(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101018
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】活性エネルギ照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20220629BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215352
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】村山 恭一
(72)【発明者】
【氏名】梅野 圭太
【テーマコード(参考)】
2C056
4G075
【Fターム(参考)】
2C056HA44
4G075AA23
4G075AA33
4G075BA04
4G075CA33
4G075CA39
4G075CA63
4G075DA02
4G075EB32
4G075EC06
4G075EC09
4G075FA08
4G075FB02
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのを抑制することが可能な活性エネルギ照射装置を提供する。
【解決手段】活性エネルギ照射装置1は、X方向及びY方向の両方向に拡がっている出射面30であってZ方向の一方側に紫外線を出射する出射面30を有する活性エネルギ照射部3と、出射面30に対してY方向の一方側に位置している噴出口83であってZ方向の一方側に不活性ガスを噴出する噴出口83を有する不活性ガス供給部8と、出射面30に対してY方向の他方側に位置している突出部分90であって出射面30に対してZ方向の一方側に突出している突出部分90を含む不活性ガス吸引部9と、を備える。Y方向における突出部分90の幅90yは、Z方向における突出部分90の幅90zよりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向に垂直な第2方向の両方向に拡がっている出射面であって前記第1方向及び前記第2方向の両方向に垂直な第3方向の一方側に活性エネルギ線を出射する前記出射面を有する活性エネルギ照射部と、
前記出射面に対して前記第2方向の一方側に位置している噴出口であって前記第3方向の前記一方側に不活性ガスを噴出する前記噴出口を有する不活性ガス供給部と、
前記出射面に対して前記第2方向の他方側に位置している突出部分であって前記出射面に対して前記第3方向の前記一方側に突出している前記突出部分を含む構造体と、を備え、
前記第2方向における前記突出部分の幅は、前記第3方向における前記突出部分の幅よりも大きい、活性エネルギ照射装置。
【請求項2】
前記不活性ガス供給部は、前記噴出口が設けられた噴出部分であって前記出射面に対して前記第3方向の前記一方側に突出している前記噴出部分を含む、請求項1に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項3】
前記第3方向における前記噴出部分の幅は、前記第3方向における前記突出部分の幅よりも大きい、請求項2に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項4】
前記活性エネルギ照射部、前記不活性ガス供給部及び前記構造体を支持している支持体を更に備え、
前記第1方向における前記活性エネルギ照射部の幅、前記第1方向における前記不活性ガス供給部の幅、及び前記第1方向における前記構造体の幅のそれぞれは、前記第1方向における前記支持体の幅以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項5】
前記第1方向における前記噴出口の幅、及び前記第1方向における前記突出部分の幅のそれぞれは、前記第1方向における前記出射面の幅と同等である、請求項4に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項6】
前記構造体は、前記支持体に着脱可能に取り付けられている、請求項4又は5に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項7】
少なくとも前記突出部分は、前記活性エネルギ線を吸収する表面を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項8】
前記構造体は、箱体又はブロック体を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項9】
前記構造体は、複数の板体を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項10】
前記構造体は、前記不活性ガスを吸引する吸引口を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項11】
前記出射面に対して前記第1方向の一方側及び他方側に配置された一対の遮蔽板を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【請求項12】
前記活性エネルギ照射部は、前記活性エネルギ線として紫外線又は電子線を出射する、請求項1~11のいずれか一項に記載の活性エネルギ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギ線を被照射物に照射する活性エネルギ照射部と、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を備える活性エネルギ照射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような活性エネルギ照射装置では、活性エネルギ線の照射によって被照射物において生じる作用が空気中の酸素によって阻害されるのを抑制するために、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に不活性ガスが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような活性エネルギ照射装置では、例えば、活性エネルギ照射部に対する被照射物の搬送速度が高くなると、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入し易くなり、活性エネルギ線の照射によって被照射物において生じる作用が酸素によって阻害されるおそれがある。
