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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010118
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ファインバブル発生方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/40 20220101AFI20220106BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20220106BHJP
【FI】
B01F5/06
B01F3/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181498
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2019137478の分割
【原出願日】2019-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】308041934
【氏名又は名称】株式会社シバタ
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】柴田 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】花村 厚次
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB04
4G035AC26
(57)【要約】
【課題】筒状部材のオリフィスに柱状部を突出させた構造のファインバブル発生装置では、柱状部の存在は流体の流れを阻害するので、ファインバブルを発生させる流体の流量が制限される。また、柱状部間に異物が挟まることもある。柱状部を製造するのに手間がかかる。更には、柱状部が片持ち梁の状態で支持されているときは機械的剛性を確保しがたく、耐久性の確保が困難となる。
【解決手段】筒状本体の入口から径を漸減させる入口部と、該入口部に連続するオリフィスと、該オリフィスに連続する拡径部とが順次形成されるファインバルブ発生装置であって、オリフィスと前記拡径部との境界が半径方向立面とされるファインバブル発生装置を提案する。このファインバブル発生装置の入口部へ加圧した水道水を導入すれば、そのままの水道水で、即ち、予め当該水道水へ気体を強制的に溶解させていなくても、ナノオーダのファインバブルを発生させることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状本体の入口から径を漸減させる入口部と、該入口部に連続するオリフィスと、該オリフィスに連続する拡径部とが順次形成されるファインバブル発生装置であって、
前記オリフィスの出口周壁は半径方向立面とされ、
前記拡径部は、前記オリフィスの中心線の延長先にある出口のみで開放されるファインバブル発生装置であって、
前記拡径部の径は前記オリフィスの径の3~10倍である、ファインバブル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファインバブル発生装置及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファインバブルを形成する一つの手法としてキャビテーション効果の利用がある。特許文献1、特許文献2には、管状の本体部のオリフィス内へ柱状部を突出させ、このオリフィスを通過する水流にナノオーダのファインバブルを発生させるファインバブル発生装置が開示されている。
このファインバブル発生装置へ水道水を導入すると、相対向する柱の間に形成された絞り部にて水流が絞られてその流速が増加する。その結果、ベルヌーイの原理に従い絞り部(及びその下流側)に負圧域が形成され、そのキャビテーション(減圧)効果により水中の溶存気体が析出してファインバブルが発生する。
なお、マイクロオーダのファインバブルであれば、筒状部材に単に小径部分(オリフィス)を設ければよい(特許文献3)。即ち、筒状部材の入口側端部から中心部にいくにしたがって内径が徐々に狭まる入口部と、この入口部に接続するオリフィスと、このオリフィスに接続し筒状部材の出口側他端に向け内径が徐々に広がる拡径部とを備える装置でマイクロオーダのファインバブルを形成できる。
その他、特許文献4~11を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5712292号公報
