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  • 特開-燃料 図1
  • 特開-燃料 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010095
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】燃料
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/04 20060101AFI20220106BHJP
   C10G 67/04 20060101ALI20220106BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20220106BHJP
   C10G 21/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C10L1/04
C10G67/04
C10G45/02
C10G21/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181050
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2020065476の分割
【原出願日】2016-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】518455251
【氏名又は名称】マウェタール エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ウォハイビ、ムゥハァミィドゥ
(72)【発明者】
【氏名】プルット、トム エフ.
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA01
4H129HB03
4H129KA05
4H129MA01
4H129MA07
4H129MA11
4H129MA12
4H129MB05A
4H129MB15A
4H129MB15B
4H129NA01
4H129NA02
4H129NA06
(57)【要約】
【課題】燃料コスト及び環境に優しい原油由来の燃料を提供すること。
【解決手段】引火点を除いて、全てのISO RMA10(ISO2817-10)仕様
に適合するまたは超えている燃料であって、ナフサの初留点および溶剤分離に好適な溶剤
に可溶な成分の中で一番高い沸点を有する成分の最高沸点を有する一連の炭化水素を含み
、 (a)0.50%m/m(重量%)以下、好ましくは、0.05~0.20m/m(
重量%)の範囲の硫黄、(b)5.0mg/Kg(重量ppm)以下、好ましくは、1.
0mg/Kg(1.0重量ppm)以下の金属、(c)引火点処理なしでの60℃未満の
引火点を有する燃料とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料であって、前記燃料が
(a)1種以上の原油単独、または1種以上の原油と高硫黄燃料油もしくは他の重質残留油の1種以上との組み合わせ、または1種以上の原油とライトタイトオイルとの組み合わせの硫黄区切り点より高い液体留分の水素化処理流れ;および
(b)1種以上の原油単独、または1種以上の原油と高硫黄燃料油もしくは他の重質残留油の1種以上との組み合わせ、または1種以上の原油とライトタイトオイルとの組み合わせの硫黄区切り点以下の未処理液体留分
を含み、
前記燃料が溶剤分離に使用される1種以上の溶剤に不溶性の残留物を含まず、かつ、前記燃料の最高沸点が前記燃料に組み合わされる水素化処理流れの最高沸点である、
ことを特徴とする、燃料。
【請求項2】
前記未処理液体留分の最低沸点部分から、プロパンまたはブタンやペンタンを含むヘプタン以下の他のパラフィン系溶剤を含む液体溶剤による溶剤分離からの水素化処理可溶性物の最高沸点部分までの範囲の炭化水素の組み合わせを含む、
請求項1に記載の燃料。
【請求項3】
10重量ppm以下の硫黄を有する水素化処理超低硫黄流れを含む、
請求項1に記載の燃料。
【請求項4】
10重量ppm未満の硫黄含有量を有する低減硫黄流れである第1の水素化処理流れ、および0.12~0.18重量%の範囲の硫黄含有量を有する低減硫黄流れである第2の水素化処理燃料留分を含み、かつ、前記未処理留分が目標硫黄含有量超の、目標硫黄含有量の、または目標硫黄含有量未満の硫黄含有量を有する、
請求項1に記載の燃料。
【請求項5】
0.5重量%以下の目標硫黄含有量を有する、
請求項1に記載の燃料。
【請求項6】
ライトタイトオイルもしくは凝縮物、またはライトタイトオイルおよび凝縮物の組み合わせと、1つ以上の未処理留分および水素化処理流れとを含み、燃料の引火点は考慮されていない場合であり、前記ライトタイトオイルが、0.1重量%~0.2重量%の範囲の硫黄含有量および37~67度の範囲のAPI(度)密度を有し、かつ、重量%基準で(a)5~20重量%の液化石油ガス範囲、(b)10~35重量%のナフサ、(c)15~30重量%の灯油、(d)15~25重量%のディーゼル油、(e)減圧軽油、および(f)ゼロ(0%)~10%の重質残留物、の蒸留物取り出しの留分範囲を有する、
請求項1に記載の燃料。
【請求項7】
燃料であって、約35℃~約315℃の範囲の初留点から、前記約315℃より高い最高沸点までを有する炭化水素であって、前記最高沸点が、前記燃料の範囲に属する脱アスファルト化油の終点であり、かつ溶剤分離のために選択された溶剤に溶解せず前記燃料の範囲に属しない脱アスファルト化残留物の開始の初留点である、最高沸点である、炭化水素を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油、精製残油および他の汚染液体供給物から硫黄含有量が非常に低い燃料
を製造する方法及び装置に関する。本発明により製造される硫黄含有量が非常に低い燃料
は、大型海上輸送船舶の船上に対して、および陸上の大型陸上燃焼ガスタービンに対して
、特に費用対効果が高い。
【背景技術】
【0002】
本発明は、長く知られているがこれまでに未解決の大きな環境問題である、「外洋上」
の船舶が安価な低等級重質バンカー油およびその他の硫黄、窒素および金属を多く含む重
質残渣を燃やす場合に、硫黄、窒素および金属の酸化物が自然環境中に運ばれるというこ
とを標的としている。そのような排出は、世界的規模であり、国の地理的境界とは無関係
に広がる。
【0003】
様々な第三者の報告によると、このような水上輸送のための重質燃料を海上で燃焼する
ことによって生じる特定の地球規模の排出は、全世界の陸上でガソリンを燃焼する全車両
および全ディーゼル車両を合わせたよりもさらに何倍も高い。そのような海上での燃焼は
、SOx、NOx、CO2、煤煙および有害な金属を排出する。陸上車両には、自動車、
トラックなどが含まれ、その多くは、現在、硫黄含有量が非常に低い、義務化された「ハ
イウェイ燃料」を使用している。したがって、そのような大型船による輸送が「1マイル
あたりの積載量」および燃料消費基準に基づいて効率的であっても、実際には、そのよう
な船舶は大量の排出を発生する。
【0004】
船舶に、より清浄な燃焼船舶用燃料の使用を命じる特定の重要な規制の導入は、そのよ
うな燃料が使用可能な量で十分に提供されることを条件としている。技術的にも経済的に
も可能でも実用的でもないことを命じないためには、解決策がなお必要である。
【0005】
例えば、国連の一部門である、国際海事機関(IMO)は、国際海運に関する規則を発
行している。IMOは、技術的な制約を認識しつつも、海洋燃料の硫黄制限をより厳しく
することによって排出量の削減を図ってきた。IMOは、2011年以降に外洋上(例え
ば、米国、欧州及びその他の海岸から200海里を含む排出規制海域(ECA)外での燃
焼)で燃焼された船舶用燃料は、3.50%m/mを超えない硫黄量でなければならない
ということを燃料に要求している。2015年には、IMOは規則を改正し、ECA内の
商業船舶に対して、船舶用燃料の硫黄含有量を、一般に0.1%未満に制限した。
【0006】
しかしながらIMOは、2020年以降について、外洋での硫黄制限を再び大幅に下げ
、0.50%m/mとした。だがIMOは、2020年におけるこのような積極的な削減
は、「2018年までに完了予定の、必要とされる燃料油の入手可能性についてのレビュ
ーの結果」次第であるとし、要求される燃料が入手できない場合、そのような削減を20
25年に延期する可能性を示唆している。海洋産業における大気汚染の規制については、
海洋汚染防止条約(MARPOL)、附属書VIを参照のこと。
【0007】
したがって、低硫黄船舶用燃料の供給可能性の欠如およびそのような供給を達成するた
めの技術の欠如に関して、問題が生じる現実的かつ重大な可能性がある。例えば、201
5年の業界刊行物には、「排出規制海域に求められる[2014年の]レベル未満に燃料
中に許容される硫黄含有量を減らす計画が立てられている……が、これは、現在の技術で
は、多くの海運会社にとって費用が法外になってしまうため、長年を要する」と述べられ
ている。そのような刊行物は、さらに、「余分なコストと機械的な問題の可能性があるた
め、これらの規制は継続的に再評価され、履行には段階的なアプローチが採用され」、こ
れは、「多くの船舶用エンジンは、重質燃料油よりもはるかに希薄であり重質燃料油の潤
滑特性を有していない低硫黄軽油を扱うようには設計されていないからである。各社は、
燃料を冷却してその粘度を上げる、追加の潤滑剤をエンジンの特定部分に注入するなど、
様々な回避策を講じ、うまくいくように努めている」と述べている(非特許文献1)。
【0008】
他の例としては、2015年に、IMO規制により、指定されたECA内の商用船舶に
関して、船舶用燃料の硫黄含有量が最大0.1%硫黄に下げられたことがある。ECAに
入る前に、船舶は、外洋で燃焼された、硫黄が多いが安価な高硫黄重質バンカー燃料油か
ら、ハイウェイディーゼル燃料に似た、高価な低硫黄燃料に変更しなければならない。2
015年1月1日以降、ECA内での燃料硫黄を1.00%m/m(2010年7月1日
以降)から0.10%m/mに下げたことにより、市場の供給と価格設定の課題が引き起
こされた。IMO関係の規制遵守のための海洋用燃料の製造と供給は、ハイウェイおよび
他の陸上用ディーゼル用途のための蒸留燃料需要と競合し、利用可能な好ましい供給原料
流、および既存の精製装置や供給物供給網を、ディーゼルや他の低硫黄留出物のハイウェ
イ利用から離れさせてしまう。また、船上では他の技術的問題も発生する。
【0009】
ECA内での硫黄含有量の2015年のIMO低減に関して、米国沿岸警備隊は、「よ
り高い硫黄含有燃料を使用する船舶は、新しい規制を満たすために超低硫黄(ULS)燃
料油に変更しなければならない」と警告を発している。船舶は、本国行きおよび外国行き
航行中、ドックにおいて、およびECA内で常時、ULS燃料油を使用しなければならな
いため、高硫黄含有燃料油を使用する船舶では、ECAに入る前に残留燃料と蒸留燃料を
切り替えるための切り替え手順を開発し実行する必要がある。沿岸警備隊はさらに、「船
級協会、保険会社、エンジンメーカーおよび業界団体により作成された文書にて言及され
ている超低硫黄燃料油および燃料油の切り替えの使用に関連して、他の重要な技術的課題
がたくさんある」こと、および「ULS燃料油の単位体積あたりのエネルギー含有量は、
既存のスロットル設定が所望のプロペラシャフトRPMまたは発電機負荷を与えないなど
、残留燃料と異なる可能性がある」ことを警告している(非特許文献2)。
【0010】
厳然たる現実としていえるのは、精製所は費用がかかるものであり、たとえ燃料製品や
製造装置の比較的軽微に思える変更や単位操作の追加であっても、大幅な設備投資が必要
になる、ということである。2003年時には、欧州における精製所の評価研究が、船舶
用燃料の汚染物質を下げる必要性、ならびにそのような燃料の必要量を生産するにあたっ
ての必要条件および能力を見据えて実施された。例えば、非特許文献3を参照されたい。
【0011】
このような報告書は、多くの国で適切な船舶用燃料の必要量を産生しようとする際にコ
ストが上昇することや精製所利用効率が低下することに加え、場合によっては主要な港の
近くにそのような船舶用燃料を現地製造および供給する地元の基本施設がないこと、なら
びにそのような燃料を作るための技術と装置がないことなどといった大きな課題を提起し
た。
【0012】
引用された報告書は、3つの選択肢のみを見出した。「再配合オプション」(重質燃料
油を低硫黄燃料に配合する)は、低硫黄バンカーを製造する最も低コストの選択肢として
検討されたが、大きなコストはかからないながら最小量の材料しか処理できないため、適
切ではなかった。この選択肢は、欧州の精製所で現在生産されている重質燃料の異なるカ
テゴリーの再配合のための物流に関して比較的低コストであったが、量の面で失敗した。
【0013】
よりコストが増加する第2の選択肢は、1.8%の硫黄を含むことが報告されているア
ラビアン・ライトなどの高硫黄含有原油を、低硫黄原油、例えば、0.14重量%の硫黄
を含むことが報告されているボニー・ライトのようなアフリカ原油で置き換えることによ
る、低硫黄原油の加工である。この選択肢によって発生する海上バンカーの推定増分費用
は、報告書に記載された理由により、過剰な負担とみなされた。
【0014】
この古い報告は、最後に、減圧残渣脱硫(VRDS)を用いる、低硫黄船舶等級燃料の
生産のための第3の最も高価な選択肢を示している。該報告書の結論づけるところによれ
ば、「しかし、ガソリンまたはディーゼルに必要な脱硫の程度とは対照的に、バレルの底
部の水素化処理(残油脱硫)は、残油からより軽質の製品への何かしらの変換と組み合わ
