(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100963
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】設計図面投影システム、設計図面投影方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20220629BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20220629BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20220629BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20220629BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20220629BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20220629BHJP
B25H 7/04 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G03B21/00 D
G09G5/00 550X
G09G5/00 550C
G09G5/00 510B
G09G5/36 520D
G09G5/38 A
G01B11/24 A
B25H7/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215275
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】依田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】小野 豊
(72)【発明者】
【氏名】竹内 圭二
【テーマコード(参考)】
2F065
2K203
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA54
2F065BB01
2F065CC14
2F065DD06
2F065EE08
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL62
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065RR08
2K203FA76
2K203FB03
2K203KA36
2K203KA83
2K203MA30
5C058BA27
5C058EA02
5C182AA04
5C182AA13
5C182AA14
5C182AB02
5C182AB18
5C182BA29
5C182BC22
5C182BC25
5C182BC26
5C182CB12
5C182CB32
5C182CB42
5C182CC24
(57)【要約】
【課題】凹凸のある床面上に設計図面の像を正確に表示させる。
【解決手段】設計図面投影システム1は、床面に投影すべき設計図面の図面データが記憶されたデータ記憶部22と、床面の凹凸量を、床面に沿った複数の位置でそれぞれ検出する床面状態検出装置3と、床面状態検出装置3で検出された床面の凹凸量に基づいて、図面データを補正し、補正図面データを生成するデータ補正部23と、補正図面データに基づいた補正図面の像を床面に投影して表示させる投影装置5と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に投影すべき設計図面の図面データが記憶されたデータ記憶部と、
前記床面の凹凸量を、前記床面に沿った複数の位置でそれぞれ検出する床面状態検出装置と、
前記床面状態検出装置で検出された前記床面の凹凸量に基づいて前記図面データを補正し、補正図面データを生成するデータ補正部と、
前記補正図面データに基づいた補正図面の像を前記床面に投影して表示させる投影装置と、を備えることを特徴とする設計図面投影システム。
【請求項2】
前記データ補正部は、前記投影装置で投影する前記像のピクセル毎に前記図面データを補正し、
前記床面状態検出装置は、前記ピクセルのそれぞれに対応した前記床面上の複数の位置で、前記凹凸量を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の設計図面投影システム。
【請求項3】
設計図面の像を投影する床面の凹凸量を、前記床面に沿った複数の位置でそれぞれ検出する工程と、
前記床面の凹凸量に基づいて前記設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する工程と、
前記補正図面データに基づいた補正図面の像を前記床面に投影して表示させる工程と、を含む
ことを特徴とする設計図面投影方法。
【請求項4】
前記床面の凹凸量を検出する工程では、前記像を床面に投影して表示させる工程で投影する前記像のピクセルのそれぞれに対応した複数の位置で、前記凹凸量を検出し、
