(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101141
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】保冷容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/18 20060101AFI20220629BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B65D81/18 D
B65D81/18 B
B65D81/38 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215557
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 信和
(72)【発明者】
【氏名】川井 幸輔
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】豊川 博之
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AB81
3E067AB96
3E067AB99
3E067BA05A
3E067BB11A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB17A
3E067BB17C
3E067BB26A
3E067CA18
3E067EA23
3E067EB17
3E067EC36
3E067EE11
3E067EE28
3E067FA02
3E067FC01
3E067GA02
3E067GA11
3E067GA13
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】温度管理対象物の温度が冷却剤により低温領域に保持された状態で温度管理対象物を容易に取り出すことができる保冷容器を提供すること。
【解決手段】保冷容器2は、温度管理対象物81を収納する第1収納部301と、第1収納部301の上方に配置され冷却剤82を収納する第2収納部302と、を有する容器本体3と、第1収納部301と第2収納部302とを隔離するとともに冷却剤82の冷気を通過させる通気孔611を有する仕切部61と、容器本体3の内部に配置されて第1収納部301および第2収納部302を覆う断熱部材43、44、45、46と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度管理対象物を収納する第1収納部と、前記第1収納部の上方に配置され冷却剤を収納する第2収納部と、を有する容器本体と、
前記第1収納部と前記第2収納部とを隔離するとともに前記冷却剤の冷気を通過させる通気孔を有する仕切部と、
前記容器本体の内部に配置されて前記第1収納部および前記第2収納部を覆う断熱部材と、
を備えたことを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記仕切部は、前記容器本体の内部に設置された仕切板であることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
前記第2収納部に対して出し入れ可能に設けられ前記冷却剤を収納する内側容器をさらに備え、
前記仕切部は、前記内側容器の底部であることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項4】
前記第2収納部に対して出し入れ可能に設けられ前記冷却剤を収納する内側容器をさらに備え、
前記仕切部は、
前記容器本体の内部に設置された仕切板と、
前記内側容器の底部と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記内側容器は、前記第2収納部の周囲を覆う前記断熱部材の上面に着脱可能な鍔部を有することを特徴とする請求項3または4に記載の保冷容器。
【請求項6】
前記容器本体は、前記第1収納部と前記容器本体の外部とを連通させる開口部を有し、
前記開口部は、前記開口部を通して水平方向に前記温度管理対象物を前記第1収納部に対して出し入れ可能とすることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の保冷容器。
【請求項7】
前記第1収納部に設置されるとともに前記温度管理対象物を載置するトレイをさらに備え、
前記開口部は、前記開口部を通して前記水平方向に前記温度管理対象物を載置した状態の前記トレイを前記第1収納部に対して出し入れ可能とすることを特徴とする請求項6に記載の保冷容器。
【請求項8】
前記容器本体は、前記開口部を開閉可能な蓋部を有し、
前記蓋部は、前記開口部に嵌合可能な前記断熱部材の一部を有することを特徴とする請求項6または7に記載の保冷容器。
【請求項9】
前記蓋部は、前記容器本体に対して着脱可能とされたことを特徴とする請求項8に記載の保冷容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物の中には、例えば-60℃以下などの低温領域に温度を保持された状態で搬送することが必要あるいは望ましい温度管理対象物がある。このような温度管理対象物としては、例えば、医薬品、細胞、検体、臓器、化学物質および食品などが挙げられる。より具体的な温度管理対象物としては、例えば、抗体などのバイオ医薬品、細胞、再生細胞、ワクチン、検体、および遺伝子治療用ベクターなどが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、温度管理対象物の温度を0℃以下などの低温領域に保持した状態で温度管理対象物を搬送する保温搬送容器が開示されている。特許文献1に記載された保温搬送容器では、温度管理対象物の温度を0℃以下などの低温領域に保持するために、冷却剤が保温搬送容器の中に配置される。
【0004】
冷却剤としては、例えばドライアイスなどが挙げられる。ドライアイスなどの潜熱型の冷却剤は、温度管理対象物に伝わる熱を融解あるいは昇華する際に吸収することにより、温度管理対象物の温度が上昇することを抑え、温度管理対象物の温度を低温領域に保持することができる。例えば、直径が3mm以上、10mm以下程度の粒状のドライアイスは、比較的高い保冷効果や急冷効果を有する。
【0005】