【0005】
本発明は、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのを抑制することが可能な活性エネルギ照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る活性エネルギ照射装置は、第1方向及び第1方向に垂直な第2方向の両方向に拡がっている出射面であって第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向の一方側に活性エネルギ線を出射する出射面を有する活性エネルギ照射部と、出射面に対して第2方向の一方側に位置している噴出口であって第3方向の一方側に不活性ガスを噴出する噴出口を有する不活性ガス供給部と、出射面に対して第2方向の他方側に位置している突出部分であって出射面に対して第3方向の一方側に突出している突出部分を含む構造体と、を備え、第2方向における突出部分の幅は、第3方向における突出部分の幅よりも大きい。
【0007】
この活性エネルギ照射装置では、活性エネルギ照射部の出射面に対して被照射物が第2方向の一方側から第2方向の他方側に搬送されると、不活性ガス供給部の噴出口から噴出された不活性ガスが、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に供給される。このとき、活性エネルギ照射部の出射面に対して第2方向の他方側に、第2方向における幅が第3方向における幅よりも大きい突出部分が位置しているため、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域から被照射物の搬送方向における下流側(第2方向の他方側)に不活性ガスが流出し難くなる。よって、この活性エネルギ照射装置によれば、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのを抑制することが可能となる。
【0008】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、不活性ガス供給部は、噴出口が設けられた噴出部分であって出射面に対して第3方向の一方側に突出している噴出部分を含んでもよい。これにより、被照射物の搬送方向における上流側(第2方向の一方側)から被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に空気が流入し難くなる。したがって、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのをより確実に抑制することが可能となる。
【0009】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、第3方向における噴出部分の幅は、第3方向における突出部分の幅よりも大きくてもよい。これにより、不活性ガス供給部の噴出口が被照射物に近付くため、被照射物の搬送方向における上流側から被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に空気が流入し難くなる。したがって、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのをより確実に抑制することが可能となる。
【0010】
本発明に係る活性エネルギ照射装置は、活性エネルギ照射部、不活性ガス供給部及び構造体を支持している支持体を更に備え、第1方向における活性エネルギ照射部の幅、第1方向における不活性ガス供給部の幅、及び第1方向における構造体の幅のそれぞれは、第1方向における支持体の幅以下であってもよい。これにより、第1方向において支持体同士が接触するように複数の活性エネルギ照射装置を並べることができ、第1方向に幅が広い被照射物に対応することが可能となる。
【0011】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、第1方向における噴出口の幅、及び第1方向における突出部分の幅のそれぞれは、第1方向における出射面の幅と同等であってもよい。これにより、第1方向において支持体同士が接触するように並べられた複数の活性エネルギ照射装置において、被照射物と複数の活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのを抑制しつつ、第1方向に幅が広い被照射物に活性エネルギ線を均一に照射することができる。
【0012】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、構造体は、支持体に着脱可能に取り付けられていてもよい。これにより、構造体の交換及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0013】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、少なくとも突出部分は、活性エネルギ線を吸収する表面を有してもよい。これにより、突出部分で活性エネルギ線が反射されて不要の箇所に活性エネルギ線が照射されるのを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、構造体は、箱体又はブロック体を含んでもよい。これにより、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域から被照射物の搬送方向における下流側に不活性ガスが流出するのを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、構造体は、複数の板体を含んでもよい。これにより、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域から被照射物の搬送方向における下流側に不活性ガスが流出するのを抑制することができる。
【0016】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、構造体は、不活性ガスを吸引する吸引口を有してもよい。これにより、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に供給された不活性ガスを効率良く回収することができる。
【0017】
