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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101122
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/54 20060101AFI20220629BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B23Q1/54
B25J11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215523
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
【テーマコード(参考)】
3C048
3C707
【Fターム(参考)】
3C048BC01
3C048CC04
3C048DD15
3C707AS12
3C707BS24
3C707HS14
3C707HT12
3C707HT24
3C707HT39
(57)【要約】
【課題】エンドエフェクタを旋回する場合に生じる遠心力の増大を抑制し、エンドエフェクタの経路誤差の増大を防止することができる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械は、第一軸回りに回転する回転部と、該回転部から延びる第一アームと、該第一アームに連結し、且つエンドエフェクタを支持する第二アームと、前記回転部及び第二アームに動力を供給する単一の動力源と、該動力源からの動力の供給先を前記回転部及び第二アームの一方から他方に切り替える切替機構とを備え、前記第二アームは前記第一軸に交差する第二軸回りに回転する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸回りに回転する回転部と、
該回転部から延びる第一アームと、
該第一アームに連結し、且つエンドエフェクタを支持する第二アームと、
前記回転部及び第二アームに動力を供給する単一の動力源と、
該動力源からの動力の供給先を前記回転部及び第二アームの一方から他方に切り替える切替機構と
を備え、
前記第二アームは前記第一軸に交差する第二軸回りに回転する
工作機械。
【請求項2】
前記回転部を支持する支持部を備え、
前記切替機構は、
前記回転部及び第一アームに設けてあり、前記第二アームに動力を伝達する伝達機構と、
前記動力源の動力によって駆動し、前記伝達機構に連結する駆動歯車と、
前記回転部に設けてあり、前記回転部を前記支持部に固定するか又は前記駆動歯車に連結するクラッチと
を備える
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記支持部に設けてあり、前記クラッチが係合する第一係合部と、
前記駆動歯車に設けてあり、前記クラッチが係合する第二係合部と
を備え、
前記クラッチは動力の供給先の切替時に、前記第一係合部及び第二係合部の少なくとも一方に係合する
請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記クラッチは筒状をなし、
前記クラッチの一端部に複数の第一歯が形成してあり、
前記クラッチの他端部に複数の第二歯が形成してあり、
前記第一歯の間に前記第一係合部が対向配置してあり、
前記第二歯の間に前記第二係合部が対向配置してあり、
前記クラッチを前記第一係合部又は第二係合部に向けて動かす移動機構を備える
請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記伝達機構は、
前記第二アームに連結し、前記第二軸回りに回転する第二回転部と、
該第二回転部及び駆動歯車の間に設けた少なくとも一つの中間軸と、
該中間軸及び前記駆動歯車の間、又は中間軸同士の間に設けた第一歯車機構と、
前記第二回転部及び中間軸の間に設けてあり、前記第一歯車機構よりも高い減速比を有する第二歯車機構と
を備える
請求項2から4のいずれか一つに記載の工作機械。
【請求項6】
前記回転部、第一アーム及び第二アームを覆うカバーを備え、
前記動力源は前記カバーの外側に設けてある
請求項1から5のいずれか一つに記載の工作機械。
【請求項7】
前記第一軸及び第二軸の間の角度は45度よりも大きく90度以下である
請求項1から6のいずれか一つに記載の工作機械。
【請求項8】
前記第二軸に平行な回転軸を備え、
前記第二軸に平行な回転軸の軸回りの起動トルクは、前記エンドエフェクタに作用する切削負荷の第二軸回りの成分と、前記第二軸と前記エンドエフェクタとの間の距離との積よりも大きい
請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
前記切替機構は、四つの傘歯車を有する伝動歯車装置、又は遊星歯車装置を含む
請求項1に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ワークを加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パラレルリンク機構を使用し、物品の加工及び組立を行うロボットがある。パラレルリンク機構の端部に、保持部に保持したエンドエフェクタが設けてある。保持部は上下軸回りに回転するモータと、左右軸回りに回転するモータとを有する。二つのモータは互いに独立して回転し、エンドエフェクタの位置決めを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-203282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方のモータを回転し、エンドエフェクタを旋回する場合、他方のモータを含む保持部全体が回転する。他方のモータの重量は大きく、旋回時にエンドエフェクタに作用する遠心力は増大し、エンドエフェクタの経路誤差が大きくなるおそれがある。更に、他方のモータに繋がる動力線と信号線が機械本体に巻き付くのを防ぐ為、一方のモータの旋回範囲を限定する必要がある。エンドエフェクタが一回転すれば加工ができる場合でも、旋回範囲を限定時、一回転の動作とは異なる複雑な動作をさせる必要が有る。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、エンドエフェクタを旋回させる場合に生じる遠心力の増大を抑制し、エンドエフェクタの旋回速度を高くしても経路誤差を小さくすることができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、第一軸回りに回転する回転部と、該回転部から延びる第一アームと、該第一アームに連結し、且つエンドエフェクタを支持する第二アームと、前記回転部及び第二アームに動力を供給する単一の動力源と、該動力源からの動力の供給先を前記回転部及び第二アームの一方から他方に切り替える切替機構とを備え、前記第二アームは前記第一軸に交差する第二軸回りに回転する。