しかし、複数の潜熱型の冷却剤が保冷容器に収納された場合には、冷気により空気中の水分が凍結することで複数の潜熱型の冷却剤が互いに固着することがある。例えば、複数の粒状のドライアイスが温度管理対象物とともに保冷容器に収納された場合には、複数の粒状のドライアイスは、保冷容器の外部から内部に侵入する熱により昇華する際に生じる冷気により空気中の水分が凍結することで互いに固着することがある。そうすると、保冷容器の利用者等は、冷却剤を保冷容器から容易に取り出すことができず、温度管理対象物を保冷容器から取り出すことが困難になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、温度管理対象物の温度が冷却剤により低温領域に保持された状態で温度管理対象物を容易に取り出すことができる保冷容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、温度管理対象物を収納する第1収納部と、前記第1収納部の上方に配置され冷却剤を収納する第2収納部と、を有する容器本体と、前記第1収納部と前記第2収納部とを隔離するとともに前記冷却剤の冷気を通過させる通気孔を有する仕切部と、前記容器本体の内部に配置されて前記第1収納部および前記第2収納部を覆う断熱部材と、を備えたことを特徴とする本発明に係る保冷容器により解決される。
【0009】
本発明に係る保冷容器によれば、容器本体は、温度管理対象物を収納する第1収納部と、第1収納部の上方に配置され冷却剤を収納する第2収納部と、を有する。仕切部は、第1収納部と第2収納部とを隔離している。また、仕切部は、第2収納部に収納された冷却剤の冷気を通過させる通気孔を有する。断熱部材は、容器本体の内部に配置されており、第1収納部および第2収納部を覆う。
【0010】
第2収納部に収納された冷却剤は、容器本体の外部から内部に侵入する熱により融解あるいは昇華し冷気を生じる。そして、冷却剤から生ずる冷気は、仕切部の通気孔を通過し、第1収納部に収納された温度管理対象物に到達する。これにより、冷却剤は、温度管理対象物の温度が上昇することを抑え、温度管理対象物の温度を低温領域に保持することができる。
【0011】
ここで、前述した通り、仕切部は、第1収納部と第2収納部とを隔離している。そのため、例えば、第2収納部に収納された複数の冷却剤が、空気中の水分が凍結することで互いに固着するような場合であっても、本発明に係る保冷容器の利用者等は、冷却剤を収納した第2収納部から仕切部により隔離された第1収納部に収納された温度管理対象物を容易に容器本体から取り出すことができる。これにより、本発明に係る保冷容器の利用者等は、温度管理対象物の温度が冷却剤により低温領域に保持された状態で温度管理対象物を容器本体から容易に取り出すことができる。
【0012】
本発明に係る保冷容器において、好ましくは、前記仕切部は、前記容器本体の内部に設置された仕切板であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る保冷容器によれば、仕切部は、容器本体の内部に設置された仕切板である。これにより、仕切部は、より簡易的な構造により、第1収納部と第2収納部とを隔離することができる。また、仕切部としての仕切板が容器本体の内部に設置されているため、本発明に係る保冷容器の利用者等は、仕切板により形成された容器本体の第2収納部に冷却剤を他の部材を介することなくそのままの状態で容易に収納することができる。そして、本発明に係る保冷容器の利用者等は、例えば、第2収納部に対する冷却剤の挿入口とは異なる位置に設けられた開口部を通して第1収納部に収納された温度管理対象物を容器本体から容易に取り出すことができる。また、仕切板は、所定の強度を有する場合には、第2収納部に収納された冷却剤を支持し、冷却剤が第1収納部に収納された温度管理対象物に直接的に触れることを抑えることができる。
【0014】
本発明に係る保冷容器は、好ましくは、前記第2収納部に対して出し入れ可能に設けられ前記冷却剤を収納する内側容器をさらに備え、前記仕切部は、前記内側容器の底部であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る保冷容器によれば、保冷容器は、内側容器をさらに備える。内側容器は、冷却剤を収納し、第2収納部に対して出し入れ可能に設けられる。そして、内側容器の底部が、第1収納部と第2収納部とを隔離するとともに冷却剤の冷気を通過させる通気孔を有する仕切部として機能する。そのため、第1収納部と第2収納部とを隔離するための仕切部が容器本体の内部に設置されなくとも、内側容器の底部が第1収納部と第2収納部とを隔離する仕切部として機能することができる。これにより、容器本体の内部をより簡易的な構造に設定することができる。
【0016】
また、前述した通り、内側容器は、冷却剤を収納し、第2収納部に対して出し入れ可能に設けられる。そのため、内側容器は、冷却剤を収納したままの状態で、第2収納部に設置されたり第2収納部から取り出されたりする。これにより、本発明に係る保冷容器の利用者等は、冷却剤が収納されたままの状態の内側容器を第2収納部から取り出すことにより、第1収納部に収納された温度管理対象物を容器本体から容易に取り出すことができる。また、本発明に係る保冷容器の利用者等は、内側容器を第2収納部に入れる前に冷却剤を内側容器に容易に収納したり、冷却剤が収納されたままの状態の内側容器を第2収納部から取り出して冷却剤を容易に廃棄したりすることができる。
【0017】
本発明に係る保冷容器は、好ましくは、前記第2収納部に対して出し入れ可能に設けられ前記冷却剤を収納する内側容器をさらに備え、前記仕切部は、前記容器本体の内部に設置された仕切板と、前記内側容器の底部と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る保冷容器によれば、仕切部は、容器本体の内部に設置された仕切板と、内側容器の底部と、を含む。つまり、容器本体の内部に設置された仕切板と、内側容器の底部と、が第1収納部と第2収納部とを隔離するとともに冷却剤の冷気を通過させる通気孔を有する仕切部として機能する。仕切板は、所定の強度を有する場合には、内側容器の底部が冷却剤の重みにより撓むことを抑え、内側容器に収納された冷却剤が第1収納部に収納された温度管理対象物に直接的に触れることを抑えることができる。また、内側容器は、冷却剤を収納し、第2収納部に対して出し入れ可能に設けられる。そのため、内側容器は、冷却剤を収納したままの状態で、第2収納部に設置されたり第2収納部から取り出されたりする。これにより、本発明に係る保冷容器の利用者等は、内側容器を第2収納部に入れる前に冷却剤を内側容器に容易に収納したり、冷却剤が収納されたままの状態の内側容器を第2収納部から取り出して冷却剤を容易に廃棄したりすることができる。そして、本発明に係る保冷容器の利用者等は、例えば、第2収納部に対する内側容器の挿入口とは異なる位置に設けられた開口部を通して第1収納部に収納された温度管理対象物を容器本体から容易に取り出すことができる。
【0019】
本発明に係る保冷容器において、好ましくは、前記内側容器は、前記第2収納部の周囲を覆う前記断熱部材の上面に着脱可能な鍔部を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る保冷容器によれば、内側容器の鍔部は、第2収納部の周囲を覆う断熱部材の上面に着脱可能とされている。これにより、例えば、内側容器が第2収納部に設置された状態で冷却剤が内側容器に収納される場合であっても、冷却剤が内側容器と第2収納部の周囲を覆う断熱部材との間の隙間に入り込むことを抑え、冷却剤を内側容器により確実に収納させることができる。
