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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100993
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】原子炉格納容器ベントシステム
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/004 20060101AFI20220629BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20220629BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20220629BHJP
   G21D 3/04 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 71/06 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20220629BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G21C9/004
G21F9/02 551A
G21D1/00 Y
G21D3/04 P
B01D53/22
B01D71/02 500
B01D71/06
B01D71/68
B01D71/64
B01D71/44
B01D69/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215311
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 公洋
(72)【発明者】
【氏名】松崎 隆久
(72)【発明者】
【氏名】田村 明紀
(72)【発明者】
【氏名】浜田 克紀
【テーマコード(参考)】
2G002
4D006
【Fターム(参考)】
2G002AA01
2G002AA04
2G002BA07
2G002CA01
4D006GA41
4D006MB04
4D006MC01
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC09
4D006MC47
4D006MC58
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB63
4D006PB65
4D006PB66
4D006PB70
4D006PC80
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原子炉格納容器内の気体の一部を外部に排出する原子炉格納容器ベントシステムにおいて、原子炉格納容器内への戻りラインに設置されるブロアを必要最小限のバッテリー容量で、或いはバッテリーを用いることなく駆動可能な高効率な原子炉格納容器ベントシステムを提供する。
【解決手段】原子炉格納容器1内の気体の一部を外部に排出し、原子炉格納容器内を減圧する原子炉格納容器ベントシステムにおいて、原子炉格納容器内に連結された配管で構成されるベントラインと、ベントラインに配設され、放射性希ガスを透過せず、水蒸気を透過する膜フィルタ15と、を備え、ベントラインは、膜フィルタの上流側の配管と原子炉格納容器内とを連結する戻りラインと、戻りラインに配設され、放射性希ガスを原子炉格納容器内に戻す動力機構と、を有し、動力機構は、前記ベントライン内の流動ガスを駆動源とすることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器内の気体の一部を外部に排出し、前記原子炉格納容器内を減圧する原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記原子炉格納容器内に連結された配管で構成されるベントラインと、
前記ベントラインに配設され、放射性希ガスを透過せず、水蒸気を透過する膜フィルタと、を備え、
前記ベントラインは、前記膜フィルタの上流側の配管と前記原子炉格納容器内とを連結する戻りラインと、
前記戻りラインに配設され、前記放射性希ガスを前記原子炉格納容器内に戻す動力機構と、を有し、
前記動力機構は、前記ベントライン内の流動ガスを駆動源とすることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記流動ガスは、前記膜フィルタに対してベントラインの上流側を流れるガスであることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記ベントラインは、前記原子炉格納容器のドライウェルとウェットウェルを接続する配管を有し、
前記流動ガスは、前記ドライウェルとウェットウェルを接続する配管内の流動ガスであることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記動力機構は、バッテリーに接続されていることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記ベントラインは、前記流動ガスにより駆動するタービンを有し、