前記補正図面データを生成する工程では、前記像のピクセル毎に前記図面データを補正する、
ことを特徴とする請求項3に記載の設計図面投影方法。
【請求項5】
前記補正図面データを生成する工程では、前記補正図面の像を前記床面に投影させて表示させる工程で用いる投影装置の設置位置を含む水平面を基準面とし、前記基準面に対する前記複数の位置における上下方向の高さの差に基づき、前記ピクセル毎の前記像の投影位置を前記床面に沿った方向にずらす量を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の設計図面投影方法。
【請求項6】
前記床面上に表示された前記像に基づいて、墨出し作業を行う工程、をさらに含む
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の設計図面投影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計図面投影システム、設計図面投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、様々な工程で墨出し作業が行われている。墨出し作業は、設計図面に基づいて、建設現場で様々な部材の位置や加工を施すべき位置を示すために行われる。墨出し作業は、墨出し作業を担当する職人によって行われる。このため、担当の職人による墨出し作業が行われない限り、それ以降の作業を進めることができない。
また、墨出し作業は、設計図面の印刷物を職人が目視で確認しながら行われる。このため、設計図面からの情報の読み取りに誤りがあった場合、設計図面に改変がなされ、職人が使用する設計図面が最新のものでない場合等には、墨出しが正確に行われないことがある。
【0003】
これらの問題に対し、建設現場で、設計図面の像を、施工中の構造物に実寸で投影することが検討されている。これにより、設計図面の像を構造物に実寸で投影した状態で、投影された設計図面上の線に沿って、墨出し作業をダイレクトに行うことができる。例えば特許文献1には、空間内に設置され、その空間の設計データの少なくとも一部を構造物に実寸で投影する投影装置についての構成が開示されている。
しかしながら、設計データに基づく設計図面の像を実寸で投影する構造物の表面は、平滑面であるとは限らない。例えば、構造物のコンクリート製の床の表面には、上下方向に数cmの不陸があることが多い。このように凹凸がある構造物の床の表面に設計図面情報を実寸で投影すると、設計図面上の線が、凹凸に倣って歪んだ状態で表示され、墨出し作業を正確に行うことが困難となってしまう。
【0004】
プロジェクションマッピングと称される、投影面に画像や映像を投影する技術においては、複数のプロジェクタから投影した複数の画像や映像のつなぎ目を合わせる目的、傾斜した面に投影した画像や映像(の輪郭)を補正する目的で、様々な補正技術が開発されている。
例えば特許文献2には、投影面にテスト画像を投影し、投影面の3次元形状を測定し、計測された3次元形状データに基づいて、ユーザーの視点から見たときに、幾何学的な画像歪みが低減された状態とするように、テスト画像に対して補正処理、回転処理等を実行する投影システムについての構成が開示されている。
特許文献2に開示されたような投影システムでは、左眼視点と右眼視点とを含む平面に対して傾斜した平面を投影面とし、ユーザーの視点から見たときに幾何学的な画像歪みが低減された状態となるように画像を投影するものである。したがって、このような構成の技術を適用したとしても、凹凸のある構造物の表面に設計図面の像を照射した場合に、凹凸による設計図面の像の歪みを解消することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-96243号公報
【特許文献2】特開2017-130732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、凹凸のある床面上に設計図面の像を正確に表示させることが可能な、設計図面投影システム、設計図面投影方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の設計図面投影システムは、床面に投影すべき設計図面の図面データが記憶されたデータ記憶部と、前記床面の凹凸量を、前記床面に沿った複数の位置でそれぞれ検出する床面状態検出装置と、前記床面状態検出装置で検出された前記床面の凹凸量に基づいて前記図面データを補正し、補正図面データを生成するデータ補正部と、前記補正図面データに基づいた補正図面の像を前記床面に投影して表示させる投影装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、床面状態検出装置で検出した床面の凹凸量に基づいて、データ補正部が、設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する。投影装置では、補正図面データに基づいた補正図面の像を床面に投影して表示させる。