せられているのでもない限り、その処理は精製者が現在実施しようと考えているプロセス
そのものではないのだ、と気づくことが重要である。それにもかかわらず、VRDSが減
圧残留物を脱硫するという唯一の目的のために追求されたならば、この選択肢のコストは
」第2の選択肢の約2倍であり、従ってなおのこと受け入れられない。
【0015】
先行技術によりIMOの要求を満たすために、操船者は、海洋で使用するための高硫黄
含有燃料油とECA内で使用する低硫黄含有量の両方を積み込むことができるが、この選
択は、エンジンの技術、潤滑性、ならびに最適な操作および燃料切り替え機構のための異
なる燃料の噴射システムについて生じ得る必要性に関して、問題に直面する可能性がある
。操船者は、最高の性能レベルを維持するために、比較的大きく、高価で複雑な燃焼後排
煙処理装置を追加することができる。場合によっては、液化天然ガス(LNG)を船舶用
燃料として使用することが考えられる。その場合、例えば、LNGの運送業者は、燃料と
して「蒸発ガス」を使用することを選ぶことができるが、このLNGエンジン構想を全て
の貨物船に拡大するには、非常に高価なLNG給油所が普及していることが必要であり、
地方の天然ガス生産用供給施設や液化施設を持っていない地方での港湾には追加のコスト
が掛かることになる。しかし、全ての場合において、液体の代わりにLNGを使用すると
、燃料補給もしくは不完全燃焼中の換気による漏れ、または操縦およびメンテナンス中に
おけるメタン放出という現実的なリスクが生じる。このようなメタン放出は、メタンは環
境への温室効果ガスとして二酸化硫黄の何倍もの影響を及ぼすと一部で考えられているた
め、懸念材料である。同様の観点から、海洋用途における排出削減は、船舶輸送中に、ま
たはガス供給ドッキングステーションを備えた港に寄港中に、天然ガスを燃焼することに
よって達成できると主張する者もいる。しかし、1つの技術的見地からすれば、天然ガス
はメタン漏れ問題を抱えており、また天然ガスの燃焼はCO2排出を減らすものの、これ
はCO2の放出が少ないからではなく、LNGと比較した場合、天然ガスの使用はLNG
を液化する工程で発生するCO2排出を回避し、寄港中の船舶に供給する発電所を点火す
るための石炭の回収や交換の際のCO2を削減するからである。船舶用燃料としてLNG
または天然ガスを液体に置き換えることを推進する開発活動は考慮すべきだが、世界的な
ガスインフラが欠如し、新たな給油インフラを必要とされる場合には、実用的な費用対効
果の高い海洋ソリューションを提供するものではない。ガス供給インフラは、現地でガス
の生産供給が行われていない国の港湾では、厳しい設備および資本投資となる。
【0016】
Lengletによる特許文献8(2009)は、2つの非アスファルテン油を製造す
るための原油の予備生成方法及びアスファルテン油の予備蒸留、減圧蒸留、溶媒脱アスフ
ァルト化、水素化処理、水素化分解及び残留物水素化変換を有する複数の生成物の作製に
ついて記載している。非特許文献4には、水素添加により硫黄を除去し、高活性Ni/M
o触媒の使用により硫黄を8ppm未満にした製造物を製造するためのユニット設計、触
媒の選択、水素消費及び他の稼働条件が記載されている。非特許文献5の6頁、高度精製
技術、Catalagramの特定版発行No.113/2013もまた、高活性CoM
o触媒を使用して立体障害のない硫黄を、高活性NiMo触媒により残存する立体障害硫
黄を除去して10ppmまでとする水素化処理を記載している。
【0017】
しかし、効果的な燃料生産技術には、低コストで大量の超低硫黄船舶用燃料の供給不足
を引き起こすという空隙が長らく存在してきた。この空隙を埋める必要性が残っている。
【0018】
国際エネルギー機関(EIA)の石油産業および市場部門は、燃料の製造に使用される
工程および装置の構成を記述し、従来の精製所の構成、製品及びマージンを記述する公的
文書を発行している。本明細書で使用されている用語は、別途定義または明示的に変更さ
れていない限り、非特許文献4に指定された意味を有し、全ての目的のために本明細書に
組み込まれる。EIAの諸出版物は、原油を処理し、原油供給原料の各バレルを異なる用
途または下流の処理のために複数の生成物に分割するための構成を定義し、論じている。
【0019】
従来の精製所の開発や成長の遺伝学は、社会の製品需要の進化に基づいたいくぶん根源
的なものであり、照明のための基本的な灯油等級の留出物から、自動車用のガソリンおよ
びディーゼル、次いで航空等級燃料、さらに多くの下流化学製品用途のための原料などの
複数の製品へと進展した。精製所の技術開発は全て、様々な最終用途向けの複数の製品の
生産を保ちながら、典型的には、特定の市場区分に対して原油の各バレルから得られる所
与の分割量を最大にするか、または下流の化学製品に対する精製所の様々な流れを適応さ
せるかのいずれかに適応するように導かれ、段階的に進化したように見える。
【0020】
このように、常圧原油および/または減圧蒸留ユニット、溶剤分離、水素化処理、ガス
化および多くの他の単位操作を使用する先行技術の精製所設計では、原油供給原料の各バ
レルを、異なる用途または下流処理ごとにそれぞれ異なる仕様の複数の製品に分割する。
【0021】
従来の精製においては、供給原料を異なるユニット流出物に分離し、次いで、その流出
物の全てを再度組み合わせるというのは、直観に反することである。例えば、上記のEI
Aの参照文献は、従来のまたは典型的な常圧原油蒸留、減圧蒸留、燃料溶剤脱アスファル
ト化、接触水素化処理および統合型ガス化複合サイクル技術を定義、説明しているが、原
油供給原料の実質的に全てを単一の液体燃料を作製するために変換する工程の構成につい
ては説明していない。
【0022】
従来の精製工程の範囲内には、「アップグレーディング」、「トッピング」または「水
素化スキミング」設備がある。原油のアップグレーダーについて、第一の目的は、通例、
非常に重く、粘性が高いまたは固形分を混入した物質を、軽量で流動性のある物質を処理
して燃料製品、化学製品原料および/または石油コークスの全ての範囲を作る既存の従来
の精製所で再処理できるように、変換することである。アップグレーダーは、ただ、それ
ぞれの下流の製品仕様を満たす目的で硫黄を処理するため個別に設計されている従来の精
製所への供給のために、より重質の原油をより軽質の原油に変換するだけであり、硫黄の
低減または金属の除去は、アップグレーダーの主な目的ではない。目標は、典型的なより
低密度の原油原料に比較して、非常に高い密度を有する原料を改質することである。より
重質の材料は供給された物質から排除または分離され、その結果生じる改質された製品材
料の密度は、既存の従来の製油設備構成によって処理された原油の密度に近づく。トッピ
ングまたは「ミニ」精製所に関しては、しばしば遠隔地または原油源の機に乗じた場所に
位置する。トッピング精製所は、典型的には、いくつかの限られたケースでは、ガソリン
のオクタン増強のためのナフサ改質および種々の生成物を生成するための複数の留出物の
水素化処理を除いて、その後の処理を行うことなくまたは最小限の処理で、ガソリン生産
ではなくナフサを標的とする原油供給原料の各バレルを複数の直留留分に分割する。典型
的なトッピング精製所の目的は、ガソリン、灯油、ディーゼルおよび燃料油のような広範
囲の直接使用可能な燃料を、現地市場での消費のために作ることである。一部の望ましく
ない形でトッピングが実施され、またそのトッピング製品が使用された場合、または残留
物に適切に対処できなかった場合には、環境への有害な排出が減少するどころか増加して
しまう。水素化スキミング精製所では、原油をトッピング精製所のように複数の製品に変
換するが、しかし典型的には、ディーゼル製造において水素化処理装置により消費される
水素をも生成する改質装置への重質ナフサの添加量を制限する。水素化スキマーは、トッ
ピング精製所のように、たった一つの製品ではなく、典型的には、広範囲のガソリン、灯
油、ディーゼルおよび燃料油を現地での消費用に作る。
【0023】
独立した直列または並列の水素化処理反応器ゾーンまたは統合した水素化処理反応器ゾ
ーンを有することを含む、水素化処理を適合させる様々な態様は、当該技術分野において
公知である。Cashらの特許文献1およびその中で引用されている参考文献には、異な
る供給物の統合型水素化処理を開示しており、その際、別々の水素化処理ゾーンからの水
素含有および液体含有流れは、開示されている方法により分配または組み合わされる。重
質残渣流内のピッチから脱アスファルト化油を抽出し、脱アスファルト化油を水素化処理
の原料として使用するための溶剤分離の使用の様々な態様は、複数の製品流れを生成する
ために使用される場合において、当該技術分野で公知である。例えば、Brierley
らの特許文献2は、プロパンまたはブタンやペンタンなどのヘプタン以下の他のパラフィ
ン系溶剤などの液体溶剤への溶解性に基づく供給物の分離によるクラッキングまたは分解
を伴わない、脱アスファルト化油の製造のための溶剤脱アスファルト化について記載して
いる。残留するピッチは、金属および硫黄を高含有量で含んでいる。脱アスファルト化油
は、ナフサ、灯油、ディーゼルおよび残留物質を含むいくつかの生成物の製造に関する参
考文献に記載されているように、硫黄、窒素、コンカーボンおよび金属を除去するために
水素化処理することができる。
【0024】
世界的な市場では、外洋上または天然ガス資源をほとんどもしくは全く持たず、発電効
率の低い高硫黄燃料油もしくは未精製原油を用いている陸上の場所での地球環境問題に対
処するために、硫黄および窒素量が少なく、本質的に金属汚染物質を含まない大量の燃料
が利用可能である必要がある。
【0025】
燃料生産者は、複数の製品スレートを製造する従来の精製用に開発されたものとは異な
る設計を必要とする。コストを低く抑えるために、設計は、資本投資を抑える方法で、費
用対効果が高く、熱効率の良い方法で大量の清浄な燃料を製造するために必要な装置のみ
を装備するようにしなければならない。上記設計は、船舶用燃料用の原油の各バレルの比
較的少量の留分を抽出してバレルの大部分を他の用途に使用するのではなく、主に船舶用
燃料を製造することを目標とすべきである。
【0026】
世界が必要とするのは、海洋用途のため、経済的な方法により、(英熱量(BTU)の
ような短い形式で表現されたエネルギーの無駄を回避するための効率的な形で)大量の比
較的清浄な液体燃料を作る方法に関する技術的問題の解決策を提供する「ゲームチェンジ
ャー」的新規プロセスである。このようなプロセスは、LNGのための新しい基本的施設
を作る代わりに世界中に広がっている既存の液状船舶用燃料給油所(例えば高硫黄燃料油
(HSFO)を供給するもの)を燃料の配給に使用できるので、必要な施設とそれに伴う
資本および運用コストが最小限に抑えられることとなる。このようないかなる新しいプロ
セスも、液体BTUを、主に自動車やトラック用に製造された超低硫黄ディーゼル(UL
SD)と比べて費用対効果的に優れた形で作成することを支持する方向性とする必要があ
る。このような利用可能なディーゼルは広く入手可能であるが、コストの問題、およびU
LSDが多くの既存の船舶用ディーゼルエンジンに使用される場合に生じる潤滑性の問題
ゆえに、大型の海上輸送キャリアによって海上で広く使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際出願PCT/US1999/00478号
【特許文献2】米国特許第7,686,941号
【特許文献3】米国特許第8,088,184号
【特許文献4】米国特許公開第20140221713号
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Josiah Toepfer米国沿岸警備隊船舶検査官/監査人 ・事故調査官、「Is it true that the 15 biggest ships in the world produce more pollu tion than all the cars?」Quoraによって発行された インターネット上の記事
【非特許文献2】米国沿岸警備隊、米国国土安全保障検査局、コンプライアンス統括 部、「Ultra Low Sulfur Fuel Oil & Complia nce with MARPOL Requirements Before en tering and while operating within Emis sion Control Areas」、2015年3月3日、安全勧告2-15 、ワシントンDC
【非特許文献3】欧州委員会環境総局、「Advice on Marine Fu el:Potential price premium for 0.5%S m arine fuel;particular issues facing fu el producers in different parts of the EU;and commentary on marine fuels mar ket」、最終報告案、契約番号ENV.C1/SER/2001/0063、Or der Slip n°C1/3/2003、2003年10月
【非特許文献4】米国エネルギー情報局、「Glossary」、2016年10月
【非特許文献5】Wrightら、Lloyd’s Register FOBAS 、「Marine Distillate Oil Fuels Issues a nd implications associated with the ha rmonization of the minimum flashpoint requirement for marine distillate oil fuels with that of other users」、デンマーク船 主協会のため執筆、2012年
