(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100961
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】機械学習装置及び障害解析装置
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20220629BHJP
G06F 11/30 20060101ALI20220629BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G06F11/07 190
G06F11/30 165
G05B23/02 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215268
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】谷浦 努
【テーマコード(参考)】
3C223
5B042
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA23
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EA07
3C223EB04
3C223FF15
3C223FF16
3C223FF22
3C223FF24
3C223FF26
3C223FF42
3C223FF44
3C223HH02
5B042GB06
5B042JJ17
5B042JJ29
5B042KK14
5B042KK15
5B042KK17
5B042MA14
5B042MC08
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、アラーム表示に基づいて障害を特定することが可能となる。
【解決手段】ネットワークを通じて取得される設備情報から通信設備又は回線設備の障害を識別するための学習モデルを構築する機械学習装置であって、ネットワークの監視装置30で発生している設備情報としてのアラームに係る情報を第1入力データとして取得する第1入力データ取得手段111と、アラームに対応して発生している障害の判定結果を第1ラベルとして取得する第1ラベル取得手段112と、第1入力データと第1ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、監視装置30で発生しているアラームに対応する判定結果を生成するための第1学習モデルを構築する第1学習モデル構築手段113と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを通じて取得される設備情報から通信設備又は回線設備の障害を識別するための学習モデルを構築する機械学習装置であって、
前記ネットワークの監視装置で発生している前記設備情報としてのアラームに係る情報を第1入力データとして取得する第1入力データ取得手段と、
前記アラームに対応する障害の判定結果を第1ラベルとして取得する第1ラベル取得手段と、
前記第1入力データと前記第1ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記監視装置で発生しているアラームに対応する前記判定結果を生成するための第1学習モデルを構築する第1学習モデル構築手段と、
を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記通信設備としてのマイクロ波無線機からの出力波形に係る情報を第2入力データとして取得する第2入力データ取得手段と、
前記出力波形に対応する障害の判定結果を第2ラベルとして取得する第2ラベル取得手段と、
前記第2入力データと前記第2ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記出力波形に対応する前記判定結果を生成するための第2学習モデルを構築する第2学習モデル構築手段と、
を更に備える、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の機械学習装置で構築した前記第1学習モデルを用いた障害解析装置であって、
新たな前記アラームを取得するアラーム取得手段と、
前記アラーム取得手段によって取得されたアラームを、事前に登録されていたアラームと、事前に登録されていないアラームとに振り分けるアラーム振分手段と、
前記事前に登録されていないアラームと前記第1学習モデルとを用いて、前記障害の発生を判定する第1障害判定手段と、
を備える障害解析装置。
【請求項4】
前記第1障害判定手段は、前記障害に加えて、前記障害の発生確度を判定し、
前記障害の発生確度が100%ではない場合に、前記障害の発生確度を高めるための確認事項を出力する確認事項出力手段を更に備える、請求項3に記載の障害解析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の機械学習装置で構築した前記第2学習モデルを用いた障害解析装置であって、
前記事前に登録されていないアラームのログが、前記マイクロ波無線機からの出力が閾値を超えたことを示す場合に、前記出力波形と前記第2学習モデルとを用いて、前記障害の発生を判定する第2障害判定手段と、
を備え、
