(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101067
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20220629BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20220629BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220629BHJP
【FI】
H02K11/33
B60L9/18 P
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215443
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝野 大軌
【テーマコード(参考)】
5H125
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF03
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611TT06
5H611UA04
5H770AA21
5H770BA02
5H770BA05
5H770CA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA41
5H770JA17W
5H770PA12
5H770PA26
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA22
5H770QA28
5H770QA35
(57)【要約】
【課題】コネクタとその周辺部材との間の必要な絶縁距離を確保し易くしつつ、収容部材の小型化を図る。
【解決手段】収容室を形成する収容部材と、第1モータを駆動する第1電力変換器と、第1モータとは異なる第2モータを駆動する第2電力変換器と、第2電力変換器が実装される回路基板と、第1電力変換器及び第2電力変換器に電気的に接続される平滑コンデンサを含むコンデンサモジュールと、第2電力変換器と第2モータとの間を電気的に接続するためのコネクタとを備え、第1電力変換器、回路基板、及びコンデンサモジュールは、回路基板の基板表面に対して垂直な方向に視て、互いに重なる態様で、収容室に収容され、コネクタは、基板表面に対して垂直な方向に視てコンデンサモジュールに重なり、かつ、コンデンサモジュールに取り付けられる、車両用駆動装置が開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を形成する収容部材と、
第1モータを駆動する第1電力変換器と、
前記第1モータとは異なる第2モータを駆動する第2電力変換器と、
前記第2電力変換器が実装される回路基板と、
前記第1電力変換器及び前記第2電力変換器に電気的に接続される平滑コンデンサを含むコンデンサモジュールと、
前記第2電力変換器と前記第2モータとの間を電気的に接続するためのコネクタとを備え、
前記第1電力変換器、前記回路基板、及び前記コンデンサモジュールは、前記回路基板の基板表面に対して垂直な第1方向に視て、互いに重なる態様で、前記収容室に収容され、
前記コネクタは、前記第1方向に視て前記コンデンサモジュールに重なり、かつ、前記コンデンサモジュールに取り付けられる、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記収容部材は、前記第1方向に視て前記収容室を囲む周壁部を有し、
前記第1方向に交差する第2方向で前記周壁部と前記コンデンサモジュールとの間のスペースは、前記コネクタの前記第2方向での搭載用スペースよりも小さい、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記コネクタは、前記第1方向で前記コンデンサモジュールを挟んで前記回路基板とは逆側に設けられる、請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記コンデンサモジュールは、絶縁材料により前記平滑コンデンサを覆う形態であり、
前記コネクタは、前記コンデンサモジュールにおける前記絶縁材料の部位に固定される、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収容部材により形成される収容室内に、主機(車輪駆動用回転電機)を駆動する第1電力変換器と、補機(ポンプ用電動機)を駆動する第2電力変換器と、コンデンサモジュールとを、上下方向に視て重複するように配置する車両用駆動装置が知られている。この車両用駆動装置では、第2電力変換器に係る交流コネクタ(第2電力変換器とポンプ用電動機及び電源との間を電気的に接続するためのコネクタ)は、上下方向でコンデンサモジュールよりも上側であって収容部材の側壁に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、収容室内に、各種の構成要素を上下方向に視て重複するように配置するにもかかわらず、上下方向に交差する方向での収容部材の体格について、更なる小型化を図る余地がある。また、交流コネクタが収容部材(例えば金属製の筐体)に取り付けられており、収容部材との間で必要な絶縁性を確保する必要がある。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、コネクタとその周辺部材との間の必要な絶縁距離を確保し易くしつつ、収容部材の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、収容室を形成する収容部材と、