【0021】
本発明に係る保冷容器において、好ましくは、前記容器本体は、前記第1収納部と前記容器本体の外部とを連通させる開口部を有し、前記開口部は、前記開口部を通して水平方向に前記温度管理対象物を前記第1収納部に対して出し入れ可能とすることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る保冷容器によれば、容器本体は、第1収納部と容器本体の外部とを連通させる開口部を有する。開口部は、開口部自身を通して水平方向に温度管理対象物を第1収納部に対して出し入れ可能とする。つまり、開口部は、温度管理対象物を第1収納部に対して水平方向に出し入れすることができる出入口として機能する。そのため、本発明に係る保冷容器の利用者等は、開口部を通して水平方向に温度管理対象物を出し入れすることにより、第1収納部の上方の第2収納部に収納された冷却剤を第2収納部から取り出さなくとも、温度管理対象物を第1収納部から取り出したり、温度管理対象物を第1収納部に収納したりすることができる。これにより、本発明に係る保冷容器の利用者等は、温度管理対象物の温度が冷却剤により低温領域に保持された状態で温度管理対象物を容器本体から容易に取り出すことができる。
【0023】
本発明に係る保冷容器は、好ましくは、前記第1収納部に設置されるとともに前記温度管理対象物を載置するトレイをさらに備え、前記開口部は、前記開口部を通して前記水平方向に前記温度管理対象物を載置した状態の前記トレイを前記第1収納部に対して出し入れ可能とすることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る保冷容器によれば、開口部は、開口部自身を通して水平方向に温度管理対象物を載置した状態のトレイを第1収納部に対して出し入れ可能とする。つまり、開口部は、温度管理対象物を載置した状態のトレイを第1収納部に対して水平方向に出し入れすることができる出入口として機能する。そのため、本発明に係る保冷容器の利用者等は、開口部を通して水平方向に温度管理対象物を載置した状態のトレイを出し入れすることにより、第1収納部の上方の第2収納部に収納された冷却剤を第2収納部から取り出さなくとも、温度管理対象物を第1収納部からより容易に取り出したり、温度管理対象物を第1収納部により容易に収納したりすることができる。
【0025】
本発明に係る保冷容器において、好ましくは、前記容器本体は、前記開口部を開閉可能な蓋部を有し、前記蓋部は、前記開口部に嵌合可能な前記断熱部材の一部を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る保冷容器によれば、容器本体の蓋部は、温度管理対象物の出入口として機能する開口部を開閉できる。また、蓋部は、開口部に嵌合可能な前記断熱部材の一部を有する。そのため、第1収納部と容器本体の外部とを連通させる開口部が設けられている場合であっても、容器本体は、容器本体の外部の熱が開口部を通して容器本体の内部に進入することを抑え、断熱性を確保することができる。
【0027】
本発明に係る保冷容器によれば、好ましくは、前記蓋部は、前記容器本体に対して着脱可能とされたことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る保冷容器によれば、開口部を開閉可能な蓋部と、開口部を有する容器本体と、の間に遊びを設けることができる。そのため、蓋部に設けられた断熱部材は、開口部に対して容易に嵌合することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、温度管理対象物の温度が冷却剤により低温領域に保持された状態で温度管理対象物を容易に取り出すことができる保冷容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
【
図4】
図1に表した切断面A1-A1における断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
【
図6】
図5に表した切断面A2-A2における断面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
【
図8】
図7に表した切断面A3-A3における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0032】
図1~
図3は、本発明の第1実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
図4は、
図1に表した切断面A1-A1における断面図である。
なお、
図1は、上蓋35が開き、横蓋37が閉じた状態を表している。
図2は、上蓋35および横蓋37が開いた状態を表している。
図3は、上蓋35および横蓋37が開き、温度管理対象物がトレイに載置された状態で第1収納部301から開口部306を通して引き出された状態を表している。
【0033】
本実施形態に係る保冷容器2は、温度管理対象物81の温度を例えば-60℃以下などの低温領域に保持した状態で、温度管理対象物81を搬送する。このような温度管理対象物81としては、例えば、医薬品、細胞、検体、臓器、化学物質および食品などが挙げられる。より具体的な温度管理対象物81としては、例えば、抗体などのバイオ医薬品、細胞、再生細胞、ワクチン、検体、および遺伝子治療用ベクターなどが挙げられる。また、本実施形態に係る保冷容器2は、温度管理対象物81の搬送先の施設において、温度管理対象物81の温度を例えば-60℃以下などの低温領域に保持した状態で、例えば1~2週間程度の長期間にわたって温度管理対象物81を保管することができる。つまり、本実施形態に係る保冷容器2は、温度管理対象物81の搬送用としてだけではなく温度管理対象物81の保管用として利用可能とされている。
【0034】
図1~
図4に表したように、本実施形態に係る保冷容器2は、容器本体3と、仕切板6と、断熱部材42、43、44、45、46、47と、を備える。本実施形態の仕切板6は、本発明の「仕切部」の一例である。
【0035】
容器本体3は、第1側部31と、第2側部32と、第3側部33と、第4側部34と、上蓋35と、底部36と、横蓋37と、を有する。本実施形態の「横蓋37」は、本発明の「蓋部」の一例である。上蓋35および横蓋37が閉じた状態において、容器本体3は、略直方体を呈する。略直方体の容器本体3の各辺の長さは、約300mm程度である。
図1~
