(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100952
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】生体への超音波照射方法及び超音波照射装置
(51)【国際特許分類】
A61N 7/00 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
A61N7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215257
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】秋山 いわき
(72)【発明者】
【氏名】市川 寛
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ36
(57)【要約】
【課題】生体における活性酸素の消去活性を向上させることができる簡易な方法を提供する。
【解決手段】生体への超音波照射方法は、生体の少なくとも一部を液体に接触させて、液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度I
SPTAが720mW/cm
2以下の超音波を生体の一部に10秒以上10分以下の時間にわたって照射する超音波照射ステップを、時間間隔を空けて複数回行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の少なくとも一部を液体に接触させて、前記液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度ISPTAが720mW/cm2以下の超音波を前記生体の前記一部に10秒以上10分以下の時間にわたって照射する超音波照射ステップを、時間間隔を空けて複数回行う、
生体への超音波照射方法。
【請求項2】
前記超音波照射ステップを2日間の間隔を空けて4回行う、請求項1に記載の生体への超音波照射方法。
【請求項3】
生体の少なくとも一部を液体に接触させる生体支持部と、
前記生体支持部の中の液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度ISPTAが720mW/cm2以下の超音波を前記生体の前記一部に照射するための超音波発振部と、
前記超音波発振部の照射条件を制御する制御部と、
を備えた、
生体への超音波照射装置。
【請求項4】
前記制御部において、時間間隔を空けて超音波を前記生体の少なくとも一部に照射する、請求項3に記載の生体への超音波照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体への超音波照射方法及び超音波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症などの神経疾患や、動脈硬化、発癌、加齢黄斑変性症などの眼疾患、虚血性心疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、老化など、数多くの疾患が、酸化ストレス関連疾患として捉えられている。これら疾病の予防には、生体の抗酸化能(活性酸素消去能)を高めることが必須であるとされているが、その手段として現在のところ抗酸化食品の摂取や、適度な運動を中心とした生活習慣の改善が薦められているのみである。
【0003】
活性酸素を含む活性酸素種(ROS)は、普段の呼吸のほか、環境(紫外線、電磁波、大気汚染)や生活習慣(ストレス、喫煙など)により体内で産生され、過剰な活性酸素種は生体へ様々な悪影響を及ぼす。例えば、活性酸素によって脂質は酸化過多となり、タンパク質は変性し、酵素は失活し、これらの劣化によって心疾患、脳血管疾患、動脈硬化等を引き起こしやすくなる。また、活性酸素によってDNAの損傷や誤複製を招き、悪性新生物の発生を起こしやすくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】野口範子、「運動に関連する酸化ストレスと抗酸化作用」、日本運動生理学、2003、Vol.10、No.1、1-8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、生体における活性酸素の消去活性を向上させることができる簡易な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る生体への超音波照射方法は、生体の少なくとも一部を液体に接触させて、前記液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度ISPTAが720mW/cm2以下の超音波を前記生体の前記一部に10秒以上10分以下の時間にわたって照射する超音波照射ステップを、時間間隔を空けて複数回行う。
【0007】
本発明に係る生体への超音波照射装置は、生体の少なくとも一部を液体に接触させる生体支持部と、
前記生体支持部の中の液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度ISPTAが720mW/cm2以下の超音波を前記生体の前記一部に照射するための超音波発振部と、
