(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101149
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220629BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215570
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520511284
【氏名又は名称】株式会社PalledAd
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安彦 賢
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】屋外に掲示される広告について、実際の人間が広告を注視したことを測定する技術を提供する。
【解決手段】広告効果測定システム1のサーバ20は、その機能として、広告効果を測定する場所を模した仮想空間を生成して表示する仮想空間設定モジュール2033と、ユーザから広告の情報を受け付け、仮想空間に広告の情報に対応する広告オブジェクトを生成して配置する広告配置モジュール2034と、被験者に対して広告オブジェクトを配置した仮想空間を表示する仮想空間表示モジュール2035と、被験者が、仮想空間内で行動しているときの視線の動きを測定する被験者測定モジュール2036と、被験者の測定結果に基づき、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づいて広告の効果を測定するリーチ数推定モジュール2037と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記メモリは、広告効果を測定する場所の情報を記憶し、
前記プログラムは、前記プロセッサに、
前記場所を模した仮想空間を表示するステップと、
ユーザから広告の情報を受け付け、前記仮想空間に、前記広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置するステップと、
前記測定を行うための被験者に対して前記仮想空間を表示し、前記被験者が前記仮想空間内で行動しているときの視線の動きを測定するステップと、
前記視線の動きの測定結果に基づき、前記被験者が前記広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づき前記広告の効果を測定するステップと、を実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記測定を行うための被験者に対して前記仮想空間を表示するとき、前記仮想空間の条件の指定を受け付け、
前記条件に基づき、前記仮想空間及び前記広告オブジェクトの表示態様を調整する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記仮想空間の条件は、前記仮想空間の季節、時間帯、天候のうちの1つまたは複数である、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記場所の情報及び前記仮想空間の条件に基づき、前記仮想空間における通行人を模した通行人オブジェクトの配置を調整する、請求項2または請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記プログラムは、さらに、
前記広告の効果の測定結果に基づき、前記広告の掲示態様の最適化を行い、最適化された前記広告の掲示態様をレコメンドするステップを実行させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記広告の掲示位置、前記掲示位置における人流量、音量、気候、季節、時間帯、前記広告の大きさ、色、発光の強さのうちの1つまたは複数を変更することで最適化する、請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記プログラムは、さらに、
前記広告の効果の測定結果に基づき、前記広告の掲示単価を算出するステップを実行させる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記視線の動きの測定結果に基づき、前記被験者の視界の中に前記広告オブジェクトが入っているが前記被験者が注視していない場合と、前記被験者が注視した場合とを区別して、前記広告の効果を測定する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記場所の情報に含まれる通行人の情報と、前記視線の動きの測定結果に基づく注視モデルとから、前記広告の効果を測定する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記被験者の属性と、前記通行人のうち前記被験者の属性と同一または近似の属性の前記通行人の割合とに基づき、前記広告の効果を測定する、請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
配置された前記広告オブジェクトの地上からの高さ、及び大きさを変数とする前記注視モデルに基づき、前記広告の効果を測定する、請求項9または請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記広告オブジェクトの状態、前記仮想空間における通行人を模した通行人オブジェクトの状態、前記仮想空間における信号機の状態、前記被験者が前記広告オブジェクトを注視したか否かに基づく学習モデルにより、前記広告の効果を測定する、請求項9または請求項10に記載のプログラム。
【請求項13】
前記被験者の視線の動きを測定し、前記被験者が前記広告オブジェクトを視認した回数、時間のいずれかまたは両方を測定する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項14】
前記被験者が装着したヘッドマウントディスプレイに設けられているセンサにより、前記被験者の視線の動きを測定する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項15】
制御部と、記憶部とを備える情報処理装置であって、
前記記憶部は、広告効果を測定する場所の情報を記憶し、
前記制御部は、
前記場所を模した仮想空間を表示するステップと、
ユーザから広告の情報を受け付け、前記仮想空間に、前記広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置するステップと、
前記測定を行うための被験者に対して前記仮想空間を表示し、前記被験者が前記仮想空間内で行動しているときの視線の動きを測定するステップと、
前記視線の動きの測定結果に基づき、前記被験者が前記広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づき前記広告の効果を測定するステップと、を行う、情報処理装置。
【請求項16】
プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータにより実行されるための方法であって、
前記メモリは、広告効果を測定する場所の情報を記憶し、
前記方法は、前記プロセッサが、
前記場所を模した仮想空間を表示するステップと、
ユーザから広告の情報を受け付け、前記仮想空間に、前記広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置するステップと、
前記測定を行うための被験者に対して前記仮想空間を表示し、前記被験者が前記仮想空間内で行動しているときの視線の動きを測定するステップと、
前記視線の動きの測定結果に基づき、前記被験者が前記広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づき前記広告の効果を測定するステップと、を実行する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、情報処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繁華街や、駅周辺のような人通りの多い場所では、商品の販売促進、または各種プロモーションを目的として、建物の壁面等に広告が掲示されている。このような広告は、通行人に視認してもらうために掲示されるため、多くの通行人が視認する可能性が高い場所ほど、広告を掲示する料金が高く設定され、広告ビジネスが展開されている。
【0003】
広告を掲示するための料金を設定するため、様々な技術が提供されている。特許文献1には、実際の空間を仮想空間に表現し、人間を模したエージェントを仮想空間内に配置して行動させ、エージェントの視野情報に基づいて広告の認識結果を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、掲示された広告が人の視界に入ったからといって、必ずしもその人がその広告に関心を向けているとは限らない。例えば街頭には、多くの広告が設置されているが、日常生活では、自分の関心のあるものでなければ、視界には入っていても、設置されている広告を認識していないこともありえる。よって、屋外広告の効果測定の精度をよりいっそう向上させる技術が、必要とされている。
【0006】