【特許文献2】特許第6279179号公報
【特許文献3】特許第6369879号公報
【特許文献4】特開2018-51561号公報
【特許文献5】韓国公開特許第10-2018-0114665号公報
【特許文献6】国際公開2018/02070号公報
【特許文献7】特開2008-296096号公報
【特許文献8】特開2013-146714号公報
【特許文献9】特開2008-161826号公報
【特許文献10】特開2011-83772号公報
【特許文献11】特開2008-290050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノオーダのファインバブルを発生するためには、筒状部材のオリフィスに柱状部を突出させていた。
かかる柱状部の存在は流体の流れを阻害するので、ファインバブルを発生させる流体の流量が制限される。また、柱状部間に異物が挟まることもある。
また、柱状部を製造するのに手間がかかる。更には、柱状部が片持ち梁の状態で支持されているときは機械的剛性を確保しがたく、耐久性の確保が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を達成すべきなされたものであり、次のように規定される。即ち、
オリフィスを有する筒状のファインバブル発生装置であって、
オリフィスの出口の周壁に凹部が形成される、ファインバブル発生装置。
【0006】
ここにオリフィスとは筒状部材において縮径されてかつ所定の長さを有する部分を指す。
換言すれば、筒状部材においてオリフィスの入り口側と出口側にはそれぞれオリフィスより大径な入口部と出口部(拡径部)が連続されている。
オリフィスは、流れを安定させるために同一径の平坦な内周面を備えることが好ましい。オリフィスの径は求める圧縮比(流体に対する)と流体の処理量との関係で任意に設計できる。キャビティ効果を発揮させるためには、オリフィス出口の径とそれに続く拡径部の径との差の調整が重要になる。
【0007】
オリフィスの長さはオリフィスを流れる流体が安定すれば、即ち、その軸方向へ流れが揃えられれば、任意に設計できる。
勿論、オリフィスの径は軸方向に均一であることに限定されるわけでない。オリフィスにおいても径を順次変化させることができるし、その内周面にスパイラル溝を形成することもできる。
【0008】
オリフィスへ続く入口部はオリフィスへ向かって順次縮径することが好ましい。流体を円滑にオリフィスへ導入するためである。これにより、高い流速を確保しつつ、流体を十分に圧縮することができる。
縮径の度合い(軸方向に対する傾斜角度)は流体の種類、流速、求める圧縮率に応じて任意に選択できる。
入口部の内周面は平坦面とすることが好ましいが、その内部へスパイラル溝等を設けることができる。
【0009】
オリフィス出口に続く拡径部はオリフィス出口の径より拡径している。これにより、オリフィスで圧縮された流体が当該拡径部へ吐出されたときに開放されて負圧になり、キャビティ効果が発揮される。
オリフィスの出口の径と拡径部の最大径の差(比)は、求めるファインバブルの平均粒径や粒子数等に応じて任意に設計される。
【0010】
オリフィスで圧縮された流体を拡径部で解放して負圧にすることにより、マイクロオーダのファインバブルが形成されることは広く知られている(特許文献3参照)。
この発明では、オリフィスの出口の周壁に凹部を設けることで、オリフィスに何ら柱部を設けることなく、形成されるファインバブルをナノオーダ―にできる。
柱部を省略できることにより、オリフィス内の抵抗が小さくなるので処理できる流体の量が増加する。また、構造が簡素化されるので製造が容易になりかつ耐久性及びメンテナンス性が向上する。
【0011】
この凹部は、オリフィスの出口の周壁において、オリフィスの中心をその中心として、周方向にかつ半径方向に均等に分配されることが好ましい。ファインバブルを安定して形成するためである。
オリフィスの出口の周壁はオリフィスの軸に対して垂直方向に形成され、そこに形成される凹部の深さ方向はオリフィスの軸と同じ方向とすることが好ましい。この凹部は周壁に開口する部分からその深さ方向には同じ径とするか、若しくは深さ方向に向けて縮径させる。凹部内で流体が滞留しないようにするためである。また、成形性(型抜きの容易性)の観点からも、凹部を上記のように形成することが好ましい。
【0012】
凹部の形状は任意である。例えば、凹部が深くなるにつれて、オリフィスから離れていくように、若しくは近づくように凹部を穿設することもできる。
