(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101147
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】複合フィルム、包装材、蓋材、及び内容物入り包装袋、並びに内容物入り蓋付容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220629BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220629BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
B65D77/20 H
B65D77/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215568
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小野 栞
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 誠悟
(72)【発明者】
【氏名】谷川 遼治
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
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4F100AB10E
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(57)【要約】
【課題】ヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、容器本体側の再封面が粘着層とならない、複合フィルム、当該複合フィルムから形成された蓋材、及び内容物入り蓋付容器を提供する。
【解決手段】ヒートシールして再封可能な包装体を形成するための複合フィルムを、特定の材料を用いた特定の積層構成の積層体とすることで、開封の際には、粘着層とヒートシール層との間で層間剥離が起こり、容器本体側に粘着層が残らないようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、粘着層、及びヒートシール層を、この順で含み、
前記基材層と前記ヒートシール層とが前記粘着層によって互いに接着されており、かつ
前記粘着層は、非晶性ポリエステルを含む、
複合フィルム。
【請求項2】
前記粘着層は、更に、ロジンエステルを含む、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステルの含有率は、前記粘着層の質量全体に対して、75~95質量%である、請求項1又は2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記粘着層の厚さは、5μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記ヒートシール層は、ポリオレフィン樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルムからなる再封用の包装材。
【請求項7】
開封時には、前記粘着層と前記ヒートシール層とが層間剥離し、前記粘着層が前記ヒートシール層と再封可能な状態で露出する、請求項6に記載の包装材。
【請求項8】
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、請求項6又は7に記載の包装材。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルムから成形された蓋材。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルムを用いて形成された内容物入り包装袋であって、
前記包装袋に収容されている内容物と、
前記ヒートシール層が互いにヒートシールされて形成された接合部を備える、
内容物入り包装袋。
【請求項11】
収納部及びフランジ部を有する容器本体と、
前記容器本体に収容されている内容物と、
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を備え、
前記ヒートシール層が前記フランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、
内容物入り蓋付容器。
【請求項12】
前記容器本体は、紙カップであり、
前記フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する、請求項11に記載の内容物入り蓋付容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム、包装材、蓋材、及び内容物入り包装袋、並びに内容物入り蓋付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一度では消費しきれない食品や医薬品等の包装手段として、再封機能を有する各種の包装体が用いられている。かかる包装体としては、ジッパー等の付属物を取り付けることなく、包装体そのものに再封機能を付与することのできる、多層フィルムを用いた封止が提案されている。
【0003】
再封を可能とする多層フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂層(A)と感圧接着性樹脂層(B)とヒートシール樹脂層(C)とが(A)/(B)/(C)の順に積層された多層構成の樹脂層を有する再封止性フィルム(I)が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された多層フィルムを、容器本体等にヒートシールさせて封止した包装体は、問題を生じることなく、開封及び再封が可能となっていた。
【0005】
なお、特許文献2~4に示すように、ハーフカットを用いる易剥離性積層体の易剥離性層としては、25℃以下のガラス転移温度を有する、非晶性ポリエステルの層を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-212846号公報
【特許文献2】特開2017-144714号公報
【特許文献3】特開2019-034753号公報
【特許文献4】特開2019-156481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、ヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、容器本体側の再封面が粘着樹脂層とならない、新規な複合フィルム、当該複合フィルムからなる包装材、当該複合フィルムから形成された蓋材、及び内容物入り包装袋、並びに内容物入り蓋付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、基材層、粘着層、及びヒートシール層を有する複合フィルムの粘着層を、特定の材料にすることによって、ヒートシール層をヒートシールし、そしてその後で開封したときに、再封が可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0009】
《態様1》
基材層、粘着層、及びヒートシール層を、この順で含み、
前記基材層と前記ヒートシール層とは、前記粘着層によって互いに接着されており、かつ
前記粘着層は、非晶性ポリエステルを含む、
複合フィルム。
《態様2》
前記粘着層は、更に、ロジンエステルを含む、態様1に記載の複合フィルム。
《態様3》
前記非晶性ポリエステルの含有率は、前記粘着層の質量全体に対して、75~95質量%である、態様1又は2に記載の複合フィルム。
《態様4》
前記粘着層の厚さは、5μm以下である、態様1~3のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様5》
前記ヒートシール層は、ポリオレフィン樹脂を含む、態様1~4のいずれか一態様に記載の複合フィルム。
《態様6》
態様1~5のいずれか一態様に記載の複合フィルムからなる再封用の包装材。
《態様7》
