(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100900
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 27/08 20060101AFI20220629BHJP
B43K 8/02 20060101ALI20220629BHJP
B43K 8/03 20060101ALI20220629BHJP
B43K 8/06 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B43K27/08
B43K8/02 110
B43K8/03
B43K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215165
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】504253289
【氏名又は名称】川崎 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 正幸
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350KA01
2C350KC05
2C350KF05
2C350NA11
2C350NA17
2C350NA19
2C353KA02
2C353KA09
2C353KA19
(57)【要約】
【課題】使用性を向上可能な、複数の塗布部材を備えた塗布具を提供する。
【解決手段】
長手方向LDの少なくとも一部の異形領域の断面において、長手方向LDに直交する任意に選択される第一幅方向WD1の寸法に対して、長手方向LDおよび第一幅方向WD1に直交する第二幅方向WD2の寸法が大きい外形を有するアウターケーシング1と、アウターケーシング1の内側に保持された複数の塗布体2と、を備え、複数の塗布体2は第二幅方向WD2に並んで配置され、塗布体2の各々は、少なくとも前端側の端部がアウターケーシング1の外側に配置されてインクInを流出させる塗布部材20と、インクInを収容するインク収容部21と、インク収容部21から塗布部材20へ向けてインクInを案内するインク案内部22と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状をなして、長手方向の後端側から前端側に向けてインクを案内して前記前端側から流出させる塗布具であって、
前記長手方向に延びるとともに、前記長手方向の少なくとも一部の異形領域において前記長手方向に直交する異形部断面で、前記長手方向に直交する任意に選択される第一幅方向の寸法に対して、前記長手方向および前記第一幅方向に直交する第二幅方向の寸法が大きい外形を有するアウターケーシングと、
前記アウターケーシングの内側に保持された複数の塗布体と、
を備え、
前記複数の塗布体は前記第二幅方向に並んで配置され、
前記塗布体の各々は、少なくとも前記前端側の端部が前記アウターケーシングの外側に配置されて前記インクを流出させる塗布部材と、
前記インクを収容するインク収容部と、
前記インク収容部から前記塗布部材へ向けて前記インクを案内するインク案内部と、
を有する塗布具。
【請求項2】
前記異形領域の少なくとも一部は、前記アウターケーシングにおける前記長手方向の中央部よりも前記前端側に位置している請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記異形部断面において、前記第一幅方向の寸法が最小幅寸法であり、前記第二幅方向の寸法が最大幅寸法である請求項1または2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記異形領域は、前記アウターケーシングにおける前記長手方向の全長の100%の領域を示し、
前記アウターケーシングは前記長手方向の全域にわたって該長手方向に直交するすべての断面において、前記第一幅方向の寸法よりも前記第二幅方向の寸法が大きい請求項1から3のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項5】
前記アウターケーシングの外面は、前記第一幅方向に間隔を空けて配置されて前記長手方向及び前記第二幅方向に広がる一対の平面を有する請求項1から4のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項6】
前記アウターケーシングにおける前記一対の平面同士の前記第一幅方向の間隔は、前記長手方向の前端から後端に向かって漸次小さくなる請求項5に記載の塗布具。
【請求項7】
前記アウターケーシングの外面は、前記一対の平面同士を前記第二幅方向の両端で接続するとともに、前記第二幅方向の外側に向かって凸となる一対の曲面を有する請求項5または6に記載の塗布具。
【請求項8】
前記アウターケーシングにおける前記一対の曲面同士の前記第二幅方向の間隔は、前記長手方向の前端から後端に向かって漸次小さくなる請求項7に記載の塗布具。
【請求項9】
前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、
すべての前記異形部断面における前記第二幅方向の端と、該端に近接する前記塗布部材の中心との前記第二幅方向の距離が、前記異形部断面における前記第二幅方向の両端にそれぞれ近接する二つの前記塗布体における前記塗布部材で一致する請求項1から8のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項10】
前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、
前記異形領域における前記第二幅方向の最大寸法に対して、該第二幅方向の寸法が最大寸法となる前記異形部断面における前記第二幅方向の端と該端に近接する前記塗布部材の中心との距離が0.10倍以上0.40倍以下である請求項1から9のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項11】
すべての前記異形部断面において、前記第一幅方向の寸法に対して前記第二幅方向の寸法が1.25倍以上2.50倍以下である請求項1から10のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項12】
前記アウターケーシングは前記長手方向に延びる中心軸線を中心として棒状に形成され、
すべての前記異形部断面の外形は、前記中心軸線に直交して前記第一幅方向に延びる第一仮想線、および、前記中心軸線および前記第一仮想線に直交して前記第二幅方向に延びる第二仮想線を基準として線対称となっており、
前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、
すべての前記塗布部材の中心は、前記長手方向から見て前記第二仮想線上に配置されている請求項1から11のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項13】
前記アウターケーシングは前記長手方向に延びる中心軸線を中心として棒状に形成され、
すべての前記異形部断面の外形は、前記中心軸線を基準として点対称となっており、
前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、
前記複数の塗布体のうち、前記異形部断面における前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材の中心は、前記中心軸線を基準として点対称の位置に配置されている請求項1から11のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項14】
前記異形部断面において、前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材の中心同士は、前記第一幅方向に間隔をあけて配置されている請求項13に記載の塗布具。
【請求項15】
前記異形部断面において前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材のうちの少なくとも一方の前端は、前記長手方向から見て細長く延びる矩形状または線状をなしている請求項1から14のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項16】
前端が前記矩形状または前記線状をなす前記塗布部材は、前記長手方向から見て前記第二幅方向に延びている請求項15に記載の塗布具。
【請求項17】
前端が前記矩形状または前記線状をなす前記塗布部材は、前記第二幅方向に前記中心軸線から離れるにつれて、前記前端側から前記後端側に向かって傾斜する形状をなしている請求項15または16に記載の塗布具。
【請求項18】
前記塗布体の各々において、少なくとも前記インク収容部が交換可能になっている請求項1から17のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項19】
前記複数の塗布体の各々は、