オリフィスの出口周縁から凹部の周縁までの距離(両者のギャップ)はより近い方が好ましい。ただし、あまり近づけると出口周縁の壁厚が薄くなりすぎて機械的強度を確保できなくなる。本発明者らの検討によれば、装置を樹脂製としたとき、両者の距離は0.1mm以上とする。
オリフィスの出口周縁と凹部の周縁とを近づける観点からも、オリフィスの出口の周壁はオリフィスの中心軸に対して垂直方向とすることが好ましい。
【0013】
本発明者らの検討により、凹部内には大きな負圧が発生することがわかった。シミュレーションの結果であるが、拡径部の中心に比べて1/10~1/100の負圧が発生している。そして、水流との相互作用により、凹部内の負圧は周期的に変化している。
凹部内の負圧が大きくなれば、そこにより大きなキャビティ効果が生じる。また、負圧の周期的な変化は流体に超音波を印加することと同じ効果を生じると考えられる。
凹部の存在により、ファインバブルがナノオーダ化するのは、凹部内の大きな負圧とその周期的な変化の相互作用と考えられる。
これら負圧の値やその変化の周波数を制御することで流体に生じるファインバブルの平均粒径や粒径分布を制御できると考えられる。
【0014】
凹部内の負圧の値とその周波数を制御するパラメータとして次のものを挙げられる。
オリフィスの出口径と拡径部の径との比
凹部のアスペクト比(開口部の面積と深さの比)
オリフィスの出口から吐出される流体の速度及びその粘度
オリフィスの周壁に占める凹部の面積比
オリフィスの出口周縁と凹部周縁の距離
オリフィスの出口面積と凹部の面積の比、等
【0015】
オリフィスは入り口から送られてきた水流を絞り込んで圧縮し、その流速を早める形状であれば特に限定されないが、水流に対する抵抗を最少化する見地から、横断面円形の空間を備えるものとすることが好ましい。
オリフィスの径は処理する水量等に応じて任意に選択できる。
かかる流速を得るには、流体の流量、圧力及びオリフィス内周面のテクスチャー(材質、表面粗さ)を調整する。流速を安定化するため、同一径の部分(直管部分)を備えることが好ましい。直管部分の長さはオリフィスの出口径の長さの0.5~2.0倍、より好ましくは1.0~1.5倍とすることが好ましい。
【0016】
オリフィスの下流側には、大径部が形成され、オリフィスを通過した水はこの大径部へ放出される。これにより、オリフィスで圧縮されていた水流は解放されてその圧力が低下する。かかる減圧の結果であるキャビティ効果によって、気泡が形成されることとなる。
【0017】
オリフィスの出口に続く拡径部はその断面が好ましくは円形でありその中心部がオリフィスの中心と一致する。これにより、オリフィスの出口から吐出した流体が均等に拡散して減圧される。よって、ファインバブルが均等に形成される。
この発明では、オリフィスの出口の周壁はオリフィスの軸に対して垂直であり、その結果、拡径部はオリフィス出口周縁から均一の径を備えた、円筒状となる。
オリフィスの出口の周壁を垂直壁とすることにより、オリフィスの出口から吐出された流体を効率よく負圧化できる。また、凹部をオリフィス出口に近接させられて、より大きな負圧と好適な負圧の周期を得られると考えられる。
拡径部の内周面の形状は任意に設計でき、例えば、オリフィスの出口に連続する拡径部を出口から離れるに従って順次拡径する逆ロート状とすることも可能である。
【0018】
オリフィス出口周壁に形成される凹部の圧力は、拡径部の中央部の圧力に比べて1/10~1/100とする。圧力の値は直接測定できないので、水流に関するシミュレーションソフト(ソリッドワークス社製Simulation)のシミュレーション結果を採用する。具体的なシミュレーション結果は図4を参照されたい。
このような負圧となった凹部内において流体の密度は低下し、殆ど気体の状態となる。このように気体状態になった凹部内の流体が液体状態の流体に捲込まれていく際に、ファインバブルが形成されると考えられる。そして、拡径部を流れる流体と凹部内の気体化した流体とが干渉して、凹部内の負圧が周期的に変化する。この変化の周波数と凹部内の負圧の大きさとが相俟って、ファインバブルをナノオーダ化できたものと考えられる。
【0019】
拡径部の周壁には、周方向に連続して、若しくは非連続的に第2の凹部を設けることができる。
この第2の凹部においてもファインバブルの発生を促進できる。第2の凹部における負圧は、オリフィスの出口周辺に形成された第1の凹部より大きくかつ拡径部の中心より小さいものとする。
拡径部周壁の第2の凹部により、拡径部を流れる流体が撹拌される。その結果、第1の凹部におけるキャビティ―効果が促進される。
撹拌する見地から、第2の凹部を凸部に取り換えることができる。
【0020】