前記第1障害判定手段は、前記事前に登録されていないアラームのログが、前記出力が閾値を超えたことを示さない場合に、前記事前に登録されていないアラームと前記第1学習モデルとを用いて、前記障害の発生を判定する、請求項3又は請求項4に記載の障害解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置及び障害解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所のネットワークで用いる通信設備や回線設備に障害が発生した場合に、NMS(Network Management System)におけるアラーム表示、回線管理システムと関係事業所へのアラーム出力、及び疎通確認に基づいて故障箇所の特定を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1は、セキュリティ・ユーティリティ・サーバ(SUS)により、ネットワーク管理要素が、閾値および/または他の基準を設定し、閾値や基準を超えた場合、NMSに通知を送信するなどの、特定の動作をもたらす警告を出力すると共に、ネットワーク内のノードが異常検出機構で異常を検出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発電所のネットワークに含まれるNMSにおけるアラーム表示に基づいて故障箇所を特定する場合、担当者の通信設備や回線設備に関する知識によって障害の特定に要する時間にばらつきが発生する。また、NMSにおけるアラームは、通信設備や回線設備に障害が発生した場合に出力されるのみならず、例えば停電作業や通信作業に伴って、通信設備や回線設備を停止する際にも出力される。このため、アラームが多く出力される作業中に、通信設備や回線設備における障害が発生すると、停電作業や通信作業などの作業に伴うアラーム表示に、障害の発生に伴うアラーム表示が紛れ込み、担当者は、運用箇所からの疎通障害連絡があるまで、障害の発生に伴うアラーム表示に気づかないことがある。
【0006】
本発明は、通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、アラーム表示に基づいて自動的に障害を特定することが可能となる、機械学習装置及び障害解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0008】
(1) ネットワークを通じて取得される設備情報から通信設備又は回線設備の障害を識別するための学習モデルを構築する機械学習装置であって、前記ネットワークの監視装置で発生している前記設備情報としてのアラームに係る情報を第1入力データとして取得する第1入力データ取得手段と、前記アラームに対応する障害の判定結果を第1ラベルとして取得する第1ラベル取得手段と、前記第1入力データと前記第1ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記監視装置で発生しているアラームに対応する前記判定結果を生成するための第1学習モデルを構築する第1学習モデル構築手段と、を備える機械学習装置。
【0009】
(1)によれば、通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、アラーム表示に基づいて自動的に障害を特定する機械学習装置を提供することが可能となる。
【0010】
(2) (1)に記載の機械学習装置において、前記通信設備としてのマイクロ波無線機からの出力波形に係る情報を第2入力データとして取得する第2入力データ取得手段と、前記出力波形に対応する障害の判定結果を第2ラベルとして取得する第2ラベル取得手段と、前記第2入力データと前記第2ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記出力波形に対応する前記判定結果を生成するための第2学習モデルを構築する第2学習モデル構築手段と、を更に備えることが好ましい。
【0011】
(2)によれば、通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、マイクロ波無線機からの出力波形に基づいて自動的に障害を特定する機械学習装置を提供することが可能となる。
【0012】
(3) (1)又は(2)に記載の機械学習装置で構築した前記第1学習モデルを用いた障害解析装置であって、新たな前記アラームを取得するアラーム取得手段と、前記アラーム取得手段によって取得されたアラームを、事前に登録されていたアラームと、事前に登録されていないアラームとに振り分けるアラーム振分手段と、前記事前に登録されていないアラームと前記第1学習モデルとを用いて、前記障害の発生を判定する第1障害判定手段と、を備える障害解析装置。
【0013】
(3)によれば、通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、アラーム表示に基づいて自動的に障害を特定する障害解析装置を提供することが可能となる。
【0014】
(4) (3)に記載の障害解析装置において、前記第1障害判定手段は、前記障害に加えて、前記障害の発生確度を判定し、前記障害の発生確度が100%ではない場合に、前記障害の発生確度を高めるための確認事項を出力する確認事項出力手段を更に備えることが好ましい。
【0015】
(4)によれば、第1学習モデルによる判定結果としての障害の発生確度を高めることが可能となる。
【0016】