前記タービンで生成した電気エネルギーにより前記動力機構を駆動することを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記ベントラインは、前記流動ガスにより駆動するタービンを有し、
前記動力機構の回転軸と前記タービンの回転軸が直接接続されていることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記原子炉格納容器は、ドライウェルとウェットウェルを有し、
前記動力機構は、0.32MPa以上のウェットウェル圧力下で、バッテリーからの電力供給を必要とせずに静的に駆動することを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記膜フィルタは、高分子膜、セラミック膜、シリカ膜、炭素膜のいずれかを用いたフィルタであることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記膜フィルタは、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンのいずれかを主成分とする高分子膜を用いたフィルタであることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記膜フィルタは、シリカまたは窒化ケイ素を主成分とするセラミック膜を用いたフィルタであることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記ベントラインは、前記膜フィルタの上流側に放射性物質を除去するフィルタベント装置を有することを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項12】
請求項1に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記原子炉格納容器は、沸騰水型原子炉または加圧水型原子炉の原子炉格納容器であることを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【請求項13】
請求項1に記載の原子炉格納容器ベントシステムにおいて、
前記膜フィルタは、放射性希ガスと窒素を透過せず、水蒸気と水素を透過することを特徴とする原子炉格納容器ベントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの構造に係り、特に、原子炉格納容器内の気体を外部に排出するベントラインの構造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントに備えられた原子炉格納容器の機能の一つに、原子炉圧力容器内に配置された炉心が万一溶融するような事態(以下、過酷事故)が発生し、放射性物質が原子炉圧力容器外に放出されても、放射性物質を原子炉格納容器内に閉じ込めて外部への漏出を防ぐことがある。過酷事故が発生した場合においても、その後に十分な注水が行われ、かつ原子炉格納容器が冷却されれば、事故は収束する。
【0003】
しかし、万が一蒸気の生成が継続し、原子炉格納容器の冷却が不十分な場合、原子炉格納容器が加圧される。原子炉格納容器が加圧された場合は、原子炉格納容器内の気体を大気中に放出し、原子炉格納容器を減圧する場合がある。この操作をベント操作と呼ぶ。この操作を行う場合は、沸騰水型原子炉では、通常、公衆の被ばくが最小限となるように、サプレッションプールのプール水によって放射性物質を除去した上で原子炉格納容器内の気体(以下、ベントガス)を大気中に放出する。
【0004】
沸騰水型原子炉では、上記のようにサプレッションプールのプール水により十分に放射性物質を除去した上で、ベントガスを大気中に放出しているが、このベントガスからさらに放射性物質を取り除くシステムとして原子炉格納容器ベントシステムがある。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1では、原子炉格納容器ベントシステム下流部に、ベントガスからキセノンやクリプトンなど反応性の乏しい放射性希ガスは透過しない膜フィルタを置き、放射性希ガス等は原子炉格納容器内へ戻すことで、大気中に排出するガスが含む放射性物質をさらに減少させるシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-151355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のように、放射性希ガスを透過させない膜フィルタを原子炉格納容器外部に設置するシステムにおいては、原子炉格納容器内部に設置する場合と比べて、膜フィルタの劣化を抑制することができる。
【0008】
一方、大気中に排出する水蒸気や水素以外の窒素や希ガス等のガスの滞留を防ぐため、ブロア等を利用して加圧し、原子炉格納容器内へ戻す必要がある。ベント中のブロアの動力源としては、バッテリーが想定されているが、できるだけ低容量化することが望ましい。