図3に表したように、把持部341が第4側部34の外面に付設されている。また、把持部341と同様の把持部(図示せず)が第3側部33の外面に付設されている。本実施形態に係る保冷容器2の利用者等は、把持部341と、第3側部33の外面に付設された把持部(図示せず)と、を把持することにより、保冷容器2を持ち運ぶことができる。つまり、本実施形態に係る保冷容器2は、可搬型の保冷容器である。
【0036】
図4に表したように、容器本体3は、第1収納部301と、第2収納部302と、を内部に有する。言い換えれば、容器本体3の内部には、第1収納部301と、第2収納部302と、が形成されている。第1収納部301は、温度管理対象物81を収納する空間である。第2収納部302は、第1収納部301の上方に配置されており、冷却剤82を収納する空間である。
【0037】
冷却剤82は、例えばドライアイスなどの潜熱型の冷却剤であり、容器本体3の外部から内部に侵入する熱により融解あるいは昇華する際に生じる冷気により、温度管理対象物81の温度が上昇することを抑え、温度管理対象物81の温度を低温領域に保持することができる。冷却剤82としては、例えば、直径が3mm以上、10mm以下程度の粒状のドライアイスが挙げられる。但し、冷却剤82は、これだけに限定されるわけではない。冷却剤82は、例えば、角状あるいは板状のドライアイスであってもよく、ドライアイス以外の冷却剤であってもよい。
【0038】
容器本体3の外面の材料は、冷却剤82による結露の発生を抑えるという観点から、主として樹脂であることが好ましい。容器本体3の外面の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロンおよびポリエステルなどが挙げられる。
容器本体3の内面の材料としては、金属箔が蒸着などの手段により貼着された高発泡性ポリエチレンシートなどの高発泡性ポリオレフィンシート材や、高発泡ポリエチレンテレフタレートシート材などのガスバリア性高発泡樹脂製シート材などが挙げられる。
但し、容器本体3の外面および内面の材料は、例示した材料だけに限定されるわけではない。
【0039】
図1に表した矢印A11のように、上蓋35は、第2側部32に対して回動自在に支持されている。これにより、上蓋35は、第1側部31と、第2側部32と、第3側部33と、第4側部34と、により形成された挿入口305を開閉することができる。保冷容器2の利用者等は、挿入口305を通して、第2収納部302に冷却剤82を挿入したり、第2収納部302から冷却剤82を取り出したりすることができる。つまり、挿入口305は、冷却剤82を第2収納部302に対して出し入れすることができる出入口として機能する。
【0040】
第1側部31の上部の外面には、面ファスナ311が付設されている。また、上蓋35のうち第2側部32に接続された端部とは反対側の端部の内面には、面ファスナ351が付設されている。上蓋35が挿入口305を閉じた状態において、上蓋35の面ファスナ351は、第1側部31の面ファスナ311に連結可能とされている。上蓋35の面ファスナ351が第1側部31の面ファスナ311に連結することにより、上蓋35が不意に開くことを抑えることができる。
【0041】
第3側部33の下部の外面には、第1係止部332が設けられている。
図2に表した矢印A12のように、第1係止部332は、第3側部33に対して回動自在に支持されている。第1係止部332のうち横蓋37に対向する面(すなわち内面)には、面ファスナ333が付設されている。第1係止部332の内面が横蓋37の外面に対向した状態において、第1係止部332の面ファスナ333は、横蓋37の外面に付設された面ファスナ372(
図1参照)に連結可能とされている。第1係止部332の面ファスナ333が横蓋37の面ファスナ372に連結することにより、横蓋37が不意に開くことを抑えることができる。
【0042】
第4側部34の下部の外面には、第2係止部342が設けられている。
図2に表した矢印A13のように、第2係止部342は、第4側部34に対して回動自在に支持されている。第2係止部342のうち横蓋37に対向する面(すなわち内面)には、面ファスナ343が付設されている。第2係止部342の内面が横蓋37の外面に対向した状態において、第2係止部342の面ファスナ343は、横蓋37の外面に付設された面ファスナ374(
図1参照)に連結可能とされている。第2係止部342の面ファスナ343が横蓋37の面ファスナ373に連結することにより、横蓋37が不意に開くことを抑えることができる。
【0043】
図3に表した矢印A14のように、横蓋37は、底部36に対して回動自在に支持されている。すなわち、第1係止部332の面ファスナ333と横蓋37の面ファスナ372との連結、および第2係止部342の面ファスナ343と横蓋37の面ファスナ373との連結が解除された状態において、横蓋37は、
図3に表した矢印A14のように回動することができる。これにより、横蓋37は、第1側部31の下部に形成された開口部306を開閉することができる。
図1に表したように、把持部371が横蓋37の外面に付設されている。保冷容器2の利用者等は、把持部371を把持することにより、横蓋37を底部36に対して容易に回動させることができる。
【0044】
横蓋37の端部の内面には、面ファスナ375が付設されている。また、第1側部31の下部の外面には、面ファスナ312が付設されている。横蓋37が開口部306を閉じた状態において、横蓋37の面ファスナ375は、第1側部31の面ファスナ312に連結可能とされている。横蓋37の面ファスナ375が第1側部31の面ファスナ312に連結することにより、横蓋37が不意に開くことを抑えることができる。
【0045】
図1に表したように、ロック機構379が横蓋37の上部に設けられている。また、ロック機構319が第1側部31の下部に設けられている。ロック機構379、319は、例えば施錠等により、横蓋37が回動することを抑え、温度管理対象物81の盗難防止を図ることができる。また、ロック機構379、319は、ロック機構379、319が開錠された場合に「開錠に関する信号」を発信あるいは送信する検知センサを有していてもよい。
【0046】
開口部306は、第1収納部301と容器本体3の外部とを連通させている。
図3に表した矢印A15のように、保冷容器2の利用者等は、開口部306を通して、第1収納部301に温度管理対象物81を収納したり、第1収納部301から温度管理対象物81を取り出したりすることができる。つまり、開口部306は、温度管理対象物81を第1収納部301に対して水平方向に出し入れすることができる出入口として機能する。
【0047】
図3に表したように、本実施形態に係る保冷容器2では、温度管理対象物81は、トレイ5に載置された状態で第1収納部301に収納される。保冷容器2の利用者等は、開口部306を通して水平方向に温度管理対象物81を載置した状態のトレイ5を出し入れすることにより、第1収納部301から温度管理対象物81を取り出したり、第1収納部301に温度管理対象物81を収納したりすることができる。トレイ5の端部には、ストッパ51が設けられている。ストッパ51は、温度管理対象物81の載置面から外側に向かって突出している。ストッパ51は、保冷容器2の利用者等が開口部306を通してトレイ5を引き出す際に、トレイ5だけが引き出され温度管理対象物81が第1収納部301に残ったままになることを抑えることができる。