(5) (3)又は(4)に記載の障害解析装置において、(2)に記載の機械学習装置で構築した前記第2学習モデルを用いた障害解析装置であって、前記事前に登録されていないアラームのログが、前記マイクロ波無線機からの出力が閾値を超えたことを示す場合に、前記出力波形と前記第2学習モデルとを用いて、前記障害の発生を判定する第2障害判定手段と、を備え、前記第1障害判定手段は、前記事前に登録されていないアラームのログが、前記出力が閾値を超えたことを示さない場合に、前記事前に登録されていないアラームと前記第1学習モデルとを用いて、前記障害の発生を判定することが好ましい。
【0017】
(5)によれば、通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、マイクロ波無線機からの出力波形に基づいて自動的に障害を特定する障害解析装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信設備や回線設備に関する知識量を問わず、アラーム表示に基づいて障害を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る障害解析システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る機械学習装置に備わる第1学習部の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る障害解析装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る機械学習装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る機械学習装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る障害解析装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図6を参照することにより説明する。
【0021】
〔1 実施形態の構成〕
〔1.1 全体構成〕
まず、本実施形態に係る障害解析システム100の構成について説明する。
図1は障害解析システム100の全体構成を示す図である。障害解析システム100は、
図1に示すように、機械学習装置10、障害解析装置20、監視装置30、端末装置40、及びネットワーク50を備えている。なお、機械学習装置10、障害解析装置20、監視装置30、端末装置40は、1台でも複数台でもよい。
【0022】
また、機械学習装置10と、障害解析装置20と、監視装置30と、端末装置40とは、それぞれネットワーク50に接続されており、ネットワーク50を介して相互に通信を行うことが可能である。ネットワーク50は、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネット、公衆電話網、あるいは、これらの組み合わせである。ネットワーク50における具体的な通信方式や、有線接続及び無線接続のいずれであるか等については、特に限定されない。なお、機械学習装置10と障害解析装置20とは、ネットワーク50を用いた通信ではなく、接続部を介して直接接続してもよく、障害解析装置20と監視装置30とは、接続部を介して直接接続してもよい。
【0023】
機械学習装置10は、教師あり学習により、障害解析装置20で用いる学習モデルを構築する装置である。そのため、機械学習装置10は、
図1に示すように、第1学習部11と第2学習部12を備える。
【0024】
障害解析装置20は、後述の監視装置30で検知されるアラームを、機械学習装置10で構築された学習モデルに適用することにより、NMSで発生している障害を解析する装置である。
【0025】
監視装置30は、例えばNMSに備わる通信設備や回線設備等に発生している障害を、当該通信設備や回線設備等から取得したアラームに基づいて検知することで、NMSの状況を監視する装置である。
【0026】
端末装置40は、障害解析装置20から出力される障害解析結果や、監視装置30から出力される監視結果を取得して表示すると共に、端末装置40のユーザからの入力を、障害解析装置20や監視装置30に出力する装置である。端末装置40は、例えばスマートフォンなどの携帯電話や、タブレットなどの携帯端末によって実現されることが好適であるが、これには限定されない。また、
図1において、端末装置40は、端末装置40a~40qの複数台が示されているがこれには限定されず、例えば1台のみ存在してもよい。
【0027】
〔1.2 機械学習装置の構成〕
上記のように、機械学習装置10は、第1学習部11と第2学習部12とを備える。第1学習部11は、NMSの監視装置30で発生しているアラームに係る情報から、NMSで発生している障害を判定するための第1学習モデルを構築する。第2学習部は、NMSに備わるマイクロ波無線機からの出力波形に係る情報から、NMSで発生している障害を判定するための第2学習モデルを構築する。
【0028】
図2は、第1学習部11の機能ブロック図である。第1学習部11は、
図2に示すように、第1入力データ取得部111、第1ラベル取得部112、第1学習モデル構築部113、第1学習モデル記憶部114を備える。
【0029】