前記塗布部材、前記インク収容部、および前記インク案内部が一体となって構成されるか、
または、
前記塗布部材、前記インク収容部、および前記インク案内部を覆うインナーケーシング構造を有し、
前記インナーケーシング構造は、前記アウターケーシングの内側に着脱可能に支持される請求項1から18のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項20】
前記インナーケーシング構造の外面には、前記アウターケーシングよりも前記前端側の位置に、前記インナーケーシング構造の滑りを抑制するグリップが設けられている請求項19に記載の塗布具。
【請求項21】
前記インナーケーシング構造は、前記アウターケーシングに対して嵌合、または螺合によって着脱可能に支持されている請求項19または20に記載の塗布具。
【請求項22】
前記アウターケーシングには、前記インナーケーシング構造の外面に対向して該インナーケーシング構造を前記長手方向に案内する案内面が設けられ、
前記案内面に対して前記インナーケーシング構造の外面が嵌合、または螺合可能となっている請求項21に記載の塗布具。
【請求項23】
前記アウターケーシングには、前記長手方向に延びるとともに前記インナーケーシング構造が一つずつ挿通される挿通孔が前記第二幅方向に並んで複数形成された塗布体ホルダーが設けられ、
前記案内面は前記挿通孔の内面である請求項22に記載の塗布具。
【請求項24】
前記挿通孔の数量は、前記塗布体の数量よりも多くなっている請求項23に記載の塗布具。
【請求項25】
前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる軸線を中心とした棒状をなし、
前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の軸線回りの相対回転を規制する回転規制部が設けられている請求項22から24のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項26】
前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる棒状をなし、
前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の前記長手方向への相対移動を規制する移動規制部が設けられている請求項22から25のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項27】
前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる軸線を中心とした棒状をなし、
前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の軸線回りの相対位置を確定させる回転方向位置決め部が設けられている請求項22から26のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項28】
前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる棒状をなし、
前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の前記長手方向の相対位置を確定させる長手方向位置決め部が設けられている請求項22から27のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項29】
前記複数の塗布体における前記塗布部材のすべてを覆うとともに前記アウターケーシングに対して着脱可能に取り付けられ、かつ、前記アウターケーシングに取り付けられた状態で前記長手方向に延びる有底筒状をなすアウターキャップをさらに備える請求項1から28のいずれか一項に記載の塗布具。
【請求項30】
前記アウターキャップの内側には、前記後端側に開口が形成されるとともに、前記複数の塗布体における前記塗布部材を個別に覆うインナーキャップが設けられている請求項29に記載の塗布具。
【請求項31】
前記アウターキャップの内面は、前記長手方向に直交する断面において前記第一幅方向の寸法に対して前記第二幅方向の寸法が大きい筒状をなし、
前記インナーキャップの内面は、前記長手方向に直交する断面において略真円形状の筒状をなし、
前記塗布体の外面において前記インナーキャップの内面が対向する領域は、前記長手方向に直交する断面において略真円形状をなす対向領域となっており、
前記インナーキャップの内面と前記対向領域との間には、前記塗布部材の前端を前記インナーキャップの内側に封止する封止部が設けられている請求項30に記載の塗布具。
【請求項32】
前記アウターキャップは、内面として、
前記アウターキャップが前記アウターケーシングに取り付けられた状態で前記長手方向に前記塗布部材に対向する内底面と、
前記内底面から立設されて、前記アウターキャップが前記アウターケーシングに取り付けられた状態で前記長手方向に延び、前記塗布体に前記第一幅方向および前記第二幅方向に対向する内側面と、
を有し、
前記インナーキャップは、前記内底面または前記内側面のみにおいて前記アウターキャップに支持され、
少なくとも前記インナーキャップの前記開口は、前記内側面との間に隙間を空けて配置されている請求項30または31に記載の塗布具。
【請求項33】
棒状をなして、長手方向の後端側から前端側に向けてインクを案内して前記前端側から流出させる塗布具であって、
前記長手方向に延びるとともに、前記長手方向の少なくとも一部の異形領域において前記長手方向に直交する異形部断面で、前記長手方向に直交する任意に選択される第一幅方向の寸法に対して、前記長手方向および前記第一幅方向に直交する第二幅方向の寸法が大きい外形を有するアウターケーシングと、
前記アウターケーシングの内側に保持された複数の塗布体と、
を備え、
前記複数の塗布体は前記第二幅方向に並んで配置され、
前記塗布体の各々は、少なくとも前記前端側の端部が前記アウターケーシングの外側に配置されて前記インクを流出させる塗布部材と、
前記インクを収容するインク収容部と、
前記インク収容部から前記塗布部材へ向けて前記インクを案内するインク案内部と、
を有し、
前記異形部断面において前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材のうちの少なくとも一方の前端は、前記長手方向から見て前記第二幅方向に細長く延びる矩形状または線状をなしている塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばラインマーカーやボールペンや万年筆等の塗布具が知られている。塗布具は様々な場面で使用されるが、例えば教育現場において教員が採点を行う際や、学生が学習する際に、色や太さの異なる複数の塗布具を交互に使用するような場面が存在する。現状では複数の塗布具を素早く持ちかえたり、同時に複数の塗布具を把持しつつこれらを交互に使用したりするなどの方法が採られているが、この作業が非常に手間となっている。
【0003】
ここで特許文献1には塗布具として、多色のペンを一つにまとめたノック式の多色ペンが開示されている。このような多色ペンを用いれば、色の異なるペンを複数準備することなく、交互に色を変えてペンを使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1のような塗布具を用いた場合であっても、色を変える際には塗布具をノックしてペン先(塗布部材)を交換する作業が必要となり、素早く色を変えて作業を行いたい場合にはノックの作業ですら煩わしく感じられ、使用者に十分な使用性を提供できているとは言い難い。さらに特許文献1の塗布具では、予めペン体に収容された色のみしか使用することができず、使用者に応じて色やペン先の太さ等をカスタマイズすることは難しく、この点においても使用者の満足を十分に得られていないのが現状である。
【0006】
そこで本発明は、使用性を向上可能な、複数の塗布部材を備えた塗布具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の一態様に係る塗布具は、棒状をなして、長手方向の後端側から前端側に向けてインクを案内して前記前端側から流出させる塗布具であって、前記長手方向に延びるとともに、前記長手方向の少なくとも一部の異形領域において前記長手方向に直交する異形部断面で、前記長手方向に直交する任意に選択される第一幅方向の寸法に対して、前記長手方向および前記第一幅方向に直交する第二幅方向の寸法が大きい外形を有するアウターケーシングと、前記アウターケーシングの内側に保持された複数の塗布体と、を備え、前記複数の塗布体は前記第二幅方向に並んで配置され、前記塗布体の各々は、少なくとも前記前端側の端部が前記アウターケーシングの外側に配置されて前記インクを流出させる塗布部材と、前記インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から前記塗布部材へ向けて前記インクを案内するインク案内部と、を有している。
【0008】
上記塗布具では、前記異形領域の少なくとも一部は、前記アウターケーシングにおける前記長手方向の中央部よりも前記前端側に位置していてもよい。