開封時には、前記粘着層と前記ヒートシール層とが層間剥離し、前記粘着層が前記ヒートシール層と再封可能な状態で露出する、態様6に記載の包装材。
《態様8》
前記ヒートシール層側にハーフカットを有さない、態様6又は7に記載の包装材。
《態様9》
態様1~5のいずれか一態様に記載の複合フィルムから成形された蓋材。
《態様10》
態様1~5のいずれか一態様に記載の複合フィルムを用いて形成された内容物入り包装袋であって、
前記包装袋に収容されている内容物と、
前記ヒートシール層が互いにヒートシールされて形成された接合部を備える、
内容物入り包装袋。
《態様11》
収納部及びフランジ部を有する容器本体と、
前記容器本体に収容されている内容物と、
態様1~5のいずれか一態様に記載の複合フィルムから形成された蓋材と、
を備え、
前記ヒートシール層が前記フランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、
内容物入り蓋付容器。
《態様12》
前記容器本体は、紙カップであり、
前記フランジ部は、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する、態様11に記載の内容物入り蓋付容器
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合フィルムによれば、ヒートシール層を容器本体や他のフィルム等の基材にヒートシールして包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、基材にヒートシールされた部分の縁で、複合フィルムのヒートシール層のみが破断し、ヒートシール層が基材の側に残るようにして、開封することができる。これによれば、本発明の複合フィルムの粘着層によって、包装体を再封することが可能になる。
【0011】
また、上記の開封は特に、粘着層とヒートシール層との間で層間剥離が起こるようにして行うことができる。これにより、包装体が容器である場合には、容器本体等の側に粘着層が残ることを抑制することができるため、例えば、容器に口をつけて喫食するカップスープ等の容器の蓋材として本発明の複合フィルムを適用すれば、粘着層が口唇と接することを抑制して、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0012】
また、本発明の複合フィルムのヒートシール層を、容器本体等にヒートシールして形成した包装体は、ヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁の一方又は両者で、ヒートシール層が破断して開封されるため、複合フィルムのヒートシール層側の表面から、開封に利用するための切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0013】
したがって、容器とヒートシールすることが意図されている領域、例えば、容器本体のフランジ部とヒートシールする領域に沿って、ハーフカットを設ける必要も、ヒートシールの際に位置合わせの操作も必要なくなり、複合フィルム、包装材、蓋材、及び包装体並びに蓋付き容器の生産性に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合フィルムの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る内容物入り包装袋の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器を開封したときの剥離機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《複合フィルム》
本発明の複合フィルムは、少なくとも、基材層、粘着層、及びヒートシール層が、この順で積層された複合フィルムであり、基材層とヒートシール層とが、粘着層によって互いに接着された構成となっている。
【0016】
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、及びヒートシール層を有する複合フィルムの粘着層を、特定の材料とすることによって、ヒートシール層をヒートシールし、そしてその後で開封したときに、再封が可能となる。
【0017】
具体的には、ヒートシール層を容器本体や他のフィルム等の基材にヒートシールして包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、基材にヒートシールされた部分の縁で、複合フィルムのヒートシール層のみが破断し、ヒートシール層が基材の側に残るようにして、開封することができる。これによれば、本発明の複合フィルムの粘着層によって、包装体を再封することが可能になる。
【0018】
また、上記の開封は特に、粘着層とヒートシール層との間で層間剥離が起こるようにして行うことができる。これにより、包装体が容器である場合には、容器本体等の側に粘着層が残ることを抑制することができるため、例えば、容器に口をつけて喫食するカップスープ等の容器の蓋材として、本発明の複合フィルムを適用すれば、粘着層が口唇と接することを抑制して、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0019】
なお、本発明においては、容器本体等や他のフィルム等の基材にヒートシールされた部分の縁で、ヒートシール層が破断することを、「エッジ切れ」と呼ぶことがある。本発明の複合フィルムは、ヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁の一方又は両者で、このようなエッジ切れを利用することによって、ヒートシール層側の表面から、開封に利用するための切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0020】
《複合フィルムの構成》
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルムの構成について説明する。
図1に、本発明の複合フィルムの一実施形態に係る断面図を示す。
【0021】
図1に示される本発明の複合フィルムの一実施形態に係る複合フィルム10は、基材層1と、基材層1の内側に積層配置された粘着層2と、粘着層2の内側に積層配置されたヒートシール層3と、を備える。すなわち、
図1に示される複合フィルム10は、基材層1とヒートシール層3とが、粘着層2によって互いに接着されている。
【0022】
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、及びヒートシール層を、必須の構成として含み、これらがこの順で積層されている。そして、基材層とヒートシール層とは、粘着層によって互いに接着されている。
【0023】
本発明においては、基材層、粘着層、及びヒートシール層以外に、任意の層を備えていてもよく、任意の層としては、例えば、複合フィルムの表層となりうる層、バリア性を付与するためのバリア層、強度を補強するための補強層、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0024】
任意の層は、基材層、粘着層、及びヒートシール層からなる積層体の外側に配置されていてもよいし、あるいは、基材層が積層体となっており、複数の層が基材層として存在していてもよい。
【0025】
本発明の複合フィルムを構成するそれぞれの層の厚み等は、複合フィルムの用途等に応じて、適宜決定することができる。
【0026】
<基材層>
本発明の複合フィルムにおいて、必須の構成層となる基材層は、粘着層に隣接し、粘着層を介して、ヒートシール層に積層される層である。
【0027】
本発明の複合フィルムは、基材層が、特定の材料を含む粘着層を介してヒートシール層と積層された構成となっていることで、ヒートシール層を容器本体や他のフィルム等の基材にヒートシールして包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、基材にヒートシールされた部分の縁でヒートシール層のみが破断し、ヒートシール層が基材の側に残るようにして、開封することができる。これによれば、本発明の複合フィルムの粘着層によって、包装体を再封することが可能になる。