【0007】
本開示の一実施形態においては、第一アームは回転部に設けてあり、回転部と共に第一軸回りに回転する。第二アームは第二軸回りに回転する。切替機構を介して、単一の動力源から回転部又は第二アームに動力を供給する。故に、エンドエフェクタの旋回速度を高くしてもモータが一つしかないので遠心力が増大することがなく経路誤差を小さくできる。また、モータが一つしかないので配線が容易となる。
【0008】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記回転部を支持する支持部を備え、前記切替機構は、前記回転部及び第一アームに設けてあり、前記第二アームに動力を伝達する伝達機構と、前記動力源の動力によって駆動し、前記伝達機構に連結する駆動歯車と、前記回転部に設けてあり、前記回転部を前記支持部に固定するか又は前記駆動歯車に連結するクラッチとを備える。
【0009】
本開示の一実施形態においては、クラッチが回転部を支持部に固定した場合、伝達機構及び駆動歯車によって、動力源からの動力は第二アームに伝達する。クラッチが駆動歯車に連結した場合、動力は回転部に伝達する。故に、本発明は切替機構を歯車、クラッチ等標準的な部品で構成したので小型化且つ安価に実現できる。
【0010】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記支持部に設けてあり、前記クラッチが係合する第一係合部と、前記駆動歯車に設けてあり、前記クラッチが係合する第二係合部とを備え、前記クラッチは動力の供給先の切替時に、前記第一係合部及び第二係合部の少なくとも一方に係合する。
【0011】
本開示の一実施形態においては、動力の供給先の切替時に、第一係合部及び第二係合部の少なくとも一方にクラッチは係合するので、クラッチと、第一係合部及び第二係合部との脱調を防止できる。
【0012】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記クラッチは筒状をなし、前記クラッチの一端部に複数の第一歯が形成してあり、前記クラッチの他端部に複数の第二歯が形成してあり、前記第一歯の間に前記第一係合部が対向配置してあり、前記第二歯の間に前記第二係合部が対向配置してあり、前記クラッチを前記第一係合部又は第二係合部に向けて動かす移動機構を備える。
【0013】
本開示の一実施形態においては、クラッチが第一係合部に向けて移動した場合、第一歯の間に第一係合部が係合し、クラッチが第二係合部に向けて移動した場合、第二歯の間に第二係合部が係合する。
【0014】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記伝達機構は、前記第二アームに連結し、前記第二軸回りに回転する第二回転部と、該第二回転部及び駆動歯車の間に設けた少なくとも一つの中間軸と、該中間軸及び前記駆動歯車の間、又は中間軸同士の間に設けた第一歯車機構と、前記第二回転部及び中間軸の間に設けてあり、前記第一歯車機構よりも高い減速比を有する第二歯車機構とを備える。
【0015】
本開示の一実施形態においては、第二回転部及び中間軸の間に第一歯車機構よりも高い減速比を有する第二歯車機構設けたので、第一歯車機構のバックラッシュによって生じる位置の誤差を、第二歯車機構にて調整できる。
【0016】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記回転部、第一アーム及び第二アームを覆うカバーを備え、前記動力源は前記カバーの外側に設けてある。
【0017】
本開示の一実施形態においては、熱発生源である動力源をカバーの外側に設けているので、カバー内での粉塵爆発等を防止し、安全性を高めることができる。また動力源の保守管理が容易になる。
【0018】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記第一軸及び第二軸の間の角度は45度よりも大きく90度以下である。
【0019】
本開示の一実施形態においては、第一軸及び第二軸の間の角度は45度よりも大きく90度以下であるので、第二軸回りにおけるエンドエフェクタの回転範囲が大きくなる。
【0020】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記第二軸に平行な回転軸を備え、前記第二軸に平行な回転軸の軸回りの起動トルクは、前記エンドエフェクタに作用する切削負荷の第二軸回りの成分と、前記第二軸と前記エンドエフェクタとの間の距離との積よりも大きい。
【0021】
本開示の一実施形態においては、上記関係が成立することによって、バックラッシュの影響によるびびりなどの加工不良の発生を抑制することができる。
【0022】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記切替機構は、四つの傘歯車を有する伝動歯車装置、又は遊星歯車装置を含む。
【0023】
本開示の一実施形態においては、四つの傘歯車を有する伝動歯車装置又は遊星歯車装置を用いて、動力の供給先の切り替えを実現する。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一実施形態に係る工作機械にあっては、第一アームは回転部に設けてあり、回転部と共に第一軸回りに回転する。第二アームは第二軸回りに回転する。切替機構を介して、単一の動力源から回転部又は第二アームに動力を供給する。動力源は回転せず、エンドエフェクタを旋回する場合に生じる遠心力の増大を抑制し、高速旋回時のエンドエフェクタの経路誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態1に係る工作機械の外観斜視図である。
図2】カバー内の工作機械の略示斜視図である。
図3】主軸ユニットの第一縦断面図である。
図4】主軸ユニットの第二縦断面図である。
図5】主軸ユニットの断面斜視図である。
図6】ドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大縦断面図である。
図7】第一ハウジングの記載を省略した主軸ユニットの斜視図である。
図8】上歯の間に第一係合部が係合した場合におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大斜視図である。
