(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100877
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】衛生マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220629BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A41D13/11 D
A62B18/02 C
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215127
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520341289
【氏名又は名称】株式会社meteco
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【弁理士】
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】西川 正悟
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】発泡樹脂シートの通気性を活かしつつ装飾性に優れ且つ低コストな衛生マスクを提供する。
【解決手段】顔に着用して鼻と口を覆い得るものであり、着用状態で中央の連結部2を境にして左右に分かれる右半体1Rと左半体1Lと、を有し、右半体1Rと左半体1Lを熱溶融性樹脂製のシート材6で形成すると共に中央の連結部2の上下に亘る全部又は一部に熱溶着部7を有する衛生マスク1であって、シート材6は、熱溶融性の発泡樹脂シート6aの片面に、その発泡樹脂シート6aの溶融温度より低温で溶融する熱溶融性の合成繊維シート6bを貼着してなり、また、中央の連結部2の熱溶着部7は、右半体1Rと左半体1Lの合成繊維シート6b同士を発泡樹脂シート6aの溶融温度より低い温度で熱溶着させてなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔に着用して鼻と口を覆い得るものであり、
着用状態で中央の連結部を境にして左右に分かれる右半体と左半体と、を有し、
前記右半体と左半体を熱溶融性樹脂製のシート材で形成すると共に中央の前記連結部の上下に亘る全部又は一部に熱溶着部を有する衛生マスクであって、
前記シート材は、熱溶融性の発泡樹脂シートの片面に、その発泡樹脂シートの溶融温度より低温で溶融する熱溶融性の合成繊維シートを貼着してなり、
また、前記中央の連結部の熱溶着部は、前記右半体と左半体の合成繊維シート同士を前記発泡樹脂シートの溶融温度より低い温度で熱溶着させてなることを特徴とする衛生マスク。
【請求項2】
前記発泡樹脂シートは発泡ポリウレタン製であり、前記合成繊維シートはポリエステル製であることを特徴とする請求項1記載の衛生マスク。
【請求項3】
前記発泡樹脂シートと前記合成繊維シートは、異なる色で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔の鼻と口を覆って飛沫の飛散等を抑制する衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように衛生マスクは、顔に着用して鼻と口を覆うものである。
そして、従来の衛生マスクには、着用状態で中央の連結部を境にして左右に分かれる右半体と左半体を有し、その右半体と左半体を熱溶融性樹脂である多孔性発泡ポリウレタン製のシート材で形成すると共に、中央の連結部の上下に亘る全部が熱溶着されているものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡ポリウレタン製のシート材は、通気性に優れ且つ低コストであるため、いわゆる使い捨ての衛生マスクに多く用いられる。その一方、コストを低く抑えるために一つの製品を大量生産するため、黒やグレー以外の彩色を施した衛生マスクの少量生産には適さない。
また、シート材を熱溶着するには、加熱した金型で連結部をプレスするのであるが、その際に必要な電力コストが衛生マスクのコストダウンを妨げる要因になっていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その目的は、発泡樹脂シートの通気性を活かしつつ装飾性に優れ且つ低コストな衛生マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明は、