本発明に係る活性エネルギ照射装置は、出射面に対して第1方向の一方側及び他方側に配置された一対の遮蔽板を更に備えてもよい。これにより、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域から第1方向の一方側及び他方側に不活性ガスが流出し難くなる。したがって、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのをより確実に抑制することが可能となる。
【0018】
本発明に係る活性エネルギ照射装置では、活性エネルギ照射部は、活性エネルギ線として紫外線又は電子線を出射してもよい。これにより、活性エネルギ照射装置を、被照射物に紫外線又は電子線を照射する装置として用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被照射物と活性エネルギ照射部との間の領域に酸素が混入するのを抑制することが可能な活性エネルギ照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態の活性エネルギ照射システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される活性エネルギ照射装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示される活性エネルギ照射装置を下側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示される活性エネルギ照射装置の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示される活性エネルギ照射装置における筐体の内部の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2に示される活性エネルギ照射装置におけるエアの流れを示す正面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示されるA-A線に沿っての活性エネルギ照射装置の断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されるB-B線に沿っての活性エネルギ照射装置の端面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示される活性エネルギ照射装置の不活性ガス供給部の断面図である。
【
図14】
図14は、変形例の活性エネルギ照射装置を下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1に示されるように、活性エネルギ照射システム100は、例えばUV(ultraviolet)プリンタに搭載されるシステムであって、複数の活性エネルギ照射装置1を備える。活性エネルギ照射装置1は、例えば印刷用途向けの高出力の空冷LED光源である。活性エネルギ照射装置1は、紫外線(活性エネルギ線)を被照射物に照射し、被照射物のインク乾燥等を行う。被照射物としては、例えば光硬化型インクが付着している印刷物が挙げられる。
【0023】
活性エネルギ照射装置1は、直方体状の外形を呈する。活性エネルギ照射装置1は、所定方向において互いに当接するように並べられている。所定方向に並べられた複数の活性エネルギ照射装置1は、固定プレート11に固定されて保持されている。図示される例では、活性エネルギ照射システム100は、固定プレート11に固定された複数の活性エネルギ照射装置1からなるユニットを備えている。
図2、
図3、
図4及び
図5に示されるように、活性エネルギ照射装置1は、筐体(支持体)2、活性エネルギ照射部3、ヒートシンク4、吸気部5、排気部6、ダクト7、不活性ガス供給部8及び不活性ガス吸引部(構造体)9を備えている。
【0024】
なお、説明の便宜上、複数の活性エネルギ照射装置1が並ぶ所定方向を「X方向」(第1方向)とし、活性エネルギ照射装置1による紫外線の出射方向であってX方向に垂直な方向を「Z方向」(第1方向及び第2方向の両方向に垂直な第3方向)とし、X方向及びZ方向に直交する方向を「Y方向」(第1方向に垂直な第2方向)とする。活性エネルギ照射装置1が紫外線を出射する側を「下側」(Z方向の一方側)とし、その反対側を「上側」とする。Y方向の一方側を「前側」とし、Y方向の他方側を「後側」とする。
【0025】
筐体2は、Z方向に長尺状の矩形状を呈する。筐体2は、金属で形成されている。筐体2は、活性エネルギ照射部3、ヒートシンク4およびダクト7を収容するとともに支持する。筐体2は、前ケース21及び後ケース22が互いに組み付けられて構成されている。筐体2の上壁2aには、筐体2を掴むための把持部23が設けられている。筐体2の内部における後側には、Y方向を厚さ方向とするドライバ基板12が配置されている。ドライバ基板12は、活性エネルギ照射装置1を駆動するための駆動用の電気回路基板である。ドライバ基板12上には、ドライバ基板12のトランジスタ等を冷却するドライバ基板用ヒートシンク13が配置されている。ドライバ基板用ヒートシンク13は、ドライバ基板12のトランジスタ等に熱的に接続されている。
【0026】
活性エネルギ照射部3は、所定回路を構成する矩形板状の基板31と、基板31上においてX方向及びY方向に所定ピッチで並設された発光素子であるLED素子32と、を含む。LED素子32は、紫外線を下方へ向けて出射する。活性エネルギ照射部3は、筐体2の内部における下端部に、基板31の厚さ方向をZ方向にして配置されている。複数の基板31は、X方向に並べられている。これにより、筐体2の内部には、数個~数百個のLED素子32がX方向及びY方向に並べられる。活性エネルギ照射部3の各LED素子32から出射された紫外線は、筐体2の下壁2bに設けられたガラス板からなる光照射窓24を介して、Y方向に移動する被照射物に照射される。なお、複数の基板31は、X方向及びY方向に並べられていてもよい。
【0027】
ヒートシンク4は、活性エネルギ照射部3のLED素子32と熱的に接続された放熱部材である。ヒートシンク4は、エアとの熱交換により放熱する空冷式のヒートシンクである。エアは、LED素子32の冷却用の熱媒体(冷媒)を構成する。ヒートシンク4は、ベースプレート41、放熱フィン42、ヒートパイプ43及び仕切り板(仕切り部材)44を有する。
【0028】
ベースプレート41は、矩形板状を呈する。ベースプレート41の下面には、活性エネルギ照射部3が設けられている。ベースプレート41の下面は、活性エネルギ照射部3の基板31と当接する。放熱フィン42は、Y方向を厚さ方向とする平板状を呈する。放熱フィン42は、ベースプレート41の上面(表面)上に立設されている。放熱フィン42は、Y方向において隙間をあけて積層するように並べられている。