そこで、本開示では、実際の人間が広告を認識したことを測定する技術について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態によると、プロセッサと、メモリとを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。メモリは、広告効果を測定する場所の情報を記憶し、プログラムは、プロセッサに、場所を模した仮想空間を表示するステップと、ユーザから広告の情報を受け付け、仮想空間に、広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置するステップと、測定を行うための被験者に対して仮想空間を表示し、被験者が仮想空間内で行動しているときの視線の動きを測定するステップと、視線の動きの測定結果に基づき、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づき広告の効果を測定するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、実際の人間が広告オブジェクトに視界を向けて認識(注視)したか否かを判定し、広告の効果を測定するので、実際の人間が広告を注視したことを測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】広告効果測定システム1の全体の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1の広告効果測定システム1を構成する端末装置10の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1の広告効果測定システム1を構成するサーバ20の機能的な構成を示す図である。
【
図4】実施の形態1の広告効果測定システム1による被験者を測定する例を示す模式図である。
【
図5】サーバ20が記憶する地域データベース2021、広告掲示箇所データベース2022のデータ構造を示す図である。
【
図6】サーバ20が記憶する広告データベース2023、被験者データベース2024のデータ構造を示す図である。
【
図7】実施の形態1の広告効果測定システム1による広告効果の測定処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1の広告効果測定システム1による被験者の測定処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】HMD30に表示する仮想空間VRの画面例を示す図である。
【
図10】端末装置10に表示する広告効果の測定結果の画面例を示す図である。
【
図11】実施の形態2の広告効果測定システム1を構成するサーバ20の機能的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
<概要>
以下、本開示に係る広告効果測定システムについて説明する。この広告効果測定システムは、屋外に掲示される広告について、視認したユーザ(通行人)の数により広告の効果を測定するためのシステムである。一般的に、広告とは商品、サービス、またはアイデア等を伝達するための媒体であるため、広告効果を高めるためには、多くのユーザに視認してもらう必要がある。本開示に係る広告効果測定システムは、このような広告効果を推定するためのシステムである。なお、屋外に掲示される広告とは、建物の壁面、屋上、または広告掲示用に設置される掲示板に掲示される広告、さらにはアドトラックと呼ばれる広告宣伝車を含む。また、屋外に掲示される広告は、印刷物等により固定の情報が表示されるものでもよく、ディスプレイまたはプロジェクタにより静止画像または動画のコンテンツとして表示される、いわゆるデジタルサイネージでもよい。すなわち、人が屋外で行動するときに視認することが可能な様々な広告媒体を含む概念である。
【0012】
屋外に掲示される広告の効果を測定するためには、その媒体の前を通る通行人の流量を示す媒体前人流量(OTC:Opportunity To Contact)のデータが必要になる。OTCは、例えば実際に当該場所を通行する通行人の数を数えることで取得することが可能である。また、OTCを取得する手法として、人手により一定時間カウントする手法の他、センサによる人の検知をカウントする手法、定点カメラ等による撮影画像の解析、スマートフォン等の携帯端末による位置情報のカウント等の手法が提供されている。さらに、単に通行人の数をカウントするだけではなく、通行人の性別、年齢層等の属性ごとの数を取得することも可能になっている。このようなOTCにより、広告のターゲットとなる属性と比較することで、広告を視認した数を示すリーチ数を推定することで広告効果を測定することが可能になっている。
【0013】
しかしながら、これらの通行人が、屋外に掲示される広告を視認するとは限らない。通行人が常に自分の周囲の視覚情報を認識するとは限らないからであり、例えば出勤途中のように目的地に向かって急いであるような通行人は、周囲の視覚情報を認識する余裕に乏しく、視認する可能性は低いと考えられる。また、通行する時間帯や天候により、屋外広告の見え方に差異が生じることがあり、例えば昼間の晴天時、太陽が通行人の進行方向にあると逆光になって見えにくくなり、夜間の場合は一定の光の照射がないと見えにくくなると考えられる。さらに、通行人にとって興味が薄い分野には反応しない傾向があると考えられ、男性が女性ファッションブランドや化粧品の広告には見向きもしないことが考えられ、換言するとその通行人は当該広告のターゲット外であると考えられる。このように、広告効果を測定するためには、OTCだけで推定したリーチ数は広告効果を測定するためには精度が低いと考えられる。
【0014】
そのため、本開示に係る広告効果測定システムでは、広告を掲示する候補となる場所(現実空間の場所)を模した仮想空間に、広告の情報に対応する広告オブジェクトを掲示する。この仮想空間を、通行人として想定される被験者に、例えばヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着させて表示し、実際に行動してもらう。そのとき、被験者の視線の動きを測定し、広告オブジェクトを注視したか否かを判定する。この判定結果と、当該被験者の属性、OTC等の情報により、広告オブジェクトのリーチ数(VAC:Visually Adjusted Contactともいう)を推定する。具体例として、本開示に係る広告効果測定システムはWebサービスとして提供され、広告を掲示する候補となる場所の指定、広告の情報を受け付けると、仮想空間を生成して広告オブジェクトを掲示し、当該仮想空間における被験者の測定を行い、その結果に基づいてリーチ数を推定することで広告効果を測定する。以上のように、本実施形態では、仮想空間に広告オブジェクトを掲示して、仮想空間内を通行人として移動する被験者の視線の動きを示すアイトラッキングデータに基づき、広告オブジェクトの付近を移動するユーザのうち、実際に広告オブジェクトを視認する人(視認する時間帯を含めてもよい)を予測するモデルを生成する。これにより、本開示に係る広告効果測定システムでは、OTC(すなわち、通行人の流量)と、上記のモデルとに基づいて、現実の場所に設置される広告媒体(屋外広告など)が、広告のターゲットとする顧客層に対してどれだけの広告効果があるのかを評価する。具体的には、広告効果測定システムは、性年齢別等により区分けされる顧客セグメントに対して、どれくらいの数の顧客が広告を視認するのかのインプレッション(広告が見られた回数:同じ顧客が複数回にわたって広告を見た場合の重複も含む)、リーチ数(広告を見た顧客の数)となるのかの予測結果を出力する。また、これらの値から、被験者の記憶への残りやすさ、すなわち広告のインパクトを測定し、実際に当該広告を見た者へのインパクトを推定する。
【0015】
さらに、この仮想空間の条件として、季節、時間帯、及び天候を設定することが可能となっており、この条件設定に基づいて、仮想空間、広告オブジェクトの表示態様、及び被験者以外の通行人を模した通行人オブジェクトの配置を調整することを可能に構成している。これにより、被験者が仮想空間内で移動をする際の、仮想空間に設定される時間(例えば、現実の空間を歩行または移動体により走行する場合、時間帯や天候によって広告の見え方が異なりうる)と、仮想空間内に設置される広告オブジェクトの高さ及び大きさ等を変数として学習済みモデルを生成することができ、その結果、より精度の高い広告効果の測定(リーチ数の推定等)を可能にしている。
【0016】
<第1の実施の形態>
以下、広告効果測定システム1について説明する。以下の説明では、例えば、端末装置10がサーバ20へアクセスすることにより、サーバ20が、端末装置10で画面を生成するための情報を応答する。端末装置10は、サーバ20から受信した情報に基づいて画面を生成し表示する。
【0017】
<1 広告効果測定システム1の全体構成>
図1は、広告効果測定システム1の全体の構成を示す図である。
図1に示すように、広告効果測定システム1は、複数の端末装置(
図1では、端末装置10Aおよび端末装置10Bを示している。以下、総称して「端末装置10」ということもある)と、サーバ20とを含む。端末装置10とサーバ20とは、ネットワーク80を介して相互に通信可能に接続されている。ネットワーク80は、有線または無線ネットワークにより構成される。
【0018】
端末装置10は、各ユーザが操作する装置である。ここで、ユーザとは、端末装置10を使用して広告効果測定システム1の機能である広告効果の測定を行う者であり、例えば広告主企業の担当者、または広告を掲示する建物等の物件のオーナー等をいう。端末装置10は、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPC等により実現される。この他、端末装置10は、例えば移動体通信システムに対応したタブレットや、スマートフォン等の携帯端末であるとしてもよい。
【0019】
端末装置10は、ネットワーク80を介してサーバ20と通信可能に接続される。端末装置10は、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に対応した無線基地局81、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11等の無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線LANルータ82等の通信機器と通信することにより、ネットワーク80に接続される。