顔に着用して鼻と口を覆い得るものであり、
着用状態で中央の連結部を境にして左右に分かれる右半体と左半体と、を有し、
前記右半体と左半体を熱溶融性樹脂製のシート材で形成すると共に中央の前記連結部の上下に亘る全部又は一部に熱溶着部を有する衛生マスクであって、
前記シート材は、熱溶融性の発泡樹脂シートの片面に、その発泡樹脂シートの溶融温度より低温で溶融する熱溶融性の合成繊維シートを貼着してなり、
また、前記中央の連結部の熱溶着部は、前記右半体と左半体の合成繊維シート同士を前記発泡樹脂シートの溶融温度より低い温度で熱溶着させてなる衛生マスクを提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、前記発泡樹脂シートが発泡ポリウレタン製であり、前記合成繊維シートがポリエステル製である請求項1記載の衛生マスクを提供する。
【0008】
また、請求項3に記載したように、前記発泡樹脂シートと前記合成繊維シートが、異なる色で形成されている請求項1又は2記載の衛生マスクを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衛生マスクは、熱溶融性の発泡樹脂シートの片面に、その発泡樹脂シートの溶融温度より低温で溶融する熱溶融性の合成繊維シートを貼着してなるシート材を使用し、且つ、中央の連結部の上下に亘る全部又は一部に対し、右半体と左半体の合成繊維シート同士を発泡樹脂シートの溶融温度より低温で熱溶着させるようにしたため、発泡樹脂シート同士を熱溶着させる場合に比べて電力コストが抑制でき、しかも熱溶着時の煙も少なくすることができる。また、連結部の発泡樹脂シートは、溶融温度に達しないため熱溶融に至らず、発泡構造がほぼ保たれるため、連結部の肌触りも良好になる。
さらに合成繊維シートは、彩色や模様付けが少量生産でも容易に行え、低いコストで好みの色や模様を施すことができるため、合成繊維シートを外向きにして衛生マスクを使用すれば装飾性にも優れる。
一方、合成繊維シートを内向きにして使用した場合には、発泡樹脂シートより滑らかさに勝る分、肌触りがよい。
また、合成繊維シートは、紫外線カット処理や抗菌処理が簡単に行えるため、衛生マスクの機能を向上させることも容易になる。
また、発泡樹脂シートと合成繊維シートの二層を飛沫が通過するため、飛沫防止効果をも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、合成繊維シートを外に向けた衛生マスクの斜視図、(b)は、発泡樹脂シートを外に向けた衛生マスクの斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1(a)の衛生マスクを扁平に畳んだ状態を示す断面図、(b)は、
図2(a)のZ部の拡大図である。
【
図3】(a)は、
図1(a)の連結部を示す要部拡大断面図、(b)は、
図1(b)の連結部を示す要部拡大断面図である。
【
図4】金型上に右半体と左半体を重ねてセットした状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
衛生マスク1は、顔に着用して鼻と口を覆うものであり、
図1(a)の着用状態で中央の連結部2を境にして右頬側の右半体1Rと左頬側の左半体1Lを有する。
右半体1Rと左半体1Lは、鼻と口を覆うマスク主部3と、顔の頬から耳に跨がる長孔4を有する環状の耳掛け部5を有しており、着用状態では
図1(a)、
図1(b)、
図3(a)、
図3(b)のように立体形になり、非着用状態では
図2(a)、
図2(b)のように右半体1Rと左半体1Lとが合わさった扁平状態になっている。
【0012】
右半体1Rと左半体1Lは、熱溶融性樹脂製のシート材6で形成されている。
実施形態では、対称形に別々にカットされた右半体1Rと左半体1Lを連結部2で熱溶着によりつなぎ合わせる構成になっており、その連結部2の上下に亘る全部が熱溶着部7になっている。
なお、右半体1Rと左半体1Lは、上記のように別体ではなく、一枚の熱溶融性樹脂製のシート材6で連結状態のままカットされていてもよく、その場合は、連結部2の上又は下又は上下に正面視V字状又は逆さV字状の切込部(図示せず)を設けてその切込部を熱溶着部でとじ合わせるようにしてもよい。かかる加工は、着用時にマスク主部3を立体化させる手段として従来より普通に行われている。
【0013】
