(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100999
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215322
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野倉 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】花井 栄司
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 幸久
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA14
3D030DB12
(57)【要約】
【課題】操作性の高いステアリングホイールを提供する。
【解決手段】ステアリングホイール20は、車両を操舵する際にリム部23を把持した状態で回転操作される。ステアリングホイール20は、リム部23の内周面において部分的に張り出す形状のフィンガーレスト28を有し、フィンガーレスト28の外面に親指を添えた状態でリム部23を把持することが可能になっている。ステアリングホイール20は、車両の操舵態様に応じてフィンガーレスト28の張り出し量を変更するための変更機構40および作動装置50を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物を操舵する際にリム部を把持した状態で回転操作されるステアリングホイールであって、
前記リム部の内周面において部分的に張り出す形状をなし、且つ、該張り出す部分の外面に親指を添えた状態で前記リム部を把持することの可能な形状をなすフィンガーレストと、
前記乗物の操舵態様の変更に応じて、前記フィンガーレストにおける前記張り出す部分の張り出し量を変更する内側変更部と、
を有するステアリングホイール。
【請求項2】
前記乗物は車両であり、
前記操舵態様としては、前記車両のスポーツ走行時に設定されるスポーツモードと、前記車両の通常走行時に設定される通常モードと、を有しており、
前記内側変更部は、前記スポーツモードの設定時には前記張り出し量を正の値にするとともに、前記通常モードの設定時には前記張り出し量を「0」にするものである
請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記リム部の外周面において部分的に張り出す形状をなし、且つ、該張り出す部分の外面に手の平を添えた状態で前記リム部を把持することの可能な形状をなすパームレストと、
前記乗物の操舵態様の変更に応じて、前記パームレストにおける前記張り出す部分の張り出し量を変更する外側変更部と、を有する
請求項1または2に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記乗物は車両であり、
前記操舵態様としては、前記車両のスポーツ走行時に設定されるスポーツモードと、前記車両の通常走行時に設定される通常モードと、を有しており、
前記外側変更部は、前記スポーツモードの設定時には前記張り出し量を正の値にするとともに、前記通常モードの設定時には前記張り出し量を「0」にするものである
請求項3に記載のステアリングホイール。
【請求項5】
前記リム部に沿って延びるアーム状をなし、且つ、該延びる方向における中間部分が前記リム部に回動可能に支持され、且つ、一方の端部が前記フィンガーレストを構成するとともに他方の端部が前記パームレストを構成する可動部材を有し、
前記内側変更部および前記外側変更部は、前記リム部に対する前記可動部材の回動位置を変更するものである
請求項3または4に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの乗物の操舵装置に用いられるステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、進行方向を変更する際に回転操作されるステアリングホイールが設けられている。ステアリングホイールは、運転者が握る部分であるリム部を有している。