これにより、床面には、床面の凹凸量を踏まえて補正された補正図面に基づく正確な像が表示される。したがって、この像に基づいて墨出し作業を行えば、墨出しを正確に行うことが可能となる。また、設計図面の図面データを用いるので、設計図面からの情報の読み取りの誤りが生じることが抑えられる。さらに、設計図面の図面データを用いることで、設計図面に変更があった場合であっても、最新の設計図面に基づく補正図面の像を表示させることができる。その結果、凹凸のある床面上に設計図面の像を正確に表示させることが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の設計図面投影システムは、前記床面状態検出装置は、前記投影装置で投影する前記像のピクセルのそれぞれに対応した前記床面上の複数の位置で、前記凹凸量を検出し、前記データ補正部は、前記像のピクセル毎に前記図面データを補正する。
【0010】
このような構成によれば、投影装置で投影する像のピクセル毎に、床面上の凹凸量の検出、図面データの補正を行うことで、投影装置が有する解像度に応じた高い解像度で、床面上に像を表示させることができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明の設計図面投影方法は、設計図面の像を投影する床面の凹凸量を、前記床面に沿った複数の位置でそれぞれ検出する工程と、前記床面の凹凸量に基づいて前記設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する工程と、前記補正図面データに基づいた補正図面の像を前記床面に投影して表示させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、床面の凹凸量に基づいて設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する。このような補正図面データに基づいた補正図面の像を床面に投影して表示させることで、床面には、床面の凹凸量を踏まえて補正された補正図面に基づく正確な像が表示される。その結果、凹凸のある床面上に設計図面の像を正確に表示させることが可能となる。
【0013】
本発明の一態様においては、本発明の設計図面投影方法は、前記床面の凹凸量を検出する工程では、前記像を床面に投影して表示させる工程で投影する前記像のピクセルのそれぞれに対応した複数の位置で、前記凹凸量を検出し、前記補正図面データを生成する工程では、前記像のピクセル毎に前記図面データを補正する。
【0014】
このような構成によれば、高い解像度で、床面上に像を表示させることができる。
【0015】
本発明の一態様においては、本発明の設計図面投影方法は、前記補正図面データを生成する工程では、前記補正図面の像を前記床面に投影させて表示させる工程で用いる投影装置の設置位置を含む水平面を基準面とし、前記基準面に対する前記複数の位置における上下方向の高さの差に基づき、前記ピクセル毎の前記像の投影位置を前記床面に沿った方向にずらす量を算出する。
【0016】
このような構成によれば、床面の凹凸量に基づいた設計図面データの補正を行い、正確な像を床面上に表示するための補正図面データを生成することができる。
【0017】
本発明の一態様においては、本発明の設計図面投影方法は、前記床面上に表示された前記像に基づいて、墨出し作業を行う工程、をさらに含む。
【0018】
このような構成によれば、床面の凹凸量を踏まえて補正された補正図面に基づく正確な像に基づいて墨出し作業を行うことで、墨出しを正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、凹凸のある床面に像を投影した場合であっても、床面上に設計図面の像を正確に表示させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る設計図面投影システム、設計図面投影方法の構成を示す断面図である。
【
図2】上記設計図面投影システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】上記設計図面投影システムを構成する床面状態検出装置で床面の凹凸量を検出している状態を示す側面図である。
【
図4】上記設計図面投影システムを構成する投影装置で像を床面に投影している状態を示す側面図である。
【
図5】本実施形態における設計図面投影方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】凹凸のある床面に像を表示した場合に生じる像の位置ずれと、位置ずれした像を補正する内容を説明するための図である。
【
図7】凹凸のある床面に像を表示した場合に生じる像の位置ずれと、位置ずれした像を補正する内容を説明するための他の図である。
【
図8】凹凸のある床面に像を表示した場合に生じる像の位置ずれと、位置ずれした像を補正する内容を説明するためのさらに他の図である。
【
図9】床面の凹凸に応じた補正を行わずに、床面上に像を表示した場合の例を示す図である。
【
