(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101131
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
G07C 9/00 20200101AFI20220629BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20220629BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220629BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20220629BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G07C9/00 Z
G06T7/20 300Z
H04N7/18 B
A61B5/16 120
A61B5/01 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215537
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 章紘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晟弥
【テーマコード(参考)】
3E138
4C038
4C117
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
3E138AA01
3E138CA07
3E138CC03
3E138DA01
3E138DB01
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3E138EA04
3E138EA06
3E138GA01
3E138HA07
3E138JA05
3E138JB05
3E138JC01
4C038PP03
4C038PR00
4C038PR04
4C038PS00
4C038PS07
4C117XA01
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4C117XD05
4C117XE48
4C117XE54
4C117XJ13
4C117XJ45
4C117XK05
4C117XK09
4C117XK18
4C117XR02
5C054CA05
5C054FC00
5C054FC15
5C054HA05
5C054HA18
5L096BA02
5L096CA18
5L096GA08
5L096HA01
(57)【要約】
【課題】規則違反有無の検査の効率を向上させること。
【解決手段】第1刺激制御部601は、規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも統計的に大きく反応する刺激を第1の刺激として被検査者に与える。第1反応測定部603は、被検査者に第1の刺激が与えられたときのその被検査者の反応を測定する。第2刺激制御部602は、規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも統計的に大きく反応する刺激を第2の刺激として被検査者に与える。第2反応測定部604は、被検査者に第2の刺激が与えられたときのその被検査者の反応を測定する。検査種別選択部605は、第1の刺激及び第2の刺激への反応に応じて被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査者に刺激を与え、当該刺激が与えられたときの当該被検査者の反応を測定し、当該反応に応じて当該被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する検査システム。
【請求項2】
前記反応は非言語の反応である
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記刺激は非言語の刺激である
請求項1又は2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記刺激は、異なるタイミングで被検査者に対し与えられる複数の異なる刺激を含み、当該複数の異なる刺激の各々に応じた当該被検査者の反応の組み合わせに応じて当該被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する
請求項1から3のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記複数の異なる刺激は、統計的に規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも大きく反応する刺激と、規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも統計的に大きく反応する刺激とを含む
請求項4に記載の検査システム。
【請求項6】
前記被検査者の所持物に持ち込みが禁止された禁止物を含めないという規則についての検査が行われる
請求項1から5までのいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項7】