近年、ステアリングホイールのリム部における内周側の部分に、部分的に張り出した形状のフィンガーレストを設けることが実用されている(特許文献1参照)。フィンガーレストの手前側の面に親指を添えるようにしてステアリングホイールのリム部を握ることにより、運転者は、ステアリングホイールをしっかりホールドすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリングホイールは、基本的には、運転者によってしっかりホールドされた状態で回転操作されることが望ましい。とはいえ、低速での車両走行に際して操舵角を比較的大きくする態様でステアリングホイールを操作する状況など、状況によっては、ステアリングホイールの握り方に、ある程度の自由度が求められる場合がある。このことから、ステアリングホイールのリム部にフィンガーレストを設けることが、必ずしも、ステアリングホイールの操作性の向上に繋がるとは云えない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのステアリングホイールは、乗物を操舵する際にリム部を把持した状態で回転操作されるステアリングホイールであって、前記リム部の内周面において部分的に張り出す形状をなし、且つ、該張り出す部分の外面に親指を添えた状態で前記リム部を把持することの可能な形状をなすフィンガーレストと、前記乗物の操舵態様の変更に応じて、前記フィンガーレストにおける前記張り出す部分の張り出し量を変更する内側変更部と、を有する。
【0006】
上記構成によれば、ステアリングホイールをしっかりホールドした方がよい操舵態様においてはフィンガーレストの張り出し量を大きくすることができる。この場合には、フィンガーレストを利用してリム部をしっかりホールドすることができる。しかも、ステアリングホイールの握り方に自由度が求められる操舵態様においては、フィンガーレストの張り出し量を「0」にする等、小さくすることができる。この場合には、フィンガーレストによって制限されることを抑えて、高い自由度でステアリングホイールのリム部を握ることができる。このように上記構成によれば、フィンガーレストの張り出し量を、そのときどきの操舵態様に見合う量になるように変更することができる。したがって、ステアリングホイールの操作性を向上させることができる。
【0007】
上記ステアリングホイールにおいて、前記乗物は車両であり、前記操舵態様としては、前記車両のスポーツ走行時に設定されるスポーツモードと、前記車両の通常走行時に設定される通常モードと、を有しており、前記内側変更部は、前記スポーツモードの設定時には前記張り出し量を正の値にするとともに、前記通常モードの設定時には前記張り出し量を「0」にするものである。
【0008】
スポーツモードでは、ステアリングホイールを持ち替えたりせず、同ステアリングホイールをしっかりホールドすることが求められる。上記構成によれば、そうしたスポーツモードの設定時に、リム部の内周面においてフィンガーレストが張り出した状態にすることができるため、同フィンガーレストを利用してステアリングホイールをしっかりホールドすることができる。
【0009】
通常モードでは、ステアリングホイールを持ち替えつつ回転操作するなど、様々な操作状況が想定されるため、ステアリングホイールの握り方に、ある程度の自由度が求められる。上記構成によれば、そうした通常モードの設定時に、リム部の内周面においてフィンガーレストが張り出していない状態にすることができる。そのため、フィンガーレストによる制限をなくして、高い自由度でステアリングホイールのリム部を握ることができる。
【0010】
上記ステアリングホイールにおいて、前記リム部の外周面において部分的に張り出す形状をなし、且つ、該張り出す部分の外面に手の平を添えた状態で前記リム部を把持することの可能な形状をなすパームレストと、前記乗物の操舵態様の変更に応じて、前記パームレストにおける前記張り出す部分の張り出し量を変更する外側変更部と、を有することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、ステアリングホイールをしっかりホールドした方がよい操舵態様においてはパームレストの張り出し量を大きくすることができるため、このパームレストを利用してリム部をしっかりホールドすることができる。しかも、ステアリングホイールの握り方に自由度が求められる操舵態様においては、パームレストの張り出し量を、「0」にする等して小さくすることができる。この場合には、パームレストによって制限されることを抑えて、高い自由度でステアリングホイールのリム部を握ることができる。
【0012】
上記ステアリングホイールにおいて、前記乗物は車両であり、前記操舵態様としては、前記車両のスポーツ走行時に設定されるスポーツモードと、前記車両の通常走行時に設定される通常モードと、を有しており、前記外側変更部は、前記スポーツモードの設定時には前記張り出し量を正の値にするとともに、前記通常モードの設定時には前記張り出し量を「0」にするものである。
【0013】
上記構成によれば、スポーツモードの設定時には、リム部の外周面においてパームレストが張り出した状態にすることができるため、同パームレストを利用してステアリングホイールをしっかりホールドすることができる。
【0014】