【0009】
そこで、本発明の目的は、原子炉格納容器内の気体の一部を外部に排出する原子炉格納容器ベントシステムにおいて、原子炉格納容器内への戻りラインに設置されるブロアを必要最小限のバッテリー容量で、或いはバッテリーを用いることなく駆動可能な高効率な原子炉格納容器ベントシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、原子炉格納容器内の気体の一部を外部に排出し、前記原子炉格納容器内を減圧する原子炉格納容器ベントシステムにおいて、前記原子炉格納容器内に連結された配管で構成されるベントラインと、前記ベントラインに配設され、放射性希ガスを透過せず、水蒸気を透過する膜フィルタと、を備え、前記ベントラインは、前記膜フィルタの上流側の配管と前記原子炉格納容器内とを連結する戻りラインと、前記戻りラインに配設され、前記放射性希ガスを前記原子炉格納容器内に戻す動力機構と、を有し、前記動力機構は、前記ベントライン内の流動ガスを駆動源とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子炉格納容器内の気体の一部を外部に排出する原子炉格納容器ベントシステムにおいて、原子炉格納容器内への戻りラインに設置されるブロアを必要最小限のバッテリー容量で、或いはバッテリーを用いることなく駆動可能な高効率な原子炉格納容器ベントシステムを実現することができる。
【0012】
これにより、万一過酷事故が発生した場合においても、ブロアの稼働を継続することができ、水蒸気及び水素を外部に放出するとともに、放射性物質を含む気体を原子炉格納容器内に戻すことができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る原子炉格納容器ベントシステムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施例2に係る原子炉格納容器ベントシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の実施例3に係る原子炉格納容器ベントシステムの構成を示す図である。
図4図3の原子炉格納容器ベントシステムにおけるウェットウェル圧力と駆動源の効率の関係を示す図である。
図5】本発明の実施例4に係る原子炉格納容器ベントシステムの構成を示す図である。
図6】本発明の実施例5に係る原子炉格納容器ベントシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0016】
図1を参照して、本発明の実施例1に係る原子炉格納容器ベントシステムについて説明する。
【0017】
図1は、原子炉格納容器1を含む本実施例の原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中の破線囲み内が本実施例の原子炉格納容器ベントシステムである。
【0018】
なお、図1では、原子炉格納容器1内にサプレッションプール8が設置された沸騰水型原子炉の例を示すが、加圧水型原子炉等へ応用することも可能である。
【0019】
本実施例の原子炉格納容器ベントシステムは、原子炉圧力容器が破損するなどの過酷事故時において、原子炉格納容器内のガスを外部に排出することで原子炉格納容器内の圧力を減圧し、またその減圧時に外部に排出されるガスから放射性物質を極力除去するものである。
【0020】
図1に示す本実施例の原子炉格納容器ベントシステムは、改良型沸騰水型原子炉に適用した例であり、以下のようなシステム構成を持っている。原子炉格納容器1内に、炉心2を内包する原子炉圧力容器3が設置されている。原子炉圧力容器3には、原子炉圧力容器3内で発生した蒸気をタービン(図示せず)に送る主蒸気管4が接続されている。
【0021】
原子炉格納容器1内部は、鉄筋コンクリート製のダイヤフラムフロア5によってドライウェル6とウェットウェル7に区画されている。ウェットウェル7は、内部にプール水を貯めている領域のことを言う。このウェットウェル7内のプールのことをサプレッションプール8と呼ぶ。
【0022】
ドライウェル6とウェットウェル7は、ベント管9によって相互に連通されており、ベント管排気部9aは、ウェットウェル7内のサプレッションプール8の水面下に開口している。
【0023】
万が一、配管類の一部が損傷し、原子炉格納容器1内に蒸気が放出される配管破断事故(一般的にLOCAの名称で知られ、配管が通るドライウェル6で発生する)が発生した場合、ドライウェル6の圧力が破断口から流出する蒸気により上昇する。その際、ドライウェル6内に放出された蒸気は、ドライウェル6とウェットウェル7の圧力差により、ベント管9を通ってウェットウェル7内のサプレッションプール8水中に導かれる。
【0024】
サプレッションプール8の水で蒸気を凝縮することで原子炉格納容器1内の圧力上昇を抑制する。この際に蒸気内に放射性物質が含まれていた場合、サプレッションプール8水のスクラビング効果により大半の放射性物質が除去される。
【0025】