【非特許文献6】Rallら、「Sulfur Compounds in Cru de Oil」、ワシントンDC、UNT
【非特許文献7】J.P.Wauquier「Petroleum Refinin g:Crude Oil.Petroleum Products.Process Flowsheets」、1995年、Institut Francais d u Petrole
【非特許文献8】Ackersonら、「Revamping Diesel Hy drotreaters For Ultra-Low Sulfur Using IsoTherming Technology」
【非特許文献9】Shifletら、「Optimizing Hydroproc essing Catalyst Systems for Hydrocrack ing and Diesel Hydrotreating Applicati ons,Flexibility Through Catalyst」、6頁、A dvanced Refining Technologies Catalagr am、Special Edition Issue、No.113/2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、非常に低い硫黄、窒素および実質的に金属を含まない燃料を大量に、低コス
トで供給することを可能にし、効果的な燃料の製造技術における空隙を埋めるものである
。該燃料は、発電用の燃焼ガスタービンなどの大規模な陸上用途はもちろん、海洋用途に
も特に有用である。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「本質的に金属を含まない
」または「ゼロ金属」という用語は、ゼロ(零)から100重量ppb(十億分率)未満
の範囲の金属含有量または従来のオンライン計器によって確実に測定することが困難なほ
ど低い含有量を意味する。
【0030】
従来の精製では、原油供給原料を多くの部分に取り出し、各部分は下流の別々の市場経
路に送られる。これに対し、本発明者らは、変換と捕捉のためのプロセスユーティリティ
ーと流れを提供する原油部分を除いて、汚染物質である硫黄、窒素および有害金属を捕捉
しつつ、原油供給原料の各バレルの最大量を単一の超清浄な燃料に変換できることを見出
した。本発明は、原油供給原料を、汚染物質の捕捉および制御に必要な最小限の数の部分
のみとして取り出し、次いで、その部分を再組み立てして1つの燃料製品を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
従って、本発明は、ガソリン、ディーゼル、燃料油、または下流における化学製品製造
もしくは用途のための供給原料などの複数の市場に対応するために原油供給原料の各バレ
ルを分割する従来の精製とは異なるものであり、本発明の方法は、主たる清浄な燃料製品
を製造することを目的としている。本発明は、未精製および残留油のための低コストの研
磨システムを提供し、このシステムは、商用輸送船や発電所燃焼システムに使用される高
硫黄バンカー燃料や他の重質残渣に取って代わる商業的規模の大量の清浄な燃料を作製す
るために必要である。本発明は、このような燃料ならびに該燃料を作製する方法および装
置を提供し、費用効率の良い方法で硫黄を削減する。
【0032】
これらの新規プロセスは、驚くほど効果的な方法で最終製品硫黄含有量を目標硫黄レベ
ル以下に制御しつつ、直観に反するステップを使用して、製造コストを下げる。本発明は
、燃料製造中に汚染硫黄、窒素および有害金属を同時に捕捉しつつ、原油供給物の各バレ
ルの最大量を単一の超清浄燃料に変換する新規方法を提供する。
【0033】
本発明の多くの変形例では、供給物の各バレルの本質的に全てであって、特定の変形例
では90容量%以上として特徴付けられる量が、単一燃料に変換され、そのような変形例
では、原油の各バレルの約10%未満である最小量のみが、汚染物質の変換および捕捉の
ためのプロセスユーティリティーおよび流れのために消費される。本発明のプロセスは、
水素バランス、アスファルトやコークスおよび他の残留生成物の現地での需要、全体的な
生産経済性、ならびに代替低コストプロセス燃料および電力の現地における入手可能性な
どといったその他の操作上の考慮を目的として、燃料製造に割り当てられた供給原料の割
合ならびに汚染物質の変換と捕捉のためのプロセスユーティリティーおよび流れのために
割り当てられた供給原料の調整を可能にする。変形例では、原油供給物の各バレルの少な
くとも70容量%が液体留分に変換され、その後の処理を受けたとき、または未処理であ
るが配合されたときに、複数の炭化水素生成物ではなく、目標硫黄含有量を超えない硫黄
含有量を有する実質的に1つの液体燃料生成物を形成し、上記原油供給物の各バレルの残
りの部分は、残留物または他の蒸気または生成物中に存在する。
【0034】
原油供給物を多数の部分に分けて取り出し、別々の市場経路に送る従来の精製とは異な
り、本発明は、原油供給物を汚染物質の捕捉および制御に必要な最小数の部分に分けて取
り出し、次いで、取り出した部分を再組立てして硫黄および窒素量が非常に少なく、本質
的に金属を含まない1つの燃料製品を形成する。本発明の方法および装置構成は、大規模
な海上および陸上用タービン用途における規制遵守に必要な低硫黄燃料を大量に、低コス
トかつ効率的に製造することを可能にする。これらの新規な燃料配備は、代わりの従来の
原油精製に比べて実質的に低い資本コストおよび稼働コストを有し、それにより極めて費
用効率のよい方法で、非常に低い硫黄および窒素量を有し、本質的に金属を含まない燃料
を大量生産できる。これらの新規プロセスは、油田から船舶エンジンまたは陸上の発電所
へのエネルギーの供給連鎖を単純化する、非常に費用対効果の高い手段を可能にする。
【0035】
海運業界に対して、本発明の新規構成は、世界的な海洋硫黄低減目標を達成するために
必要な量の低コストの低硫黄船舶用燃料を提供する。本発明の新規な燃料製造方法および
装置配置は、従来の原油精製よりも実質的に低い資本コストおよび稼働コストを有し、そ
れにより、硫黄量が非常に低く、本質的に金属を含まず、窒素量が非常に低い大量の船舶
用燃料を極めて費用対効果が高い方法で作製する。
【0036】
本発明の燃料は、硫黄および金属が多い低等級の重質バンカー油に取って代わり、SO
x、NOx、CO2、煤煙および有害な金属の外洋への排出を大幅に削減する。バンカー
油の燃焼に際して環境に運ばれる硫黄および金属の代わりに、本発明の実施においては、
硫黄、窒素および金属は、環境に優しい方法で、燃焼製造中に捕捉、除去される。いくつ
かの実施形態においては、本発明は、ディーゼルよりも低いコストで特定の低硫黄代替燃
料を提供するが、これらの燃料は、船舶エンジンの過度の摩耗を回避するのに十分な潤滑
性を有し、これらの新規な燃料は、他の代替燃料に比べて、燃料を加熱して流動性を持た
せることなく既存のバンカーリング燃料インフラを使用することができるので、陸上また
は船上のタンク内の燃料を加熱するために消費されるエネルギーを削減することができる
【0037】
1つの変形例では、本発明の燃料はまた、例えば電力および脱塩水を生成するもののよ
うな単一サイクルまたは複合サイクル発電所などの設備に配置された大規模な陸上用燃焼
タービンにおいて、原油または重質残渣を燃焼することに対する代替物を提供する。本発
明の燃料を燃焼するタービンは、NOx、SOx、CO2、煤煙、有害金属および他の燃
焼副生成物のタービン排ガス排出量が著しく少なく、供給源次第では、汚染された重質原
油または精製残油を燃焼するとき、高温ゾーンの腐食または灰形成条件下での汚染も少な
い。
【0038】
本発明は、複合炭化水素供給材料の、船舶用エンジン、燃焼ガスタービンまたは燃焼式
ヒーターなどの燃焼用途に使用するための単一燃料製品への集中した変換に関する。本発
明の基本的な実施形態では、原油が前から入り、低硫黄レベルに制御され、窒素を低減さ
れ、金属を除かれた単一の超清浄な製品燃料が戻ってくる。変形例では、蒸留のための供
給物は、1つもしくは複数の高硫黄燃料油または他のより重質の残油と組み合わせられた
1つまたは複数の原油であって、減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理もしくはガス化などの
1つまたは複数の他の単位操作への流れ供給物の一部として、ライトタイトオイルまたは
高硫黄燃料油、またはその両者をさらに付加した、原油であることができる。
【0039】
当技術分野における他の用途では、「高硫黄燃料油」または「HSFO」という用語は
、様々な技術記事、特許および法令において、異なる、しばしば類似性のない、矛盾した
、および混乱を呼ぶ意味が割り当てられており、その一部は時間と共に変化する。本明細
書および特許請求の範囲で使用される「高硫黄燃料油」または「HSFO」は、0.50
%m/m(0.5重量%)を超える硫黄含有量を有する燃料として使用される任意の物質
を意味する。本明細書で使用される「重油」、「重質残渣油」、「残渣」、「残留物」ま
たは「他のより重質の油」という用語は、硫黄含有量が0.50%m/m(0.5重量%
)を超える石油由来炭化水素系物質を含む。「高硫黄」という用語は、目標硫黄含有量制
限または該当する場合は法定硫黄制限のいずれか低い方を上回る値を意味する。
【0040】
好ましい実施形態では、最終製品燃料の硫黄含有量は、異なる硫黄含有量を有する流れ
の組み合わせによって制御される。変形例では、このような組み合わされた各流れは、単
位操作条件および流速を調整することによって、非常に低い硫黄量の流れの添加量もしく
は除去量を削減することによって、または異なる硫黄含有量の供給物を配合することによ
って、暫定的な目標硫黄含有量に形成される。本発明の変形例は、必要に応じて、選択さ
れた原油に、(i)他の原油、(ii)バンカー燃料、(iii)高硫黄燃料油もしくは
他の留出物、または(iv)他の供給源からの他の高硫黄もしくは金属汚染残留物、の1
つまたは複数を供給することによって、製品硫黄レベルを制御することを含む。本明細書
及び特許請求の範囲で使用される「本質的に金属を含まない」または「ゼロ金属」という
用語は、ゼロ(零)から100重量ppb(十億分率)未満の金属含有量または従来のオ
ンライン計器によって確実に測定することが困難なほど低い含有量を意味する。
【0041】
本発明者らは、異なる原油供給原料の硫黄含有量分布に対処することにより、低硫黄燃
料の製造を最適化できることを発見した。
【0042】
本発明者らは、(i)比較的少量の硫黄のみが塩基性のHSまたはRSHチオール型
の塩基性形態で特定の留分に存在する場合、および(ii)硫黄の比較的大部分がより複
雑な有機的構造形態で存在する場合、に対処することができ、その時、硫黄含有量が、よ
り低い留分レベルに比較してより急速に、場合によっては指数関数的に増加し始めるよう
な、より上位またはより高いレベルにおける予測された区切り点留分に基づいて、プロセ
ス流量および稼働条件を調整することができる。
【0043】
本発明者らは、特定の流れのバイパス処理を可能にしてそのバイパスを最大化し、塩基
性の複雑さの低い硫黄形態を含有する流れの処理を回避または低減して、より複雑な形態
を含有する流れを異なる方法で処理することができるようにするために、プロセスおよび
装置構成を配置することが可能であることを見出した。これは、特定の流れを水素化脱硫
から選択的に排除し、他の流れについては、異なる水素化処理装置に同じものを供給して
異なる水素化処理ユニット条件を調整する、または溶剤および/もしくは反応性化学物質
ベースの処理による除去の調整をすることができる。その際、1つまたは複数の除去ユニ
ット内の複数の溶剤または他の除去剤により処理し、各ユニット内の除去剤のそれぞれの
比は、複雑さが低いまたは高い硫黄含有分子を選択的に除去するために各ユニットへの硫
黄分布に基づいて調整することを含み得る。
【0044】
「灯油」および「軽質留出物」という用語は、多くの場合、異なる参考文献間において
、同一の、重複する、あるいは異なる意味で使用されるものの、一様に温度範囲(例えば
、190℃~250℃または180℃~230℃)による常圧蒸留塔の留分境界点のみに
基づいて定義されており、硫黄含有量に基づいて定義されるものではない。代わりに、便
宜的な硫黄含有量測定は、従来の精製所からの各製品の仕様によって決まる留分境界点温
度範囲に基づいて行われ、報告される。発明者らは、これは最善とはいえないことを見出
した。
【0045】
本発明者らは、原油蒸留塔の稼働の基本的な方法を変更すれば、低硫黄燃焼製造のコス
ト削減を最適化できることを発見した。本発明者らは、特定の留出物取り出しを、灯油、
ジェット燃料、ディーゼルなどの下流における昔からの使用のための標準製品温度範囲の
仕様ではなく、蒸留塔への原油供給原料または供給混合物の硫黄含有量の分析を省みつつ
、副流の硫黄含有量を踏まえて行うべきであることを見出した。
【0046】
本発明者らは、いかに「区切り点」を定義するかを発見したが、区切り点とは、取り出
し製品における単位体積の変化あたりの硫黄含有量の変化(グラフの傾き)がもはや実質
的に平坦ではない点に言及するものであり、代わって区切り点では、取り出し量がわずか
に増加するにつれて、硫黄含有量は、単位体積あたりのグラフの傾きが大きく変化し始め
るなどのように、急速にまたは指数関数的に増加し始める。また、区切り点以降では、原
油供給原料の種類に応じて、典型的には、硫黄含有化合物の種類と組成、ならびに複雑さ
が変化する。区切り点は、脱硫を最小限化または排除し得る、脱硫を必要とする流れまた