しかも、通常モードの設定時には、リム部の外周面においてパームレストが張り出していない状態にすることができるため、パームレストによる制限をなくして、高い自由度でステアリングホイールのリム部を握ることができる。
【0015】
上記ステアリングホイールにおいて、前記リム部に沿って延びるアーム状をなし、且つ、該延びる方向における中間部分が前記リム部に回動可能に支持され、且つ、一方の端部が前記フィンガーレストを構成するとともに他方の端部が前記パームレストを構成する可動部材を有し、前記内側変更部および前記外側変更部は、前記リム部に対する前記可動部材の回動位置を変更するものであることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、一つの部材(可動部材)を回動させることによって、フィンガーレストの張り出し量とパームレストの張り出し量とを一括変更することができる。そのため、フィンガーレスト用の部材とパームレスト用の部材とを各別に作動させる構造のものと比較して、ステアリングホイールを簡素な構造にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ステアリングホイールの操作性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】張り出し状態のステアリングホイールの正面図。
【
図2】非張り出し状態のステアリングホイールの正面図。
【
図4】(a)および(b)張り出し状態のステアリングホイールの内部構造を示す略図。
【
図5】(a)および(b)非張り出し状態のステアリングホイールの内部構造を示す略図。
【
図7】モータ制御処理の実行手順を示すフローチャート。
【
図8】張り出し状態のステアリングホイールの作用図。
【
図9】非張り出し状態のステアリングホイールの作用図。
【
図10】変形例のステアリングホイールにおいて張り出し状態と非張り出し状態とを切り替える手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ステアリングホイールの一実施形態について説明する。
図1および
図2に示すように、ステアリングホイール20はハブ部21を有している。ハブ部21はステアリングホイール20の中央に配置されている。ハブ部21はステアリングシャフト22に連結されている。
【0020】
ステアリングホイール20はリム部23を有している。リム部23は上記ハブ部21の周囲において延びる環状をなしている。リム部23はステアリングホイール20の回転中心、すなわちステアリングシャフト22の軸心の周囲において延びる略円環状をなしている。車両を操舵する際には、運転者によってリム部23が把持された状態でステアリングホイール20が回転操作される。
【0021】
ステアリングホイール20は3つのスポーク部24R,24L,24Bを有している。これらスポーク部24R,24L,24Bはハブ部21とリム部23とを一体に連結するものである。詳しくは、ステアリングホイール20の回転操作位相が車両を直進させる直進操作位相になった状態(
図1に示す状態)で、ハブ部21の右側に配置されるスポーク部24Rと、左側に配置されるスポーク部24Lと、下側に配置されるスポーク部24Bとを有している。
【0022】
ステアリングホイール20の各部は、基本的には、金属材料によって形成されて骨格部分を構成する芯金25と、樹脂材料によって形成されて同芯金25を被覆する被覆部材とによって構成されている。詳しくは、ハブ部21およびスポーク部24R,24L,24Bは、金属材料からなる芯金25が、硬質の樹脂材料からなるカバー部材26によって覆われた構造になっている。また、リム部23は、芯金25における略円環状をなす部分と、同部分を被覆する表皮27とによって構成されている。表皮27はゴム弾性を有する伸縮材料(本実施形態では、シリコーンゴム)によって構成されている。
【0023】
図1に示すように、ステアリングホイール20はフィンガーレスト28を有している。フィンガーレスト28は、リム部23の内周面において部分的に張り出した形状をなしている。フィンガーレスト28はステアリングホイール20を正面から見た状態で略三角山形状をなしている。フィンガーレスト28は、外面に親指を添えた状態でリム部23を把持することの可能な形状をなしている。フィンガーレスト28は、運転者がリム部23を握ったときに同フィンガーレスト28の手前側の面に親指を添えた状態にすることのできる位置に設けられている。フィンガーレスト28は、詳しくは、前記直進操作位相のステアリングホイール20においてスポーク部24R,24Lよりも上方側の位置であり、且つステアリングシャフト22の斜め上方の位置に設けられている。フィンガーレスト28は、直進操作位相のステアリングホイール20においてハブ部21の右側にあたる位置と左側にあたる位置とにそれぞれ設けられている。