前記超音波発振部の照射条件を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る超音波照射方法及び超音波照射装置によれば、生体の少なくとも一部に、適宜、時間間隔を空けて複数回にわたって超音波を照射することができる。これによって、生体において、・OHラジカルを含む活性酸素に対する抗酸化能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る超音波照射装置の一例の構成を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る超音波照射方法の実施例1のスケジュールを示す概略図である。
【
図3】実施の形態1に係る超音波照射方法の一例を示す実施例1に係る超音波照射方法における超音波の照射条件を示す表である。
【
図4】実施例1において、6種のラジカルの消去活性を示す概略図である。
【
図5】
図4の6種のラジカルについて、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)の採血した血液中のラジカルの消去活性を比較した表である。
【
図6】
図5の6種のラジカルのp値を示す表である。
【
図7】
図5の6種のラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性を100とした場合に、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性の割合(%表示)を表した表である。
【
図8】
・OHラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。
【
図9】
1O
2ラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。
【
図10】O
2
・-ラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。
【
図11】RO
・ラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。
【
図12】ROO
・ラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。
【
図13】
・CH
3ラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明に至る経過)
生体は、トレーニングなどの運動の繰り返しによる刺激によって、活性酸素が産生され、それによって抗酸化酵素の誘導が生じることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。つまり、適度な酸化ストレスにさらされると、その適応反応として自らの抗酸化能を高めることが推測されている。
【0011】
そこで、今回、本発明者らは、超音波照射により生体の抗酸化能が変化するのではないかと仮定して、生体としてラットを用いた超音波照射実験を行い、血液中の活性酸素消去活性の変化を検討し、本発明に至った。
【0012】
以下に本発明の各態様について挙げる。
【0013】
第1の態様に係る生体への超音波照射方法は、生体の少なくとも一部を液体に接触させて、液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度ISPTAが720mW/cm2以下の超音波を生体の前記一部に10秒以上10分以下の時間にわたって照射する超音波照射ステップを、時間間隔を空けて複数回行う。
【0014】
第2の態様に係る生体への超音波照射方法は、上記第1の態様において、超音波照射ステップを2日間の間隔を空けて4回行ってもよい。
【0015】
第3の態様に係る生体への超音波照射装置は、生体の少なくとも一部を液体に接触させる生体支持部と、
生体支持部の中の液体を介して、周波数が1MHz~10MHzの範囲であって、強度ISPTAが720mW/cm2以下の超音波を生体の一部に照射するための超音波発振部と、
超音波発振部の照射条件を制御する制御部と、
を備える。
【0016】
第4の態様に係る生体への超音波照射装置は、制御部において、時間間隔を空けて超音波を生体の少なくとも一部に照射してもよい。
【0017】
以下、実施の形態に係る超音波照射方法及び超音波照射装置について、添付図面を参照しながら説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0018】
(実施の形態1)
<超音波照射装置>
図1は、実施の形態1に係る超音波照射装置20の一例の構成を示す概略斜視図である。この超音波照射装置20は、生体(ラット)1の少なくとも一部を液体(水)2に接触させる生体支持部(容器)4a、4bと、超音波を照射する超音波発振部(トランスジューサ)6と、超音波発振部6の照射条件を制御する制御部10と、を備える。
この超音波照射装置20によれば、生体の少なくとも一部に、適宜、時間間隔を空けて複数回にわたって超音波を照射することができる。これによって、生体において、
