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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101123
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/54 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
B23Q1/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215524
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
【テーマコード(参考)】
3C048
【Fターム(参考)】
3C048BC01
3C048CC04
3C048DD15
(57)【要約】
【課題】エンドエフェクタの位置決め可能な範囲を大きくすることができる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械は、第一軸回りに回転する回転部と、該回転部から延びる第一アームと、該第一アームに連結し、エンドエフェクタを支持する前記第一軸に交差する第二軸回りに回転可能な第二アームとを備え、前記第一軸及び第二軸の間の角度は45度以上90度以下である。好ましくは、前記エンドエフェクタの先端は前記第一軸及び第二軸の交点に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一軸回りに回転する回転部と、
該回転部から延びる第一アームと、
該第一アームに連結し、且つエンドエフェクタを支持する第二アームと
を備え、
前記第二アームは前記第一軸に交差する第二軸回りに回転し、
前記第一軸及び第二軸の間の角度は45度以上90度以下である
工作機械。
【請求項2】
前記第二軸に平行な回転軸を備え、
前記第二軸に平行な回転軸の軸回りの起動トルクは、前記エンドエフェクタに作用する切削負荷の第二軸回りの成分と、前記第二軸と前記エンドエフェクタとの間の距離との積よりも大きい
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記エンドエフェクタの先端は前記第一軸及び第二軸の交点に位置する
請求項1又は2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ワークを加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基台、第一アーム及び第二アームを有するロボットがある。基台と第一アームは上下に延びる第一軸回りに回転可能に連結する。第一アームと第二アームは、上下に延びる第二軸回りに回転可能に連結する。第二アームはエンドエフェクタを保持可能である。第一アームの第一軸周りの位置を所望の位置に変更し、第二アームの第二軸回りの位置を所望の位置に変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-94659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第一軸及び第二軸は平行であり、第一軸及び第二軸に交差する軸回りに第一アーム及び第二アームは回転不可である。故にエンドエフェクタの位置決め可能な範囲は狭い。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、エンドエフェクタの位置決め可能な範囲を大きくすることができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、第一軸回りに回転する回転部と、該回転部から延びる第一アームと、該第一アームに連結し、且つエンドエフェクタを支持する第二アームとを備え、前記第二アームは前記第一軸に交差する第二軸回りに回転し、前記第一軸及び第二軸の間の角度は45度以上90度以下である。
【0007】
本開示においては、第一軸及び第二軸は交差し、第一軸及び第二軸の間の角度は45度以上90度以下なので、エンドエフェクタの回転範囲が大きくなる。
【0008】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記第二軸に平行な回転軸を備え、前記第二軸に平行な回転軸の軸回りの起動トルクは、前記エンドエフェクタに作用する切削負荷の第二軸回りの成分と、前記第二軸と前記エンドエフェクタとの間の距離との積よりも大きい。