【0024】
ステアリングホイール20はパームレスト29を有している。パームレスト29は、リム部23の外周面において部分的に張り出した形状をなしている。パームレスト29は、ステアリングホイール20を正面から見た状態で略三角山形状をなしている。パームレスト29は、外面に手の平を添えた状態でリム部23を把持することの可能な形状をなしている。パームレスト29は、運転者がリム部23を握ったときに同パームレスト29の手前側の面に手の平を添えた状態にすることのできる位置に設けられている。パームレスト29は、詳しくは、直進操作位相のステアリングホイール20においてスポーク部24R,24L,24Bよりも下方側の位置であり、且つステアリングシャフト22の斜め下方の位置に設けられている。パームレスト29は、直進操作位相のステアリングホイール20においてハブ部21の右側にあたる位置と左側にあたる位置とにそれぞれ設けられている。
【0025】
本実施形態では、車両の走行モードとして、市街地走行などの通常走行時において選択される通常モードと、加速性能等の走行性能を重視する走行時において選択されるスポーツモードとが設定されている。
【0026】
車室内には、スポーツモードを選択する場合に操作されるスポーツモードスイッチ30と、通常モードを選択する場合に操作される通常モードスイッチ31とが設けられている。車両は、例えばマイクロコンピュータを中心に構成される電子制御装置32を有している。スポーツモードスイッチ30および通常モードスイッチ31は電子制御装置32に接続されている。
【0027】
そして、運転者によってスポーツモードスイッチ30が操作されると、車両の走行モードとしてスポーツモードが設定される。この場合には、電子制御装置32により、走行性能を重視する走行に適した実行態様で車両の運転制御が実行される。一方、運転者によって通常モードスイッチ31が操作されると、車両の走行モードとして通常モードが設定される。この場合には、電子制御装置32により、市街地走行などの通常走行に適した実行態様で車両の運転制御が実行される。
【0028】
本実施形態では、前記フィンガーレスト28およびパームレスト29がリム部23の外面から張り出している張り出し状態(
図1に示す状態)と、同リム部23の外面から張り出していない非張り出し状態(
図2に示す状態)とを切り替えることが可能になっている。本実施形態では、詳しくは、フィンガーレスト28およびパームレスト29が、スポーツモードの設定時においては上記張り出し状態(張り出し量≧0)にされる一方、通常モードの設定時においては上記非張り出し状態(張り出し量=0)にされる。
【0029】
以下、フィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出した状態と張り出していない状態とを切り替えるための構成について説明する。
図3~
図5に示すように、ステアリングホイール20には、可動部材41、案内ローラ42、可動プレート43、およびプレート案内溝44を有する変更機構40が設けられている。
図4および
図5に示すように、変更機構40は、直進操作位相のステアリングホイール20におけるリム部23の右側部分と左側部分とにそれぞれ設けられている。これら変更機構40は、芯金25の内部に収容される態様で設けられている。
【0030】
上記可動部材41はリム部23に沿って延びるアーム状をなしている。可動部材41の延設方向における中間部分45は芯金25に回動可能に支持されている。可動部材41の一方の端部、具体的には
図4における上方側の端部(以下、第1端部46)が前記フィンガーレスト28の一部を構成するようになっている。また、可動部材41の他方の端部、具体的には
図4における下方側の端部(以下、第2端部47)が前記パームレスト29の一部を構成するようになっている。
【0031】
本実施形態では、芯金25における上記第1端部46の内周側の部分と同芯金25における上記第2端部47の外周側の部分とにはそれぞれ、芯金25の内外を連通する貫通孔(図示略)が形成されている。そして、
図4に示すように、可動部材41が一方(同図にCで示す方向)に回動すると、第1端部46の内周側の端部が、芯金25の貫通孔に挿通された状態になるとともに表皮27を内周側に弾性変形させた状態になる。これにより、リム部23における上記可動部材41の第1端部46にあたる部分が内周側に張り出した状態になってフィンガーレスト28を構成するようになる。また、このとき第2端部47の外周側の端部が、芯金25の貫通孔に挿通された状態になるとともに表皮27を外周側に弾性変形させた状態になる。これにより、リム部23における上記可動部材41の第2端部47にあたる部分が外周側に張り出した状態になってパームレスト29を構成するようになる。
