(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010110
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181291
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2018063827の分割
【原出願日】2018-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】日本電産コパル電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 嵩幸
(57)【要約】
【課題】 形状の大型化を抑制し、高精度なトルクセンサを提供する。
【解決手段】 トルクセンサ10は、第1構造体と第2構造体との間に設けられた第4構造体14と、第5構造体15と、第4構造体に設けられた第1歪センサ19と、第5構造体に設けられた第2歪センサ20と、を具備する。第4構造体と第5接続部のそれぞれは、第1歪センサ又は前記第2歪センサの一端部が接続される第1接続部14aと、第1歪センサ又は前記第2歪センサの他端部が接続される第2接続部14bと、第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部の剛性より低い剛性を有する第3接続部14cと第4接続部14dとを具備する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造体と、
第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた少なくとも1つの第4構造体と、
前記第4構造体に設けられた歪センサと、
を具備し、
前記第4構造体は、
前記第1構造体に設けられ、前記歪センサの一端部が接続される第1接続部と、
前記第2構造体に設けられ、前記歪センサの他端部が接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部の剛性より低い剛性を有する第3接続部と第4接続部と、
を具備することを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記第3接続部と前記第4接続部の長さは、前記第3構造体の長さより短いことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記第3接続部と前記第4接続部の幅は、前記第3構造体の幅より狭いことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記第1接続部と前記第2接続部の幅は、前記第3接続部と前記第4接続部の幅より広いことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記第1接続部と前記第2接続部の厚さは、前記第3接続部と前記第4接続部の厚さより薄いことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記第1接続部にトルク方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJsで表し、前記第3接続部及び前記第4接続部にトルク方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJwで表し、前記第1接続部にトルク方向以外の力を印加した場合の断面二次モーメントをIsで表し、前記第3接続部及び前記第4接続部にトルク方向以外の力を印加した場合の断面二次モーメントをIwで表した場合、Js、Jw、Is、Iwが次式
Js/Jw>Is/Iw
の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【請求項7】
前記第4構造体は、前記歪センサが配置される凹部を有し、前記歪センサの表面は、前記第1構造体、前記第2構造体、複数の前記第3構造体、及び少なくとも1つの前記第4構造体からなる構造体の重心を含む面と一致されていることを特徴とする請求項1記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えばロボットアームの関節に設けられるトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサは、トルクが印加される第1構造体と、トルクが出力される第2構造体と、第1構造体と第2構造体とを連結する梁としての複数の起歪部とを有し、これら起歪部にセンサ素子としての複数の歪ゲージが配置されている。これら歪ゲージによりブリッジ回路が構成されている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-096735号公報
【特許文献2】特開2015-049209号公報
【特許文献3】特開2017-172983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクセンサのブリッジ回路は、トルク方向の力に対して電圧を出力し、トルク以外の方向の力に対して電圧を出力しないように構成される必要がある。
【0005】
しかし、第1構造体、第2構造体、及び起歪部の加工精度の低下や、歪ゲージの配置にばらつきが生じた場合、トルク以外の方向の力に対してブリッジ回路が電圧を出力し、検出精度が低下する。このため、一般的には、トルクセンサの構造体をトルク方向に変形し易く、トルク以外の方向に変形しにくく設計すればよいが、この場合、トルクセンサの形状が大型化する。
【0006】
本発明の実施形態は、形状の大型化を抑制し、高精度なトルクセンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のトルクセンサは、第1構造体と、第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた少なくとも1つの第4構造体と、前記第4構造体に設けられた歪センサと、を具備し、前記第4構造体は、前記第1構造体に設けられ、前記歪センサの一端部が接続される第1接続部と、前記第2構造体に設けられ、前記歪センサの他端部が接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部の剛性より低い剛性を有する第3接続部と第4接続部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】各実施形態が適用されるトルクセンサを示す平面図。
【
図3】第1の実施形態に係り、
図2の一部を除いて示す平面図。
【
図5】
図3に破線で示すA部を拡大して示す平面図。
【
図6A】
図5に示すトルクセンサにトルク(Mz)方向の力を印加した場合の動作を説明するために示す平面図。
【
図6B】
図5に示すトルクセンサにトルク以外(Fz、Mx)の方向の力を印加した場合の動作を説明するために示す側面図。
【
図8A】
図7に示すVIIIA-VIIIA線に沿った断面図であり、トルク以外(Fz、Mx)の方向の断面二次モーメントを説明するために示す図。
【
図8B】
図7に示すVIIIB-VIIIB線に沿った断面図であり、トルク以外(Fz、Mx)の方向の断面二次モーメントを説明するために示す図。
【
図8C】一般的な構造体の断面二次モーメントを説明するために示す図。
【
図8D】
図8Cと異なる構造体の断面二次モーメントを説明するために示す図。
【
図8E】
図8Aのトルク(Mz)方向の断面二次モーメントを説明するために示す図。
【
図8F】
図8Bのトルク(Mz)方向の断面二次モーメントを説明するために示す図。
【
図8H】構造体と起歪体の位置関係を説明するために示す図。
【
図9】第1の実施形態の比較例に係るトルクセンサを示す平面図。
【
図10A】
図9に示すトルクセンサにトルク(Mz)方向の力を印加した場合の動作を説明するために示す平面図。
【
図10B】
図9に示すトルクセンサにトルク以外(Fz、Mx)の方向の力を印加した場合の動作を説明するために示す側面図。