は流れの部分の分離からの指標である。
【0047】
本発明者らは、区切り点以下の硫黄含有量を有する物質の最大量を直接取り出しおよび
集積し、下流での硫黄の削減又は除去のための処理のコストを回避または低減するように
、区切り点以下の取り出し物の硫黄含有量を有する全液体の製造量を最大にするならば、
低硫黄燃料の資本コストおよび製造コストを最小化できることを見出した。
【0048】
本発明者らは、比較的大量の区切り点以下のこのような物質は、および特定の原油にお
いては区切り点より上の狭い特定のゾーン内の部分は、既に硫黄除去の処理がなされた他
の取り出し物と組み合わされた場合、硫黄除去のための処理またはその後の重要な処理を
必要としないことを発見した。本発明者らは、主に供給物または塔の温度プロファイルの
上昇により常圧蒸留条件を推し進めるだけでなく、還流の削減もしくは排除、または原油
供給速度の低下、または取り出し量を区切り点近辺まで最大化するように供給原油を混合
もしくは希釈により原油炭化水素もしくは硫黄の組成を変更することによって、このよう
な未処理物質の製造を最大限にし、流れ全体の脱硫または他の処理操作のコストを低減す
る。区切り点は、標準的な業界分類または取り出しの温度範囲を設定する規制の見地から
定義されるものではない。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲において、本発明者らは、「区切り点」を、原油の分析ま
たは他の測定方法に関連して、x軸に原油の質量%または体積を、y軸に硫黄含有量をプ
ロットした場合、単位体積あたりのグラフの傾きの大きな変化という意味において、硫黄
含有量が水平またはそれに近い位置から急激にまたは指数関数的に増加し始める点である
と定義する。x軸方向の差分は留分の単位体積の変化であり、y軸方向の差分は硫黄含有
量の単位体積あたりの変化であり、勾配はグラフの傾きである。このようなグラフの傾き
の勾配は、ゼロ(零)または水平に近い値から、急激に0.2を超えて動き、そして急速
に1を超えて、いくぶん指数関数的な硫黄含有量の増加に向かって動くものであり、区切
り点は、蒸留塔への原油または他の供給原料に基づいて変化する。したがって、「区切り
点取り出し」または「硫黄区切り点取り出し」は、ナフサの範囲の終点、例えば安定化さ
れていない自然のままの直留ナフサの範囲の終点を超えものの上記のように単位体積あた
りのグラフの傾きの変化が大きく硫黄含有量が急激にまたは指数関数的に増加し始める点
である区切り点以下で沸騰する炭化水素含有液体への分割を決定する手段を提供する。
【0050】
発明者は、本明細書及び特許請求の範囲において、基底「区切り点取り出し」または基
底「硫黄区切り点取り出し」を、留分の硫黄含有量に関して、安定化されていない自然の
ままの直留ナフサの範囲の終点超かつ区切り点以下で沸騰する炭化水素含有液体を意味す
るものと定義するが、その際、燃料製品流れが区切り点以下の全ての未処理流れの組み合
わせおよび該組み合わせに添加するために選択された区切り点取り出し超の全ての流れか
ら形成されるように、該区切り点が選択される場合は、その組み合わせ燃料の実際の硫黄
含有量は、目標硫黄含有量を超えない。変形例では、目標硫黄含有量が硫黄区切り点であ
るか、または硫黄区切り点より高いもしくは低い場合に従って燃料を製造することができ
、燃料を生成する流れの組み合わせは、燃料の実際の硫黄含有量が硫黄目標を超えないよ
うに、区切り点を基準にして効率的に作られる。
【0051】
多くの原油に対して、常圧蒸留塔のための硫黄区切り点取り出し物は、180℃または
190℃(または他の灯油範囲開始点)で沸騰を始めるものなどといった(当技術分野で
様々な方法で定義されている)灯油範囲の物質の大部分を含み、簡略化のために、より低
いまたはより高い温度範囲物質を含むことができる。しかし、灯油範囲の物質の温度や歴
史的な定義ではなく、硫黄含有量が、硫黄区切り点範囲の終点の決定要因である。燃料は
、目標硫黄含有量が硫黄区切り点である場合に従って形成することができ、燃料を形成す
る流れの組み合わせは、燃料の実際の硫黄含有量が硫黄目標を超えないように作られる。
【0052】
一実施形態では、原油供給原料を流れに分離し、そのような分離流れの1つまたは複数
の液体の一部分を処理し、他の部分は未処理とされる。次いで、処理および未処理の液体
流れの大部分が再度組み合わされて、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である液体
燃料を形成する。工程ステップは、(a)原油を1つまたは複数の蒸留および溶剤分離ス
テップにより、軽質オーバーヘッド蒸留ガス、溶剤分離に使用した1つまたは複数の溶剤
に不溶の金属リッチ残留物、硫黄を含むガス、および硫黄区切り点より高い液体留分およ
び区切り点以下の液体留分、に分離すること、(b)硫黄区切り点以下の液体留分や不溶
性の残留物ではなく、硫黄区切り点より高い液体留分を、1つまたは複数の水素化処理ス
テップにより処理して、他の部分は未処理のままにしつつ、硫黄含有量が低減された1つ
または複数の水素化処理流れを形成すること、ならびに(c)上記水素化処理流れ区切り
点以下の液体留分と組み合わせ、硫黄区切り点以下の実際の硫黄含有量を目標硫黄含有量
として有する上記の液体燃料を形成すること、を含む。
【0053】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明に従って製造された燃料を使用することに
より、外洋、ECA内、または港湾での船舶によるIMO仕様を超える排出を低減する方
法を提供する。該燃料は、海上、ECA内、または港湾のいずれにある場合においても、
船舶による燃料の使用場所において適用され得るIMO仕様の最大量よりも低く調整され
た硫黄含有量を有する。このようにして、船舶はIMOの要件および一般の期待を上回る
ことができる。
【0054】
他の実施形態では、本発明は、例えば海洋または港湾燃料コストを相殺するために、港
湾で本発明の燃料を使用して生成した電気を陸上の配電網に販売する、船舶のための方法
を提供する。
【0055】
本発明者らは、適切な方法で引火点を考慮し調整しながら、硫黄および金属の制限に関
するIMOの期待を大きく上回る、低コストの超清浄船舶用燃料を製造できることを見出
した。
【0056】
かくして本発明者らは、(i)軽微な引火点の変更を、(ii)特に巨大貨物船による
大量の燃料消費に関連した、大規模な環境的利益(莫大なSOxおよびNOxの削減およ
び有害金属の本質的な排除)と交換する技術的方法を発見した。今までに、そのような発
見は誰もなしえなかった。
【0057】
海洋における安全のための国際条約(SOLAS)は、燃料の引火点、および貨物船上
で許容される使用を概説している。「多くの人々にとって、SOLAS条約で提示された
一般運航における燃料の最低引火点60℃は、海洋法の根底のひとつに見えるかもしれな
いが、これは1981年の改正で初めて導入されたものである。最初の3つのSOLAS
条約(1914年、1929年および1948年)は、石油燃料の引火点に制限を設けて
おらず、1960年条約でさえ、内燃機関が使用する燃料が43℃以上の引火点を有する
ことを「新型」旅客船に要求しただけである。なおこの条項は、現在の1974年条約に
、元々採用されたとおり本質上引き継がれた」、以上、非特許文献5からの引用である。
【0058】
Wrightらは、引火点は、現実の値ではなく、経験的なものであって、「引火点の
値は、決して「安全」/「安全でない」の境界線ではなく、また過去においてそのような
境界線であったこともない」と述べている。その結果、石油産業の当初から、貯蔵および
使用に関し、より一層の管理と注意が求められる製品を識別する手段として、いくぶんの
誤りを伴って、引火点が使用されてきた。実際には、海洋用途では、石油燃料の火災は、
気化発火によるというよりは、漏れまたはパイプの破損により燃料が自然発火温度より高
い表面に接触することによる発火により発生している。それにもかかわらず、引火点は、
たとえ、時にはいくぶん恣意的に設定された制限値に対してではあるものの、あるいは経
験的値であるという事実を考慮しつつ、当初から石油安全法の安全パラメーターとして使
用されてきた。
【0059】
SOLASは貨物船に対する例外を作成している。SOLASは、引火点が60℃未満
の油燃料を使用してはならないと規定しているが、例外として「貨物船では、[SOLA
S]2.1章で明示された引火点(例えば、60℃)よりも低い引火点を有する、例えば
原油などといった燃料の使用が、そのような燃料がいかなる機関室にも貯蔵されないこと
、および当局の承認を条件として許容され得る」。一部の国では引火点基準がなく、また
他の国では海洋用途においては比較的低い引火点を許容していることにも留意されたい。
【0060】
燃料引火点は、必要に応じて、処理を行って調整することができる。本明細書及び特許
請求の範囲で使用される「引火点処理」という用語は、材料と組み合わせたときに引火点
を引き上げる組成物を意味する。一変形例では、引火点処理は、蒸気発火のリスクを下げ
るために添加された材料の蒸気圧を下げる。一変形例では、引火点調整剤は、60℃以上
の引火点を有する固体または液体添加剤であり、それを低引火点燃料に添加して燃料の引
火点を上昇させる。これらは、様々な種類の微粒子と油を含むことができる。例えば、炭
素系燃料を処理するための高引火点添加剤が開示されている。例えば、Hughesらの
特許文献3は、200℃以上の引火点を有するパラフィン系基油およびその混合物または
組み合わせからなる群から選択される「高引火点希釈剤」を記載しており、具体的には、
インディアナ州インディアナポリスのCalumet Lubricants社から入手
可能なCalpar100(FP210℃)、Calpar325(FP240℃)およ
びCalparP950(FP257℃)および200℃以上の引火点を有するパラフィ
ン系基油およびその混合物または組み合わせを例示している。
【0061】
本発明者らは、(i)軽微な引火点の変更を、(ii)特に巨大貨物船による大量の燃
料消費に関連した、大規模な環境的利益(莫大なSOxおよびNOxの削減および有害金
属の本質的な排除)と交換する技術的方法を発見した。今までに、そのような発見は誰も
なしえなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】区切り点範囲を示す様々な実際および仮定の原油の硫黄含有量を模式的に示 す説明図
図2】原油を処理して本発明による燃料として有用な単一の液体製品を製造するた めの工程配置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明の一実施形態では、炭化水素供給物の、硫黄および金属を有する原油である少な
くとも一部分を、単一の液体製品に変換するための方法は、(i)該供給物を1つまたは
複数の蒸留および溶剤分離ステップにより、(脱ブタン塔システムが特定の現地事情によ
り、あるいは他の状況では排除されるべきコストにおいて好ましかろうとも、EIAの定
義どおりまたはそれ以上の、常圧蒸留条件で凝縮しない蒸留ガスのみを含む)軽質オーバ
ーヘッド蒸留ガス、溶剤分離に使用した1つまたは複数の溶剤に不溶の金属リッチ残留物
、硫黄を含むガス、ならびに(蒸留範囲内にあるものとして処理されるいくつかの供給物
のために灯油範囲の物質の少なくとも一部を有する)留出物および減圧軽油範囲の炭化水
素を有する、硫黄を含む液体留分に分離すること、(ii)硫黄区切り点以下での取り出
し液体留分ではなく(および好ましくは溶剤分離に使用された溶剤に不溶性のいかなる留
分の部分でもなく)、硫黄区切り点より高い選択された取り出し液体留分(なお、好まし
くは可溶解性液体留分のみが水素化処理のために選択される)を、1つまたは複数の水素
化処理ステップにより水素化処理して、硫黄含有量が低減された1つまたは複数の水素化
処理流れを形成すること、ならびに(iii)上記未処理留分を上記処理流れと組み合わ
せて、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を形成すること、を含む。本明
細書で使用される場合、「ステップ」または「ゾーン」という用語は、装置構成および/
もしくは単位操作またはサブゾーンの1つもしくは複数の区分を有する1つもしくは複数
の処理操作を有する単位操作もしくは領域を指すことができる。装置品目は、1つ以上の
タンク、容器、蒸留塔、分離器、反応器または反応器容器、ヒーター、交換器、ストリッ
パー、パイプ、ポンプ、コンプレッサーおよびコントローラーを有することができる。本
発明の好ましい変形例では、上記供給物の実質的に全ての炭化水素組成物が留分に分離さ
れるが、次いで、再度組み合わされて1つの液体燃料製品である燃料を形成する。該燃料
は、元の供給物である液化石油ガスからの範囲の炭化水素を含む単一の液体燃料製品であ
り、または1つの変形例では、ナフサから水素化処理された脱アスファルト化油までを含
み、複数の炭化水素製品を形成することはないが、(i)留出物の軽質オーバーヘッドガ
ス内、(ii)上記残留物不溶物内、および(iii)硫黄または金属回収用流れ内、の
炭化水素を含む炭化水素組成物は除かれる。そのような範囲は、C3またはC5からC2
0以上の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲であり、上記炭化水素は、上記燃料に組み
合わされた未処理流れ内の任意の留分の最低沸点である初留点を有し、上記燃料に組み合
わされた処理流れの最高沸点である最高沸点を有する。本明細書及び特許請求の範囲で使
用される「未処理」という用語は、硫黄、窒素または金属を低減または除去するための水