【0009】
本開示においては、上記関係が成立することによって、バックラッシュの影響によるびびりなどの加工不良の発生を抑制することができる。
【0010】
本開示の一実施形態に係る工作機械は、前記エンドエフェクタの先端は前記第一軸及び第二軸の交点に位置する。
【0011】
本開示においては、エンドエフェクタの先端は第一軸及び第二軸の交点に位置するので、エンドエフェクタの先端は両軸線上にある。故に、エンドエフェクタの先端は加工時の負荷によって軸線からずれることを防ぐ。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一実施形態に係る工作機械にあっては、第一軸及び第二軸は交差し、第一軸及び第二軸の間の角度は45度以上90度以下なので、エンドエフェクタの回転範囲を大きくし、加工可能なワークの範囲を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】工作機械の外観斜視図である。
図2】カバー内の工作機械の略示斜視図である。
図3】主軸ユニットの第一縦断面図である。
図4】主軸ユニットの第二縦断面図である。
図5】主軸ユニットの断面斜視図である。
図6】ドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大縦断面図である。
図7】第一ハウジングの記載を省略した主軸ユニットの斜視図である。
図8】上歯の間に第一係合部が係合した場合におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大斜視図である。
図9】下歯の間に第二係合部が係合した場合におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大斜視図である。
図10】A軸又はC軸回りの回転に切り替わる途中におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大斜視図である。
図11】C軸回りの回転からA軸回りの回転に切り替わる場合におけるドグクラッチ、第一係合部及び第二係合部の部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施の形態に係る工作機械を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では図に示す上下前後左右を使用する。
【0015】
図1に示す如く、工作機械は保持台1を備える。保持台1の上面はワークを保持する。保持台1の周囲にカバー2が設けてある。カバー2は上下に延びた直方体をなし、前面部2a、右面部2b、左面部2c、後面部2d及び上面部2eを備える。開閉扉3は前面部2aに設け、透明な窓4は右面部2b及び左面部2cに設ける。
【0016】
図2に示す如く、カバー2の内側に、上下方向に延びた三つの立柱5が設けてある。三つの立柱5は、平面視にて約120度の位相間隔を空けて、保持台1の周囲に配置してある。各立柱5の保持台1側の側面に軌道6が設けてある。軌道6は上下方向に延びる。軌道6に移動部7と駆動機構(図示略)を設け、移動機構はボールねじ機構等で構成する。駆動機構に動力を供給するモータ8は立柱5の上端部に設ける。モータ8の駆動によって、移動部7は軌道6に沿って上下方向に移動する。モータ8は上面部2eの上に設け、且つカバー2の外側に位置する。
【0017】
上面部2eは平面視三角形状の支持板2fを備える。支持板2fの上にモータ10及び減速機11が設けてある。三つの立柱5の上端部は上面部2eから上方に突出する。前記上端部と支持板2fの角部は連結板9を介して連結する。図1にて、上端部、支持板2f及び連結板9の記載を省略する。
【0018】
保持台1の上側に主軸ユニット20が配置してある。主軸ユニット20は、上下に延びたボールスプライン12を介して前記減速機11に連結する。モータ10の回転は減速機11によって減速し、ボールスプライン12に伝達する。ボールスプライン12は軸回りに回転する。
【0019】
主軸ユニット20は各立柱5に対向する。主軸ユニット20と移動部7とは、平行な二つのリンク13によって連結する。リンク13は棒状をなす。二つのリンク13の一端部は主軸ユニット20の第一ハウジング21(図3参照)に継手14を介して連結する。二つのリンク13の他端部は移動部7に継手14を介して連結する。継手14は、自在継手等である。三つの移動部7の上下位置を変更して、主軸ユニット20は上下前後左右に移動する。