前記禁止物の有無の可能性を所定の方法で判断する一次検査と、前記一次検査で前記禁止物がある可能性があると判断された場合に行われる、前記方法とは異なる方法で前記禁止物の有無を判断する二次検査とを前記検査の種別とする
請求項6に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を検査する技術として、特許文献1には、既公開の不審者リストに含まれないゲート通過予定者に関係した情報に応じて特定対象者か否かが定まり、この通過予定者がゲートを通過する時には特定対象者か否かに応じた処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば定められた禁止物の持ち込みを禁止するという規則があり、その規則違反、すなわち禁止物の所持の有無を検査する場合、X線等による透過画像を用いた検査と人の手による検査とを行う場合がある。この場合に2段階の検査を全ての非検査者に対して行っていては効率が悪い。
本発明は、上記の背景に鑑み、規則違反有無の検査の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、被検査者に刺激を与え、当該刺激が与えられたときの当該被検査者の反応を測定し、当該反応に応じて当該被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する検査システムを第1の態様として提供する。
【0006】
第1の態様の検査システムによれば、規則違反有無の検査の効率を向上させることができる。
【0007】
上記の第1の態様の検査システムにおいて、前記反応は非言語の反応である、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0008】
第2の態様の検査システムによれば、規則違反者がごまかしにくいようにすることができる。
【0009】
上記の第1又は第2の態様の検査システムにおいて、前記刺激は非言語の刺激である、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0010】
第3の態様の検査システムによれば、被検査者に刺激が十分に与えられないことを抑制することができる。
【0011】
上記の第1から第3のいずれか1の態様の検査システムにおいて、前記刺激は、異なるタイミングで被検査者に対し与えられる複数の異なる刺激を含み、当該複数の異なる刺激の各々に応じた当該被検査者の反応の組み合わせに応じて当該被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0012】
第4の態様の検査システムによれば、規則違反を行っている人と行っていない人とをより明確に区別することができる。
【0013】
上記の第4の態様の検査システムにおいて、前記複数の異なる刺激は、統計的に規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも大きく反応する刺激と、統計的に規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも大きく反応する刺激とを含む、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0014】
第5の態様の検査システムによれば、規則違反を行っている人と行っていない人との反応の違いを大きくすることができる。
【0015】
上記の第1から第5のいずれか1の態様の検査システムにおいて、前記被検査者の所持物に持ち込みが禁止された禁止物を含めないという規則についての検査が行われる、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0016】
第6の態様の検査システムによれば、禁止物の持ち込みを防ぐことができる。
【0017】
上記の第6の態様の検査システムにおいて、前記禁止物の有無の可能性を所定の方法で判断する一次検査と、前記一次検査で前記禁止物がある可能性があると判断された場合に行われる、前記方法とは異なる方法で前記禁止物の有無を判断する二次検査とを前記検査の種別とする、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0018】
第7の態様の検査システムによれば、禁止物の持ち込みを防ぐための2段階の検査を効率よく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例に係る入場検査システムの外観を表す図
【
図7】選択処理における制御装置の動作の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1]実施例
図1は実施例に係る入場検査システム1の外観を表す。
図1(a)では鉛直上方から見た入場検査システム1が表され、
図1(b)では水平方向に見た入場検査システム1が表されている。例えばイベント会場等においては、ナイフ等の持ち込みが禁止されている物(持ち込み禁止物)を持ち込んではいけないという規則が定められている場合がある。
【0021】