【0048】
横蓋37は、下部において底部36に連結されている。具体的には、横蓋37は、底部36と連結する部分すなわち下部の外面に面ファスナ374(
図1参照)を有する。また、底部36は、容器本体3の底部から第1側部31に向かって延びた延長部を有する。底部36の延長部の内面には、面ファスナ361(
図1参照)が設けられている。横蓋37の面ファスナ374が底部36の面ファスナ361に連結することにより、横蓋37は、底部36に連結されるとともに、
図3に表した矢印A14のように、底部36に対して回動自在に支持される。一方で、横蓋37の面ファスナ374と底部36の面ファスナ361との連結が解除されると、横蓋37は、底部36から取り外し可能とされる。このようにして、横蓋37は、容器本体3の底部36に対して着脱可能とされている。
【0049】
断熱部材42は、第2側部32の内面に付設されている。断熱部材43は、第3側部33の内面に付設されている。断熱部材44は、第4側部34の内面に付設されている。断熱部材45は、上蓋35の内面に付設されている。断熱部材46は、底部36の内面に付設されている。断熱部材47は、横蓋37の内面に付設されている。なお、第1側部31の内面には、第2側部32の内面に付設された断熱部材42と同様の断熱部材(図示せず)が付設されている。上蓋35および横蓋37が閉じた状態において、断熱部材42、43、44、45、46、47は、第1収納部301および第2収納部302を覆う。断熱部材42、43、44、45、46、47は、互いに同様の構造を有する。そのため、本実施形態では、断熱部材42を例に挙げ、断熱部材42、43、44、45、46、47の構造を説明する。
【0050】
断熱部材42は、空気より低い熱伝導率を有する断熱材を有する。空気より低い熱伝導率を有する断熱材としては、例えば、真空断熱材および発泡樹脂などが挙げられる。
【0051】
真空断熱材は、例えば、粉状、繊維状、または多孔質状の芯材の周囲を薄板、フィルムまたはガラスで包み、薄板、フィルムまたはガラスで形成された密封空間を真空引きして形成される。芯材としては、例えば、シリカ粉、金属細線、グラスウール(ガラス繊維)、ウレタンフォーム等が挙げられる。なお、真空断熱材は、必ずしも芯材を有していなくともよい。密閉空間の内部の真空環境を改善したり、真空環境を維持したりするために、ゲッター材料が密閉空間に設けられていてもよい。真空断熱材は、非常に高い断熱性を有し、比較的長い温度保持時間を確保し、結露を防止することができるという利点を有する。
【0052】
芯材を包む薄板としては、例えば、ステンレスまたはアルミニウム等により形成された金属板等が挙げられる。芯材を包むフィルム材としては、例えば、気体透過率の低いフィルムが挙げられる。具体的には、例えば、アルミおよび/またはシリカの蒸着処理が施されたプラスチックフィルムまたは多孔質フィルムが挙げられる。密閉空間は、密閉空間内部の真空環境を改善するか、または、真空環境を維持するために、内部にゲッター材料を備えていてもよい。
【0053】
発泡樹脂としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂またはABS樹脂などを発泡させたものが挙げられる。発泡樹脂は、軽量および安価であり、且つ結露を防止することができるという利点を有する。
なお、断熱部材42、43、44、45、46、47が有する断熱材は、前述した断熱材に限定されるわけではない。
【0054】
上蓋35が閉じると、上蓋35の内面に付設された断熱部材45は、挿入口305に嵌合する。また、横蓋37が閉じると、横蓋37の内面に付設された断熱部材47は、開口部306に嵌合する。これにより、本実施形態に係る保冷容器2は、断熱性を確保し、より高い保冷効果を得ることができる。
【0055】
図4に表したように、仕切板6は、容器本体3の内部に設置され、第1収納部301と第2収納部302とを隔離する。仕切板6は、支持部61と、第1脚部62と、第2脚部63と、を有し、断熱部材46の表面に載置されている。第1脚部62および第2脚部63は、支持部61に接続されており、支持部61を介して冷却剤82を支持する。支持部61は、冷却剤82を支持する。すなわち、挿入口305から第2収納部302に挿入された冷却剤82は、仕切板6の支持部61に載置され、第2収納部302に略充填される。
【0056】
支持部61は、冷却剤82の冷気を通過させる通気孔611を有する。
図4に表した矢印A16のように、冷却剤82から生じた冷気は、通気孔611を通過し、第2収納部302から第1収納部301に向かって移動する。なお、通気孔611は、支持部61だけではなく、第1脚部62および第2脚部63の少なくともいずれかに設けられていてもよい。
【0057】
仕切板6の材料としては、例えば、ステンレスまたはアルミニウムなどの金属が挙げられる。例えば、仕切板6は、ステンレスまたはアルミニウムなどの金属板により形成されたパンチングメタルである。但し、仕切板6の材料は、金属だけに限定されるわけではなく、冷却剤82を支持可能であり耐冷性を有する限りにおいて樹脂であってもよい。
【0058】
ここで、
図4に表したように、複数の冷却剤82が保冷容器2に収納された場合には、冷気により空気中の水分が凍結することで複数の冷却剤82が互いに固着することがある。例えば、複数の粒状のドライアイスが温度管理対象物81とともに保冷容器2に収納された場合には、複数の粒状のドライアイスは、容器本体3の外部から内部に侵入する熱により昇華する際に生じる冷気により空気中の水分が凍結することで互いに固着することがある。そうすると、保冷容器2の利用者等は、冷却剤82を保冷容器2から容易に取り出すことができず、温度管理対象物81を保冷容器2から取り出すことが困難になることがある。
【0059】
これに対して、本実施形態に係る保冷容器2では、仕切板6が、第1収納部301と第2収納部302とを隔離している。そのため、第2収納部302に収納された複数の冷却剤82が、容器本体3の外部から内部に侵入する熱により融解あるいは昇華する際に生じる冷気により空気中の水分が凍結することで互いに固着した場合であっても、本実施形態に係る保冷容器2の利用者等は、冷却剤82を収納した第2収納部302から仕切板6により隔離された第1収納部301に収納された温度管理対象物81を容易に容器本体3から取り出すことができる。これにより、本実施形態に係る保冷容器2の利用者等は、温度管理対象物81の温度が冷却剤82により低温領域に保持された状態で温度管理対象物81を容器本体3から容易に取り出すことができる。
【0060】