第1モータを駆動する第1電力変換器と、
前記第1モータとは異なる第2モータを駆動する第2電力変換器と、
前記第2電力変換器が実装される回路基板と、
前記第1電力変換器及び前記第2電力変換器に電気的に接続される平滑コンデンサを含むコンデンサモジュールと、
前記第2電力変換器と前記第2モータとの間を電気的に接続するためのコネクタとを備え、
前記第1電力変換器、前記回路基板、及び前記コンデンサモジュールは、前記回路基板の基板表面に対して垂直な方向に視て、互いに重なる態様で、前記収容室に収容され、
前記コネクタは、前記方向に視て前記コンデンサモジュールに重なり、かつ、前記コンデンサモジュールに取り付けられる、車両用駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、コネクタとその周辺部材との間の必要な絶縁距離を確保し易くしつつ、収容部材の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電動車両用のモータ駆動システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】車両用駆動装置の要部断面を概略的に示す図である。
【
図3】水路形成部を通る平面で切断した際の、インバータケース部の概略的な断面図である。
【
図4】
図2の矢印V1に沿って視た概略的な平面図である。
【
図5A】比較例によるコネクタ配置を説明する概略的な断面図である。
【
図5B】比較例によるコネクタ配置を説明する概略的な平面図である。
【
図6】コネクタの取り付け方法の一例の説明図である。
【
図7】
図6の矢印V3に沿って視た概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
図1は、電動車両用のモータ駆動システム1の全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システム1は、高圧バッテリBT1の電力を用いて主機モータ5を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。なお、電動車両は、電力を用いて主機モータ5を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動車両は、典型的には、動力源がエンジンと主機モータ5であるハイブリッド自動車や、動力源が主機モータ5のみである電気自動車を含む。以下、車両とは、特に言及しない限り、モータ駆動システム1が搭載される車両を指す。
【0011】
モータ駆動システム1は、
図1に示すように、高圧バッテリBT1、平滑コンデンサ3と、主機インバータ4、主機モータ5、及びインバータ制御装置6を備える。
【0012】
高圧バッテリBT1は、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリBT1は、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。
【0013】
主機インバータ4は、主機モータ5を駆動する。主機インバータ4は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含む。U相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2の直列接続を含み、V相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4の直列接続を含み、W相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6の直列接続を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
【0014】
主機モータ5は、例えば3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイルの一端が中性点で共通接続される。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続される。スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間には、平滑コンデンサ3が接続される。
【0015】
インバータ制御装置6には、主機モータ5を流れる電流を検出する電流センサ(図示せず)等の各種センサが接続される。インバータ制御装置6は、各種センサからのセンサ情報に基づいて、主機インバータ4を制御する。インバータ制御装置6は、例えばCPU、ROM、メインメモリ(全て図示せず)などを含み、インバータ制御装置6の各種機能は、ROM等に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現される。主機インバータ4の制御方法は、任意であるが、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2が互いに逆相でオン/オフし、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4が互いに逆相でオン/オフし、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6が互いに逆相でオン/オフする。