入場検査システム1は、そのような規則に違反する者がいるか否か、すなわち、被検査者であるイベント会場等への入場者の所持物に持ち込みが禁止された禁止物を含めないという規則についての検査を行うためのシステムである。入場検査システム1は本発明の「検査システム」の一例である。入場検査システム1は、例えば
図1に表す入場者3の荷物2に対して検査を行う。入場検査システム1は、検査に関する作業を行う検査員4によって利用される。
【0022】
入場検査システム1は、搬送装置10と、第1スピーカ20と、第2スピーカ30と、赤外線カメラ40と、検査装置50と、制御装置60とを備える。搬送装置10は、荷物2を搬送方向A1に搬送するベルトコンベヤである。入場検査システム1においては、搬送路の左右のいずれかに検査員4が配置されており、検査員4とは反対側に入場者3が通過する検査レーンが設けられている。
【0023】
検査装置50は、搬送される荷物を透過させた透過画像を撮影する装置である。透過画像は手荷物の検査のために用いられる画像である。検査装置50は、例えば自装置内で透過画像を撮影する透過撮影領域を通過する荷物2に対し電磁波を照射し、荷物2を透過した電磁波の強度に応じた濃淡により描かれる画像を荷物2の透過画像として生成する。検査装置50が荷物2に照射する電磁波は、荷物2を透過するが荷物2の内容物の物質に応じて透過率が異なる周波数帯域の電磁波であり、例えばX線である。
【0024】
搬送装置10の搬送方向A1の上流側には、第1スピーカ20及び第2スピーカ30が設置されている。第1スピーカ20及び第2スピーカ30は、音を放出する装置であり、放出した音が検査レーンを通過する入場者3に聞こえる位置及び向きで設置されている。第1スピーカ20は、第2スピーカ30と同じ向きで且つ第2スピーカ30よりも搬送方向A1の上流側に設置されている。
【0025】
この配置により、第1スピーカ20から放出された音が入場者3に聞こえる位置が、第2スピーカ30から放出された音が入場者3に聞こえる位置よりも搬送方向A1の上流側にずれるようになっている。つまり、入場者3は、検査レーンを通過する際に、第1スピーカ20から放出された音がまず聞こえて、その後に第2スピーカ30から放出された音が聞こえる。
【0026】
以下では、第1スピーカ20の音が聞こえる領域を第1可聴領域B1と言い、第2スピーカ30の音が聞こえる領域を第2可聴領域B2と言う。また、第1可聴領域B1よりも搬送方向A1の上流側には入場者3が通過する通過領域B0が存在する。入場検査システム1においては、第1可聴領域B1で聴こえる第1スピーカ20の音に対する入場者3の反応と、第2可聴領域B2で聴こえる第2スピーカ30の音に対する入場者3の反応とが測定される。反応の測定方法については後程説明する。
【0027】
赤外線カメラ40は、被写体を撮影する装置であり、第1スピーカ20及び第2スピーカ30からの音が聞こえている状態の入場者3を撮影可能な位置及び向きで設置されている。赤外線カメラ40は、本実施例では、検査装置50の上に固定されている。赤外線カメラ40は、物体が発する赤外線を受光して物体表面の温度分布を表す赤外線画像を生成して出力する。
【0028】
制御装置60は、入場検査システム1が備える各装置の動作を制御する装置である。制御装置60は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信部等を備えるコンピュータである。制御装置60は、搬送装置10、第1スピーカ20、第2スピーカ30、赤外線カメラ40及び検査装置50と図示せぬ配線で電気的に接続されており、各装置の動作を制御する。
【0029】
また、制御装置60は、ディスプレイにも接続されており、そのディスプレイに画像を表示する。制御装置60は、検査装置50が撮影した透過画像を表示する。検査員4は、表示された透過画像に持ち込み禁止物がないか否かを判断する検査を一次検査として行う。検査員4は、一次検査で持ち込み禁止物がある可能性があると判断した場合、検査装置50から出てきた荷物2の中身を直接確認する検査を二次検査として行う。
【0030】
また、検査員4は、前述した第1スピーカ20及び第2スピーカ30の音に対する入場者3の反応に応じて、通常通り一次検査を行うか、一次検査を飛ばして二次検査を行うかについて判断する検査を0次検査として行う。制御装置60は、0次検査において検査員4の判断を支援する情報をディスプレイに表示させる。その情報については後程詳しく説明する。
【0031】
このように、入場検査システム1においては、持ち込み禁止物の有無の可能性を所定の方法(以下「第1の方法」と言う)で判断する一次検査と、一次検査で持ち込み禁止物がある可能性があると判断された場合に行われる、第1の方法とは異なる方法(以下「第2の方法」と言う)で持ち込み禁止物の有無を判断する二次検査という異なる種別の検査が行われる。
【0032】
制御装置60は、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサが演算を行い、各々の通信装置による通信を制御したり、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって
図2に表す機能を実現する。