【
図11】第1の実施形態のトルクセンサと比較例のトルクセンサの各軸方向に同一の力を印加した場合における歪を示す図。
【
図12】第2の実施形態を示すものであり、第1歪センサと第2歪センサを示す平面図。
【
図13】第1歪センサのブリッジ回路の一例を示す回路図。
【
図14】第2の実施形態のトルクセンサにトルク方向の力が印加された場合と、トルク方向以外の方向の力が印加された場合における起歪体の様子を説明するために示す図。
【
図15】第2の実施形態の比較例に係るトルクセンサを概略的に示す図。
【
図16】第3の実施形態を示すものであり、
図1のBで示す部分を拡大して示す平面図。
【
図17A】ストッパーの動作を示すものであり、
図16の一部を模式的に示す図。
【
図18】トルクセンサに印加されるトルクとストッパーの動作の関係を説明するために示す図。
【
図20】第3の実施形態の第1の変形例を示すものであり、一部を拡大して示す平面図。
【
図21】第3の実施形態の第2の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一符号を付している。
【0010】
図1は、本実施形態が適用されるトルクセンサ10の一例を示している。
【0011】
図1において、トルクセンサ10は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14、第5構造体15、ストッパー16、17、カバー18を具備している。
【0012】
第1構造体11と、第2構造体12は、環状に形成され、第2構造体12の径は、第1構造体11の径より小さい。第2構造体12は、第1構造体11と同心状に配置され、第1構造体11と第2構造体12は、放射状に配置された複数の梁部としての第3構造体13により連結されている。第2構造体12は、中空部12aを有しており、中空部12aには、例えば図示せぬ配線が通される。
【0013】
第1構造体11は、例えば被計測体に連結され、複数の第3構造体13は、第1構造体11から第2構造体12にトルクを伝達する。逆に、第2構造体12を被計測体に連結し、第2構造体12から第1構造体11に複数の第3構造体13を介してトルクを伝達してもよい。
【0014】
第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13は、金属、例えばステンレス鋼により構成されるが、印加されるトルクに対して機械的な強度を十分に得ることができれば、金属以外の材料を使用することも可能である。
【0015】
図2は、
図1のストッパー16、17を外した状態を示している。第1構造体11と第2構造体12との間には、第1歪センサ19、第2歪センサ20が設けられている。すなわち、後述するように、第1歪センサ19と第2歪センサ20の一端部は、第1構造体11に接合され、第1歪センサ19と第2歪センサ20の他端部は、第2構造体12に接合されている。
【0016】
また、第1歪センサ19と第2歪センサ20は、第1構造体11及び第2構造体12の中心(トルクの作用中心)に対して対称な位置に配置されている。換言すると、第1歪センサ19と第2歪センサ20は、環状の第1構造体11及び第2構造体12の直径上に配置されている。
【0017】
第1歪センサ19と第2歪センサ20の厚み、すなわち、後述する起歪体の厚みは、第3構造体13の厚みより薄い。トルクセンサ10の機械的な強度は、第3構造体13の厚みや幅により設定される。起歪体には、センサ素子としての複数の歪ゲージが設けられ、これらセンサ素子によりブリッジ回路が構成される。
【0018】
ストッパー16、17は、第1歪センサ19と第2歪センサ20の機械的な変形を保護するとともに、第1歪センサ19と第2歪センサ20のカバーとしての機能を有している。ストッパー16、17の詳細については、後述する。
【0019】
第1歪センサ19はフレキシブル基板21に接続され、第2歪センサ20はフレキシブル基板22に接続されている。フレキシブル基板21、22は、カバー18により覆われた図示せぬプリント基板に接続されている。プリント基板には、後述するブリッジ回路の出力電圧を増幅する演算増幅器などが配置されている。回路構成は、本実施形態の本質ではないため、説明は省略する。
(第1の実施形態)
図3、
図4は、第1の実施形態を示すものであり、
図1、
図2から第1歪センサ19と第2歪センサ20、フレキシブル基板21、22及びカバー18等を外し、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14、第5構造体15のみを示している。
【0020】
第1の実施形態は、トルク方向Mz以外の方向、特に、図示矢印Fz方向、Mx方向の力がトルクセンサ10に印加された際、第1歪センサ19及び第2歪センサ20の起歪体に設けられたセンサ素子としての複数の歪ゲージに歪が集中しない構造とされている。
【0021】
具体的には、第1構造体11及び第2構造体12の中心に対して対称な位置に第4構造体14と第5構造体15とが設けられ、第4構造体14は、第1構造体11から第2構造体12に連続する凹部14fを有し、第5構造体15は第1構造体11から第2構造体12に連続する凹部15fを有している。後述するように、第1歪センサ19は、第4構造体14の凹部14f内に配置され、第2歪センサ20は、第5構造体15の凹部15f内に配置される。
【0022】
尚、第1実施形態は、第1歪センサ19と第2歪センサの2つの歪センサを具備する場合について示しているが、歪センサの数は、3つ以上であってもよい。この場合、歪センサの数に応じて構造体の数を増加すればよい。
【0023】
第4構造体14及び第5構造体15は、同一の構成であるため、第4構造体14についてのみ具体的に説明する。
【0024】
図5に示すように、第4構造体14は、第1歪センサ19を接合する接合部としての第1接続部14a及び第2接続部14bと、梁としての第3接続部14c及び第4接続部14dと、第1接続部14a、第2接続部14b、第3接続部14c及び第4接続部14dとに囲まれた開口部14eと、を有している。
【0025】
換言すると、第4構造体14は、第1構造体11と第2構造体12との間に設けられた開口部14eを有する梁である。
【0026】
第1接続部14aは、第1構造体11から第2構造体12側に延出している。第2接続部14bは、第2構造体12から第1構造体11側に延出している。
【0027】
梁としての第3接続部14c及び第4接続部14dは、第1接続部14aと第2接続部14bとの間に設けられている。
【0028】
第3接続部14c及び第4接続部14dの長さL1は、梁としての第3構造体13の長さL2(
図1にも示す)より短い。第3接続部14c及び第4接続部14dのトルク(Mz)方向の幅W1は、第1接続部14a及び第2接続部14bのトルク方向の幅W2より狭く、第3接続部14c及び第4接続部14dの幅W1の合計は、第3構造体13のトルク(Mz)方向の幅W3(
図1に示す)より狭い。このため、第3接続部14c及び第4接続部14dのトルク方向の剛性は、第1接続部14a、第2接続部14b及び第3構造体13のトルク方向の剛性に比べて低い。
【0029】
また、第3接続部14c及び第4接続部14dのFz方向の厚みは、第1構造体、第2構造体及び第3構造体のFz方向の厚みと等しい。さらに、第1接続部14aの長さL11と、第2接続部14bの長さL12と、第3接続部14c及び第4接続部14dの長さL1の合計は、第3構造体13の長さと等しい。このため、第3接続部14c及び第4接続部14dのFz方向の剛性は、第3構造体13のFz方向の剛性よりやや小さくなる。
【0030】
すなわち、後述する
図6Aに示すように、トルク(Mz)方向において、第1接続部14aと第1構造体11は、高剛性部HS1を構成し、第2接続部14bと第2構造体12は、高剛性部HS2を構成する。さらに、トルク(Mz)方向において、第3接続部14cは、低剛性部LS1を構成し、第4接続部14dは、低剛性部LS2を構成する。
【0031】