【0029】
ヒートパイプ43は、複数の放熱フィン42に埋め込まれるように設けられている。ヒートパイプ43は、複数の放熱フィン42と熱的に接続されている。仕切り板44は、複数の放熱フィン42と交差するように設けられている。仕切り板44は、X方向を厚さ方向とする平板状を呈する。仕切り板44は、X方向において複数の放熱フィン42を仕切る。仕切り板44は、複数の放熱フィン42にX方向に互いに離れて一対設けられている。一対の仕切り板44は、複数の放熱フィン42を、X方向における外側に位置する一対の外側部分42xと、一対の外側部分の間に位置する内側部分42yと、に仕切る。
【0030】
仕切り板44におけるベースプレート41側の端は、ベースプレート41から離れている。つまり、仕切り板44は、複数の放熱フィン42の間において下側(ベースプレート41側)が上側(ベースプレート41側とは反対側)よりもエアがX方向に通過するように、複数の放熱フィン42を仕切る。仕切り板44は、複数の放熱フィン42にロウ付けされて固定されている。ヒートシンク4は、ブラケット25及び支持フレーム26(
図7参照)を介して筐体2に取り付けられている。
【0031】
吸気部5は、筐体2の外部から筐体2の内部へエアを導入する。吸気部5は、筐体2の内部の後述するバッファ空間BFにエアを導入する。吸気部5は、筐体2における前側の壁部2cの中央上方寄りの部分に設けられている。吸気部5は、吸気フィルタ(フィルタ部)51、フィルタ保持部52及び吸気口53を有する。
【0032】
図4、
図5、
図6及び
図7に示されるように、吸気フィルタ51は、筐体2の内部へ導入されるエアに含まれる異物(塵等)を捕集する。吸気フィルタ51は、例えばウレタン等で形成されている。吸気フィルタ51は、矩形板状の外形を呈する。吸気フィルタ51は、前側から見て、壁部2cの中央上方寄りの部分に拡がっている。フィルタ保持部52は、吸気フィルタ51を収容して保持する。フィルタ保持部52は、Y方向を厚さ方向とする矩形板状の外板52xを有する。外板52xの前面は、筐体2の壁部2cの前面と同一平面上に位置する。フィルタ保持部52は、ダクト7及びダクト7に設けられた支持フレーム27に着脱可能に取り付けられている。
【0033】
吸気口53は、Y方向(ヒートシンク4から排気部6に向かう方向と交差する方向)に沿って開口し且つ筐体2の内部に通じる貫通孔である。吸気口53は、外板52xにおけるX方向の両端部の領域に、互いに近接して並設されている。吸気口53は、Z方向を長手方向とする長孔形状の貫通孔である。吸気口53から吸い込まれたエアは、吸気フィルタ51を介して、筐体2の内部のバッファ空間BFへ導入される(
図8参照)。
【0034】
排気部6は、筐体2の内部から筐体2の外部へエアを排出する。排気部6は、筐体2の上端部に設けられている。排気部6は、ファン61を有する。ファン61としては、例えば軸流ファンが用いられている。ファン61は、下側からZ方向に沿って吸い込んだエアを、上側へZ方向に沿って圧送する。ファン61は、筐体2の内部における上端部に固定されている。ファン61の吐出側であって筐体2の上壁2aには、例えばウレタン等で形成された排気フィルタ62が取り付けられている。なお、排気フィルタ62については、便宜上、
図2のみにおいて示し、他の図での表示を省略する。排気部6におけるファン61の吐出側には、例えば室外への排気用の外部配管(不図示)が接続される。
【0035】
ダクト7は、筐体2の内部におけるヒートシンク4と排気部6との間に設けられている。ダクト7は、ヒートシンク4を通過したエアを排気部6へ流通させる。ダクト7は、ヒートシンク4を通過した不活性ガスを排気部6へ流通させる。ダクト7は、矩形管形状を呈する。ダクト7は、断面積一定でZ方向に延びる直線部71と、直線部71の下流側に設けられ断面積が下流に行くに従って大きくなるようにZ方向に延びる拡大部72と、を有する。
【0036】
筐体2の内部におけるダクト7のX方向の一方側及び他方側には、吸気部5により外部からエアが導入される空間であるバッファ空間BF(
図8参照)が設けられている。バッファ空間BFは、筐体2の内面とダクト7の直線部71及び拡大部72の外面とにより画成された空間である。ダクト7の下端部は、ヒートシンク4の放熱フィン42に形成された溝47に差し込まれて固定されている。ダクト7の上端部は、ファン61の吸込側に固定されている。ダクト7は、支持フレーム27を介して筐体2に取り付けられている。
【0037】
図2、
図3、
図4及び
図5に示されるように、不活性ガス供給部8は、筐体2の外部に不活性ガスを供給する。不活性ガスとしては、例えば窒素が挙げられる。不活性ガス供給部8は、不活性ガスを供給することにより、複数のLED素子32からの紫外線の照射領域を含む領域に、不活性ガスが支配的な領域(酸素濃度が低い領域)を形成する。不活性ガス供給部8は、筐体2の前側の壁部2cにおける下端部に取り付けられている。不活性ガス供給部8は、矩形箱状のパージ筐体81と、パージ筐体81の上端面に設けられたソケット82と、パージ筐体81の下端部に設けられた噴出口83と、を有する。不活性ガス供給部8では、ソケット82から不活性ガスがパージ筐体81に導入され、当該不活性ガスが噴出口83から噴出される。
【0038】
不活性ガス吸引部9は、筐体2の外部の不活性ガスを吸引して筐体2の内部に流入させる。不活性ガス吸引部9は、筐体2に取り付けられた構造体である。不活性ガス吸引部9は、筐体2の下壁2bにおける後側に、ネジ等の締結具により着脱可能に取り付けられている。不活性ガス吸引部9は、矩形箱状の吸引部筐体91と、吸引部筐体91の下面に設けられた吸引口92と、吸引部筐体91の内部に設けられた回収流路93と、を有する(
図7参照)。不活性ガス吸引部9では、吸引口92を介して吸引部筐体91の内部に不活性ガスが吸引され、当該不活性ガスが回収流路93により筐体2の内部へ流通される。
【0039】
図6、
図7及び
図8に示されるように、活性エネルギ照射装置1では、外部のエアが吸気部5により筐体2の内部のバッファ空間BFに導入される。バッファ空間BFに導入されたエアは、Z方向に沿って下方へ流れた後、ヒートシンク4を通過してダクト7内に流入する。このとき、ヒートシンク4では、エアは、一対の外側部分42xそれぞれの複数の放熱フィン42の間をZ方向に沿って下方へ流れた後、仕切り板44とベースプレート41との間を通って上方に折り返すように流れ、内側部分42yにて合流する。そして、エアは、内側部分42yの複数の放熱フィン42の間をZ方向に沿って上方に流れ、ダクト7内へ流入する。