【0033】
図2は制御装置60が実現する機能構成を表す。制御装置60は、第1刺激制御部601と、第2刺激制御部602と、第1反応測定部603と、第2反応測定部604と、検査種別選択部605と、選択結果報知部606とを備える。第1刺激制御部601及び第2刺激制御部602は、検査レーンを通過する被検査者(
図1の例では入場者3)に刺激を与える制御を行う。
【0034】
本実施例では、第1刺激制御部601が第1スピーカ20から放出される音で、第1可聴領域B1を通過する入場者3に刺激を与える。また、第2刺激制御部602が第2スピーカ30から放出される音で、第2可聴領域B2を通過する入場者3に刺激を与える。このように、第1刺激制御部601及び第2刺激制御部602は、異なるタイミングで被検査者に対し刺激をそれぞれ与える。以下では第1刺激制御部601が与える刺激を「第1の刺激」と言い、第2刺激制御部602が与える刺激を「第2の刺激」と言う。
【0035】
第1刺激制御部601及び第2刺激制御部602が放出させる音は、本実施例では、言語の情報を表す音である。第1刺激制御部601は、規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも統計的に大きく反応する刺激を第1の刺激として与える。第1刺激制御部601は、例えば、「持ち込み禁止物を持ち込むとペナルティを課せられる場合があります」という音声を放出させる。
【0036】
この音声により、持ち込み禁止物を持ち込んでいる入場者は自分がペナルティを課せられる恐れが生じるため多少なりとも動揺することになりやすい。一方、持ち込み禁止物を持ち込んでいない入場者は自分がペナルティを課せられる恐れがないため全く動揺することがない。一般的に動揺が大きいほど動悸が激しくなって頬が紅潮したり体温が上昇したりするというように、体の反応が大きくなる。
【0037】
もちろん個人差はあるものの、統計を取れば上記の傾向が現れる。従って、第1刺激制御部601が放出する音によって、規則違反(持ち込み禁止物を持ち込んではいけないという規則の違反)を行っている人が規則違反を行っていない人よりも統計的に大きく反応する刺激が入場者に与えられることになる。第1刺激制御部601は、上記音を放出させると、放出させた時刻を第1刺激時刻として第1反応測定部603に供給する。
【0038】
第2刺激制御部602は、規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも統計的に大きく反応する刺激を第2の刺激として与える。第2刺激制御部602は、例えば、「持ち込み禁止物をお持ちでない方は検査が早く終わるので荷物を受け取るご準備をしてください」という音声を放出させる。この音声により、持ち込み禁止物を持ち込んでいない入場者は自分のことを言っていることに気付くので少し気分が高揚することになりやすい。
【0039】
一方、持ち込み禁止物を持ち込んでいる入場者は自分が対象の話ではないため全く気分が高揚しない。気分が高揚したときも、その高揚の度合いが大きいほど動悸が高まり、頬が紅潮したり体温が上昇したりするというように、体の反応が大きくなる。こちらも個人差はあるものの、統計を取れば前述した傾向が現れる。
【0040】
従って、第2刺激制御部602が放出する音によって、規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも統計的に大きく反応する刺激が入場者に与えられることになる。第2刺激制御部602は、上記音を放出させると、放出させた時刻を第2刺激時刻として第2反応測定部604に供給する。以上のとおり、第1刺激制御部601及び第2刺激制御部602は、異なるタイミングで被検査者に対し異なる複数の刺激(第1の刺激及び第2の刺激)を与える。
【0041】
第1反応測定部603は、第1刺激制御部601により被検査者(
図1の例では入場者3)に第1の刺激が与えられたときのその被検査者の反応を測定する。第1反応測定部603は、本実施例では、赤外線カメラ40が撮影した被検査者の赤外線画像に基づいて被検査者の反応を測定する。赤外線カメラ40が撮影した赤外線画像には、上述した通過領域B0、第1可聴領域B1及び第2可聴領域B2を撮影する領域が含まれる。
【0042】
図3は撮影された赤外線画像の一例を表す。
図3では、赤外線画像C1が表されている。赤外線画像C1には、通過領域B0を撮影する第0撮影領域D0と、第1可聴領域B1を撮影する第1撮影領域D1と、第2可聴領域B2を撮影する第2撮影領域D2とが含まれている。
図3(a)、(b)、(c)には、通過領域B0、第1可聴領域B1及び第2可聴領域B2を通過する入場者3が、第0撮影領域D0、第1撮影領域D1及び第2撮影領域D2に順番に映っている赤外線画像C1が表されている。
【0043】
赤外線画像C1においては、入場者3の表面の温度が等温線によって表されている。等温線が多いほど表面温度が高くなっていることを示している。第1反応測定部603は、第0撮影領域D0に映る入場者3及び第1撮影領域D1に映る入場者3を比較して、表面温度が上昇した値(上昇温度)を、第1刺激制御部601により与えられた第1の刺激に対する入場者3の反応として測定する。