【0009】
上記塗布具では、前記異形部断面において、前記第一幅方向の寸法が最小幅寸法であり、前記第二幅方向の寸法が最大幅寸法であってもよい。
【0010】
上記塗布具では、前記異形領域は、前記アウターケーシングにおける前記長手方向の全長の100%の領域を示し、前記アウターケーシングは前記長手方向の全域にわたって該長手方向に直交するすべての断面において、前記第一幅方向の寸法よりも前記第二幅方向の寸法が大きくともよい。
【0011】
上記塗布具では、前記アウターケーシングの外面は、前記第一幅方向に間隔を空けて配置されて前記長手方向及び前記第二幅方向に広がる一対の平面を有してもよい。
【0012】
上記塗布具では、前記アウターケーシングにおける前記一対の平面同士の前記第一幅方向の間隔は、前記長手方向の前端から後端に向かって漸次小さくなってもよい。
【0013】
上記塗布具では、前記アウターケーシングの外面は、前記一対の平面同士を前記第二幅方向の両端で接続するとともに、前記第二幅方向の外側に向かって凸となる一対の曲面を有してもよい。
【0014】
上記塗布具では、前記アウターケーシングにおける前記一対の曲面同士の前記第二幅方向の間隔は、前記長手方向の前端から後端に向かって漸次小さくなってもよい。
【0015】
上記塗布具では、前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、すべての前記異形部断面における前記第二幅方向の端と、該端に近接する前記塗布部材の中心との前記第二幅方向の距離が、前記異形部断面における前記第二幅方向の両端にそれぞれ近接する二つの前記塗布体における前記塗布部材で一致してもよい。
【0016】
上記塗布具では、前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、前記異形領域における前記第二幅方向の最大寸法に対して、該第二幅方向の寸法が最大寸法となる前記異形部断面における前記第二幅方向の端と該端に近接する前記塗布部材の中心との距離が0.10倍以上0.40倍以下であってもよい。
【0017】
上記塗布具では、すべての前記異形部断面において、前記第一幅方向の寸法に対して前記第二幅方向の寸法が1.25倍以上2.50倍以下であってもよい。
【0018】
上記塗布具では、前記アウターケーシングは前記長手方向に延びる中心軸線を中心として棒状に形成され、すべての前記異形部断面の外形は、前記中心軸線に直交して前記第一幅方向に延びる第一仮想線、および、前記中心軸線および前記第一仮想線に直交して前記第二幅方向に延びる第二仮想線を基準として線対称となっており、前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、すべての前記塗布部材の中心は、前記長手方向から見て前記第二仮想線上に配置されていてもよい。
【0019】
上記塗布具では、前記アウターケーシングは前記長手方向に延びる中心軸線を中心として棒状に形成され、すべての前記異形部断面の外形は、前記中心軸線を基準として点対称となっており、前記塗布部材は前記長手方向に延びる軸線を中心として棒状に形成され、前記複数の塗布体のうち、前記異形部断面における前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材の中心は、前記中心軸線を基準として点対称の位置に配置されていてもよい。
【0020】
上記塗布具では、前記異形部断面において、前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材の中心同士は、前記第一幅方向に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0021】
上記塗布具では、前記異形部断面において前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材のうちの少なくとも一方の前端は、前記長手方向から見て細長く延びる矩形状または線状をなしていてもよい。
【0022】
上記塗布具では、前端が前記矩形状または前記線状をなす前記塗布部材は、前記長手方向から見て前記第二幅方向に延びていてもよい。
【0023】
上記塗布具では、前端が前記矩形状または前記線状をなす前記塗布部材は、前記第二幅方向に前記中心軸線から離れるにつれて、前記前端側から前記後端側に向かって傾斜する形状をなしていてもよい。
【0024】
上記塗布具では、前記塗布体の各々において、少なくとも前記インク収容部が交換可能になっていてもよい。
【0025】
上記塗布具では、前記複数の塗布体の各々は、前記塗布部材、前記インク収容部、および前記インク案内部が一体となって構成されるか、または、前記塗布部材、前記インク収容部、および前記インク案内部を覆うインナーケーシング構造を有し、前記インナーケーシング構造は、前記アウターケーシングの内側に着脱可能に支持されてもよい。
【0026】
上記塗布具では、前記インナーケーシング構造の外面には、前記アウターケーシングよりも前記前端側の位置に、前記インナーケーシング構造の滑りを抑制するグリップが設けられていてもよい。
【0027】
上記塗布具では、前記インナーケーシング構造は、前記アウターケーシングに対して嵌合、または螺合によって着脱可能に支持されていてもよい。
【0028】
上記塗布具では、前記アウターケーシングには、前記インナーケーシング構造の外面に対向して該インナーケーシング構造を前記長手方向に案内する案内面が設けられ、前記案内面に対して前記インナーケーシング構造の外面が嵌合、または螺合可能となっていてもよい。
【0029】
上記塗布具では、前記アウターケーシングには、前記長手方向に延びるとともに前記インナーケーシング構造が一つずつ挿通される挿通孔が前記第二幅方向に並んで複数形成された塗布体ホルダーが設けられ、前記案内面は前記挿通孔の内面であってもよい。
【0030】
上記塗布具では、前記挿通孔の数量は、前記塗布体の数量よりも多くなっていてもよい。
【0031】
上記塗布具では、前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる軸線を中心とした棒状をなし、前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の軸線回りの相対回転を規制する回転規制部が設けられていてもよい。
【0032】
上記塗布具では、前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる棒状をなし、前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の前記長手方向への相対移動を規制する移動規制部が設けられていてもよい。
【0033】
上記塗布具では、前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる軸線を中心とした棒状をなし、前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の軸線回りの相対位置を確定させる回転方向位置決め部が設けられていてもよい。
【0034】
上記塗布具では、前記インナーケーシング構造は、前記長手方向に延びる棒状をなし、前記案内面には、前記アウターケーシングに対する前記インナーケーシング構造の前記長手方向の相対位置を確定させる長手方向位置決め部が設けられていてもよい。
【0035】
上記塗布具は、前記複数の塗布体における前記塗布部材のすべてを覆うとともに前記アウターケーシングに対して着脱可能に取り付けられ、かつ、前記アウターケーシングに取り付けられた状態で前記長手方向に延びる有底筒状をなすアウターキャップをさらに備えていてもよい。
【0036】
上記塗布具では、前記アウターキャップの内側には、前記後端側に開口が形成されるとともに、前記複数の塗布体における前記塗布部材を個別に覆うインナーキャップが設けられていてもよい。
【0037】
上記塗布具では、前記アウターキャップの内面は、前記長手方向に直交する断面において前記第一幅方向の寸法に対して前記第二幅方向の寸法が大きい筒状をなし、前記インナーキャップの内面は、前記長手方向に直交する断面において略真円形状の筒状をなし、前記塗布体の外面において前記インナーキャップの内面が対向する領域は、前記長手方向に直交する断面において略真円形状をなす対向領域となっており、前記インナーキャップの内面と前記対向領域との間には、前記塗布部材の前端を前記インナーキャップの内側に封止する封止部が設けられていてもよい。
【0038】
上記塗布具では、前記アウターキャップは、内面として、前記アウターキャップが前記アウターケーシングに取り付けられた状態で前記長手方向に前記塗布部材に対向する内底面と、前記内底面から立設されて、前記アウターキャップが前記アウターケーシングに取り付けられた状態で前記長手方向に延び、前記塗布体に前記第一幅方向および前記第二幅方向に対向する内側面と、を有し、前記インナーキャップは、前記内底面または前記内側面のみにおいて前記アウターキャップに支持され、少なくとも前記インナーキャップの前記開口は、前記内側面との間に隙間を空けて配置されていてもよい。