【0028】
本発明の複合フィルムにおいて、基材層が最外層となる場合には、例えば包装体等の構造体を形成したときに、基材層は構造体の外層となる。このため基材層は、最内層となるヒートシール層をヒートシールして構造体を形成するときの保護層となりうる。また、内容物の表示等のために印刷を施す印刷層ともなりうる。
【0029】
基材層は、単層であっても、複層からなる積層体となっていてもよい。あるいは、本発明の複合フィルムは、2層以上の基材層を有していてもよく、この場合には、1層の基材層が粘着層と隣接し、粘着層によって基材層とヒートシール層とが互いに接着されている。
【0030】
基材層が1層である場合には、基材層を構成する材料としては、樹脂、特に保護層となり、印刷が可能となる樹脂であってよい。一般的に用いられている樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、等のポリエステル樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等のポリオレフィン樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂等が挙げられる。
【0031】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0032】
中では、複合フィルムへの剛性付与、入手の容易性及び取り扱い性が容易である観点から、基材層はポリエステル樹脂で構成された層であってもよい。
【0033】
また、印刷適正、複合フィルムへの剛性付与、入手の容易性及び取り扱い性が容易である観点からは、基材層はポリエチレン樹脂であってもよい。
【0034】
なお、基材層が樹脂層である場合には、予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、基材層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。基材層としてフィルムを用いる場合には、上記の樹脂等から形成されたフィルムであればよく、未延伸であっても、一軸又は二軸延伸が施されていてもよい。中では、二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0035】
また、基材層となる樹脂フィルムには、アルミニウム等の金属や、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物が蒸着された無機物蒸着膜が形成されていてもよい。あるいは、塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層等のバリアコート層を有していてもよい。更に、基材層となる樹脂フィルムには、その表面を粗面化させる粗面化処理等が施されていてもよい。
【0036】
本発明の複合フィルムが、2層以上の基材層を有する場合には、上記した単層である場合の層と同様の樹脂からなる層が複数設けられていてもよいし、樹脂以外を材料とする層が別に設けられていてもよい。
【0037】
樹脂以外を材料とする層としては、例えば、紙層等が挙げられる。紙層としては、例えば、コート紙、アート紙等が挙げられる。また、紙層が基材層としての最外層となる場合には、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷が施されていてもよい。
【0038】
本発明の複合フィルムにおける基材層の厚さは、特に限定されるものではない。例えば、10μm以上、15μm以上、20μm以上であってよく、50μm、40μm以下であってもよい。10μm以上であれば、包装体に剛性を付与する観点から好ましい。
【0039】
<粘着層>
粘着層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層であり、基材層とヒートシール層との間に配置され、これらを互いに接着させるものである。本発明の複合フィルムは、粘着層が、非晶性ポリエステルを必須の構成成分として含む。
【0040】
なお、粘着層は、非晶性ポリエステルを必須の成分として含んでいれば、その他に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、非晶性ポリエステル以外の樹脂等や、機能性等を付与するための添加剤等が挙げられる。
【0041】
本発明の複合フィルムは、粘着層が、非晶性ポリエステルを必須の構成成分として含むことで、ヒートシール層を容器本体等や他のフィルム等の基材にヒートシールして包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、基材にヒートシールされた部分の縁でヒートシール層のみが破断し、ヒートシール層が基材の側に残るようにして、開封することができる。これによれば、露出している粘着層によって、包装体を再封することが可能になる。
【0042】
また、上記の開封は特に、粘着層とヒートシール層との間で層間剥離が起こるようにして行うことができる。これにより、包装体が容器である場合には、容器本体等の側に粘着層が残ることを抑制することができるため、例えば、容器に口をつけて喫食するカップスープ等の容器の蓋材として本発明の複合フィルムを適用すれば、粘着層が口唇と接することを抑制して、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0043】
粘着層は、例えば、非晶性ポリエステルと溶媒とを含む組成物等を調製し、積層対象となる層の表面に塗工することで、作製することができる。非晶性ポリエステルを溶解することのできる溶剤としては、例えば、酢酸エチルを挙げることができる。また、塗工手段としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、ドライラミネーターによる塗工等が挙げられる。
【0044】
粘着層の厚さは、5μm以下であることが好ましい。5μm以下であれば、ヒートシール層をヒートシールして再封可能な包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、粘着層と、粘着層とヒートシール層との間の層間剥離を、より容易に行うことができる。
【0045】
粘着層の厚さは、4μm以下、又は3μm以下であってもよく、1μm以上、1.5μm以上、又は2μm以上であることが、十分な再封性を得る観点から好ましい。
【0046】
また、粘着層は、4.0g/m2以下の量で存在することが、粘着層とヒートシール層との間の層間剥離を良好に生じさせるとともに、良好な再封性を実現する観点から好ましい。粘着層の量は、3.8g/m2以下、又は3.5g/m2以下であってもよく、0.1g/m2以上、0.3g/m2以上、又は0.5g/m2以上であってもよい。
【0047】
(非晶性ポリエステル)
本発明の複合フィルムの粘着層の必須成分となる非晶性ポリエステルは、非晶性のポリエステルである。
【0048】
ここで、本発明における「非晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて-100℃から300℃まで20℃/minの速度で昇温した際に明確な融解ピークを持たないことを意味する。
【0049】
本発明の複合フィルムの粘着層を構成する非晶性ポリエステルは、特に限定されるものではないが、例えば、60℃以下のガラス転移温度を有していてもよい。このガラス転移温度は、60℃以下、55℃以下、又は50℃以下であってもよく、-65℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上、又は-20℃以上であってもよい。
【0050】
ガラス転移温度が上記の範囲の非晶性ポリエステルであれば、実用上問題なく粘着層とヒートシール層との間で層間剥離を生じさせるとともに、良好な再封性を備えた複合フィルムを実現することができる。
【0051】