【0044】
第1反応測定部603は、例えば、第0撮影領域D0に映る入場者3の表面温度の最高値が35度で、第1撮影領域D1に映る入場者3の表面温度の最高値が36度であれば、1度という上昇温度を第1刺激制御部601により与えられた第1の刺激に対する入場者3の反応として測定する。
図3の例では、1度の上昇で等温線が2本増えている。なお、最高温度ではなく平均温度の上昇温度が刺激への反応として測定されてもよい。
【0045】
第2反応測定部604は、第2刺激制御部602により被検査者(
図1の例では入場者3)に第2の刺激が与えられたときのその被検査者の反応を測定する。第2反応測定部604は、本実施例では、第1反応測定部603と同様に、赤外線カメラ40が撮影した被検査者の赤外線画像に基づいて被検査者の反応を測定する。第2反応測定部604は、具体的には、第1撮影領域D1に映る入場者3及び第2撮影領域D2に映る入場者3を比較する。
【0046】
そして、第2反応測定部604は、表面の上昇温度を、第2刺激制御部602により与えられた第2の刺激に対する入場者3の反応として測定する。
図3の例であれば、第2反応測定部604は、
図3(b)に表す入場者3から
図3(c)に表す入場者3への表面の上昇温度を第2の刺激に対する入場者3の反応として測定する。
図3の例では、等温線の本数が変わっておらずほとんど温度上昇がないので0度に近い上昇温度が測定される。
【0047】
図4は撮影された赤外線画像の別の一例を表す。
図4(a)、(b)、(c)には、
図3と同様に、通過領域B0、第1可聴領域B1及び第2可聴領域B2を通過する入場者3が、第0撮影領域D0、第1撮影領域D1及び第2撮影領域D2に順番に映っている赤外線画像C1が表されている。
図4の例では、第0撮影領域D0に映る入場者3及び第1撮影領域D1に映る入場者3では等温線の本数が変わらず温度上昇はほとんどない。
【0048】
一方、第1撮影領域D1に映る入場者3及び第2撮影領域D2に映る入場者3では等温線が2本増える程度の温度上昇がある。以上のとおり、本実施例では、入場者3に与えられる刺激は言語の刺激であったが、測定される反応は非言語の反応である。第1反応測定部603及び第2反応測定部604は、各々が測定した反応を示す反応情報を検査種別選択部605に供給する。
【0049】
検査種別選択部605は、供給された反応情報が示す反応に応じて被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する。検査種別選択部605は、複数の異なる刺激の各々に応じた被検査者の反応の組み合わせに応じてその被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する。検査種別選択部605は、例えば、第1の刺激及び第2の刺激に対する被検査者の反応の有無と、違反有無の判定結果と、検査の種別とを対応付けた検査種別テーブルを用いて検査の種別を選択する。
【0050】
図5は検査種別テーブルの一例を表す。
図5の例では、第1の刺激への反応が「あり」で第2の刺激への反応が「なし」の場合、違反者の反応が大きくなる第1の刺激だけ反応しているので「違反者」と判定され、「二次検査」が検査の種別として選択されることが表されている。また、第1の刺激及び第2の刺激への反応が「なし」及び「あり」である場合は、無違反者の反応が大きくなる第2の刺激だけ反応しているので「無違反者」と判定されて「一次検査」が検査の種別として選択されることが表されている。
【0051】
また、第1の刺激及び第2の刺激への反応が「あり」及び「あり」である場合は、「異常反応者」と判定されて「二次検査」が検査の種別として選択されることが表されている。また、第1の刺激及び第2の刺激への反応が「なし」及び「なし」である場合は刺激となる音を聞いていないと考えられるので「聞き逃し」と判定されて「二次検査」が検査の種別として選択されることが表されている。
【0052】
検査種別選択部605は、第1反応測定部603及び第2反応測定部604から供給された反応情報が示す反応の有無に検査種別テーブルで対応付けられている検査の種別を選択する。検査種別選択部605は、検査の種別の選択結果を選択結果報知部606に供給する。選択結果報知部606は、供給された選択結果を検査員4に報知する。選択結果報知部606は、例えば、
図1に表すディスプレイに選択結果を表示することで報知を行う。
【0053】
図6は表示された選択結果の一例を表す。
図6(a)では、選択結果報知部606は、選択結果として、「現在通過中の入場者には一次検査を行ってください。」という文字列を表示している。
図6(b)では、選択結果報知部606は、選択結果として、「現在通過中の入場者には一次検査を飛ばして二次検査を行ってください。」という文字列を表示している。検査員4は、この表示を見ることで、無違反者と判定された入場者の荷物は検査装置50に透過画像を撮影させて一次検査を行うことになる。
【0054】
