IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Joyson Safety Systems Japan株式会社の特許一覧

特開2022-100938フード持ち上げ装置用アクチュエータ
<>
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図1
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図2
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図3
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図4
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図5
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図6
  • 特開-フード持ち上げ装置用アクチュエータ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100938
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】フード持ち上げ装置用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/19 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
F15B15/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215230
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】村上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】根本 大地
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB06
3H081CC01
3H081CC15
3H081DD02
3H081HH08
(57)【要約】
【課題】ピストンロッドの退動防止用の介在体のラジアル移動を規制し、介在体の数で反力を調節できるフード持ち上げ装置用アクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、シリンダ2、ピストンロッド3及びガス発生装置4を有する。ピストンロッド3の後端部に、周方向3等分位置に溝20が設けられている。溝20の底面21がテーパ面となっている。溝底面21とシリンダ内周面との間にボール15が配置されている。溝底面21は、ピストンロッド3の軸心線と垂直な断面において円弧となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内に配置されたピストンロッドをガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げるフード持ち上げ装置用アクチュエータであって、
該ピストンロッドの基端側に設けられたテーパ面と前記シリンダの内周面との間にピストンロッド退動阻止用の介在体が配置されており、
前記ピストンロッドの基端側の外周面に、該ピストンロッドの長手方向に延在する溝が設けられており、
該溝の底面が前記テーパ面となっていることを特徴とするフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項2】
前記溝が、1条又はピストンロッドの周方向に間隔をおいて複数条設けられている、請求項1のフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項3】
3条の前記溝が前記ピストンロッドの周方向の3等分位置に設けられている、請求項1のフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項4】
前記ピストンロッドの軸心線と垂直な断面において、前記溝の底面は、ピストンロッドの軸心と同心の円弧となっている、請求項1~3のいずれかのフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項5】
前記溝の側面と溝の底面との交わる部分がR形状となっている、請求項1~4のいずれかのフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項6】
前記溝の側面は、前記ピストンロッドの軸心から放射方向に設けられている、請求項1~5のいずれかのフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項7】
前記溝の側面は、ピストンロッドの直径方向と平行方向となっている、請求項1~5のいずれかのフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項8】
1条の前記溝に1個の介在体が配置されている、請求項1~7のいずれかのフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【請求項9】