【0016】
高圧バッテリBT1と平滑コンデンサ3との間には、
図1に示すように、高圧バッテリBT1から電力供給を遮断するための遮断用スイッチSW1が設けられる。遮断用スイッチSW1は、半導体スイッチやリレー等で構成されてもよい。遮断用スイッチSW1は、常態でオン状態であり、例えば車両の衝突検出時等にオフとされる。なお、遮断用スイッチSW1のオン/オフの切換はインバータ制御装置6により実現されてもよいし、他の制御装置により実現されてもよい。
【0017】
本実施例では、モータ駆動システム1は、
図1に示すように、補機インバータ4B、及び補機モータ5Bを更に備える。補機モータ5Bは、補機を形成する。本実施例では、一例として、補機モータ5Bは、主機モータ5に供給される油を吐出する電動式オイルポンプを形成する。補機モータ5Bは、対応する補機インバータ4Bと共に、主機モータ5及び主機インバータ4と並列な関係で、高圧バッテリBT1に接続されてよい。なお、変形例では、補機モータ5Bは、主機モータ5の補助機能を担わないモータ(例えば空調装置のコンプレッサ用モータ)であってもよい。
【0018】
補機インバータ4Bは、補機モータ5Bを駆動する。補機インバータ4Bは、その回路構成自体は上述した主機インバータ4と同様であるが、スイッチング素子Q1~Q6等の電気的特性(定格電流や耐圧等)が異なってよい。補機インバータ4Bは、主機インバータ4に比べて、定格電流や耐圧等が低くてもよく、後述のように回路基板60上に実装可能である。なお、主機インバータ4を形成するスイッチング素子Q1~Q6等は、回路基板に実装されずに、インバータモジュールとして、回路基板(後述する回路基板60)とは別に配置される。
【0019】
モータ駆動システム1は、
図1に示すように、補機モータ5Bを制御するインバータ制御装置6Bを更に備える。補機モータ5Bの制御方法は、任意であるが、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2が互いに逆相でオン/オフし、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4が互いに逆相でオン/オフし、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6が互いに逆相でオン/オフする態様で実現されてもよい。インバータ制御装置6Bの機能の一部又は全部は、インバータ制御装置6により実現されてもよい。
【0020】
インバータ制御装置6B及びインバータ制御装置6は、車両の低圧バッテリBT2からの電力に基づいて動作する。低圧バッテリBT2は、高圧バッテリBT1よりも定格電圧が有意に低い電源である。低圧バッテリBT2は、例えば定格電圧が12Vである。なお、変形例では、インバータ制御装置6B及び/又はインバータ制御装置6は、高圧バッテリBT1からの電力に基づき(例えば高圧バッテリBT1からの電力により生成されるバックアップ電源に基づき)動作可能であってもよい。
【0021】
なお、
図1に示す例では、モータ駆動システム1は、DC/DCコンバータを備えていないが、高圧バッテリBT1と主機インバータ4の間にDC/DCコンバータを備えてもよい。
【0022】
次に、
図2以降を参照して、主機インバータ4と補機インバータ4Bの配置とともに、コネクタ841について説明する。
【0023】
図2は、主機インバータ4と補機インバータ4Bの配置の説明図であり、車両用駆動装置100の要部断面を概略的に示す図である。
図3は、水路形成部70を通る平面で切断した際の、インバータケース部20の概略的な断面図である。
図4は、
図2の矢印V1に沿って視た概略的な平面図である。
図2には、Z方向(第1方向の一例)と、Z方向に沿ったZ1側とZ2側とが定義されている。本実施例では、Z1側が上側であり、Z2側が下側であるが、変形例では、車両用駆動装置100は、他の向きで車両に実装されてもよい。また、
図3及び
図4には、Z方向に垂直でかつ互いに直交するX方向及びY方向が定義されている。以下で、「上面視」とは、基板表面に対して垂直な方向であるZ方向に視たビューを表す。また、以下で、「水平方向」(第2方向の一例)とは、Z方向に交差する方向であって、XY平面内の任意の方向を表す。
【0024】
車両用駆動装置100は、ケース2の上部にインバータケース部20を備える。インバータケース部20は、例えばアルミ等により形成される。インバータケース部20は、複数のケース部材により形成されてもよい。なお、インバータケース部20の一部又は全部は、ケース2と一体であってもよいし、ケース2とは別体であり、ケース2に取り付けられてもよい。ケース2は、
図2には図示を省略した主機モータ5及び駆動伝達機構(図示せず)が収容される室SP1を形成する。駆動伝達機構は、主機モータ5と車輪とを結ぶ動力伝達経路に設けられ、主機モータ5の回転トルクを車輪に伝達する。駆動伝達機構は、カウンタギア機構や差動歯車機構等を含んでよい。