更に、開封の際の異音や引っ掛かりを伴う剥離(パルス剥離)を生じさせない観点、すなわち滑らかな剥離を生じさせる観点から、非晶性ポリエステルのガラス転移温度は、45℃以下であることが好ましい。また、常温における良好な易剥離性を得る観点から、ガラス転移温度は、-65℃以上、-50℃以上、-20℃以上、-10℃以上、0℃以上、10℃以上、20℃以上、又は25℃以下であることが好ましい。
【0052】
なお、本明細書におけるガラス転移温度(Tg)とは、JISK7121(1987年)に準拠して、加熱速度10℃/minの昇温条件で熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)により求めた中間点ガラス転移温度(℃)をいい、試験片の状態調節についてはJISK7121の『一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合』を採用するものとする。
【0053】
非晶性ポリエステルの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば、100000以下、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、又は50000以下であれば、粘着層とヒートシール層との間の層間剥離の後、露出した粘着層のべたつきを抑制することができる。一方で、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、又は10000以上であれば、適度な剥離強度を確保することができる。
【0054】
ここで、本明細書における数平均分子量は、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン標準にて、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した数平均分子量を意味するものである。
【0055】
本発明の複合フィルムの粘着層を構成する非晶性ポリエステルとしては、50mol%のジカルボン酸成分と、50mol%のジオール成分とを含有している非晶性ポリエステルであって、30mol%以上のテレフタル酸と、25mol%以上のエチレングリコールと、5~45mol%の他のジカルボン酸成分及び/又は他のジオール成分を含有している非晶性ポリエステルであってもよい。
【0056】
他のジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,2’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0057】
他のジオール成分としては、例えば、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルヒドロキシピバリン酸エステル、1,9-ノナンジオール、2-メチルオクタンジオール、1,10-ドデカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。
【0058】
粘着層における非晶性ポリエステルの含有率は、粘着層の質量全体に対して、50質量%以上、60質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は100質量%であってよく、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、又は91質量%以下であってよい。
【0059】
中では、粘着層における非晶性ポリエステルの含有率が、粘着層の質量全体に対して、75~95質量%であれば、複合フィルムから形成した包装体を開封したときに、容易に、粘着層とヒートシール層との間で層間剥離させて粘着層を露出させることができ、再封可能な状態とすることができる。
【0060】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成する非晶性ポリエステルは、1種単独であっても、2種以上の非晶性ポリエステルを組み合わせて用いてもよい。2種以上の非晶性ポリエステルを組み合わせて用いる場合には、例えば、異なるTg等、異なる物性を有する非晶性ポリエステルの混合物として用いることもできる。
【0061】
(ロジンエステル)
本発明の複合フィルムの粘着層は、任意の成分としてロジンエステルを含むことが好ましい。任意の成分となるロジンエステルは、ロジンがエステル化された化合物である。
【0062】
粘着層に、十分な量のロジンエステルを含有させることによって、粘着層の粘着性を改良することができ、また、ロジンエステルの量が過剰にならないようにすることによって、粘着層の強度を維持することができる。
【0063】
エステル化されるロジンの主成分となる樹脂酸(各種異性体)の種類は、特に限定されるものではなく、共役二重結合を有する共役樹脂酸であっても、非共役樹脂酸であっても、またこれらの混合物であってもよい。
【0064】
共役樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸等が挙げられる。また、非共役樹脂酸としては、例えば、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0065】
ロジンエステルの形態は特に限定されるものではなく、例えば、ロジンまたは重合ロジンと多価アルコールとのエステル、水素添加ロジンのエステル、更には、エステルにマレイン酸を付加して得られるマレイン酸変性ロジンエステル等であってもよい。
【0066】
「ロジンエステル」として商業的に入手可能なものであってもよく、例えば、ハリマ化成社製のハリタックシリーズや、荒川化学工業社製のエステルガムシリーズ、ペンセル(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0067】
粘着層におけるロジンエステルの含有率は、粘着層の質量全体に対して、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は9質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0068】
なお、本発明の複合フィルムの粘着層を構成するロジンエステルは、1種単独であっても、2種以上のロジンエステルを組み合わせて用いてもよい。
【0069】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、本発明の複合フィルムにおいて必須の構成層である。ヒートシール層は、本発明の複合フィルムを用いて包装体等を形成する際に、ヒートシールに用いられる層となる。このため、ヒートシール層は、複合フィルムの最内層となるように配置する。
【0070】
ヒートシール層を構成する材料としては、熱接着が可能であり、成形された構造体に十分なシール強度を付与できるものであれば、特に限定されるものではない。公知の材料を適用することができ、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレEAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0071】
中では、本発明の複合フィルムのヒートシール層は、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂であれば、熱接着が可能であり、形成された構造体に十分なシール強度を付与するとともに、ヒートシール層をヒートシールして包装体を形成し、当該包装体を開封したときに、上記した粘着層とヒートシール層との間で層間剥離を起こして粘着層を露出させ、良好な再封性を発揮させることができる。
【0072】
更に、ヒートシール層は、包装袋等の構造体を形成したときに、内容物を充填するための空間を形成する層ともなる。このため、包装袋等の構造体に耐内容物性を付与したい場合には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いてヒートシール層を形成することが好ましい。
【0073】
ヒートシール層は、予め成形されたフィルムを用いて形成してもよいし、対象となる積層体の表面に、ヒートシール層を形成するための材料を溶融して押出し、冷却固化させて形成してもよい。
【0074】