図9】下歯の間に第二係合部が係合した場合におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大斜視図である。
図10】A軸又はC軸回りの回転に切り替わる途中におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大斜視図である。
図11】C軸回りの回転からA軸回りの回転に切り替わる場合におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大縦断面図である。
図12】実施の形態2に係るドグが下方に移動した場合における主軸ユニットの略示断面斜視図である。
図13】ドグが下方に移動した場合における主軸ユニットの略示縦断面図である。
図14】ドグが上方に移動した場合における主軸ユニットの略示断面斜視図である。
図15】ドグが上方に移動した場合における主軸ユニットの略示縦断面図である。
図16】実施の形態3に係るドグクラッチがハウジングに噛合した場合の主軸ユニットの略示縦断面図である。
図17】ドグクラッチがハウジングに噛合した場合の主軸ユニットの略示部分拡大縦断面図である。
図18】ドグクラッチがハウジングに噛合した場合における上方から視認した主軸ユニットの略示部分拡大縦断面斜視図である。
図19】ドグクラッチがハウジングに噛合した場合における下方から視認した主軸ユニットの略示部分拡大縦断面斜視図である。
図20】ドグクラッチが内歯車に噛合した場合における上方から視認した主軸ユニットの略示部分拡大縦断面斜視図である。
図21】ドグクラッチが内歯車に噛合した場合における下方から視認した主軸ユニットの略示部分拡大縦断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では図に示す上下前後左右を使用する。
【0027】
工作機械は保持台1を備える。保持台1の上面はワークを保持する。保持台1の周囲にカバー2が設けてある。カバー2は上下に延びた直方体をなし、前面部2a、右面部2b、左面部2c、後面部2d及び上面部2eを備える。開閉扉3は前面部2aに設け、透明な窓4は右面部2b及び左面部2cに設ける。
【0028】
カバー2の内側に、上下方向に延びた三つの立柱5が設けてある。三つの立柱5は、平面視にて約120度の位相間隔を空けて、保持台1の周囲に配置してある。各立柱5の保持台1側の側面に軌道6が設けてある。軌道6は上下方向に延びる。軌道6に移動部7と駆動機構(図示略)を設け、移動機構はボールねじ機構等で構成する。駆動機構に動力を供給するモータ8は立柱5の上端部に設ける。モータ8の駆動によって、移動部7は軌道6に沿って上下方向に移動する。モータ8は上面部2eの上に設け、且つカバー2の外側に位置する。
【0029】
図2に示す如く、上面部2eは平面視三角形状の支持板2fを備える。支持板2fの上にモータ10及び減速機11が設けてある。モータ10は単一の動力源を構成する。三つの立柱5の上端部は上面部2eから上方に突出する。前記上端部と支持板2fの角部は連結板9を介して連結する。図1にて、上端部、支持板2f及び連結板9の記載を省略する。
【0030】
保持台1の上側に主軸ユニット20が配置してある。主軸ユニット20は、上下に延びたボールスプライン12を介して減速機11に連結する。モータ10の回転は減速機11で減速後、ボールスプライン12に伝達する。ボールスプライン12は軸回りに回転する。
【0031】
主軸ユニット20は各立柱5に対向する。主軸ユニット20と移動部7とは、平行な二つのリンク13で連結する。リンク13は棒状をなす。二つのリンク13の一端部は主軸ユニット20の第一ハウジング21(図3参照)に回転可能な継手14を介して連結する。二つのリンク13の他端部は移動部7に継手14を介して連結する。継手14は自在継手等である。三つの移動部7の上下位置を変更して、主軸ユニット20は上下前後左右に移動する。
【0032】
図3図4の切断面の切断位置は異なる。主軸ユニット20は円錐台形の第一ハウジング21を備える。第一ハウジング21は支持部を構成する。第一ハウジング21は小径側を上方に向け、大径側を下方に向けて配置する。第一ハウジング21の下面全体は開口する。第一ハウジング21の下縁部にリンク13が連結する。
【0033】
第一ハウジング21の上面部21aに上下に貫通した貫通穴21bが形成してある。貫通穴21bに第一回転軸24を挿入する。第一回転軸24と貫通穴21bとの間に滑り軸受25が嵌まる。滑り軸受25は第一回転軸24を回転可能に支持する。第一回転軸24は筒状をなし、第一回転軸24の内側に配線60が挿入してある。第一ハウジング21の上面部21a下側に複数の第一係合部21cが固定してある。複数の第一係合部21cは貫通穴21bの周囲に周方向に略等しい間隔を空けて設ける。
【0034】
第一回転軸24の略中途部に駆動歯車27が設けてある。駆動歯車27は二段歯車であり、二段歯車は小径歯車27b及び大径歯車27aを有する。小径歯車27bが下側に位置し、大径歯車27aが上側に位置する。第一回転軸24は駆動歯車27の中央の穴に挿入する。第一回転軸24と駆動歯車27の間に、上下方向を軸方向とした二つの軸受24bが嵌まる。二つの軸受24bは上下に並び、第一回転軸24及び駆動歯車27を回転可能に支持する。ボールスプライン12の回転は大径歯車27aに伝達する。
【0035】
駆動歯車27は複数の第二係合部27cを備える。第二係合部27cは大径歯車27aの上面に固定し、且つ第一回転軸24の周方向に略等しい間隔を空けて設けてある。第一ハウジング21の上面部21aと駆動歯車27の間にドグクラッチ26が設けてある。ドグクラッチ26は軸方向に短い円筒形をなし、上下方向を軸方向として配置してある。ドグクラッチ26の外周面の軸方向中央部に、周方向に延びる環状の溝26aが形成してある。ドグクラッチ26は熱可塑性樹脂材、例えばポリオキシメチレンを含む樹脂材等によって構成する。
【0036】
ドグクラッチ26の上縁部に上向きに突出した複数の上歯26bが設けてあり、下縁部に下向きに突出した複数の下歯26cが設けてある。ドグクラッチ26は第一回転軸24の外側に設けてある。即ち、第一回転軸24はドグクラッチ26の内側に挿入する。第一回転軸24の外周面及びドグクラッチ26の内周面の一方にキー溝が、他方に該キー溝に嵌まるキーが設けてある(何れも図示略)。キー溝の軸方向寸法はキーよりも長く、キーはキー溝に沿って上下移動可能である。キー溝の周方向寸法はキーと略同じである。即ち、ドグクラッチ26は第一回転軸24に対して周方向に固定してあり、軸方向に移動可能である。
【0037】