【0040】
また、バッファ空間BFに導入されたエアは、Z方向に沿って下方へ流れた後、ドライバ基板用ヒートシンク13を通過する。ドライバ基板用ヒートシンク13を通過したエアは、筐体2の内部における下方後側の空間を介して、ヒートシンク4の内側部分42yの流れに合流し、内側部分42yの複数の放熱フィン42の間をZ方向に沿って上方に流れ、ダクト7内へ流入する。ダクト7の内部に流入したエアは、Z方向に沿って上方へ流れ、ファン61を介して筐体2の外部へ排出される。
【0041】
図7に示されるように、活性エネルギ照射装置1では、不活性ガス供給部8から噴出された不活性ガスは、不活性ガス吸引部9により吸引されて筐体2の内部に流入する。筐体2の内部に流入した不活性ガスは、筐体2の内部における下方後側の空間を介して、ヒートシンク4の内側部分42yの流れに合流し、内側部分42yの複数の放熱フィン42の間をZ方向に沿ってエアとともに上方に流れ、ダクト7内へ流入する。ダクト7の内部に流入した不活性ガスは、Z方向に沿ってエアとともに上方に流れ、ファン61を介してエアとともに筐体2の外部へ排出される。
【0042】
不活性ガス供給部8の構成について、
図9及び
図10を参照して、より詳細に説明する。
【0043】
図9及び
図10に示されるように、不活性ガス供給部8は、コンベア(不図示)によって前側から後側に搬送されている被照射物S上に不活性ガス(
図9及び
図10に示される一点鎖線)を噴出することで、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに不活性ガスを供給する。領域Rに不活性ガスを供給するのは、活性エネルギ照射部3から出射された紫外線の照射によって被照射物Sにおいて生じる作用が空気中の酸素によって阻害されるのを抑制するためである。
【0044】
一例として、被照射物Sは、光硬化型インクが付着している印刷物である。当該インクは、活性エネルギ照射装置1の上流側(前側)においてインクヘッド(不図示)から被照射物S上に噴射されたものであり、活性エネルギ照射部3から出射された紫外線の照射によって硬化させられる。このとき、当該インクの硬化が空気中の酸素によって阻害されるのを抑制するために、不活性ガス供給部8は、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに不活性ガスを供給する。
【0045】
図9に示されるように、不活性ガス供給部8は、パージ筐体81内に整流板84を有している。パージ筐体81のパージ上面81aには、ソケット82が設けられている。パージ筐体81のパージ前面81bには、整流板84が固定されている。整流板84は、第1垂直面85、斜面86及び第2垂直面87を含んでいる。パージ筐体81のパージ底面81cは、噴出口83の一部を形成している。パージ筐体81のパージ背面81dは、筐体2の壁部2cの前面に接触している。整流板84は、パージ筐体81と協働して、不活性ガスが通る流路を形成している。
【0046】
不活性ガス供給部8は、第1流路部8a及び第2流路部8bを含んでいる。ソケット82から受け入れられた不活性ガスは、第1流路部8aを通過した後に、第2流路部8bを通過し、最終的に噴出口83から噴出される。
【0047】
第1流路部8aは、ソケット82から不活性ガスを受け入れて第2流路部8bに不活性ガスを提供する。第1流路部8aは、パージ上面81a、第1垂直面85、斜面86及びパージ背面81dに囲まれた領域である。第1流路部8aは、不活性ガスが流れる方向に沿って流路面積が減少する部分を含んでいる。具体的には、第1流路部8aは、第1垂直面85とパージ背面81dとの間の部分、及び斜面86とパージ背面81dとの間の部分を含んでいる。第1垂直面85とパージ背面81dとの間隔は一定である。したがって、流路面積は一定である。一方、斜面86は、Z方向に対して傾いている。換言すると、斜面86の下辺86aは、斜面86の上辺86bよりもY方向における後側に位置している。これにより、流路面積は、第2流路部8bに近付くに従って次第に減少する。
【0048】
ソケット82は、ソケット82の軸線Lがパージ前面81bとパージ背面81dとの間の略中央に位置するように、パージ上面81aに設けられている。つまり、ソケット82の軸線Lは、斜面86と交差している。換言すると、ソケット82の軸線Lは、Y方向において斜面86の下辺86aと上辺86bとの間に位置している。これにより、ソケット82から受け入れられた不活性ガスの流れは、斜面86に衝突する。そして、不活性ガスは、斜面86に沿ってY方向における後側に向かって流れ、第2流路部8bに至る。
【0049】
第2流路部8bは、第1流路部8aから不活性ガスを受け入れて、噴出口83に不活性ガスを提供する。換言すると、第2流路部8bは、Z方向に沿って不活性ガスを被照射物S側に導く。第2流路部8bは、第2垂直面87及びパージ背面81dに囲まれた領域である。第2垂直面87の上辺(つまり、斜面86の下辺86a)とパージ背面81dとの間の領域は、圧縮された不活性ガスを受け入れる。第2垂直面87とパージ背面81dとの間隔は一定である。つまり、第2流路部8bの流路面積は一定である。第2流路部8bの流路面積は、第1流路部8aのうちの第1垂直面85とパージ背面81dとの間の部分の流路面積よりも小さい。第2流路部8bの流路面積は、第1流路部8aのうちの斜面86の下辺86aとパージ背面81dとの間の部分の流路面積と同じである。
【0050】
第2流路部8bの末端は、噴出口83に相当する。噴出口83は、第2垂直面87の下端87aとパージ背面81dの下端81eとの間に形成されている。パージ底面81cの後端81fが、噴出口83を構成するものの一部であってもよい。噴出口83から被照射物S上に噴出された不活性ガスは、被照射物Sに衝突した後に、流れ方向を変える。一部の不活性ガスは、後側に向かって流れ、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域R(
図10参照)に供給される。別の一部の不活性ガスは、前側に向かって流れ、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域R(
図10参照)に空気が流入するのを抑制する。
【0051】
