(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101040
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215392
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤木 竜也
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239AC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設置面に溝部等がなくとも、止水装置と設置面との水密状態を確保しやすく、しかも、止水装置として利用しない際は、縁台やデッキとして利用することができる止水装置を提供する。
【解決手段】設置物の出入り口の前側に配置可能な止水装置100であって、前記出入り口の幅方向にわたって配置される止水板部10と、止水板部10の下部に取付けられた弾性シート材と、止水板部10の後側に固定される土台部と、土台部に取付けられた折り畳み可能な脚部とを備えるように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置物の出入り口の前側に配置可能な止水装置であって、
前記出入り口の幅方向にわたって配置される止水板部と、
前記止水板部の下部に取付けられた弾性シート材と、
前記止水板部の後側に固定される土台部と、
前記土台部に取付けられた折り畳み可能な脚部と、
を備えていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記止水板部は、出入り口に対向する縦板部と、前記縦板部の下端部から前側に向けて形成された横板部と、横板部の先端部から下方に向けて形成された下板部とを備え、
前記弾性シート材の少なくとも一部は、前記下板部の下端部に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やマンション等の建物の玄関や、敷地周りの外構の門など出入り口に設置可能な止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の洪水や豪雨による局所的な冠水による、住宅、マンション、ビル等の建物内への浸水や、地下鉄、地下道の入り口からの水の流入を防ぐために、止水部材が用いられている。
【0003】
止水部材としては、様々な形態があり、袋の中に土を入れる土嚢のような以前から利用されているものや、止水板や止水シートを利用するものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、分割したパネル材を上下に積み重ね、各パネル材間を相互に連結して所望高さに形成する防水板であって、下位のパネル材の上面前端部に突起部を形成する一方、上位のパネル材の下面前端部には突起部に嵌合する溝部を形成し、上位のパネル材を下位のパネル材に嵌め込んで、上位のパネル材の後面に備えた係合片が下位のパネル材の後面に備えた係止片に係合して上下のパネル材を連結固定するようにした防水板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記防水板によると、パネル材同士を直接連結可能とし、部品点数を減らすとともに組み立て作業も容易でかつ迅速にできるものである。一方で、通常時は、防水板を分解してパネル材を保管する場所を確保する必要があるため、保管作業時、保管中、防水板組み立て時に、パネル材同士の連結箇所の突起部、係止片、係合片等が変形したり、破損したりするおそれがあり、パネル材同士の連結に不具合が生じるおそれがあった。加えて、パネル材の最下端部と床面との水密を保持する必要があるところ、パネルの最下端部を収納する溝部を床面に設けるものでは、防水板を使用しない場合は、溝部を塞ぐ必要があり、防水板以外で部品数が増加するおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、設置面に溝部等がなくとも、止水装置と設置面との水密状態を確保しやすく、しかも、止水装置として利用しない際は、縁台やデッキとして利用することができる止水装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係るフェンスは、設置物の出入り口の前側に配置可能な止水装置であって、前記出入り口の幅方向にわたって配置される止水板部と、前記止水板部の下部に取付けられた弾性シート材と、前記止水板部の後側に固定される土台部と、前記土台部に取付けられた折り畳み可能な脚部とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記止水板部は、出入り口に対向する縦板部と、前記縦板部の下端部から前側に向けて形成された横板部と、横板部の先端部から下方に向けて形成された下板部とを備え、前記弾性シート材の少なくとも一部は、前記下板部の下端部に配置されているものでもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る止水装置は、冠水等により設置物の外側の水位が上昇した場合に、水圧が止水板部から弾性シート材を通じて設置面側を押圧するので、止水板部と設置面との間から水が浸入しにくくなるとともに、通常時は、脚部を開いた状態とすれば、止水板部を座部とする縁台やデッキとして利用することができる。