第一ハウジング21の下面開口に第二ハウジング22が設けてある。第二ハウジング22は、内部が空洞の円柱状をなし、上下方向を軸方向にして配置してある。第二ハウジング22の上縁部は第一ハウジング21の下縁部内側に配置してある。第二ハウジング22の上縁部と第一ハウジング21の下縁部との間にクロスローラベアリング23が設けてある。クロスローラベアリング23は第二ハウジング22を回転可能に支持する。第二ハウジング22は上下軸回りに回転する。
【0038】
第二ハウジング22の上面中央部に第一支持筒22aが形成してある。第一支持筒22aは、第二ハウジング22の上面部22dを上下に貫通するように上面部22dから上側及び下側に延びる。第一支持筒22aの内側に第一回転軸24の下部を挿入する。第一回転軸24の外周面及び第一支持筒22aの内周面の一方にキー溝が、他方に該キー溝に嵌まるキーが設けてある(何れも図示略)。キー溝及びキーの軸方向寸法及び周方向寸法は略同じであり、キー溝及びキーは、軸方向及び周方向にて、第一支持筒22aを第一回転軸24に固定する。第一回転軸24の下端部は第一支持筒22aから下方に突出する。第一回転軸24の下端部外周に、円筒状の固定部材24aが取り付けてある。固定部材24aは、第一支持筒22a及び第一回転軸24の下端部を固定する。
【0039】
第二ハウジング22の上面部22dに第二支持筒22bが形成してある。第二支持筒22bは、径方向にて、第一支持筒22aの隣に位置する。第二支持筒22bは上面部22dから下方に突出し、第二ハウジング22の内側に位置する。第二支持筒22bの上端部開口は上面部22dを貫通する。第二支持筒22bに第一中間軸31が挿入してある。第一中間軸31の略中途部と第二支持筒22bとの間に、上下方向を軸方向とした二つの軸受31aが設けてある。二つの軸受31aは上下に並び、第一中間軸31を回転可能に支持する。第二ハウジング22、第一回転軸24、第一支持筒22a及び第二支持筒22b等は、回転部を構成する。
【0040】
第一中間軸31の上端部は第二支持筒22bから上方に突出する。前記上端部に、上下方向を軸方向とした平歯車29が嵌合する。平歯車29は駆動歯車27の小径歯車27bに噛合する。平歯車29及び小径歯車27bは第一歯車機構を構成する。第一中間軸31の下端部は第二ハウジング22の下面部付近に位置する。前記下端部に傘歯車30が嵌合する。
【0041】
第二ハウジング22の周面部の一部が、径方向外側に且つ斜め下向きに突出している。以下、この突出した部分を突出部22cと称する。突出部22cの下端は開口している。突出部22cは第二支持筒22bの隣に位置する。突出部22cの下端には、第一アーム40が連結する。突出部22cと第二ハウジング22の周面部とのなす角は鋭角であり、例えば約30度である。
【0042】
第一アーム40は有底筒型のハウジング41を備える。ハウジング41の開口部は突出部22cの開口部に連結する。ハウジング41は、突出部22cの突出方向と同方向に延びる。ハウジング41の上部は第二中間軸32と、二つの軸受32aを格納する。第二中間軸32は前記突出方向と同方向に延びる。軸受32aは前記突出方向を軸方向とする。二つの軸受32aは前記突出方向に並び、第二中間軸32を支持する。第二中間軸32の上端部に傘歯車34が嵌合する。該傘歯車34は、第一中間軸31の傘歯車30に噛合する。二つの傘歯車30、34は第一歯車機構を構成する。
【0043】
ハウジング41の中央部は第三中間軸33及び二つの軸受33aを格納する。第三中間軸33は前記突出方向と同方向に延びる。軸受33aは前記突出方向を軸方向とする。二つの軸受33aは前記突出方向に並び、第三中間軸33を支持する。カップリング37が第三中間軸33の上端部と第二中間軸32の下端部を連結する。第三中間軸33の下端部はハイポイドピニオン33bを形成する。
【0044】
ハウジング41の下端部側面に開口42が形成してある。開口42は第二ハウジング22側に位置する。ハウジング41下端部は第二回転軸35を格納する。第二回転軸35は、前記突出方向に直交する方向(以下、直交方向)に延び、ハウジング41下端部を貫通する。第二回転軸35の一端部は前記開口42から突出する。第二回転軸35は筒形をなし、第二回転軸35の内側に配線60が挿入する。第二回転軸35は第二回転部を構成する。
【0045】
ハウジング41下端部は、第一軸受35a、第二軸受36a、ハイポイドギヤ36を格納する。第一軸受35aは、開口42の反対側に位置し、第二回転軸35の他端部を支持する。第一軸受35aと開口42との間に第二軸受36aが位置し、該第二軸受36aはハイポイドギヤ36の外周側を支持する。第二回転軸35はハイポイドギヤ36に挿入し、第二回転軸35の中央部にハイポイドギヤ36は固定する。ハイポイドギヤ36は第二回転軸35に連結し、ハイポイドピニオン33bに噛合する。ハイポイドギヤ36及びハイポイドピニオン33bは第二歯車機構を構成する。
【0046】
ハイポイドギヤ36及びハイポイドピニオン33bの減速比は、二つの傘歯車30、34の減速比よりも高く、平歯車29及び小径歯車27bの減速比よりも高い。尚、ハイポイドギヤ36に代えてウォームホイールを使用し、ハイポイドピニオン33bに代えてウォームギヤを使用してもよい。この場合においても、ウォームホイール及びウォームギヤの減速比は、二つの傘歯車30、34の減速比よりも高く、平歯車29及び小径歯車27bの減速比よりも高い。
【0047】
開口42の周縁部に第二アーム43が連結する。第二アーム43は、アーム部44及び支持筒45を備える。アーム部44は、棒の中央を曲げ、ハウジング41に平行な方向に延びる第一部分44aと、第一部分44aに交差する方向に延びる第二部分44bとを備える。第一部分44aの一端部と第二部分44bの一端部は一体的に連結する。第一部分44aの他端部は、開口42の周縁部に臨む。開口42から突出した第二回転軸35の一端部は、第一部分44aの他端部に固定してある。
【0048】
第二部分44bには、配線60を挿入する貫通穴44cが形成してある。第二部分44bの他端部に支持筒45が設けてある。支持筒45の軸線と、第一回転軸24の軸線とが一致するように、支持筒45は配置してある。支持筒45は、その内側にて同軸的に主軸46を支持する。支持筒45の上端部にモータ48が設けてある。主軸46の下端部に工具47が装着してある。モータ48は主軸46に動力を供給し、主軸46及び工具47が回転する。配線60は第二回転軸35、貫通穴44cを通り、モータ48に連結し、電力を供給する。主軸46及び工具47はエンドエフェクタを構成する。
【0049】