【0020】
図3図5を用いて説明する。主軸ユニット20は円錐台形の第一ハウジング21を備える。第一ハウジング21は小径側を上方に向け、大径側を下方に向けて配置する。第一ハウジング21の下面全体は開口する。第一ハウジング21の下縁部に前記リンク13が連結する。
【0021】
第一ハウジング21の上面部21aに上下に貫通した貫通穴21bが形成してある。貫通穴21bに第一回転軸24を挿入する。第一回転軸24と貫通穴21bとの間に滑り軸受25が嵌まる。滑り軸受25は第一回転軸24を回転可能に支持する。第一回転軸24は筒状をなし、第一回転軸24の内側に配線60(図5参照)が挿入してある。第一ハウジング21の上面部21a下側に複数の第一係合部21cが固定してある。複数の第一係合部21cは貫通穴21bの周囲に、周方向に略等しい間隔を空けて設ける。
【0022】
第一回転軸24の略中途部に駆動歯車27が設けてある。駆動歯車27は二段歯車であり、二段歯車は小径歯車27b及び大径歯車27aを有する。小径歯車27bは大径歯車27aの下側に位置する。第一回転軸24は駆動歯車27の中央の穴に挿入する。第一回転軸24と駆動歯車27の間に、上下方向を軸方向とした二つの軸受24bが嵌まる。二つの軸受24bは上下に並び、第一回転軸24及び駆動歯車27を回転可能に支持する。ボールスプライン12の回転は大径歯車27aに伝達する。
【0023】
駆動歯車27は複数の第二係合部27cを備える。該複数の第二係合部27cは大径歯車27aの上面に固定し、且つ第一回転軸24の周方向に略等しい間隔を空けて設けてある。第一ハウジング21の上面部21aと駆動歯車27の間にドグクラッチ26が設けてある。ドグクラッチ26は軸方向に短い円筒形をなし、上下方向を軸方向として配置してある。ドグクラッチ26の外周面の軸方向中央部に、周方向に延びる環状の溝26aが形成してある。ドグクラッチ26は摺動性の良い金属材料、例えば真鍮やアルミ青銅で構成する。
【0024】
ドグクラッチ26の上縁部に上向きに突出した複数の上歯26bが設けてあり、下縁部に下向きに突出した複数の下歯26cが設けてある。ドグクラッチ26は第一回転軸24の外側に設けてある。即ち、第一回転軸24はドグクラッチ26の内側に挿入する。第一回転軸24の外周面及びドグクラッチ26の内周面の一方にキー溝が、他方に該キー溝に嵌まるキーが設けてある(何れも図示略)。キー溝の深さ方向の寸法はキーよりも長く、キーはキー溝に沿って上下移動可能である。キー溝の周方向(幅方向)寸法はキーと略同じである。即ち、ドグクラッチ26は第一回転軸24に対して周方向に固定してあり、軸方向に移動可能である。
【0025】
第一ハウジング21の下面開口に第二ハウジング22が設けてある。第二ハウジング22は、内部が空洞の円柱状をなし、上下方向を軸方向にして配置してある。第二ハウジング22の上縁部は第一ハウジング21の下縁部内側に配置してある。第二ハウジング22の上縁部と第一ハウジング21の下縁部との間にクロスローラベアリング23が設けてある。クロスローラベアリング23は第二ハウジング22を回転可能に支持する。第二ハウジング22は上下軸回りに回転する。
【0026】
第二ハウジング22の上面中央部に第一支持筒22aが形成してある。第一支持筒22aは、第二ハウジング22の上面部22dを上下に貫通するように上面部22dから上側及び下側に延びる。第一支持筒22aの内側に第一回転軸24の下部を挿入する。第一回転軸24の外周面及び第一支持筒22aの内周面の一方にキー溝が、他方に該キー溝に嵌まるキーが設けてある(何れも図示略)。キー溝及びキーの軸方向寸法及び周方向寸法は略同じであり、キー溝及びキーは、軸方向及び周方向にて、第一支持筒22aを第一回転軸24に固定する。第一回転軸24の下端部は第一支持筒22aから下方に突出する。第一回転軸24の下端部外周に、円筒状の固定部材24aが取り付けてある。固定部材24aは、第一支持筒22a及び第一回転軸24の下端部を固定する。
【0027】
第二ハウジング22の上面部22dに第二支持筒22bが形成してある。第二支持筒22bは、径方向にて、第一支持筒22aの隣に位置する。第二支持筒22bは前記上面部22dから下方に突出し、第二ハウジング22の内側に位置する。第二支持筒22bの上端部開口は上面部22dを貫通する。第二支持筒22bに第一中間軸31が挿入してある。第一中間軸31の略中途部と第二支持筒22bとの間に、上下方向を軸方向とした二つの軸受31aが設けてある。二つの軸受31aは上下に並び、第一中間軸31を回転可能に支持する。第二ハウジング22、第一回転軸24、第一支持筒22a及び第二支持筒22b等は、回転部を構成する。