また、「仕切部」として機能する仕切板6は、容器本体3の内部に設置されている。これにより、仕切板6は、より簡易的な構造により、第1収納部301と第2収納部302とを隔離することができる。また、仕切板6が容器本体3の内部に設置されているため、保冷容器2の利用者等は、仕切板6により形成された容器本体3の第2収納部302に冷却剤82を他の部材を介することなくそのままの状態で容易に収納することができる。そして、保冷容器2の利用者等は、例えば、第2収納部302に対する冷却剤82の挿入口305とは異なる位置に設けられた開口部306を通して第1収納部301に収納された温度管理対象物81を容器本体3から容易に取り出すことができる。また、仕切板6は、所定の強度を有する場合には、第2収納部302に収納された冷却剤82を支持し、冷却剤82が第1収納部301に収納された温度管理対象物81に直接的に触れることを抑えることができる。
【0061】
また、前述したように、開口部306は、開口部306自身を通して水平方向に温度管理対象物81を第1収納部301に対して出し入れ可能とする。つまり、開口部306は、温度管理対象物81を第1収納部301に対して水平方向に出し入れすることができる出入口として機能する。そのため、保冷容器2の利用者等は、開口部306を通して水平方向に温度管理対象物81を出し入れすることにより、第1収納部301の上方の第2収納部302に収納された冷却剤82を第2収納部302から取り出さなくとも、温度管理対象物81を第1収納部301から取り出したり、温度管理対象物81を第1収納部301に収納したりすることができる。これにより、保冷容器2の利用者等は、温度管理対象物81の温度が冷却剤82により低温領域に保持された状態で温度管理対象物81を容器本体3から容易に取り出すことができる。
【0062】
また、前述したように、開口部306は、開口部306自身を通して水平方向に温度管理対象物81を載置した状態のトレイ5を第1収納部301に対して出し入れ可能とする。つまり、開口部306は、温度管理対象物81を載置した状態のトレイ5を第1収納部301に対して水平方向に出し入れすることができる出入口として機能する。そのため、保冷容器2の利用者等は、開口部306を通して水平方向に温度管理対象物81を載置した状態のトレイ5を出し入れすることにより、第1収納部301の上方の第2収納部302に収納された冷却剤82を第2収納部302から取り出さなくとも、温度管理対象物81を第1収納部301からより容易に取り出したり、温度管理対象物81を第1収納部301により容易に収納したりすることができる。
【0063】
さらに、前述したように、横蓋37が閉じると、横蓋37の内面に付設された断熱部材47は、開口部306に嵌合する。これにより、第1収納部301と容器本体3の外部とを連通させる開口部306が設けられている場合であっても、容器本体3は、容器本体3の外部の熱が開口部306を通して容器本体3の内部に進入することを抑え、断熱性を確保することができる。また、横蓋37が容器本体3の底部36に対して着脱可能とされているため、開口部306を開閉可能な横蓋37と、開口部306を有する容器本体3の第1側部31と、の間に遊びを設けることができる。そのため、横蓋37に設けられた断熱部材47は、開口部306に対して容易に嵌合することができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る保冷容器2は、温度ロガーをさらに備えていてもよい。これによれば、温度ロガーは、第1収納部301に収納された温度管理対象物81の温度を任意の時間ごとに測定し、温度データとして記録あるいは保存することができる。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態に係る保冷容器2Aの構成要素が、
図1~
図4に関して前述した第1実施形態に係る保冷容器2の構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0066】
図5は、本発明の第2実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
図6は、
図5に表した切断面A2-A2における断面図である。
【0067】
図5および
図6に表したように、本実施形態に係る保冷容器2Aは、容器本体3Aと、内側容器7と、断熱部材42、43、44、45、46、47と、を備える。
図1~
図4に関して前述した容器本体3が横蓋37を有する一方で、本実施形態の容器本体3Aは、横蓋37を有していない。また、
図1~
図4に関して前述した容器本体3では、開口部306が第1側部31の下部に形成されている一方で、本実施形態の容器本体3Aでは、開口部306は設けられていない。このような点において、実施形態の容器本体3Aは、
図1~
図4に関して前述した容器本体3とは相違する。容器本体3Aのその他の構造は、
図1~
図4に関して前述した容器本体3の構造と同様である。
【0068】
第2側部32に付設された断熱部材42は、上面に設けられた面ファスナ421を有する。第3側部33に付設された断熱部材43は、上面に設けられた面ファスナ431を有する。第4側部34に付設された断熱部材44は、上面に設けられた面ファスナ441を有する。なお、第1側部31に付設された断熱部材(図示せず)は、断熱部材42の面ファスナ421と同様の面ファスナを上面に有する。断熱部材42、43、44のその他の構造は、
図1~
図4に関して前述した断熱部材42、43、44の構造と同様である。また、断熱部材46、47は、
図1~
図4に関して前述した通りである。
【0069】
図5に表したように、内側容器7は、第1側部71と、第2側部72と、第3側部73と、第4側部74と、底部75と、を有する。本実施形態の底部75は、本発明の「仕切部」の一例である。第1側部71は、第1鍔部711を有する。第1鍔部711は、第1側部71の上端部に接続され、第1側部71の上端部から外側に向かって延びている。第2側部72は、第2鍔部721を有する。第2鍔部721は、第2側部72の上端部に接続され、第2側部72の上端部から外側に向かって延びている。第3側部73は、第3鍔部731を有する。第3鍔部731は、第3側部73の上端部に接続され、第3側部73の上端部から外側に向かって延びている。第4側部74は、第4鍔部741を有する。第4鍔部741は、第4側部74の上端部に接続され、第4側部74の上端部から外側に向かって延びている。
【0070】
第1鍔部711は、断熱部材44の上面に対向する下面に設けられた面ファスナ712を有する。第2鍔部721は、第1側部31に付設された断熱部材(図示せず)の上面に対向する下面に設けられた面ファスナ722を有する。第3鍔部731は、断熱部材43の上面に対向する下面に設けられた面ファスナ732を有する。第4鍔部741は、断熱部材42の上面に対向する下面に設けられた面ファスナ742を有する。