・OHラジカルを含む活性酸素に対する抗酸化能を向上させることができる。
【0019】
以下に、この超音波照射装置20を構成する各部材について説明する。
【0020】
<生体>
超音波を照射する生体1として、図面ではラットである場合を示しているが、生体はラットに限られず、人を含む動物である。また、超音波を照射する箇所は、生体の少なくとも一部、例えば、腹部、背面、脚部、あるいはそれらの一部であってもよい。
【0021】
<活性酸素種>
抗酸化能の対象となる活性酸素種としては、例えば、6種のラジカル(
・OH、
1O
2、O
2
・-、RO
・、ROO
・、
・CH
3)である。なお、後述する
図4乃至
図13に示す実施例1に係る超音波照射方法では、
・OH及び
1O
2の消去活性の向上効果が確認できたが、これに限られず、照射条件によって活性酸素種の他のラジカルについても消去活性の向上が得られる可能性がある。
【0022】
<超音波発振部、制御部>
超音波発振部(トランスジューサ)6によって照射する超音波の周波数は、1MHz以上10MHz以下である。一般的に耳に感じない超音波の下限としては2MHzとされる場合があるが、1MHz以上の音であれば抗酸化能を向上させることができるものと考えられる。10MHzを越える音は生体に達する前に減衰しやすく効率が悪くなる。また、超音波の照射時間は、1回当たり10秒以上10分以下である。1回当たり10秒以下の場合には十分な効果が得られない。また、10分を越える照射を行うと、総エネルギー量が大きくなるため生体に損傷を与えるおそれがある。
【0023】
照射する超音波の強度は、繰り返し周期内の平均強度ISPTAで720mW/cm2以下である。また、メカニカルインデックスMIが1.9以下である。メカニカルインデックスMIは、超音波によるキャビテーション等の発生による非熱的作用の安全性を評価する指標である。これらの上限値は、厚生労働省、別表3-20 移動型超音波画像診断装置等基準、告示第267号:平成30年7月10日に基づくものである。
また、超音波の強度は、ISPTAで8mW/cm2以上である。これを下回ると十分な効果が得られない。
【0024】
制御部によって、時間間隔を空けて超音波を照射するようにしてもよい。時間間隔は、例えば、
図2に示す実施例1の超音波照射方法のスケジュールに示すように隔日にする場合に限らず、毎日、12時間ごと、等の適宜設定した時間間隔であってもよい。
【0025】
<生体支持部>
生体支持部4a、4bは、生体の少なくとも一部を液体に接触させることができるものであればよい。生体支持部4a、4bは、例えば、生体の一部を収納できるガラス製容器、プラスチック製容器、金属製容器、木製容器、陶磁器製容器等の容器、又は、生体の一部を載置できるプラスチック製網、金属製網、木製格子、陶磁器製格子等の網状部材であってもよい。
また、生体と接触させる液体としては、例えば水である。また、水は、例えば、生体の一部と接触させることができる水であればよく、脱気水、蒸留水、超純水等のいずれであってもよい。また、生体が魚類、両生類等の場合に生息環境に近い液体を用いてもよい。液体は、例えば、生理食塩水等であってもよい。
【0026】
<超音波照射方法>
実施の形態1に係る超音波照射方法は、生体の少なくとも一部を液体に接触させて、液体を介して、超音波を生体の一部に照射する超音波照射ステップを、時間間隔を空けて複数回行う。
これによって、生体において、・OHラジカルを含む活性酸素に対する抗酸化能を向上させることができる。
【0027】
(超音波照射による効果)
実施の形態1に係る超音波照射装置及び超音波照射方法によって、時間間隔を空けて超音波を生体に複数回にわたって照射することができる。時間間隔を空けた複数回にわたる超音波の照射による生体における・OHラジカルを含む活性酸素に対する抗酸化能の向上の作用については、未だ明らかではない。これについては、例えば、以下のように推測される。つまり、激しすぎない適度な運動による場合と同様に、超音波照射によって生体内に活性酸素が産生され、その活性酸素によってIKKの活性化が起こり、I-κBがリン酸化されプロテアームによる分解を受けるものと考えられる。その結果、NF-κBを活性化して核への移行を促進され、この制御下にある遺伝子の誘導を起こし、抗酸化能の向上が生じる可能性が考えられる。あるいは、非酸化ストレス下では遺伝子発現活性化因子であるNrf2と酸化ストレスセンサであるKeap1との複合体であるNrf2-Keap1制御下の抗酸化応答による可能性が考えられる。
【0028】
(実施例1)
以下に、実施の形態1に係る超音波照射方法を具体的な実施例1を用いて説明する。
図2は、実施の形態1に係る超音波照射方法の実施例1のスケジュールを示す概略図である。
図3は、実施の形態1に係る超音波照射方法の一例を示す実施例1に係る超音波照射方法における超音波の照射条件を示す表である。
実施例1に係る超音波照射方法では、
【0029】