この発明のファインバブル発生装置によれば、水等の流体を一度オリフィスに通せば、そこにナノオーダのファインバブルを大量に発生させることができる。換言すれば、凹部に大きな負圧が発生しているので、凹部に侵入した流体は凹部内において気相の性質を帯びこととなる。その結果、流体自体の特性に変化が生じことがある。
例えば、計測することはできないが、いわゆる流体のクラスターが破壊されていることが考えられる。換言すれば、クラスターが小さくなるにつれて流体自体の浸透性が大きくなる。また、この発明で得られたナノバブル水は表面張力が通常の水と同じである。他方、機械的な撹拌や外部から圧力をかけて水に供給された空気の泡を微細化する方式のナノバブル水はその表面張力が小さくなって、相手物質にぬれやすくなる。
【0021】
このように、本発明のファインバブル発生装置で製造されたファインバブル水はその水自体が新規な特性を有する。よって、この発明の他の局面では、既述の方法で得たファインバブル水から、ファインバブルを除去する。ファインバブルが存在しなくても、この発明のファインバブル発生装置で処理された水は新規な特性を有する。ファインバブルを除去するには、ナノオーダのファインバブルがマイクローダに成長するように超音波を印加し、その後マイクロオーダ化されたファインバブルが自然消滅するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1はこの発明の実施の形態のファインバブル発生装置の断面図である。
図2図2は同じく出口側からみた正面図である。
図3図3図1の装置の測定結果を示すチャートである。
図4図4は同じくシミュレーション結果を示す。
図5図5は他の実施の形態のファインバブル発生装置の断面図である。
図6図6図5の装置の測定結果を示すチャートである。
図7図7は他の実施の形態のファインバブル発生装置の断面図である。
図8図8図7の装置の測定結果を示すチャートである。
図9図9は他の実施の形態のファインバブル発生装置の断面図である。
図10図10図9の装置の測定結果を示すチャートである。
図11図11は、図3,6,9,10図の結果を同じスケールでまとめたチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1はこの発明の実施例のファイバブル発生装置1の構造を示す断面図である。
このファインバブル発生装置(以下、単に「発生装置」ということがある)1は筒状筐体3に、入口部10、オリフィス15、拡径部20及び凹部40を備える。
筒状筐体3は3つのピース4、5及び6から構成され、第1のピース4の一端側(図で左側)に嵌合穴7が穿設されており、この嵌合穴7は平坦な底(オリフィス15の開口部の周壁8)を備える。この嵌合穴7へ第2及び第3のピース5、6が隙間無く貫入されている。
【0024】
第1のピース4の他端(図で右側)には円錐状に穿設された入口部10が形成され、オリフィス15に連結している。オリフィス15は同一半径の貫通孔であり、嵌合穴7に開口する。オリフィス15及び入口部10はそれらの中心線を第1のピース4の中心線と一致させている。
第1のピース4において嵌合穴7の底、即ちオリフィス15の出口の周壁8には第1の凹部40が形成されている。
【0025】
この第1の凹部40は、図2に示す通り、周壁8において、オリフィス15の出口の中心を中心として、周方向に90度の間隔をあけて放射状に開口している。
この例では、凹部40の開口部は角を丸くした長方形状(小判形状)とした。そしてこの開口部の形状を維持した状態でオリフィス15と平行に穿設されている。
【0026】
第2のピース5は嵌合穴7へ嵌め合いになる円盤状の部材であり、オリフィス15に連続する第1の拡径部21が形成される。この第1の拡径部21は第2のピース5の中心部を過ぎたあたりからその径を順次拡張して第2の凹部23を形成する。
この例では、第2の凹部23を第2のピース5の内周面の周方向へ連続して形成したが、これを断続的とすることもできる。
【0027】
第2のピース5に重ねて、円盤状の第3のピース6を嵌合穴7へ嵌め込む。この第3のピース7には第2の拡径部25が形成されており、第2のピース5の第1の拡径部21と合わさって、ファインバブル発生装置1としての拡径部20を構成する。
この例では、第1の拡径部21と第2の拡径部25とを同径としたが、第2の拡径部25の径を第1の拡径部21のそれより大きくしてもよい。
【0028】
筒状筐体3を構成する3つのピース4、5及び6はいずれも合成樹脂で形成可能である。勿論、金属やセラミックスで形成することもできる。
上記において、第1の凹部40は全て第1の拡径部21に表出している。