第1入力データ取得部111は、NMSの監視装置で発生しているアラームに係る情報を第1入力データとして取得する。なお、このアラームに係る情報としては、例えば、特定の発電所における「N150MOPT 高速セクション REC」というアラーム、「MJ」というアラーム、「4WVA1 低速IF部 EQP1」というアラーム、「故障一括」というアラーム、「装置異常」というアラームが挙げられる。
【0030】
なお、ここで、「N150MOPT」とは、通常回線の150M(150メガ)光送信部のことである。とりわけ「N」は「通常」の回線であることを意味し、通常回線が停止した際には、「E」(Emergency)で示される予備系の回線に切り替わる。「OPT」とは、発光・送信を示す。
また、「高速セクション」の「高速」とは、国際標準ISOで規定され、伝送速度STM-1(155.52Mbps)、STM-16(2488.32Mbps)等、多くの種類が存在する、多重化速度が高速である高速回線を意味し、「セクション」とは、光多重化装置における高速回線が通っている領域・区間のことである。
また、「REC」とは、光入力断又はフレーム同期はずれ時に発生するアラーム出力表示である。
また、「4WVA1」とは、光多重化装置における4W回線(主に音声信号、電話回線等)を収容する基板名である。
また、「低速IF部」とは、低速回線に使用されるインタフェースのことである。
また、「EQP1」とは、「Equipment(装置)1」の略号である。
また、「故障一括」とは、装置内でアラームが発生した際、該当装置を特定しやすくするために発報するアラームのことであり、アラームで確認した装置において、詳細なアラーム検証・確認が必要となる。
また、「装置異常」とは、装置全体ではなく、装置を構成するユニットの警報を通知するアラームのことであり、装置停止・回線停止は伴わないが、信頼性が低下している(例えば、冗長化されたシステムの場合、片方の系統が停止している等)状態を示す。
【0031】
第1ラベル取得部112は、アラームに対応する障害の判定結果を第1ラベルとして取得する。なお、この判定結果は、例えば、「N150MOPT」基板内のIC不良、光心線不良、「4WVA1」の基板故障、装置電源部の異常が挙げられる。
【0032】
第1学習モデル構築部113は、第1入力データと第1ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、NMSの監視装置30で発生しているアラームに係る情報から、NMSで発生している障害を判定するための第1学習モデルを構築し、構築した第1学習モデルを、障害解析装置20に送信する。
【0033】
第1学習モデル構築部113は、例として、サポート・ベクター・マシン(Support Vector Machine、以下SVMともいう)を用いて実現することが可能である。例えば、サポート・ベクター・マシンに加えて、ロジスティック回帰式や正解率表を用いることにより、本実施形態によって構築される第1学習モデルは、アラームに対応する障害を判定するのみならず、各障害が発生している確度を出力することが好適である(例えば、高橋和子「サポートベクターマシンにおけるアンサンブル学習の提案」,第23回人工知能学会全国大会)。
【0034】
この第1学習モデルは、例えば、複数のアラームの各々がONとなっているかOFFかの組み合わせに応じて、発生している障害と確度を判定するための学習モデルである。
【0035】
第1学習モデル記憶部114は、第1学習モデル構築部113が構築した学習モデルを記憶する。
【0036】
第2学習部12は、第2入力データ取得部121、第2ラベル取得部122、第2学習モデル構築部123、第2学習モデル記憶部124を備える。なお、第2学習部12の構成は、
図2に示す第1学習部11の構成と同様であるからその図示を省略する。
【0037】
第2入力データ取得部121は、NMSに備わる通信設備としてのマイクロ波無線機からの出力波形に係る情報を第2入力データとして取得する。
【0038】
第2ラベル取得部122は、上記の出力波形に対応する障害の判定結果を第2ラベルとして取得する。なお、この判定結果は、例えば、降雨や倒木等の事象であって良い。
【0039】
第2学習モデル構築部123は、第2入力データと第2ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、NMSに備わるマイクロ波無線機からの出力波形に係る情報から、NMSで発生している障害を判定するための第2学習モデルを構築し、構築した第2学習モデルを、障害解析装置20に送信する。この第2学習モデルは、例えば、降雨や倒木により、マイクロ波無線機からの出力波形が乱れた場合に、その乱れ具合に応じて、発生している障害が、例えば降雨であったり、あるいは倒木であったりすることを判定するための学習モデルである。
【0040】
〔1.3 障害解析装置の構成〕
図3は、障害解析装置20の機能ブロック図である。障害解析装置20は、記憶部21と、制御部22と、通信部23と、表示部24とを備える。
【0041】
記憶部21は、機械学習装置10から取得した第1学習モデル及び第2学習モデルを記憶する。
【0042】
更に記憶部21は、事前登録データベース211、アラーム障害対応データベース212、障害特性データベース213を格納する。
【0043】
事前登録データベース211は、停電作業や通信作業に伴って、通信設備や回線設備を停止することに伴って発生する作業アラームを事前に登録するデータベースである。例えば、障害解析装置20のユーザは、端末装置40から、作業アラームに係る情報を入力することにより、事前登録データベース211に、将来発生する作業アラームが登録される。