同様に、原子炉圧力容器3や主蒸気管4の圧力が高くなった場合も、蒸気をサプレッションプール8に放出し、原子炉圧力容器3や主蒸気管4の圧力を減圧する。またそれと共に、放出した蒸気をサプレッションプール8で凝縮することで原子炉格納容器1の圧力上昇を緩和する。そのための装置として、改良型沸騰水型原子炉では、原子炉格納容器1内のドライウェル6の領域に蒸気逃し安全弁10が設置されている。
【0026】
蒸気逃し安全弁10を通して放出された蒸気は、蒸気逃し安全弁排気管11を通って、最終的にクエンチャ12からサプレッションプール8内に放出され、サプレッションプール8のプール水により凝縮される。蒸気をサプレッションプール8で凝縮して液体の水にすることで、蒸気の体積が大幅に減少し、原子炉格納容器1の圧力上昇を抑制することができる。また、その際に蒸気に放射性物質が含まれている場合、サプレッションプール8の水によるスクラビング効果により大半の放射性物質が除去される。
【0027】
サプレッションプール8で蒸気を凝縮し、サプレッションプール8内のプール水を残留熱除去系(図示せず)で冷却することで、原子炉格納容器1の温度上昇と圧力上昇を防止し、事故を収束させることができる。しかし、非常に低い可能性ではあるが、残留熱除去系が機能を喪失した場合、サプレッションプール8のプール水の温度が上昇する。プール水の温度が上昇するのに伴い、原子炉格納容器1内の蒸気の分圧はプール水の温度の飽和蒸気圧まで上昇するため、原子炉格納容器1の圧力が上昇する。
【0028】
このような圧力上昇が起きた場合、外部から消防ポンプなどを接続して、原子炉格納容器スプレイ系を活用することで、圧力上昇を抑えることが考えられる。しかし、さらに低い可能性ではあるが、これらの機器が動作せず、原子炉格納容器1の圧力が上昇し続けた場合、原子炉格納容器1内の気体を外部に放出することで原子炉格納容器1の圧力上昇を抑えることができる。この操作のことをベント操作と呼ぶ。
【0029】
沸騰水型原子炉では、一般的に、このベント操作をウェットウェル7内の気体を放出することにより行い、サプレッションプール8の水で可能な限り放射性物質を除去した上で、気体を外部に排出する。
【0030】
このベント操作をする上で、外部放出する気体から放射性物質を取り除く装置を原子炉格納容器ベントシステムと呼ぶ。
【0031】
本実施例の原子炉格納容器ベントシステムは、図1に示すように、原子炉格納容器1のウェットウェル7にベント配管13が接続されており、このベント配管13には隔離弁14が配設されている。このベント配管13の下流には、放射性希ガス及び窒素を透過しない膜フィルタ15が接続されている。
【0032】
ウェットウェル7から排出されるガスは、主に放射性希ガス(1)、窒素(2)、水蒸気(3)、水素(4)であり、膜フィルタ15の設置により、水蒸気(3)と水素(4)が選択的に排気塔16から外部へ排出される。
【0033】
膜フィルタ15の下流(原子炉格納容器1内への戻りライン)にはブロア17が設置されており、ベント配管13の下流は原子炉格納容器1に接続されている。膜フィルタ15を透過しない放射性希ガス(1)と窒素(2)については、ブロア17によって加圧され、ベント配管13の原子炉格納容器1内への戻りラインを通して原子炉格納容器1へ戻される。ブロア17が無い場合、膜フィルタ15付近に放射性希ガス(1)と窒素(2)が滞留し、本システムの機能が低下する。
【0034】
ベント配管13の原子炉格納容器1との接続部とブロア17との間には、逆止弁18が設けられており、原子炉格納容器1からのガスの逆流を防いでいる。なお、放射性希ガス及び窒素を透過しない膜フィルタ15としては、ポリイミドを主成分とした高分子膜等を利用することが考えられる。
【0035】
ブロア17には、電動機19が接続されており、電動機19にはバッテリー20が接続されている。バッテリー20の電気エネルギーでブロア17を駆動するが、バッテリー20は、低容量化することが望ましい。これは、バッテリー20の故障時の影響緩和にも貢献する。
【0036】
そこで、本実施例の原子炉格納容器ベントシステムでは、図1に示すように、ベント配管13の上流に、タービン21を設置し、原子炉格納容器1から排出された流動ガスを駆動源としてタービン21を稼働する。タービン21には発電機22が接続されており、発電機22はバッテリー20に接続されている。
【0037】
したがって、ベント配管13内の流動ガスのエネルギーをタービン21及び発電機22で電気エネルギーに変換してバッテリー20に蓄え、このエネルギーでブロア17を駆動することとなる。
【0038】
タービン21を駆動する流動ガスは、放射性希ガス(1)、窒素(2)、水蒸気(3)、水素(4)の混合ガスであり、ブロア17で原子炉格納容器1に戻すガスは、膜フィルタ15を透過しなかった放射性希ガス(1)と窒素(2)のみであるため、質量流量が減少しており、エネルギー収支の関係から、ブロア17の駆動源となり得る。以上の構成により、バッテリー20の低容量化が可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施例の原子炉格納容器ベントシステムは、原子炉格納容器1内の気体の一部を外部に排出し、原子炉格納容器1内を減圧する原子炉格納容器ベントシステムであり、原子炉格納容器1内に連結された配管(ベント配管13)で構成されるベントラインと、ベントラインに配設され、放射性希ガスを透過せず、水蒸気を透過する膜フィルタ15を備えており、ベントラインは、膜フィルタ15の上流側の配管(ベント配管13)と原子炉格納容器1内とを連結する戻りラインと、戻りラインに配設され、放射性希ガスを原子炉格納容器1内に戻す動力機構(ブロア17)を有しており、動力機構(ブロア17)は、ベントライン内の流動ガスを駆動源とする。