図3に示す如く、第一回転軸24の軸線をCとした場合、主軸46及び工具47の軸線はCに一致する。第二回転軸35の軸線をAとした場合、工具47の先端はA上に位置する。即ち、工具47の先端が軸線C及びAの交点に位置する。軸線C及びAのなす角θは約60度である。角θは45度以上90度以下であればよく、好ましくは、50度以上90度以下であり、より好ましくは55度以上80度以下である。
【0050】
図6に示す如く、第一係合部21cは、第一ハウジング21の上面部21aに固定する固定部21c1と、固定部21c1から下方に突出した突部21c2を備える。突部21c2の下端部両側に、下方に向かうに従って、ドグクラッチ26の周方向における突部21c2の幅が短くなるように、傾斜面21c3が形成してある。突部21c2の下端部の幅は、上歯26b間の幅よりも小さい。
【0051】
第二係合部27cは、大径歯車27aの上面部に固定する固定部27c1と、該固定部27c1から上方に突出した突部27c2を備える。突部27c2の上端部両側に、上方に向かうに従って、ドグクラッチ26の周方向における突部27c2の幅が短くなるように、傾斜面27c3が形成してある。突部27c2の上端部の幅は、上歯26b間の幅よりも小さい。
【0052】
エアシリンダ50が第一ハウジング21の外側に取り付けてある。エアシリンダ50は、上下方向を軸方向としたロッド50aを有する。ロッド50aはエアシリンダ50から下方に突出し、空気圧によって上下動する。ロッド50aの下端に二股のフォーク52が取り付けてある。フォーク52の基端部はロッド50aの下端に、ドグクラッチ26の径方向を回転軸方向として、回転可能に連結する。フォーク52の二股部分は溝26aに係合する。フォーク52の二股部分は第一ハウジング21内に位置し、フォーク52の基端部は第一ハウジング21をドグクラッチ26の径方向に貫通する。
【0053】
第一ハウジング21内に、ドグクラッチ26の径方向に延びる支軸51が設けてある。支軸51は、フォーク52の基端部の中途部を貫通する。支軸51は、軸回りに回転可能に、フォーク52を支持する。
【0054】
ロッド50aが下方に移動した場合、フォーク52の二股部分は支軸51を支点にして上側に移動し、ドグクラッチ26の上歯26bの間に第一係合部21cが係合する(図11参照)。ロッド50aが上方に移動した場合、フォーク52の二股部分は支軸51を支点にして下側に移動し、ドグクラッチ26の下歯26cの間に第二係合部27cが係合する。上歯26bは第一歯を構成し、下歯26cは第二歯を構成する。エアシリンダ50、ロッド50a、支軸51及びフォーク52は移動機構を構成する。
【0055】
図8において、第一ハウジング21、エアシリンダ50及びフォーク52を省略した。フォーク52の二股部分が上側に移動し、上歯26bの間に第一係合部21cが係合した場合、ドグクラッチ26、第一回転軸24及び第二ハウジング22は第一ハウジング21に固定する。ドグクラッチ26の下歯26cの間に第二係合部27cは係合しない。
【0056】
ボールスプライン12はモータ10の回転によって回転し、回転は大径歯車27aに伝達し、駆動歯車27は回転する。小径歯車27bに噛合する平歯車29が回転し、第一中間軸31、傘歯車30、34、第二中間軸32、第三中間軸33が回転する。第三中間軸33下端のハイポイドピニオン33bが回転し、ハイポイドギヤ36が回転する。ハイポイドギヤ36と共に第二回転軸35及び第二アーム43が、軸線A回りに回転する。以下、軸線AをA軸とも称する。A軸は第二軸を構成する。尚、ドグクラッチ26、第一回転軸24及び第二ハウジング22は、第一ハウジング21に固定するので、回転しない。
【0057】
第二回転軸35、ハイポイドギヤ36、ハイポイドピニオン33b、第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33、平歯車29、小径歯車27bは伝達機構を構成する。また、伝達機構、駆動歯車27、ドグクラッチ26、第一係合部21c、第二係合部27cは切替機構を構成する。
【0058】
図9において、第一ハウジング21、エアシリンダ50及びフォーク52を省略した。フォーク52の二股部分が下側に移動し、下歯26cの間に第二係合部27cが係合した場合、ドグクラッチ26、第一回転軸24及び第二ハウジング22は駆動歯車27に連結する。ボールスプライン12の回転は駆動歯車27に伝達し、駆動歯車27と共に、第一回転軸24、第二ハウジング22、第一アーム40及び第二アーム43は、軸線C回りに回転する。以下、軸線CをC軸とも称する。C軸は第一軸を構成する。尚、第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35も、駆動歯車27と共に、C軸回りに回転するので、第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35自身は回転せず、第二アーム43はA軸回りに回転しない。
【0059】
A軸回りの回転からC軸回りの回転に切り替わる場合、ドグクラッチ26は下方に移動する。下歯26cの間に第二係合部27cが位置しない場合、下歯26cは第二係合部27cの傾斜面27c3に接触する。駆動歯車27は、下歯26cから傾斜面27c3に作用した力によってC軸回りに回転し、第二係合部27cの突部27c2は下歯26cの間に位置する。図6に示す如く、A軸回りの回転からC軸回りの回転に切り替わる場合、突部27c2の上端位置P3は下歯26cの下端位置P4よりも上側にあり、第二係合部27cは下歯26cの間に位置し、突部21c2の下端位置P1は、上歯26bの上端位置P2よりも下側にあり、第一係合部21cは、回転の切替前から継続して上歯26bの間に位置する。
【0060】
図10図11に示す如く、C軸回りの回転からA軸回りの回転に切り替わる場合、ドグクラッチ26は上方に移動する。上歯26bの間に第一係合部21cが位置しない場合、上歯26bは第一係合部21cの傾斜面21c3に接触する。駆動歯車27は、上歯26bから傾斜面21c3に作用した力によってC軸回りに回転し、第一係合部21cの突部21c2は上歯26bの間に位置する。図6に示す如く、C軸回りの回転からA軸回りの回転に切り替わる場合、突部21c2の下端位置P1は、上歯26bの上端位置P2よりも下側にあり、第一係合部21cは上歯26bの間に位置し、突部27c2の上端位置P3は下歯26cの下端位置P4よりも上側にあり、第二係合部27cは、回転の切替前から継続して下歯26cの間に位置する。
【0061】
即ち、A軸又はC軸回りの回転に切り替わる途中において、上歯26bの間に第一係合部21cは係合し、下歯26cの間に第二係合部27cは係合するので、回転の切り替わり時において、脱調の発生を防止できる。
【0062】