第1の凹部40を、周壁8からみて、半径方向へ拡張し、第2のピース5を嵌め合わせたとき、その一部が第2のピース5で被覆されるようにしてもよい。
第1の凹部40は、オリフィス15の出口の中心を中心として放射状に形成されることが好ましく、図2に示す4方向に限られず、例えば3~12方向の範囲で任意に形成できる。オリフィス15の出口の中心からみたときの、各第1の凹部40は周方向にかつ半径方向に均等に分配されているものとすることが好ましい。
【0029】
実施例のファインバブル発生装置として、下記仕様のものを準備した。筒状筐体3はABS樹脂製である。
筒状筐体3:径12.0mm、長さ:10mm
入口部の開口径:8.0mm
入口部の傾斜面の開口角度:90度
オリフィス15の径:0.9mm
オリフィス15の長さ:1.0mm
第1の凹部40の縦幅:0.7mm
第1の凹部40の横幅:0.4mm
第1の凹部40の深さ:0.5mm
オリフィス15と第1の凹部40との距離:0.1mm
拡径部21、25の径:0.3mm
第2の凹部23の傾斜角度:90度
第2の凹部23の幅:0.75mm
嵌合孔7:直径10mm、深さ4.0mm
第3、第4ピースの厚さ:各2.0mm
【0030】
このように構成されたファインバブル発生装置の入口側へ2.0MPsの圧力で水道水を導入し、拡径部20側から排出された水を採取し、そこに含まれるファインバブルの粒径分布を島津製作所のSALD-7500Hを用いて計測した。
結果を図3に示す。
平均粒径は93nmであり、1ml当たりのナノオーダのファインバブルは3億7000万個を超えている。マイクロオーダのファインバブルは殆ど存在しなかった。
この例の水流のシミュレーションを図4に示す。図4において、流速は矢印の濃淡で示してある。矢印の色が薄いほど、流速は速くなっている。
また、拡径部内の圧力は31.7kPaであるのに対し、第1の凹部の圧力は2.1kPaであり、第2の凹部の圧力は2.9kPaであった。
【0031】
次に、上記仕様において第2の凹部を省略したもの(図5参照)について同様の試験を行った。
結果を図6に示す。
平均粒径は109nmであり、1ml当たりのナノオーダのファインバブルは約1億3000万個であった。
【0032】
次に、上記仕様において第1の凹部を省略したもの(図7参照)について同様の試験を行った。
結果を図8に示す。
平均粒径は136nmであり、1ml当たりのナノオーダのファインバブルは約7700万個であった。
【0033】
次に、上記仕様において第1の凹部を省略したもの(図9参照)について同様の試験を行った。
結果を図10に示す。
平均粒径は158nmであり、1ml当たりのナノオーダのファインバブルは約4800万個であった。
【0034】
上記の結果より、第1の凹部や第2の凹部を省略したものにおいてもナノオーダ―のファインバブルが多数発生している。
図11図3、6、8、10の結果を同じスケールでまとめたものである。
図11の結果から第1の凹部や第2の凹部を設けることで、発生するファインバブルの粒径がより小さくなることがわかる。そして、第1の凹部と第2の凹部とを併存させることで、発生するファインバブルの粒径が格段に小さくなり、その結果、ファンバブルの発生数も格段に多くなることがわかる。
【0035】
以上より、本発明者は次の知見を得た。
筒状本体の入口から径を漸減させる入口部と、該入口部に連続するオリフィスと、該オリフィスに連続する拡径部とが順次形成されるファインバブル発生装置であって、
前記オリフィスと前記拡径部との境界は半径方向立面とされ、
前記拡径部の径は前記オリフィスの径の3~10倍であり、
前記拡径部はその出口のみで解放される、ファインバブル発生装置。
【0036】
上記において、オリフィスと拡径部との境界はオリフィスの出口周壁が該当する。この出口周壁はオリフィスの軸に対して垂直方向であることが好ましいが、垂直から±20度、若しくは±10度の傾きがあってもよい。ここに、オリフィスの出口を中心として、拡径部側を+とし、入口部側を-とする。
出口周壁の傾きが+20度を超えると、キャビティ効果で形成された気泡の撹拌混合が不充分になる。他方、出口周壁の傾きが-20度を超えるとオリフィスから吐出された水流が傾斜した出口周壁側へ引き寄せられるので、充分な流速が確保できず、もって減圧が不充分になる。
【0037】
また、拡径部の径がオリフィスの径の3倍未満になると、減圧が不充分になる。他方、拡径部の径がオリフィスの径の10倍を超えると、オリフィスの出口から吐出された水流が分散されすぎて水流の妨げとなる。よって、充分な流速が確保できず、減圧が不充分になる。
なお、拡径部は図示の通り、均一な内径を持つものとすることが好ましいが、上記の範囲内においてこれを逆ロート状としてもよい。