【0040】
また、その流動ガスは、膜フィルタ15に対してベントラインの上流側を流れるガスである。
【0041】
また、動力機構(ブロア17)は、電動機19及びバッテリー20に接続されている。
【0042】
また、ベントラインは、流動ガスにより駆動するタービン21と、タービン21により発電する発電機22を有しており、発電機22で発電した電気エネルギーにより動力機構(ブロア17)を駆動する。
【0043】
なお、放射性希ガスと窒素を透過せず、水蒸気と水素を透過する膜フィルタ15としては、上述したポリイミドを主成分とした高分子膜を用いたフィルタ以外にも、セラミック膜、シリカ膜、炭素膜を用いたフィルタや、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とする高分子膜を用いたフィルタ、シリカまたは窒化ケイ素を主成分とするセラミック膜を用いたフィルタ等が挙げられる。
【実施例0044】
図2を参照して、本発明の実施例2に係る原子炉格納容器ベントシステムについて説明する。
【0045】
図2は、原子炉格納容器1を含む本実施例の原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中の破線囲み内が本実施例の原子炉格納容器ベントシステムである。原子炉格納容器1の構成や、膜フィルタ15やベント配管13等の基本構成は実施例1と略同様であり、ここでは主に実施例1との違いを説明する。
【0046】
本実施例の原子炉格納容器ベントシステムでは、図2に示すように、ドライウェル6とウェットウェル7が原子炉格納容器1の外部の配管23で接続されている。ドライウェル6側の配管23には隔離弁14bが配設されており、ウェットウェル7側の配管23には逆止弁18bが配設されている。
【0047】
配管23には、ドライウェル6からウェットウェル7に流れる流動ガスを駆動源として稼働するタービン21が接続されている。配管23内を流れる放射性希ガス(1)、窒素(2)、水蒸気(3)、水素(4)の混合ガスは、ドライウェル6とウェットウェル7の差圧でドライウェル6からウェットウェル7へ流動するが、この気体の圧力エネルギー(流動ガスのエネルギー)をタービン21及び発電機22で電気エネルギーに変換してバッテリー20に蓄え、実施例1と同様にブロア17の駆動源としている。
【0048】
なお、本構成はドライウェル6から排出した混合ガスをサプレッションプール8の水でスクラビングする効果もある。
【実施例0049】
図3及び図4を参照して、本発明の実施例3に係る原子炉格納容器ベントシステムについて説明する。
【0050】
図3は、原子炉格納容器1を含む本実施例の原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中の破線囲み内が本実施例の原子炉格納容器ベントシステムである。原子炉格納容器1の構成や、膜フィルタ15やベント配管13等の基本構成は実施例1と略同様であり、ここでは主に実施例1との違いを説明する。
【0051】
本実施例の原子炉格納容器ベントシステムでは、図3に示すように、ブロア17の回転軸24が延長され、タービン21の回転軸に直接接続されている。これにより、タービン21の回転が直接ブロア17の駆動源となる。
【0052】
ブロア17とタービン21を直接接続しているため、物理的な配置の制限が生じるが、実施例1や実施例2と比べてエネルギー転換(損失)が少なくなり、駆動源のエネルギー効率が高くなる。
【0053】
また、ベント配管13の配管径を大きくして混合ガスの流速を下げる等の工夫で、システム全体の圧損を小さくすれば、ブロア17の静的駆動も可能となる。
【0054】
ブロア17の静的駆動に関して、図4を用いて説明する。図4は、代表的なベントシーケンスにおいて、システムの圧損が小さい場合のウェットウェルの圧力に対するブロア17の静的駆動に必要な駆動源の効率を示している。
【0055】
図4において、静的駆動に必要な駆動源の効率は、ウェットウェルの圧力が小さくなるにつれて高くなる。これは、ベントが進み、ウェットウェルの圧力が下がるにつれて、ウェットウェルから排出される混合ガス中の水蒸気の割合が下がる、すなわち、ブロア17で戻す窒素(2)の相対量が多くなるためである。
【0056】
一般的な蒸気駆動のタービンの効率は0.8程度、ブロアの効率は0.7程度のため、一般的に期待できる駆動源の効率は、掛け合わせて0.56程度となる。
【0057】
図4から、本システムの静的駆動が可能な範囲は0.32MPa以上である。すなわち、ベント開始からウェットウェルの圧力が0.32MPaへ下がるまで静的駆動が可能である。