第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35を、第二ハウジング22及びハウジング41内に設けているが、第二ハウジング22及びハウジング41の外側に設け、第二アーム43に動力を伝達する構成としてもよい。
【0063】
実施の形態に係る工作機械にあっては、第一アーム40は第二ハウジング22に設けてあり、第二ハウジング22と共にC軸回りに回転する。第二アーム43はA軸回りに回転する。切替機構を介して、単一のモータ10から、第一回転軸24又は第二回転軸35に動力を供給する。第二回転軸35のみを駆動するモータは無いので、C軸廻りに回転する場合に生じる遠心力の増大を抑制し、工具47の経路誤差を小さくできる。
【0064】
ドグクラッチ26が第一回転軸24及び第二ハウジング22等を第一ハウジング21に固定した場合、第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35等の伝達機構、並びに駆動歯車27によって、モータ10からの動力は第二アーム43に伝達し、第二アーム43はA軸回りに回転する。ドグクラッチ26が駆動歯車27に連結した場合、動力は第一回転軸24及び第二ハウジング22等に伝達し、第二ハウジング22、第一アーム40及び第二アーム43はC軸回りに回転する。
【0065】
動力の供給先の切替時に、第一係合部21c及び第二係合部27cの少なくとも一方にドグクラッチ26は係合するので、ドグクラッチ26と、第一係合部21c及び第二係合部27cとの脱調を防止できる。
【0066】
また第二回転軸35(第二回転部)及び第三中間軸33の間に、二つの傘歯車30、34、並びに、平歯車29及び小径歯車27b(第一歯車機構)よりも高い減速比を有するハイポイドピニオン33b及びハイポイドギヤ36(第二歯車機構)を設けたので、第一歯車機構のバックラッシュによって生じる位置の誤差を、第二歯車機構にて調整できる。
【0067】
また熱発生源であるモータ10(動力源)をカバー2の外側に設けているので、カバー2内での粉塵爆発等を防止し、安全性を高めることができる。またモータ10の保守管理が容易になる。
【0068】
またC軸及びA軸の間の角度は45度以上90度以下なので、A軸回りにおける工具47の回転範囲を大きくできる。故に、ワークの上側部分に形成した穴に工具47を挿入して、穴の縁のバリ取りを行うことができ、ワークの下側部分に形成した穴に工具47を挿入して、穴の縁のバリ取りを行うことができる。
【0069】
C軸及びA軸の間の角度が45度未満の場合、ワークの上部分及び右部分、又は、上部分及び左部分を加工できるが、下部分は加工できない。即ち、C軸及びA軸の間の角度を45度以上90度以下にすることによって、加工可能なワークの範囲を大きくできる。
【0070】
また工具47の先端はC軸及びA軸の交点に位置するので、C軸又はA軸回りに位置決めする場合、第二回転軸35及び第一回転軸24等を支持する軸受24b、35a等によって工具47の先端の位置は常時同じ位置に留まるように強固に支持される。故に、C軸及びA軸回りの回転にギヤ機構を使用しても、加工時に工具47に作用する負荷が加工精度に与える影響を抑制し、バックラッシュの影響によるびびりなどの加工不良の発生を抑制することができる。
【0071】
工具47の先端がA軸及びC軸の交点に位置しない場合であっても、第二回転軸35のA軸回りの起動トルクをTとし、工具47に作用する切削負荷のA軸まわりの成分をFとし、A軸と工具47の先端との間の最短距離をLとした場合、T>F×Lの関係が成立すれば、加工時に工具47に作用する負荷が加工精度に与える影響を抑制し、バックラッシュの影響によるびびりなどの加工不良の発生を抑制することができる。なお工具47の先端がA軸及びC軸の交点に位置し且つ上記関係が成立する場合も同様な効果を奏する。この場合、Lは0となる。なお、切削負荷は想定される負荷が最も大きなワークで且つ負荷が最も大きくなる工具で加工した時の負荷とする。
【0072】
(実施の形態2)
実施の形態2の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図12図13に示す如く主軸ユニット20Aは、水平方向に延びる支持板70を備える。支持板70は継手14を介してリンク13(図2参照)に連結する。支持板70の中央部に上下に貫通した貫通穴70aが形成してある。貫通穴70aから離れた箇所に、上下に貫通した第二挿入孔70bが形成してある。第二挿入孔70bは、後述の第一挿入孔71fの下側に位置する。
【0073】
支持板70の上側に四角筒形の支持枠71が設けてある。支持枠71の上部に、上下に貫通した上挿入穴71aが形成してあり、支持枠71の下部に、上下に貫通した下挿入穴71bが形成してある。下挿入穴71bの周縁部は下方に突出し、且つ貫通穴70aに挿入してある。
【0074】
支持枠71の一側部(図13の右部)に、水平方向に貫通した横挿入穴71cが形成してあり、支持枠71の他側部(図13の左部)に、水平方向に貫通した横挿入穴71dが形成してある。横挿入穴71dの下側に、支持枠71の下部から支持枠71の径方向外側に突出した突出部71eが設けてある。突出部71eには、上下に貫通した第一挿入孔71fが形成してある。第一挿入孔71f及び第二挿入孔70bは同軸的に上下に配置する。
【0075】
上挿入穴71aにボールスプライン12が上から挿入してある。上挿入穴71aの内側において、上下方向を回転軸方向とした軸受12aがボールスプライン12を支持する。ボールスプライン12の下端部に傘歯車12bが設けてあり、支持枠71の内側に位置する。
【0076】
下挿入穴71bに、上下に延びる下軸72が下から挿入してある。下挿入穴71bの内側において、上下方向を回転軸方向とした軸受72aが下軸72の中途部を支持する。下軸72の上端部に傘歯車72bが設けてあり、支持枠71の内側に位置する。下軸72の下端部に傘歯車72cが設けてあり、支持枠71の外側に位置する。
【0077】
横挿入穴71cに、水平方向に延びる横軸73が挿入してある。横軸73の一端部は横挿入穴71cの内側に位置し、横挿入穴71cから支持枠71の外側に突出しない。横挿入穴71cにおいて、水平方向を回転軸方向とした軸受73aが横軸73を支持する。横軸73の他端部は支持枠71の内側に位置し、前記他端部に傘歯車73bが設けてある。傘歯車73bは傘歯車72b、12bに噛合する。
【0078】
横挿入穴71dに、水平方向に延びる横軸74が挿入してある。横軸74の一端部は、横挿入穴71dから支持枠71の外側に突出し、他端部は、横挿入穴71dから支持枠71の内側に突出する。横挿入穴71dにおいて、水平方向を回転軸方向とした軸受74aが横軸74の略中途部を支持する。横軸74の他端部に傘歯車74bが設けてあり、二つの傘歯車72b、12bに噛合する。