素化処理を受けていないことを意味する。一変形例では、このような燃料は実質的に、C
3もしくはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の範囲か、または約35℃~約31
5℃以上の範囲内に初留点を有する原油由来の炭化水素の範囲、好ましくは脱アスファル
ト化油の最後および脱アスファルト化残留物の開始の初留点までの範囲、を有するものを
含むものを含んでおり、これらは溶剤分離のために選択された溶剤に溶解しない。さらに
より好ましい変形例では、本発明の燃料は、常圧蒸留からの上記未処理液体留分の最低沸
点部分から溶剤分離からの水素化処理可溶物の最高沸騰部分までの範囲の炭化水素の組み
合わせを含む。したがって、本発明の好ましい燃料は、選択された部分範囲に分けて取り
出され、そのような炭化水素の最大範囲の有意義な含有量を持たない、従来のガソリン、
ディーゼル、灯油および燃料油とは正反対である。したがって、本発明の一実施形態は、
原油を加工する単一の製品として得られる燃料であり、前記燃料は、0.5重量%以下、
好ましくは0.1重量%以下の実際の硫黄含有量を有し、C3またはC5からC20以上
の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲を有する。上記炭化水素は、常圧蒸留条件で上記
原油の任意の留分の最低沸点である初留点を有し、溶剤分離に好適な溶剤に不溶である上
記原油の残留部分の終点である最高沸点を有する。変形例では、そのような燃料は、C3
またはC5からC20以上の原油由来の炭化水素の実質的に全範囲を含み、上記炭化水素
は、上記燃料中に組み合わされた未処理流れ内の任意の留分の最低沸点である初留点およ
び上記燃料中に組み合わされた処理流れの最高沸点である終点を有する。1つの変形例で
は、原油を軽質オーバーヘッド蒸留ガス、溶剤分離に使用した1つまたは複数の溶剤に不
溶の金属リッチ残留物、硫黄を含むガス(硫黄を含有するパージガスを含む)、および硫
黄を含む液体留分に分離すし、該液体留分は、(i)硫黄区切り点以下の液体留分、およ
び(ii)硫黄区切り点を超える液体留分を有し、両者は溶剤分離に使用された溶剤に可
溶又は不溶であり、(b)硫黄区切り点以下の液体留分または不溶性留分ではなく、硫黄
区切り点を超える可溶性液体留分を、1つまたは複数の水素化処理ステップにより水素化
処理して、低減された硫黄含有量を有する1つまたは複数の処理された流れを形成し、(
c)上記未処理留分を上記処理流れと組み合わせて、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量
以下である燃料を形成する。
【0064】
変形例では、そのような残留物は、電力生産、ならびに水素化処理および除去されるガ
ス化炉固体中の金属の少なくとも一部を捕捉するための水素の少なくとも一部の生成に使
用するため、1つまたは複数のガス化炉で燃焼されるか、または該残留物は、発電および
水素化処理の水素を供給するための補助水素発生単位操作に使用するため、排煙ガス硫黄
および金属を捕捉する1つまたは複数のボイラーで燃焼される。好ましくは、硫黄を含む
全てのガスは、1つまたは複数の共通硫黄回収ユニットに送られる。
【0065】
本発明を実施することにより、上記燃料の実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限仕様
を満たすように調整することができ、例えば、燃料を形成する組み合わせに対する未処理
および処理流れの連続流の量を調整することにより、船舶用燃料のIMO仕様または燃焼
ガスタービンの硫黄制限を満たすことができる。例えば、燃料の目標硫黄含有量を、EC
A内または外での、1つまたは複数の目標IMO仕様、例えば、3.5重量%、0.5重
量%、0.1重量%または他のIMO仕様から選択される仕様を満たすように調整するこ
とができる。本発明の方法に従って製造された燃料は、船舶用エンジン、燃焼ガスタービ
ン、ボイラーなどの燃焼式ヒーター、および他の用途に有用である。
【0066】
1つの変形例では、上記水素化処理された流れの少なくとも1つは、10重量ppm以
下の硫黄を有する超低硫黄流れであり、上記組み合わせに対する該流れの量を増加または
低減させることにより、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料の形成を調整
するために用いられる。他の変形例では、上記水素化処理された流れの少なくとも1つは
10重量ppm以下の硫黄を有する超低硫黄流れであり、上記未処理留分が目標硫黄含有
量を超える硫黄含有量を有し、該未処理留分をトリム制御として使用され、上記組み合わ
せに対するそのような未処理留分の量の削減または増加により、実際の硫黄含有量が目標
硫黄含有量以下である燃料を形成する。さらに他の変形例では、原油供給物を、複数の炭
化水素製品ではなく、実質的に1つの液体燃料製品に変換する場合、10重量ppm未満
の硫黄含有量を有する低減硫黄流れである第1の水素化処理流れを作製し、硫黄含有量が
0.12~0.18重量%の範囲である低減硫黄流れを有する第2の水素化処理燃料留分
を作製し、未処理留分は、区切り点硫黄以下であるまたは区切り点硫黄を超える、かつ目
標硫黄含有量を超える硫黄含有量を有し、上記第1水素化処理流れまたは第2水素化処理
流れまたはその両者は、上記組み合わせに対するそのような流れの量の増加または低減に
より、トリム制御として使用され、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量以下である燃料を
形成する。
【0067】
さらにより好ましい実施形態では、1つもしくは複数の原油、残留油および他の供給物
の硫黄含有量が選択されるか、または加工条件が調整されて、上記原油供給物の各バレル
の少なくとも70容量%が液体留分に変換され、次いで処理されるかまたは未処理だが組
み合わされる場合、複数の炭化水素製品ではなく、目標硫黄含有量以下である硫黄含有量
を有する燃料を形成し、そして、上記原油供給物の各バレルの30%以下は、燃料以外の
ものへと向けられる。本発明の好ましい変形例では、供給物の組成、水素バランス、プロ
セス経済性および他の因子に加え、プロセス操作条件および流速の調整に応じて、炭化水
素系供給物の各バレルのうち、少なくとも各バレル供給物の80容量%、より好ましくは
約90%以上が、複数の炭化水素製品ではなく、非常に低い硫黄を有する流れを除く、1
つの液体燃料製品に変換される。該非常に低い硫黄を有する流れは、トリム流を増加また
は低減して、最終燃料製品の硫黄含有量が目標硫黄含有量を超えないレベルに制御するた
めのトリムとして使用される。トリム流の過剰量は、物質バランスおよび在庫管理の目的
で個別に転送することができる。本発明のそのような好ましい変形例では、上記原油供給
物の各バレルの約10~30容量%以下が、溶剤抽出による常圧および減圧蒸留後の金属
リッチ残留物中に捕捉される。
【0068】
他の変形例では、上記燃料を形成するために、全ての処理留分および未処理留分を組み
合わせる前またはその間に、目標硫黄含有量よりも高い硫黄含有量を有する高硫黄燃料油
を単独またはライトタイトオイルと共に添加する。上記高硫黄燃料油を上述の蒸留ステッ
プ、溶剤分離ステップまたは水素化処理ステップの1つまたは複数に供給することができ
る。一好ましい実施形態では、超低硫黄流れは、10重量ppm以下の範囲の硫黄を有し
、未処理留分は、目標硫黄含有量を超える硫黄含有量を有し、該未処理留分は、実際の硫
黄含有量が目標硫黄含有量以下である製品燃料を形成するため、該組み合わせに対する該
未処理留分の量を増加または低減させて調整するために用いられる。
【0069】
本発明の方法の実施のための装置は、その設備面積を、典型的な下流処理ユニットを有
する従来の精製所の装置設置面積の20%~30%の範囲に低減することができる。した
がって、処理される供給物の1バレルあたりの資本コストが実質的に削減される。例えば
、本発明の1つの特定の実施形態では、硫黄および金属を捕捉するために必要な補助装置
と共に、常圧蒸留、減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理およびガス化のうちの1つまたは複
数のみを用い、硫黄および金属を捕捉するために必要な補助装置を用いるガス化を除いて
、水素化処理の下流では炭化水素処理操作を有しない。
【0070】
本発明のプロセス構成の変形例は、統合された金属および硫黄捕捉手段を提供しながら
、水素、蒸気および燃料ガスに加えて電力に必要な工程を供給する設備の島状構造(ユー
ティリティーアイランド)の効果的な統合により、高効率、低コストの稼働を提供する。
ユーティリティーアイランドは、金属汚染物質を潜在的な空気排出源の構成要素として捕
捉および排除するために重金属リッチ残留物を処理する、好ましくは統合された、したが
ってより低い資本コストでの、硫黄捕捉、処理、および除去のための、潜在的排出源とし
ての全ての源からのサワーガスおよび酸性ガスオフガス処理を用いる、1つまたは複数の
ガス化システムを有する。本発明の島構成は、プロセス要求を満たすために、水素化処理
ステップ用の水素、ならびに電気プロセス用および普通は廃棄流れとなる特定の流れを利
用する高効率の複合サイクル発電手段を介する電気プロセス用の蒸気および燃料ガス、を
作製する。
【0071】
本発明の本実施形態の一変形例は、ライトタイトオイルが、炭化水素処理および対応す
る水素生成のための処理バランスを提供するのに十分なより重質の炭化水素を底部留分お
よび残渣内に含有していない場合を扱い、そのような軽質原油を水素化処理して硫黄およ
び金属を低下させ汚染除去することを可能にする。この方法は、該軽質原油を、他の供給
物と別々にまたは混合して、常圧蒸留、減圧蒸留または溶剤分離処理へと導かれる全ての
より重質の供給物のいずれかまたは全てに添加するステップを有する。
【0072】
一変形例では、常圧蒸留の下流での減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理およびガス化操作
のための装置の設計は、高硫黄燃料油または前記操作のバッテリーリミット外の別の供給
源からの追加の重質残渣を処理するための追加または予備の能力を有するような大きさと
し、実際の硫黄含有量が目標燃料硫黄含有量制限レベル以下である燃料を形成し、追加の
重質残渣からの硫黄および金属の少なくとも一部を捕捉する。
【0073】
他の実施形態では、本発明は、船舶が港内に停泊している間に本発明の燃料を使用して
電力を生成し、地方での排出を低減するのに加え、陸上の配電網に販売する方法を提供す
る。一変形例では、本発明は、港およびその近辺での排出を低減する技術的方法を提供し
、該方法は、(a)港の地点またはその近辺で配電網に通常供給される電力を生成する陸
上発電設備により生じるキロワット時(KWH)あたりの硫黄または金属の排出量(例え
ば、港において船舶がそのような配電網に接続された場合の現地電力供給の使用に関連す
る排出を含む)を確認する技術的分析、および(b)(a)の地点の港にいるときに同じ船
舶の船上で生成された電力により生じるKWHあたりの硫黄または金属の排出量を確認す
る技術的分析を含み、(a)と(b)を比較して、(b)発電のために船舶により発生し
た排出が、(a)の現地の発電源よりも低い場合は、船内での排出を削減し、船上での発
電の全てまたは一部を配電網に提供する。本実施形態は、現地で供給される電力が特定の
種類の石炭燃焼源からのものである場合、または、より低い排出の選択肢が現地の発電で
は利用できず、重質原油もしくは残留油を燃焼して発電に使用している場合、環境排出を
低減するのに特に有用であり得る。相殺がなければ、船舶による現地の配電網へのそのよ
うな提供は、船舶発電電力のKWHコストが現地配電網電力のKWHコストを上回ってい
る場合、または船舶による現地の配電網へのそのような提供が、低排出発電によって支払
われる補助金などの排出削減控除による相殺など、他の形で船舶に利益をもたらすことが
ない場合には、港湾使用料の相殺がある場合を除いて、なされないであろう。
【0074】
船舶による現地配電網への提供が有益であれば、船舶は、本発明の燃料を使用して港に
停泊している間に船上で発電した電力の全てまたは一部を陸上の配電網へ提供することに
より生み出される収益により、海上で発生した燃料コストを相殺または削減できる。港に
おける停泊中の配電網への提供により発生する上記収益は、港湾での停泊期間によっては
、海上航行の燃料コストを、これらの新規燃料による実際の海上航行燃料コストが海上航
行のための高硫黄燃料油のコストよりも低くなるような水準まで、相殺することができる
【0075】
図1は、区切り点範囲を示す様々な実際および仮定の原油の硫黄含有量の模式的なプロ
ットである。例示的な原油硫黄プロファイル4、5、6は、非特許文献6から抽出された
実際のデータの中心点に基づいてプロットされている。仮定の原油硫黄プロファイル1、
2、3は、その一部を、非特許文献7を含む種々の供給源から採られた実際のデータから
得ている。
【0076】
図1は、本発明のプロセス構成のための異なる原油に対する「区切り点」の定義を示唆
する方法を示す。図1は、区切り点を例示しており、区切り点とは、取り出し製品の単位
体積の変化あたりの硫黄含有量の変化(グラフの傾き)がもはや実質的に水平または平坦
ではない点であって、代わって区切り点では、取り出し量がわずかに増加するにつれ、硫
黄含有量が急速にまたは指数関数的に増加し始め、単位体積あたりのグラフの傾きに大き
な変化をもたらす。また、区切り点以降では、原油供給原料の種類に応じて、硫黄含有化
合物、種類と組成、ならびに複雑さが変化する。区切り点は、運転効率のために、費用の
