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  • 特開-トンス装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101014
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】トンス装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 1/14 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
B21C1/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215344
(22)【出願日】2020-12-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年2月27日に紀州ファスナー工業株式会社和歌山工場、2020年5月25日に住友電工運泰克機電線(常州)有限公司、2020年11月18日に春日鋼業株式会社に納入
(71)【出願人】
【識別番号】000161231
【氏名又は名称】宮▲崎▼機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】中原 雅史
(72)【発明者】
【氏名】椎木 佑輔
【テーマコード(参考)】
4E096
【Fターム(参考)】
4E096FA41
4E096GA05
4E096GA18
(57)【要約】
【課題】トンス爪に直接手を触れずに線材の保持を容易に行えるトンス装置を提供する。
【解決手段】トンスケース2に装着されるくさび状のトンス爪3にピン10が突設される。ピン10を押える凹部12を有するレバー13と、レバー13をトンス爪3に対して移動可能に保持する保持ケース14と、レバー13をトンス爪3に向かって付勢する付勢体15とを備え、保持ケース14はトンスケース2に支軸16周りに回動可能に取り付けられる。保持ケース14は、トンス爪3をトンスケース2に着脱できるようにレバー13の凹部12がトンス爪3のピン10から離れた待機状態と線材Wを保持しているトンス爪3を押えているレバー13の凹部12を付勢体15の付勢力によってトンス爪3に押し込んで手放しで作業可能な固定状態との間で回動される。固定状態のとき、トンス爪3はレバー13により押えられ、トンス爪3に手を触れなくても線材Wが保持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が差し込まれたトンスケースに、くさび状のトンス爪が装着されることにより、線材が保持され、トンス爪がトンスケースから外されると、線材が解放されるトンス装置であって、トンス爪にピンが突設され、ピンを押える凹部を有するレバーと、レバーをトンス爪に対して移動可能に保持する保持ケースと、レバーをトンス爪に向かって付勢する付勢体とを備え、保持ケースはトンスケースに支軸周りに回動可能に取り付けられ、保持ケースは、トンス爪をトンスケースに着脱できるようにレバーの凹部がトンス爪のピンから離れた待機状態と、線材を保持しているトンス爪を押えているレバーの凹部を付勢体の付勢力によってトンス爪に押し込んで手放しで作業可能な固定状態との間で回動されることを特徴とするトンス装置。
【請求項2】
線材が差し込まれたトンスケースに、くさび状のトンス爪が装着されることにより、線材が保持され、トンス爪がトンスケースから外されると、線材が解放されるトンス装置であって、トンス爪にピンが突設され、トンス爪のピンを把持するホルダ部と、ホルダ部に取り付けられたシャフトと、シャフトにスライド可能に嵌められた取手とから構成され、シャフトの一端に取手が外れないように止める頭部が設けられ、取手をシャフトの一端側に向かってスライドさせて頭部に当てたときの衝撃でトンス爪を一端側に向かって移動させて、トンス爪を把持したままトンスケースからトンス爪が外されることを特徴とするトンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンス爪の着脱によって巻取ドラムに巻き取られる線材の保持と解放を行うトンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸線機によって引き抜かれた線材を巻取ドラムに巻き取るとき、巻取ドラムに取り付けられたトンス装置で線材が保持される。トンス装置は、トンスケースとトンス爪とを備え、トンスケースに線材を差し込んでくさび状のトンス爪を装着すると、線材が保持される。線材の保持後、線材を巻取ドラムに巻き付けるために巻取ドラムを回転させるとき、トンス爪が落下しないようにオペレータが手でトンス爪を押えている。線材を巻き取った後、線材をトンス装置から解放するとき、ハンマーなどを用い、トンス爪の先端を叩いてトンスケースから外す。このとき、トンス爪が落下しないように手でトンス爪を押えながら外す。このように、トンス爪を装着して線材を巻き始めるときやトンス爪を外すとき、トンス爪を手で押えなければならない
【0003】