【0079】
横軸74の一端部に係止歯車74cが設けてある。係止歯車74cの下側に、ドグ75が設けてある。ドグ75は、上下に延びるピン75bと、該ピン75bの上端に形成した係止部75aとを備える。ピン75bは、第一挿入孔71f及び第二挿入孔70bの中心軸上に位置する。係止部75aは、係止歯車74cに係止可能な上方に向けて尖った部分を有する。支持枠71の外側に配置したエアシリンダ76は、ドグ75を上下動する。図12及び図13は、ドグ75が下方に移動した状態を示し、係止歯車74cに係止部75aは係止せず、ピン75bは第一挿入孔71f及び第二挿入孔70bに挿入する。
【0080】
支持板70の下側に第一アーム40Aが設けてある。第一アーム40Aは、第一ハウジング部41Aaと、第二ハウジング部41Abとを備える。第一ハウジング部41Aaは水平方向に延びる。第一ハウジング部41Aaの一端部の上面に開口41A1が形成してあり、開口41A1に下軸72の下端部が挿入してある。傘歯車72cは第一ハウジング部41Aaの内側に位置する。第一ハウジング部41Aaの一端部と支持板70の間に、クロスローラベアリング78が設けてある。クロスローラベアリング78の外輪は貫通穴70aの周縁部に固定してある。クロスローラベアリング78の内輪は、下挿入穴71bの周縁部及び開口41A1の周縁部に連結する。
【0081】
第二ハウジング部41Abは、第一ハウジング部40Aaの他端部から、斜め下方向且つ下軸72の径方向外向きに延びる。第二ハウジング部41Abの下端部に、第二アーム43Aが連結する。第二アーム43Aは工具47を保持する。ボールスプライン12及び下軸72はC軸上に位置する。
【0082】
第一ハウジング部41Aa及び第二ハウジング部41Abの内側に伝動機構77が設けてある。伝動機構77は、傘歯車72cに噛合する傘歯車77aを備える。伝動機構77は傘歯車72cの回転を第二アーム43Aに伝達し、第二アーム43AはA軸回りに回転する。
【0083】
図12及び図13に示す如く、ドグ75が下方に移動した場合、即ち、係止歯車74cに係止部75aは係止せず、ピン75bは第一挿入孔71f及び第二挿入孔70bに挿入してある場合、支持枠71は支持板70に連結する。ボールスプライン12は回転し、四つの傘歯車12b、72b、73b及び74bは回転し、下軸72及び傘歯車72cは回転する。伝動機構77は傘歯車とハイポイドギヤ、またはウォームギヤを用いて傘歯車72cの回転を第二アーム43Aに伝達し、第二アーム43AはA軸回りに回転する。支持枠71は支持板70に連結するので、C軸回りに回転しない。
【0084】
ドグが上方に移動した場合(図14、15参照)、即ち、係止歯車74cに係止部75aは係止し、ピン75bは第一挿入孔71f及び第二挿入孔70bから抜き出してある場合、支持枠71は支持板70に非連結である。
【0085】
係止歯車74cに係止部75aは係止するので、ボールスプライン12が回転した場合、四つの傘歯車12b、72b、73b、74bは回転しない。支持枠71は支持板70に非連結なので、支持枠71、クロスローラベアリング78の内輪、第一アーム41A及び第二アーム43AはC軸回りに回転する。上述したように、四つの傘歯車12b、72b、73b、74bは回転しないので、第二アーム43AはA軸回りに回転しない。
【0086】
四つの傘歯車12b、72b、73b、74b、支持枠71、第一挿入孔71f、第二挿入孔70b、下軸72、傘歯車72c、横軸73、74、係止歯車74c、ドグ75、クロスローラベアリング78及び伝動機構77は伝動歯車装置を構成する。実施の形態2においては、伝動歯車装置を用いて、動力の供給先の切り替えを実現することができる。
【0087】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0088】
図16~19に示す主軸ユニット20Bはハウジング80を備える。ハウジング80は、内部が空洞の円柱形をなす。ハウジング80は、下ハウジング80aと、上ハウジング80bとを備える。下ハウジング80aは、底面を下に向けた有底円筒形をなす。下ハウジング80aの下面中央部に上下に貫通した貫通穴80eが設けてある。上ハウジング80bは底面を上に向けた有底円筒形をなす。上ハウジング80bは下ハウジング80aの上側にて、下ハウジング80aと同軸的に配置してある。上ハウジング80bの直径は下ハウジング80aよりも短く、上ハウジング80bの下端部と下ハウジング80aの上端部とは、段差部分を形成して連なる。該段差部分には、複数の歯80dが形成してある。複数の歯80dはハウジング80の周方向に並ぶ。
【0089】
上ハウジング80bの上面中央部に、上下に貫通した貫通穴80cが設けてある。貫通穴80cにボールスプライン12が挿入してある。
【0090】
下ハウジング80aにドグクラッチ81が収納してある。ドグクラッチ81は円盤81a、上筒部81b、下筒部81dを備える。円盤81aは上下方向を軸方向として、下ハウジング80aに対して同軸的に配置してある。上筒部81bは円盤81aの中央部を上下に貫通し、上方に突出する。下筒部81dは、円盤81aの周縁部から下方に突出する。円盤81aの周縁部に、上方に突出した複数の上歯81cが設けてある。複数の上歯81cは円盤81aの周方向に並ぶ。上歯81cは歯80dの間に噛合する。
【0091】
下筒部81dの内周面に複数のキー81eが設けてある。キー81eは径方向内側に突出し、上下に延びる。複数のキー81eは周方向に並ぶ。下筒部81dの下縁部に、下方に突出した複数の下歯81fが設けてある。ボールスプライン12は上筒部81b及び下筒部81dに挿入してある。
【0092】
ドグクラッチ81の下側に遊星キャリア85が設けてある。遊星キャリア85は、上板部85a、下板部85c及び軸部85dを備える。上板部85aは平面視円形をなし、下筒部81dの内側に同軸的に配置してある。上板部85aの中央部に筒部85eが貫通する。筒部85eは上板部85aから上方に突出し、筒部85eの上周縁部は径方向内側に突出する。筒部85eの内側に軸受12aが同軸的に設けてある。筒部85eにボールスプライン12が挿入してあり、軸受12aはボールスプライン12を支持する。
【0093】
下板部85cは上板部85aの下方に設けてある。下板部85cは平面視円形をなし、上板部85aに対して同軸的に配置してある。上板部85a及び下板部85cは上下に所定距離離れる。上板部85a及び下板部85cの間に、上下方向を軸方向とした複数の軸部85dが設けてある。複数の軸部85dは、ボールスプライン12の周囲にて、周方向に等しい間隔を空けて並ぶ。径方向にて、軸部85dとボールスプライン12とは、所定距離離れる。ボールスプライン12の下端部は下板部85cの上面に臨む位置まで延びる。