【0039】
本発明の他の態様に係る塗布具は、棒状をなして、長手方向の後端側から前端側に向けてインクを案内して前記前端側から流出させる塗布具であって、前記長手方向に延びるとともに、前記長手方向の少なくとも一部の異形領域において前記長手方向に直交する異形部断面で、前記長手方向に直交する任意に選択される第一幅方向の寸法に対して、前記長手方向および前記第一幅方向に直交する第二幅方向の寸法が大きい外形を有するアウターケーシングと、前記アウターケーシングの内側に保持された複数の塗布体と、を備え、前記複数の塗布体は前記第二幅方向に並んで配置され、前記塗布体の各々は、少なくとも前記前端側の端部が前記アウターケーシングの外側に配置されて前記インクを流出させる塗布部材と、前記インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から前記塗布部材へ向けて前記インクを案内するインク案内部と、を有し、前記異形部断面において前記第二幅方向の両端に近接する前記塗布部材のうちの少なくとも一方の前端は、前記長手方向から見て前記第二幅方向に細長く延びる矩形状または線状をなしている。
【発明の効果】
【0040】
上記態様の塗布具によれば、使用性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態に係る塗布具の全体図であって、(a)は第二幅方向から見た正面図であり、(b)は第一幅方向から見た側面図である。
【
図2】上記塗布具の全体縦断面図であって、
図1(a)のA-A断面を示す図である。
【
図3】上記塗布具の横断面図であって、
図1(b)のB―B断面を示す図である。
【
図4】上記塗布具における塗布体ホルダーの縦断面図である。
【
図5】上記塗布具における塗布体ホルダーの横断面図であって、(a)は
図3のC1―C1断面を示す図であり、(b)は
図3のC2-C2断面を示す図であり、(c)は
図3のC3-C3断面を示す図である。
【
図6】上記塗布具の横断面図であって、
図1(b)のD―D断面を示す図である。
【
図7】上記塗布具のアウターキャップの第一幅方向に直交する縦断面図である。
【
図8】第一変形例の塗布具の横断面図であって、
図6に相当する図である。
【
図9】第二変形例の塗布具の全体縦断面図であって、
図2に相当する図である。
【
図10】第三変形例の塗布具の横断面図であって、
図3に相当する図である。
【
図11】第四変形例の塗布具の横断面図であって、
図6に相当する図である。また(a)は第二幅方向の両端側に塗布体を設置した場合を示し、(b)は第二幅方向の一方の端部と中央とに塗布体を設置した場合を示す。
【
図12】第五変形例の塗布具の全体縦断面図であって、
図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の第一実施形態について添付図面を参照して説明する。
(全体構成)
本実施形態では一例として、塗布具100がラインマーカーやボールペンや万年筆等の筆記具である場合について説明する。
図1(a)、
図1(b)、および
図2に示すように塗布具100は棒状をなしており、長手方向LDの後端側から前端側に向けて水性インクInを案内して前端側から流出させるものである。そして塗布具100は、長手方向LDに棒状に延びるアウターケーシング1と、アウターケーシング1の内側に保持された複数の塗布体2と、アウターケーシング1に対して着脱可能に設けられたアウターキャップ3とを備えている。
【0043】
(アウターケーシング)
図3に示すようにアウターケーシング1は、長手方向LDに直交する第一幅方向WD1の最大寸法W1に対して、長手方向LDおよび第一幅方向WD1に直交する第二幅方向WD2の最大寸法W2が大きい略楕円の横断面形状を有している。そして、長手方向LDに直交する各断面においてアウターケーシング1の最小幅寸法は第一幅方向WD1の寸法に一致し、最大幅寸法は第二幅方向WD2の寸法に一致する。またアウターケーシング1は、長手方向LDの全域にわたって長手方向LDに直交するすべての断面(異形部断面)における第一幅方向WD1の寸法よりも第二幅方向WD2の寸法が大きくなっている。長手方向LDに直交するすべての断面において、アウターケーシング1における第一幅方向WD1の寸法に対して、アウターケーシング1のすべての断面における第二幅方向WD2の寸法は、1.25倍以上2.50倍以下であるとよく、1.40倍以上2.00倍以下であるとよりよく、1.40倍以上1.80倍以下であるとさらによい。なお実施形態では、前記アウターケーシング1における長手方向LDの全域が、使用者がアウターケーシング1を把持する領域(異形領域)となっている。
なお、必ずしもアウターケーシング1の最小幅寸法は第一幅方向WD1の寸法に一致し、最大幅寸法は第二幅方向WD2の寸法に一致する必要はなく、各断面において任意に選択される(いずれか一つの)第一幅方向WD1の寸法よりも、この選択された第一幅方向WD1に直交する第二幅方向WD2の寸法が大きくなっていればよい。すなわちアウターケーシング1は、例えば断面が真円形状である場合を除き、様々な断面形状を有してよい。
【0044】
また本実施形態では、アウターケーシング1における長手方向LDに直交する断面形状は、アウターケーシング1における長手方向LDに延びる中心軸線Oに直交して第一幅方向WD1に延びる第一仮想線L1、および、中心軸線Oおよび第一仮想線L1に直交する第二仮想線L2を基準として線対称となっている。
【0045】
アウターケーシング1は有底筒状をなしている。アウターケーシング1の外面は、矩形状の底面1aと、底面1aから長手方向LDの前端側に向かって立設された筒状面1bとを有している。筒状面1bは、第一幅方向WD1に間隔をあけて配置された一対の平面1xと、一対の平面1x同士を第二幅方向WD2の両端で接続する一対の曲面1yとを有している。筒状面1bは、アウターケーシング1の前端側に開口を形成している。一対の平面1xは互いに同一形状をなして長手方向LDおよび第二幅方向WD2に広がって、後端側から前端側に向かって第二幅方向WD2の寸法が漸次大きくなる台形状に形成されている(
図1(b)参照)。曲面1yは、第二幅方向WD2の外側に向かって凸となる形状をなしている。
【0046】
また一対の平面1x同士の第一幅方向WD1の間隔は、長手方向LDの後端から前端に向かって漸次大きくなる。すなわち一対の平面1x同士は後端から前端に向かって第一幅方向WD1に離れていく(
図1(a)参照)。
【0047】
また
図2および
図3に示すようにアウターケーシング1には、アウターケーシング1と同心軸上に塗布体ホルダー10が設けられている。塗布体ホルダー10は、アウターケーシング1の前端側の開口に一部が挿入されて嵌合している。より具体的には、
図4、および
図5(a)~
図5(d)に示すように、塗布体ホルダー10には第二幅方向WD2に並んで長手方向LDに貫通する複数(本実施形態では2個)の挿通孔10aが形成されている。挿通孔10aの内面は、後述するインナーケーシング23の外面に対向してインナーケーシング23を長手方向LDに案内する案内面10xとなっている。
【0048】
塗布体ホルダー10は、アウターケーシング1に設けられた状態で中心軸線Oを中心とした板状に形成されたフランジ11と、フランジ11から長手方向LDの前端側に向けて立設されたキャップ支持部12と、フランジ11から長手方向LDの後端側に向けて立設されたの挿入部13と、フランジ11から長手方向LDの後端側に向けて立設されるとともに挿入部13を外周側から覆うように配置された嵌合部14とを有している。
【0049】
フランジ11は、アウターケーシング1における長手方向LDの前端側の端面に前端側から当接している。フランジ11の外形寸法は、アウターケーシング1の前端の外形寸法と同一であるか、またはアウターケーシングの前端の外形寸法よりも若干小さい。長手方向LDから見て、フランジ11には上記の挿通孔10aが第二幅方向に並んで複数(二つ)形成されている。
【0050】
図5(a)に示すように、キャップ支持部12は、挿通孔10aにおける前端側の開口を形成している。キャップ支持部12は、長手方向LDから見て第二幅方向WD2に挿通孔10aが並ぶメガネ形状をなしている。すなわちキャップ支持部12は、中心軸線Oを挟んで第二幅方向WD2に円筒部12aが複数(二つ)並んだ形状をなしている。各々の円筒部12aの内周面、すなわち、挿通孔10aの内面には、挿通孔10aの開口から後端側に向かって円筒部12aの中途位置まで延びる縦溝12xが形成されている。
【0051】
縦溝12xは、中心軸線Oに直交して第二幅方向に延びる第二仮想線L2上に配置されている。縦溝12xは、各々の円筒部12aの内周面から径方向外側に向かって凹むようにして形成されており、各々の円筒部12aにおいて第二幅方向WD2に対向して一対が配置されている。縦溝12xは、円筒部12aの周方向、すなわちアウターケーシング1の周方向を向く周方向規制面(回転規制部、回転方向位置決め部)120、および後端に配置されて前端側を向く第一長手方向規制面(移動規制部、長手方向位置決め部)121を有している。周方向規制面120および第一長手方向規制面121には、後述する塗布体2のインナーケーシング23が係合するようになっている(