【0011】
本発明において、前記止水板部は、出入り口に対向する縦板部と、前記縦板部の下端部から前側に向けて形成された横板部と、横板部の先端部から下方に向けて形成された下板部とを備え、前記弾性シート材の少なくとも一部は、前記下板部の下端部に配置されているものとすれば、浸水時、水圧により横板部から下板部を通じて弾性シート材に荷重が掛かるので、弾性シート材の前側に偏って作用することとなるので、弾性シート材と設置面との間から水が更に浸入しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る止水装置の実施の一形態を示す説明図である。
【
図4】
図2の板状部材同士の係合構造を示す説明図である。
【
図6】
図2の板状部材と扇形部材との係合構造を示す説明図である。
【
図7】
図2の扇形部材同士の係合構造を示す説明図である。
【
図10】
図1の止水装置において他の使用状態を示す側面図である。
【
図11】
図1の止水装置において更に他の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0014】
図面において、10は止水板部、20は止水板部10に対して設置物側に固定される土台部、30は土台部20に折り畳み可能に取付けられた脚部、40は止水板部10の両側面に配置された一対の側板部であって、本発明に係る止水装置100は、止水板部10、土台部20、脚部30及び側板部40を備えており、降雨等により設置物が浸水するおそれがある場合は、設置物の出入り口に配置して設置物の浸水を抑え、通常時は、脚部30を開いて止水板部10を座部とする縁台やデッキとして利用するものである。
【0015】
図1は、本発明に係る止水装置100の実施の一形態を示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。また、
図2は
図1のA-A線拡大断面図である。止水板部10は、設置物の出入り口、具体的には、建物の玄関や、敷地の外構の門の幅方向にわたって配置されるものであって、配置した際に、地面から所定の高さを有した状態となる。止水板部10の高さは高い方が好ましいが、設置物の他の箇所からの浸水の可能性を考慮すると、極端に高くしても必ずしも効果的ではなく、400~800mmが好ましく、本形態では約600mmである。ここで、止水装置100の左右方向、上下方向、前後方向は、特に説明をしない限り、
図1に示された左右方向、上下方向、前後方向と同じ方向であり、以下、これに基づき説明する。
【0016】
止水板部10は、
図2に示す様に、設置物の出入り口に対向する縦板部11と、縦板部11の下端部から前側に向けて形成された横板部12と、横板部12の前側から下方に向けて形成された下板部13とを備えている。
【0017】
本形態では、止水板部10は、左右方向を長手方向とする部材を複数組み合わせて形成されている。具体的には、板状部材50と断面が扇面形状の扇形部材60とを複数組み合わせて形成されている。
【0018】
図3は
図2の板状部材50の拡大図、
図4は
図2の板状部材50同士の係合構造を示す説明図である。板状部材50は、上下端部に段部51、51を有している。上端部の段部51は前側に凹部52、後側に凸部53を有しており、下端部の段部51は後側に凹部52、前側に凸部53を有している。
【0019】
これにより、
図4に示す様に、板状部材50、50を上下に配置して、対向する段部51、51において、一方の凸部53と他方の凹部52とをそれぞれ係合させることによって、板状部材50を上下方向に連続して配置されることができる。本形態では、
図3に示す様に、板状部材50が上下方向に3個連続して配置されており、止水板部10の縦板部11を構成している。
【0020】
図5は
図2の扇形部材60の拡大図、
図6は
図2の板状部材50と扇形部材60との係合構造を示す説明図である。扇形部材60は、中心角が約90度の扇面形状の断面であって、扇面形状の両端部は、中心角側に凹部62、反対側に凸部63が形成された段部61、61を有している。本形態では、