【0094】
上板部85a及び下板部85cの間において、ボールスプライン12の下端部に太陽歯車82が同軸的に設けてある。太陽歯車82はボールスプライン12と共に回転する。各軸部85dに遊星歯車84が設けてある。遊星歯車84は太陽歯車82に噛合する。複数の遊星歯車84の周囲に内歯車83が、太陽歯車82に対して同軸的に設けてある。内歯車83の内周面の歯は遊星歯車84に噛合する。内歯車83の上部外周面に、複数の歯83aが形成してある(図18等参照)。複数の歯83aは下歯81fの間に噛合する。内歯車83は、上板部85a及び下板部85cの間に位置する。上板部85aの直径は、太陽歯車82の直径と、遊星歯車84の直径の二倍との合算値よりも若干大きく、下板部85cの直径は、太陽歯車82の直径と、遊星歯車84の直径の二倍との合算値に略等しい。
【0095】
内歯車83の下側に伝動体87が設けてある。伝動体87は円筒部87aと、円盤部87bとを備える。円筒部87aは上下方向を軸方向とし、下板部85cの下側に、下板部85cに対して同軸的に配置してある。円盤部87bは、円筒部87aの上端部から径方向に突出する。円盤部87bは内歯車83と、下ハウジング80aの下面部との間に位置する。円盤部87bの直径は内歯車83の直径に略等しい。円盤部87bの周縁部は上方に突出し、内歯車83に連結する。
【0096】
円筒部87aは貫通穴80eに上から挿入してある。連結軸86が下板部85cの径方向中央部から下方に突出する。連結軸86は円筒部87aに挿入してある。連結軸86は下板部85cに一体化している。円筒部87aの上端部と下板部85cとの間に、上下方向を軸方向とした軸受86aが設けてある。軸受86aは連結軸86を支持する。
【0097】
ハウジング80の下側に第一アーム40B及び第二アーム43Bが設けてある。第一アーム40Bはハウジング41Bを備える。ハウジング41Bの上面には、上下に貫通した貫通穴41Baが設けてある。貫通穴41Baは、貫通穴80eに対して同軸的に配置してある。貫通穴41Baの周縁部と貫通穴80eの周縁部との間にクロスローラベアリング90が同軸的に設けてある。
【0098】
クロスローラベアリング90の外輪は貫通穴80eの周縁部に固定してあり、内輪は貫通穴41Baの周縁部に連結する。円筒部87a及び連結軸86は貫通穴41Baに上から挿入してある。円筒部87aの下端部に傘歯車89が設けてある。連結軸86の下端部は傘歯車89の穴から下方に突出し、ハウジング41Bの内側下面部に固定してある。尚、連結軸86は円筒部87a及び傘歯車89と非連結である。ボールスプライン12及び連結軸86はC軸上に位置する。
【0099】
ハウジング41Bの内側に伝動機構77Aが設けてある。伝動機構77Aは、傘歯車89に噛合する傘歯車77Aaを備える。第一アーム40B、第二アーム43B及び伝動機構77Aの構成は、実施の形態2の第一アーム40A、第二アーム43A及び伝動機構77と同様であり、その詳細な説明を省略する。実施の形態2と同様に、伝動機構77Aは傘歯車77Aaの回転を第二アーム43Bに伝達し、第二アーム43BはA軸回りに回転する。
【0100】
ハウジング80はエアシリンダ88を備える。エアシリンダ88の不図示の駆動部(ロッド)はドグクラッチ81と接続する。ドグクラッチ81はエアシリンダ88の駆動に基づき上下動し、上歯81cが歯80dに噛合するか又は下歯81fが歯83aに噛合する。
【0101】
図16図19に示す如く、ドグクラッチ81が上方に移動した場合、即ち、上歯81cと歯80dが噛合してドグクラッチ81がハウジング80に連結し、下歯81fと歯83aが噛合しない。故に内歯車83は回転可能となる。ボールスプライン12は回転し、太陽歯車82、遊星歯車84及び内歯車83が自転する。尚、キー81eがキー溝85bに係合するので、遊星キャリア85は回転しない。内歯車83と共に伝動体87は回転し、伝動機構77Aを介して、第二アーム43B及び工具47はA軸回りに回転する。
【0102】
図20、21に示す如く、ドグクラッチ81が下方に移動した場合、即ち、上歯81cと歯80dが噛合せず、ドグクラッチ81がハウジング80に非連結となり、下歯81fと歯83aが噛合する。また、キー81eはキー溝85bに係合するので、ドグクラッチ81及び遊星キャリア85は連結する。故にドグクラッチ81と内歯車83が連結し、太陽歯車82、遊星歯車84、内歯車83及び伝動体87は遊星キャリア85に対して回転不可となる。ボールスプライン12は回転し、太陽歯車82、遊星歯車84及び内歯車83はそれぞれ自転せずに一体となってC軸回りに回転し、ドグクラッチ81、遊星キャリア85、連結軸86、第一アーム40B、第二アーム43B及び工具47がC軸回りに回転する。上述したように、太陽歯車82、遊星歯車84、内歯車83及び伝動体87は自転不可となるので、第二アーム43BはA軸回りに回転しない。
【0103】
ドグクラッチ81、歯80d、歯83a、遊星キャリア85、太陽歯車82、遊星歯車84、内歯車83、伝動体87、連結軸86、クロスローラベアリング90及び伝動機構77Aは遊星歯車装置を構成する。実施の形態3においては、遊星歯車装置を用いて、動力の供給先の切り替えを実現することができる。
【0104】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
2 カバー
10 モータ(動力源)
21 第一ハウジング(支持部)
21c 第一係合部(切替機構)
22 第二ハウジング(回転部)
22a 第一支持筒(回転部)
22b 第二支持筒(回転部)
24 第一回転軸(回転部)
26 ドグクラッチ(クラッチ、切替機構)
26b 上歯(第一歯)
26c 下歯(第二歯)
50 エアシリンダ(移動機構)
50a ロッド(移動機構)
51 支軸(移動機構)
52 フォーク(移動機構)
27 駆動歯車(切替機構)
27b 小径歯車(第一歯車機構、伝達機構、切替機構)
27c 第二係合部(切替機構)
29 平歯車(第一歯車機構、伝達機構、切替機構)
31 第一中間軸(伝達機構、切替機構)
32 第二中間軸(伝達機構、切替機構)
33 第三中間軸(伝達機構、切替機構)
33b ハイポイドピニオン(第二歯車機構、伝達機構、切替機構)
35 第二回転軸(第二回転部、伝達機構、切替機構)
36 ハイポイドギヤ(第二歯車機構、伝達機構、切替機構)
40 第一アーム
43 第二アーム
46 主軸(エンドエフェクタ)
47 工具(エンドエフェクタ)
図1
図2
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