【0025】
インバータケース部20は、室SP3を形成する。インバータケース部20は、上下方向に延在する側壁部21を有し、側壁部21は、室SP3の側方(上下方向に交差する方向)において室SP3を外部に対して仕切る。すなわち、側壁部21は、上面視で、室SP3を取り囲むように延在する。なお、
図2に示す例では、側壁部21の下部は、ケース2の上部に形成された側壁部21bにより形成されている。インバータケース部20により形成される室SP3には、インバータモジュールMJが収容される。インバータモジュールMJは、
図1を参照して上述した主機インバータ4や水路形成部70等を内蔵するモジュールである。なお、インバータモジュールMJは、更にコンデンサモジュール30を一体的に含んでもよい。インバータモジュールMJは、インバータケース部20に取り付けられる。
【0026】
インバータケース部20は、下側が底部211により閉塞され、上側は開口する形態である。インバータケース部20は、上側の開口が蓋部材25により覆われる。なお、室SP3と室SP1は、インバータケース部20の底部211を介して上下方向に隣接し、インバータケース部20の底部211は、室SP1を形成するケース2の周壁部を形成してよい。
【0027】
蓋部材25は、インバータケース部20の上部に設けられる。蓋部材25は、インバータケース部20の上部にボルト等により締結されてよい。蓋部材25は、インバータケース部20の側壁部21の一部を形成してもよい。蓋部材25は、例えばアルミ等の金属により形成されてよい。この場合、インバータモジュールMJに係るEMC(Electromagnetic Compatibility)対策を適切に実現できるとともに、空間共鳴等の問題も低減できる。蓋部材25には、変換器用チップ64等を冷却するための水路(図示せず)が形成されてもよい。この場合、蓋部材25内の水路は、後述する冷却水路72に連通されてもよい。なお、室SP3は、室SP1に対して、配線(主機モータ5とインバータモジュールMJとの間の配線等)が通される部分以外では、インバータケース部20の底部211により隔離されている。
【0028】
図2に示す例では、室SP3には、平滑コンデンサ3(コンデンサモジュール30)と、主機インバータ4(インバータモジュールMJ)と、インバータ制御装置6及びインバータ制御装置6B(回路基板60)とが、配置される。平滑コンデンサ3(コンデンサモジュール30)及び主機インバータ4(インバータモジュールMJ)は、インバータケース部20に取り付けられてよい。インバータ制御装置6及びインバータ制御装置6B(回路基板60)は、インバータケース部20又は蓋部材25に取り付けられてよい。
【0029】
平滑コンデンサ3は、周囲が樹脂等により封止されたコンデンサモジュール30の形態として、室SP3内に配置される。すなわち、コンデンサモジュール30は、樹脂(絶縁材料の一例)により平滑コンデンサ3を覆う形態である。樹脂は、配線用バスバー(
図2のバスバー80参照)の一部を封止し、配線用バスバーの絶縁性を高める機能も有する。本実施例では、コンデンサモジュール30は、後述する水路形成部70の下方に設けられる。平滑コンデンサ3は、室SP3における最も下側に配置されてもよい。
【0030】
主機インバータ4は、上述した各種半導体素子(スイッチング素子Q1等)や配線用バスバー(図示せず)の一部が樹脂等により封止されたモジュールの形態であってよい。主機インバータ4は、回路基板60の下方に設けられる。
【0031】
主機インバータ4は、
図2に模式的に示すように、インバータモジュールMJの形態で、水路形成部70を含んでよい。水路形成部70の一部又は全部は、インバータケース部20と一体であってもよいし、インバータケース部20とは別体であり、インバータケース部20に取り付けられてもよい。水路形成部70には、
図3に示すように、冷却水路72が形成される。なお、冷却水路72は、
図3に示すように空間部であってもよいし、複数のフィンや溝等で仕切られる形態であってよい。また、
図2や
図3では、図示が省略されているが、冷却水路72には、冷却水を供給/排出するためのパイプ等が接続されてよい。
【0032】
水路形成部70は、例えばアルミのような熱伝導性の良好な材料により形成される。水路形成部70は、好ましくは、
図2に示すように、主機インバータ4の下側の放熱面(
図3に放熱面の範囲の一例が一点鎖線SC1で図示)に当接する上面を有する。また、水路形成部70は、好ましくは、
図2に示すように、コンデンサモジュール30の上側の放熱面に対向する下面を有する。これにより、主機インバータ4及びコンデンサモジュール30を水路形成部70内の冷却水路72を通る冷却水により同時かつ効率的に冷却できる。なお、水路形成部70とコンデンサモジュール30との間には、サーマルシート等のような伝熱性部材又は伝熱性素材が配置されてもよい。
【0033】
インバータ制御装置6及びインバータ制御装置6Bは、回路基板60により実現される。本実施例では、回路基板60は、一の基板により実現される。なお、回路基板60は、上下方向に又は水平方向に分離した2つ以上の基板により実現されてもよい。
【0034】