図2参照)。
【0052】
また
図4に戻って、キャップ支持部12の外面には、複数の円筒部12aの外周面において連続して中心軸線Oを中心として環状をなす環状突起12yが形成されている。この環状突起12yには、後述するアウターキャップ3の内面が係合するようになっている(
図2参照)。
【0053】
さらにキャップ支持部12では、縦溝12xよりも後端側の位置で、各々の円筒部12aの内周面から突出する支持突起12zが形成されている。
図5(b)に示すように、支持突起12zは各々の円筒部12aの周方向に間隔をあけて複数カ所(本実施形態では円筒部12aの周方向に等間隔で4カ所)に形成されている。より具体的には、各々の円筒部12aにおいて第二仮想線L2上に配置されて第二幅方向WD2に対向する位置に一対の支持突起12zと、これら一対の支持突起12z同士の間に配置された一対の支持突起12zとが、円筒部12aの周方向に等間隔に設けられている。各々の支持突起12zは、後端側を向く第二長手方向規制面(移動規制部、長手方向位置決め部)122を有している(
図4参照)。第二長手方向規制面122には、後述する塗布体2のインナーケーシング23が係合するようになっている(
図2参照)。
【0054】
図5(c)に示すように挿入部13は、挿通孔10aにおける後端側の開口を形成している。挿入部13は長手方向LDから見て第二幅方向WD2に挿通孔10aが並ぶメガネ形状をなしている。すなわち挿入部13は、中心軸線Oを挟んで第二幅方向WD2に複数(二つ)の円筒部13aが並んだ形状をなしている。
【0055】
嵌合部14は、挿入部13におけるすべての円筒部13aを外周側から覆うように配置されて中心軸線Oを中心とした環状をなしている。嵌合部14は挿入部13との間に、嵌合部14の径方向に間隔を空けて配置されている。
図4に戻って、嵌合部14の外面には互いに長手方向LDに間隔をあけて環状に形成された複数の環状突起14xが形成されている。この環状突起14xが後述するアウターケーシング1の内面に接触して押圧されることで、嵌合部14がアウターケーシング1の内面が嵌合するようになっている(
図2参照)。
【0056】
(塗布体)
図1(a)および
図1(b)に戻って、塗布体2は複数(本実施形態では二個)設けられている。
図2に示すように各々の塗布体2は、少なくとも先端(前端側の端部)がアウターケーシングの外側に配置される塗布部材20と、インクInを収容するインク収容部21と、インク収容部21から塗布部材20へ向けてインクInを案内するインク案内部22と、塗布部材20、インク収容部21、およびインク案内部22が設けられたインナーケーシング23とを有している。
【0057】
(塗布部材)
塗布部材20は、インクInを流出させる機能を有するペン先であって長手方向LDに延びる軸線O1、O2を中心とした棒状をなしている。
図6に示すように本実施形態の塗布部材20の先端は、長手方向LDから見て第二幅方向WD2に細長く延びる矩形状をなしている。また各々の塗布体2における塗布部材20同士は、アウターケーシング1の中心軸線Oを挟んで、第二幅方向WD2に間隔を空けて並んで配置されている。各々の塗布部材20の中心O1、O2(第二幅方向WD2の中央)は長手方向LDから見て第二仮想線L2上に配置されている。また各々の塗布部材20は中心軸線Oから離れるにつれて、前端側から後端側に傾斜する形状をなしている(
図1(b)参照)。すなわち塗布部材20は、チゼル型となっている。
【0058】
ここで
図2に戻って、アウターケーシング1における第二幅方向WD2の最大寸法Wmに対して、第二幅方向WD2の両端に近接する一方の塗布部材20の中心(軸線O1、O2)とアウターケーシング1における第二幅方向WD2の最外部(中心から近い側の最外部)との第二幅方向WD2の距離X1、X2が0.10倍以上0.40倍以下となっている。なお最大寸法Wmに対して距離X1、X2は、0.19倍以上0.40倍以下であるとよりよく、0.25倍以上0.40倍以下であるとさらによい。なお、第二幅方向WD2の両端に近接するいずれか一方の塗布部材20について、上記の最大寸法Wmに対する距離X1、X2の条件を満たせばよい。なお本実施形態では「X1=X2」となっている。すなわち、第二幅方向WD2の両端に近接する両方の塗布部材20の中心同士が第一仮想線L1を基準として線対称に、同じ位置に配置されている。
【0059】
(インク収容部)
インク収容部21は、塗布部材20に対して長手方向LDの後端側に配置され、ている。インク収容部21は、本実施形態ではインク吸蔵体(中綿)であって、インクInを吸蔵させた円柱状の繊維収束体である。インク収容部21には、前端側から長手方向LDに塗布部材20が押し込まれることで収容穴21aが形成される。よってこの収容穴21a内には塗布部材20の後端側の端部が配置されている。そして収容穴21aに対して塗布部材20が長手方向LDに抜き差し可能になっている。
【0060】
(インク案内部)
インク案内部22は、本実施形態ではインク収容部21と一体となっている。すなわち上記のインクInを吸蔵させた繊維収束体がインク案内部22としても機能する。この繊維収束体に吸蔵されたインクInが毛細管現象によって塗布部材20に案内され、塗布部材20から流出するようになっている。よって本実施形態の塗布体2は中綿式の構造を有しており、インク案内部22およびインク収容部21として機能する繊維収束体が交換可能となっている。
【0061】
(インナーケーシング)
インナーケーシング23は長手方向LDに棒状に延び、塗布部材20、インク収容部21、およびインク案内部22を外周側から覆うとともに、これら塗布部材20、インク収容部21、およびインク案内部22を支持している。各々の塗布体2におけるインナーケーシング23同士は、第二幅方向WD2に間隔を空けて並んで配置されている。各々のインナーケーシング23は塗布部材の20と同軸上に設けられており、軸線O1、O2を中心とした円筒状をなしている。インナーケーシング23は、一つずつ塗布体ホルダー10の挿通孔10aに挿通されている。なおインナーケーシング23は、必ずしも独立した部材でなくともよく、塗布部材20、インク収容部21、およびインク案内部23の外壁が一体となって構成される部材であってもよい。
【0062】
図3に示すようにインナーケーシング23の外面には、塗布体ホルダー10のキャップ支持部12に形成された縦溝12xに前端側から挿入可能となるように、長手方向LDに延びる位置決め突起23xが形成されている。位置決め突起23xは、各々のインナーケーシング23において第二仮想線L2上に配置され、第二幅方向WD2に対向して一対が設けられている。位置決め突起23xは、ちょうど縦溝12x内に配置される。位置決め突起23xは、インナーケーシング23の周方向を向く周方向対向面130、および後端側の端部で後端側を向く第一長手方向対向面131(
図2参照)を有している。
【0063】
位置決め突起23xが縦溝12x内に配置されると、周方向対向面130は、塗布体ホルダー10の周方向規制面120に対向し、第一長手方向対向面131は、塗布体ホルダー10の第一長手方向規制面121に対向する。
【0064】
位置決め突起23xが縦溝12x内に配置されると、塗布体ホルダー10とインナーケーシング23とが係合し、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の軸線O1、O2回りの相対回転が規制されるとともに、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の長手方向LDの後端側への相対移動が規制されるようになっている。これと同時に、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の軸線O1、O2回りの回転方向の位置決めと長手方向LDの位置決めが行われる。
【0065】
図2に戻って、位置決め突起23xよりも前端側において、各々のインナーケーシング23の外面には軸線O1、O2を中心として環状をなす環状溝23yが長手方向LDに間隔を空けて複数形成されている。すべての環状溝23yは、塗布体ホルダー10よりも前端側に配置されている。複数の環状溝23yはグリップとして機能し、使用者が環状溝23yを把持した際のインナーケーシング23の滑りを抑制する滑り止めとなっている。
【0066】
またインナーケーシング23における環状溝23yよりも前端側には、中心軸線Oを中心として環状をなす第一段差面23aおよび第二段差面23bが形成されている。そして第一段差面23aおよび第二段差面23bによってインナーケーシング23の外径は、前端側に向けて段階的に縮径している。第一段差面23aおよび第二段差面23bは前端側を向く面であり、第一段差面23aと第二段差面23bとの間においてインナーケーシング23の外面には、後述するインナーキャップ4の内面が対向して面接触、または線接触するようになっている。インナーケーシング23の外面におけるインナーキャップ4の内面が対向する対向領域では、長手方向LDに直交する断面においてインナーケーシング23の外形は、略真円形状をなしている。ここで言う略真円とは、完全な真円だけでなく製造時の寸法誤差を含む真円に近い形状も含む。