かかる集中的な水素化処理をどのように迂回するのが最適かを判断することを可能にし、
それでいて目標硫黄含有量制限仕様に適合する燃料を作製することを可能にする。すなわ
ち、区切り点は、硫黄含有量を減少させるためのさらに下流の処理から遠ざかるまたは低
減される、例えば水素化処理から遠ざかる方向に導かれる、常圧原油塔留分の最大硫黄含
有量であることができる。区切り点より上の留分は、硫黄含有量低減のための下流の処理
に導かれ、一方区切り点以下の留分は処理されず、実質的な操作の節約につながる。従来
の精製では、取り出しは、硫黄含有量ではなく、温度範囲によって固定されている。目標
硫黄含有量は、最終用途要件の一例として、区切り点の選択を決定することができる。区
切り点の設定が高すぎると、過剰なより高い硫黄量の未処理流れは、より低い硫黄量の水
素化処理された流れが増えてしまうため、容易に相殺することができない。
【0077】
図2は、本発明の他の実施形態の概要を示し、燃料として使用するのに適した単一の液
体製品の製造のためのプロセス構成の主要な構成要素を簡略化した形で示している。図2
は、常圧および減圧蒸留、溶剤分離、水素化処理ならびにガス化を統合して単一の低硫黄
、本質的に金属を含まない燃料製品を製造する方法を示す。
【0078】
硫黄、窒素および金属を含む汚染原油の流れは、原油にとって好ましい脱塩などの前処
理後、ライン2を経て、本プロセスに入る。本実施例では、原油供給原料2は、単一の原
油、1つもしくは複数の原油の配合物、または原油と高硫黄燃料油などの残留油との配合
物であることができる。供給原料2は、常圧蒸留塔100に導かれ、そこで供給原料は軽
質オーバーヘッドガス4と複数の取り出し物とに分離される。軽質オーバーヘッドガス4
は、プロセス燃料として有用な非凝縮蒸留ガス6を含むか、または他の用途のために捕捉
される。1つの好ましい変形例では、このようなオーバーヘッドガス4に関する安定化シ
ステムに関連する資本の支出は回避される。しかし、現地のニーズに応じて、例えば、特
別な船舶用燃料最大HS仕様など、安定化システムを含むことができる。図2に示す実
施形態では、複数の取り出し物には、以下の範囲内で1つまたは複数の流れ、すなわち(
1)ライン4を介したライン16の安定化されていない自然のままの直留ナフサ、(2)
ライン18の硫黄区切り点取り出し、(3)ライン24の軽質留出物、(4)ライン26
の中間留出物、(5)ライン28の第1重質留出物、および(6)ライン30の常圧残留
物、が含まれる。
【0079】
当技術分野の様々な用途では、異なる意味が、世界の異なる地域における同じまたは類
似の取り出し物に割り当てられており、その意味は、異なっていたり、重複していたり、
矛盾していたり、混乱を招いたりすることが多い。本明細書及び特許請求の範囲で使用さ
れる場合、以下の意味に用いられる。すなわち、(a)「ナフサ」とは、プロパンのよう
に最低3つの炭素C3を有するものから約175℃(約華氏350度)の初留点(IBP
)を有するものまでの範囲にあり、メタン以下などといった低沸点化合物を除く、炭素含
有組成物を意味する。(b)「安定化ナフサ」は、燃料ブレンド基材として使用されるナ
フサまたは他のナフサ範囲物質に関する限り、ブタンまたはプロパン以下の低沸点化合物
がほぼ完全にナフサまたは燃料から除去されていることを意味し、例えば、従来の精製所
では、ナフサ脱ブタン蒸留塔からの底流が安定化ナフサである。(c)「不安定化ナフサ
」は、C4以下の軽質成分が除去されていないナフサを意味し、例えば、従来の精製所で
は、ナフサ脱ブタン塔への供給原料流れが不安定化ナフサである。(d)「安定化されて
いない自然のままの直留ナフサ」は、プロパンのように最低3つの炭素C3を有するもの
から約175℃(約華氏350度)の初留点(IBP)を有するものまでの範囲にあり、
メタン以下などといった低沸点化合物を除き、常圧蒸留オーバーヘッド蒸留ガスが含まれ
てもよく、常圧蒸留から回収された炭素含有組成物を意味する。(e)「自然のままのナ
フサ」は、水素化処理において、蒸留塔または他の分離器から回収された水素化処理装置
流出物の安定化されていない軽質留分を意味し、操作上で考えると、留出部範囲、重油範
囲、またはその他の分離器への供給物のナフサ部よりも重質の物質などの分離器底部また
はその近辺の1つまたは複数の重質留分を回収する水素化処理ゾーンの一部であって、安
定化されていないものである。(f)「区切り点取り出し物」は、本明細書において既に
定義され、その例を図1に示している。(g)本明細書中での「区切り点取り出しより上
の軽質留出物」または「軽質留出物」は、区切り点取り出し物の最大硫黄含有量より高い
初期硫黄含有量を有する留分であり、それに対応して、区切り点取り出し物の最高終点よ
りも高い沸点(IBP)を有する。(h)「中間留出物」は、好ましい蒸留塔設計に基づ
く取り出し物として分離された、軽質留出物および重質留出物の間の留分を意味し、例え
ば、中間留出取り出し物は排除され、軽質留出物または重質留種物のいずれかと組み合わ
せられ得る。(i)「第1重質留出物」は、常圧蒸留ユニットの最重質留分を意味し、そ
の硫黄含有量および沸点範囲は、蒸留ユニット供給原料の硫黄組成、原油塔稼働の過酷さ
および下流水素化処理条件などといった1つまたは複数の稼働条件により決定される。(
j)「第1重質留出物」は、常圧蒸留ユニットの最重質留分を意味し、蒸留ユニット供給
原料の硫黄組成および硫黄区切り点取り出しに関連し、原油塔稼働の過酷さ、下流留出物
の水素化処理条件の過酷さなどといった1つまたは複数の稼働因子を参照して決定される
硫黄含有量および沸点範囲を有する。(k)「第2重質留出物」は、減圧蒸留塔の最軽質
留分を意味し、蒸留ユニット供給原料の硫黄組成および硫黄区切り点取り出しに関連し、
原油塔稼働の過酷さ、下流留出物の水素化処理条件の過酷さなどといった1つまたは複数
の稼働因子を参照して決定される硫黄含有量および沸点範囲を有する。(j)「常圧残留
物」、「減圧残留物」、「軽質減圧軽油」および「重質減圧軽油」を含む「減圧軽油」、
「溶剤分離」、「水素化処理」、その他の用語、およびこれら用語の変形は、原油を処理
する技術の当業者に公知である。
【0080】
好ましくは、(1)ライン4を介したライン16の安定化されていない自然のままの直
留ナフサ、および(2)ライン18の硫黄区切り点取り出し、の流れの組み合わせは、0
.06重量%~0.08重量%未満の範囲の硫黄を含有し、ライン600の燃料の組み合
わせの目標硫黄含有量が0.1重量%以下であるならば、処理流れ70の硫黄含有量は1
0重量ppm未満であり、その際、蒸気10および70の流速は、合わせて、燃料組み合
わせ600が目標硫黄含有量を超えないように調整される。
【0081】
図2において、常圧残留物は、ライン30を介して減圧蒸留塔200に供給され、(1
)ライン32の第2重質留出物、(2)ライン36の軽質減圧軽油、(3)ライン38の
重質減圧軽油、および(4)ライン50の減圧残留物が作製される。減圧残留物は、ライ
ン50を介して溶剤分離300に導かれ、(1)ライン80の脱アスファルト化油および
ライン90の金属リッチ重質残渣であるピッチが作製される。
【0082】
図2は、2つの水素化処理ゾーン、すなわち留出物水素化処理ゾーン430および重油
水素化処理ゾーン460、を含む統合型水素化処理システム400を示す。統合された水
素処理システムは、当技術分野において公知であり、この用途に好ましい。しかし、ゾー
ン430とゾーン460の両方における水素化脱硫および水素化脱金属には、約117~
138バール(1700~2000psi)の範囲内の比較的低圧力の穏やかな水素化処
理条件で十分である。
【0083】
軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28および第2重質留出物32は、
好ましくは、統合型水素化処理システム400に供給され、触媒の存在下、水素化処理条
件のもと水素処理され、ライン60に留出物水素化処理ゾーン430流出物流れを形成す
る。このような水素化処理装置流出物60は、以下の範囲内の物質、すなわち(1)予想
される沸点範囲がC5(炭素数5の組成物)より上~約175℃(約摂氏350度)であ
る、自然のままのナフサ、および(2)好ましくは、10重量ppm未満の硫黄含有量を
有し、軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28および第2重質留出物32
を有する処理蒸留蒸気の組み合わせから形成される低減硫黄流れである、超低硫黄ディー
ゼルを含む。ゾーン430内の水素化処理の副生成物は、その少なくとも一部は、硫黄除
去処理され、留出物水素化処理ゾーン430もしくは重油水素化処理ゾーン460、また
はその両者に加える水素として再利用される、硫化水素、水素リッチオフガスなど硫黄を
含有するガス、および典型的には少量の液化石油ガスを含んでもよいことは、水素化処理
技術分野における当業者に公知である。
【0084】
軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80もまた、好ましく
は、統合型水素化処理システム400に供給され、触媒の存在下、水素化処理条件のもと
水素処理され、重質減圧軽油水素化処理ゾーン460流出物流れ70を形成する。そのよ
うな水素化処理装置流出物は、以下、(1)予想される沸点範囲がC5(炭素数5の組成
物)より上~約175℃(約摂氏350度)である、自然のままのナフサ、および(2)
好ましくは、10重量ppm未満の硫黄含有量を有し、軽質減圧軽油36、重質減圧軽油
38および脱アスファルト化油80を有する処理蒸留蒸気の組み合わせの第1部分から形
成される、重油水素化処理ゾーン第1低減硫黄流れである、超低硫黄ディーゼル、(3)
好ましくは、0.12~0.18重量%の範囲の硫黄含有量を有し、軽質減圧軽油36、
重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80を有する処理蒸留蒸気の組み合わせの第
2部分から形成される、第2低減硫黄流れ、の範囲内の物質を有する。ゾーン460内の
水素化処理の副生成物は、その少なくとも一部は、硫黄除去処理され、留出物水素化処理
ゾーン430もしくは重油水素化処理ゾーン460、またはその両者に添加する水素とし
て再利用される、硫化水素、水素リッチオフガスなど硫黄ガスを含有するガス、および典
型的には少量の液化石油ガスを含んでもよいことは、水素化処理技術分野における当業者
に公知である。
【0085】
ライン60およびライン70を介して未処理流れ10および1つまたは複数の水素化処
理液体流れが組み合わされて、低硫黄で実質的に金属を含まない燃料製品をライン600
に形成する。ここで、「組み合わせる」とは、ライン中の流れ混合、配合、または他の密
接な組み合わせにより形成されることを意味する。一変形例では、ライン4および16を
介する安定化されていない自然のままの直留ナフサとライン18を介する硫黄区切り点取
り出しとを、100内で追加の処理なしで組み合わせ、次いで、自然のままのナフサおよ
び超低硫黄ディーゼルを含む、留出物水素化処理ゾーン430からの1つまたは複数の流
出物、ならびに自然のままのナフサ、超低硫黄ディーゼルならびに重油水素化処理ゾーン
460で形成される第2低減硫黄流れを有する、重油水素化処理ゾーン460からの1つ
または複数の流出物を組み合わせることによって600に燃料組み合わせを形成する。他
の変形例では、水素化処理ゾーン400により、ゾーン430および460の流出物を組
み合わせて、そのようなゾーン内でライン60とライン70とが組み合わされたかのよう
に(図示せず)単一の流れを形成しそのような変形例は、水素化処理装置430および4
60の流出物を分離することが好ましくない場合に、有用である。好ましくは、減圧軽油
水素化処理部分460は、オーバーヘッドシステムフローおよびボトムシステムフローを
有し、そのフローの一部は、ディーゼル沸点範囲物質である。これは、ゾーン430また
は460によって組み合わせ600に提供される組み合わせたディーゼルと比較して相対
的に少量でよく、組み合わせたディーゼル側水素化処理部分430はまた、ブロック60
0に導かれるかまたはトリムもしくは他の目的に使用される低硫黄ディーゼルを含むオー
バーヘッドシステムフローおよびボトムシステムフロー単独として、またはその一部とし
ての、自然のままのナフサ副流を有する。
【0086】
アスファルトおよび金属リッチ重質残渣を含む脱アスファルト器300底部重質残渣9
0は、蒸気および酸素、および任意の炭素含有スラリークエンチの存在下、重質残渣90
の部分酸化をするための1つまたは複数のガス化炉を含む統合型ガス化複合サイクルシス
テム500に供給され、合成ガスをであって、少なくともその一部はライン502を介し
て留出物水素化処理装置430および重油水素化処理装置460を含む水素化処理システ
ム400に送られて使用される水素に変換され、、またプロセス用途および他の用途のた
めの504内での発電のためガス化システム500内の複合サイクル発電ユニットのガス
タービンを燃焼させる合成ガスである、合成ガスを形成し、高温タービンガスと、高温ガ
スタービンガスから熱を回収するための熱回収発生器をさらに有し、蒸気を生成し、追加
的な発電のために504を介して送られ、蒸気タービンを駆動して発電する。各ガス化炉
は、金属リッチ煤煙も産生する。煤煙は粒状固体の形状であってよく、原油および/また
は重質供給原料由来の金属汚染物質を含み、該固体は、各ガス化炉からライン506を経
て金属除去に供給される。支持システムは、1つまたは複数のガス処理ユニットを含み、