尚、第1接続部14aの長さL11と、第2接続部14bの長さL12と、第3接続部14c及び第4接続部14dの長さL1の合計は、第3構造体13の長さと等しい場合に限らず、等しくなくてもよい。
【0032】
第1接続部14aは、前述した凹部14fを有している。凹部14fの部分の厚さは、第1乃至第3構造体11、12、13の厚さより薄い。
【0033】
第1歪センサ19の一端部は、第1接続部14aの凹部14fに接続され、他端部は、第2接続部14bの凹部14fに接続される。このため、第1歪センサ19は、開口部14eを跨いでいる。凹部14fの底部は、後述するように、第4構造体14の厚みの中央以下に位置し、第1歪センサ19を構成する起歪体の表面が、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14及び第5構造体15からなる構造体の重心を含む面に一致されている。
【0034】
図6A、
図6Bは、
図5を模式的に示す図であり、
図6Aは、トルクセンサ10にトルク(Mz)方向の力を印加した場合を示し、
図6Bは、トルクセンサ10にトルク以外(Fz、Mx)の方向の力を印加した場合を示している。
【0035】
図6Aに示すように、トルクセンサ10にトルク(Mz)方向の力が印加された場合、低剛性部LS1、LS2としての第3接続部14cと第4接続部14dが変形することにより、第1歪センサ19(第2歪センサ20)が変形し、トルクを検出することが可能である。
【0036】
一方、
図6Bに示すように、トルクセンサ10にトルク以外(Fz、Mx)の方向の力が印加された場合、すなわち、第2構造体12に対して第1構造体11が図示矢印方向に変位する場合、第1接続部14aと第2接続部14bとの剛性と、第3接続部14cと第4接続部14dとの剛性がほぼ等しい。このため、第1接続部14aの長さL11と第2接続部14bの長さL12及び第3接続部14cと第4接続部14dの長さL1の合計の長さL2が有効長として働く。長さL2は、第3接続部14cと第4接続部14dの長さL1より長いため、トルク以外(Fz、Mx)の方向の力が印加された場合、第1歪センサ19(第2歪センサ20)の変形は長さL2の範囲で起こり、第1歪センサ19の起歪体に設けられたセンサ素子としての複数の歪ゲージに歪が集中しないようにすることができ、第1歪センサ19(第2歪センサ20)の検出精度の低下を防止することが可能である。
【0037】
図7は、第4構造体14を模式的に示すものである。
図7を参照して、第4構造体14の断面二次モーメント(変形し易さ)及び第4構造体14(第5構造体15)に要求される条件について説明する。
【0038】
第4構造体14の高剛性部HS2を固定し、高剛性部HS1にトルク(Mz)方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJsで表し、低剛性部LS1、LS2にトルク(Mz)方向の力を印加した場合の断面2次モーメントをJwで表し、高剛性部HS1にトルク以外(Fz)の方向の力を印加した場合の断面2次モーメントをIsで表し、低剛性部LS1、LS2にトルク以外(Fz)の方向の力を印加した場合の断面2次モーメントをIwで表わすとする。
【0039】
トルク(Mz)方向の高剛性部HS1の断面2次モーメントと、低剛性部LS1、LS2の断面二次モーメントの比は、次式(1)で表される。
【0040】
Js/Jw …(1)
トルク以外(Fz)の方向の高剛性部HS1の断面2次モーメントと、低剛性部LS1、LS2の断面2次モーメントの比は、次式(2)で表される。
【0041】
トルク以外(Fz)の方向の高剛性部HS1の断面二次モーメントと、低剛性部LS1、LS2の断面二次モーメントの比は、次式(2)で表される。
【0042】
Is/Iw …(2)
式(1)(2)の値がいずれも“1”であれば、高剛性部HS1と低剛性部LS1、LS2の断面二次モーメントは等しく、低剛性部LS1、LS2に変形は集中しない。式(1)(2)の値がいずれも“1”より大きければ大きいほど、低剛性部LS1、LS2に変形が集中することとなる。
【0043】
トルク(Mz)方向の力を印加した場合、第1歪センサ19の起歪体に設けられたセンサ素子としての複数の歪ゲージに対して歪を集中させ、トルク以外(Fz、Mx)の方向の力を印加した場合に、歪の集中箇所を歪ゲージからずらすためには、一方の変形集中度(α)が1に近く(α→1)、他方の変形集中度(β)が変形集中度(α)と比較して非常に大きい(β>>α)ことが望まれる。
【0044】
トルク(Mz)方向の力を印加したときの低剛性部LS1、LS2の変形集中度が、トルク以外(Fz)の方向の力を印加したときの低剛性部LS1、LS2の変形集中度より大きければ、トルク方向の力に対して変形し易く、トルク以外の方向の力に対して変形し難いこととなる。すなわち、次式(3)で示す関係が成立することが、第4構造体14(第5構造体15)に要求される条件である。
【0045】
Js/Jw>Is/Iw …(3)
具体的には、
図8Aは、
図7に示すVIIIA-VIIIA線に沿った断面図であり、高剛性部HS1の寸法の一例を示している。
図8Bは、
図7に示すVIIIB-VIIIB線に沿った断面図であり、低剛性部LS1、LS2の寸法の一例を示している。
【0046】
図8Aに示すように、U字型の断面を有する高剛性部HS1において、トルク以外(Fz)の方向の力が印加された場合における軸N1-N1に関する断面二次モーメントIsは、次の通りである。ここで、軸N1-N1は、高剛性部HS1の厚さ方向の中心を通る軸である。
【0047】
図8Cに示すように、一般に、L字型の断面を有する構造体とU字型の断面を有する構造体の寸法が、b=B-a、h=e
1-tの関係を満たす場合、L字型の断面を有する構造体とU字型の断面を有する構造体の断面二次モーメントIsは同一であり、次式(4)で表される。
【0048】
Is=(Be
1
3-bh
3+ae
2
3)/3 …(4)
ここで、h=e
1-t、
e
1=(aH
2+bt
2)/(2(aH+bt))
e
2=H-e
1
このため、
図8Aに示す高剛性部HS1にトルク以外(Fz)の方向の力が印加された場合における軸N1-N1に関する断面二次モーメントIsは、式(4)により求めることができる。
【0049】
尚、e1は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14、及び第5構造体15からなる弾性体としての構造体における重心の位置は、構造体の厚みの半分である。このため、厚みH=12に対してe1≒6となる。したがって、e2≒6となる。
【0050】
式(4)に
図8Aに示す寸法を代入すると、次のようになる。
【0051】
Is=(Be
1
3-bh
3+ae
2
3)/3
=(14×6
3-8×(6-5.8)
3+6×6
3)/3
=1440
また、
図8Bに示すように、長方形の断面を有する低剛性部LS1、LS2にトルク以外(Fz)の方向の力が印加された場合における、軸N2-N2に関する断面二次モーメントIsは、次の通りである。ここで、軸N2-N2は、低剛性部LS1、LS2の厚さ方向の中心を通る軸である。
【0052】
図8Dに示すように、一般に、長方形の断面を有する構造体の断面二次モーメントIw’は、次式(5)で表される。
【0053】
Iw’=bh
3/12 …(5)
式(5)に
図8Bに示す寸法を代入すると、次のようになる。
【0054】
Iw’=2×12
3/12
=288
図8Bに示す低剛性部LS1、LS2は、2つの長方形の断面を有するため、軸N2-N2に関するトルク以外(Fz)の方向の断面二次モーメントIwは、次式(6)で表される。
【0055】
Iw=2×Iw’ …(6)
したがって、軸N2-N2に関するトルク以外(Fz)の方向の断面二次モーメントIwは、次のようになる。
【0056】
Iw=576
一方、
図8Eに示すように、U字型の断面を有する高剛性部HS1において、トルク(Mz)方向の力を印加したとき、軸N3-N3に関する断面二次モーメントJsは、次の通りである。ここで、軸N3-N3は、高剛性部HS1の幅方向の中心を通る軸である。
【0057】