【0067】
またインナーケーシング23の外面には、位置決め突起23xよりも後端側の位置で、軸線O1、O2を中心として環状をなす環状支持突起23zが形成されている。環状支持突起23zは、前端側を向く第二長手方向対向面132を有している。第二長手方向対向面132は、塗布体ホルダー10のキャップ支持部12に形成された支持突起12zの第二長手方向規制面122(
図4参照)に対して後端側から対向する。すなわちインナーケーシング23が挿通孔10aに前端側から挿入されると、環状支持突起23zが支持突起12zを乗り越えて後端側から支持突起12zに係合(嵌合とも言う)することで、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の長手方向LDの前端側への相対移動が規制されるようになっている。これと同時にアウターケーシング1に対するインナーケーシング23の長手方向LDの位置決めが行われる。
【0068】
またインナーケーシング23には後端側の端部において封止栓24が設けられている。封止栓24は、インナーケーシング23に挿入されるとともに、インク収容部21である繊維収束体を後端側から支持している。
【0069】
(アウターキャップ)
図1(a)および
図1(b)に戻って、アウターキャップ3はアウターケーシング1に対して着脱可能に設けられている。アウターキャップ3がアウターケーシング1に取り付けられた状態では、アウターキャップ3の中心軸線は、アウターケーシング1の中心軸線Oに一致する。
図7に示すようにアウターキャップ3は外面および内面ともに、アウターケーシング1と同様に第一幅方向WD1の寸法に対して第二幅方向WD2の寸法が大きな断面略楕円の有底筒状をなしている。またアウターキャップ3は、内面として、塗布部材20に長手方向LDに対向する内底面30と、内底面30から立設されて長手方向LDに延びて塗布体2に第一幅方向WD1および第二幅方向WD2に対向する内側面31とを有している。
【0070】
アウターキャップ3の内側面31には、後端側の端部において塗布体ホルダー10におけるキャップ支持部12の環状突起12y(
図4参照)に後端側から対向して係合可能な支持突起3xが形成されている。支持突起3xは、アウターキャップ3の周方向に間隔をあけて複数カ所(例えば四カ所)に設けられている。アウターキャップ3をアウターケーシング1に前端側から近接させると、支持突起3xが環状突起12yを乗り越えて環状突起12yに係合することで、アウターケーシングに対するアウターキャップの長手方向LDの前端側への相対移動を規制するようになっている。
【0071】
さらに、アウターキャップ3の内側にはインナーキャップ4が設けられている。インナーキャップ4は、複数の塗布体2における塗布部材20を個別に覆うように、第一幅方向WD1および第二幅方向WD2において塗布部材20に対応した位置に複数(本実施形態では二個)配置されている。すなわち、複数のインナーキャップ4は、第二幅方向WD2に互いに間隔を空けて並んで配置されている。各々のインナーキャップ4は、内面が長手方向LDに直交する断面において略真円形状をなす筒状をなしている。ここで言う略真円には、完全な真円だけでなく製造時の寸法誤差を含む真円に近い形状も含む。インナーキャップ4はアウターキャップ3の内底面30から後端側に向けて立設され、長手方向LDに延びている。インナーキャップ4はアウターキャップ3に内底面30のみで支持されている。
【0072】
またインナーキャップ4は、アウターキャップ3の内側面31との間に隙間Sを空けて配置されている。インナーキャップ4は例えば樹脂等の可撓性を有する材料からなり、上記の隙間Sが形成されていることで、インナーキャップ4の後端側の端部に形成された開口4aが拡径可能なっている。なおインナーキャップ4とアウターキャップ3とで、材料が異なっていてもよいし、同じであってもよい。インナーキャップ4がインナーケーシング23の外面に接触すると、インナーケーシング23の外面に押されて開口4aが若干拡径してインナーキャップ4とインナーケーシング23との間の隙間が封止される。より具体的には、開口4aの近傍に軸線O1、O2を中心と環状をなす突起である封止部4bが設けられている。この封止部4bがインナーケーシング23の外面に面接触、または線接触することで塗布部材20の前端をインナーキャップ4の内側に封止する。
【0073】
またアウターキャップ3の内側面31には、内底面30から後端側に向けて長手方向LDに延びるリブ3aが形成されている。リブ3aは第二仮想線L2上に一対が配置されている(
図6参照)。よって一対のリブ3a同士は第二幅方向WD2に対向して配置されている。各々のリブ3aは、支持突起3xよりも前端側に配置されている。そして各々のリブ3aは、後端側から前端側に向かうにしたがって中心軸線Oに向かって漸次傾斜する第一傾斜面33と、第一傾斜面33に接続されて内底面30に向かって、中心軸線Oに向かって第一傾斜面33よりも緩やかに漸次傾斜して延びる第二傾斜面34とを有している。よって一対のリブ3a同士の第二幅方向WD2の間隔は後端側から前端側に向かって漸次間隔が狭くなりつつ内底面30に達している。アウターキャップ3がアウターケーシング1に取り付けられる際、リブ3aの第一傾斜面33がインナーケーシング23の外面に接触した後に第二傾斜面34がインナーケーシング23の外面に接触し、インナーケーシング23をインナーキャップ4の内側に円滑に案内するようになっている。
【0074】
(作用効果)
次に、上記塗布具100の作用効果について説明する。
以上説明した本実施形態の塗布具100によれば、アウターケーシング1の第一幅方向WD1の寸法よりも第二幅方向WD2の寸法の方が大きくなっており、かつ、第二幅方向WD2に複数の塗布部材20が並んでいる。このため、使用者がアウターケーシング1を第一幅方向WD1から挟むようにしてアウターケーシング1を把持した際、使用者の手前側および奥側に第二幅方向WD2の両端の塗布部材20が配置されることになる。したがってアウターケーシング1を自然に把持するのみで、塗布部材20の位置決めができるため使用性を向上することができる。
【0075】
さらに使用者の手前側に配置された塗布部材20を使用した後に、使用者の奥側に配置された塗布部材20を使用する際には、アウターケーシング1を第一幅方向WD1から挟むようにして把持したまま、指のみでアウターケーシング1を中心軸線O回りに回転させることで、手前側に配置された塗布部材20を奥側に配置し、奥側に配置された塗布部材20を手前側に容易に配置することができる。したがって、使用したい塗布部材20を素早く交換しつつ塗布具100を使用することができ、非常に高い使用性が得られる。
【0076】
また本実施形態では、アウターケーシング1の各断面において、第一幅方向WD1の寸法が最小幅寸法であり、第二幅方向WD2の寸法が最大幅寸法であるため、より把持しやすく、回転させやすい。またアウターケーシング1の両端に近接する塗布部材20の中心の位置が、第一仮想線L1を基準として線対称な位置に配置されているため、アウターケーシング1を回転させた際の塗布部材20の位置決めが容易である。
【0077】
またインク収容部21の交換が可能であるため、インクInが切れても、塗布具100全体を廃棄することなくインク収容部21の交換のみで半永久的にアウターケーシング1を繰り返し使用することができ、エコフレンドリーである。また本実施形態では、塗布体2毎にインナーケーシング23が設けられているため、塗布体2ごと交換することも可能である。よって塗布部材20の形状やインクInの色等を使用者の好みに合わせてカスタマイズすることができるため、この点においても使用性を向上できる。
【0078】
またインナーケーシング23には、グリップとして機能する環状溝23yが設けられている。したがって、このグリップを把持することで塗布体2をアウターケーシング1から容易に取り外すことができる。またグリップを設けたことによって、塗布体2をアウターケーシング1から外した状態で単独で使用することもできる。
【0079】
さらに、アウターケーシング1の外面が第一幅方向WD1に間隔をあけて配置された一対の平面1xを有している。したがって使用者は、容易に第一幅方向WD1から挟むようにしてアウターケーシング1を把持することができる。さらにアウターケーシング1の外面が一対の平面1x同士を接続するとともに第二幅方向WD2の外側に凸となる一対の曲面1yを有している。このため、アウターケーシング1を第一幅方向WD1から挟むようにして把持したまま、指のみでアウターケーシング1を中心軸線O回りに回転させて手前側に配置された塗布部材20を奥側に配置し、奥側に配置された塗布部材20を手前側に配置しようとする際、アウターケーシング1の回転がさらに容易になる。
【0080】