【0071】
図5に表した矢印A21のように、内側容器7は、容器本体3Aの内部に形成された第2収納部302(
図6参照)に対して出し入れ可能とされている。内側容器7の上部には、第1側部71と、第2側部72と、第3側部73と、第4側部74と、により形成された挿入口701が設けられている。保冷容器2Aの利用者等は、挿入口701を通して、内側容器7の内部に冷却剤82を挿入したり、内側容器7の内部から冷却剤82を取り出したりすることができる。つまり、挿入口701は、内側容器7の内部に対して冷却剤82を出し入れすることができる出入口として機能する。
【0072】
図6に表したように、保冷容器2Aの利用者等は、第2収納部302に配置された内側容器7の内部に冷却剤82を収納させることにより、冷却剤82を第2収納部302に収納させることができる。あるいは、保冷容器2Aの利用者等は、冷却剤82を内部に収納させた状態の内側容器7を第2収納部302に配置させることにより、冷却剤82を第2収納部302に収納させることができる。このように、本願明細書において、第2収納部302が冷却剤82を収納する形態は、第2収納部302が部材を介することなく直接的に冷却剤82を収納する形態と、第2収納部302が内側容器7などの部材を介して間接的に冷却剤82を収納する形態と、の両方を含むものとする。
【0073】
内側容器7が容器本体3Aの内部に挿入された状態において、第1鍔部711の面ファスナ712は、断熱部材44の面ファスナ441に連結可能とされている。内側容器7が容器本体3Aの内部に挿入された状態において、第2鍔部721の面ファスナ722は、第1側部31の内面に付設された断熱部材(図示せず)の上面に設けられた面ファスナ(図示せず)に連結可能とされている。第3鍔部731の面ファスナ732は、断熱部材43の面ファスナ431に連結可能とされている。第4鍔部741の面ファスナ742は、断熱部材42の面ファスナ421に連結可能とされている。
【0074】
第1鍔部711の面ファスナ712が断熱部材44の面ファスナ441に連結し、第2鍔部721の面ファスナ722が第1側部31の内面に付設された断熱部材(図示せず)の面ファスナ(図示せず)に連結し、第3鍔部731の面ファスナ732が断熱部材43の面ファスナ431に連結し、第4鍔部741の面ファスナ742が断熱部材42の面ファスナ421に連結することにより、内側容器7は、容器本体3Aに保持される。また、これにより、例えば、内側容器7が第2収納部302に設置された状態で冷却剤82が内側容器7の内部に収納される場合であっても、冷却剤82が内側容器7と第2収納部302の周囲を覆う断熱部材42、43、44との間の隙間に入り込むことを抑え、冷却剤82を内側容器7により確実に収納させることができる。
【0075】
底部75は、第1側部71、第2側部72、第3側部73および第4側部74のそれぞれの下端部に接続され、内側容器7の内部に収納された冷却剤82を支持する。すなわち、挿入口701から内側容器7の内部に挿入された冷却剤82は、底部75に載置され、内側容器7の内部に略充填される。また、
図6に表したように、内側容器7が第2収納部302に配置された状態において、第1収納部301と第2収納部302とを隔離する。
【0076】
図6に表したように、底部75は、冷却剤82の冷気を通過させる通気孔751を有する。
図6に表した矢印A22のように、冷却剤82から生じた冷気は、通気孔751を通過し、第2収納部302に配置された内側容器7の内部から第1収納部301に向かって移動する。底部75の材料としては、例えば、ステンレスまたはアルミニウムなどの金属が挙げられる。例えば、底部75は、ステンレスまたはアルミニウムなどの金属板により形成されたパンチングメタルである。あるいは、底部75は、金属により形成されたメッシュであってもよい。あるいは、底部75の材料は、金属だけに限定されるわけではなく、冷却剤82を支持可能であり耐冷性を有する限りにおいて樹脂であってもよい。例えば、底部75は、樹脂により形成されたメッシュであってもよい。
【0077】
図6に表したように、脚部48が、第1収納部301の周囲部に設けられている。脚部48は、容器本体3Aの断熱部材46に載置されるとともに、容器本体3Aの断熱部材42、43、44に付設され、内側容器7の底部75を介して冷却剤82を支持する。なお、脚部48は、容器本体3Aではなく、内側容器7の底部75の外部に設けられていてもよい。脚部48は、
図1~4に関して前述した真空断熱材および発泡樹脂などの断熱材を有する。あるいは、脚部48の材料は、冷却剤82を支持可能であり耐冷性を有する限りにおいて金属または樹脂であってもよい。
保冷容器2Aの他の構造は、
図1~
図4に関して前述した保冷容器2の構造と同様である。
【0078】
図5に表した矢印A21のように、保冷容器2Aの利用者等は、容器本体3Aの挿入口305を通して、容器本体3Aの内部に温度管理対象物81を挿入したり、容器本体3Aの内部から温度管理対象物81を取り出したりすることができる。そして、
図6に表したように、保冷容器2Aの利用者等は、容器本体3Aの挿入口305を通して、温度管理対象物81を第1収納部301に収納させることができる。また、保冷容器2Aの利用者等は、容器本体3Aの挿入口305を通して、第2収納部302に内側容器7を配置させ、内側容器7の内部に冷却剤82を収納させることにより、冷却剤82を第2収納部302に収納させることができる。これにより、温度管理対象物81の温度が冷却剤82により低温領域に保持される。
【0079】
本実施形態に係る保冷容器2Aによれば、内側容器7の底部75が、第1収納部301と第2収納部302とを隔離している。そのため、第2収納部302に収納された複数の冷却剤82が、容器本体3Aの外部から内部に侵入する熱により融解あるいは昇華する際に生じる冷気により空気中の水分が凍結することで互いに固着した場合であっても、本実施形態に係る保冷容器2Aの利用者等は、冷却剤82を収納した第2収納部302から内側容器7の底部75により隔離された第1収納部301に収納された温度管理対象物81を容易に容器本体3Aから取り出すことができる。すなわち、本実施形態に係る保冷容器2Aの利用者等は、冷却剤82が収納されたままの状態の内側容器7を第2収納部302から取り出すことにより、第1収納部301に収納された温度管理対象物81を容器本体3Aの挿入口305を通して容器本体3Aから容易に取り出すことができる。これにより、本実施形態に係る保冷容器2Aの利用者等は、温度管理対象物81の温度が冷却剤82により低温領域に保持された状態で温度管理対象物81を容器本体3Aから容易に取り出すことができる。また、本実施形態に係る保冷容器2Aの利用者等は、冷却剤82が収納されたままの状態の内側容器7を第2収納部302から取り出して冷却剤82を容易に廃棄することができる。
【0080】
