延時の圧力は最大12t(ロール線圧60,000kgf/m)の圧延装置を用いる。プレスロール15,16は駆動源17によって所定の送り方向に回転することで、一対のプレスロール15,16間に押し込まれた組成物S0を圧延して帯状材S1を成型しながら、二次側に送り出す。
【0020】
搬送部14はたとえば複数の搬送ロール14a,14bを備える。搬送ロール14a,14bは軸が第2方向に沿って配される。複数の搬送ロール14a,14bはプレスロール15,16の少なくとも二次側において、搬送経路の一方側及び他方側に順に配され、搬送経路を規定する。搬送部14は、搬送ロール14a,14bによって規定される搬送経路に沿って、帯状材S1を案内する。一例として、搬送ロール14aはプレスロール15,16のニップ部の下方に隣接して配され、搬送ロール14bが搬送ロール14aよりも下方であってヒートロール装置20側の位置に配される。
図1に示す一例において、搬送ロール14a,14bはいずれも搬送経路の上側に配され、帯状材S1の上側の位置を規定している。搬送部14は、帯状材S1を搬送経路に沿って二次側に送る。圧延装置10は制御部40に接続され、制御部40の制御により帯状材S1の成形動作が制御可能に構成される。
【0021】
ヒートロール装置20は、架台21と、ヒータ23a,23bを備えるロール対としての一対のヒートローラ22a,22bと、ヒートロール22a,22bを支持及び移動させる移動装置26と、温度センサ27と、荷重センサ28と、搬送ガイド29と、を備える。
【0022】
架台21は一対のヒートロール22a,22bや移動装置26を所定高さに支持する。一対のヒートロール22a,22bは、所望の有効幅よりも大きい軸方向寸法を有し、送り方向と直交する方向に沿って配される。ヒートロール22a、22bはSUS製の円柱状に構成され、内部にヒータ23a,23bを備える。ヒートロール22a,22bは、所定の間隔で対向配置される。一例として、ヒートロール22a,22bは直径φ200mmとし、有効幅は300mmとする。ヒートロール22a,22bは、モータ等の駆動源に接続され、制御部40の制御により所定のタイミング及び送り速度にて回転動作が制御される。
【0023】
ヒートロール22a,22bのロール間隔D1はロール22a,22bの軸心同士の寸法から、ロール22a,22bの直径の和を差し引いた寸法であり、無負荷時にロール同士の表面が接触する状態でロール間隔D1=0mmとなる。そして、ロール間隔D1=0mmの位置から、さらにロール22a,22bの軸間距離を縮めて圧縮させることにより、ロール22a,22b間を近づけることが可能である。一例として移動装置26によってロールを接着することが可能である。また、ロール22a,22bのたわみ、移動装置26の剛性、ベアリングやギアのあそび等があるため、ロール間隔は0mm以下に移動可能であり、さらにロール間を圧縮することでロール間に圧力をかけることもできる。
【0024】
ヒータ23a,23bは、たとえばヒートロール22a,22bの有効幅の範囲に内蔵され、あるいは表面層に設けられる。ヒータ23a,23bは、制御部40に接続され、制御部40の制御により駆動出力が調整されることにより、加熱温度が調整可能に構成される。たとえば一対のヒータ23a,23bは一対のヒートロール22a,22bが同じ温度となるように設定されてもよく、上側のヒートロール22aが下側のヒートロール22bと異なる温度に設定されてもよい。
【0025】
ヒータ23a,23bによって加熱されたヒートロール22a,22bは、駆動源によって所定の送り方向に回転することで、一対のヒートロール22a,22b間に挿入された帯状材S1を加熱しながら圧延して薄く成形し、二次側に送り出す。
【0026】
調節装置となる移動装置26は、一対のヒートロール22a,22bをそれぞれ支持する一対の支持ブロック26a、26bと、支持ブロック26a,26bを少なくともいずれかを移動させる移動機構26cと、を備える。移動装置26は、支持ブロック26a,26bの少なくともいずれかを移動させることにより、ヒートロール22a,22b間の間隔D1を調整する。移動機構26cは例えば手動により操作可能なレバー機構などを備え、手動で支持ブロック26a,26bの位置が調整可能に構成されている。本実施形態において、例えばユーザは加熱圧延後のシートの厚さと検出される負荷の値に基づいて、ロールへの負荷が過度にかからないように確認しながら、レバー機構を操作することで、ロール線圧を調整し、ロール間隔D1を設定する。