【0028】
第一中間軸31の上端部は第二支持筒22bから上方に突出する。前記上端部に、上下方向を軸方向とした平歯車29が嵌合する。平歯車29は駆動歯車27の小径歯車27bに噛合する。第一中間軸31の下端部は第二ハウジング22の下面部付近に位置する。前記下端部に傘歯車30が嵌合する。
【0029】
第二ハウジング22の周面部の一部が、径方向外側に且つ斜め下向きに突出している。以下、この突出した部分を突出部22cと称する。突出部22cの下端は開口している。突出部22cは第二支持筒22bの隣に位置する。突出部22cの下端には、第一アーム40が連結する。
【0030】
第一アーム40は有底筒型のハウジング41を備える。ハウジング41の開口部は突出部22cの開口部に連結する。ハウジング41は、突出部22cの突出方向と同方向に延びる。ハウジング41の上部は第二中間軸32と、二つの軸受32aを格納する。第二中間軸32は前記突出方向と同方向に延びる。軸受32aは前記突出方向を軸方向とする。二つの軸受32aは前記突出方向に並び、第二中間軸32を支持する。第二中間軸32の上端部に傘歯車34が嵌合する。該傘歯車34は、第一中間軸31の傘歯車30に噛合する。
【0031】
ハウジング41の中央部は第三中間軸33及び二つの軸受33aを格納する。第三中間軸33は前記突出方向と同方向に延びる。軸受33aは前記突出方向を軸方向とする。二つの軸受33aは前記突出方向に並び、第三中間軸33を支持する。カップリング37が第三中間軸33の上端部と第二中間軸32の下端部を連結する。第三中間軸33の下端部はハイポイドピニオン33bを形成する。
【0032】
ハウジング41の下端部側面に開口42が形成してある。開口42は前記第二ハウジング22側に位置する。ハウジング41下端部は第二回転軸35を格納する。第二回転軸35は回転軸を構成する。第二回転軸35は、前記突出方向に直交する方向(以下、直交方向)に延び、ハウジング41下端部を貫通する。第二回転軸35の一端部は前記開口42から突出する。第二回転軸35は筒形をなし、第二回転軸35の内側に配線60が挿入する。
【0033】
ハウジング41下端部は第一軸受35a、第二軸受36a、ハイポイドギヤ36を格納する。第一軸受35aは、開口42の反対側に位置し、第二回転軸35の他端部を支持する。第一軸受35aと開口42との間に第二軸受36aが位置し、第二軸受36aはハイポイドギヤ36の外周側を支持する。第二回転軸35はハイポイドギヤ36に挿入し、第二回転軸35の中央部にハイポイドギヤ36は固定する。ハイポイドギヤ36は第二回転軸35に連結し、ハイポイドピニオン33bに噛合する。
【0034】
ハイポイドギヤ36及びハイポイドピニオン33bの減速比は、二つの傘歯車30、34の減速比よりも高く、平歯車29及び小径歯車27bの減速比よりも高い。尚、ハイポイドギヤ36に代えてウォームホイールを使用し、ハイポイドピニオン33bに代えてウォームギヤを使用してもよい。この場合においても、ウォームホイール及びウォームギヤの減速比は、二つの傘歯車30、34の減速比よりも高く、平歯車29及び小径歯車27bの減速比よりも高い。
【0035】
開口42の周縁部に第二アーム43が連結する。第二アーム43は、アーム部44及び支持筒45を備える。アーム部44は、棒の中央を曲げ、ハウジング41に平行な方向に延びる第一部分44aと、第一部分44aに交差する方向に延びる第二部分44bとを備える。第一部分44aの一端部と第二部分44bの一端部は一体的に連結する。第一部分44aの他端部は、開口42の周縁部に臨む。開口42から突出した第二回転軸35の一端部は、第一部分44aの他端部に固定してある。
【0036】
第二部分44bには、配線60を挿入する貫通穴44cが形成してある。第二部分44bの他端部に支持筒45が設けてある。支持筒45の軸線と、第一回転軸24の軸線とが一致するように、支持筒45は配置してある。支持筒45は、その内側にて同軸的に主軸46を支持する。支持筒45の上端部に不図示のモータが設けてある。主軸46の下端部に工具47が装着してある。前記モータは主軸46に動力を供給し、主軸46及び工具47が回転する。配線60は第二回転軸35、貫通穴44cを通り、前記モータに連結し、電力を供給する。
【0037】