【0032】
図5に示すように、可動部材41が他方(同図にFで示す方向)に回動すると、第1端部46および第2端部47が芯金25の内部に引き込まれた状態になるとともに表皮27が弾性復元力によって外方に張り出していない状態になる。これにより、リム部23における上記可動部材41の第1端部46にあたる部分が内周側に張り出していない状態になるとともに上記可動部材41の第2端部47にあたる部分が外周側に張り出していない状態になる。このときフィンガーレスト28およびパームレスト29は非張り出し状態になる。
【0033】
このように本実施形態のステアリングホイール20では、可動部材41を回動させてリム部23に対する可動部材41の回動位置を変更することによって、フィンガーレスト28の張り出し量とパームレスト29の張り出し量とが一括変更されるようになっている。
【0034】
図4および
図5に示すように、変更機構40の案内ローラ42は、可動部材41の第1端部46に設けられている。案内ローラ42は、上記可動部材41の裏面(
図4の紙面奥側の面)に回転可能な態様で立設されている。案内ローラ42の回転中心はステアリングシャフト22の軸線に沿って延びている。
【0035】
変更機構40の可動プレート43は、芯金25の内部における上記案内ローラ42に隣接する位置に配置されている。可動プレート43は上記リム部23に沿って延びる円弧板状をなしている。可動プレート43の手前側(
図4の紙面手前側)の面には案内凹部49が形成されている。変更機構40は、この案内凹部49に可動部材41の案内ローラ42が係合する構造になっている。案内凹部49は、可動プレート43における内周側の部分を占める態様で設けられており、リム部23の径方向における幅が上方に向かうに連れて狭くなる形状をなしている。
【0036】
変更機構40のプレート案内溝44は、リム部23に沿って延びる円弧状の溝であり、芯金25の内部に形成されている。このプレート案内溝44は第1端部46および可動プレート43に対応する位置に設けられている。プレート案内溝44の内部には上記可動プレート43が収容されている。本実施形態では、可動プレート43がプレート案内溝44の内部において上記リム部23の延設方向に往復移動可能になっている。
【0037】
以下、上記変更機構40の作動態様について説明する。
図4に示すように、可動プレート43がプレート案内溝44の内部において下方側に移動すると、可動プレート43が案内凹部49の外周側の段差面49Aによって案内ローラ42を押し退けつつ進むようになる。そのため、案内ローラ42が同案内凹部49の内周側に脱出した状態になる。これに伴い、ハブ部21の左側に設けられた可動部材41Lは時計回り方向に回転した状態になり、ハブ部21の右側に設けられた可動部材41Rは反時計回り方向に回転した状態になる。これにより、ハブ部21の左右両側において、フィンガーレスト28およびパームレスト29がリム部23の外面において張り出した状態になる。
【0038】
図5に示すように、可動プレート43がプレート案内溝44の内部において上方側に移動すると、表皮27の弾性復元力によって可動部材41の案内ローラ42が案内凹部49の段差面49Aに押し付けられた状態を保持しつつ、可動プレート43が進むようになる。これにより、案内ローラ42が可動プレート43の案内凹部49の段差面49Aによって案内されて、同案内凹部49の内部に収まった状態(
図5に示す状態)になる。このときには、ハブ部21の左側に設けられた可動部材41Lが反時計回り方向に回転した状態になり、ハブ部21の右側に設けられた可動部材41Rは時計回り方向に回転した状態になる。これにより、フィンガーレスト28およびパームレスト29がリム部23の外面において張り出していない状態になる。
【0039】
本実施形態の変更機構40では、可動プレート43を移動させることによって、リム部23の外面においてフィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出した張り出し状態と、張り出していない非張り出し状態とを切り替え可能になっている。
【0040】
図3~
図6に示すように、ステアリングホイール20は、上記可動プレート43の回動位置を変更するための作動装置50を有している。
作動装置50は、動力源としての電動モータ51、第1変換ギア機構52、第2変換ギア機構53、および操作ワイヤー54を有している。
【0041】
図6に示すように、第1変換ギア機構52は、斜歯歯車機構によって構成されており、電動モータ51の出力軸の回転を同出力軸と直交する方向の回転に変換して出力するものである。
【0042】