【0027】
温度センサ27は、ヒートロール22a,22bに内蔵または表面に近接して配置され、ヒートロールの表面温度を計測する。温度センサ27はたとえば熱電対を備える。温度センサ27は制御部40に接続され、検出温度を制御部40に出力する。
【0028】
荷重センサ28は、ヒートロール22a,22bの一対の軸受け部にそれぞれ設けられた一対のロードセルである。たとえば荷重センサ28は、制御部40に接続され、検出した荷重を制御部40に出力する。
【0029】
搬送ガイド29は、撓みセンサ29aと、複数の搬送ロール29bを備える。たとえば搬送ロール29bは、ヒートロール22a,22bの一次側に配され、二次側が上に位置するように傾斜する傾斜部と、傾斜部の二次側において水平に並ぶ水平部とを連続して備える。水平部は、後述するヒートロール22a,22b間のニップ部と同じ高さに配置される。搬送ガイド29によって、帯状材S1がヒートロール22a、22b間に案内される。搬送ロール29bは軸が第2方向に沿って配される従動ロールである。帯状材S1を搬送ロール29b上に規定される搬送経路に沿って、帯状材S1を案内する。
【0030】
ヒートロール装置20の仕様は、圧延時の最大圧力は大きければ能力は高まるが装置が大型化する課題があり、ロール線圧20,000kgf/m以下が好ましく、10,000kgf/m以下がより好ましく、6,000kgf/m以下が特に好ましい。加熱温度は温度が低いと十分に圧延できず、圧延後のシート厚が厚くなり、温度が高いとロールへの焦げ付きが発生するため、40~250℃が好ましく、70~200℃がより好ましく、100~150℃が特に好ましい。周速が速いと圧延に必要な圧力、温度が高くなることから、圧延速度(周速)は1~100m/分が好ましく、5~50m/分が好ましく、10~30m/分が好ましい。なお、原料配合、周速により最適な圧力、温度条件が異なる。得られる可食シートS2の厚さは例えば1,000μm以下、好ましくは50~500μmの範囲、あるいは100~300μmの範囲として、厚さを調整することができる。なお、これより厚くすることも可能である。
【0031】
表示部31は表示パネルを備える。表示部31は、たとえば温度センサ27や荷重センサ28にて検出した検出結果や、運転モードなどを表示する。
【0032】
操作部32は、各種スイッチや各種ボタン等の入力部を備え、ユーザが電源ON,OFFや各種条件を設定入力可能に構成されている。操作部32はユーザの入力を検出し、制御部40に出力する。
【0033】
制御部40は、プロセッサ等の制御回路と、RAMやROMを有するメモリと、を備えることも可能である。制御回路は、予め設定されたプログラムや各種条件にしたがって、所定のプログラムを実行することにより、可食シートS2の製造装置1の各部の動作を制御する。例えば制御回路は、搬送用あるいは加圧用の各種駆動源やヒータの運転動作、あるいは電源のON,OFF動作を制御することで、供給処理、プレ圧延処理、加熱圧延処理、搬送処理を行う。また、制御回路は所定のプログラムや各種条件、あるいは負荷や温度の検出結果に応じて、各種駆動源、移動装置、ヒータの駆動時間や駆動出力を制御することにより、送り速度、加熱温度、ロール間距離等の処理条件を調整可能に構成されていてもよい。
【0034】
次に、本実施形態にかかる可食シートS2の製造方法について、説明する。本実施形態にかかる可食シートS2の製造方法は、前処理となる調整処理と、供給処理と、加熱圧延処理と、を備える。加熱圧延処理の前にプレ圧延処理を行ってもよい。
【0035】
(調整処理)