特許文献1には、線材の保持と解放を容易に行えるトンス装置が記載されている。トンスケースに対して着脱可能なトンス爪にコイルばねが挿入され、コイルばねの後端がトンスケースに設けられた止めピンに係止され、コイルばねによってトンス爪が線材を挟み込む方向に付勢される。線材を保持するとき、トンスケースに装着されたトンス爪を手で少し引き出してから線材を差し込み、手を離すとコイルばねの付勢力によりトンス爪がスライドして、線材が保持される。線材を解放するとき、トンス爪をハンマーで叩いた後、手でトンス爪を引っ張って、線材を引き抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-11517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のトンス装置では、線材を保持するときや解放するときには、トンス爪を手で引き出しながら作業しなければならない。このとき、トンス爪はコイルばねによって付勢されているので、トンス爪は戻ろうとし、手を挟むおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、トンス爪に直接手を触れずにトンス爪による線材の保持あるいは線材の開放を容易に行えるトンス装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトンス装置は、線材が差し込まれたトンスケースに、くさび状のトンス爪が装着されることにより、線材が保持され、トンス爪がトンスケースから外されると、線材が解放されるものであって、トンス爪にピンが突設され、ピンを押える凹部を有するレバーと、レバーをトンス爪に対して移動可能に保持する保持ケースと、レバーをトンス爪に向かって付勢する付勢体とを備え、保持ケースはトンスケースに支軸周りに回動可能に取り付けられる。保持ケースは、トンス爪をトンスケースに着脱できるようにレバーの凹部がトンス爪のピンから離れた待機状態と線材を保持しているトンス爪を押えているレバーの凹部を付勢体の付勢力によってトンス爪に押し込んで手放しで作業可能な固定状態との間で回動される。
【0008】
待機状態のとき、トンス爪は固定されていないので、トンスケースに線材を差し込んだり、線材をトンスケースから解放できる。固定状態のとき、トンス爪はレバーにより押えられるので、トンス爪に手を触れなくても線材を保持できる。
【0009】
また、トンス爪に突設されたピンを把持するホルダ部と、ホルダ部に取り付けられたシャフトと、シャフトにスライド可能に嵌められた取手とから構成され、シャフトの一端に取手が外れないように止める頭部が設けられる。取手をシャフトの一端側に向かってスライドさせて頭部に当てたときの衝撃でトンス爪を一端側に向かって移動させると、手を触れることなくホルダ部でトンス爪を把持したままトンスケースからトンス爪が外れる。トンス爪が外れることにより、線材が解放され、線材とトンス装置とが離れる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、トンス爪をレバーによって押えることにより、トンス爪に直接手を触れずに線材を保持することができ、手放しで線材を巻取ドラムに巻き付けることができ、安全に作業を行える。また、トンス爪を把持して、取手をスライドさせることにより、トンス爪がトンスケースから外れて、トンス爪に直接手を触れずに線材を解放することができ、安全に作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る巻取ドラムに取り付けられたトンス装置を示す図
図2】トンス爪固定装置の断面図
図3】トンス爪固定装置の正面図
図4】トンス爪取外機の使用状態を示す図
図5】トンス爪取外機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るトンス装置を図1に示す。トンス装置は、伸線された線材Wを巻取ドラム1に巻き付けるときに線材Wの始端を保持するために使用され、縦軸周りに回転する巻取ドラム1に取り付けられるトンスケース2と、トンスケース2に装着されるトンス爪3とを備えている。トンスケース2の一側(線材Wの始端側)にチェーン4が連結され、チェーン4の一側にロック装置5付きのフック6が連結され、フック6は巻取ドラム1に形成された溝7に係止される。
【0013】
トンスケース2は、筒状に形成され、外側壁が一側から他側に向かうにつれて内側壁に近づくように形成されている。トンスケース2の一側が他側よりも大きく開口され、一側からトンス爪3が挿入され、他側から線材Wが差し込まれる。トンス爪3は、他側が先細になったくさび状に形成され、トンスケース2の外側壁に対向する外面が傾斜面とされ、内側壁に対向する内面が緩やかな湾曲面とされる。トンス爪3の一側にピン10が突設されている。ピン10は、円筒形の頭部10aを有するT字状に形成されたものであり、ここでは六角穴付きボルトが用いられる。このボルトは、トンス爪3に固定されたナット11にねじ込まれて、トンス爪3に固定される。
【0014】
そして、図2、3に示すように、トンス装置は、線材Wを巻取ドラム1に巻き始めるときにトンス爪3が落下しないようにトンス爪3をトンスケース2に固定するトンス爪固定装置を備えている。トンス爪固定装置は、ピン10を押える凹部12を有するレバー13と、レバー13をトンス爪3に対して近接離間するように移動可能に保持する保持ケース14と、レバー13をトンス爪3に向かって付勢する付勢体15とを備える。
【0015】
保持ケース14は、コの字状に形成され、保持ケース14の基端側がトンスケース2を上下から挟むように支軸16周りに回動可能にトンスケース2に取り付けられる。レバー13は、保持ケース14の先端面に形成された孔に挿通され、レバー13の先端側に把手17が設けられ、基端側に凹部12が設けられる。凹部12は、トンス爪3のピン10の頭部10aが入るように凹んだ形状とされ、レバー13に一体的に形成される。付勢体15は、コイルばねとされ、凹部12と保持ケース14の先端面との間に介装される。付勢体15は、凹部12を基端側に向かって押すように付勢している。凹部12および付勢体15は、保持ケース14に覆われる。