なお、ヒートシール層を構成する材料は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。また、ヒートシール層には、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0075】
更に、ヒートシール層は、単層であっても、複層からなる層であっていてもよい。
【0076】
本発明の複合フィルムを構成するヒートシール層は、密度0.920~0.958g/cm3のポリエチレン樹脂層であってもよい。かかる構成によれば、十分な製膜性、ヒートシール性を備えるとともに、エッジ切れをより容易とすることができる。
【0077】
なお、本発明において、密度は、JIS K7112-1999に準拠して測定した値であってよい。
【0078】
ヒートシール層の密度は、0.923g/cm3以上、0.925g/cm3以上、0.927g/cm3以上、0.930g/cm3以上、0.933g/cm3以上、又は0.935g/cm3以上であってよく、0.952g/cm3以下、0.950g/cm3以下、又は0.948g/cm3以下であってよい。
【0079】
本発明の複合フィルムにおいて、ヒートシール層は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含んでいてもよい。高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層であれば、ヒートシール層の製膜性をより良好にすることができる。
【0080】
ヒートシール層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂による層であるか否かは、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて、ヒートシール層について測定した曲線と、混合樹脂層を構成する各ポリエチレンに関して測定した曲線とを比較することで、確認することができる。
【0081】
なお、ヒートシール層に含まれるポリエチレン樹脂層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層である場合には、上記の密度は、各成分の密度を各成分の含有率で重みづけした加重平均であってよい。
【0082】
ヒートシール層の厚さは、特に限定されるものではなく、例えば1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であってよい。この厚さは、10μm未満、7μm以下、6μm以下、又は5μm以下であることが、エッジ切れをより容易とする観点から好ましい。
【0083】
(高密度ポリエチレン)
本明細書中で、高密度ポリエチレンとは、分岐鎖を有する場合その分岐差を含め、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.942g/cm3以上のポリエチレンをいう。
【0084】
特に、0.942g/cm3以上、0.945g/cm3以上、0.948g/cm3以上、0.950g/cm3以上、0.952g/cm3以上、又は0.955g/cm3以上の密度を有し、長鎖の分岐構造を実質的に有しておらず、エチレンを低圧法によってラジカル重合することによって得られるものである。
【0085】
高密度ポリエチレンの密度は、0.970g/cm3以下、0.967g/cm3以下、0.965g/cm3以下、0.962g/cm3以下、又は0.960g/cm3以下であってよい。
【0086】
好ましい高密度ポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922-1及び-2、並びにJIS K7210-1に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であり、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、又は20g/10min以下である。
【0087】
ヒートシール層が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む混合樹脂層である場合には、ヒートシール層における高密度ポリエチレンの含有率は、ヒートシール層の質量全体に対して、50~90質量%であることが好ましい。
【0088】
更には、高密度ポリエチレンの含有率は、ヒートシール層の質量全体に対して、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であってよく、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0089】
(低密度ポリエチレン)
本明細書中で、低密度ポリエチレン(LDPE)とは、分岐鎖を含めて、メチレン基の繰返し単位を80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、若しくは98mol%以上含み、又は実質的にすべての繰返し単位がメチレン基である、密度が0.930g/cm3未満のポリエチレンをいう。
【0090】
低密度ポリエチレンの密度は、0.925g/cm3以下、又は0.923g/cm3以下であってもよく、0.870g/cm3以上、0.875g/cm3以上、0.880g/cm3以上、0.900g/cm3以上、0.910g/cm3以上、又は0.915g/cm3以上であってもよい。
【0091】
低密度ポリエチレンは、いわゆる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であってもよく、又は長鎖若しくは短鎖の分岐構造を有していてもよい。なお、短鎖の分岐構造は、炭素原子数4~18、4~10、又は4~8のα-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、1-オクテン等に由来する分岐構造であってよい。
【0092】
好ましい低密度ポリエチレンの熱特性としては、特に限定されるものではないが、例えば、そのメルトマスフローレートが、温度190℃かつ荷重21.18Nの条件の下で、JIS K6922-1及び-2、並びにJIS K7210-1に準拠して測定した場合に、好ましくは0.1g/10min以上、0.5g/10min以上、1.0g以上、3.0g/10min以上、又は5.0g/10min以上であり、100g/10min以下、50g/10min以下、30g/10min以下、又は20g/10min以下である。
【0093】
ヒートシール層における低密度ポリエチレンの含有率は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒートシール層の質量全体に対して、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下であってよい。
【0094】
<その他の層>
本発明の複合フィルムは、基材層、粘着層、及びヒートシール層を、この順で含み、基材層とヒートシール層とが粘着層によって互いに接着されている構成であれば、これら以外の層が含まれていてもよい。
【0095】
その他の層は、特に限定されるものではなく、例えば、複合フィルムの表層となりうる層、バリア性を付与するためのバリア層、強度を補強するための補強層、あるいは、層と層との間を接着するための接着層等が挙げられる。
【0096】
任意の層は、基材層、粘着層、及びヒートシール層からなる積層体の外側に配置されていてもよいし、あるいは、基材層が積層体となっており、複数の層が基材層として存在していてもよい。更には、粘着層と隣接していない、第2の基材層を有していてもよい。
【0097】
(バリア層)
本発明の複合フィルムにおいて、任意の構成層となるバリア層は、複合フィルムにバリア性を付与するための層である。
【0098】
バリア層としては、例えば、酸素や水蒸気等のガスを遮断する機能を発現する、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、又はポリアクリロニトリル(PAN)からなる層等が挙げられる。
【0099】