図8Gに示すように、一般に、I型の断面を有する構造体と、U字型の断面を有する構造体の寸法が、b=B-a、h=H-2tの関係を満たす場合、I字型の断面を有する構造体とU字型の断面を有する構造体の断面二次モーメントは同一であり、次式(7)で表される。
【0058】
Js=(BH
3-bh
3)/12 …(7)
式(7)に
図8Aに示す寸法を代入すると、次のようになる。
【0059】
Js=(12×14
3-6.2×8
3)/12
=2479
また、
図8Fに示すように、長方形の断面を有する低剛性部LS1、LS2において、トルク(Mz)方向の力を印加したとき、軸N4-N4に関する断面二次モーメントJw’は、
図8Dを用いて説明したように、次式(8)で表される。ここで、軸N4-N4は、低剛性部LS1の幅方向の中心を通る軸である。
【0060】
Jw’=bh
3/12 …(8)
式(8)に
図8Bに示す寸法を代入すると、次のようになる。
【0061】
Jw’=12×2
3/12
=8
図8Fに示す低剛性部LS1、LS2は、2つの長方形の断面を有するため、軸N4-N4に関するトルク(Mz)の方向の断面二次モーメントJwは、次式(9)で表される。
【0062】
Jw=2×Jw’ …(9)
したがって、軸N2-N2に関するトルク以外(Fz)の方向の断面二次モーメントIwは、次のようになる。
【0063】
Jw=16
上記のようにして求めたトルク以外(Fz)の方向の断面二次モーメントIs=1440、Iw=576、トルク(Mz)方向の断面二次モーメントJs=2479、Jw=16を上記式(3)に代入すると、次のようになり、式(3)の条件を満たしていることが分る。
【0064】
Js/Jw>Is/Iw
2479/16>1440/576
155>2.5
したがって、第4構造体14、第5構造体15は、トルク(Mz)方向の力に対して変形し易く、トルク以外(Fz)の方向の力に対して変形し難いことが分かる。
【0065】
図8Hは、凹部14fと第1歪センサ19(起歪体)の位置関係を示している。前述したように、凹部14fの底部は、第4構造体14の厚みの中央H/2以下に位置している。具体的には、第1歪センサ19を構成する起歪体の表面が、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14及び第5構造体15からなる構造体の重心を含む面CGに位置させるため、凹部14fの底部は、第4構造体14の重心を含む面CGより、起歪体の厚みだけ低い位置とされている。この位置は、中立面であり、起歪体に対して圧縮力及び引張力が加わらない。このため、起歪体の曲げ方向、すなわちトルク以外(Fz)の方向の歪を低減することが可能である。
(第1の実施形態の効果)
第1の実施形態によれば、第1歪センサ19が設けられる第4構造体14、及び第2歪センサ20が設けられる第5構造体15は、それぞれトルク(Mz)方向及びトルク以外(Fz、Mx)の方向の力に対して高剛性部として作用する第1接続部14a及び第2接続部14bと、トルク(Mz)方向の力に対して低剛性部として作用し、トルク以外(Fz、Mx)の方向の力に対して高剛性部として作用する第3接続部14c及び第4接続部14dを具備している。このため、第1歪センサ19及び第2歪センサ20の歪ゲージ51、52、53、54にトルク以外の方向の力によって生じる歪が集中することを防止できる。したがって、歪ゲージ51、52、53、54に印加される歪の絶対量を低減でき、第1歪センサ19及び第2歪センサ20のトルク以外の方向の力に対する検出電圧を大幅に低減できる。よって、トルクやトルク以外の他軸干渉を防止して形状の大型化を防止でき、高精度のトルクセンサを提供することが可能である。
【0066】
以下、第1の実施形態の効果について、比較例を参照して具体的に説明する。
【0067】
図9は、トルクセンサ10の比較例を示している。
図9に示すトルクセンサ30は、第1歪センサ19と第2歪センサ20の接続部の構成が、第1の実施形態に示すトルクセンサ10と相違し、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0068】
トルクセンサ30において、第1歪センサ19と第2歪センサ20の一端部は、第1構造体11に設けられた突起11-1にそれぞれ接続され、他端部は、第2構造体12に設けられた突起12-1にそれぞれ接続される。突起11-1、12-1は、例えば第1構造体11及び第2構造体12と同等の厚みを有している。突起11-1と突起12-1との間隔は、
図5に示す第3接続部14c、第4接続部14dの長さL1と同等である。
【0069】
比較例としてのトルクセンサ30は、第3構造体13のみがトルク方向及びトルク以外の方向の力に対して高剛性部として作用し、第1歪センサ19と第2歪センサ20は、第1構造体11と第2構造体12との間に起歪体が設けられているだけである。このため、トルクセンサ30にトルク(Mz)方向の力を印加した場合と、トルク以外(Fz、Mx)の方向の力を印加した場合のいずれの方向においても、第1歪センサ19と第2歪センサ20の起歪体に設けられた歪ゲージに歪が集中することとなる。
【0070】
図10A、
図10Bは、
図9を模式的に示す図であり、
図10Aは、トルクセンサ30にトルク(Mz)方向の力を印加した場合を示し、
図10Bは、トルクセンサ30にトルク以外(Fz、Mx)の方向の力を印加した場合を示している。
【0071】
図11は、第1の実施形態に係るトルクセンサ10と比較例に係るトルクセンサ30の各軸方向に同一の力を印加した場合における歪を示している。
【0072】
図11から明らかなように、第1の実施形態に係るトルクセンサ10の場合、トルク(Mz)方向の力に対する歪が比較例に比べて大きく、トルク以外(Fx、Fy、Fz、Mx、My)の方向の力に対する歪が比較例に比べて小さい。特に、Fz及びMx方向の力に対する歪を比較例に比べて格段に小さくすることが可能であることが分る。したがって、第1の実施形態によれば、第1歪センサ19及び第2歪センサ20にトルク以外の方向の力による歪を低減でき、第1歪センサ19及び第2歪センサ20の検出精度の低下を防止することが可能である。
【0073】
また、第1歪センサ19を構成する起歪体の表面は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14及び第5構造体15からなる構造体の重心を含む面CGに位置されている。このため、起歪体の曲げ方向、すなわちトルク以外(Fz)の方向の歪を低減することが可能である。
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態を示している。
【0074】
前述したように、第1歪センサ19は、第4構造体14に設けられ、第2歪センサ20は、第5構造体15に設けられている。第1歪センサ19及び第2歪センサ20の構成は、同一であるため、第1歪センサ19の構成についてのみ説明する。
【0075】
第1歪センサ19は、起歪体41と、起歪体41の表面に配置されたセンサ素子としての複数の歪ゲージ51、52、53、54を具備している。
【0076】
起歪体41は、矩形状の金属板、例えばステンレス鋼(SUS)により構成されている。起歪体41の厚みは、第3構造体13の厚みより薄い。
【0077】
歪ゲージ51、52、53、54は、起歪体41上に設けられた例えばCr-Nの薄膜抵抗体により構成されている。薄膜抵抗体の材料は、Cr-Nに限定されるものではない。
【0078】
起歪体41は、一端部が第1接続部14aに接続され、他端部が第2接続部14bに接続される。起歪体41と、第1接続部14a及び第2接続部14bとの接続方法は、例えば溶接、ねじ止め、又は接着剤を用いた接続方法を用いることが可能である。
【0079】
起歪体41は、例えば第1接続部14aに溶接された箇所と第2接続部14bに溶接された箇所との間の部分が実質的な起歪体として機能する。このため、起歪体41の有効長は、第1接続部14aに接続された箇所から第2接続部14bに接続された箇所との間の長さに相当する。
【0080】