また、検査員4は、上記表示を見ることで、無違反者と判定されなかった入場者の荷物は検査装置50の中に運ばれる前に取り上げて、二次検査用の場所まで持ち運んで一次検査を行わずに二次検査を行うことになる。このようにして、検査員4は、上述した0次検査、すなわち、通常通り一次検査を行うか、一次検査を飛ばして二次検査を行うかについて判断する検査を行う。なお、検査員4は、無違反者と判定された入場者であっても、一次検査で持ち込み禁止物が見つかった場合は二次検査を行う。
【0055】
制御装置60は、上記の構成に基づいて、上述した0次検査を支援するため、検査の種別を選択する選択処理を行う。
図7は選択処理における制御装置60の動作の一例を表す。まず、制御装置60(第1刺激制御部601)は、規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも統計的に大きく反応する刺激を第1の刺激として被検査者に与える(ステップS11)。次に、制御装置60(第1反応測定部603)は、被検査者に第1の刺激が与えられたときのその被検査者の反応を測定する(ステップS12)。
【0056】
続いて、制御装置60(第2刺激制御部602)は、規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも統計的に大きく反応する刺激を第2の刺激として被検査者に与える(ステップS13)。次に、制御装置60(第2反応測定部604)は、被検査者に第2の刺激が与えられたときのその被検査者の反応を測定する(ステップS14)。なお、ステップS12の第1の刺激への反応の測定は、第2の刺激の付与又は反応の測定(ステップS13又はS14)よりも前に行う必要はなく、それらの後に行われてもよい。
【0057】
続いて、制御装置60(検査種別選択部605)は、第1の刺激及び第2の刺激への反応に応じて被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する(ステップS15)。制御装置60(検査種別選択部605)は、詳細には、複数の異なる刺激の各々に応じた被検査者の反応の組み合わせに応じてその被検査者に対し行う規則違反の有無の検査の種別を選択する。そして、制御装置60(選択結果報知部606)は、ステップS15における選択結果を検査員4に報知する(ステップS16)。
【0058】
上記のとおり、被検査者の刺激に対する反応に応じて検査の種別を選択することで、無違反と判定される者には簡易な検査を行い、それ以外の者には簡易な検査を飛ばして厳重な検査を行うというように、刺激への反応による検査種別の選択を行わない場合に比べて、規則違反有無の検査の効率を向上させることができる。また、非言語の反応を用いることで、言語の反応を用いる場合に比べて、規則違反者がごまかしにくいようにすることができる。
【0059】
また、本実施例では、違反者が大きく反応する刺激と無違反者が大きく反応する刺激とを用いることで、それら以外の刺激を用いる場合に比べて、規則違反を行っている人と行っていない人との反応の違いを大きくすることができる。また、本実施例では、持ち込み禁止物を含めないという規則について検査が行われることで、会場等への持ち込み禁止物の持ち込みを防ぐことができる。
【0060】
また、本実施例では、禁止物の有無の可能性を判断する一次検査と、一次検査とは異なる方法で持ち込み禁止物の有無を判断する二次検査という持ち込み禁止物の持ち込みを防ぐための2段階の検査が検査の種別として用いられることで、刺激への反応による検査種別の選択を行わない場合に比べて、それらの2段階の検査を効率よく実施することができる。
【0061】
[2]変形例
上述した各実施例はいずれも本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、各実施例及び各変形例は必要に応じてそれぞれ組み合わせてもよい。
【0062】
[2-1]刺激の種類
実施例では、規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも統計的に大きく反応するという刺激が第1の刺激として、規則違反を行っていない人が規則違反を行っている人よりも統計的に大きく反応するという刺激が第2の刺激として用いられたが、これに限らない。例えば、後者の刺激を第1の刺激とし、前者の刺激を第2の刺激としてもよい。
【0063】
また、いずれか一方の刺激だけを用いてもよい。その場合でも、検査種別選択部605は、例えば第1の刺激だけが用いられた場合は違反者を判定しやすくなるし、第2の刺激が用いられた場合は無違反者を判定しやすくなる。また、上記以外の刺激が追加で用いられてもよい。例えば誰でも大きく反応する刺激を与えることで、検査種別選択部605は、反応がなければ刺激自体が伝わっていない(音が聞こえていない)と判定することができる。
【0064】
また、実施例では、言語の刺激が用いられたが、非言語の刺激が用いられてもよい。非言語の刺激とは、例えば、持ち込み禁止物(例えば刃物等)を例示する画像である。その場合は、スピーカではなくディスプレイが被検査者から見える位置に設けられる。第1刺激制御部601は、持ち込み禁止物の画像をディスプレイに表示させることで、規則違反を行っている人が規則違反を行っていない人よりも統計的に大きく反応する刺激を第1の刺激として与える。
【0065】