なお、上記の樹脂は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよく、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0100】
あるいは、上記した通り、基材層に対して、無機物蒸着層や有機物コート層を形成して、バリア性を付与してもよい。
【0101】
また、金属箔をバリア層として存在させていてもよい。バリア層となる金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、チタン箔等の金属箔や、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔等を挙げることができる。
【0102】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コート層を存在させる場合には、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0103】
バリア層として金属箔を存在させ場合には、バリア層の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましい。また、100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、複合フィルムを包装材等として用いる場合の取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0104】
(補強層)
本発明の複合フィルムにおいて、強度を補強するための補強層は、任意の構成層となる。補強層の材料としては、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。
【0105】
(接着層)
本発明の複合フィルムにおいて、層と層との間を接着するための接着層は、任意の構成層となる。接着層としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマーからなる層等が挙げられる。
【0106】
接着層は、本発明の複合フィルムとなる積層体を構成する層同士を、ドライラミネート又はホットメルトラミネートする際に使用する、接着剤からなる層であってもよい。例えば、ドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、ノンソルベントラミネート接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等であってよい。
【0107】
《複合フィルムの製造方法》
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、積層された複合フィルムを形成することのできる方法であればよい。公知の方法を採用することができ、例えば、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法、及びサンドイッチラミネーション方法等が挙げられる。
【0108】
《複合フィルムの用途》
本発明の複合フィルムの用途は、特に限定されるものではない。例えば、以下の用途が挙げられる。
【0109】
<包装材>
本発明の複合フィルムは、包装材として用いることができる。そして、複合フィルムから形成された包装材によれば、ヒートシール層を用いて、自身や他のフィルム等の基材にシールすることで、包装袋、蓋付容器等の包装体を形成することができる。
【0110】
本発明の複合フィルムから形成される包装材は、ヒートシール層を容器本体や他のフィルム等の基材にヒートシールして包装体を形成した後、当該包装体の開封時には、包装材の粘着層とヒートシール層とが層間剥離して、粘着層を露出した状態とすることができる。これにより、包装材の粘着層によって、包装体を再封することが可能になる。
【0111】
また、基材等にヒートシールされた接合部の外端縁及び内端縁の一方又は両者で、ヒートシール層が破断して開封されるため、包装材のヒートシール層側の表面から、開封に利用するための切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0112】
<内容物入り包装袋>
本発明の複合フィルムは、内容物入り包装袋の形成に用いられてもよい。例えば、複合フィルムのヒートシール層を互いにヒートシールすることで、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋等を形成し、内容物が充填された包装袋とすることができる。
【0113】
図2に、本発明の一実施形態に係る内容物入り包装袋の概略図を示す。
図2は、本発明の複合フィルムを包装材として用いて形成した、内容物入り包装袋20である。
図2(a)は、形成された内容物入り包装袋20の正面図であり、
図2(b)は裏面図である。
【0114】
図2に示される内容物入り包装袋20は、複合フィルムからなる包装材30から形成されている。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、包装材30の上端及び下端において、自身のヒートシール層同士がヒートシールされて、それぞれ10mmの接合部31を形成している。
【0115】
また、
図2(b)に示されるように、上端部の接合部31と下端部の接合部31を連結するように、包装袋20の縦方向に、包装材30の端部同士をヒートシールした接合部31が形成されている。
【0116】
そして、開封時には、ヒートシールされた接合部31の外端縁及び内端縁の一方又は両者で、ヒートシール層が破断して開封されるため、粘着層が露出した状態となる。これにより、露出した粘着層によって、包装袋を再封することが可能になる。また、ヒートシール層が破断して開封されるため、包装材のヒートシール層側の表面から、開封に利用するための切り込み(ハーフカット)を設ける必要がない。
【0117】
図2に示される内容物入り包装袋は、例えば、内容物としてスナック菓子等が充填された包装体として、大変有益である。
【0118】
<蓋材>
本発明の複合フィルムは、蓋材の形成に用いられてもよい。本発明の複合フィルムから形成される蓋材は、例えば、容器本体の上端開口部を密封するための蓋材となりうる。そして、本発明の複合フィルムから形成された蓋材は、再封可能な蓋材となるため、再封可能な蓋付包装容器を形成することができる。
【0119】
本発明の複合フィルムから形成された蓋材は、例えば、容器本体の上端開口部にヒートシールされて、蓋付包装容器を形成するが、包装容器の開封時には、エッジ切れ、及び蓋材を構成している粘着層とヒートシール層との間の層間剥離によって、粘着層がヒートシール層と再封可能な状態で露出する。そして、包装容器の再封時には、粘着層とヒートシール層との間で再封されることとなる。
【0120】
<内容物入り蓋付容器>
本発明の複合フィルムを用いて形成された蓋材を用いて、内容物入り蓋付容器を形成してもよい。
【0121】
具体的には、収納部及びフランジ部を有する容器本体と、容器本体に収容されている内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備え、蓋材のヒートシール層が容器本体のフランジ部にヒートシールされて、再封可能な接合部を形成している、内容物入り蓋付容器を形成することができる。
【0122】
本発明の複合フィルムから形成された蓋材を用いて形成された内容物入り蓋付容器は、蓋材がヒートシールされた接合部が、再封可能となっている。
【0123】
具体的には、本発明の複合フィルムから形成された蓋材を用いて形成された内容物入り蓋付容器は、開封の際には、エッジ切れ、及び粘着層とヒートシール層との間の層間剥離が起こる。そして、開封後は、層間剥離したヒートシール層のみが、ヒートシールにより形成された容器本体側の接合部に露出して存在し、粘着層は蓋材側に残る状態となっている。
【0124】
これにより、例えば食品容器等に本発明の複合フィルムから形成された蓋材を適用した場合に、粘着層が人体と接することがなくなり、口当たり等における違和感等を回避することができる。
【0125】