図1に端末装置10Bとして示すように、端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、記憶部16と、プロセッサ19とを備える。
【0020】
通信IF12は、端末装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、キーボードや、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス等)である。出力装置14は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)である。メモリ15は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。記憶部16は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。プロセッサ19は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路等により構成される。
【0021】
サーバ20は、広告媒体を掲示する地域及び物件(場所)の情報、広告の情報、及び被験者の情報を管理する装置である。サーバ20は、ユーザに対して、広告を掲示する候補となる地域及び物件を模した仮想空間を表示し、ユーザから仮想空間内に配置する広告の情報の入力を受け付け、広告の情報に対応する広告オブジェクトを仮想空間内に掲示する。サーバ20は、通行人として想定される被験者に仮想空間を表示し、被験者の視線の動きを測定し、広告オブジェクトを注視したか否かを判定する。さらに、サーバ20は、広告オブジェクトのリーチ数を推定し、広告効果を測定する。
【0022】
サーバ20は、ネットワーク80に接続されたコンピュータである。サーバ20は、通信IF22と、入出力IF23と、メモリ25と、ストレージ26と、プロセッサ29とを備える。
【0023】
通信IF22は、サーバ20が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。入出力IF23は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置、および、ユーザに対し情報を提示するための出力装置とのインタフェースとして機能する。メモリ25は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。ストレージ26は、データを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。プロセッサ29は、プログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路等により構成される。
【0024】
<1.1 端末装置10の構成>
図2は、実施の形態1の広告効果測定システム1を構成する端末装置10の機能的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、端末装置10は、複数のアンテナ(アンテナ111、アンテナ112)と、各アンテナに対応する無線通信部(第1無線通信部121、第2無線通信部122)と、操作受付部130(キーボード131およびディスプレイ132を含む)と、音声処理部140と、マイク141と、スピーカ142と、カメラ150と、記憶部160と、制御部170とを含む。端末装置10は、
図2では特に図示していない機能及び構成(例えば、電力を保持するためのバッテリー、バッテリーから各回路への電力の供給を制御する電力供給回路等)も有している。
図2に示すように、端末装置10に含まれる各ブロックは、バス等により電気的に接続される。
【0025】
アンテナ111は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ111は、空間から電波を受信して受信信号を第1無線通信部121へ与える。
【0026】
アンテナ112は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ112は、空間から電波を受信して受信信号を第2無線通信部122へ与える。
【0027】
第1無線通信部121は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ111を介して信号を送受信するための変復調処理等を行う。第2無線通信部122は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ112を介して信号を送受信するための変復調処理等を行う。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、チューナー、RSSI(Received Signal Strength Indicator)算出回路、CRC(Cyclic Redundancy Check)算出回路、高周波回路等を含む通信モジュールである。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、端末装置10が送受信する無線信号の変復調や周波数変換を行い、受信信号を制御部170へ与える。
【0028】
操作受付部130は、ユーザの入力操作を受け付けるための機構を有する。具体的には、操作受付部130は、キーボード131と、ディスプレイ132とを含む。なお、操作受付部130は、例えば静電容量方式のタッチパネルを用いることによって、タッチパネルに対するユーザの接触位置を検出する、タッチスクリーンとして構成してもよい。
【0029】
キーボード131は、端末装置10のユーザの入力操作を受け付ける。キーボード131は、文字入力を行う装置であり、入力された文字情報を入力信号として制御部170へ出力する。
【0030】
ディスプレイ132は、制御部170の制御に応じて、画像、動画、テキスト等のデータを表示する。ディスプレイ132は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイによって実現される。
【0031】
音声処理部140は、音声信号の変復調を行う。音声処理部140は、マイク141から与えられる信号を変調して、変調後の信号を制御部170へ与える。また、音声処理部140は、音声信号をスピーカ142へ与える。音声処理部140は、例えば音声処理用のプロセッサによって実現される。マイク141は、音声入力を受け付けて、当該音声入力に対応する音声信号を音声処理部140へ与える。スピーカ142は、音声処理部140から与えられる音声信号を音声に変換して当該音声を端末装置10の外部へ出力する。
【0032】
カメラ150は、受光素子により光を受光して、撮影画像として出力するためのデバイスである。カメラ150は、例えば、カメラ150から撮影対象までの距離を検出できる深度カメラである。
【0033】
記憶部160は、例えばフラッシュメモリ等により構成され、端末装置10が使用するデータおよびプログラムを記憶する。ある局面において、記憶部160は、ユーザ情報161と、広告情報162とを記憶する。
【0034】
ユーザ情報161は、端末装置10を使用して広告効果測定システム1の機能である広告効果の測定を行うユーザの情報である。ユーザ情報としては、ユーザを識別する情報(ユーザID)、ユーザの名称、ユーザが所属している企業等の組織情報等が含まれる。
【0035】
広告情報162は、広告効果の測定を行う広告の情報である。広告情報としては、掲示する広告の画像情報、デジタルサイネージによる静止画像または動画のコンテンツ情報等が含まれる。
【0036】
制御部170は、記憶部160に記憶されるプログラムを読み込んで、プログラムに含まれる命令を実行することにより、端末装置10の動作を制御する。制御部170は、例えば予め端末装置10にインストールされているアプリケーションである。制御部170は、プログラムに従って動作することにより、入力操作受付部171と、送受信部172と、データ処理部173と、通知制御部174としての機能を発揮する。
【0037】
入力操作受付部171は、キーボード131等の入力装置に対するユーザの入力操作を受け付ける処理を行う。
【0038】
送受信部172は、端末装置10が、サーバ20等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。
【0039】
データ処理部173は、端末装置10が入力を受け付けたデータに対し、プログラムに従って演算を行い、演算結果をメモリ等に出力する処理を行う。
【0040】
通知制御部174は、ユーザに対し情報を提示する処理を行う。通知制御部174は、表示画像をディスプレイ132に表示させる処理、音声をスピーカ142に出力させる処理、振動をカメラ150に発生させる処理等を行う。
【0041】
<1.2 サーバ20の機能的な構成>
図3は、実施の形態1の広告効果測定システム1を構成するサーバ20の機能的な構成を示す図である。
図3に示すように、サーバ20は、通信部201と、記憶部202と、制御部203としての機能を発揮する。
【0042】
通信部201は、サーバ20が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0043】
記憶部202は、サーバ20が使用するデータ及びプログラムを記憶する。記憶部202は、地域データベース2021と、広告掲示箇所データベース2022と、広告データベース2023と、被験者データベース2024等を記憶する。
【0044】