1条の前記溝に2個の介在体が周方向に並んで設けられている、請求項1~7のいずれかのフード持ち上げ装置用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者等との衝突が検知又は予知されたときに、自動車のフード(ボンネットフード)を押し上げるためのフード持ち上げ装置用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフード持ち上げ装置に用いられるアクチュエータとして、ガス発生装置と、シリンダと、ピストンロッドとを備えたものがある。このアクチュエータにあっては、ガス発生装置が作動すると、シリンダからピストンロッドが突出することによりフードが持ち上げられる。
【0003】
突出したピストンロッドが後退することを阻止するために、ピストンロッドの周面にテーパ面が設けられ、該テーパ面とシリンダ内周面との間にボールが配置されている。ピストンロッドが後退しようとすると、ボールがテーパ面とシリンダ内周面との間に噛み込まれ、ピストンロッドの後退が阻止される。
【0004】
従来、このテーパ面は、ピストンロッドの軸心線と垂直な断面において円形となっている。ボールは、この断面円形のテーパ面を取り巻くように多数個配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-30440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ピストンロッドの退動防止用の介在体のラジアル移動を規制し、介在体の数で反力を調節できるフード持ち上げ装置用アクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフード持ち上げ装置用アクチュエータは、シリンダ内に配置されたピストンロッドをガス圧によって移動させて車両のフードを持ち上げるフード持ち上げ装置用アクチュエータであって、該ピストンロッドの基端側に設けられたテーパ面と前記シリンダの内周面との間にピストンロッド退動阻止用の介在体が配置されており、前記ピストンロッドの基端側の外周面に、該ピストンロッドの長手方向に延在する溝が設けられており、該溝の底面が前記テーパ面となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、前記溝が、1条又はピストンロッドの周方向に間隔をおいて複数条設けられている。
【0009】
本発明の一態様では、3条の前記溝が前記ピストンロッドの周方向の3等分位置に設けられている。
【0010】
本発明の一態様では、前記ピストンロッドの軸心線と垂直な断面において、前記溝の底面は、ピストンロッドの軸心と同心の円弧となっている。
【0011】
本発明の一態様では、1条の前記溝に1個の介在体が配置されている。
【0012】
本発明の一態様では、1条の前記溝に2個の介在体が周方向に並んで設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピストンロッドの退動防止用の介在体のラジアル移動を規制し、介在体の数で反力を調節できる。本発明によれば、ピストンロッド周方向における介在体の位置が溝によって確定されたものとなり、ピストンロッドの上昇移動がスムーズになると共に、ピストンロッドが下方移動するときの介在体のシリンダ内周面への食い込み動作が安定し、衝撃吸収作動が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係るアクチュエータの作動前の状態における長手方向の断面図である。
図2図1のII部分の拡大図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】ピストンロッドの一部の斜視図である。
図5】別の実施の形態を示す図3と同様部分の断面図である。
図6】別の実施の形態を示す図3と同様部分の断面図である。
図7】別の実施の形態に係るアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は実施の形態に係るフード持ち上げ装置用アクチュエータ1を示す。このフード持ち上げ装置は、車両が歩行者に衝突した際にフードを持ち上げて歩行者の衝撃を緩和するためのものである。
【0017】
なお、以下の説明では、ピストンロッドの突出方向の端部を上端又は先端、突出方向とは反対方向の端部を下端又は後端と称する。
【0018】
このアクチュエータ1は、シリンダ2、及びピストンロッド3を有する直動型のアクチュエータである。シリンダ2の後端にはガス発生装置4が設けられている。ガス発生装置4は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、ECUの指令に基づいて作動し、高圧ガスを発生させる。この高圧ガスにより、ピストンロッド3を押し上げてシリンダ2から突出させる。
【0019】
シリンダ2の先端側には、中央に孔部を有したフランジ状のエンドメンバ5が固定設置されている。エンドメンバ5の内周縁側は、シリンダ2の内周縁よりも中央側に張り出している。
【0020】
ピストンロッド3の先端側はエンドメンバ5の中央孔部を通って上方へ突出している。エンドメンバ5の内周面に溝が周回して設けられており、この溝にストッパリング6の外周縁の爪片(図示略)が係合している。
【0021】
図示は省略するが、ストッパリング6の外周縁からは放射方向に爪片が突設されている。爪片は、ストッパリング6の周方向に間隔をおいて複数個設けられている。これらの爪片が上記の溝に係合している。
【0022】
ストッパリング6は、定常時(ガス発生装置非作動時)におけるピストンロッド3の上方への突出を阻止している。ピストンロッド3の先端にはカバーキャップ7が装着されている。