回路基板60は、例えば、リジットタイプであり、多層基板であってよい。なお、回路基板60は、例えば矩形であるが、他の形状であってもよい。回路基板60は、上面視で、インバータモジュールMJ及びコンデンサモジュール30に重なる。回路基板60は、上面視で、コンデンサモジュール30と略同じサイズであってもよいし、コンデンサモジュール30より有意に小さくてもよい。
【0035】
回路基板60には、インバータ制御装置6を形成する各種電子部品が実装される。例えば、回路基板60には、スイッチング素子Q1~Q6を駆動する駆動回路や、マイクロコンピュータ、電源回路等が実装される。
【0036】
また、回路基板60には、インバータ制御装置6Bを形成する各種電子部品とともに、変換器用チップ64が実装される。変換器用チップ64は、補機インバータ4Bを形成する。すなわち、変換器用チップ64は、補機インバータ4Bのスイッチング素子Q1~Q6及びダイオードD11~D16を備える。なお、変換器用チップ64は、1つの集積回路チップの形態であるが、2つ以上の集積回路チップの組み合わせの形態で実現されてもよい。変換器用チップ64は、補機インバータ4Bの駆動回路(ゲートドライバ回路)を内蔵してもよい。また、変換器用チップ64は、過電流保護機能のような特定機能を有する回路部や他の関連する素子等を内蔵してもよい。変換器用チップ64は、例えば表面実装型であり、IPM(Intelligent Power Module)の形態であってよい。変換器用チップ64は、
図2に示すように、回路基板60の上側表面(すなわち蓋部材25に対向する側の表面)に実装されてよい。
【0037】
回路基板60には、ハーネス84が電気的に接続される。なお、
図2に示す例では、回路基板60の下側表面にハーネス84が電気的に接続されているが、回路基板60の上側表面にハーネス84が電気的に接続されてもよい。ハーネス84は、高圧系のハーネスであり、一端側(回路基板60側)において、平滑コンデンサ3に電気的に接続される端子814、815(
図1参照)と、後述するコネクタ841を介して補機モータ5Bに電気的に接続される端子816、817、818(
図1参照)とを形成する。なお、
図2では、ハーネス84の他端側(下端側)の図示が省略されている。
【0038】
ハーネス84の他端側(下端側)は、
図4に示すように、コネクタ841まで延在する。この場合、ハーネス84は、例えば、回路基板60、インバータモジュールMJ、及び平滑コンデンサ3の側方の配索スペースWS1(
図3参照)を通ってコンデンサモジュール30まで延在してよい。なお、配索スペースWS1は、上述したスペースSP30の一部を通る態様で延在する。
【0039】
コネクタ841は、上述したように、ハーネス84の下端側の一部に接続される。具体的には、ハーネス84は、
図4に示すように、3相電流用の配線840(U)、840(V)、及び840(W)と、電源用の配線840(P)及び840(N)とを含み、3相電流用の配線840(U)、840(V)、及び840(W)が、コネクタ841に接続される。コネクタ841は、補機モータ5Bに電気的に接続される端子8411、8412、8413(
図1参照)を形成する。
【0040】
コネクタ841は、コンデンサモジュール30の下部に取り付けられる。従って、コネクタ841は、上下方向でコンデンサモジュール30とインバータケース部20の底部211との間に配置される。この場合、コネクタ841から補機モータ5Bまでの配線が容易となる。例えば、コネクタ841は、
図2に模式的に示すように、室SP1に配置されたコネクト842及びハーネス8421を介して、補機モータ5Bに電気的に接続されてよい。
【0041】
本実施例では、コネクタ841は、
図4に示すように、上面視でコンデンサモジュール30に重なる。これにより、コネクタ841がコンデンサモジュール30と重ならずに配置される比較例(
図5A及び
図5B参照)に比べて、インバータケース部20の水平方向の体格(サイズ)を低減できる。
【0042】
具体的には、
図5A及び
図5Bには、比較例によるコネクタ841の配置及びインバータケース部20’が、それぞれ、
図2及び
図4と同様のビューで示されている。この場合、コネクタ841は、ケース2’の底部211’(
図2に示す本実施例の底部211に対応)に取り付けられている。すなわち、コネクタ841は、上面視でコンデンサモジュール30と重ならない態様で室SP3’内に配置される。このような比較例によれば、
図2及び
図4、並びに、
図5A及び
図5Bを対比するとわかるように、インバータケース部20’とコンデンサモジュール30との間のスペースSP30’や、インバータケース部20’の水平方向の体格(サイズ)が、コネクタ841の配置に起因して大きくなりやすい。
【0043】
これに対して、本実施例によれば、コネクタ841は、上面視でコンデンサモジュール30と重なる態様で室SP3内に配置されるので、インバータケース部20の水平方向の体格(サイズ)が、コネクタ841の配置に起因して大きくなることを、防止できる。すなわち、比較例(
図5A及び
図5B参照)に比べて、インバータケース部20の水平方向の体格(サイズ)を低減できる。なお、インバータケース部20のレイアウトやサイズは、周辺部品との関係で制約を受けるので、インバータケース部20の水平方向の体格の小型化を図ることで、設計自由度を高めることができる。
【0044】