図10】床面の凹凸に応じた補正を行い、床面上に像を表示した場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施形態に係る設計図面投影システムの概略構成を示す図である。
図2は、上記設計図面投影システムの機能構成を示すブロック図である。
図1、
図2に示すように、設計図面投影システム1は、システム本体2と、床面状態検出装置3と、投影装置5と、を主に備えている。
図1に示すように、設計図面投影システム1は、建築現場で用いられるもので、建築現場で施工される建築構造物の床面Fに、当該建築構造物の設計図面に基づく像Mを実寸大で投影して表示させる。
【0022】
システム本体2は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置からなる。システム本体2は、予め設定されたコンピュータプログラムに基づいた処理をコンピュータ装置が実行することで、以下に示すような構成を機能的に備えている。
図2に示すように、システム本体2は、データ取得部21と、データ記憶部22と、データ補正部23と、データ出力部24と、を機能的に備えている。
【0023】
データ取得部21は、外部のデータサーバ等から、インターネット、公衆電話通信網等の通信ネットワークを用いたデータ通信、又は可搬性を有したメモリを介して、建築構造物の設計図面の図面データを取得する。データ取得部21は、床面状態検出装置3で検出する床面Fの凹凸量のデータを、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)等の無線データ通信、又はケーブルを介した有線データ通信を介して取得する。データ記憶部22は、データ取得部21で取得した設計図面の図面データ、凹凸量のデータ等を記憶する。
データ補正部23は、後述する床面状態検出装置3で検出される床面Fの凹凸量に基づいて、設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する。データ補正部23は、生成した補正図面データを、データ記憶部22に記憶させる。
データ出力部24は、データ記憶部22に記憶された補正図面データを投影装置5に出力する。
【0024】
図3は、設計図面投影システムを構成する床面状態検出装置で床面の凹凸量を検出している状態を示す側面図である。
図3に示すように、床面状態検出装置3は、床面Fの上下方向における凹凸量を検出する。床面状態検出装置3は、床面Fの投影範囲A内に設定された複数の位置のそれぞれで、床面Fの凹凸量を検出する。投影範囲Aは、予め、床面F上において、後述する投影装置で設計図面に基づく像Mの投影範囲を含むように設定される。床面状態検出装置3では、投影範囲A内において、投影装置5で投影する像のピクセル数(解像度)と同等以上の数の位置で、凹凸量の検出を行うのが好ましい。例えば、投影装置5で投影する像のピクセル数が、4K:3840×2180である場合、床面状態検出装置3では、投影範囲A内を、3840×2180個の各ピクセルに対応した位置で、それぞれ凹凸量の検出を行うのが好ましい。このような床面状態検出装置3としては、例えば、市販の3D(3次元)スキャナを用いることができる。
【0025】
図4は、設計図面投影システムを構成する投影装置で像を床面に投影している状態を示す側面図である。
図4に示すように、投影装置5は、補正図面データに基づいた補正図面に基づく像Mを床面Fに投影して表示させる。投影装置5は、前述したように、例えば3840×2180のピクセル数(解像度)の投影範囲Aに像Mを投影する。投影装置5は、床面F上に設置された基台51上に、投影部52を備えている。投影部52では、床面Fから定められた高さから、斜め下方の床面Fに向けて補正図面に基づく像Mを投影する。このような投影装置5としては、例えば、市販のプロジェクタを用いることができる。
ここで、投影部52を床面Fから例えば約1mの高さに設置し、3840×2180のピクセル数(解像度)の像Mを投影した場合、床面F上における像Mの投影範囲Aの大きさは、約6m×4m程度となる。また、投影部52を床面Fから例えば約2mの高さに設置し、3840×2180のピクセル数(解像度)の像Mを投影した場合、床面F上における像Mの投影範囲Aの大きさは、約10m×5m程度となる。
【0026】
次に、上記したような設計図面投影システム1を用いた設計図面投影方法について説明する。
図5は、本実施形態における設計図面投影方法の流れを示すフローチャートである。
この
図5に示すように、本実施形態における設計図面投影方法は、設計図面の図面データを取得する工程S11と、床面Fに投影する設計図面の範囲を設定する工程S12と、床面Fの凹凸量を検出する工程S13と、補正図面データを生成する工程S14と、補正図面の像Mを床面Fに投影して表示させる工程S15と、墨出し作業を行う工程S16と、を備えている。
【0027】