以上のように構成された不活性ガス供給部8では、第1流路部8aの流路面積が、ソケット82及び第2流路部8bのそれぞれの流路面積よりも大きくなっており、第1流路部8aにおいてソケット82の軸線Lと交差するように配置された整流板84が、ソケット82から受け入れた不活性ガスの流れを妨げる。これにより、ソケット82から受け入れられた不活性ガスの流れがX方向に広がり、その結果、噴出口83から噴出される不活性ガスの流量の分布がX方向において均一化される。したがって、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域R(
図10参照)に不活性ガスを効率良く供給することができる。更に、整流板84が、不活性ガスの流れを妨げる面として斜面86を有している。つまり、整流板84が、流路面積が徐々に減少する流路構成を実現している。これにより、不活性ガス供給部8の動作音を小さくすることができる。
【0052】
筐体2、活性エネルギ照射部3、不活性ガス供給部8及び不活性ガス吸引部9について、
図3及び
図10を参照して、より詳細に説明する。
【0053】
図3及び
図10に示されるように、活性エネルギ照射部3は、下側に紫外線を出射する出射面30を有している。活性エネルギ照射装置1では、出射面30は、光照射窓24における下側の表面(外側の表面)である。出射面30は、X方向及びY方向の両方向に拡がっている。活性エネルギ照射装置1では、出射面30は、Z方向に垂直な面であり、X方向を長手方向とする長方形状を呈している。一例として、X方向における出射面30の幅30xは100mm程度であり、Y方向における出射面30の幅30yは25mm程度である。
【0054】
不活性ガス供給部8は、下側に不活性ガスを噴出する噴出口83を有している。活性エネルギ照射装置1では、噴出口83は、X方向に延在するスリット状を呈している。噴出口83は、出射面30に対して前側に位置している。不活性ガス供給部8は、噴出口83が設けられた噴出部分80を含んでいる。噴出部分80は、不活性ガス供給部8のうち、出射面30に対して下側に突出している部分(
図3及び
図10に示される二点鎖線よりも下側の部分)である。活性エネルギ照射装置1では、噴出部分80の外形は、X方向を長手方向とし且つZ方向を厚さ方向とする長方形板状を呈している。不活性ガス供給部8は、Z方向において噴出部分80が出射面30よりも下側に位置するように、筐体2(具体的には、前側の壁部2c)に取り付けられている。
【0055】
なお、「噴出口83が下側に不活性ガスを噴出する」とは、噴出口83から噴出される不活性ガスの噴出の向きが下向きの成分を有していることを意味する。つまり、噴出口83は、真下に不活性ガスを噴出するものは勿論、例えば、真下から後側に傾斜した向きに不活性ガスを噴出するものであってもよい。
【0056】
不活性ガス吸引部9は、出射面30に対して下側に突出している突出部分90を含んでいる。突出部分90は、出射面30に対して後側に位置している。活性エネルギ照射装置1では、不活性ガス吸引部9の全体が突出部分90である。不活性ガス吸引部9は、Z方向において突出部分90(すなわち、不活性ガス吸引部9の全体)が出射面30よりも下側に位置するように、筐体2(具体的には、下壁2b)に取り付けられている。不活性ガス吸引部9は、複数の吸引口92が設けられた吸引部筐体(箱体)91を含んでいる。活性エネルギ照射装置1では、吸引部筐体91の外形は、X方向を長手方向とし且つZ方向を厚さ方向とする長方形板状を呈している。
【0057】
活性エネルギ照射装置1では、下壁2bの下側の表面(外側の表面)が、出射面30と噴出部分80との間、及び、出射面30と突出部分90との間において露出している。Y方向における出射面30と突出部分90との間隔は、Y方向における出射面30と噴出部分80との間隔よりも小さい。一例として、Y方向における出射面30と噴出部分80との間隔は40mm程度であり、Y方向における出射面30と突出部分90との間隔は20mm程度である。下壁2bの下側の表面及び突出部分90の表面は、紫外線を吸収する表面となっている。一例として、下壁2bの下側の表面及び突出部分90の表面は、黒色の塗装面であってもよいし、黒色の処理面であってもよいし、或いは、黒色の材料の表面であってもよい。
【0058】
Y方向における突出部分90の幅90yは、Z方向における突出部分90の幅90zよりも大きい。Y方向における突出部分90の幅90yは、Z方向における突出部分90の幅90zの9倍以上である。幅90yは、幅90zの8倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましい。Z方向における噴出部分80の幅80zは、Z方向における突出部分90の幅90zよりも大きい。一例として、X方向における突出部分90の幅90xは100mm程度であり、Y方向における突出部分90の幅90yは45mm程度であり、Z方向における突出部分90の幅90zは5mm程度である。一例として、X方向における噴出部分80の幅80xは100mm程度であり、Y方向における噴出部分80の幅80yは25mm程度であり、Z方向における噴出部分80の幅80zは5mm程度である。
【0059】
X方向における活性エネルギ照射部3の幅、X方向における不活性ガス供給部8の幅、及びX方向における不活性ガス吸引部9の幅のそれぞれは、X方向における筐体2の幅以下である。X方向における噴出口83の幅83x、及びX方向における突出部分90の幅90xのそれぞれは、X方向における出射面30の幅30xと同等である。ここで、同等とは、実質的に等しいことを意味し、例えば、幅83x及び幅90xのそれぞれが、幅30xの95%以上、幅30xの105%以下であることを意味する。なお、X方向における噴出口83の幅83x、及びX方向における突出部分90の幅90xのそれぞれは、X方向における出射面30の幅30xよりも小さくてもよい。幅83x及び幅90xのそれぞれは、幅30xの90%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、110%以上であることが更により好ましい。
【0060】