全ての単位操作からの硫黄含有ガス流れの全てが、サワーガスまたは酸性ガスであるかど
うかにかかわらず、508を介して硫黄除去のために上記ガス処理ユニットに供給される
。好ましくは、このような硫黄除去システムは、ガス化システムがその一部であるところ
のユーティリティーアイランドの一部である。より好ましくは、1つまたは複数の硫黄含
有ガス流れは、全体的な硫黄除去の一部として業務用硫黄酸産生に向けられる。ガス化シ
ステム500は、典型的には、ガス化システム内で生成された原料合成ガスの少なくとも
一部から必要な水素を生成するために容量および構成が最適化された酸性ガス除去ユニッ
トおよびサワーCOシフトシステムを含む。
【0087】
図2に示す統合型水素化処理システム400の変形例では、ガス化システム500から
の補給用水素含有ガス502は、水素化処理に必要な量で、水素化処理ブロック400内
の内部再利用水素と共に、所望レベルの脱硫および脱金属化を達成するために選択された
触媒および当該技術分野で知られている他の条件に基づいて調整された、効果的な水素化
処理操作温度、圧力、空間速度および圧力になるまで圧縮、加熱される。このように調製
された水素502は(再利用水素と共に)最初に高圧ゾーンである重油水素化処理ゾーン
460に配置される。水素化処理液体および水素含有ガスを有する重油水素化処理ゾーン
460の流出物は、高圧分離器(図示せず)で分離され、その際、それらの液体は、ゾー
ン460内で集積され、水素を含有する液体は回収され、ライン410を通り、留出物水
素化処理装置430に送られて、低圧力ゾーンでの水素化処理に使用される。水素化処理
ゾーン430からのサワーおよび酸性ガスを有する水素化処理された液体およびパージガ
スは、ライン412を通過して、重油水素化処理ゾーン460に入り、そこで実質的に混
合される。両方のゾーン430および460の水素化処理された処理液430および46
0は、ライン60および70を介して分離され、プロセスの硫黄および他の物質バランス
の必要性に応じて、別々に組み合わせ燃料600へ投入されるか、組み合わせゾーン60
0の硫黄レベルを制御するためのトリムとして添加されるか、または取り出され得る(図
示せず)。図示した統合型水素化処理の変形例では、両ゾーン430および460のパー
ジガス420は、ライン420を介して、硫黄回収システムおよび任意でガス化またはボ
イラーを有するユーティリティーアイランド500に向けられる。図2には示されていな
いが、様々な補助的な高、中および低圧力気液分離器、流れヒーター、ガス再利用および
パージライン、ガスまたは軽質分と液体を分離するための還流ドラム、コンプレッサー、
冷却システム、および他の補助的なアプリケーションは、水素化処理技術分野の当業者に
公知である。また、共通のユーティリティーアイランド内ではなく、水素化処理ゾーン内
に位置する場合には、水素化処理ゾーン400内に、サワーガスまたは酸性ガス処理のた
めの様々なアミンまたは他の硫黄回収剤吸収剤および剥離システムが含まれてもよい。
【0088】
水素化処理触媒の選択および水素化処理ゾーン400のプロセス条件の調整のためのパ
ラメーターは、石油精製産業に従事する当業者の技術範囲内にあり、本発明の水素化処理
区分の実施についての追加の説明を必要としない。留出物水素化処理装置430および重
油水素化処理装置460の反応ゾーンでは、使用される水素化処理触媒は、水素含有量を
増加させ、ならびに/または硫黄、窒素、酸素、リンおよび金属へテロ原子汚染物質を除
去するための炭化水素供給物の水素添加を触媒するのに有用な、任意の触媒組成物を含む
。使用される特定の触媒の種類および様々な層構成ならびに選択される水素化処理条件は
、それぞれのユニットにより処理される各供給原料の炭化水素製品組成物、ならびに硫黄
および金属含有量および重質炭素残留物、ならびに各ゾーンからの生成物流れ中の望まし
い低減硫黄および金属含有量に依存する。そのような触媒は、炭化水素原料油の水素化処
理に有用な任意の触媒から選択できるが、操作条件は、本発明の好ましい実施形態の実施
においては、環飽和または水素化変換を回避または最小化するように調整される。参照に
より本明細書に組み込まれる、Baldassariらによる特許文献4は、様々な好適
な水素化処理触媒に加え、様々な統合型水素化処理装置を含む好適な水素化処理工程を説
明している。Baldassariらはさらに、蒸留および重油水素化処理のための様々
な触媒組成物および条件範囲を要約し、水素化分解および残留物水素化変換のための条件
を識別している。これらの全ては、水素化処理の技術分野の当業者に公知である。非特許
文献8には、水素添加により硫黄を除去し、高活性Ni/Mo触媒の使用により硫黄を8
ppm未満にした製品を製造するためのユニット設計、触媒の選択、水素消費および他の
稼働条件が記載されている。Shifletらによる非特許文献9にもまた、立体障害の
ない硫黄を除去するための高活性CoMo触媒、および残存する立体障害硫黄を除去する
ための高活性NiMo触媒を用いて10ppm以下までとする水素化処理が記載されてい
る。
【0089】
図2に示す他の変形例では、供給原料2の硫黄含有量は、硫黄プロファイルの指数関数
的な区切り点および上昇率を示す分析により測定される。例えば、0.06~0.08重
量%(または、未処理および水素化処理蒸気の相対的流速およびそれぞれの硫黄含有量を
踏まえ、該量よりも高い)範囲の硫黄含有量の区切り点およびそのようなプロファイルを
使用して、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および硫黄区切り点取り出し
18の利用可能な量を最大化するように常圧蒸留100の調整を制御し、その際、直留ナ
フサ16および硫黄区切り点取り出し18は、流動混合または配合により組み合わされて
流れ、処理なしでも製品集積ゾーン600で入手可能であり、必要であれば、(1)留出
物水素化処理ゾーン430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28も
しくは第2重質留出物32の流れの量、または(2)重油水素化処理装置460への軽質
減圧軽油36、重質減圧軽油38もしくは脱アスファルト化油80の流れの量が測定また
は低減され、これらの流れは、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料製
品600を形成するため、増加または低減された量で水素化処理に導かれる。さらに他の
変形例では、分析は、未処理の安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および未
処理の硫黄区切り点取り出し18以外の流れの最大量を制御して、水素化処理に向かう流
れの量を決定し、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料600を形成す
るために使用することができる。すなわち、任意の(1)留出物水素化処理ゾーン430
への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32
の流れの量、または(2)重油水素化処理装置460への軽質減圧軽油36、重質減圧軽
油38もしくは脱アスファルト化油80の流れの量、である水素化処理400への様々な
流量を、600で未処理流れ10と混合される水素化処理ゾーン400の流出物60もし
くは70またはその両者の硫黄含有量を調整するように、増加または低減することができ
る。
【0090】
一変形例では、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料製品600を、
実際の最終製品600の硫黄レベルを調整することにより形成する。調整は、組み合わせ
ゾーン600への、(a)硫黄除去の処理がされていないため硫黄を含有していても良い
、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16もしくは硫黄区切り点取り出し18、
または(b)処理された軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28、第2重
質留出物32などの留出物水素化処理装置430に出入りする流れ、または(c)処理さ
れた軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38、脱アスファルト化油80などの重油水素化処
理装置に出入りする流れ、の1つまたは複数の量を増加または低減することにより行われ
る。ここで、そのような調整は、各流れ60または70の、組み合わせ600への、硫黄
含有量に対する相対的な寄与度の測定に基づいている。
【0091】
一実施形態では、燃料600向けに低金属含有量および目標硫黄含有量制限レベル未満
の硫黄含有量を有するライトタイトオイルもしくは凝縮物、または非随伴ガスおよびシェ
ールガス製造用凝集物などのライトタイトオイルの組み合わせなどは、以下、すなわち(
a)常圧蒸留100もしくは減圧蒸留200、溶剤分離300への供給原料、留出物水素
化処理装置430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第
2重質留出物32のいずれかの供給原料、もしくは重油水素化処理装置460への軽質減
圧軽油36、重質減圧軽油38もしくは脱アスファルト化油80のいずれかの供給原料、
(b)追加の処理を行うことなしに、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16お
よび硫黄区切り点取り出し18から形成された流れ10、(c)自然のままのナフサおよ
び超低硫黄ディーゼルを含む留出物水素化処理装置により形成される流れ、(d)自然の
ままのナフサ、超低硫黄ディーゼルおよび第2低減硫黄流れを含む重油水素化処理装置に
より形成される流れ、(e)最終製品燃料600に導かれる、結合された水素化処理ユニ
ット400の組み合わせ流出物70、または(f)最終製品燃料を形成するために添加さ
れる、そのような燃料を生産する設備の囲いの内部または外部で添加される別の燃料、の
1つまたは複数と組み合わせる。
【0092】
図2に示す一変形例では、燃料製品600の硫黄含有量は、(a)組み合わせ600に
、ライン10を介して、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16および硫黄区切
り点取り出し18を、そのような流れに追加の処理を加えることなく、供給すること、次
いで、(b)実際の製品の硫黄レベル600を、(1)留出物水素化処理ゾーン430へ
の軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物32の
流れ、(2)重油水素化処理装置460への軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38もしく
は脱アスファルト化油80の流れの1つもしくは複数の組み合わせへの量を増加もしくは
低減して調整すること、(c)次いで、何らかの理由で実際の製品600の硫黄含有量を
目標硫黄レベルまで上昇させる必要があるならば、組み合わせへの(1)ライン60を介
する、軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物28もしくは第2重質留出物3
2から形成された、留出物水素化処理ゾーン430からの流れ、(2)ライン70を介す
る、軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アスファルト化油80から形成された
、重油水素化処理ゾーン460からの流れ、の1つもしくは複数の量を減らすこと、また
は(d)何らかの理由で実際の製品600の硫黄含有量を目標硫黄レベルまで低減させる
必要があるならば、組み合わせへの(1)ライン60を介する、留出物水素化処理ゾーン
430からの上記流れ、(2)ライン70を介する、重油水素化処理ゾーン460からの
上記流れ、の1つもしくは複数の量を増加すること、によって目標硫黄含有量制限レベル
以下に制御される。このような促進により、例えば、海上および陸上用ガスタービンのた
めの500重量ppm未満の硫黄燃料を目標とした燃料供給や、異なる目標硫黄含有量を
必要とする異なる場所での同じ用途のための様々な範囲など、複数の硫黄等級を効率的に
製造することができる。
【0093】
組み合わせ600における最終燃料の目標硫黄含有量制限レベルよりも高い硫黄含有量
を有する高硫黄燃料油の使用の変形例では、高硫黄燃料油は、1つまたは複数の様々な供
給原料の一部として、それぞれの単位操作の1つまたは複数へ供給される。高硫黄燃料油
は、(a)常圧蒸留100への供給ライン2もしくは減圧蒸留200へのライン30へ、
または(b)溶剤分離300へのライン50へ、または(c)別々に、もしくは上記留出
物水素化処理装置430への軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物26もし
くは第2重質留出物32供給原料の1つもしくは複数と組み合わせて、留出物水素化処理
装置430へのライン20へ、または(d)別々に、もしくは軽質減圧軽油36、重質減
圧軽油38および脱アスファルト化油80の1つもしくは複数と組み合わせて、重油水素
化処理装置460へのライン40へ添加して、実際の硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以
下である燃料組み合わせ600を形成することができる。高硫黄燃料油の供給原料として
の使用およびその供給点の選択に関するこれらの変形例の1つまたは複数の実施において
、その硫黄含有量、アスファルテン含有量などといった高硫黄燃料油の供給の性質および