設計図面の図面データを取得する工程S11では、データ取得部21で、外部のデータサーバ等から、建築対象の建築構造物の設計図面の図面データを取得する。このとき、システム本体2のオペレータは、外部のデータサーバ等に格納されている複数の設計図面の図面データの中から、床面Fに投影すべき設計図面の図面データを選択して取得する。また、取得する図面データは、工程S11を実行する際に最新の設計図面の図面データを取得する。データ取得部21で取得された設計図面の図面データは、データ記憶部22に記憶される。
【0028】
床面Fに投影する設計図面の範囲を設定する工程S12では、まず、投影装置5の投影部52の床面Fからの高さを計測し、システム本体2に入力する。また、工程S11で取得され、データ記憶部22に図面データが記憶された設計図面において、オペレータが床面Fに投影すべき投影範囲Aを設定する。ここで設定する投影範囲Aは、投影装置5で投影可能なピクセル数と、計測した投影装置5の投影部52の床面Fからの高さに基づいたものとなる。
【0029】
床面Fの凹凸量を検出する工程S13では、
図3に示すように、床面状態検出装置3で、床面Fの上下方向における凹凸量を検出する。床面状態検出装置3では、工程S12で設定された投影範囲A内の複数の位置のそれぞれで、床面Fの凹凸量を検出する。床面状態検出装置3では、投影装置5で像Mを投影する投影範囲Aの各ピクセルに対応した複数の位置で、それぞれ、凹凸量の検出を行う。
【0030】
補正図面データを生成する工程S14では、データ補正部23で、工程S13で検出された床面Fの複数の位置における凹凸量に基づいて、設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する。この工程S14では、工程S15で用いる投影装置5の設置位置を含む水平面を基準面Fsとし、工程S13で検出された床面Fの複数の位置における基準面Fsに対する上下方向への凹凸量を算出する。データ補正部23では、複数の位置における基準面Fsに対する凹凸量が、予め定めた閾値(0を含む)よりも大きい場合、その位置における図面データの補正を行う。
具体的には、
図6に示すように、ある位置のピクセルP1で基準面Fsに対して床面Fが上下に凹凸している場合(
図6の例では、下方に凹んでいる)、設計図面に基づいて投影装置5からピクセルP1に向けて、設計図面に基づく像Mを形成する点Qを投影すると、基準面Fsに対して下方に凹んでいる実際の床面Fに表示される点Qrは、投影装置5の投影部52の位置Oから離間する方向にずれる。そこで、データ補正部23では、基準面Fsに対して下方に凹んでいる実際の床面Fにおいて、設計図面に基づく位置の点Qの鉛直下方に点Qvが表示されるよう、投影装置5における点Q’の投影位置を、床面Fに沿った水平方向にずらす。
データ補正部23では、凹凸量が閾値以上である複数の位置のそれぞれにおいて、基準面Fsに対する床面Fの上下方向の高さの差(凹凸量)に基づき、像の投影位置を床面Fに沿った方向にずらす量を算出する。
【0031】
例えば、
図6、
図7に示すように、投影部52の位置Oから、基準面Fsに対して下方に凹んでいる実際の床面Fに表示される点Qrまでの線分OQrの長さr1は、下式(1)で表される。
r1=z1/cosθ (1)
ここで、z1は、投影部52の位置Oを原点とした場合の、鉛直方向に延びるZ軸上における点Qrの位置Oに対する座標値であり、既知の投影部52の設置高さと、工程S13で検出された点Qrの位置における凹凸量とに基づいて得られる既知の値である。θは、Z軸と線分OQr(線分OQ)を含む面における、線分OQrのZ軸に対する傾斜角であり、設計図面に基づいて得られる既知の値である。
【0032】
また、
図8に示すように、点QrのXY平面上における位置座標(x1、y1)は、下式(2)、(3)によって得られる。
x1=r1・sinθ・cosω (2)
y1=r1・sinθ・cosω (3)
ここで、ωは、XY平面における線分OQr(線分OQ)のX軸に対する傾斜角であり、設計図面に基づいて得られる既知の値である。
【0033】
データ補正部23では、XY平面上における、設計図面に基づく本来の点Qの位置座標(x、y)と、点Qrの座標(x1、y1)との差(Δx=x-x1、Δy=y-y1)を、像の投影位置をずらす量(寸法)として算出する。
データ補正部23では、投影装置5における点Q’の投影位置を水平方向にずらす寸法(Δx=x-x1、Δy=y-y1)を、投影装置5で投影する像のピクセル数に換算して算出する。
【0034】
データ補正部23では、上記のようにして算出した、投影装置5で投影する像を形成する各ピクセルの点Q’の位置座標群を、補正データとして生成する。
【0035】
補正図面の像を床面Fに投影して表示させる工程S15では、工程S14で生成された補正図面データに基づいた補正図面の像Mを床面Fに投影して表示させる。これにより、床面Fの凹凸があっても、補正図面の像Mは、設計図面に基づいた正しい位置に表示される。例えば、設計図面上で直線状の像を、上記したような補正を行わず、そのまま凹凸のある床面Fに表示すると、
図9に示すように、像M’は、床面Fの凹凸に応じて歪んだものとなる。これに対し、設計図面上で直線状の像に対し、上記したように、床面Fの凹凸量に応じた補正を行って生成された補正図面に基づく像Mは、