【0016】
保持ケース14は、トンスケース2の外側壁側に位置する待機状態とトンスケース2の一側に位置する固定状態との間で回動される。待機状態では、トンス爪3をトンスケース2に着脱できるようにレバー13の凹部12がトンス爪3のピン10から離れた状態となる。固定状態では、線材Wを保持しているトンス爪3を押えているレバー13の凹部12を付勢体15の付勢力によってトンス爪3に押し込んで手放しで作業可能な状態となる。
【0017】
伸線された線材Wを巻取ドラム1に巻き付けるとき、まず線材Wをトンスケース2に差し込み、トンス爪3を装着した後、レバー13を引きながら待機状態にある保持ケース14を回動する。保持ケース14が固定状態の位置まで回動すると、レバー13から手を放す。付勢体15の付勢力によりレバー13が他側に向かって移動して、レバー13の凹部12にトンス爪3のピン10の頭部10aが嵌まり込み、レバー13によってトンス爪3が押し込まれ、トンス爪3がトンスケース2から落下しないように固定される。このように、線材Wを巻取ドラム1に巻き付ける際に、トンス爪3を手で押える必要がなくなり、手を触れずにトンス爪3を固定することができる。したがって、線材Wの巻き付け作業を手放しで安全かつ確実に行うことができる。
【0018】
線材Wが巻取ボビン1に巻き取られると、線材Wはトンス装置から解放される。そのため、トンス爪3をトンスケース2から取り外す必要がある。このトンス装置には、トンス爪3をトンスケース2から外して線材Wを解放するトンス爪取外機が含まれる。図4、5に示すように、トンス爪取外機は、トンス爪3の頭部に突設されたピン10を把持するホルダ部20と、ホルダ部20に取り付けられたシャフト21と、シャフト21にスライド可能に嵌められた取手22とから構成される。
【0019】
シャフト21は、ボルト状に形成され、一側に頭部23が設けられ、他側がホルダ部20に固定されたナット24にねじ込まれて、シャフト21はホルダ部20に着脱可能に取り付けられる。ホルダ部20に、ピン10を引っ掛けて把持するための把持溝25が形成されている。把持溝25は、ピン10の頭部10aが入って引っ張ったときに抜けないようにT形に形成される。また、ホルダ部20には、プランジャ26が設けられ、把持溝25に挿入されたピン10に当接して、ピン10がホルダ部20から抜けないように固定する。取手22は、貫通孔27を有し、取手22の表面は滑らないようにローレット加工されている。貫通孔27にシャフト21が差し込まれ、シャフト21の他側にホルダ部20が取り付けられる。取手22は、ホルダ部20とシャフト21の頭部23との間でスライドする。
【0020】
線材Wをトンス装置から解放するとき、トンス爪3のピン10をホルダ部20の把持溝25に挿入する。そして、取手22を一側に向かってスライドさせる。取手22がシャフト21の頭部に当たったときの衝撃でトンス爪3を一側に向かって移動させる。トンス爪3が徐々に移動して、トンス爪3と線材Wとの間に隙間ができ、トンス爪3はトンス爪取外機に把持されたままトンスケース2から引き出され、線材Wが解放されて、トンス装置から離すことができる。このように、トンス爪3を外すとき、トンス爪3に直接手を触れずに外す作業を行うことができる。しかも、トンス爪3が外れた後、トンス爪3はホルダ部20に把持されたままであるので、落下することがなく安全である。
【0021】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。トンス爪3のピン10は、T字状に限らず、L字状に形成してもよい。付勢体15は、弾性力のあるゴムとしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 巻取ドラム
2 トンスケース
3 トンス爪
10 ピン
12 凹部
13 レバー
14 保持ケース
15 付勢体
20 ホルダ部
21 シャフト
22 取手
23 頭部
25 把持溝
W 線材
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が差し込まれたトンスケースに、くさび状のトンス爪が装着されることにより、線材が保持され、トンス爪がトンスケースから外されると、線材が解放されるトンス装置であって、トンス爪にピンが突設され、ピンを押える凹部を有するレバーと、レバーをトンス爪に対して移動可能に保持する保持ケースと、レバーをトンス爪に向かって付勢する付勢体とを備え、保持ケースはトンスケースに支軸周りに回動可能に取り付けられ、保持ケースは、トンス爪をトンスケースに着脱できるようにレバーの凹部がトンス爪のピンから離れた待機状態と、線材を保持しているトンス爪を押えているレバーの凹部を付勢体の付勢力によってトンス爪に押し込んで手放しで作業可能な固定状態との間で回動されることを特徴とするトンス装置。
【請求項2】
線材が差し込まれたトンスケースに、くさび状のトンス爪が装着されることにより、線材が保持され、トンス爪がトンスケースから外されると、線材が解放されるトンス装置であって、トンス爪にピンが突設され、トンス爪に手を触れずにトンス爪をトンスケースから外して線材を解放するトンス爪取外機を含み、トンス爪取外機は、トンス爪のピンを把持するホルダ部と、ホルダ部に取り付けられたシャフトと、シャフトにスライド可能に嵌められた取手とから構成され、シャフトの一端に取手が外れないように止める頭部が設けられ、取手をシャフトの一端側に向かってスライドさせて頭部に当てたときの衝撃でトンス爪を一端側に向かって移動させて、ホルダ部がトンス爪のピンを把持したままトンスケースからトンス爪が外されることを特徴とするトンス装置。