地域データベース2021は、広告効果測定システム1において広告効果を測定する地域の通行人に関する各種情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0045】
広告掲示箇所データベース2022は、広告効果測定システム1において広告効果を測定する建物、掲示板等の物件に関する各種情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0046】
広告データベース2023は、広告効果測定システム1において広告効果を測定する対象の広告の情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0047】
被験者データベース2024は、広告効果測定システム1において仮想空間を通行する通行人として想定される被験者の属性等の情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0048】
制御部203は、サーバ20のプロセッサがプログラムに従って処理を行うことにより、各種モジュールとして受信制御モジュール2031、送信制御モジュール2032、仮想空間設定モジュール2033、広告配置モジュール2034、仮想空間表示モジュール2035、被験者測定モジュール2036、及びリーチ数推定モジュール2037に示す機能を発揮する。
【0049】
受信制御モジュール2031は、サーバ20が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0050】
送信制御モジュール2032は、サーバ20が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0051】
仮想空間設定モジュール2033は、広告効果測定システム1を使用して広告効果を測定する現実の空間の地域(場所)を模した仮想空間を生成し、ユーザの端末装置10へ表示させる処理を制御する。ここで、広告効果を測定する地域は、広告主が広告を掲示する候補となる地域であり、例えば、広告効果を測定可能な地域の一覧が表示された状態から、ユーザが選択した地域である。広告効果を測定する地域の具体例は、「〇△駅南口×〇通り沿い」等のように、特定の通りや街道沿い、特定の交差点や広場のような広告の掲示を検討することが可能な範囲の地域である。現実の空間の地域を模した仮想空間を構成するためのデータとしては、例えば、現実の空間を点群データとして計測した計測結果を用いることとしてもよい。例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)機能を搭載した端末を用いて現実空間を移動する等により、現実の空間を点群データとして計測することができる。また、現実の空間の仮想空間のデータを生成するため、現実の空間を、各地点で360度カメラ等で撮影した撮影結果に基づき点群データまたは3Dモデルを生成することとしてもよい。また、現実の空間を再現するために作成された3Dモデルデータをサーバ20において保持しておくこととしてもよい。
【0052】
具体的には、仮想空間設定モジュール2033は、地域データベース2021に格納されている地域の画像情報や映像情報に基づき、コンピュータグラフィックスや3D技術等により当該地域を立体的に再現した仮想空間を生成し、OTC等の通行人の情報に基づいて通行人を模した通行人オブジェクトを配置し、ユーザに提示する。この仮想空間は、人の視覚及び聴覚を拡張して現実に近い態様でユーザに提供され、当該地域における建物、景色、通行人やその地域によっては自転車、自動車の通行量等を一定時間再現したものであり、実際に信号機が変化し、それに合わせて通行人オブジェクト、自転車や自動車を模したオブジェクトが動くように構成されている。
【0053】
また、仮想空間設定モジュール2033は、ユーザから生成する仮想空間の条件を受け付け、当該条件に基づいて仮想空間を調整させる処理を制御する。仮想空間の条件とは、例えば、表示させる仮想空間として設定する季節、時間帯、天候のうちの1つまたは複数である。具体的には、仮想空間設定モジュール2033は、仮想空間の条件として夕方の時間帯が指定されると、夕方頃の日差しの状態(太陽光の照射方向、角度)に設定し、地域データベース2021に格納されている夕方頃の時間帯の通行人の情報に基づいて通行人オブジェクトを配置する。すなわち、仮想空間設定モジュール2033は、仮想空間の条件として指定された時間帯の情報に基づいて、現実の空間の太陽光に対応するよう、仮想空間における光源の位置を設定する。
【0054】
広告配置モジュール2034は、ユーザから広告の情報を受け付け、仮想空間設定モジュール2033が生成した仮想空間に対して、受け付けた広告の情報に対応する広告オブジェクトを生成して配置する処理を制御する。広告配置モジュール2034が受け付ける広告の情報は、印刷物等として掲示する広告の画像情報、デジタルサイネージによる静止画像または動画のコンテンツ情報等が含まれる。
【0055】
具体的には、広告配置モジュール2034は、広告効果を測定する地域としてユーザが選択した地域の仮想空間に対して、広告を掲示可能な箇所(場所)をユーザから受け付ける。また、広告配置モジュール2034は、ユーザから広告の画像情報、静止画像または動画のコンテンツ情報を受け付ける。その後、広告配置モジュール2034は、コンピュータグラフィックスや3D技術等により、受け付けた広告の情報に対応する広告オブジェクトを生成し、サイズ(大きさ)の調整、色の調整(色相、彩度、及び明度)、発光の強さ、角度調整等を行い、仮想空間に配置してユーザに提示する。このとき、仮想空間に設定された季節、時間帯、天候等の条件に基づき、広告配置モジュール2034は、広告オブジェクトの色相、彩度、及び明度の変更による色調整を行う。このように、広告配置モジュール2034は、現実の空間で屋外設置型等として設置することを検討している広告について、当該設置個所に対応する仮想空間内の座標に、広告オブジェクトを配置する。
【0056】
仮想空間表示モジュール2035は、広告効果測定システム1による測定を行うための被験者に対して、仮想空間設定モジュール2033で生成し、広告配置モジュール2034で広告オブジェクトを配置した仮想空間を表示する処理を制御する。この被験者は、当該仮想空間に通行人として想定される者であり、例えばHMDを装着させる。仮想空間表示モジュール2035は、例えばHMDの表示画面上に仮想空間を表示させる。この仮想空間は、設定された広告の掲示位置、当該掲示位置における通行人流量(人流量)、音量、気候、季節、時間帯等の条件に基づいて色調整等が行われた状態で表示され、広告オブジェクトの掲示態様が調整される。なお、この被験者の性別、年齢等の属性情報は被験者データベース2024に格納され、後述するリーチ数推定モジュール2037による、通行人の属性ごとのリーチ数の推定に使用される。
【0057】
仮想空間表示モジュール2035は、HMDを装着した被験者に対して、被験者の顔や体の向き、視線等に合わせて、被験者の視点に対応する仮想カメラを設定する。そのため、HMDには、被験者の動きをトラッキングする角度センサやジャイロセンサ等のセンサが設けられており、被験者の顔や体の向き、角度、視線等を検知する。仮想空間表示モジュール2035は、HMDの角度センサ等による検知信号を受信し、その検知信号を解析して被験者の顔や体の向き、角度、視線等を把握し、その動きに合わせて仮想カメラを制御することにより、被験者に対して表示する仮想空間を動かして変更する。
【0058】
被験者測定モジュール2036は、広告効果測定システム1による測定を行うための被験者が、仮想空間内で行動しているときの視線の動きを測定する処理を制御する。被験者は、上記のようにHMDを装着しており、仮想空間表示モジュール2035が表示する仮想空間を見ながら、仮想空間内で歩いたりするような行動をする。例えば、被験者測定モジュール2036は、コントローラ等を介して被験者の入力操作を受け付けることにより、仮想空間内で被験者の視点に対応する仮想カメラを移動させる。被験者測定モジュール2036は、そのときに仮想空間における被験者の視線の動きを測定する。被験者測定モジュール2036が測定する視線の動きとは、例えば、広告オブジェクトの方向に視線を向けた(視認した)回数、時間のいずれかまたは両方を測定する。このように、被験者測定モジュール2036は、被験者が、広告オブジェクトに対して一定時間以上視線を注いだか(一定時間以上見つめ続けたか)を測定することができる。
【0059】
被験者測定モジュール2036は、HMDを装着した被験者に対して、被験者の目を測定し、眼球の動き、瞼の開き、瞳孔径等を解析して視線の動きを測定する。そのため、HMDには、被験者の目を測定するためのアイトラッキングセンサやCCDカメラ等が設けられており、被験者の眼球の動き、瞼の開き、瞳孔径等を検知する。被験者測定モジュール2036は、HMDのアイトラッキングセンサ等による検知信号を受信し、その検知信号を解析して被験者の視線の動きを測定する。以上のように被験者に装着させるHMDにアイトラッキング用のセンサを設けている場合、HMDを装着する被験者の視線の動きを計測することができる。この他に、被験者測定モジュール2036は、HMDにアイトラッキング用のセンサが設けられているか否かにかかわらず、仮想空間における仮想カメラの向きに基づいて、被験者の視線を特定することとしてもよい。すなわち、HMDを装着する被験者の頭部の動きに基づいて(HMDに搭載される角度センサ、ジャイロセンサ等の検出結果に基づいて)仮想カメラの向きを制御して、仮想カメラの視野に応じた画像をレンダリングすることにより、被験者に対して仮想空間内にいるかのような没入感を提供することができるが、この際の仮想カメラの撮影方向の軸を、仮想空間における被験者の視線の方向としてもよい。
【0060】