【0044】
アラーム障害対応データベース212は、アラームと、当該アラームに対応する障害との対応関係を定義するデータベースである。アラーム障害対応データベース212は、例えば、複数のアラームの各々がONかOFFかによる組み合わせと、発生している障害との対応関係を定義する。後述のように、実際に出力されている複数のアラームの組み合わせを、第1学習モデルに適用することにより、発生しているであろう障害とその確度が判定されるが、この際、アラーム障害対応データベース212を参照することにより、仮に当該障害が実際に発生しているのであれば、本来のアラームのON-OFFの組み合わせが分かる。これを実際に出力されている複数のアラームのON-OFFと比較することにより、本来であればONとなっているはずのアラームが実際にはOFFとなっていたり、あるいは、本来OFFとなっているはずのアラームが実際にはONとなっていたりすることが判別される。
【0045】
障害特性データベース213は、発生している障害と、当該障害の発生箇所、当該障害への対応の優先度、当該障害から復旧するために用いる障害復旧品・予備品の有無と保管場所、当該障害の発生場所までの所要移動時間、及び、当該障害からの復旧の見込時間との対応関係を定義するデータベースである。
【0046】
制御部22は、障害解析装置20の全体を制御する部分であり、各種プログラムを、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部22は、CPUであってよい。制御部22は、アラーム取得部221、アラーム振分部222、第1障害判定部223、第2障害判定部224、障害候補出力部225、確認事項出力部226、障害特定部227、優先度出力部228、障害復旧品出力部229、所用移動時間出力部230、復旧見込時間出力部231とを備える。
【0047】
アラーム取得部221は、後述の通信部23を介して、監視装置30から、第1学習モデルや第2学習モデルの構築時に取得したアラームとは別個に、新たなアラームを取得する。
【0048】
アラーム振分部222は、事前登録データベース211を参照することにより、アラーム取得部221によって取得されたアラームが、事前に登録された作業アラームか、あるいは、事前に登録されておらず、実際に障害が発生していることに伴って出力されている障害アラームかを振り分ける。
【0049】
第1障害判定部223は、事前に登録されていない障害アラームを、記憶部21に記憶されている第1学習モデルに適用することにより、発生しているであろう障害とその発生の確度を類推し、判定する。
【0050】
第2障害判定部224は、事前に登録されていない障害アラームのログが、マイクロ波無線機からの出力が閾値を超えていることを示す場合に、当該マイクロ波無線機からの出力波形を、記憶部21に記憶されている第2学習モデルに適用することにより、発生しているであろう障害を類推し、判定する。更に、第2障害判定部224は、当該発生しているであろう障害を、通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、第2障害判定部224は、当該発生しているであろう障害を、後述の表示部24に出力してもよい。
【0051】
障害候補出力部225は、第1障害判定部223によって判定された障害の候補を、当該候補が複数ある場合には確度の高い順にソートした上で、当該確度と共に通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、障害候補出力部225は、障害の候補を、当該確度と共に後述の表示部24に出力してもよい。
【0052】
確認事項出力部226は、アラーム障害対応データベース212を参照することにより、障害解析装置20のユーザに対する確認事項を出力する。具体的には、障害候補出力部225によって出力された障害候補に対応する、アラーム振分部222によって振り分けられた事前に登録されていない複数のアラームの組み合わせが、アラーム障害対応データベース212に記載のアラームの組み合わせと一部異なる場合、当該異なるアラームに対応する事象を、ユーザに対する確認事項として、通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、確認事項出力部226は、ユーザに対する確認事項を、後述の表示部24に出力してもよい。
【0053】
例えば、アラーム振分部222によって振り分けられた、事前に登録されていない複数の障害アラームの組み合わせが、(ALM1,ALM2,ALM3,ALM4)=(ON,OFF,ON,OFF)であり、これを第1学習モデルに適用した結果、障害Dが90%の確度で発生していると判定されたとする。この際、アラーム障害対応データベース212において、障害Dに対応する本来の障害アラームの組み合わせが、(ALM1,ALM2,ALM3,ALM4)=(ON,OFF,OFF,OFF)であった場合、確認事項出力部226は、本来であればOFFになっているはずのALM3がONになっていることに基づいて、ALM3に対応する確認事項を出力する。
【0054】