まず調整処理として、原料(粉体、液体、ペーストなど)を混合し生地を調整することで組成物S0を得る。なお、調整処理は予め行ってもよいし、圧延装置の処理の一部として、調整処理を行ってもよい。水分が少ないと生地の結着力が弱く、圧延装置10でシート状に成形しにくく、水分が高いとヒートロール装置での圧延後および乾燥時の形状保持が困難となることから、生地の水分は5~50%が好ましく、10~40%がより好ましく、15~30%が特に好ましく、好適な範囲となるように原料を配合する。また、生地の水分ムラはシート成形に影響するため、高速攪拌、低温原料の使用、混合後の寝かし工程などで水分を均一化することが好ましい。
【0036】
原料は、澱粉を含む食品素材である。例えば、ジャガイモ、サツマイモ、栗、大豆、米、麦、とうもろこし、小豆等である。たとえば原料に、カット、細断、粉砕、磨砕、分級、搾汁、濃縮、抽出、裏ごし、加熱、乾燥、又は調理、もしくはこれら処理の中から選択される2以上の組み合わせ含む処理を施してもよい。たとえば原料は乾燥したパウダーでも水分を含む状態のものでもよい。また、澱粉を含む食品素材をあらかじめ加熱し、含有する澱粉をα化させてもよく、マッシュポテトや馬鈴薯、甘藷、タピオカ、小麦、米などの加工澱粉を添加してもよい。なお、澱粉を含む素材以外の素材を添加することは妨げない。例えば、香辛料、フレーバー、調味料、着色料、野菜、水産物などの食品素材および食品添加物ソルビトールなどの糖アルコールはシートの柔軟性を高める。ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル類は、シートのロールへの付着を抑止し、生産性の向上に効果がある。加工食材の形態としては、例えば、加熱乾燥粉末、非加熱乾燥粉末、搾汁物、搾汁乾燥物、ペースト状物等が挙げられる。
【0037】
組成物S0は、澱粉を含有する食品である。組成物S0に含有される澱粉の配合率は、シート状への成形性の観点から、組成物S0中の全固形分を基準として、10質量%~100質量%が好ましく、25質量%~75質量%がより好ましく、40質量%~60質量%が特に好ましい。
【0038】
なお、組成物S0は、2種以上の加工食材由来の澱粉を含有してもよいし、2種以上の単離澱粉由来の澱粉を含有してもよいし、1種以上の加工食材由来の澱粉と1種以上の単離澱粉由来の澱粉を含有してもよい。例えば、野菜類(例えば、イモ類、果菜類、穀物類、マメ類、葉菜類、茎菜類、花菜類、根菜類等)、果実類、海藻類又は魚介類等が挙げられる。組成物S0に含有される食材は、加工処理が施された加工食材であることが好ましい。なお、調整処理は予め行ってもよいし、圧延装置の処理の一部として、調整処理を行ってもよい。
【0039】
(供給処理)
供給処理として、供給ホッパ12を駆動し、組成物S0を第1プレス部13に供給する。保持台12a上の材料を、プレスロール15,16間のニップ部に向けて押し出す。供給処理において、制御回路は駆動時間や駆動出力を制御することにより、組成物S0の押出量、圧力、速度等を制御する。タイミングは、例えば予め設定された一定時間毎、に設定され、あるいは操作入力指示により決定される。
【0040】
(プレ圧延処理)
プレ圧延処理として、一対のプレスロール15,16を回転駆動することにより、ロール間に組成物S0を連続して加圧して所定の帯状に成形し、二次側に搬送する。プレスロール15,16間に原料生地である組成物S0が挿通することで、原料生地が延ばされてシート状に広がり、帯状材S1が得られるとともに、二次側に送られる。
【0041】
原料生地となる組成物S0の供給量、加圧圧力(ロール間隔)、圧延速度(ロールの周速)等を適宜設定することにより帯状材S1の厚さを調整する。例えば、加圧圧力が高くなる(ロール間隔が狭くなる)と組成物S0が延びやすく薄くなる。圧延速度(ロールの周速)が早くなると帯状材S1の厚みは厚くなるため、周速が遅い場合と同じ厚さのシートを作成する際に比べ圧延に必要な圧力が高くなる。
【0042】