以上説明したように、活性エネルギ照射装置1では、活性エネルギ照射部3の出射面30に対して被照射物Sが前側から後側に搬送されると、不活性ガス供給部8の噴出口83から噴出された不活性ガスが、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに供給される。このとき、活性エネルギ照射部3の出射面30に対して後側に、Y方向における幅90yがZ方向における幅90zよりも大きい突出部分90が位置しているため、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rから被照射物Sの搬送方向における下流側(後側)に不活性ガスが流出し難くなる。よって、活性エネルギ照射装置1によれば、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに酸素が混入するのを抑制することが可能となる。活性エネルギ照射装置1によれば、被照射物Sの搬送速度が高くなっても、不活性ガス供給部8に対する不活性ガスの供給量を大幅に増やすことなく、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rを高濃度で且つ均一な窒素ガス雰囲気とすることが可能となる。
【0061】
活性エネルギ照射装置1では、不活性ガス供給部8が、噴出口83が設けられた噴出部分80であって出射面30に対して下側に突出している噴出部分80を含んでいる。これにより、被照射物Sの搬送方向における上流側(前側)から被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに空気が流入し難くなる。したがって、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに酸素が混入するのをより確実に抑制することが可能となる。
【0062】
活性エネルギ照射装置1では、Z方向における噴出部分80の幅80zが、Z方向における突出部分90の幅90zよりも大きい。これにより、不活性ガス供給部8の噴出口83が被照射物Sに近付くため、被照射物Sの搬送方向における上流側から被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに空気が流入し難くなる。したがって、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに酸素が混入するのをより確実に抑制することが可能となる。
【0063】
活性エネルギ照射装置1では、X方向における活性エネルギ照射部3の幅、X方向における不活性ガス供給部8の幅、及びX方向における不活性ガス吸引部9の幅のそれぞれが、X方向における筐体2の幅以下である。これにより、X方向において筐体2同士が接触するように複数の活性エネルギ照射装置1を並べることができ、X方向に幅が広い被照射物Sに対応することが可能となる。
【0064】
活性エネルギ照射装置1では、X方向における噴出口83の幅83x、及びX方向における突出部分90の幅90xのそれぞれが、X方向における出射面30の幅と同等である。これにより、X方向において筐体2同士が接触するように並べられた複数の活性エネルギ照射装置1において、被照射物Sと複数の活性エネルギ照射部3との間の領域Rに酸素が混入するのを抑制しつつ、X方向に幅が広い被照射物Sに紫外線を均一に照射することができる。
【0065】
活性エネルギ照射装置1では、不活性ガス吸引部9が、筐体2に着脱可能に取り付けられている。これにより、不活性ガス吸引部9の交換及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【0066】
活性エネルギ照射装置1では、突出部分90が、紫外線を吸収する表面を有している。これにより、突出部分90で紫外線が反射されて不要の箇所に紫外線が照射されるのを抑制することができる。例えば、突出部分90で反射された紫外線が、活性エネルギ照射装置1の上流側に配置されたインクヘッド(不図示)に照射されるのを防止することができ、当該インクヘッドにおいて光硬化型インクが硬化するのを防止することが可能となる。
【0067】
活性エネルギ照射装置1では、不活性ガス吸引部9が、箱体である吸引部筐体91を含んでいる。これにより、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rから被照射物Sの搬送方向における下流側に不活性ガスが流出するのを抑制することができる。
【0068】
活性エネルギ照射装置1では、不活性ガス吸引部9が、不活性ガスを吸引する吸引口92を有している。これにより、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに供給された不活性ガスを効率良く回収することができる。
【0069】
活性エネルギ照射装置1では、活性エネルギ照射部3が、活性エネルギ線として紫外線を出射する。これにより、活性エネルギ照射装置1を、被照射物Sに紫外線を照射する装置として用いることができる。
【0070】
活性エネルギ照射装置1では、Y方向における出射面30と突出部分90との間隔が、Y方向における出射面30と噴出部分80との間隔よりも小さい。これにより、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rにおいて不活性ガスの濃度が低くなるのを抑制することができる。
【0071】
作用及び効果を確認するための実験結果について、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0072】
実施例の活性エネルギ照射装置1として、
図11の(a)に示されるように、Y方向(図における水平方向)における幅が45mmであり且つZ方向(図における鉛直方向)における幅が5mmである突出部分90を有する活性エネルギ照射装置1を用意した。実施例の活性エネルギ照射装置1では、噴出口83と突出部分90との間隔を85mmとした。実施例の活性エネルギ照射装置1において、不活性ガス供給部8に27L/minで窒素ガスを供給しつつ、被照射物Sを図における左から右に150m/minで搬送した。その結果、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rは、
図11の(a)に示されるように、高濃度で且つ均一な窒素ガス雰囲気となった。
【0073】
比較例1の活性エネルギ照射装置1として、
図11の(b)に示されるように、突出部分90に対応する構成を有しない活性エネルギ照射装置1を用意した。その他の構成は、実施例の活性エネルギ照射装置1と同様である。比較例1の活性エネルギ照射装置1において、不活性ガス供給部8に27L/minで窒素ガスを供給しつつ、被照射物Sを図における左から右に150m/minで搬送した。その結果、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rは、