図6に示す様に、ひとつの扇形部材60は、上下方向に連続して配置された最下段の板状部材50の段部51の凸部53と凹部52に段部61の凹部62と凸部63とが係合している。これにより、
図2に示す様に、止水板部10の形成方向が、上下方向から前方向に向きが変更される。
【0021】
図7は
図2の扇形部材60同士の係合構造を示す説明図である。
図7に示す様に、最下段の板状部材50に係合する扇形部材60の前側に同形状の扇形部材60が互いの段部61、61の一方の凸部63を他方の凹部62に係合している。これにより、止水板部10の形成方向が、前方向から下方向に向きが変更され、この2個の扇形部材60が、止水板部10の横板部12と下板部13とを構成している。
【0022】
また、本形態では、
図2に示す様に、上下方向に連続して配置された最上段の板状部材50の段部51に別の扇形部材60の段部61が係合して配置されている。
【0023】
板状部材50と扇形部材60とは、本形態では、いずれもアルミニウム合金製の中空状の形材の表面を合成樹脂で被覆したものであるが、本形態に、特に限定されるものではない。また、
図4、
図6、
図7において、板状部材50同士の係合、板状部材50と扇形部材60との係合、扇形部材60同士の係合する際に、各部材の間にパッキンを配置して係合してもよい。
【0024】
図8は
図1の背面図である。土台部20は、止水板部10の後側に配置されている。本形態では、上下方向に間隔をあけて配置された上横材21及び下横材22と、幅方向に間隔をあけて配置された縦材23とを有しており、上横材21及び下横材22と縦材23とが接合されている。更に詳しく説明すると、上横材21及び下横材22と、両側に位置する二個の縦材23により外形が矩形状に形成されている。残りの2個の縦材23は、両側の二個の縦材23の間に配置されている。
【0025】
また、土台部20は、
図2に示す様に、下横材22は、上横材21よりも前側に配置されている。そして、下横材22の後方であって、上横材21の下方に底板材24が配置されている。縦材23は、上横材21の下面と底板材24の上面との間に配置されており、上横材21、底板材24、下横材22とにそれぞれ接合されている。
【0026】
止水板部10と土台部20との位置関係は、止水板部10の縦板部11の後側に土台部20の上横材21及び縦材23が位置しており、横板部12の下側に土台部20の下横材22が位置している。すなわち、下横材22上に横板部12が載置され、上横材21及び縦材23が後側から縦板部11を支持している。
【0027】
止水板部10と土台部20とは、側板部40により連結されている。
図1に示す様に、側板部40は、止水板部10及び土台部20の左右両端部に配置されており、締結部材により、止水板部10及び土台部20のそれぞれと締結されている。
【0028】
具体的な締結方法としては、側板部40の左右方向に貫通する貫通孔(図示せず)から板状部材50及び扇形部材60の長手方向に沿って形成されたビス孔54、64、土台部20の両側端の縦材23に形成されたビス孔(図示せず)に締結部材としてのねじ41を螺入して締結するものである。
図1の(c)は、ねじ41の締結位置を示している。
図3、
図5に示す様に、ひとつの板状部材50及び扇形部材60に対して、ビス孔54及びビス孔64は複数個形成されており、適宜選択して使用することができる。なお、図示しないが、止水板部10から土台部20に向けてタッピングビスを螺入して止水板部10と土台部20とを締結してもよい。
【0029】
更に、本形態では、側板部40と、止水板部10及び土台部20との間に弾性変形可能な弾性シート材71が配置されており、これにより、側板部40と、止水板部10及び土台部20との間からの水の浸入を抑えることができる。
【0030】
次に、止水装置100について、設置場所の設置面側との止水構造について説明する。
図2に示すように、止水板部10は、下板部13の下端部にスペーサ14が取付けられている。本形態では、スペーサ14は、土台部20の下横材22の前側に連続的に配置されており、スペーサ14の下端面の高さ位置は、下横材22の下端面の高さ位置に合わせられている。スペーサ14の下端面には弾性変形可能な弾性シート材72が取付けられている。弾性シート材72は、スペーサ14の下端面から下横材22の下端面にわたって取付けられている。
【0031】
これにより、止水装置100を設置後、止水装置100の上下方向の中間まで浸水した場合を想定すると、設置面上には弾性シート材72が配置されるので、設置面に不陸が生じていても、止水装置100の自重により下向きに荷重が掛かり、弾性シート材72が弾性変形して不陸を吸収して設置面上に圧接された状態となるので、浸水時において、設置面と弾性シート材72との間からの水の浸入を抑えることができる。