第2変換ギア機構53は、ラックアンドピニオン機構によって構成されており、第1変換ギア機構52から出力される回転運動を、リム部23に沿う方向における往復直線運動に変換して出力するものである。第2変換ギア機構53は、第1変換ギア機構52の出力軸に連結されたピニオンギア55と、同ピニオンギア55に噛み合う一対のラックギア56R,56Lとによって構成されている。これらラックギア56R,56Lは、ピニオンギア55を間に挟む態様で、リム部23に沿って平行に延びている。
【0043】
本実施形態では、第1変換ギア機構52および第2変換ギア機構53がケース57の内部に収容されている。また、上記電動モータ51はケース57の外面に固定されている。このケース57は芯金25に固定されている。これにより、作動装置50はステアリングホイール20に固定されている。本実施形態では、作動装置50はスポーク部24B(
図3参照)の内部に配置されている。
【0044】
作動装置50では、ラックギア56R,56Lの両端がケース57の外部に突出した状態になっている。
そして、
図4~
図6に示すように、一方のラックギア56Rにおけるケース57外に露出した部分が、操作ワイヤー54Rを介して、ハブ部21の右側に配設された変更機構40Rの可動プレート43に連結されている。また、他方のラックギア56Lにおけるケース57外に露出した部分が、操作ワイヤー54Lを介して、ハブ部21の左側に配置された変更機構40Lの可動プレート43に連結されている。なお、芯金25の内部には、作動装置50が配設された部分から左右の変更機構40R,40L(詳しくは、その可動プレート43)が配設された部分まで延びる溝が設けられている。上記操作ワイヤー54R,54Lは、この溝に収容された状態で配設されている。なお本実施形態では、変更機構40および作動装置50が、内側変更部および外側変更部に相当する。
【0045】
電動モータ51は電子制御装置32に接続されている。電子制御装置32は、そのときどきにおいて設定されている車両の走行モードに応じて、電動モータ51の作動制御を実行する。
【0046】
以下、電動モータ51の作動制御にかかる処理(モータ制御処理)の実行態様について、
図7を参照しつつ説明する。
図7はモータ制御処理の実行手順を示しており、同図のフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、電子制御装置32によって実行される。
【0047】
図7に示すように、スポーツモードスイッチ30の操作を通じてスポーツモードが設定されると(ステップS11:YES)、フィンガーレスト28およびパームレスト29がリム部23の外面から張り出した状態にされる(ステップS12)。
【0048】
この処理では、詳しくは、
図4中に矢印Aで示すように、第2変換ギア機構53の2つのラックギア56R,56Lをこれに対応する変更機構40R,40Lから離間させる態様で、電動モータ51が第1回転方向に回転駆動される。これにより、
図4中に矢印Bで示すように、各変更機構40R,40Lの可動プレート43が操作ワイヤー54R,54Lによって引っ張られて下方に移動するようになる。その結果、
図4中に矢印Cで示すように、各変更機構40R,40Lの可動部材41が回転して、ステアリングホイール20の左右両側においてフィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出した状態になる。
【0049】
一方、通常モードスイッチ31の操作を通じて通常モードが設定されると(
図7のステップS11:NO、且つステップS13:YES)、フィンガーレスト28およびパームレスト29が非張り出し状態にされる(ステップS14)。
【0050】
この処理では、詳しくは、
図5中に矢印Dで示すように、第2変換ギア機構53のラックギア56R,56Lをこれに対応する変更機構40R,40Lに近づける態様で、電動モータ51が第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転駆動される。これにより、
図5中に矢印Eで示すように、各変更機構40R,40Lの可動プレート43が操作ワイヤー54R,54Lによって押し進められて上方に移動する。その結果、
図5中に矢印Fで示すように、各変更機構40R,40Lの可動部材41が回転するようになる。これにより、ステアリングホイール20の左右両側においてフィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出していない非張り出し状態になる。
【0051】
他方、スポーツモードスイッチ30が操作されたタイミングではなく(
図7のステップS11:NO)、且つ通常モードスイッチ31が操作されたタイミングでもない場合には(ステップS13:NO)、電動モータ51は回転駆動されない。
【0052】
以下、本実施形態のステアリングホイール20による作用効果について説明する。