障害特定部227は、実際に発生している障害を特定する。例えば、障害特定部227は、障害候補出力部225によって出力された複数の障害候補から、ユーザによって端末装置40を介して選択された選択結果に基づいて、実際に発生している障害を特定してもよい。あるいは、第2障害判定部224によって出力された障害に対する、ユーザの確認動作に基づいて、実際に発生している障害を特定してもよい。
【0055】
優先度出力部228は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害への対応の優先度を、通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、優先度出力部228は、障害への対応の優先度を、後述の表示部24に出力してもよい。
【0056】
障害復旧品出力部229は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害から復旧するために用いる障害復旧品・予備品の有無と保管場所を、通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、障害復旧品出力部229は、障害から復旧するために用いる障害復旧品・予備品の有無と保管場所を、後述の表示部24に出力してもよい。
【0057】
所要移動時間出力部230は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害の発生場所までの所要移動時間を、通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、所要移動時間出力部230は、所要移動時間を、後述の表示部24に出力してもよい。この際、例えば所要移動時間を算出するために、端末装置40に備わる、GPS情報取得部(不図示)によって取得されるGPS情報を用いてもよい。
【0058】
復旧見込時間出力部231は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害からの復旧の見込時間を、通信部23を介して端末装置40に出力する。あるいは、復旧見込時間出力部231は、復旧見込時間を、後述の表示部24に出力してもよい。
【0059】
通信部23は、障害解析装置20が、機械学習装置10、監視装置30、及び端末装置40と通信するために用いる通信インタフェースである。
【0060】
表示部24は、例えば、障害候補出力部225によって出力される障害候補、確認事項出力部226によって出力される確認事項、優先度出力部228によって出力される優先度、障害復旧品出力部229によって出力される障害復旧品・予備品の有無と保管場所、所要移動時間出力部230によって出力される所要移動時間、復旧見込時間出力部231によって出力される復旧見込時間を表示するモニタである。
【0061】
〔2 実施形態の動作〕
次に、本実施形態に係る障害解析システム100の動作について説明する。まず、
図4及び
図5を参照し、機械学習装置10の動作について説明する。
【0062】
〔2.1 機械学習装置10の動作〕
図4は、第1学習部11の動作を示すフローチャートである。
ステップS11において、第1入力データ取得部111が、NMSの監視装置30で発生しているアラームに係る情報を第1入力データとして取得する。
【0063】
ステップS12において、第1ラベル取得部112が、アラームに対応する障害の判定結果を第1ラベルとして取得する。
【0064】
ステップS13において、第1学習モデル構築部113は、第1入力データと第1ラベルとの組を教師データとする。
【0065】
ステップS14において、第1学習モデル構築部113は、ステップS13の教師データを用いて教師あり学習を行う。
【0066】
ステップS15において、機械学習が終了した場合(S15:YES)には、処理はステップS16に移行する。機械学習がまだ終了していない場合(S15:NO)には、処理はステップS11に移行する。
【0067】
ステップS16において、第1学習モデル構築部113は、構築した第1学習モデルを障害解析装置20に送信する。その後、全ての処理を終了する。
【0068】
図5は、第2学習部12の動作を示すフローチャートである。
ステップS21において、第2入力データ取得部121が、NMSに備わるマイクロ波無線機からの出力波形に係る情報を第2入力データとして取得する。
【0069】
ステップS22において、第2ラベル取得部122が、出力波形に対応する障害の判定結果を第2ラベルとして取得する。
【0070】
ステップS23において、第2学習モデル構築部123は、第2入力データと第2ラベルとの組を教師データとする。
【0071】
ステップS24において、第2学習モデル構築部123は、ステップS23の教師データを用いて教師あり学習を行う。
【0072】
ステップS25において、機械学習が終了した場合(S25:YES)には、処理はステップS26に移行する。機械学習がまだ終了していない場合(S25:NO)には、処理はステップS21に移行する。
【0073】
ステップS26において、第2学習モデル構築部123は、構築した第2学習モデルを障害解析装置20に送信する。その後、全ての処理を終了する。
【0074】
〔2.2 障害解析装置20の動作〕
次に、
図6を参照し、障害解析装置20の動作について説明する。
【0075】
ステップS31において、アラーム取得部221は、後述の通信部23を介して、監視装置30から、第1学習モデルや第2学習モデルの構築時に取得したアラームとは別個に、新たなアラームを取得する。