複数の歪ゲージ51、52、53、54は、起歪体41において、起歪体41の有効長の中央部CTより第2構造体12側の領域AR1に配置される。この領域AR1は、開口部14eの範囲内で、起歪体41に大きな歪が生じる領域である。後述するように、この領域AR1は、トルク以外の方向、例えばFx、My方向の力に対する第1歪センサ19の感度と、トルク(Mz)方向における第1歪センサ19の感度が同一となる領域である。
【0081】
歪ゲージ51、52、53、54は、領域AR1において、歪ゲージ51、52、53、54の長手方向が起歪体41の2つの対角線DG1、DG2に沿って配置される。すなわち、歪ゲージ51、52は、その長手方向が破線で示す一方の対角線DG1に沿って配置され、歪ゲージ53、54は、その長手方向が破線で示す他方の対角線DG2に沿って配置される。対角線DG1、DG2は、起歪体41の開口部14e内に位置する長方形の領域に対応している。
【0082】
第1歪センサ19の歪ゲージ51、52、53、54は、1つのブリッジ回路を構成し、第2歪センサ20の歪ゲージ51、52、53、54も、1つのブリッジ回路を構成する。このため、トルクセンサ10は、2つのブリッジ回路を具備している。
【0083】
図13は、第1歪センサ19のブリッジ回路50の一例を示している。第2歪センサ20もブリッジ回路50と同様の構成のブリッジ回路を具備している。第1歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧と、第2歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧のそれぞれは、図示せぬ例えばソフトウェアを用いて、オフセットや温度などが補償される。この後、第1歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧と、第2歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧が統合されて、トルクセンサ10の検出電圧として出力される。オフセットや温度などの補償は、ソフトウェアに限定されるものではなく、ハードウェアによっても可能である。
【0084】
ブリッジ回路50は、電源Voと接地GNDとの間に歪ゲージ52と歪ゲージ53の直列回路と、歪ゲージ54と歪ゲージ51の直列回路が配置されている。歪ゲージ52と歪ゲージ53の接続ノードから出力電圧Vout+が出力され、歪ゲージ54と歪ゲージ51の接続ノードから出力電圧Vout-が出力される。出力電圧Vout+及び出力電圧Vout-は、演算増幅器OPに供給され、演算増幅器OPの出力端から出力電圧Voutが出力される。
【0085】
トルクセンサ10にトルク(Mz)方向の力が印加された場合、ブリッジ回路50の一方の接続ノードの出力電圧Vout+、及び他方の接続ノードの出力電圧Vout-から、式(5)で示すトルクセンサ10の出力電圧Voutが得られる。
【0086】
Vout=(Vout+-Vout-)
=(R3/(R2+R3)-R1/(R1+R4))・Vo …(5)
ここで、R1は、歪ゲージ51の抵抗値、R2は、歪ゲージ52の抵抗値、R3は、歪ゲージ53の抵抗値、R4は、歪ゲージ54の抵抗値である。
【0087】
トルクセンサ10にトルクが印加されていない状態において、理想的には、R1=R2=R3=R4=Rである。しかし、実際には、抵抗値にばらつきがあり、トルクが印加されていない状態において、抵抗値のばらつきに伴う電圧が出力される。この電圧は、オフセット調整によってゼロとされる。
【0088】
一方、トルクセンサ10にトルク以外の方向、例えばFx、My方向の力が加わった場合、R1~R4の抵抗値が変化することにより、ブリッジ回路50から出力電圧Voutが出力される。しかし、第2歪センサ20のブリッジ回路50の出力電圧は、第1歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧と正負が逆の電圧が出力される。このため、それぞれのブリッジ回路50における出力電圧は、絶対値が同じで、正負が異なるため、相殺され、検出電圧は0Vとなる。
【0089】
センサ素子としての歪ゲージ51、52、53、54は、トルク(Mz)方向と、トルク以外(Fx、My)の方向とで、同一の変位量である場合、同一の電圧を出力することが好ましい。このため、歪ゲージ51、52、53、54は、トルク(Mz)方向と、トルク以外(Fx、My)の方向とで、起歪体41の歪が等しい領域(測定の感度が等しい領域)に配置されることが好ましい。
【0090】
図14は、トルクセンサ10にトルク(Mz)方向の力が印加された場合と、トルク以外(Fx,My)の方向の力が印加された場合における起歪体41の様子を模式的に示している。
【0091】
第1構造体11と第2構造体12との間に設けられた起歪体41の動きをマクロ的に観察すると、トルクセンサ10にトルク(Mz)方向の力が印加された場合と、トルク以外(Fx,My)の方向の力が印加された場合のいずれにおいても、起歪体41をせん断方向に変化させているように見える。
【0092】
しかし、第1構造体11と第2構造体12との間に設けられた起歪体41の動きをミクロ的に観察すると、トルクセンサ10にトルク(Mz)方向の力が印加された場合、起歪体41には、回転力が作用する。一方、トルクセンサ10にトルク以外(Fx,My)の方向の力が印加された場合、起歪体41には、並進力が作用する。このため、トルク(Mz)方向の力が印加された場合と、トルク以外(Fx,My)の方向の力が印加された場合において、起歪体41の変形に差が生じる。
【0093】
すなわち、起歪体41の第2構造体12側の領域AR1の変形と、起歪体41の第1構造体11側の領域AR2の変形とに差が生じる。具体的には、起歪体41の領域AR1において、トルク(Mz)方向の力が印加された場合における起歪体41の歪と、トルク以外(Fx、My)の方向の力が印加された場合における起歪体41の歪との差は、起歪体41の領域AR2において、トルク(Mz)方向の力が印加された場合における起歪体41の歪と、トルク以外(Fx、My)の方向の力が印加された場合における起歪体41の歪との差より小さい。
【0094】
つまり、第2構造体12側の領域AR1は、トルク方向(Mz)の力が印加された場合における起歪体41の歪と、トルク以外(Fx、My)の方向の力が印加された場合における起歪体41の歪との差が小さい。
【0095】
このため、領域AR1に複数の歪ゲージ51、52、53、54を配置した場合、トルク(Mz)の検出感度と、トルク以外(Fx、My)の検出感度の差は、1%未満と少ない。これに対して、領域AR2に複数の歪ゲージ51、52、53、54を配置した場合、トルクの検出感度と、トルク以外の検出感度の差は、数%である。したがって、第2構造体12側の領域AR1に複数の歪ゲージ51、52、53、54を配置することが好ましい。
(第2の実施形態の効果)
上記第2の実施形態によれば、第1歪センサ19と第2歪センサ20のそれぞれは、第1構造体11と、第2構造体12との間に接続された起歪体41と、起歪体41に設けられたセンサ素子としての複数の歪ゲージ51、52、53、54とを具備し、複数の歪ゲージ51、52、53、54は、起歪体41の長手方向中央部CTより第2構造体12側の領域AR1に配置されている。起歪体41の領域AR1は、第1歪センサ19と第2歪センサ20のそれぞれに、トルク方向の力が印加された場合の歪(感度)(a1、a2)と、トルク以外の方向の力が印加された場合の歪(感度)(b1、b2)の差が少ない領域である(a1≒b1、a2≒b2、a1≠a2)。このため、第1歪センサ19と第2歪センサ20のそれぞれに対してトルクの感度を調整することによって、第1構造体11、第2構造体12、第3構造体13の加工精度や、第1構造体11、第2構造体12に対する第1歪センサ19と第2歪センサ20の配置精度に依存することなく、トルクの検出精度の低下を防止することができる。
【0096】