図3に示す如く、第一回転軸24の軸線をCとした場合、主軸46及び工具47の軸線はCに一致する。第二回転軸35の軸線をAとした場合、工具47の先端はA上に位置する。即ち、工具47の先端が軸線C及びAの交点に位置する。軸線C及びAのなす角θは約60度である。角θは45度以上90度以下であればよく、好ましくは、50度以上90度以下であり、より好ましくは55度以上80度以下である。
【0038】
図6に示す如く、第一係合部21cは、第一ハウジング21の上面部21aに固定する固定部21c1と、該固定部21c1から下方に突出した突部21c2を備える。突部21c2の下端部両側に、下方に向かうに従って、ドグクラッチ26の周方向における突部21c2の幅が短くなるように、傾斜面21c3が形成してある。突部21c2の下端部の幅は、上歯26b間の幅よりも小さい。
【0039】
第二係合部27cは、大径歯車27aの上面部に固定する固定部27c1と、該固定部27c1から上方に突出した突部27c2を備える。突部27c2の上端部両側に、上方に向かうに従って、ドグクラッチ26の周方向における突部27c2の幅が短くなるように、傾斜面27c3が形成してある。突部27c2の上端部の幅は、上歯26b間の幅よりも小さい。
【0040】
エアシリンダ50が第一ハウジング21の外側に取り付けてある。エアシリンダ50は、上下方向を軸方向としたロッド50aを有する。ロッド50aはエアシリンダ50から下方に突出し、空気圧によって上下動する。ロッド50aの下端に二股のフォーク52が取り付けてある。フォーク52の基端部はロッド50aの下端に、ドグクラッチ26の径方向を回転軸方向として、回転可能に連結する。フォーク52の二股部分は溝26aに係合する。フォーク52の二股部分は第一ハウジング21内に位置し、フォーク52の基端部は第一ハウジング21を、ドグクラッチ26の径方向に貫通する。
【0041】
第一ハウジング21内に、ドグクラッチ26の径方向に延びる支軸51が設けてある。支軸51は、フォーク52の基端部の中途部を貫通する。支軸51は、軸回りに回転可能に、フォーク52を支持する。
【0042】
ロッド50aが下方に移動した場合、フォーク52の二股部分は支軸51を支点にして上側に移動し、ドグクラッチ26の上歯26bの間に第一係合部21cが係合する。ロッド50aが上方に移動した場合、フォーク52の二股部分は支軸51を支点にして下側に移動し、ドグクラッチ26の下歯26cの間に第二係合部27cが係合する。
【0043】
図8において、第一ハウジング21、エアシリンダ50及びフォーク52を省略した。フォーク52の二股部分が上側に移動し、上歯26bの間に第一係合部21cが係合した場合、ドグクラッチ26、第一回転軸24及び第二ハウジング22は第一ハウジング21に固定する。ドグクラッチ26の下歯26cの間に第二係合部27cは係合しない。
【0044】
ボールスプライン12はモータ10の回転によって回転し、回転は大径歯車27aに伝達し、駆動歯車27は回転する。小径歯車27bに噛合する平歯車29が回転し、第一中間軸31、傘歯車30、34、第二中間軸32、第三中間軸33が回転する。第三中間軸33下端のハイポイドピニオン33bが回転し、ハイポイドギヤ36が回転する。ハイポイドギヤ36と共に第二回転軸35及び第二アーム43が、軸線A回りに回転する。以下、軸線AをA軸とも称する。A軸は第二軸を構成する。尚、ドグクラッチ26、第一回転軸24及び第二ハウジング22は、第一ハウジング21に固定するので、回転しない。
【0045】
図9において、第一ハウジング21、エアシリンダ50及びフォーク52を省略した。フォーク52の二股部分が下側に移動し、下歯26cの間に第二係合部27cが係合した場合、ドグクラッチ26、第一回転軸24及び第二ハウジング22は駆動歯車27に連結する。ボールスプライン12の回転は駆動歯車27に伝達し、駆動歯車27と共に、第一回転軸24、第二ハウジング22、第一アーム40及び第二アーム43は、軸線C回りに回転する。以下、軸線CをC軸とも称する。C軸は第一軸を構成する。尚、第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35も、駆動歯車27と共に、C軸回りに回転するので、第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35自身は回転せず、第二アーム43はA軸回りに回転しない。
【0046】