またアウターケーシング1の平面1x同士の第一幅方向WD1の間隔が長手方向LDの前端から後端に向かって漸次小さくなっている。すなわち、アウターケーシング1は後端に向かって徐々に細くなっていくテーパ状をなしている。したがって使用者がアウターケーシング1を親指と人差し指との間で第一幅方向WD1から挟むように把持して、例えば紙面等の塗布対象物に塗布部材20を押し付けた際であっても、使用者の手前側に向かってアウターケーシング1が移動しにくくなり、把持性を向上でき、塗布具100が使用者の手から脱落しにくくなる。
【0081】
同様に、一対の曲面1y同士の第二幅方向WD2の間隔も長手方向LDの前端から後端に向かって漸次小さくなっているため、使用者がアウターケーシング1を親指と人差し指との間で第二幅方向WD1から挟むように把持した場合にも、使用者の手前側に向かってアウターケーシング1が移動しにくくなり、把持性を向上できる。
【0082】
塗布部材20の中心(軸線O1、O2)とアウターケーシング1における第二幅方向WD2の最外部との第二幅方向WD2の距離X1、X2が0.10倍以上0.40倍以下であり、より好ましくは0.19倍以上0.40倍以下、さらに好ましくは0.25倍以上0.40倍以下であれば、アウターケーシング1の最外部に対して塗布部材20の中心の位置が近くなり過ぎない。すなわち、各々の塗布体2のインナーケーシング23の軸線O1、O2の位置をアウターケーシング1の中心軸線Oへ近づけることができる。よって、アウターケーシング1を把持した際に、各々の塗布体2のインナーケーシング23の軸線O1、O2の近くを把持することができる。よって、各々の塗布体2を塗布対象に押し付ける際には、使用者が各々の塗布体2のインナーケーシング23を直接把持する場合に近い感覚で、塗布具100を使用することができ、使用性の向上が可能である。
【0083】
またアウターケーシング1における第一幅方向WD1の寸法に対して、アウターケーシング1における第二幅方向WD2の寸法が1.25倍以上2.50倍以下、好ましくは1.40倍以上2.00倍以下、さらに好ましくは1.40倍以上1.80倍以下であるため、断面が第一幅方向WD1に潰れた略楕円形状となり、アウターケーシングが断面真円形状である場合に比べて把持性をさらに向上できる。
【0084】
また、アウターケーシング1は第一仮想線L1および第二仮想線L2を基準として線対称な断面形状を有するとともに、塗布部材20の中心が第二仮想線L2上に配置されている。したがって第二幅方向WD2の両端に位置するいずれの塗布部材20を使用する際にも、同様の使用性を得ることができる。
【0085】
また塗布部材20がチゼル型となっているが、これら塗布部材20は第二幅方向WD2の端に位置するため、使用性を損なうことがない。すなわち、チゼル型の塗布部材20であっても、使用時に他の塗布部材20に邪魔されることなく使用することができる。また塗布部材20は第二幅方向WD2に中心軸線Oから離れるにつれて、前端側から後端側に向かって傾斜するように配置されている。このため使用者がアウターケーシング1の後端を手前側に傾けて把持した際に、塗布部材20の先端の全体を塗布対象に平行に押し付けることができ、例えば塗布対象の文字列に対してマーキング等を行う際に好適である。
【0086】
また塗布体2がインナーケーシング23を有することで、インナーケーシング23をアウターケーシング1から引き抜いたりアウターケーシング1に押し込んだりすることで、塗布体2を容易にアウターケーシング1に対して着脱することができる。したがって塗布体2におけるインク収容部21の交換も容易となる。
【0087】
さらにアウターケーシング1には塗布体ホルダー10が設けられ、塗布体ホルダー10には挿通孔10aが設けられている。また挿通孔10aの内面はインナーケーシング23を長手方向LDに案内する案内面10xとなっており、塗布体2をアウターケーシング1の所定位置に容易に設置することができる。特に本実施形態では案内面10xは挿通孔10aの内面となって筒状の面となっているため、インナーケーシング23を挿通孔10aに挿入するのみで、塗布体2をアウターケーシング1に容易に設置することができる。
【0088】
また、挿通孔10aに内面である案内面10xには縦溝12xが形成され、インナーケーシング23には位置決め突起23xが形成されている。そして縦溝12xの周方向規制面120と位置決め突起23xの周方向対向面130とによって、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の軸線O1、O2回りの位置決め、および相対回転の規制が可能となる。したがって、インナーケーシング23を挿通孔10aに配置することで必然的に塗布部材20の軸線O1、O2回りの位置を確定させることができるとともに、塗布具100を使用する際には、塗布部材20が回転して位置ずれしてしまうことを回避できる、使用性の向上につながる。
【0089】
さらに、縦溝12xの第一長手方向規制面121と位置決め突起23xとによって、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の長手方向LDの位置決め、および長手方向LDの後端側への相対移動の規制が可能となる。したがって、インナーケーシング23を挿通孔10aに配置することで必然的に塗布部材20の長手方向LDの位置を確定させることができるとともに、塗布具100を使用する際には塗布部材20がアウターケーシング1に対して後端側へ移動して位置ずれしてしまうことを回避できる、使用性の向上につながる。
【0090】
またインナーケーシング23の外面に形成された環状支持突起23zの第二長手方向対向面132と、塗布体ホルダー10に形成された支持突起12zの第二長手方向規制面122とによって、アウターケーシング1に対するインナーケーシング23の長手方向LDの位置決め、および長手方向LDの前端側への相対移動の規制が可能となる。したがって、インナーケーシング23を挿通孔10aに配置することで必然的に塗布部材20の長手方向LDの位置を確定させることができるとともに、塗布具100を使用する際には塗布部材20がアウターケーシング1に対して前端側へ移動して位置ずれしてしまうことを回避できる、使用性の向上につながる。
【0091】
またアウターキャップ3が複数の塗布部材20のすべてを覆うようになっているため、アウターキャップ3を取り外せば、すべての塗布部材20を一度に露出させることができ、各々の塗布部材20に個別にキャップを設ける場合に比べて塗布具100を使用する際の手間を削減できる。
【0092】
さらにアウターキャップ3の内側にはインナーキャップ4が設けられ、アウターキャップ3をアウターケーシング1に取り付けるのみで、各々のインナーキャップ4が塗布部材20を覆うことができる。よって、塗布具100の不使用時のインクInの揮発を回避することができる。特に本実施形態ではインナーキャップ4がアウターキャップ3の内底面30のみで支持されて可撓性を有するとともに、アウターキャップ3の内側面31との間に隙間Sが形成されている。そしてインナーケーシング23の外面に押されてインナーキャップ4の開口4aが拡径しつつ、インナーケーシング23の外面にインナーキャップ4の内面が接触することによって塗布部材20を封止するため、アウターキャップ3およびインナーキャップ4の取り付けがスムーズである。
【0093】
またアウターキャップ3の内面の断面形状はアウターケーシング1と同様の略楕円形状となっている。一方でインナーキャップ4の内面の断面形状は、略真円形状となっている。よって断面形状が略真円ではないアウターキャップ3のみでは塗布部材20を封止することが難しいが、断面略真円形状のインナーキャップ4を設けたことで、アウターキャップ4の形状によらず、塗布部材20の封止効果を高めることができる。
【0094】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0095】
上述の実施形態では塗布部材20がチゼル型である場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えばカリグラフィー型や万年筆型などの方向性を有する塗布部材を採用してもよい。またボールペンやサインペンやシャープペン等のペン先のような方向性の無い塗布部材を採用してもよい。
【0096】
またアウターケーシング1の材質は特に限定されないが、例えばバイオプラスチック等の樹脂材料をアウターケーシング1に用いてもよい。また使用者は、第一幅方向WD1の寸法よりも第二幅方向WD2の寸法が大きくなっている部分を把持して、塗布具100を使用できればよいので、アウターケーシング1は長手方向LDの少なくとも一部の領域における断面で、第一幅方向WD1の寸法よりも第二幅方向WD2の寸法が大きくなっていればよい。すなわちアウターケーシング1における上記の異形領域は上記実施形態ではアウターケーシング1の長手方向LDの全長の100%の領域を示すが、これに限定されない。例えば上記異形領域の少なくとも一部がアウターケーシング1における長手方向LDの中央部よりも前端側に位置するように異形領域を配置してもよい。また、上記異形領域の少なくとも一部が、アウターケーシング1の前端からアウターケーシング1の長手方向LDの全長の1/3までの範囲に位置してもよく、全長の1/4の範囲に位置してもよい。すなわち異形領域は使用者がアウターケーシング1を把持する領域であるため、少なくともアウターケーシング1の前端側に配置されるとよい。よって例えば、長手方向LDの一部においてアウターケーシング1の断面が略楕円形状をなし、残りの部分の断面が略真円状をなしていてもよい。なお、アウターケーシング1における長手方向LDの一部の領域が異形領域となっている場合には、上記実施形態の寸法条件はこの異形領域内で満足すればよい。