しかも、起歪体41の領域AR1に配置されたブリッジ回路50は、トルク方向の力とトルク以外の方向の力に対する検出感度の差が小さいため、第1歪センサ19と第2歪センサ20の出力電圧の誤差も小さい。このため、2つのブリッジ回路50から出力される電圧を校正する際、トルクに対する検出誤差を校正するだけで、トルク以外の検出誤差も校正することができる。したがって、トルク以外(Fx,My)の方向の力を検出するために別の歪センサを設ける必要がないため、校正時間を短縮でき、高速な応答を実現することが可能である。
【0097】
以下、第2の実施形態の効果について具体的に説明する。
【0098】
図15は、比較例に係るトルクセンサ60を概略的に示している。このトルクセンサ60は、第1構造体11と第2構造体12との間に第1歪センサ61と第2歪センサ62を具備している。第1歪センサ61と第2歪センサ62は、それぞれ起歪体63を有し、起歪体63のそれぞれに、
図13に示すブリッジ回路を構成する複数の歪ゲージ51、52、53、54が配置されている。
図15は、概略図であるため、第3構造体13は、省略している。
【0099】
比較例において、歪ゲージ51、52、53、54の配置が第2の実施形態と相違している。すなわち、歪ゲージ52、53は、起歪体63の第1構造体11側の領域に配置され、歪ゲージ51、54は、起歪体63の第2構造体12側の領域に配置されている。
【0100】
図15に示す構成の場合、第1構造体11側の領域に配置された歪ゲージ52、53は、トルク(Mz)方向とトルク以外(Fx、My)の方向とで、起歪体63の歪が異なる。このため、トルク(Mz)方向の力が印加された場合の第1歪センサ61の感度と第2歪センサ62の感度と、トルク以外(Fx、My)の方向の力が印加された場合の第1歪センサ61の感度と第2歪センサ62の感度との差が大きい。
【0101】
具体的には、トルクセンサ60にトルク以外(Fx、My)の方向の力を印加した場合、トルク以外(Fx、My)の方向の感度は、トルク(Mz)方向の感度と異なるため、第1歪センサ61の出力電圧の値(正の値)と、第2歪センサ62の出力電圧の値(負の値)は、互いに異なる。このため、トルクセンサ60は、第1歪センサ61と第2歪センサ62の平均値からなる誤差を出力することとなる。
【0102】
一方、第2の実施形態のトルクセンサ10の場合、トルクセンサ10にトルク以外(Fx、My)の方向の力を印加した場合、トルク以外(Fx、My)の方向の感度は、トルク(Mz)方向の感度と一致している。よって、第1歪センサ19の出力電圧の値(正の値)(Vout1)と、第2歪センサ20の出力電圧の値(負の値)(-Vout2)は、ほぼ等しくなる(|Vout1|≒|-Vout2|)。このため、トルクセンサ10の出力は、第1歪センサ61と第2歪センサ62の出力電圧が相殺され、ほぼ0となる。したがって、第2の実施形態の場合、トルク以外(Fx、My)の方向の力に対する検出誤差を低減することができる。
【0103】
比較例に係るトルクセンサ60の場合、トルク(Mz)方向とトルク以外(Fx、My)の方向とで、第1歪センサ61と第2歪センサ62の出力電圧の誤差が大きい(|Vout1|≠|-Vout2|)。このため、これらの誤差を校正するために、トルク方向の検出誤差を修正する校正と、トルク以外の方向の検出誤差を修正する校正を行う必要がある。したがって、比較例に係るトルクセンサ60は、トルク以外の方向の力を検出するための歪ゲージを含むブリッジ回路を別途設ける必要がある。このため、比較例に係るトルクセンサ60は、回路基板の大型化やソフトウェアによる演算処理時間が増加し、第2の実施形態に比べて調整作業が煩雑であり、応答性が低下する。
【0104】
一方、第2の実施形態の場合、トルク(Mz)方向とトルク以外(Fx、My)の方向とで、第1歪センサ19と第2歪センサ20の出力電圧の誤差が殆どない。このため、トルク方向の検出誤差を修正するだけでよい。したがって、校正時間を短縮することができ、トルクセンサの応答性能を向上することが可能である。
【0105】
また、第2の実施形態は、トルクセンサ10の構造に限定されず、歪ゲージ51、52、53、54が領域AR1に配置されていればよい。このため、第2の実施形態に係る配置を、例えば
図9に示すような構造のトルクセンサ30に適用しても第2の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
(第3の実施形態)
図16は、第3の実施形態を示すものであり、
図1のBで示す部分を拡大して示している。
【0106】
図2を参照して説明したように、第1歪センサ19は、ストッパー16により覆われ、第2歪センサ20は、ストッパー17により覆われている。ストッパー16及びストッパー17は、例えばステンレス鋼や鉄系の合金により形成される。ストッパー16及びストッパー17は、第1歪センサ19と第2歪センサ20の機械的な変形を防止、歪ゲージ51、52、53、54を保護する。さらに、ストッパー16及びストッパー17は、第1歪センサ19と第2歪センサ20の防水カバーを兼ねている。具体的な防水構造については、説明を省略する。
【0107】
ストッパー16とストッパー17の構成は同一であるため、ストッパー16についてのみ説明する。
【0108】
図16に示すように、ストッパー16は、一端部16aと他端部16bを有し、ストッパー16の他端部16bの幅は、一端部16aの幅より狭くされている。ストッパー16の一端部16aは、第4構造体14の第2構造体12側に形成された係合部としての凹部14f内に例えば圧入され、固定される。ストッパー16の他端部16bは、第4構造体14の第1構造体11側に形成された凹部14f内に配置される。ストッパー16の他端部16bの幅は、第1構造体11側に設けられた凹部14fの幅より狭く、ストッパー16の他端部16bの両側と、凹部14fの側面との間には、間隙GPがそれぞれ設けられる。
【0109】
間隙GPは、第3構造体13の剛性と定格トルクにより決定される。
【0110】
具体的には、トルクセンサ10に例えば1000N・mのトルクが印加された場合、第1構造体11が第2構造体12に対して例えば10μm変形する場合、間隙GPは、例えば10μmに設定される。
【0111】
【0112】
図17Aに示すように、トルクセンサ10にトルクが印加されていない場合、ストッパー16の他端部16bの両側と凹部14fとの間には、それぞれ予め定められた間隙GPが設けられている。この状態において、トルクセンサ10に定格トルク以下のトルクが印加された場合、第1構造体11が第2構造体12に対して移動し、第1歪センサ19から印加されたトルクに対応する電圧が出力される。トルクセンサ10へのトルクの印加が除去されると、第1歪センサ19は弾性変形により復帰する。
【0113】
一方、
図17Bに示すように、トルクセンサ10に定格トルクより大きなトルクが印加された場合、第1構造体11の凹部14fの側面がストッパー16の他端部16bに当接され、第2構造体12に対する第1構造体11の移動が制限される。このため、第1歪センサ19は、弾性変形の範囲で保護される。トルクセンサ10へのトルクの印加が除去されると、第1歪センサ19は弾性変形により復帰する。第2歪センサ20も同様の構成により保護される。
【0114】
図18は、トルクセンサ10に印加される負荷としてのトルクとストッパー16の動作の関係を説明するために示す図であり、トルクセンサ10に印加されるトルクと、検出される歪(ブリッジ回路50の出力電圧)との関係を概略的に示している。
【0115】
図18に示すように、トルクセンサ10に定格トルク以下のトルクが印加された場合、第1歪センサ19(第2歪センサ20)の起歪体41は、第1構造体11が第2構造体12に対して移動し、印加されたトルクに対応する電圧が第1歪センサ19(第2歪センサ20)から出力される。
【0116】
一方、トルクセンサ10に定格トルクより大きなトルクが印加されると、凹部14fの側面がストッパー16に当接し、ストッパー16(ストッパー17)の剛性により複数の第3構造体13の変形が抑制され、それに伴い起歪体41の変形が抑制される。すなわち、ストッパー16の動作点Opは、トルクセンサ10の定格トルクと等しく設定され、ストッパー16は、定格トルクより大きなトルクに対して、起歪体41を保護している。