A軸回りの回転からC軸回りの回転に切り替わる場合、ドグクラッチ26は下方に移動する。下歯26cの間に第二係合部27cが位置しない場合、下歯26cは第二係合部27cの傾斜面27c3に接触する。駆動歯車27は、下歯26cから傾斜面27c3に作用した力によってC軸回りに回転し、第二係合部27cの突部27c2は下歯26cの間に位置する。図6に示す如く、A軸回りの回転からC軸回りの回転に切り替わる場合、突部27c2の上端位置P3は下歯26cの下端位置P4よりも上側にあり、第二係合部27cは下歯26cの間に位置し、突部21c2の下端位置P1は、上歯26bの上端位置P2よりも下側にあり、第一係合部21cは、回転の切替前から継続して上歯26bの間に位置する。
【0047】
図10図11に示す如く、C軸回りの回転からA軸回りの回転に切り替わる場合、ドグクラッチ26は上方に移動する。上歯26bの間に第一係合部21cが位置しない場合、上歯26bは第一係合部21cの傾斜面21c3に接触する。駆動歯車27は、上歯26bから傾斜面21c3に作用した力によってC軸回りに回転し、第一係合部21cの突部21c2は上歯26bの間に位置する。図6に示す如く、C軸回りの回転からA軸回りの回転に切り替わる場合、突部21c2の下端位置P1は、上歯26bの上端位置P2よりも下側にあり、第一係合部21cは上歯26bの間に位置し、突部27c2の上端位置P3は下歯26cの下端位置P4よりも上側にあり、第二係合部27cは、回転の切替前から継続して下歯26cの間に位置する。
【0048】
即ち、A軸又はC軸回りの回転に切り替わる途中において、上歯26bの間に第一係合部21cは係合し、下歯26cの間に第二係合部27cは係合するので、回転の切り替わり時において、脱調の発生を防止することができる。
【0049】
第一中間軸31、第二中間軸32、第三中間軸33及び第二回転軸35を、第二ハウジング22及びハウジング41内に設けているが、第二ハウジング22及びハウジング41の外側に設け、第二アーム43に動力を伝達する構成としてもよい。
【0050】
実施の形態に係る工作機械にあっては、C軸及びA軸の間の角度は45度以上90度以下なので、簡素な構成でも、A軸回りにおける工具47の回転範囲を大きくすることができる。故に、ワークの上部分に形成したバリに工具47を当ててして、穴の縁や外周部のバリ取りを行うことができ、ワークの側面下からも作業者の意図した方向から工具47を当て、ワーク側面の複雑形状のバリ取りを行うことができる。
【0051】
C軸及びA軸の間の角度が45度未満の場合、ワークの上部分を加工できるが、側面のアンダーカット形状の部分は加工できない。即ち、C軸及びA軸の間の角度を45度以上90度以下にすることによって、加工可能なワークの範囲を大きくすることができる。
【0052】
また工具47の先端はC軸及びA軸の交点に位置するので、C軸又はA軸回りに位置決めする場合、第二回転軸35及び第一回転軸24等を支持する軸受24b、35a等によって工具47の先端の位置は常時同じ位置に留まるように強固に支持される。故に、C軸及びA軸回りの回転にギヤ機構を使用しても、加工時に工具47に作用する負荷が加工精度に与える影響を抑制し、バックラッシュの影響によるびびりなどの加工不良の発生を抑制することができる。
【0053】
工具47の先端がA軸及びC軸の交点に位置しない場合であっても、第二回転軸35のA軸回りの起動トルクをTとし、工具47に作用する切削負荷のA軸まわりの成分をFとし、A軸と工具47の先端との間の最短距離をLとした場合、T>F×Lの関係が成立すれば、加工時に工具47に作用する負荷が加工精度に与える影響を抑制し、バックラッシュの影響によるびびりなどの加工不良の発生を抑制することができる。なお工具47の先端がA軸及びC軸の交点に位置し且つ上記関係が成立する場合も同様な効果を奏する。この場合、Lは0となる。なお、切削負荷は想定される負荷が最も大きなワークで且つ負荷が最も大きくなる工具で加工した時の負荷とする。
【0054】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
22 第二ハウジング(回転部)
22a 第一支持筒(回転部)
22b 第二支持筒(回転部)
24 第一回転軸(回転部)
35 第二回転軸(回転軸)
40 第一アーム
43 第二アーム
46 主軸(エンドエフェクタ)
47 工具(エンドエフェクタ)
図1
図2
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図11