スポーツモードでの車両走行時においては、ステアリングホイール20を持ち替えたりすることなく、同ステアリングホイール20をしっかりホールドすることが求められる。
【0053】
本実施形態では、スポーツモードの設定時においては、
図8に示すように、リム部23の内周面においてフィンガーレスト28が張り出した状態になるとともに、同リム部23の外周面においてパームレスト29が張り出した状態になる。この状態においては、運転者の手によって、フィンガーレスト28の配設部分やパームレスト29の配設部分を含む広い範囲でステアリングホイール20のリム部23を押さえつつ同リム部23を把持することが可能になる。したがって本実施形態によれば、スポーツモードの設定時においては、フィンガーレスト28やパームレスト29を利用して、ステアリングホイール20をしっかりホールドすることができるようになる。
【0054】
通常モードでの車両走行時においては、ステアリングホイール20を持ち替えつつ回転操作するなど、様々な操作状況が想定される。そのため、ステアリングホイール20の握り方には、ある程度の自由度が求められると云える。
【0055】
本実施形態では、通常モードの設定時においては、
図9に示すように、リム部23の内周面においてフィンガーレスト28が張り出していない状態になるとともに、同リム部23の外周面においてパームレスト29が張り出していない状態になる。
【0056】
これにより、ステアリングホイール20の操作についてのフィンガーレスト28やパームレスト29による制限をなくして、高い自由度でステアリングホイール20のリム部23を握ることができるようになる。この状態では、例えばステアリングホイール20の持ち替えに際してフィンガーレスト28やパームレスト29が手に引っ掛かることが回避される。また、リム部23の外面において張り出した状態のフィンガーレスト28やパームレスト29を握ることによって違和感が生じることが回避されるようになる。
【0057】
フィンガーレスト28に親指を添えた状態でステアリングホイール20を把持して回転操作する場合に、同ステアリングホイール20の操舵角が大きくなると、フィンガーレスト28が邪魔になってステアリングホイール20の回転操作が困難になる。本実施形態では、通常モードの設定時においては、リム部23の内周面からフィンガーレスト28が張り出していない状態になっているため、同フィンガーレスト28に親指を添えた状態にはならない。そのため、操舵角が大きくなる状況であっても、ステアリングホイール20を容易に回転操作することができる。
【0058】
このように本実施形態のステアリングホイール20によれば、フィンガーレスト28の張り出し量やパームレスト29の張り出し量を、そのときどきに設定されている車両運転モードに見合う量になるように変更することができる。したがって、ステアリングホイール20の操作性を向上させることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)ステアリングホイール20の操作性を向上させることができる。
(2)スポーツモードの設定時においては、フィンガーレスト28やパームレスト29を利用して、ステアリングホイール20をしっかりホールドすることができる。通常モードの設定時においては、ステアリングホイール20の操作についてのフィンガーレスト28やパームレスト29による制限をなくして、高い自由度でステアリングホイール20のリム部23を握ることができる。
【0060】
(3)可動部材41を回動させてリム部23に対する可動部材41の回動位置を変更することによって、フィンガーレスト28の張り出し量とパームレスト29の張り出し量とを一括変更することができる。そのため、フィンガーレスト28用の部材とパームレスト29用の部材とを各別に作動させる構造のものと比較して、ステアリングホイール20を簡素な構造にすることができる。
【0061】
(4)一つの電動モータ51の作動制御を通じて、左右両側の変更機構40R,40Lを作動させて、それら変更機構40R,40Lに対応するフィンガーレスト28およびパームレスト29の張り出し量を変更することができる。そのため、2つの変更機構40R,40Lに対して各別に電動モータが設けられるものと比較して、ステアリングホイール20を簡素な構造にすることができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・通常モードの設定時において、フィンガーレスト28およびパームレスト29を非張り出し状態(張り出し量=0)にすることに代えて、リム部23の外面においてフィンガーレスト28およびパームレスト29が若干張り出した状態にするようにしてもよい。
【0064】