【0058】
なお、ウェットウェルの圧力が0.32MPa以下となり、ベントが持続できないと水蒸気が原子炉格納容器内で溜まり、ウェットウェルの圧力0.32MPa以上となれば再度静的駆動することが考えられる。
【実施例0059】
図5を参照して、本発明の実施例4に係る原子炉格納容器ベントシステムについて説明する。
【0060】
図5は、原子炉格納容器1を含む本実施例の原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中の破線囲み内が本実施例の原子炉格納容器ベントシステムである。原子炉格納容器1の構成や、膜フィルタ15やベント配管13等の基本構成は実施例1と略同様であり、ここでは主に実施例1との違いを説明する。
【0061】
本実施例の原子炉格納容器ベントシステムでは、図5に示すように、膜フィルタ15の上流に、原子炉格納容器1から排出された混合ガスから放射性物質を除去するためのフィルタベント装置25が設置されている。フィルタベント装置25は、水を内包するタンクや放射性物質を除去するフィルタ等を含む装置である。
【0062】
また、ベント配管13の上流は2系統に分岐しており、それぞれドライウェル6,ウェットウェル7に接続されている。ドライウェル6に接続されているベント配管13には隔離弁14cが配設されており、ウェットウェル7に接続されているベント配管13には隔離弁14dが配設されている。
【0063】
本実施例は、上記のように構成されており、ドライウェル6から排出されるガスと、ウェットウェル7から排出されるガスの両方を利用して、タービン21及び発電機22で電気エネルギーを生成してバッテリー20に蓄え、ブロア17の駆動源としている。
【0064】
また、膜フィルタ15の上流のベント配管13にフィルタベント装置25を設置することにより、フィルタベント装置25での圧損を考慮する必要はあるが、さらなる放射性物質の除去が期待できる。
【実施例0065】
図6を参照して、本発明の実施例5に係る原子炉格納容器ベントシステムについて説明する。
【0066】
図6は、原子炉格納容器1を含む本実施例の原子炉格納容器ベントシステムの概略構成を示す縦断面図である。図中の破線囲み内が本実施例の原子炉格納容器ベントシステムである。本実施例は、実施例1(図1)の原子炉格納容器ベントシステムを加圧水型原子炉に適用した例である。
【0067】
図6に示すように、加圧水型原子炉は原子炉格納容器1の圧力上昇を抑えるためのウェットウェル7とサプレッションプール8を持たないため、サプレッションプール8によるスクラビングを用いた放射性物質の除去は期待できない。また、実施例2(図2)のように、ドライウェル6からウェットウェル7へ流動するガスをブロア17の駆動源にすることはできない。なお、タービン21の下流に湿分分離機29を設けており、膜フィルタ15から排出されるガスの湿分を分離している。本構成は、実施例1から4で設けても構わない。その他の構成は、実施例1(図1)と略同様である。
【0068】
しかしながら、本実施例のように、加圧水型原子炉に本発明の原子炉格納容器ベントシステムを適用することで、実施例1と同様に、万一過酷事故が発生した場合においても、ブロア17の稼働を継続することができ、水蒸気(3)及び水素(4)を外部に放出するとともに、放射性希ガス(1)及び窒素(2)を原子炉格納容器1内に戻すことができる。
【0069】
なお、実施例3(図3)のようにブロア17の回転軸24を延長してタービン21に直接接続したり、実施例4(図5)のようにフィルタベント装置25を設けても構わない。
【0070】
また、実施例1から実施例5は、本発明の原子炉格納容器ベントシステムを軽水炉(沸騰水型原子炉、加圧水型原子炉)に適用した例であるが、重水炉や黒鉛炉、ガス炉に適用してもよい。また、いわゆる第4世代原子炉と呼ばれる高温ガス炉、超臨界圧軽水冷却炉、溶融塩炉、ガス冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛冷却高速炉など他の炉型に適用してもよい。
【0071】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…原子炉格納容器、2…炉心、3…原子炉圧力容器、4…主蒸気管、5…ダイヤフラムフロア、6…ドライウェル、7…ウェットウェル、8…サプレッションプール、9…ベント管、9a…ベント管排気部、10…蒸気逃し安全弁、11…蒸気逃し安全弁排気管、12…クエンチャ、13…ベント配管、14,14a,14b,14c,14d…隔離弁、15…(放射性希ガス及び窒素を透過しない)膜フィルタ、16…排気塔、17…ブロア、18,18a,18b…逆止弁、19…電動機、20…バッテリー、21…タービン、22…発電機、23…配管、24…(ブロア及びタービンの)回転軸、25…フィルタベント装置、26…加圧器、27…蒸気発生器、28…再循環ポンプ、29…湿分分離機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6