なお、ディスプレイに文字列を表示することで文字列の言語の刺激が与えられてもよい。音声による言語の刺激だと、言葉を聞き終わるまでにある程度の時間を要するので、途中で聞くことを止めてしまい刺激が十分に与えられないおそれがある。これに対し、画像のような非言語の刺激であれば瞬間的に与えられるので、音声による言語の刺激に比べて、被検査者に刺激が十分に与えられないことを抑制することができる。
【0066】
また、第1の刺激の種類及び第2の刺激の種類が異なっていてもよい。例えば、言語の刺激が第1の刺激として与えられ、非言語の刺激が第2の刺激として与えられてもよいし、その反対(第1の刺激が非言語、第2の刺激が言語)であってもよい。いずれの場合も、実施例と同様に、刺激への反応による検査種別の選択を行わない場合に比べて、規則違反有無の検査の効率を向上させることができる。
【0067】
[2-2]反応の種類
実施例では、第1反応測定部603及び第2反応測定部604が、被検査者の表面温度の上昇という反応を測定したが、これに限らない。例えば、被検査者の目線の変化という反応、被検査者の顔の向きの変化又は被検査者の瞳孔の変化という反応が測定されてもよい。それらの場合、例えば人の目線を認識する周知技術、人の顔の向きを認識する周知技術又は瞳孔の状態を認識する周知技術等を用いて反応が測定される。
【0068】
被検査者は、自分が該当する事柄が聞こえてきた場合、自分が該当しない事柄が聞こえてきた場合に比べて、音の発生源の方に目をやりやすい。従って、検査種別選択部605は、目線又は顔の向きがスピーカの方を向く動きをするか否かによって被検査者が無違反者か違反者等であるかを判定することができる。また、上記の反応はいずれも非言語の反応であるが、言語の反応が用いられてもよい。言語の反応とは、例えば被検査者が話す言葉である。
【0069】
この場合、例えば、被検査者に対する質問が第1の刺激又は第2の刺激として与えられ、被検査者が質問に対して答えると、その答えが言語の反応として測定される。この場合、被検査者の声を拾える位置にマイクを設けておき、音声認識の技術を用いて、質問に対して答える音声を認識する。例えば入場可能な者には予め合言葉を伝えておき、その合言葉を答えられるか否かで検査種別選択部605が違反者を判定してもよい。
【0070】
また、第1の刺激への反応の種類及び第2の刺激への反応の種類が異なっていてもよい。例えば、言語の反応が第1の刺激への反応として測定され、非言語の反応が第2の刺激への反応として測定されてもよいし、その反対(第1の刺激への反応が非言語、第2の刺激への反応が言語)であってもよい。いずれの場合も、実施例と同様に、刺激への反応による検査種別の選択を行わない場合に比べて、規則違反有無の検査の効率を向上させることができる。
【0071】
[2-3]規則の種類
実施例では、入場者の所持物に持ち込みが禁止された禁止物を含めないという規則が用いられたが、これに限らない。例えば、入場者の所持物に持ち込みが必須な物(場内のイベントで用いる物等)を含めるという規則が用いられてもよい。また、入場者が飲酒等の禁止行為をしていないという規則が用いられてもよい。いずれの場合も、実施例と同様に、刺激への反応による検査種別の選択を行わない場合に比べて、規則違反有無の検査の効率を向上させることができる。
【0072】
[2-4]荷物の検査場所
実施例では、荷物の検査がイベント会場で行われる場合を説明したが、これ以外にも、例えば、空港、駅、港及びバスターミナル等の乗り物の入場口で行われてもよいし、コンサート会場、スポーツ競技場、スタジアム及び美術館等の施設の入場口で行われてもよい。要するに、被検査者に対して何らかの検査を行うところであれば、どのような場所で検査が行われてもよい。
【0073】
[2-5]機能構成
制御装置60が実現する機能の構成は、
図2に表すものに限らない。例えば、実施例では検査種別選択部605が、違反者等の判定と検査の種別の選択とを行ったが、これらの動作を別々の機能が行ってもよい。反対に、例えば第1刺激制御部601及び第2刺激制御部602が行う動作を1つの機能が行ってもよい。
【0074】
また、第1反応測定部603及び第2反応測定部604が行う動作を1つの機能が行ってもよい。また、制御装置60が実現する機能を2以上の情報処理装置又はクラウドサービスで提供されるコンピュータリソースが実現してもよい。要するに、全体として
図2に表された機能が実現されていれば、各機能が行う動作の範囲及び各機能を実現する装置は自由に定められてよい。
【0075】
[2-6]発明のカテゴリ
本発明は、制御装置60という情報処理装置の他に、情報処理装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、情報処理装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等の通信回線を介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…入場検査システム、10…搬送装置、20…第1スピーカ、30…第2スピーカ、40…赤外線カメラ、50…検査装置、60…制御装置、601…第1刺激制御部、602…第2刺激制御部、603…第1反応測定部、604…第2反応測定部、605…検査種別選択部、606…選択結果報知部。