【0076】
ステップS32において、アラーム振分部222は、事前登録データベース211を参照することにより、アラーム取得部221によって取得されたアラームが、事前に登録された作業アラームか、あるいは、事前に登録されておらず、実際に障害が発生していることに伴って出力されている障害アラームかを振り分ける。
【0077】
ステップS33において、障害アラームのログに、マイクロ波無線機からの出力が閾値を超えたことを示すデータが含まれない場合(S33:NO)には、処理はステップS34に進む。障害アラームのログに、マイクロ波無線機からの出力が閾値を超えたことを示すデータが含まれる場合(S33:YES)には、処理はステップS35に進む。
【0078】
ステップS34において、第1障害判定部223は、事前に登録されていない障害アラームを、記憶部21に記憶されている第1学習モデルに適用することにより、発生しているであろう障害とその発生の確度を類推し、判定する。
【0079】
ステップS35において、第2障害判定部224は、マイクロ波無線機からの出力波形を、記憶部21に記憶されている第2学習モデルに適用することにより、発生しているであろう障害を類推し、判定する。更に、第2障害判定部224は、当該発生しているであろう障害を出力する。
【0080】
ステップS36において、障害候補出力部225は、第1障害判定部223によって判定された障害の候補を、当該候補が複数ある場合には確度の高い順にソートした上で、当該確度と共に出力する。
【0081】
ステップS37において、障害候補出力部225によって出力された障害候補の確度が100%の場合(S37:YES)には、処理はステップS39に進行する。それ以外の場合(S37:NO)には、処理はステップS38に進行する。
【0082】
ステップS38において、確認事項出力部226は、アラーム障害対応データベース212を参照することにより、障害解析装置20のユーザに対する確認事項を出力する。
【0083】
ステップS39において、障害特定部227は、実際に発生している障害を特定する。
【0084】
ステップS40において、優先度出力部228は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害への対応の優先度を出力する。
【0085】
ステップS41において、障害復旧品出力部229は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害から復旧するために用いる障害復旧品・予備品の有無と保管場所を出力する。
【0086】
ステップS42において、所要移動時間出力部230は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害の発生場所までの所要移動時間を出力する。
【0087】
ステップS43において、復旧見込時間出力部231は、障害特性データベース213を参照することにより、障害特定部227によって特定された障害からの復旧の見込時間を出力する。その後、全ての処理を終了する。
【0088】
〔3 変形例〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0089】
〔3.1 変形例1〕
上記の実施形態において、機械学習装置10と障害解析装置20とを別体として示したがが、これには限定されない。例えば、機械学習装置10が障害解析装置20の筐体に組み込まれることにより、一体化されて実現される態様としてもよい。
【0090】
〔3.2 変形例2〕
上記の実施形態において、第1障害判定部223が、発生しているであろう障害とその発生の確度を類推し、判定するとしたがこれには限定されない。例えば、第1障害判定部223に加えて、第2障害判定部224も、発生しているであろう障害に加えて、その確度を類推し、判定してもよい。更に、第2障害判定部224は、複数の障害の候補を、当該確度でソートした上で出力してもよい。
【0091】
〔3.3 変形例3〕
上記の実施形態において、確認事項出力部226は、ユーザに対する確認事項を出力するとしたが、これには限定されない。例えば、単に確認事項を出力するのみならず、ユーザからの確認結果を、障害解析装置20に入力する構成とし、当該入力結果に基づいて、障害候補に対応する確度を再計算してもよい。
【0092】
障害解析システム100による障害解析方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 機械学習装置
11 第1学習部
12 第2学習部
20 障害解析装置
21 記憶部
22 制御部
23 通信部
24 表示部
30 監視装置
40 端末装置
50 ネットワーク
100 障害解析システム
111 第1入力データ取得部
112 第1ラベル取得部
113 第1学習モデル構築部
114 第1学習モデル記憶部
121 第2入力データ取得部
122 第2ラベル取得部
123 第2学習モデル構築部
124 第2学習モデル記憶部
211 事前登録データベース
212 アラーム障害対応データベース
213 障害特性データベース
221 アラーム取得部
222 アラーム振分部
223 第1障害判定部
224 第2障害判定部
225 障害候補出力部
226 確認事項出力部
227 障害特定部
228 優先度出力部
229 障害復旧品出力部
230 所要移動時間出力部