そして、再封時には、蓋材側に残っている粘着層と、容器本体側に露出しているヒートシール層との間で、再封することでできる。
【0126】
[内容物入り蓋付容器の作用]
以下に、図面を参照しながら、本発明の複合フィルム用いて形成した内容物入り蓋付容器の作用について説明する。
【0127】
図3は、本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器を開封したときの剥離機構を示す図である。
【0128】
本発明の複合フィルムを用いて形成される内容物入り蓋付容器は、本発明の複合フィルムの最内層であるヒートシール層を、フランジを有する容器本体のフランジ部にヒートシールさせることで作製することができる。
【0129】
図3に示される本発明の一実施形態に係る内容物入り蓋付容器300は、本発明の複合フィルムから形成された蓋材100を、内容物250が収納された、フランジ部202を有する容器本体200のフランジ部202にヒートシールして、接合部202aを形成することにより作製されたものである。
【0130】
図3に示される本発明の複合フィルムから形成された蓋材100は、基材層101と、基材層101の内側に積層配置された粘着層102と、粘着層102の内側に積層配置されたヒートシール層103と、を備える。すなわち、
図3に示される蓋材100は、基材層101とヒートシール層103とが、粘着層102によって互いに接着されている。
【0131】
上記の態様を有する本発明の一実施形態に係る蓋材100を用いて形成した内容物入り蓋付容器300は、開封時には、
図3(a)に示されるように、フランジ部202から突出しているタブ110を摘まんで蓋材100を引き上げることにより、接合部202aの外周に対応する位置で、ヒートシール層103のみが破断し(外エッジ切れし)、この位置に対応する第1の破断部120aが暴露される。
【0132】
更に、蓋材100を引き上げると、
図3(b)に示されるように、粘着層102とヒートシール層103との界面で蓋材100が層間剥離する。その後、層間剥離が接合部202aの内周に対応する位置に達すると、
図3(c)に示されるように、ヒートシール層103が破断し(内エッジ切れし)、この位置に対応する第2の破断部120bが暴露されるとともに、容器本体200のフランジ部202には、再封部106が形成される。
【0133】
すなわち、再封部106は、フランジ部202に形成された接合部202aの領域に、蓋材100から、外エッジ切れ、層間剥離、及び内エッジ切れによって切り取られたヒートシール層103であり、ヒートシール層103が表面に露出した状態となっている。
【0134】
そして、開封された内容物入り蓋付容器300を再封する際には、再封部106に蓋材100が押しつけられることによって、粘着層102とヒートシール層103が密着して再封されることとなる。
【0135】
[内容物入り蓋付容器の構成]
内容物入り蓋付容器は、容器本体と、内容物と、本発明の複合フィルムから形成された蓋材と、を備える。
(容器本体)
内容物入り蓋付容器を形成するための容器本体は、収納部及びフランジ部を有する。
【0136】
容器本体の材料は、特に限定されるものではなく、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層がヒートシールできるものであればよい。例えば、樹脂で表面がコーティングされた紙製の容器、又は樹脂製の容器等が挙げられる。
【0137】
{収納部}
収納部は、内容物が収納されている部分である。この部分の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略円錐台形、多角錐台形、直方体形、立方体形等であってよい。
【0138】
{フランジ部}
フランジ部は、容器本体の収納部の上端開口部周縁の部分である。その形状は特に限定されるものではなく、例えば、鍔状であってよい。また、フランジ部の外周の形状は、蓋材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0139】
中では、フランジ部は、容器の少なくともフランジ部が、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有することが好ましい。更には、容器本体が紙カップであり、フランジ部が、ポリエチレン系樹脂によるコーティングを有する態様であることが好ましい。
【0140】
容器本体が、ポリエチレン樹脂でコーティングされたフランジ部を有する紙カップであれば、本発明の複合フィルムから形成された蓋材のヒートシール層との間で、一定のシール強度を得つつ、粘着層とアルミニウム層との界面で、スムーズに層間剥離することが可能となる。
【0141】
(内容物)
内容物は、収納部に収容されているものである。内容物としては、特に限定されるものではないが、例えば、スープ、即席麺、チルド食品、冷凍食品等の加熱式食品、又はスナック菓子、グミキャンディー等の非加熱式食品が挙げられる。
【実施例0142】
実施例及び比較例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0143】
《実施例1~10》
<材料>
層を構成する材料として、以下を準備した。
【0144】
(1)基材層
・NY:2軸延伸ナイロンフィルム(ボニール(登録商標)ON25、興人フィルム&ケミカルズ株式会社、厚み:15μm)
・OPP:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(Filmax社、厚み30μm)
(2)粘着層
非晶質ポリエステル
・エリーテル(登録商標)XP-1541[Tg:-12℃]ユニチカ株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1586[Tg:-63℃](ユニチカ株式会社)
・エリーテル(登録商標)XP-1648[Tg:不明](ユニチカ株式会社)
ロジンエステル
・ハリタック(TM)8LJA(ハリマ化成グループ株式会社、軟化点:89℃)
(3)ヒートシール層
・CPP#20:無延伸PPフィルム(パイレン(登録商標)P1128、東洋紡株式会社、厚み:20μm)
【0145】
<複合フィルムの作製>
表1に示す材料を用いて、以下に示す方法により、(基材層/粘着層/ヒートシール層)の積層構成となる複合フィルムを作製した。
【0146】
基材層となるフィルムと、ヒートシール層となるフィルムとを、粘着層によって接着し、積層体を作製した。なお、粘着層となる非晶質ポリエステルを含む溶液は、溶媒として酢酸エチルを用いて作製し、乾燥重量で3g/m2(厚み:3μm)となるよう塗工した。また、粘着層の材料として非晶質ポリエステルとロジンエステルとの混合物を用いた場合には、その比率は、表1に示す通りである。
【0147】
<包装袋の作製>
得られた複合フィルムを包装材として用いて、
図2に示す包装袋を作製した。複合フィルムから、縦148mm×横200mmの長方形の包装材を切り抜いた。続いて、
図2(b)に示されるように、包装材の長編の端部10mmをヒートシールして筒状物を形成し、最後に、上端部及び下端部のそれぞれ10mmをヒートシールすることで、縦148mm×幅95mmの包装袋を作製した。
【0148】
ヒートシールは、富士インパルス社製FA-300-10Wを使用し、シール温度200℃、シール時間1.0秒、冷却時間2.0秒の条件で実施した。
【0149】
《評価》
(常温での初期層間強度)
実施例1~5で得られた複合フィルムを、幅15mm×120mmの長方形に切り抜き、これを評価用サンプルとした。
【0150】
評価用サンプルを、温度150℃、圧力3kgf/cm2、時間1.5秒の条件で、ポリエチレンフィルムにヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルについて、以下の方法で層間剥離を実施し、剥離面の初期層間強度を測定した。
【0151】
測定には、ストログラフ AGS-X(株式会社島津製作所)を測定機として用い、200mm/min、剥離長さ35mmの条件で180°剥離させたときの、剥離長さ10~30mmにおける平均剥離強度を算出した。なお、測定は、室温環境下で実施した。結果を、表1に示す。