一例として、厚さ200μm程度の可食シートS2(可食シートS2)を形成する場合、前処理工程である圧延工程では、厚さ0.5mm~2.0mm程度の帯状材S1が得られるよう上記条件を適宜設定することが好ましい。厚さ0.5mm~2.0mm程度の帯状材を得るための目安として、例えば、プレスロール間隔0mm(ロール同士が密着した状態)、プレスロール15,16の送り速度10m/分において、供給する原料生地の量を調整しながら圧延処理を行うことができる。なお、組成物S0として、予めα化した澱粉を含有する食品を用いた場合には、組成物S0が圧延され帯状に成形される際に、α化澱粉が結着材として機能する。以上により、帯状材S1が得られ、ヒートロール装置20に送られる。
【0043】
(加熱圧延処理)
続いて、加熱圧延処理を行う。加熱圧延処理は、対をなすヒートロール22a,22b間に、帯状材S1を挿通することにより、帯状材S1よりも薄い可食シートS2を形成する。一対のヒートロール22a,22bは、圧延対象物である帯状材S1と原則的に接触し、帯状材S1は接触している間だけ圧延と同時に加熱される。
【0044】
加熱圧延処理として制御回路は、ヒータを所定温度となるように加熱するとともに一対のヒートロール22a,22bを回転駆動することにより、ロール間に帯状材S1を連続して通すことで加熱及び加圧して所定の帯状に成形し、シート材である可食シートS2を二次側に搬送する。
【0045】
ヒートロール22a,22b間に挿通する帯状材S1の厚さ、加圧圧力(ヒートロール間隔)、加熱温度(ヒートロール温度)、圧延速度(ロールの送り速度)等を適宜設定することにより可食シートS2の厚さを調整する調節装置として機能する。例えば、加熱温度が低すぎると十分に圧延できず、圧延後の戻りによりシート厚みが厚くなる。加熱温度が高くなるとシートは延びやすく薄くなるが、高すぎるとロールへの焦げ付きが発生する。加圧圧力が高くなる(ヒートロール間隔が狭くなる)とシートは延びやすく薄くなる。圧延速度(ロールの送り速度)が早いとシート厚みは厚くなるため、圧延に必要な圧力、温度が高くなる。
【0046】
一例として、シートの生産時には、周速は生産速度に応じた速度に設定する。ロール温度はシート成形時に熱劣化のない範囲で設定され、温度が高いほど低い圧力でシートを成形できるため生産性と生産されるシートの品質によって最適な温度を設定する。シート厚は、周速、ロール温度が一定であれば、ロール間隔D1によって制御され、目的とするシート厚となる様にロール間隔を設定する。ロール間隔はロールのたわみ、架台の剛性、ベアリングやギアのあそび、原料組成物の物性によって変動し一定ではないため、ロール線圧を指標としてロール間隔を設定する。
【0047】
なお、ヒートロール22a,22bによる加熱は、澱粉をα化させるための加熱ではない、そして、加熱圧延工程における圧延対象物の加熱時間は、極めて短い。このため、加熱圧延工程での加熱は、可食シートS2に含有される食材の熱劣化をもたらすものではない。ヒートロールの回転速度、温度及びロール線圧は、1~100m/分の周速で40~250℃の加熱と20,000kgf/m以下の圧力に設定する。
【0048】
一例として、厚さ200μm程度の可食シートS2を形成する場合において、厚さ0.5mm~2.0mm程度の帯状材をヒートロール間に挿通するときの目安として、例えば、ロール間隔D1は0.00mm(ヒートロール同士が密着した状態)、加熱温度(ヒートロール温度)80~150℃、ロールの送り速度2m~22m/分で調整する。
【0049】
実施例として、マッシュポテト198とエステル2.25を混合、水40とソルビトール27、塩5を混合溶解、1と2で得た混合粉と混合液を、ミキサーを使用して攪拌混合し、水分が均一となるように調整し組成物S0とした。この組成物S0を圧延装置10において、プレスロール間隔が0.00mm(ロール同士が密着した状態)、ロールの送り速度2m/分の設定でプレ圧延処理したところ、ロール線圧が31,300kgf/mで、厚さ1,500μmの生地である帯状材S1を得た。プレ圧延工程において、設定条件として、プレスロール間隔0.00mm、ロールの送り速度2m/分、ロール線圧31,300kgf/m、帯状材S1の厚さ1,500μmとした。
【0050】
次にプレ圧延処理で得た帯状材S1をヒートロール22a,22bにて加熱圧延処理する。このとき、ロール間隔D1は0.00mm(ロール同士が密着した状態)、ロールの送り速度2m/分、ロール温度80℃(上ロール)/120℃(下ロール)の設定で加熱圧延したところ、ロール線圧が2,200kgf/mで厚さ150μmの可食シートS2に成形された。