図11の(b)に示されるように、十分な窒素ガス雰囲気とはならなかった。
【0074】
比較例2の活性エネルギ照射装置1として、
図12の(a)に示されるように、Y方向における幅が1mmであり且つZ方向における幅が5mmである突出部分90に対応する構成を有する活性エネルギ照射装置1を用意した。比較例2の活性エネルギ照射装置1では、噴出口83と突出部分90に対応する構成との間隔を85mmとした。その他の構成は、実施例の活性エネルギ照射装置1と同様である。比較例2の活性エネルギ照射装置1において、不活性ガス供給部8に27L/minで窒素ガスを供給しつつ、被照射物Sを図における左から右に150m/minで搬送した。その結果、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rは、
図12の(a)に示されるように、十分な窒素ガス雰囲気とはならなかった。
【0075】
比較例3の活性エネルギ照射装置1として、
図12の(b)に示されるように、Y方向における幅が1mmであり且つZ方向における幅が5mmである突出部分90に対応する構成を有する活性エネルギ照射装置1を用意した。比較例3の活性エネルギ照射装置1では、噴出口83と突出部分90に対応する構成との間隔を139mmとした。その他の構成は、実施例の活性エネルギ照射装置1と同様である。比較例3の活性エネルギ照射装置1において、不活性ガス供給部8に27L/minで窒素ガスを供給しつつ、被照射物Sを図における左から右に150m/minで搬送した。その結果、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rは、
図12の(3)に示されるように、十分な窒素ガス雰囲気とはならなかった。
【0076】
以上の実験結果から、活性エネルギ照射部3の出射面30に対して後側(図における右側)に、Y方向における幅がZ方向における幅よりも大きい突出部分90が位置していると(実施例の活性エネルギ照射装置1)、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rから被照射物Sの搬送方向における下流側(図における右側)に窒素ガスが流出し難くなることが分かった。活性エネルギ照射部3の出射面30に対して後側に、Y方向における幅がZ方向における幅よりも小さい突出部分90に対応する構成が位置していても(比較例2の活性エネルギ照射装置1及び比較例3の活性エネルギ照射装置1)、突出部分90に対応する構成が位置していないもの(比較例1の活性エネルギ照射装置1)と同程度の効果しか得られないことが分かった。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、突出部分90を含む構造体は、不活性ガス吸引部9に限定されない。一例として、
図13の(a)に示される構造体9A、
図13の(b)に示される構造体9B、又は
図13の(c)に示される構造体9Cが、不活性ガス吸引部9に代えて活性エネルギ照射装置1に適用されてもよい。構造体9Aは、
図13の(a)に示されるように、箱体94又はブロック体95を含んでいる。箱体94又はブロック体95の外形は、X方向を長手方向とし且つZ方向を厚さ方向とする長方形板状を呈している。構造体9Bは、
図13の(b)に示されるように、Y方向に並んだ複数の板体96を含んでいる。各板体96は、例えば、X方向を長手方向とし且つY方向を厚さ方向とする長方形板状を呈している。構造体9Cは、
図13の(c)に示されるように、X方向に並んだ複数の板体97を含んでいる。各板体97は、例えば、Y方向を長手方向とし且つX方向を厚さ方向とする長方形板状を呈している。
【0078】
突出部分90を含む構造体(例えば、不活性ガス吸引部9、構造体9A,9B,9C)において、出射面30に対して下側に突出している突出部分90は、当該構造体の一部分であってもよい。その場合、少なくとも突出部分90が紫外線を吸収する表面を有していればよい。
【0079】
突出部分90を含む構造体(例えば、不活性ガス吸引部9、構造体9A,9B,9C)は、筐体2にネジ等の締結具により着脱可能に取り付けられたものに限定されず、着脱可能な取付構造は、その他の公知の取付構造であってもよい。例えば、当該構造体が、筐体2の案内部に対してスライド可能な被案内部を有しており、それにより、当該構造体が、筐体2に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0080】
不活性ガス供給部8は、出射面30に対して下側に突出している部分を含んでいなくてもよい。噴出口83は、不活性ガス供給部8のうち、出射面30に対して上側に位置している部分に設けられていてもよい。
【0081】
活性エネルギ照射部3、不活性ガス供給部8、及び構造体(例えば、不活性ガス吸引部9、構造体9A,9B,9C)を支持している支持体は、筐体2に限定されず、フレーム等の他の支持構造を有するものであってもよい。
【0082】
活性エネルギ照射装置1は、
図14に示されるように、活性エネルギ照射部3の出射面30に対してX方向の一方側及び他方側に配置された一対の遮蔽板10を備えていてもよい。これにより、例えば、活性エネルギ照射装置1が単独で使用された場合であっても、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域RからX方向の一方側及び他方側に不活性ガスが流出し難くなる。したがって、被照射物Sと活性エネルギ照射部3との間の領域Rに酸素が混入するのをより確実に抑制することが可能となる。
【0083】
活性エネルギ照射部3は、紫外線に限定されず、電子線等の他の活性エネルギ線を出射するものであってもよい。つまり、以上の記載において、「紫外線」を「電子線」又は「活性エネルギ線」と読み替えることができる。
【0084】
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。上述した実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1…活性エネルギ照射装置、2…筐体(支持体)、3…活性エネルギ照射部、30…出射面、8…不活性ガス供給部、10…遮蔽板、80…噴出部分、83…噴出口、9…不活性ガス吸引部(構造体)、9A,9B,9C…構造体、90…突出部分、91…吸引部筐体(箱体)、92…吸引口。