【0032】
また止水板部10の横板部12及び下板部13には、浸水により下方に向けて水圧が生じるため、弾性シート材72と設置面に対する弾性シート材72の圧接がより強く働く。本形態では、スペーサ14が取付けられている下板部13には、扇形部材60が取付けられているところ、位置関係としては、扇形部材60がスペーサ14の前側上方に位置しているので、スペーサ14の後側は、この扇形部材60との間に隙間Sが形成されている。したがって、下板部13に掛かる荷重は、スペーサ14の前側に偏って作用することになるので、スペーサ14を通じて弾性シート材72の前側が設置面と圧着しやすくなり、水の浸入を更に抑えることができる。すなわち、弾性シート材72の前側から水が浸入すると、止水板部10の上部が設置物側に倒れる方向に荷重が掛かりやすい状態となって、設置面側からの水の浸入を促進してしまうところ、本形態により、それを抑えることができる。
【0033】
本形態では、スペーサ14も弾性変形可能であるので、下板部13に掛かる荷重はスペーサ14を通じて、その下方に位置する弾性シート材72に更に荷重が掛かりやすくなり、弾性シート材72の前側が設置面と圧着しやすくなるので、水の浸入を更に抑えることができる。
【0034】
また本形態では、
図2、
図8に示す様に、土台部20の底板材24の下面に弾性変形可能な弾性シート材73が取付けられているので、地面側の不陸を吸収し、止水装置100の前側及び左右側面側において、設置面との間からの水の浸入を防ぐことができる。
【0035】
続いて、設置場所の設置物(例えば、玄関)側との止水構造について説明する。
図1、
図2に示すように、土台部20の後側には、弾性を有する弾性シート材74が取付けられている。具体的には、土台部20の両端側の縦材23、23と上横材21には、設置物側の面の上下方向にわたって弾性を有する弾性シート材74が取付けられている。弾性シート材74が、設置物(例えば、門柱)に当接するように止水装置100を設置すれば、浸水が生じた際、その水圧が止水板部10から土台部20を経て弾性シート材74に掛かり、設置物を押圧した状態になりやすく、弾性シート材74と設置物との間から水が浸入しにくくなる。
【0036】
図9は
図2の脚部30の説明図であって、(a)は脚部30が閉じた状態、(b)は脚部30が開いた状態を示している。
図8、
図9に示す様に、脚部30は土台部20に取付けられている。本形態では、脚部30は、土台部20の4本の縦材23の内、内側の2本の縦材23にそれぞれ上下一対に取付けられている。具体的には、脚部30は、連結金具31を介して縦材23に固定されており、矢印で示すように、連結金具31を軸として縦材23の長手方向に沿った折り畳まれた位置と、脚部30の先端部が後側に向いた開いた位置との間で位置を変更することができる。
【0037】
図10は
図1の止水装置100において他の使用状態を示す側面図である。上下一対の脚部30において、下側の脚部30は、開いた位置において、底板材24の弾性シート材73の下面の高さ位置が合うようになされている。すなわち、下側の脚部30は、開いた位置において、下面側となる位置に弾性シート材75が取付けられている。これにより、止水装置100を使用する際、設置物と干渉しなければ、下側の脚部30を開いた位置で使用することで、止水装置100が設置物側に倒れにくくなる。
【0038】
図11は
図1の止水装置100において更に他の使用状態を示す側面図である。脚部30を開いた位置に変更して、止水装置100を倒して、4本の脚部30で設置面に立設させることにより、止水装置100を縁台やデッキとして使用することができる。再び、止水用に使用する際は、脚部30を折り畳んだ位置に変更すればよい。脚部30は、開閉可能に取付けられたものであれば特に限定されるものではない。
【0039】
以上、本発明のフェンスについて、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0040】
本形態では、止水板部10は、板状部材50及び扇形部材60を組み合わせて配置したものであるが、止水板部10を一体に形成したものでもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 止水板部
11 縦板部
12 横板部
13 下板部
14 スペーサ
20 土台部
21 上横材
22 下横材
23 縦材
24 底板材
30 脚部
31 連結金具
40 側板部
41 ねじ
50 板状部材
51 段部
52 凹部
53 凸部
54 ビス孔
60 扇形部材
61 段部
62 凹部
63 凸部
64 ビス孔
71~75 弾性シート材
100 止水装置