【0097】
またアウターケーシング1の断面形状は、略楕円形状に限定されず、矩形状をなしていてもよく、第一幅方向WD1に比べて第二幅方向WD2の寸法が大きい形状であれば形状は特に限定されない。例えばアウターケーシング1の断面形状を正三角形とし、各頂点の近くに一つずつ塗布体2を配置してもよい。
【0098】
また、塗布体2のグリップとして機能する部材として、環状溝23yに代えて滑り止めのゴム部材をインナーケーシング23の外面に設けてもよい。
【0099】
またアウターケーシング1の内側における後端部分には、インナーケーシング23が挿通されるとともにインナーケーシング23の位置を確定するための筒状体を設けてもよい。そしてこのような筒状体の内面を上記の案内面10xとして機能させもよい。したがってこのような筒状体に周方向規制面120、第一長手方向規制面121、および第二長手方向規制面122を設けてもよい。このように案内面10xは必ずしも塗布体ホルダー10に設けられなくともよい。そして案内面10xは、例えばインナーケーシング23を第一幅方向WD1または第二幅方向WD2から挟み込むように配置された平面であってもよい。
【0100】
また、インナーケーシング23は、挿通孔10aに対して螺合することでアウターケーシング1に支持されてもよい。
【0101】
またアウターキャップ3は必ずしも設けなくともよい。また各々の塗布体2に個別にキャップを設けてもよい。インナーキャップ4は、アウターキャップ3に対して内底面30のみで支持された構造に限定されない。例えば、内側面31に点状のリブを設け、このリブによってインナーキャップ4がアウターキャップ3に支持されてもよい。またインナーキャップ4とアウターキャップ3の内底面30との間に弾性部材を設けるとともに、インナーキャップ4をアウターキャップ3に対して長手方向LDに相対移動可能としてもよい。この場合、弾性部材によってインナーキャップ4がインナーケーシング23の第一段差面23aに向けて付勢され、より塗布部材20をしっかりと封止することができる。
またインナーキャップ4はインクInが揮発性の低いものであれば、必ずしも設けなくともよい。逆に、インクInの揮発性が高い場合、例えば水性インクの場合にはインナーキャップ4を設けることが好ましい。
【0102】
また塗布体ホルダー10の挿通孔10aの断面形状は真円でなくともよい。例えば、挿通孔10aが楕円形や多角形の形状をなし、かつ、インナーケーシング23の外面の形状を挿通孔10aの形状に対応した楕円形や多角形の形状としてもよい。この場合、周方向対向面130はインナーケーシング23の内面そのものであり、周方向規制面120は挿通孔10aの内面そのものである。すなわち、縦溝12xおよび位置決め突起23xを設けなくとも、インナーケーシング23および挿通孔10aの断面形状によってインナーケーシング23の塗布体ホルダー10に対する相対回転が規制される。またこの場合、インナーケーシング23を挿通孔10aに挿入すれば、アウターケーシング1に対してインナーケーシング23の軸線O1、O2回りの相対位置が一義的に決まり、チゼル型等の方向性を有する塗布部材20の場合であっても、所定の方向に塗布部材20を配置することができる。
【0103】
また、塗布体2を第二幅方向WD2に三個設ける場合、第二幅方向WD2の両端に位置する塗布部材20よりも、両端に位置する塗布部材20同士に挟まれる中央の塗布部材20の先端がより前端側に位置するように配置してもよい。この場合、中央に位置する塗布部材20が他の塗布部材20に比べて前端側に突出することになり、中央の塗布体2の使用性を向上できる。
【0104】
また本実施形態ではインクInは水性インクであるが、水性インクには、例えばゲルインクのように水性インクに増粘剤等を添加したインクも含む。なおインクInは特に本実施形態のものに限定されず油性のインク等であってもよいが、油性ボールペンのインクはあまり好適ではない。
【0105】
〔第一変形例〕
また
図8に示すように、チゼル型およびカリグラフィー型の方向性を有する塗布部材20の場合、第二幅方向の両端に位置する塗布部材20の先端が長手方向LDから見て第一幅方向WD1および第二幅方向WD2に交差する第三幅方向WD3に延びるように配置されていてもよい。この場合、使用者がアウターケーシング1を把持した状態において、塗布体2における塗布部材20の先端の位置を確認しやすくなる。さらに使用者の好みにあわせてアウターケーシング1に対するインナーケーシングの軸線O1、O2回りの相対位置を変更可能となっていてもよい。具体的には例えば、縦溝12xを挿通孔10aの周方向の間隔をあけて複数形成し、同様にインナーケーシング23にも複数の位置決め突起をインナーケーシング23の周方向に複数形成する等の構造を採用可能である。
【0106】
〔第二変形例〕
また
図9に示すように塗布体2Aは中綿式の構造ではなく、直液式の構造を有していてもよい。すなわち、インク収容部21Aは、インクInを収容するとともにインナーケーシング23Aに対して後端側に着脱可能に接続されるインクタンクである。またインク案内部22Aは、インナーケーシング23Aの内側においてインク収容部21Aと塗布部材20との間に配置されて長手方向LDに延びる中継芯40と、インナーケーシング23Aの内側で中継芯40を覆うジャバラ41とを有している。ジャバラ41は、圧力変動を緩衝する機能を有し、例えば合成樹脂によって形成されている。本変形例ではインク収容部21Aがインクタンクとなっており、インク案内部22Aとは別体に形成されているため、インクInの交換が容易である。
【0107】
〔第三変形例〕
また
図10に示すように、アウターケーシング1における長手方向LDに直交する断面形状は、中心軸線Oを基準として点対称となっていてもよい。またこの場合、第二幅方向WD2の両端に位置する複数の塗布体2の中心(軸線O1、O2)は、中心軸線Oを基準として点対称の位置に配置され、かつ、塗布体2の中心同士は第一幅方向WD1に間隔をあけて配置されている。この場合、使用者がアウターケーシング1を把持した状態で、二つの塗布体2における塗布部材20が第一幅方向WD1にずれた位置に配置されるため、各々の塗布部材20の先端位置を確認しやすくなる。
【0108】
〔第四変形例〕
また
図11(a)および
図11(b)に示すように、塗布体2の数量に対して塗布体ホルダー10Aの挿通孔10Aaの数量が多くなっていてもよい。すなわち塗布体ホルダー10Aの挿通孔10Aaが第二幅方向WD2に三個以上並んで配置されている。この場合、例えば二つの塗布体2を使用者の好みの挿通孔10Aaに挿通するすることで、二つの塗布体2の相対的な位置関係、すなわち二つの塗布体2における塗布部材20の間隔を適宜調整することが可能となる。
【0109】
〔第五変形例〕
またインナーケーシング23は必ずしも設けられなくともよい。例えば
図12に示すように、アウターケーシング1Aに長手方向LDに延びる塗布体収容穴200を第二幅方向WD2に並んで複数形成し、各々の塗布体収容穴200にインク収容部およびインク案内部の機能を有する例えばインク吸蔵体201を収容し、塗布部材20を設けたペン先202を塗布体収容穴200へ前端側から挿入するようにしてアウターケーシング1Aに塗布体2Bを保持させてもよい。この場合、塗布具100の製造コストを抑えることができる。
【0110】
また塗布体2の具体的な組み合わせとしては、以下の通りのものが例示される。
・色の異なる二つのチゼル型のラインマーカー
・一つのボールペン(例えば赤色または黒色)と一つのサインペン(例えば赤色)
・一つのボールペン(例えばオレンジ色)と一つのチゼル型のラインマーカー(例えば緑色)
・色の異なるペン(ペンの種類は問わない、例えばオレンジ色のペンと緑色のペン)。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の塗布具によれば、使用性を向上できる。
【符号の説明】
【0112】
1、1A アウターケーシング
1x 平面
1y 曲面
2、2A、2B 塗布体
3 アウターキャップ
4 インナーキャップ
4a 開口
4b 封止部
10、10A 塗布体ホルダー
10a、10Aa 挿通孔
10x 案内面
20 塗布部材
21、21A インク収容部
22、22A インク案内部
23、23A インナーケーシング
30 内底面
31 内側面
100 塗布具
120 周方向規制面
121 第一長手方向規制面
122 第二長手方向規制面
130 周方向対向面
131 第一長手方向対向面
132 第二長手方向対向面
In インク
LD 長手方向
WD1 第一幅方向
WD1 第二幅方向
WD2 第二幅方向
WD3 第三幅方向
L1 第一仮想線
L2 第二仮想線
O 中心軸線
O1、O2 軸線