【0023】
図2にも明示の通り、ピストンロッド3の後端部はピストン部8となっている。該ピストン部8の外周面には溝9が周設されている。Oリング10が溝9内に配置され、シリンダ2の内周面に気密にかつ摺動自在に接している。
【0024】
ピストン部8よりも上方側は小径部11となっており、該小径部11よりも上側に大径部12が設けられている。大径部12の直径は、シリンダ2の内径よりもごく僅かに小さいものとなっている。
【0025】
図3に示すように、大径部12に、上下方向に延在する溝20が設けられている。溝20の下端は、小径部11に向って開放している。この実施の形態では、溝20が3条、周方向の3等分位置に設けられているが、溝20は1条、2条又は4条以上設けられてもよい。
【0026】
大径部12の外周面は溝20を除いて、上下方向に等径の円筒面となっている。溝20は、溝底面21と、1対の溝側面22,22とを有している。
【0027】
図3の通り、ピストンロッド3の軸心線方向と垂直な断面において、溝底面21は、ピストンロッド3の軸心と同心状の円弧面となっている。また、溝底面21は、図2の通り、上方ほどシリンダ2の内周面との間隔が小さくなるように傾斜したテーパ面となっている。溝側面22,22は、それぞれ、ピストンロッド3の軸心から放射方向に設けられている。ただし、図4のように、溝側面22は、ピストンロッド3の直径方向と平行方向に設けられてもよい。また、図5のように、溝側面22と溝底面21との交わる部分はR形状、即ち、丸みを帯びた形状とされてもよい。溝側面22や溝底面21と、溝上端面とが交わる部分がR形状になっていてもよい。
【0028】
なお、溝20は、例えば切削加工により形成することができるが、溝の形成方法は任意であり、これに限定されない。
【0029】
溝20の溝底面21とシリンダ2の内周面との間にボール15(介在体)が配置されている。ボール15は、一方の溝側面22にのみ接してもよく、双方の溝側面22に接してもよく、双方の溝側面22とボール15との間に若干の間隙が存在する状態となっていてもよい。
【0030】
ボール15の下側にはボール保持リング16が小径部11を取り巻くように配置されている。ボール保持リング16は、ピストン部8の小径部11側の段差面上に当接配置されている。
【0031】
アクチュエータ1が作動する前の状態では、ボール15はボール保持リング16の上面に当接している。また、この状態では、ボール15は、シリンダ2の内周面に摺動可能に接しているか、又は両者間に若干の間隙が存在する状態となっている。
【0032】
次に、このアクチュエータ1の動作を説明する。検知システムにより、車両と歩行者との衝突が検知又は予知されると、ガス発生装置4がECUの指令に基づいて作動し、高圧ガスを発生させる。高圧ガスがシリンダ2内に供給され、ピストンロッド3を上方に移動させる。
【0033】
上昇するピストンロッド3がストッパリング6を押し上げ、ストッパリング6の外周縁の爪片(図示略)が変形してストッパリング6がエンドメンバ5から外れ、ピストンロッド3が上方に突出し、ボンネットフードの後部を押し上げる。ピストンロッド3は、大径部12がエンドメンバ5に当たるまで上方移動する。
【0034】
ピストンロッド3が上方移動する間は、ボール15はボール保持リング16に当接しており、ピストンロッド3の移動を拘束しない。
【0035】
押し上げられたボンネットフードに歩行者等から荷重が加えられ、ボンネットフード後部及びピストンロッド3が下方移動しようとすると、ボール15がシリンダ2の内周面と溝底面21との間に噛み込まれた状態となる。ピストンロッド3に加えられる下向き荷重により、ボール15は、テーパ面よりなる溝底面21から放射方向に分力を受け、シリンダ2内周面に押し付けられ、シリンダ2内周面に食い込み、ボール15がシリンダ2内周面を変形させながら下方へ移動する。これにより、衝撃が吸収される。
【0036】
この実施の形態では、ボール15の数が3個と少ない。一般に、ボールの個数が増えると、ラップ量(シリンダ内周面への食い込み深さ)に対して反力Fが大きくなる(ボール1ケ当りの圧力の合計が反力Fとなる。)。
【0037】
ラップ量は、部品の寸法バラツキによって変化するが、ボール個数が増えると反力Fの幅も大きくなる(大きく変化する)。従って、ボール個数を少なくすることにより、反力Fの幅を狭めることができる。ボールの数で反力を調節できる。
【0038】
この実施の形態によると、ボール15が溝20内に配置され、周方向に位置決めされた状態となっているので、ピストンロッド3の上昇がスムーズであると共に、ピストンロッド3の下降時におけるシリンダ2内周面への食い込み動作が安定し、衝撃吸収作動が安定する。
【0039】
上記実施の形態では、1個の溝20に1個のボール15が配置されているが、図7のようにボール2個分の幅広の溝20’を設け、各溝20’内にそれぞれボール15を2個ずつ周方向に並列させるように配置してもよい。図7の実施の形態のその他の構成は上記実施の形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0040】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 アクチュエータ
2 シリンダ
3 ピストンロッド
4 ガス発生装置
8 ピストン部
11 小径部
12 大径部
15 ボール
20,20’ 溝
21 溝底面
22 溝側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7