リーチ数推定モジュール2037は、被験者測定モジュール2036による被験者の測定結果に基づき、被験者が、HMDに表示されている仮想空間内の広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づいて広告オブジェクトのリーチ数を推定することで広告の効果を測定する処理を制御する。
【0061】
まず、リーチ数推定モジュール2037は、HMDのアイトラッキングセンサ等による被験者の視線の動きから、HMDに表示されている仮想空間内の広告オブジェクトの方向へ視線を向けたか否かを判定する。例えば、被験者の視線の動きから推定される被験者の視野の仮想空間内における座標範囲に、仮想空間内の広告オブジェクトの座標範囲が重なるか否かにより判定する。
【0062】
次に、リーチ数推定モジュール2037は、HMDのアイトラッキングセンサ等による被験者の視線の動きから、HMDに表示されている仮想空間内の広告オブジェクトを注視したか否かを判定する。例えば、被験者の視線の動きから、一定時間以上仮想空間内の広告オブジェクトを見ているか、瞼の動きや瞳孔径等から広告オブジェクトを見て認識しているか(視線は向けているけど別のことを考えていて視認していない状態ではないか)を判定する。
【0063】
その後、リーチ数推定モジュール2037は、当該被験者の測定結果に基づき、被験者データベース2024に格納されている当該被験者の属性情報と、広告オブジェクトのもとになる広告のターゲットとなる属性と、地域データベース2021に格納されているその地域の通行人情報とを解析し、当該広告のリーチ数を推定することで広告の効果を測定する。例えば、当該広告のターゲットとなる属性の、複数の被験者の測定結果に基づき、その属性の通行人が当該広告を視認すると思われる割合の推定値を算出する。このとき、被験者の属性と同一または近似する属性の通行人がその地域を通行している割合に基づき、リーチ数の推定値を算出してもよい。その推定値と、地域データベース2021に格納されているその地域の当該属性の通行人情報とを掛け合わせて、リーチ数の推定値を算出する。
【0064】
例えば、リーチ数推定モジュール2037は、地域データベース2021に格納されているその地域の通行人の情報と、被験者の測定結果による視線の動きに基づき、注視モデルを生成し、この注視モデルに基づいて、当該広告のリーチ数を推定してもよい。具体的には、当該広告がどのような分野のプロモーション対象の広告であるか、またはどのような人物やキャラクターがプロモーションを行っているか等に応じて、通行人の年齢層、性別、想定される職業等の属性ごとに、当該広告に興味を示して注視するか否かを測定した測定データと、その地域の通行人の年齢層、男女比等の測定データと、に基づいて統計学的推論を行って生成された、当該広告が掲示される地域の位置情報をパラメータとして広告効果を測定(例えば、リーチ数を推定)する推論モデルを注視モデルとして利用し、広告効果を測定してもよい。ここで、広告の掲示態様は、その広告が印刷物を含む静止画像であるか、またはデジタルサイネージであるか、デジタルサイネージである場合は光の強さまたは音声が出力されているか否か、等により分類される。なお、通行人の測定データは、上述のOTCのデータでもよい。また、リーチ数推定モジュール2037は、配置されている広告オブジェクトの仮想空間における掲示態様に基づく注視モデルを生成し、この注視モデルに基づいて、当該広告のリーチ数を推定してもよい。具体的には、仮想空間において当該広告オブジェクトが配置されている位置の地上からの高さ、水平方向の位置、表示方向、または広告オブジェクトの大きさ(サイズ)に基づいて統計学的推論を行って生成された、当該広告の地上からの高さ、表示方向、大きさのいずれか1つまたは複数をパラメータとして広告効果の測定(例えばリーチ数の推定)を行う推論モデルを注視モデルとして利用し、広告効果を測定してもよい。このような注視モデルは、機械学習、ディープラーニング等による学習済みモデルでもよく、広告オブジェクトの状態(例えば、上述のような広告オブジェクトの高さ、表示方向、大きさ)、仮想空間における通行人オブジェクトの状態(例えば、上述のような通行人の測定データにより仮想空間に再現された通行人オブジェクトの人数、年齢層、性別等の分布)、仮想空間における信号機の状態(例えば、仮想空間に再現された地域の信号機の変動間隔の情報)、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かに基づいてリーチ数の推定を行う学習済みモデルでもよい。この学習済みモデルは、当該広告が掲示される地域の位置情報をインプットデータとして、広告効果を測定(例えば、リーチ数を推定)する学習済みモデル、または、当該広告が掲示される地上からの高さ、表示方向、大きさのいずれか1つまたは複数をインプットデータとして、広告効果を測定(例えば、リーチ数を推定)する学習済みモデルである。
【0065】
また、リーチ数推定モジュール2037は、広告の効果の測定結果(例えば、リーチ数推定モジュール2037により算出したリーチ数の推定値)に基づき、広告の掲示単価を算出してもよい。例えば、単位時間当たりのリーチ数の推定値に対して、設定された1リーチ数あたりの単価を掛け合わせて単位時間当たりの広告の掲示単価としてもよい。このときの1リーチ数あたりの単価は、固定の金額で設定してもよく、リーチ数の推定値に応じて段階的に変動するように設定してもよい。さらに、広告を掲示する地域、通行人の測定データに基づく通行人数、当該広告のターゲットとなる属性の通行人数等をパラメータとして変動させてもよい。
【0066】
図4は、実施の形態1の広告効果測定システム1による被験者を測定する例を示す模式図である。
図4に示す模式図は、被験者HがHMD30を装着し、仮想空間VRを見ている状態を模式的に示した図である。HMD30は、装着する者(被験者H)の目及び耳を覆うように装着することで、視覚及び聴覚を遮断して仮想的な映像、音声を提供することで仮想空間を提供する装置であり、仮想現実(VR:Virtual Reality)を提供するために使用される装置である。また、HMD30は、サーバ20とネットワーク80を介して相互に通信可能に接続され、サーバ20の通信部201を介して通信を行い制御部203により制御されている。
【0067】
HMD30を装着している被験者Hは、仮想空間表示モジュール2035がHMD30の表示画面上に表示している画面を見ているが、被験者Hにとっては、HMD30より先に広がる仮想空間VRを見ているように感じている。そのため、被験者Hは、仮想空間VRに表示されている建物等を見ており、その中で広告オブジェクトADが気になった場合に、
図4に示すように視線ELを向ける。被験者Hが広告オブジェクトADを注視している場合、一定時間以上、視線ELを広告オブジェクトADに向ける。被験者測定モジュール2036は、このような被験者Hの広告オブジェクトADに対する視線ELの動きを測定する。例えば、サーバ20は、仮想空間における被験者の仮想カメラの位置に基づき、当該位置から被験者の視線ELの方向に延びる線状のオブジェクト(視線に対応するオブジェクト)を生成した場合に、当該線状のオブジェクトと、広告オブジェクトADとが衝突したことを検出する。これにより、被験者が広告オブジェクトADを見ている(視界に入っているが注目していないか、あるいは注視しているか)とみなすことができ得る。なお、仮想空間における被験者Hの位置(例えば、仮想カメラの座標)と、広告オブジェクトADとの距離とが一定距離以上である場合(例えば、被験者の位置から広告オブジェクトまでの距離が比較的遠い場合)、被験者Hの視線ELの方向に広告オブジェクトADがあったとしても、被験者Hが広告を視認していない、注視していないこととしてもよい。遠くに離れた距離にある広告を視認することは困難でありうる。
【0068】
<2 データ構造>
図5は、サーバ20が記憶する地域データベース2021、広告掲示箇所データベース2022のデータ構造を示す図である。また、
図6は、サーバ20が記憶する広告データベース2023、被験者データベース2024のデータ構造を示す図である。
【0069】
図5に示すように、地域データベース2021のレコードのそれぞれは、項目「地域ID」と、項目「地域名称」と、項目「住所」と、項目「通行人情報」等を含む。
【0070】
項目「地域ID」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する、広告主が広告を掲示する候補となる地域それぞれを識別する情報である。
【0071】
項目「地域名称」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する地域を示す名称であり、例えば、特定の通りや街道の名称、特定の施設、特定の交差点や広場の名称の情報が格納されている。
【0072】
項目「住所」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する地域を示す住所地の情報である。
【0073】
項目「通行人情報」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する地域における単位時価ごとの通行人に関する情報(OTC)であり、具体的には、項目「日付」と、項目「時間帯」と、項目「通行人流量」と、項目「男女比」等を含む。この項目「通行人情報」は、例えば、実際に当該場所を通行する通行人の数が予め測定された結果の情報であり、人手により一定時間カウントされた情報、センサにより人の検知がカウントされた情報、定点カメラ等による撮影画像の解析結果情報、またはスマートフォン等による位置情報のカウント結果を含む。
【0074】
項目「日付」は、広告効果を測定する地域の通行人流量を測定した日付の情報である。
【0075】
項目「時間帯」は、広告効果を測定する地域の通行人流量を測定した時間帯の情報であり、例えば所定時間(例えば、1時間)ごとに区分けされた情報である。
【0076】