【0051】
本実施形態にかかる可食シートS2の製造装置1及び可食シートS2の製造方法によれば、可食シートS2の厚さの管理が容易となる。すなわち、食品を挟んで回転することにより圧縮する一対のロールと、前記ロールを加熱するヒータと、を備え、圧延時に加熱することで圧延対象物が伸びやすくなり、低い圧力で(ヒートロール等の圧延部材への圧力負荷が小さい状態で)簡便に薄く圧延できる。また、加圧時に加熱することで、圧延後に可食シートS2が有する弾力により復元して厚さが戻ることが抑制されるため、厚みの制御及び薄膜化が容易な可食シートS2が簡便に得られる。また、上記実施形態にかかる可食シートS2の製造装置1によれば、荷重センサ及び温度センサを用いて、ロール間の距離、送り速度、及び加熱温度等の条件を調節することができ、厚さを調節することができる。
【0052】
さらに、上記実施形態にかかる可食シートS2の製造装置1及び製造方法において、原料生地の調製段階で、既にα化された澱粉を配合した組成物S0を利用した場合には、シート状成形体への形成過程、あるいはシート状に形成した後の乾燥過程で澱粉をα化させるための加熱の必要がない。また、圧延対象物である帯状材S1と原則的に接触し、帯状材S1は接触している間だけ圧延と同時に加熱されるため帯状材S1がヒートロール22a,22bに接触する時間は短く、たとえばドラム状の表面で一定時間焼成するタイプと比べ、加熱時間は短い。したがって、処理効率の向上が図れる。
【0053】
また、シートの圧延加工時に澱粉をα化させるのではなく、α化した原料を使用した場合には、製造時の熱履歴(加熱時間)が短いため、味や香りを保持しやすい。海苔などの様に加熱することで風味の劣化する素材をシート状に加工することができる。さらに可食シートS2に含有される食材の熱劣化を抑制することができ、食材本来の味や風味を保持した可食シートS2が得られる。
【0054】
なお、上記実施形態においてヒートロール装置20は一対のヒートロール22a,22bを示したが、これに限られるものではない。たとえば複数のヒートロール対を搬送方向に配し、数段階に分けて薄くしてもよい。また、一対のヒートロール22a,22bにそれぞれヒータ23a,23bが配される例を示したが、これに限られない。たとえば、一方のロールのみに配置してもよく、ヒータ23a,23bはロール22a,22bに内蔵しても外部に設置して加熱してもよい。
【0055】
なお、他の実施形態として、可食シートS2の製造装置1は、さらに、切断装置と、乾燥装置と、を備えていてもよい。たとえば可食シートS2を加工し、短冊状、フレーク状、キャラクター形状、バラン、カップなどに加工してもよい。
【0056】
また、他の実施形態として、製造装置1は、圧延装置10を備え、プレ圧延処理を行う構成を説明したがこれに限定されない。例えば、他の実施形態として
図6に示す製造装置1Aのように、圧延装置10を有さず、組成物S0をヒートロール装置20で加熱及び圧延を行う構成であってもよい。
【0057】
また、他の実施形態として、製造装置1は、圧延装置10及びヒートロール装置20を一体に構成し、搬送部14を介さずに、圧延装置10から送り出された帯状材S1を直接ヒートロール装置20に供給する構成としてもよい。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0059】
1…製造装置、10…圧延装置、11…架台、12…供給ホッパ、12a…保持台、12b…押出部、13…第1プレス部、14…搬送部、14a…搬送ロール、14b…搬送ロール、15…プレスロール、16…プレスロール、17…駆動源、20…ヒートロール装置、21…架台、22a…ヒートロール、22b…ヒートロール、23a…ヒータ、23b…ヒータ、26…移動装置、26a…支持ブロック、26b…支持ブロック、26c…移動機構、27…温度センサ、28…荷重センサ、29…搬送ガイド、29a…撓みセンサ、29b…搬送ロール、31…表示部、32…操作部、40…制御部、S0…組成物、S1…帯状材、S2…可食シート