共処理された原油または他の供給原料との適合性に関する他の因子、容器スペースおよび
エネルギー消費、アスファルテン含有量、未溶解成分の含有量、ガム形成、ならびに他の
効率の問題が考慮されることは、精製技術分野の当業者に公知である。
【0094】
他の変形例では、組み合わせ600ゾーンの清浄な燃料は、燃料600の実際の硫黄含
有量が目標硫黄含有量制限以下となるように、目標硫黄含有量制限レベルよりも高い硫黄
含有量を有することができる高硫黄燃料油を、(a)高硫黄燃料油の硫黄含有量によって
は追加の処理が加えられることのない、安定化されていない自然のままの直留ナフサ16
および硫黄区切り点取り出し18から形成される流れ10、または(b)自然のままのナ
フサおよび超低硫黄ディーゼル範囲物質を含む留出物水素化処理装置430により形成さ
れる流れ60、または(c)自然のままのナフサ、超低硫黄ディーゼルおよび第2低減硫
黄流れを含む重油水素化処理装置460から形成される流れ70もしくは水素化処理ゾー
ン400からの組み合わせ流出物70、の1つまたは複数に添加することにより形成され
る。
【0095】
燃料組成物600の作製に高硫黄燃料油を使用する好ましい一変形例では、そのような
高硫黄燃料油の硫黄含有量を測定し、次いで高硫黄燃料油を、供給原料50の一部として
溶剤分離ユニットに供給し、脱アスファルト化油流れ80の一部を形成するか、または供
給原料20の一部として軽質留出物24、中間留出物26、第1重質留出物26もしくは
第2重質留出物32の1つもしくは複数の蒸留流れと組み合わせられて、留出物水素化処
理装置430に供給されるか、または軽質減圧軽油36、重質減圧軽油38および脱アス
ファルト化油80の重油流れの1つもしくは複数、もしくは蒸留流れと重油流れの両者と
組み合わせられて、高硫黄燃料油の硫黄含有量次第で、留出物水素化処理装置430もし
くは重油水素化処理装置460、もしくは両者への供給原料の一部を形成し、ゾーン43
0もしくは460の水素化処理条件の調整を最適化し、または両ゾーンを調整して実際の
硫黄含有量が目標硫黄含有量制限以下である燃料を形成する。
【0096】
本発明の他の実施形態では、その仕様が硫黄含有量制限以下の清浄な燃料は、典型的に
は常圧残留物またはより重質であり、高硫黄燃料油の仕様外または標準的な規格内にある
密度または硫黄または金属含有量を有してもよい高硫黄燃料油を含む、重質残渣油の使用
によって形成することができる。市場における考慮事項により、このような重質残渣油は
、燃料プラントのバッテリーリミット内とは異なる供給源から入手可能であることが多い
。燃料600の目標硫黄含有量制限レベルよりも高い硫黄含有量を有する重質残渣は、以
下、すなわち(a)減圧蒸留塔200であって、別々にもしくはライン30を介して常圧
残留物と組み合わせて蒸留塔200に供給し、第2重質留出物32、軽質減圧軽油36、
重質減圧軽油もしくは減圧残留物50のいずれかもしくは全ての少なくとも一部を作製す
る常圧蒸留塔200、または(b)溶剤分離300であって、別々にもしくはライン50
を介して溶剤分離300への減圧残留物供給物と組み合わせられて、脱アスファルト化油
80の少なくとも一部、もしくはガス化、硫黄回収および他の補助的な処理のためにガス
化システム500へと通過する金属リッチ重質残渣を有するピッチ90を形成する溶剤分
離300、の1つまたは複数に供給される。このような重質残渣油はまた、ユーティリテ
ィーアイランド500への供給物としてライン90を介してピッチと組み合わせられても
よい。変形例では、本発明の燃料600の硫黄含有量を調整するトリムのための処理をし
ないで、比較的高硫黄含有量(0.5重量%を超える)または高金属含有量を有する未処
理の高硫黄燃料油を使用する場合、そのような使用は、組み合わせ600が目標硫黄含有
量制限を超えないことを確実にするための処理をしないで使用される場合、比較的小さな
調整量とする。
【0097】
様々な中間的な個々の生成物を示す図2のフローシートは、描かれた各単位操作の流出
物における主要な生成物および副生成物の説明および理解のためのものである。各単位操
作による分離または処理の選択された変化は、選択された原油および供給原料、ならびに
目標硫黄仕様以下の燃料を製造するために製造された中間生成物の最適化に依存する。例
えば、ゾーン430内で生成された超低ディーゼルが濾過されず、全ての水素化処理され
た物質が図2に示すようにライン70内で組み合わせられる場合には、共通の気液分離器
(図示せず)の使用によって、水素化処理装置430および460からの流出物60およ
び70の両方を水素化処理ゾーン400内で組み合わせることができ、ガスのみが除去さ
れる。あるいは、最終的な組み合わせゾーン600の燃料の硫黄含有量のトリム制御また
は他の理由のための自然のままのナフサまたは超低硫黄ディーゼルの一部の分離または削
除がプロセス目的である場合、水素化処理装置430および460からの流出物60およ
び70は、自然のままのナフサまたは超低硫黄ディーゼルの留分を除去することができる
よう、別々にまたは組み合わせて、ストリッパーまたは蒸留塔に送られてもよい。
【0098】
本発明の様々な実施形態を説明したが、それらは例示に過ぎず限定的なものではないこ
とを理解すべきである。例えば、燃料の引火点が考慮されていない場合、低い金属含有量
および目標硫黄含有量未満の硫黄含有量を有する未処理のライトタイトオイルもしくは凝
縮物、または未処理のライトタイトオイルもしくは凝縮物の組み合わせは、上記未処理の
留分と上記処理流れとの組み合わせの一部として添加され、実際の硫黄含有量が目標硫黄
含有量以下である燃料を形成する。本明細書で使用される「ライトタイトオイル」または
「LTO」という用語は、(i)0.1重量%~0.2重量%の範囲の硫黄含有量、およ
び(ii)API(度)で38~57度の範囲の密度、および(iii)供給源に基づく
幅広い炭化水素範囲、を有する源泉凝縮物またはシェールガス凝縮物を意味する。LTO
は、典型的には、全量に対する重量%として、(a)5~20重量%の液化石油ガス範囲
、(b)10~35重量%のナフサ、(c)15~30重量%の灯油、(d)15~25
重量%のディーゼル、(e)減圧軽油、および(f)ゼロ(0%)~10重量%の重質残
渣の、互いに重なり合う、予想される留出物取り出しの留分範囲を有する。
【0099】
一変形例では、本発明は、(i)例えば、利用可能な油が本発明の燃焼製造プラントの
バッテリーリミット外の生産地をもつ場合、未処理のライトタイトオイルもしくは凝縮物
の品質を有する原油、またはライトタイトオイルもしくは凝縮物の組み合わせと、(ii
)1つまたは複数の他の原油供給原料との、本発明の方法による共処理を行い、低金属含
有量と目標硫黄含有量未満の硫黄含有量を有する低コスト燃料を作製する。このようなラ
イトタイト原油は、底部留分に十分な重質炭化水素を含有していない可能性が高く(例え
ば、0%または非常に低い重質残渣)、残渣の範囲は、脱硫または他の水素化処理のため
の処理バランスを提供しておらず、対応する残渣も、そのようなライトタイト原油を費用
対効果のある方法で水素化し、硫黄および金属を削減して汚染除去するか、または十分な
潤滑性を与え、一定の種類のエンジンでの使用を支えるための水素生成のプロセスを支え
るに十分でない。
【0100】
本発明の新規燃料の実施形態は、国際標準化機構(ISO)によって発行されたISO
8217規格を参照することにより、より良く理解される。ISO8217には、船上で
の消費のための一連の海洋残留燃料のカテゴリーと詳しい仕様が記載されている。これら
の仕様は、それらの開発の基礎として、原油供給、精製方法、および他の条件が様々に変
動することを認識している。このような仕様は、硫黄含有量のなどといった特性に対する
様々な国際的要件が考慮されていることを示唆している。現時点で最も厳しいISO82
17は、RMA10であり、明細書と請求項の解釈はこれに基づくべきである。本発明の
新規燃料の模擬組成物(原油を留分に分割し、その留分の一部を水素化処理し、溶剤分離
中に溶剤ではない残留物を除去し、次いで未処理および処理区分を再構成するするシミュ
レーションモデルにより作製される)に基づけば、これらの新規燃料は、引火点を除いて
全てのISO RMA10仕様に適合および/または超えており、引火点については貨物
船に対する引火点要件のSOLAS例外に該当し、該燃料は、これらの新規燃料を上記の
残渣からなる船舶用燃料と区別する新規の特徴および改善を有することを、本発明者らは
主張する。
【0101】
一変形例では、本発明者らは、引火点を除いて、全てのISO RMA10(ISO2
817-10)仕様に適合または超えており、以下の特筆すべき特徴、すなわち(a)0
.50%m/m(重量%)以下、好ましくは、0.05~0.20m/m(重量%)の範
囲の硫黄、(b)5.0mg/Kg(重量ppm)以下、好ましくは、1.0mg/Kg
(1.0重量ppm)以下、例えば、0.2mg/Kg(0.2重量ppm)の金属、お
よび(c)60℃以下の引火点、および他のISO RMA10仕様より優れた特徴、の
いずれかまたは全てを有する改良された燃料を提供する。変形例では、これら新規の燃料
はさらに、以下のような特筆すべき特徴、すなわち(a)10cSt以下の粘度、(b)
0(零)℃以下の流動点、(c)820~880Kg/M3の範囲内の密度、(d)80
0以下のCCAI、(e)20mg/Kg以下、好ましくは、10mg/Kg以下のナト
リウム、の1つまたは複数を有する。上記の全ては、ISO2817-10により規定さ
れている試験または計算方法により測定される。このような燃料は、ナフサの初留点およ
びヘプタンなどの溶剤分離に好適な溶剤に可溶な成分の中で一番高い沸点を有する成分の
最高沸点を有する一連の炭化水素を含む。金属は、供給原料の組成および稼働条件の調整
に依存して、100重量ppbまで低減できる。
【0102】
本発明者らは、貨物船に対する引火点要件のSOLAS例外に該当する硫黄および金属
量が極めて低い燃料を低コストで生産できることを発見した。他の用途のために引火点処
理が必要な場合、60℃以上の引火点を有するため、またはそのような要求のための引火
点処理は、当該技術分野で公知である。
【0103】
本発明の低粘度、低流動点燃料を船舶用エンジンに使用することで、通常の残留油の加
熱に関連して必要とされるエネルギー消費を回避または低減し、港内における給油所また
は海上での圧送および取り扱いを可能にする。重質残渣油は濃く、その比較的高い流動点
と高い粘度のために、その貯蔵、圧送、および船舶用エンジンへの供給の全てにおいて、
加熱し高温に保たれる必要があり、そのような加熱はエネルギーを消費する。
【0104】
以下の表1は、本発明の燃料の2つの変形例、すなわち0.1重量%の極めて低い硫黄
含有量のものと、さらに低減されたレベル0.05重量%のものとを示し、ISO RM
A 10と比較した硫黄を以下の表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示す特性を有するこのような本発明の燃料は、C3またはC5からC20以上の
原油由来の炭化水素の実質的に全範囲を有する点でさらに識別され、上記炭化水素の有す
る初留点は、常圧蒸留条件下での上記原油の任意の留分の沸点の内、最低のものであり、
最高沸点は、溶剤分離に好適な溶剤に溶解しない、上記原油の残留部分の終点である。こ
れに対し、残渣は、減圧蒸留残渣、溶剤脱アスファルト化残留物、他のコーカーなどがそ
のような広範囲の炭化水素を含有しておらず、非常に重質な物質のみに限定される。
【0107】
本明細書及び特許請求の範囲の開示から、本発明は、現在の海洋レシプロエンジンとの
適合性の基準を満たすか超えるだけでなく、海洋用途に使用可能な高度な燃焼ガスタービ
ンへの適合性も有する、超清浄燃料の製造を可能にする。そのような高度タービンエンジ
ンは、現在入手可能であるが、典型的には陸上用である。これらの高度なタービンエンジ
ンは、一旦船上で起動させると、航海中に本発明の燃料を燃焼させることによって、腐食
または灰の形成を少なくしつつ、大きな効率上の利点を有することができる。また、港で
利用可能な燃料経済に応じて、船舶は、これらの新規燃料を港で燃焼させ、発電してその
電力を現地の電力網に送って収益を上げることによって、効率上の利点を獲得することが
できる。このような港湾発電による収益は、海上燃料費を相殺し、船舶への海上燃料費の
実際の合計を高硫黄燃料油未満に下げることができ、したがって、本発明の低硫黄燃料が
より高価な航海燃料である場合においても、その使用費用を相殺することとなる。最大の
利益は、環境に対するものであり、特定の規範事例の比較においては、SOxおよびNO
xの排出量を95%以上削減することが可能であり、航海中の有害金属の排出を潜在的に
は99%以上(ほぼ100%)削減することができる。さらに、環境は、CO2削減から
二通りの利益、すなわち(i)船上の高度ガスタービンエンジンの効率性、および(ii
)港湾での発電の効率性、を得、石炭、原油、残留油またはある種の他の燃料の非効率的
な燃焼が取って代わられる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
このように、本発明は、硫黄および他の汚染物質のレベルが低減された燃料の製造およ
びそのような燃料の使用に広く適用される。特定の特徴は、本発明の精神または範囲から
逸脱することなく変更され得る。したがって、本発明は、説明された特定の実施形態また
は実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲または特許請求の範囲と実質
的に同等のものに限定される。
図1
図2