項目「通行人流量」は、広告効果を測定する地域の通行人流量を測定した結果の情報であり、項目「日付」及び項目「時間帯」が示す日時に測定された、通行人の単位時間ごとの人数情報である。
【0077】
項目「男女比」は、広告効果を測定する地域の通行人の男女比の概算の情報であり、項目「日付」及び項目「時間帯」が示す日時に測定された、通行人の単位時間ごとの男女比を示す情報である。
【0078】
なお、地域データベース2021には、図示は省略するが、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する地域の画像情報や映像情報が格納されてもよい。これらの情報は、仮想空間設定モジュール2033による仮想空間の生成に使用されてもよい。
【0079】
広告掲示箇所データベース2022のレコードのそれぞれは、項目「掲示箇所ID」と、項目「掲示箇所詳細情報」等を含む。
【0080】
項目「掲示箇所ID」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する、広告主が広告を掲示する候補となる建物、掲示板等の物件それぞれを識別する情報である。
【0081】
項目「掲示箇所詳細情報」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する物件に関する情報であり、具体的には、項目「物件名」と、項目「住所」と、項目「サイズ」と、項目「該当地域ID」等を含む。この項目「掲示箇所詳細情報」は、例えば広告会社等で管理する広告掲示可能な物件の情報である。
【0082】
項目「物件名」は、広告の掲示が可能な建物等の物件の名称を示す情報である。
【0083】
項目「住所」は、広告の掲示が可能な建物等の物件の住所を示す情報である。
【0084】
項目「サイズ」は、掲示可能な広告の最大のサイズ(縦、横)を示す情報である。
【0085】
項目「該当地域ID」は、広告の掲示が可能な建物等の物件が該当する地域を識別する情報であり、地域データベース2021の項目「地域ID」に対応している。
【0086】
なお、広告掲示箇所データベース2022には、図示は省略するが、広告効果測定システム1にて掲示可能な広告の種類(印刷物等として掲示、デジタルサイネージ)の情報が格納されてもよい。
【0087】
図6に示すように、広告データベース2023のレコードのそれぞれは、項目「広告ID」と、項目「広告詳細情報」等を含む。
【0088】
項目「広告ID」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する対象である、掲示を希望する広告の情報それぞれを識別する情報である。
【0089】
項目「広告詳細情報」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定する対象である、掲示を希望する広告に関する情報であり、具体的には、項目「広告主名」と、項目「サイズ(縦横比)」と、項目「画像データ」と、項目「希望掲示ID」等を含む。
【0090】
項目「広告主名」は、広告の掲示を希望する広告主企業や事業主の名称を示す情報である。
【0091】
項目「サイズ(縦横比)」は、掲示を希望する広告の画像データのサイズ(縦、横)を示す情報である。広告が広告オブジェクトとして生成されて仮想空間内に掲示される場合や、実際に掲示される場合にはサイズ調整が行われるため、実際には縦横比の情報として使用される情報である。
【0092】
項目「画像データ」は、掲示を希望する広告の画像情報、デジタルサイネージによる静止画像または動画のコンテンツ情報である。なお、広告データベース2023には画像情報そのものが格納されてもよく、別の場所に格納されている画像情報へのリンク情報が格納されてもよい。
【0093】
項目「希望掲示ID」は、広告の掲示を希望する建物、掲示板等の物件それぞれを識別する情報であり、広告掲示箇所データベース2022の項目「掲示箇所ID」に対応している。
【0094】
被験者データベース2024のレコードのそれぞれは、項目「被験者ID」と、項目「年齢」と、項目「性別」と、項目「嗜好情報」と、項目「測定結果」等を含む。
【0095】
項目「被験者ID」は、広告効果測定システム1にて測定を行うための被験者の情報それぞれを識別する情報である。
【0096】
項目「年齢」は、被験者の年齢を示す情報である。
【0097】
項目「性別」は、被験者の性別を示す情報である。
【0098】
項目「嗜好情報」は、被験者が興味をもつ分野である嗜好分野を示す情報である。
【0099】
項目「年齢」、項目「性別」、及び項目「嗜好情報」は、リーチ数推定モジュール2037による広告のターゲットとなる属性との対比で使用される項目である。
【0100】
項目「測定結果」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定した結果を示す情報であり、具体的には、項目「掲示箇所ID」と、項目「広告ID」と、項目「設定時間帯」と、項目「注視有無」と、項目「注視回数」と、項目「注視合計時間」と、項目「注視時間」と、項目「注視開始時間」と、項目「位置」と、項目「ベクトル」等を含む。
【0101】
項目「掲示箇所ID」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定した際の、広告を掲示する物件それぞれを識別する情報であり、広告掲示箇所データベース2022の項目「掲示箇所ID」に対応している。
【0102】
項目「広告ID」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定した広告の情報それぞれを識別する情報であり、広告データベース2023の項目「広告ID」に対応している。
【0103】
項目「設定時間帯」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定した際の、仮想空間に設定された時間帯を示す情報である。仮想空間設定モジュール2033により設定された時間帯の情報である。
【0104】
項目「注視有無」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定した際の、広告オブジェクトを注視したか否かを示す情報である。リーチ数推定モジュール2037により判定された、広告オブジェクトを注視したか否かの判定結果である。
【0105】
項目「注視回数」、項目「注視合計時間」、項目「注視時間」、項目「注視開始時間」、項目「位置」、および項目「ベクトル」は、広告効果測定システム1にて広告効果を測定した結果である、被験者の視線をアイトラッキング技術によりセンシングした結果を、経過時間と対応付けた測定結果である。項目「注視時間」、項目「注視開始時間」、項目「位置」、および項目「ベクトル」は、項目「注視回数」の回数注視した注視ごとの測定結果であり、項目「注視回数」の数だけデータが格納される。
【0106】
項目「注視回数」は、センシングの測定結果である、被験者が広告を注視した回数である。
【0107】
項目「注視合計時間」は、センシングの測定結果である、被験者が広告を注視した時間を合計した値である。
【0108】
項目「注視時間」は、センシングの測定結果である、被験者が広告を注視した時間である。
【0109】
項目「注視開始時間」は、センシングを開始した時間を基準とした、被験者が広告の注視を開始した時間(時刻)である。
【0110】
項目「位置」は、センシングの測定結果である、被験者が広告の注視を開始した時点における、所定の位置を原点とした被験者の目の位置を示す座標情報である。
【0111】
項目「ベクトル」は、センシングの測定結果である、被験者が広告の注視を開始した時点における、項目「位置」の座標からの被験者の視点の方向を示すベクトル情報である。
【0112】
図示していないが、被験者データベース2024は、項目「被験者ID」に示される被験者が、仮想空間で行った操作のログを保持することとしてもよい。例えば、サーバ20は、仮想空間を識別する情報(つまり、現実の空間のいずれの地域・場所を再現した仮想空間であるか)と、被験者の操作のログとを対応付けて保持することとしてもよい。サーバ20は、被験者が仮想空間内で行った操作のログとして、仮想空間において被験者が移動した履歴(経過時間と対応付けて、被験者に対応する仮想カメラの位置及び向き等を、被験者が移動した履歴としてもよい)と、被験者の視線の向きの履歴(例えば、経過時間と対応付けて、被験者の視線をアイトラッキング技術によりセンシングした結果を、被験者の視線の向きの履歴としてもよい)等を保持する。サーバ20は、これらの被験者の操作の履歴に基づき、被験者データベース2024における項目「測定結果」の各サブフィールドの情報(例えば、被験者が注視した広告など)を特定することとしてもよい。
また、上記のように、被験者データベース2024は、項目「測定結果」において、被験者が仮想空間において広告オブジェクトを視認または注視した際の座標、視線の方向等の情報を保持していてもよい。すなわち、サーバ20は、被験者がどこから広告オブジェクトを視認したのか、注視したのかという情報を、被験者データベース2024において保持することとなり、広告オブジェクトの広告効果として、広告がどこから見られているか(被験者の属性によっても、広告オブジェクトが見られる位置が変わりうる)、注視されているかというデータを広告主に提供しうる。
なお、被験者データベース2024には、図示は省略するが、広告オブジェクトを注視したか否かの判定結果に基づく広告の掲示単価の情報が格納されてもよい。
【0113】
サーバ20のリーチ数推定モジュール2037は、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを判定することに伴って、被験者データベース2024を更新する。
【0114】
<3 動作>
以下、
図7及び
図8を参照しながら、第1の実施の形態における広告効果測定システム1による広告効果の測定処理及び被験者の測定処理について説明する。