このような本実施例においては、好ましくは、コネクタ841は、上面視で、全体がコンデンサモジュール30に重なる。この場合、インバータケース部20の側壁部21に、コネクタ841に対して必要な絶縁距離を確保するための局所的な凹部(水平方向の体格が大きくなる方向に凹む凹部)を設ける必要もない。従って、この場合、インバータケース部20の水平方向の体格(サイズ)の最小化を図ることが可能となる。
【0045】
換言すると、本実施例では、インバータケース部20の側壁部21とコンデンサモジュール30との間のスペースSP30(
図4参照)には、コネクタ841が配置されないので、かかるスペースSP30を、側壁部21の全周にわたって最小化できる。すなわち、水平方向で、スペースSP30は、コネクタ841用の搭載スペース(又はコネクタ841の体格)よりも小さくすることができる。また、本実施例では、コンデンサモジュール30は、樹脂で覆われた形態であるので、絶縁距離の確保が容易であり、スペースSP30を比較的小さくすることができる。従って、スペースSP30は、各種の取り付けや配線用のスペース(例えば配索スペースWS1)を確保する観点から最小化されてよい。なお、スペースSP30は、室SP3の一部であり、コンデンサモジュール30のZ方向の延在範囲に対応したZ方向の範囲に延在する。
【0046】
ところで、コンデンサモジュール30は、主機モータ5の高出力化に伴う平滑コンデンサ3の大型化に伴って、大型化する傾向がある。コンデンサモジュール30の水平方向のサイズが増加すると、それに伴い、インバータケース部20の水平方向のサイズが増加しやすくなる。
【0047】
この点、本実施例によれば、上述したように、インバータケース部20とコンデンサモジュール30との間のスペースSP30が最小化されることで、インバータケース部20の水平方向の体格(サイズ)を、コンデンサモジュール30の水平方向の体格(サイズ)に応じて最小化できる。このようにして、本実施例によれば、インバータケース部20の水平方向の体格(サイズ)を、コンデンサモジュール30の水平方向の体格(サイズ)に応じた態様で、最小化できる。
【0048】
換言すると、本実施例では、特定のサイズ(水平方向の体格)のインバータケース部20に対して成立しうるコンデンサモジュール30のサイズに関して最大化を図ることができる。コンデンサモジュール30のサイズが大きくなると、その分だけ平滑コンデンサ3や配線用バスバーの放熱性を高めることができる。従って、コンデンサモジュール30のサイズの効率的な大型化を図ることで、平滑コンデンサ3の温度監視用の温度センサ(例えばサーミスタ)等を廃止することも可能となりうる。
【0049】
また、本実施例によれば、上述したように、コネクタ841がコンデンサモジュール30の下側に設けられるので、コネクタ841がコンデンサモジュール30の側方に設けられる場合とは異なり、コネクタ841と回路基板60との間に、コンデンサモジュール30を位置させることができる。これにより、補機モータ5Bに供給される3相の交流電流が流れるコネクタ841から放射されうるノイズの影響(回路基板60への影響)を最小化できる。すなわち、コンデンサモジュール30が、コネクタ841と回路基板60との間の電磁シールドとして機能できる。
【0050】
本実施例では、コネクタ841は、コンデンサモジュール30に取り付けられる。コンデンサモジュール30へのコネクタ841の取り付け方法は、任意であるが、例えば、
図6及び
図7に示すように実現されてもよい。
【0051】
図6及び
図7は、コンデンサモジュール30へのコネクタ841の取り付け方法の一例の説明図であり、
図6は、
図4のV2部を、より詳細に示す平面図であり、
図7は、
図6の矢印V3に沿って視た概略的な平面図である。
【0052】
図6及び
図7に示す例では、コネクタ841は、コンデンサモジュール30における樹脂部分31に固定される。具体的には、コンデンサモジュール30の樹脂部分31は、ボス部311を有し、ボス部311には、コネクタ841を保持するブラケット85が締結具86により締結される。この場合、締結具86は、ワッシャ部851を有するボルトの形態であり、ボス部311に座金852を介して締結されてもよい。
【0053】
図6及び
図7に示す例によれば、コネクタ841は、コンデンサモジュール30の樹脂部分31に固定されるので、コネクタ841とコンデンサモジュール30との間の距離は、互いの間の絶縁距離を考慮することなく、最小化できる。すなわち、コンデンサモジュール30側やコネクタ841側で特別な対策を行うことなく、コネクタ841とコンデンサモジュール30との間で必要な絶縁性を確保しつつ、コネクタ841をコンデンサモジュール30に固定できる。
【0054】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【符号の説明】
【0055】
20・・・インバータケース部(収容部材)、3・・・平滑コンデンサ、4・・・主機インバータ(第1電力変換器)、4B・・・補機インバータ(第2電力変換器)、5・・・主機モータ(第1モータ)、5B・・・補機モータ(第2モータ)、30・・・コンデンサモジュール、31・・・樹脂部分(絶縁材料の部位)、60・・・回路基板、211・・・底部、BT1・・・高圧バッテリ(電源)、SP3・・・室(収容室)、SP30・・・スペース