【0152】
(常温での再封強度)
上記の初期層間強度を測定した後、指で剥離部を押圧して再接着させた。その後、上記と同様の方法で、層間強度を測定した。結果を、表1に示す。
【0153】
(再封性の確認)
実施例1~10で作成した包装袋を開封し、指圧にて開封部を閉じた。続いて、再び同部位を開封し、再開封の際の抵抗について、以下の評価基準で評価した。結果を、表1に示す。
〇:再開封の際に、指に抵抗感を感じる。
×:再開封の際に、指に抵抗感を感じない。
【0154】
【0155】
《実施例11~16、比較例1~2》
<材料>
層を構成する材料として、以下を準備した。
【0156】
(1)第2の基材層
・紙(NMアート、日本製紙株式会社、坪量:79.1g/m2)
【0157】
(2)アルミニウム層
・アルミニウム箔(1N30、株式会社UACJ製、厚み:7μm)
【0158】
(3)基材層
・PETフィルム(PETB、ユニチカ株式会社、厚み:12μm)
【0159】
(4)粘着層
非晶質ポリエステル
・エリーテル(登録商標)XP-1541[Tg:-12℃](ユニチカ株式会社)
・エリーテル(登録商標)UE-3520[Tg:-39℃](ユニチカ株式会社)
ロジンエステル
・ハリタック(TM)28JA(ハリマ化成グループ株式会社、軟化点:130~140℃)
・ハリタック(TM)8LJA(ハリマ化成グループ株式会社、軟化点:89℃)
SBBS(N515、旭化成株式会社)
ポリテルペン(Sylvares(登録商標)TRB115、クレイトン社)
【0160】
(5)ヒートシール層
・LDPE(サンテック(登録商標)LD L2340、旭化成株式会社、密度:0.923g/cm3)
・HDPE(ノバテック(登録商標)HD HJ490、日本ポリエチレン株式会社、密度:0.958g/cm3)
・MDPE(ペトロセン(登録商標)LW04-1、東ソー株式会社、密度:0.940g/cm3)
【0161】
<複合フィルムの作製>
表2に示す材料を用いて、以下に示す方法により、(基材層//アルミニウム層//ポリエステル樹脂層/粘着層/ヒートシール層)の積層構成となる複合フィルムを作製した。なお、ドライラミネートで貼り合わせた部分を、「//」で示している。また、粘着層の組成(質量%)については、粘着層全体に対する各成分の固形分量を示している。
【0162】
1.アルミニウム層となるアルミニウム箔と、基材層となるポリエステルフィルムとを、ドライラミネートにより貼り合わせて、(アルミニウム層//PETフィルム)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、有機溶剤型接着剤(LX500/KW-75、DIC株式会社)を用いた。
【0163】
2.アルミニウム層側に、第2の基材層となる紙を、ドライラミネートにより貼り合わせて、(紙//アルミニウム層//PETフィルム)の積層体を作製した。ドライラミネート用接着剤としては、有機溶剤型接着剤(LX500/KW-75、DIC株式会社)を用いた。
【0164】
3.基材層であるPETフィルム側に、粘着層となる、非晶質ポリエステルとロジンエステルとの混合樹脂、又は非晶質ポリエステルを、乾燥重量で3g/m2(厚み:3μm)となるよう塗工し、(紙//アルミニウム層//PETフィルム/粘着層)の積層体を作製した。粘着層における非晶質ポリエステルとロジンエステルとの混合比率は、表2に示す通りである。また、塗工のための溶媒としては、酢酸エチルを用いた。
【0165】
4.粘着層の上に、ヒートシール層となる樹脂又は樹脂組成物を、厚さ5μmとなるように押出ラミネートすることで、(紙//アルミニウム層//PETフィルム/粘着層/ヒートシール層)の構成の複合フィルムを得た。ヒートシール層に用いた樹脂の種類、及びヒートシール層における当該樹脂の割合は、表2に示す通りである。
【0166】
<蓋材の作製>
得られた複合フィルムを、タブ付きφ101mmのサイズに切り抜き、蓋材を作製した。
【0167】
<蓋付容器の作製>
得られた蓋材を、PEコート紙カップ(フランジ幅:3mm、開口内径:90mm)に、加熱したヒートシールバーを用いて、ヒートシール幅3mm、圧力65Mpa、時間0.7秒の条件でヒートシールして、蓋付容器を作製した。
【0168】
《比較例1》
<複合フィルムの作製>
市販されている複合フィルムを用いて、実施例1と同様にして蓋付き容器を作製した。準備した複合フィルムは、基材層(A)/粘着樹脂層(B)/ヒートシール層(C)の構成を有する積層体であり、その材料は、以下の通りであった。なお、基材層(A)のうち、以下に示す(a4)ポリエチレン層が、粘着樹脂層と隣接するよう配置されていた。
【0169】
基材層(A):以下の(a1)/(a2)/(a3)/(a4)からなる積層体
(a1)PET層
(a2)エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)層
(a3)ナイロン層
(a4)ポリエチレン層
粘着樹脂層(B):ポリスチレン系樹脂
ヒートシール層(C):ポリエチレン系樹脂
【0170】
《比較例2》
表2に示すように、粘着層を形成する材料として、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)とポリテルペンとの混合樹脂を用いて、乾燥重量で6g/m2(厚み:6μm)となるよう塗工し、ヒートシール層を構成するポリエチレン樹脂の組成を異ならせた以外は、実施例11と同様にして複合フィルムを作製し、得られた複合フィルムを用いて蓋付容器を作製した。
【0171】
【0172】
《評価》
(常温での初期層間強度)
実施例11~16、及び比較例1~2で得られた複合フィルムを、幅15mm×120mmの長方形に切り抜き、これを評価用サンプルとした。
【0173】
評価用サンプルを、温度150℃、圧力3kgf/cm2、時間1.5秒の条件で、ポリエチレンフィルムにヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルについて、以下の方法で層間剥離を実施し、剥離面の初期層間強度を測定した。
【0174】
測定には、ストログラフ AGS-X(株式会社島津製作所)を測定機として用い、200mm/min、剥離長さ35mmの条件で180°剥離させたときの、剥離長さ10~30mmにおける平均剥離強度を算出した。なお、測定は、室温環境下で実施した。結果を、表3に示す。初期層間強度が、2.0(N/15mm)以上の範囲を、合格とする。
【0175】
(高温条件下での層間強度)
高温条件下での層間強度の測定は、上記の常温での初期層間強度の測定により層間剥離を実施したサンプルを用いて、初期層間強度の測定の後に、指圧にて再接着(再封)させて複合フィルムの状態に戻し、50℃環境下にて、上記の常温での初期層間強度の測定と同様の装置及び操作にて層間剥離を実施し、平均剥離強度を算出した。結果を、表2に示す。なお、層間強度が、1.5~3.0(N/15mm)の範囲を、合格とする。
【0176】
(層間剥離の場所の確認)
実施例11~16、及び比較例1~2で作製した蓋付容器について、初期開封を実施し、層間剥離の場所を確認した。剥離場所を表3に示す。
【0177】
比較例1~2で作製した蓋付容器は、基材層-粘着層間で層間剥離が起こっていたのに対し、実施例11~16の複合フィルムから作製した蓋付容器は、粘着層-ヒートシール層間で層間剥離が起こっていることが確認できた。
【0178】
(給湯後密閉試験)
実施例11~16、及び比較例1~2で作製した蓋付容器について、1/3程度開封した後に90℃のお湯を注ぎ、指圧にて再封した。再封後5分間、蓋が密閉されているか評価した。結果を、表3に示す。
〇:5分間密閉されていた
×:5分以内に蓋が開いた
【0179】
(フランジへの粘着剤残り評価)
実施例11~16、及び比較例1~2で作製した蓋付容器について、1/3程度開封した後に90℃のお湯を注ぎ、指圧にて再封した。再封後、5分間密閉した後、再度開封した際に、フランジに粘着剤が残っていないか評価した。評価にあたっては、フランジを指で触って、タックの有無を確認した。結果を、表3に示す。
〇:タックが無かった
×:タックが有った
【0180】