図10に示すように、床面Fの凹凸に関わらず、設計図面通りに直線状に表示される。
【0036】
墨出し作業を行う工程S16では、床面F上に表示された像Mに基づいて、墨出し作業を行う。
【0037】
上述したような設計図面投影システム1は、床面Fに投影すべき設計図面の図面データが記憶されたデータ記憶部22と、床面Fの凹凸量を、床面Fに沿った複数の位置でそれぞれ検出する床面状態検出装置3と、床面状態検出装置3で検出された床面Fの凹凸量に基づいて、図面データを補正し、補正図面データを生成するデータ補正部23と、補正図面データに基づいた補正図面の像Mを床面Fに投影して表示させる投影装置5と、を備える。
このような構成によれば、床面状態検出装置3で検出した床面Fの凹凸量に基づいて、データ補正部23が、設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する。投影装置5では、このような補正図面データに基づいた補正図面の像Mを床面Fに投影して表示させる。これにより、床面Fには、床面Fの凹凸量を踏まえて補正された補正図面に基づく正確な像Mが表示される。したがって、この像Mに基づいて墨出し作業を行えば、墨出しを正確に行うことが可能となる。また、設計図面の図面データを用いるので、設計図面からの情報の読み取りの誤りが生じることが抑えられる。さらに、設計図面の図面データを用いることで、設計図面に変更があった場合であっても、最新の設計図面に基づく補正図面の像を表示させることができる。その結果、凹凸のある床面F上に設計図面の像を正確に表示させることが可能となる。
【0038】
また、床面状態検出装置3は、投影装置5で投影する像のピクセルのそれぞれに対応した床面F上の複数の位置で、凹凸量を検出し、データ補正部23は、像のピクセル毎に図面データを補正する。
このような構成によれば、投影装置5で投影する像のピクセル毎に、床面F上の凹凸量の検出、図面データの補正を行うことで、投影装置5が有する解像度に応じた高い解像度で、床面F上に像を表示させることができる。
【0039】
また、上述したような設計図面投影方法は、設計図面の像を投影する床面Fの凹凸量を、床面Fに沿った複数の位置でそれぞれ検出する工程S13と、床面Fの凹凸量に基づいて、設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する工程S14と、補正図面データに基づいた補正図面の像を床面Fに投影して表示させる工程S15と、を含む。
このような構成によれば、床面Fの凹凸量に基づいて設計図面の図面データを補正し、補正図面データを生成する。このような補正図面データに基づいた補正図面の像Mを床面Fに投影して表示させることで、床面Fには、床面Fの凹凸量を踏まえて補正された補正図面に基づく正確な像Mが表示される。その結果、凹凸のある床面F上に設計図面の像Mを正確に表示させることが可能となる。
【0040】
また、床面Fの凹凸量を検出する工程S13では、像を床面Fに投影して表示させる工程S15で投影する像Mのピクセルのそれぞれに対応した複数の位置で、凹凸量を検出し、補正図面データを生成する工程では、像Mのピクセル毎に図面データを補正する。
このような構成によれば、高い解像度で、床面F上に像Mを表示させることができる。
【0041】
また、補正図面データを生成する工程S14では、補正図面に基づく像Mを床面Fに投影させて表示させる工程S15で用いる投影装置5の設置位置を含む水平面を基準面とし、基準面に対する複数の位置における上下方向の高さの差に基づき、ピクセル毎の像Mの投影位置を床面Fに沿った方向にずらす量を算出する。
このような構成によれば、床面Fの凹凸量に基づいた設計図面データの補正を行い、正確な像を床面F上に表示するための補正図面データを生成することができる。
【0042】
また、上述したような設計図面投影方法は、床面F上に表示された像Mに基づいて、墨出し作業を行う工程S16、をさらに含む。
このような構成によれば、床面Fの凹凸量を踏まえて補正された補正図面に基づく正確な像Mに基づいて墨出し作業を行うことで、墨出しを正確に行うことが可能となる。
【0043】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の設計図面投影システム、設計図面投影方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、データ補正部23を、システム本体2の一機能として備えるようにしたが、データ補正部23を、システム本体2から独立した一つの装置として備えるようにしてもよい。また、データ補正部23を、投影装置5の一つの機能として備えるようにしてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 設計図面投影システム 23 データ補正部
3 床面状態検出装置 F 床面
5 投影装置 Fs 基準面
22 データ記憶部 M 像