ラット1は、外箱4aと内箱4bとの2重の箱形容器4a、4bの内箱4bの中に下半身が浸かるくらいの脱気水2のなかに置かれている。外箱4aの中にも脱気水2が入っており、その底にトランスジューサ6が置かれており、外箱4aの脱気水2及び内箱4bの脱気水2を介して内箱4b内のラット1にトランスジューサ6から超音波が照射される。トランスジューサ6は、パワーアンプ8と波形発生器9とを有する制御部10と接続され、超音波の照射条件が設定される。
【0030】
実施例1に係る超音波照射方法における超音波の照射条件としては、35℃の温水2中でラット1の腹部に1回当たり1分間、隔日(1日目、3日目、5日目、7日目)で合計4回にわたって超音波を照射した。トランスジューサ6から発振する超音波は周波数2MHzであった。1回当たりの超音波照射の強度ISPTAは0.34W/cm2であり、メカニカルインデックスMIは0.23であり、総エネルギー量は、2.0Jであった。
その後、1週間後(8日目)の血液中の活性酸素(ヒドロキシルラジカル、一重項酸素)の消去活性を、ESRスピントラップ法で測定した。
【0031】
<評価方法>
ラジカルの消去活性(抗酸化度)は、以下のようにして評価を行った。まず、生体試料、例えば採血した血液中に活性酸素種である6種のラジカル(
・OH、
1O
2、O
2
・-、RO
・、ROO
・、
・CH
3)を一定量生成させる。その後、生体試料である血液により各ラジカルが減少した度合いをESR(Electron Spin Resonance)によって定量することで消去活性(抗酸化度)を評価する。なお、ESRとは、不対電子を持つ分子を検出する分光光度計を用いて電子スピンと電磁波の共鳴とを観測する方法である。
各ラジカルの消去活性は、抗酸化物質(還元型GSH、SOD、trolox、αリポ酸、BSA)の等量として示している。また、
図5に示す統計的指標であるp値によって、実施例における超音波照射による効果の統計的な有意差を示している。
【0032】
(結果)
図4は、実施例1において、6種のラジカルの消去活性を示す概略図である。
図5は、
図4の6種のラジカルについて、ラット(生体)1を脱気水2に接触させただけの超音波非照射の場合(CTL)と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)の採血した血液中のラジカルの消去活性を比較した表である。
図6は、
図5の6種のラジカルのp値を示す表である。
図7は、
図5の6種のラジカルの消去活性について、ラット(生体)1を脱気水2に接触させただけの超音波非照射の場合(CTL)のラジカルの消去活性を100とした場合に、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性の割合(%表示)を表した表である。
図8乃至
図13は、6種のラジカルの消去活性について、生体を脱気水に接触させただけの超音波非照射の場合(CTL)のラジカルの消去活性と、隔日で1週間にわたって超音波照射した場合(1week US)のラジカルの消去活性とを表した棒グラフである。なお、表示した数値は平均値±標準偏差(S.D)であり、サンプル数nは3である。また、
図8及び
図9では、超音波照射していない群(CTL)と比較して1%の有意水準(p<0.01)で有意差があったことを示している。
【0033】
図4乃至
図13に示すように、ラット(生体)1を脱気水2に接触させただけの超音波非照射の場合(CTL)に比べて、実施例1に係る超音波照射を受けたラット1では、6種のラジカルの消去活性がいずれも向上している。特に、
図6のp値を参照すれば、統計的な有意差として、
・OHラジカル及び
1O
2の消去活性が顕著に向上していることがわかる。
図7、
図8、
図9に示すように、
・OHラジカルの消去活性は約8.34倍、
1O
2の消去活性は約2.18倍に向上している。
【0034】
(超音波照射による効果)
【0035】
上記のように、超音波照射により血中の活性酸素消去活性は著しい上昇を示した。本所見は、頻回の超音波照射が生体の抗酸化能を高める可能性を示唆しており、人に応用することにより、老化を含めた酸化ストレス関連疾患の予防に役立つものと推測される。
超音波照射による生体の抗酸化能亢進作用は、多くの酸化ストレス関連疾患の予防に有効である可能性が高く、抗酸化という観点から抗酸化食品に代わって国民の健康保持に寄与できるものと考えている。また、今回の超音波照射条件は、すでに決められている超音波診断装置の出力安全性基準を遵守していることを考えると、人に対する時間間隔を空けた複数回にわたる超音波照射方法及び装置が、新たな健康産業の創出にも直結するものと確信している。
【0036】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る超音波照射方法及び超音波照射装置によれば、生体の少なくとも一部に、適宜、時間間隔を空けて複数回にわたって超音波を照射することができる。これによって、生体において、・OHラジカルを含む活性酸素に対する抗酸化能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ラット(生体)
2 脱気水
4a、4b 容器
6 トランスジューサ
8 パワーアンプ
9 波形発生器
10 制御部
20 超音波照射装置