【0115】
図7は、実施の形態1の広告効果測定システム1による広告効果の測定処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【0116】
ステップS111において、端末装置10の入力操作受付部171は、あらかじめディスプレイ132に表示されていた広告を掲示する候補となる地域から、広告掲示を希望する地域(場所)及び物件の入力を、ユーザから受け付ける。送受信部172は、受け付けた地域及び物件の情報、及びユーザ情報をサーバ20へ送信する。
【0117】
ステップS121において、サーバ20の仮想空間設定モジュール2033は、広告掲示を希望する地域(場所)及び物件の情報を、通信部201を介して受け付ける。仮想空間設定モジュール2033は、受け付けた広告掲示を希望する地域(広告効果を測定する地域)を模した仮想空間を生成する。仮想空間設定モジュール2033は、生成した仮想空間の情報を、端末装置10へ通信部201を介して送信する。
【0118】
ステップS112において、端末装置10の入力操作受付部171は、ユーザから掲示を希望する広告の情報の入力を受け付ける。広告の情報は、あらかじめデザイナーやクリエイターが制作した広告の画像情報、デジタルサイネージによる静止画像または動画のコンテンツ情報等が端末装置10に格納されている情報であってもよい。送受信部172は、受け付けた広告の情報、及びユーザ情報をサーバ20へ送信する。
【0119】
ステップS122において、サーバ20の広告配置モジュール2034は、端末装置10から送信された広告の情報を、通信部201を介して受け付ける。広告配置モジュール2034は、受け付けた広告に対応する広告オブジェクトを生成し、ステップS121で受け付けた広告掲示を希望する地域の仮想空間へ配置する。広告配置モジュール2034は、生成した広告オブジェクトが配置された状態の仮想空間の情報を、端末装置10へ通信部201を介して送信する。
【0120】
ステップS123において、サーバ20のリーチ数推定モジュール2037は、後述する被験者の測定処理による測定結果に基づき、被験者が、HMDに表示されている仮想空間内の広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づいて広告オブジェクトのリーチ数を推定し、推定値を算出する。また、リーチ数推定モジュール2037は、推定した広告オブジェクトのリーチ数により広告効果を測定する。さらに、リーチ数推定モジュール2037は、広告オブジェクトを注視したか否かの判定結果を、被験者データベース2024へ格納する。
【0121】
ステップS124において、サーバ20のリーチ数推定モジュール2037は、算出したリーチ数の推定値に基づき、広告の掲示単価を算出する。また、リーチ数推定モジュール2037は、算出した広告の掲示単価を、被験者データベース2024へ格納する。
【0122】
ステップS125において、サーバ20のリーチ数推定モジュール2037は、ステップS123で算出したリーチ数の推定値、及び、ステップS124で算出した広告の掲示単価の情報を、端末装置10へ通信部201を介して送信する。
【0123】
ステップS115において、端末装置10の送受信部172は、サーバ20から送信されたリーチ数の推定値及び算出した広告の掲示単価の情報を受け付ける。通知制御部174は、受け付けたリーチ数の推定値及び算出した広告の掲示単価の情報を、ディスプレイ132に表示させる。
【0124】
以上のように、広告効果測定システム1のユーザは、広告掲示を希望する地域(場所)及び物件を入力し、掲示を希望する広告の情報を入力する。当該地域の仮想空間が生成され、広告の情報に対応する広告オブジェクトが生成され、仮想空間に配置される。広告オブジェクトのリーチ数の推定値が算出され、広告の掲示単価が算出される。そのため、より精度の高いリーチ数の推定が可能であり、このリーチ数の推定値による広告の掲示単価の算出が可能である。これにより、広告掲示を希望する地域及び物件への広告の出稿を判断することが容易になる。
【0125】
図8は、実施の形態1の広告効果測定システム1による被験者の測定処理を行う流れの一例を示すフローチャートである。
【0126】
ステップS221において、サーバ20の仮想空間表示モジュール2035は、広告効果の測定を行うための被験者に対して、ステップS121で生成し、ステップS122で広告オブジェクトを配置した仮想空間を、
図4に示すHMD30の表示画面へ、通信部201を介して表示させる。被験者は、HMD30を装着し、仮想空間内で各種の行動をする。
【0127】
ステップS222において、HMD30を装着した被験者がステップS221で表示された仮想空間内で行動するので、サーバ20の被験者測定モジュール2036は、HMD30のアイトラッキングセンサ等による検知信号を受信し、その検知信号を解析して被験者の視線の動きを測定する。
【0128】
ステップS223において、サーバ20のリーチ数推定モジュール2037は、ステップS222の測定結果から、HMD30に表示されている仮想空間内の広告オブジェクトを注視したか否かを、仮想空間内の広告オブジェクトの座標範囲が重なるか否か等により判定する。
【0129】
ステップS224において、サーバ20のリーチ数推定モジュール2037は、ステップS223の判定結果を、被験者データベース2024を更新する。また、ステップS223の判定結果が中止したと判定される場合、被験者のアイトラッキング測定結果を被験者データベース2024に格納する。
【0130】
以上のように、広告効果測定システム1では、広告効果の測定を行うための被験者に対して、広告オブジェクトを配置した仮想空間を表示する。被験者が仮想空間内で行動するので、被験者の視線の動きを測定し、仮想空間内の広告オブジェクトを注視したか否かを判定する。これにより、通行人として想定される被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを把握することが可能であるため、実際の通行人が広告を注視するか否かを推定することが可能である。
【0131】
<4 画面例>
以下、
図9及び
図10を参照しながら、広告効果測定システム1による広告効果の測定処理の画面例について説明する。
【0132】
図9は、HMD30に表示する仮想空間VRの画面例を示す図である。
図9の画面例は、HMD30の表示画面に、広告オブジェクトを配置した仮想空間が表示された状態の画面例を示す。
図8のステップS221に相当する。
【0133】
図9に示すように、HMD30の表示画面には、広告を掲示する候補となる地域の仮想空間VRが表示されている。この仮想空間VRには、広告を掲示する候補となる地域の建物Bが表示され、この建物Bの壁面や屋上の掲示板に、広告オブジェクトADが配置されて掲示されている。
【0134】
後続処理のステップS222では、被験者が仮想空間VR内で行動するので、HMD30のアイトラッキングセンサ等により、被験者の視線が測定され、被験者が広告オブジェクトADを注視したか否かが判定される。
【0135】
図10は、端末装置10に表示する広告効果の測定結果の画面例を示す図である。
図10の画面例は、広告効果の測定結果であるリーチ数の推定値及び算出した広告の掲示単価が表示された状態の画面例を示す。
図7のステップS115に相当する。
【0136】
図10に示すように、端末装置10のディスプレイ132には、地域データベース2021に格納されている通行人流量(OTC)の表示欄1032aと、広告効果の測定結果である広告オブジェクトのリーチ数(VAC)(通行人の数、つまりユニークユーザー単位)の表示欄1032bと、広告の掲示単価の表示欄1032cと、広告の所定のインプレッション数(広告が通行人によって注視された総回数、つまり、各通行人によって複数回閲覧された場合も含めた総回数)当たりの広告単価であるCPM(Cost Per Miles)の表示欄1032dが表示されている。このような表示欄1032a~1032dの値により、測定を行った場所への広告の出稿を判断することが容易になる。
【0137】
<小括>
以上のように、本実施形態によると、広告掲示を希望する地域(場所)及び物件が入力され、掲示を希望する広告の情報が入力されると、当該地域の仮想空間が生成され、広告の情報に対応する広告オブジェクトが生成されて仮想空間に配置される。広告オブジェクトのリーチ数の推定処理が行われ、リーチ数の推定値が算出されて広告の効果の測定、例えば記憶への残りやすさ、すなわち広告のインパクトを測定し、実際に当該広告を見た者へのインパクトの推定が行われる。また、広告の掲示単価が算出される。そのため、より精度の高いリーチ数の推定による広告効果の測定が可能であり、このリーチ数の推定値による広告の掲示単価の算出が可能である。これにより、広告掲示を希望する地域及び物件への広告の出稿を判断することが容易になる。
【0138】
また、広告効果の測定を行うための被験者に対して、広告オブジェクトを配置した仮想空間が表示され、被験者が仮想空間内で行動する。被験者の視線の動きが測定され、仮想空間内の広告オブジェクトが注視されたか否かが判定される。これにより、通行人として想定される被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを把握することが可能であるため、実際の通行人が広告を注視するか否かを推定することが可能である。
【0139】
さらに、被験者の属性情報を記憶し、被験者の属性と同一または近似する属性の通行人について、リーチ数の推定が行われる。これにより、より精度の高いリーチ数の推定が可能である。
【0140】
<第2の実施の形態>
以下、広告効果測定システム1の他の実施の形態について説明する。
【0141】
<1 広告効果測定システム1の全体構成>