さらに、本実施形態に係る保冷容器2Aでは、第1収納部301と第2収納部302とを隔離するための仕切部が容器本体3Aの内部に設置されなくとも、内側容器7の底部75が第1収納部301と第2収納部302とを隔離する仕切部として機能する。これにより、容器本体3Aの内部をより簡易的な構造に設定することができる。
【0081】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
なお、第3実施形態に係る保冷容器2Bの構成要素が、
図1~
図4に関して前述した第1実施形態に係る保冷容器2および
図5~
図6に関して前述した第2実施形態に係る保冷容器2Aの構成要素と同様である場合には、重複する説明は適宜省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0082】
図7は、本発明の第3実施形態に係る保冷容器を表す斜視図である。
図8は、
図7に表した切断面A3-A3における断面図である。
【0083】
本実施形態に係る保冷容器2Bは、
図1~
図4に関して前述した保冷容器2と、
図5~6に関して保冷容器2Aと、を組み合わせた構造を有する。すなわち、本実施形態に係る保冷容器2Bは、容器本体3Bと、仕切板6と、内側容器7と、断熱部材42、43、44、45、46、47と、を備える。
図1~
図4に関して前述したように、本実施形態の仕切板6は、本発明の「仕切部」の一例である。また、
図5~
図6に関して前述したように、本実施形態の底部75は、本発明の「仕切部」の一例である。すなわち、本実施形態に係る保冷容器2Bにおいて、本発明の「仕切部」は、容器本体3Bの内部に設置された仕切板6と、内側容器7の底部75と、を含む。
【0084】
本実施形態の容器本体3Bは、
図1~
図4に関して前述した容器本体3に対して、
図5~
図6に関して前述した面ファスナ421、431、441をさらに有する。なお、
図5~
図6に関して前述したように、第1側部31に付設された断熱部材(図示せず)は、断熱部材42の面ファスナ421と同様の面ファスナを上面に有する。
図7に表した矢印A31のように、内側容器7は、容器本体3Bの内部に形成された第2収納部302(
図8参照)に対して出し入れ可能とされている。
図7に表した矢印A32のように、保冷容器2Bの利用者等は、開口部306を通して水平方向に温度管理対象物81を載置した状態のトレイ5を出し入れすることにより、第1収納部301から温度管理対象物81を取り出したり、第1収納部301に温度管理対象物81を収納したりすることができる。
容器本体3Bのその他の構造は、
図1~
図4に関して前述した容器本体3の構造と同様である。
【0085】
内側容器7は、
図5~
図6に関して前述した通りである。
図8に表したように、内側容器7が第2収納部302に配置された状態では、内側容器7の底部75は、仕切板6の支持部61に載置され支持される。そのため、仕切板6が所定の強度を有する場合には、内側容器7の底部75は、金属あるいは樹脂により形成されたメッシュであってもよい。
図8に表した矢印A33のように、冷却剤82から生じた冷気は、内側容器7の底部75の通気孔751あるいはメッシュの目(隙間)を通過し、仕切板6の通気孔611をさらに通過し、第2収納部302に配置された内側容器7の内部から第1収納部301に向かって移動する。
【0086】
本実施形態に係る保冷容器2Bによれば、容器本体3Bの内部に設置された仕切板6と、内側容器7の底部75と、が第1収納部301と第2収納部302とを隔離するとともに冷却剤82の冷気を通過させる通気孔を有する仕切部として機能する。仕切板6は、所定の強度を有する場合には、内側容器7の底部75が冷却剤82の重みにより撓むことを抑え、内側容器7に収納された冷却剤82が第1収納部301に収納された温度管理対象物81に直接的に触れることを抑えることができる。
【0087】
また、第1側部31に設けられた開口部306は、開口部306自身を通して水平方向に温度管理対象物81を第1収納部301に対して出し入れ可能とする。つまり、開口部306は、温度管理対象物81を第1収納部301に対して水平方向に出し入れすることができる出入口として機能する。そのため、保冷容器2Bの利用者等は、開口部306を通して水平方向に温度管理対象物81を出し入れすることにより、冷却剤82を収納した状態の内側容器7を第2収納部302から取り出したり、内側容器7の内部に収納された冷却剤82を内側容器7の内部から取り出したりしなくとも、温度管理対象物81を第1収納部301から取り出したり、温度管理対象物81を第1収納部301に収納したりすることができる。これにより、保冷容器2Bの利用者等は、温度管理対象物81の温度が冷却剤82により低温領域に保持された状態で温度管理対象物81を容器本体3から容易に取り出すことができる。また、その他の効果についても、
図1~
図6に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0088】
本発明者が実施した実験の結果の一例によれば、本実施形態に係る保冷容器2、2A、2Bは、外気温度の平均が19.7℃の環境下において、かつ直径が3mm以上、10mm以下程度の粒状のドライアイス(約14kg程度)を第2収納部302に収納させた状態において、4日間以上にわたって温度管理対象物81の温度を-60℃以下の低温領域に保持することができた。このように、本実施形態に係る保冷容器2、2A、2Bは、温度管理対象物81の搬送用としてだけではなく温度管理対象物81の保管用として利用可能とされている。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0090】
2、2A、2B:保冷容器、 3、3A、3B:容器本体、 5:トレイ、 6:仕切板、 7:内側容器、 31:第1側部、 32:第2側部、 33:第3側部、 34:第4側部、 35:上蓋、 36:底部、 37:横蓋、 41、42、43、44、45、46、47:断熱部材、 48:脚部、 51:ストッパ、 61:支持部、 62:第1脚部、 63:第2脚部、 71:第1側部、 72:第2側部、 73:第3側部、 74:第4側部、 75:底部、 81:温度管理対象物、 82:冷却剤、 301:第1収納部、 302:第2収納部、 305:挿入口、 306:開口部、 311、312:面ファスナ、 319:ロック機構、 332:第1係止部、 333:面ファスナ、 341:把持部、 342:第2係止部、 343、351、361:面ファスナ、 371:把持部、 372、373、374、375:面ファスナ、 379:ロック機構、 421、431、441:面ファスナ、 611:通気孔、 701:挿入口、 711:第1鍔部、 712:面ファスナ、 721:第2鍔部、 722:面ファスナ、 731:第3鍔部、 732:面ファスナ、 741:第4鍔部、 742:面ファスナ、 751:通気孔