・ステアリングホイール20の操舵角に応じて、リム部23の外面からフィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出した状態と張り出していない状態とを切り替えるようにしてもよい。同構成においては、ステアリングホイール20の操舵角が乗物の操舵態様に相当する。
【0065】
図10に、ステアリングホイール20において張り出し状態と非張り出し状態とを切り替える手順の一例を示す。
図10に示す例では、ステアリングホイール20の操舵角が所定角度(例えば、90度)未満の場合には(ステップS21:YES)、フィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出し状態にされる(ステップS22)。一方、ステアリングホイール20の操舵角が所定角度以上の場合には(ステップS21:NO)、フィンガーレスト28およびパームレスト29が非張り出し状態にされる(ステップS23)。
【0066】
上記構成によれば、ステアリングホイール20の操舵角が小さいときには、リム部23の外面においてフィンガーレスト28およびパームレスト29を張り出した状態にすることができる。そのため、フィンガーレスト28およびパームレスト29を利用して、ステアリングホイール20をしっかりホールドすることができる。また、上記操舵角が大きいとき、すなわち前述のようにフィンガーレスト28が邪魔になってステアリングホイール20の回転操作が困難になるときには、フィンガーレスト28およびパームレスト29が張り出していない状態にすることができる。これにより、ステアリングホイール20の操舵角を大きくするときにフィンガーレスト28に親指が添えられたままになることが回避される。そのため、操舵角が大きくなる状況であってもステアリングホイール20を容易に回転操作することができるようになる。
【0067】
・変更機構40Rを作動させるための第1作動装置と変更機構40Lを作動させるための第2作動装置とを設けるようにしてもよい。
・リム部23の外面における張り出し量を変更するための構成(上記実施形態では、変更機構40や作動装置50)として、フィンガーレスト28用の構成とパームレスト29用の構成とを各別に設けるようにしてもよい。同構成において、フィンガーレスト28の張り出し量とパームレスト29の張り出し量とを異なる条件で各別に変更するようにしてもよい。
【0068】
・リム部23の外面における張り出し量を変更するための装置の動力源としては、回転型の電動モータ51を採用することの他、直動型の電動モータを採用することができる。また、上記動力源として、電動アクチュエータを採用することに限らず、空気圧アクチュエータを採用したり、油圧アクチュエータを採用したりすることができる。
【0069】
・パームレスト29と同パームレスト29にかかる構成とを省略してもよい。
・リム部23の表皮27の形成材料としては、ゴム弾性を有する伸縮材料であれば、シリコーンゴム以外の材料を採用することができる。
【0070】
・表皮27に貫通孔を設けるとともに、この貫通孔を介してフィンガーレスト28やパームレスト29を構成するレスト部(上記実施形態では、第1端部46や第2端部47)をリム部23の外面に対して出没させるようにしてもよい。同構成では、レスト部がリム部23の外面から突出した状態になると、同レスト部がフィンガーレスト28やパームレスト29を構成するようになる。一方、レスト部がリム部23の内部に没した状態になると、フィンガーレスト28やパームレスト29はリム部23の外面において張り出していない状態になる。なお、上記構成を採用する場合には、リム部23の表皮27の形成材料として、ゴム弾性を有する伸縮材料に限らず、任意の材料を採用することができる。
【0071】
・上記実施形態にかかるステアリングホイールは、円環状のリム部23を有するステアリングホイールに限らず、任意の形状のリム部を有するステアリングホイールに適用することができる。そうしたリム部の形状としては、楕円環状や、四角環状、台形環状、U字状などを挙げることができる。
【0072】
・上記実施形態にかかるステアリングホイールは、自家用車や産業車両を含む車両に搭載される操舵装置のステアリングホイールに限らず、航空機や船舶などの他の乗物に搭載される操舵装置のステアリングホイールにも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
20…ステアリングホイール
23…リム部
25…芯金
27…表皮
28…フィンガーレスト
29…パームレスト
30…スポーツモードスイッチ
31…通常モードスイッチ
32…電子制御装置
40,40R,40L…変更機構
41,41R,41L…可動部材
45…中間部分
46…第1端部
47…第2端部
50…作動装置