しかして、実施形態の熱溶融性樹脂製のシート材6は、熱溶融性の発泡樹脂シート6aの片面に、その発泡樹脂シート6aの溶融温度より低温で溶融する熱溶融性の合成繊維シート6bを貼着してなる。具体的には、溶融温度が約250℃である発泡ポリウレタンで形成した発泡樹脂シート6aの片面に、溶融温度が約200℃であるポリエステルで形成した合成繊維シート6bを接着剤等で貼着してなる。なお、シート同士を接着するボンディング加工或はボンディング装置は周知であるため、説明を省略する。
【0014】
前記発泡樹脂シート6aは、量産品で安価なグレーのものを使用し、一方、合成繊維シート6bは、グレー以外の例えばピンクや紫、青色などに彩色したものを使用する。もちろん、合成繊維シート6bは印刷も可能であるため、適宜な柄や模様或は文字などを付すようにしてもよい。なお、合成繊維シート6bは、発泡樹脂シート6aと同色(例えばグレー同士)であってもよい。その場合でも、合成繊維シート6bと発泡樹脂シート6aの組み合わせによる装飾性の向上以外の利益は十分に得られる。
【0015】
かかるシート材6からなる右半体1Rと左半体1Lを、互いの合成繊維シート6b同士が向かい合わせになるように重合させ(
図3(b)参照)、その状態で
図4の金型8上に載せる。右半体1Rと左半体1Lの耳掛け部5は、長孔4の両端が円弧部4a,4bになっており、そのうちの頬側の円弧部4aの半径と同径の位置決め円部9が金型8の上面に突設されているため、その位置決め円部9に長孔4の頬側の円弧部4aを整合させて位置決めし、右半体1Rと左半体1Lの連結部2の上下に亘る全部をもう一方の金型(図示せず)で挟んで合成繊維シート6bが熱溶融する温度(約200℃)で熱溶着する。これにより合成繊維シート6b同士が熱溶着して一体化するため、右半体1Rと左半体1Lが連結部2で一体につながる。一方、このときの熱溶着温度は、発泡樹脂シート6aが熱溶融する温度(約250℃)より低いため、発泡樹脂シート6aは熱により若干変形するものの殆ど熱溶融せず、発泡構造がほぼ保たれる。
【0016】
以上の構成を有する衛生マスク1は、
図1(a)、
図3(a)のように合成繊維シート6b側を外向きにして使用するか、それを裏返して
図1(b)、
図3(b)のように発泡樹脂シート6a側を外向きにして使用するかを自由に選択することができる。
そして、合成繊維シート6bを外向きにして使用する場合には、合成繊維シート6bの彩色や模様により高い装飾性が発揮される。このとき連結部2は、
図3(a)のように内側に臨んで鼻や顎に直接触れるおそれがあるが、前記のように連結部2の発泡樹脂シート6aの発泡構造がほぼ保たれているため、仮に鼻等に触れたとしても当たりが柔らかく、長時間の着用にも痛みや違和感を感じにくい。
一方、発泡樹脂シート6aを外向きにして使用する場合は、
図3(b)のように肌触りに優れる合成繊維シート6bが皮膚に触れるため、長時間快適に着用することができる。
【0017】
なお、実施形態の衛生マスク1は、右半体1Rと左半体1Lの縁の連結部2が、前記耳掛け部5の長孔4の頬側の円弧部4aと同心の円弧形になっており、かかる長孔4の頬側の円弧部4aと、連結部2の円弧が同心であること及び長孔4の頬側の円弧部4aの径が、サイズの大小に拘わらず一定になっている。そして、衛生マスク1のサイズの大小は、
図4の実線と想像線のように、連結部2の円弧の長さと、耳掛け部5の耳側の円弧部4bの位置と大きさで対応するようになっている。
かかる構成を採用することにより、衛生マスク1のサイズに大小があっても、金型8上での連結部2の位置が、位置決め円部9の中心(=頬側の円弧部4aの中心)から常に一定の距離にあるため、一つの金型8で大・中・小など複数のサイズに対応することができる。よって、金型8のコストが削減できることはもちろん、金型8を設置する工場内のスペースもコンパクトにすることができる。
このような衛生マスク1の特徴的な構成は、上記実施形態のシート材6のみならず、熱溶融性樹脂製のシート材全般に適用可能である。
【0018】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、衛生マスク1に環状の耳掛け部5を設けたが、当該耳掛け部5を紐状にして頭部の後ろで結ぶようにしてもよい。
また、実施形態の合成繊維シート6bに紫外線カット処理や抗菌処理を施すようにして衛生マスク1の機能を向上させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 …衛生マスク
1R …右半体
1L …左半体
2 …連結部
6 …シート材
6a …発泡樹脂シート
6b …合成繊維シート
7 …熱溶着部