(第3の実施形態の効果)
上記第3の実施形態によれば、第1歪センサ19及び第2歪センサ20にカバーとしてのストッパー16を設け、ストッパー16の一端部16aは、第2構造体12側の凹部14f内に固定され、他端部16bは、トルクセンサ10に定格トルクより大きなトルクが印加された場合、第1構造体11側の凹部14fの側面に当接する。このため、第1歪センサ19及び第2歪センサ20を保護することが可能である。さらに、第1歪センサ19及び第2歪センサ20以外の構造体も、第1歪センサ19及び第2歪センサ20と同様に、塑性変形などから保護される。
【0117】
しかも、トルクセンサ10の定格トルクを歪ゲージの0.2%耐力に近づけることができる。このため、定格トルクにおけるブリッジ回路50の出力電圧を大きくすることができる。したがって、高分解能、高精度のトルクセンサを提供することができる。
【0118】
図19は、歪ゲージの歪と応力の関係を示すものであり、第3の実施形態に係るトルクセンサの定格トルクと、比較例としてのストッパー16及びストッパー17を持たないトルクセンサの定格トルクと、を示している。
【0119】
比較例としてのストッパー16及びストッパー17を持たない一般的なトルクセンサの場合、歪ゲージは、衝撃や疲労に対する安全率を3乃至5程度に設定して設計される。安全率を例えば3とした場合、歪ゲージの応力は、0.2%耐力の1/3に設定される。このため、定格トルクも、破壊トルクの1/3に設定される。
【0120】
これに対して、第3の実施形態の場合、ストッパー16及びストッパー17により第1歪センサ19及び第2歪センサ20を保護しているため、歪ゲージの安全率を1以上に設定する必要がない。このため、歪ゲージの定格トルクをストッパー16及びストッパー17を持たない一般的なトルクセンサより大きく設定することができる。したがって、高分解能、高精度のトルクセンサを提供することができる。
【0121】
さらに、ストッパー16の剛性を高めることにより、高許容負荷(高最大トルク)のトルクセンサを提供することができる。
(変形例)
図20は、第3の実施形態の第1の変形例を示すものである。第3の実施形態において、ストッパー16は、他端部16bが第1構造体11側の凹部14fの側面に当接することにより、第1歪センサ19を保護した。
【0122】
第1の変形例において、ストッパー16の他端部16bは、開口部16b-1を有し、第4構造体14の第1構造体11側には、開口部16b-1内に挿入された突起14gが設けられている。開口部16b-1と突起14gの間には、間隙GP1が設けられている。間隙GP1の寸法は、例えば間隙GPの寸法以下である。このため、トルクセンサ10に許容トルクより大きなトルクが印加された場合、ストッパー16の開口部16b-1に突起14gが当接することにより、第1歪センサ19を保護することができる。
【0123】
第2歪センサ20のストッパー17もストッパー16と同様の構成を具備している。
【0124】
上記第1の変形例によっても、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第1の変形例によれば、ストッパー16の開口部16b-1に突起14gが当接することにより、一層、第1歪センサ19(第2歪センサ20)を保護することが可能である。
【0125】
図21は、第3の実施形態の第2の変形例を示している。
【0126】
第3の実施形態は、ストッパー16とストッパー17を具備しているのに対して、第2の変形例は、さらに、4つのストッパー16-1、16-2、17-1、17-2を具備している。すなわち、ストッパー16-1、16-2、17-1、17-2の構造は、ストッパー16とストッパー17と同様である。
【0127】
第2の変形例によっても第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、第2の変形例によれば、第3の実施形態に比べてストッパーの数が多いため、一層第1歪センサ19、第2歪センサ20を保護することが可能である。
【0128】
その他、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10…トルクセンサ、11…第1構造体、12…第2構造体、13…第3構造体、14…第4構造体、14a…第1接続部、14b…第2接続部、14c…第3接続部、14d…第4接続部、14e…開口部、14f…凹部(係合部)、14g…突起、15…第5構造体、16、16-1、16-2…ストッパー、16b-1…開口部、17、17-1、17-2…ストッパー、19…第1歪センサ、20…第2歪センサ、41…起歪体、GP、GP1…間隙、51、52、53、54…センサ素子としての歪ゲージ。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造体と、
第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた少なくとも1つの第4構造体と、
前記第4構造体に設けられた歪センサと、
を具備し、
前記第4構造体は、
前記第1構造体に設けられ、前記歪センサの一端部が接続される第1接続部と、
前記第2構造体に設けられ、前記歪センサの他端部が接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部のトルク方向の剛性より低いトルク方向の剛性を有し、トルク以外の方向の力に対してトルク方向の剛性より高い剛性を有する第3接続部と第4接続部と、
を具備することを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
環状の第1構造体と、
前記第1構造体と同心状に配置された環状の第2構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、
前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた少なくとも1つの第4構造体と、
前記第4構造体に設けられた歪センサと、
を具備し、
前記第4構造体は、
前記第1構造体に設けられ、前記歪センサの一端部が接続される第1接続部と、
前記第2構造体に設けられ、前記歪センサの他端部が接続される第2接続部と、
前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部のトルク方向の剛性より低いトルク方向の剛性を有し、トルク以外の方向の力に対してトルク方向の剛性より高い剛性を有する第3接続部と第4接続部と、
を具備することを特徴とするトルクセンサ。
【請求項3】
前記第3接続部と前記第4接続部の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向に沿った長さは、前記第3構造体の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向に沿った長さより短いことを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記第3接続部と前記第4接続部の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向と交差し、前記第1構造体の平面に沿った方向の幅は、前記第3構造体の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向と交差し、前記第1構造体の平面に沿った方向の幅より狭いことを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記第1接続部と前記第2接続部の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向と交差し、前記第1構造体の平面に沿った方向の幅は、前記第3接続部と前記第4接続部の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向と交差し、前記第1構造体の平面に沿った方向の幅より広いことを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項6】