図11は、実施の形態2の広告効果測定システム1を構成するサーバ20の機能的な構成を示す図である。第2の実施の形態における広告効果測定システム1の全体の構成、端末装置10の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、繰り返して説明しない。サーバ20の構成については、
図11に示すように、新たに広告レコメンドモジュール2038の機能を備える以外、第1の実施の形態と同様である。以下、第2の実施の形態における広告レコメンドモジュール2038の機能について説明する。
【0142】
広告レコメンドモジュール2038は、リーチ数推定モジュール2037によるリーチ数の推定(広告の効果の測定)結果に基づき、広告の掲示態様の最適化を行い、最適化された広告の掲示態様をレコメンドする処理を制御する。例えば、リーチ数の推定値が想定以下であった場合、広告の出稿を判断するとともに、広告の掲示態様について再検討することも考えられる。具体的には、広告を掲示しようとする場所の周囲の状況との関係で、掲示した広告が埋没してしまい、目立たないことが考えられる。このような場合、広告の掲示態様を改善することにより、リーチ数が改善する可能性があるといえる。広告レコメンドモジュール2038は、このような広告の掲示態様について最適化を行い、レコメンドする。
【0143】
具体的には、広告レコメンドモジュール2038は、配置されている広告オブジェクトの仮想空間における掲示位置、大きさ、色、発光の強さのうちの1つまたは複数に基づいて注視モデルを生成し、この注視モデルに基づいて広告の掲示態様の最適化を行い、最適化された広告の掲示態様をレコメンドしてもよい。例えば、この注視モデルを、実施の形態1で示したように、当該広告オブジェクトの仮想空間における掲示位置(地上からの高さ、水平方向の位置)、表示方向、大きさ、色、発光の強さのうちの1つまたは複数に基づいて統計学的推論を行って生成された推論モデルにより、広告オブジェクトの掲示位置、大きさ、色、発光の強さ等をパラメータとしてリーチ数を推定することを可能に構成し、これらのパラメータを変更することで改善されたリーチ数を提示してもよい。また、この注視モデルは、機械学習、ディープラーニング等による学習済みモデルで構成してもよい。このとき、広告の掲示位置、大きさ、色、発光の強さのうちの1つまたは複数について変更することで最適化を行ってレコメンドしてもよい。例えば、注視モデルにより、目標とする広告効果(リーチ数)をインプットデータとして、広告の表示態様、例えば広告の掲示位置、大きさ、色、発光の強さのうちの1つまたは複数をアウトプットデータとしてもよい。具体的には、目標とする広告効果(リーチ数)をインプットすると、注視モデルにより、その広告効果に応じた広告の掲示位置の変更パターン、大きさの変更パターン等を1または複数レコメンドしてもよい。さらに、単位時間当たりの広告の掲示単価をインプットデータとしてもよい。
【0144】
<2 データ構造>
第2の実施の形態におけるデータ構造は、第1の実施の形態と同様であるので、繰り返して説明しない。
【0145】
<3 動作>
第2の実施の形態における動作は、第1の実施の形態と同様であるので、繰り返して説明しない。
【0146】
<小括>
以上のように、本実施形態によると、リーチ数の推定結果に基づき、広告の掲示態様の最適化を行い、最適化された広告の掲示態様をレコメンドする。これにより、リーチ数がより見込めるように最適化された広告を掲示することが可能になる。
【0147】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【0148】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0149】
(付記1)プロセッサ29と、メモリ25とを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、メモリ25は、広告効果を測定する場所の情報(2021)を記憶し、プログラムは、プロセッサ29に、場所を模した仮想空間VRを表示するステップ(S121)と、ユーザから広告の情報を受け付け、仮想空間VRに、広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置するステップ(S122)と、測定を行うための被験者に対して仮想空間VRを表示し(S221)、被験者が仮想空間VR内で行動しているときの視線の動きを測定するステップ(S222)と、視線の動きの測定結果に基づき、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを判定し(S223)、判定結果に基づき広告の効果を測定するステップ(S123)と、を実行させる、プログラム。
【0150】
(付記2)測定を行うための被験者に対して仮想空間VRを表示するとき、仮想空間VRの条件の指定を受け付け、条件に基づき、仮想空間VR及び広告オブジェクトの表示態様を調整する、(付記1)に記載のプログラム。
【0151】
(付記3)仮想空間VRの条件は、仮想空間VRの季節、時間帯、天候のうちの1つまたは複数である、(付記2)に記載のプログラム。
【0152】
(付記4)場所の情報及び仮想空間VRの条件に基づき、仮想空間VRにおける通行人を模した通行人オブジェクトの配置を調整する、(付記2)または(付記3)に記載のプログラム。
【0153】
(付記5)プログラムは、さらに、広告の効果の測定結果に基づき、広告の掲示態様の最適化を行い、最適化された広告の掲示態様をレコメンドするステップを実行させる、(付記1)から(付記4)のいずれかに記載のプログラム。
【0154】
(付記6)広告の掲示位置、掲示位置における人流量、音量、気候、季節、時間帯、広告の大きさ、色、発光の強さのうちの1つまたは複数を変更することで最適化する、(付記5)に記載のプログラム。
【0155】
(付記7)プログラムは、さらに、広告の効果の測定結果に基づき、広告の掲示単価を算出するステップ(S124)を実行させる、(付記1)から(付記6)のいずれかに記載のプログラム。
【0156】
(付記8)視線の動きの測定結果に基づき、被験者の視界の中に広告オブジェクトが入っているが被験者が注視していない場合と、被験者が注視した場合とを区別して、広告の効果を測定する、(付記1)から(付記7)のいずれかに記載のプログラム。
【0157】
(付記9)場所の情報に含まれる通行人の情報と、視線の動きの測定結果に基づく注視モデルとから、広告の効果を測定する、(付記1)から(付記8)のいずれかに記載のプログラム。
【0158】
(付記10)被験者の属性と、通行人のうち被験者の属性と同一または近似の属性の通行人の割合とに基づき、広告の効果を測定する、(付記9)に記載のプログラム。
【0159】
(付記11)配置された広告オブジェクトの地上からの高さ、及び大きさを変数とする注視モデルに基づき、広告の効果を測定する、(付記9)または(付記10)に記載のプログラム。
【0160】
(付記12)広告オブジェクトの状態、仮想空間VRにおける通行人を模した通行人オブジェクトの状態、仮想空間VRにおける信号機の状態、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かに基づく学習モデルにより、広告の効果を測定する、(付記9)または(付記10)に記載のプログラム。
【0161】
(付記13)被験者の視線の動きを測定し、被験者が広告オブジェクトを視認した回数、時間のいずれかまたは両方を測定する、(付記1)から(付記12)のいずれかに記載のプログラム。
【0162】
(付記14)被験者が装着したヘッドマウントディスプレイに設けられているセンサにより、被験者の視線の動きを測定する、(付記1)から(付記13)のいずれかに記載のプログラム。
【0163】
(付記15)制御部と、記憶部とを備える情報処理装置であって、記憶部は、広告効果を測定する場所の情報(2021)を記憶し、制御部は、場所を模した仮想空間VRを表示する(2033)ステップと、ユーザから広告の情報を受け付け、仮想空間VRに、広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置する(2034)ステップと、測定を行うための被験者に対して仮想空間VRを表示し(2035)、被験者が仮想空間VR内で行動しているときの視線の動きを測定する(2036)ステップと、視線の動きの測定結果に基づき、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを判定し、判定結果に基づき広告の効果を測定する(2037)ステップと、を行う、情報処理装置。
【0164】
(付記16)プロセッサ29と、メモリ25とを備えるコンピュータにより実行されるための方法であって、メモリ25は、広告効果を測定する場所の情報(2021)を記憶し、方法は、プロセッサ29が、場所を模した仮想空間VRを表示するステップ(S121)と、ユーザから広告の情報を受け付け、仮想空間VRに、広告の情報に対応する広告オブジェクトを配置するステップ(S122)と、測定を行うための被験者に対して仮想空間VRを表示し(S221)、被験者が仮想空間VR内で行動しているときの視線の動きを測定するステップ(S222)と、視線の動きの測定結果に基づき、被験者が広告オブジェクトを注視したか否かを判定し(S223)、判定結果に基づき広告の効果を測定するステップ(S123)と、を実行する、方法。
【符号の説明】
【0165】
10 端末装置、20 サーバ、80 ネットワーク、130 操作受付部、161 ユーザ情報、22 通信IF、23 入出力IF、25 メモリ、26 ストレージ、29 プロセッサ、201 通信部、202 記憶部、2021 地域データベース、2022 広告掲示箇所データベース、2023 広告データベース、2024 被験者データベース、203 制御部、301 通信部、302 記憶部、303 制御部