前記第1接続部と前記第2接続部の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向と交差し、前記第1構造体の平面と交差する方向の厚さは、前記第3接続部と前記第4接続部の前記第1構造体から前記第2構造体へと向かう方向と交差し、前記第1構造体の平面と交差する方向の厚さより薄いことを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項7】
前記第1接続部にトルク方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJsで表し、前記第3接続部及び前記第4接続部にトルク方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJwで表し、前記第1接続部にトルク方向以外の力を印加した場合の断面二次モーメントをIsで表し、前記第3接続部及び前記第4接続部にトルク方向以外の力を印加した場合の断面二次モーメントをIwで表した場合、Js、Jw、Is、Iwが次式
Js/Jw>Is/Iw
の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【請求項8】
前記第4構造体は、前記歪センサが配置される凹部を有し、前記歪センサの表面は、前記第1構造体、前記第2構造体、複数の前記第3構造体、及び少なくとも1つの前記第4構造体からなる構造体の重心を含む面と一致されていることを特徴とする請求項1又は2記載のトルクセンサ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本実施形態のトルクセンサは、第1構造体と、第2構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体とを接続する複数の第3構造体と、前記第1構造体と前記第2構造体との間に設けられた少なくとも1つの第4構造体と、前記第4構造体に設けられた歪センサと、を具備し、前記第4構造体は、前記第1構造体に設けられ、前記歪センサの一端部が接続される第1接続部と、前記第2構造体に設けられ、前記歪センサの他端部が接続される第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に設けられ、前記第1接続部及び前記第2接続部のトルク方向の剛性より低いトルク方向の剛性を有し、トルク以外の方向の力に対してトルク方向の剛性より高い剛性を有する第3接続部と第4接続部と、を具備する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
第4構造体14の高剛性部HS2を固定し、高剛性部HS1にトルク(Mz)方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJsで表し、低剛性部LS1、LS2にトルク(Mz)方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをJwで表し、高剛性部HS1にトルク以外(Fz)の方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをIsで表し、低剛性部LS1、LS2にトルク以外(Fz)の方向の力を印加した場合の断面二次モーメントをIwで表わすとする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
トルク(Mz)方向の高剛性部HS1の断面二次モーメントと、低剛性部LS1、LS2の断面二次モーメントの比は、次式(1)で表される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
Js/Jw …(1)
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
尚、e1は、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14、及び第5構造体15からなる弾性体としての構造体における重心の位置であり、構造体の厚みの半分である。このため、厚みH=12に対してe1≒6となる。したがって、e2≒6となる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
図8Hは、凹部14fと第1歪センサ19(起歪体)の位置関係を示している。前述したように、凹部14fの底部は、第4構造体14の厚みの中央H/2以下に位置している。具体的には、第1歪センサ19を構成する起歪体の表面
を、第1構造体11、第2構造体12、複数の第3構造体13、第4構造体14及び第5構造体15からなる構造体の重心を含む面CGに位置させるため、凹部14fの底部は、第4構造体14の重心を含む面CGより、起歪体の厚みだけ低い位置とされている。この位置は、中立面であり、起歪体に対して圧縮力及び引張力が加わらない。このため、起歪体の曲げ方向、すなわちトルク以外(Fz)の方向の歪を低減することが可能である。
(第1の実施形態の効果)
第1の実施形態によれば、第1歪センサ19が設けられる第4構造体14、及び第2歪センサ20が設けられる第5構造体15は、それぞれトルク(Mz)方向及びトルク以外(Fz、Mx)の方向の力に対して高剛性部として作用する第1接続部14a及び第2接続部14bと、トルク(Mz)方向の力に対して低剛性部として作用し、トルク以外(Fz、Mx)の方向の力に対して高剛性部として作用する第3接続部14c及び第4接続部14dを具備している。このため、第1歪センサ19及び第2歪センサ20の歪ゲージ51、52、53、54にトルク以外の方向の力によって生じる歪が集中することを防止できる。したがって、歪ゲージ51、52、53、54に印加される歪の絶対量を低減でき、第1歪センサ19及び第2歪センサ20のトルク以外の方向の力に対する検出電圧を大幅に低減できる。よって、トルクやトルク以外の他軸干渉を防止して形状の大型化を防止でき、高精度のトルクセンサを提供することが可能である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
図13は、第1歪センサ19のブリッジ回路50の一例を示している。第2歪センサ20もブリッジ回路50と同様の構成のブリッジ回路を具備している。第1歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧と、第2歪センサ
20のブリッジ回路50の出力電圧のそれぞれは、図示せぬ例えばソフトウェアを用いて、オフセットや温度などが補償される。この後、第1歪センサ19のブリッジ回路50の出力電圧と、第2歪センサ
20のブリッジ回路50の出力電圧が統合されて、トルクセンサ10の検出電圧として出力される。オフセットや温度などの補償は、ソフトウェアに限定されるものではなく、ハードウェアによっても可能である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
図2を参照して説明したように、第1歪センサ19は、ストッパー16により覆われ、第2歪センサ20は、ストッパー17により覆われている。ストッパー16及びストッパー17は、例えばステンレス鋼や鉄系の合金により形成される。ストッパー16及びストッパー17は、第1歪センサ19と第2歪センサ20の機械的な変形を防止
し、歪ゲージ51、52、53、54を保護する。さらに、ストッパー16及びストッパー17は、第1歪センサ19と第2歪センサ20の防水カバーを兼ねている。具体的な防水構造については、説明を省略する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
第3の実施形態は、ストッパー16とストッパー17を具備しているのに対して、第2の変形例は、さらに、4つのストッパー16-1、16-2、17-1、17-2を具備している。ストッパー16-1、16-2、17-1、17-2の構造は、ストッパー16とストッパー17と同様である。