拡径部はその出口のみで解放されているものとする。換言すれば、拡径部の周壁には何ら外部から空気その他の気体が注入されることはない。拡径部がその出口以外で外部環境と連通すると、拡径部内の減圧環境が乱されるおそれがあり、好ましくない。
【0038】
第2の凹部の形成位置は、オリフィスの出口から吐出された水流を効率よく撹拌できる位置とする。流速、オリフィスと拡径部の径の比、拡径部の形状等によって任意に設計できる。本発明者らの検討によれば、オリフィスの軸方向において、オリフィスの出口から下流側に向けて、拡径部の径の0.5~1.5倍の範囲に形成することが好ましい。
【0039】
以下、次の事項を開示する。
(1)
筒状本体の入口から径を漸減させる入口部と、該入口部に連続するオリフィスと、該オリフィスに連続する拡径部とが順次形成されるファインバブル発生装置であって、
前記オリフィスと拡径部との境界の半径方向立面に、前記オリフィスの中心をその中心として周方向にかつ半径方向に均等に分配された第1の凹部が形成され、
前記拡径部の内周面には、周方向に連続的な若しくは断続的な、第2の凹部又は凸部が形成される、ファインバブル発生装置。
(2)
水流を均等に圧縮する周壁を有する水流圧縮部と、該水流圧縮部の下流側に形成されて、前記水流圧縮部より大径な水流解放部とを備え、前記水流解放部には、前記水流と逆方向に凹んだ第1の凹部が形成され、前記水流圧縮部から前記水流解放部に放出された水流の圧力に比べ、前記第1の凹部内の圧力が小さい、水処理装置。
(3)
前記第1の凹部の圧力は前記水流解放部の中心の圧力の1/10~1/100である、(2)に記載の水処理装置。
(4)
前記水流解放部の内周面には半径周方向に第2の凹部が形成され、該第2の凹部内の圧力は前記第1の凹部内の圧力より大きく、かつ前記水流解放部の中心の圧力より小さい、(2)に記載の水処理装置。
(5)
前記水流解放部の内周面には周方向に連続した若しくは断続的な凹部。又は周方向に連続した若しくは断続的な凸部が形成されて、前記水流圧縮部から放出された水流を撹拌する、(2)に記載の水処理装置。
(6)
前記水流解放部から放出された水流からファインバブルを除去する装置が更に備えられる、請求項(2)~(5)の何れかに記載の水処理装置。
【0040】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0041】
次の事項を開示する。
(請求項1)
筒状本体の入口から径を漸減させる入口部と、該入口部に連続するオリフィスと、該オリフィスに連続する拡径部とが順次形成されるファインバブル発生装置であって、
前記オリフィスの出口周壁は半径方向立面とされ、
前記拡径部は、前記オリフィスの中心線の延長先にある出口のみで開放され、
前記出口周壁に凹部が形成される、
ファインバブル発生装置。
(請求項2)
前記出口周壁は、前記オリフィスの軸に対して垂直方向(±20度)に形成される、請求項1に記載のファインバブル発生装置。
(請求項3)
前記拡径部の内周面には、周方向に連続的な若しくは断続的な第2の凹部又は凸部が形成される、請求項1又は2のいずれかに記載のファインバブル発生装置。
(請求項4)
前記凹部は前記オリフィスの出口の周壁において、前記オリフィスの中心をその中心として、周方向にかつ半径方向に均等分配されている、請求項1~3のいずれかに記載のファインバブル発生装置。
(請求項5)
前記拡径部の径は前記オリフィスの径の3~10倍である、請求項1~4のいずれかに記載のファインバブル発生装置。
(請求項6)
請求項1~5のいずれかに記載のファインバブル発生装置と該ファインバブル発生装置に水を供給する水供給部とを備えてなる、水処理装置。
(請求項7)
前記水処理装置で発生した前記ファインバブルを除去するファインバブル除去器が更に備えられる請求項6に記載の水処理装置。
(請求項8)
請求項1~5のいずれかに記載のファインバブル発生装置を準備するステップと、
前記入口部へ水を供給するステップと、からなる水処理方法。
(請求項9)
前記オリフィスの出口側から排出された水に含まれるファインバブルを除去する、請求項8に記載の水処理方法。
(請求項10)
水を準備するステップと、
該水を請求項1~5のいずれかに記載のファインバブル発生装置で処理するステップと、を備えてなるファインバブル水の製造方法。
(請求項11)
請求項10で製造されたファインバブル水を準備するステップと、
前記ファインバブル水から一部又は全部のファインバブルを除去するステップと、を備えてなる水の製造方法。
【符号の説明】
【0042】
1、101、201、301 ファインバブル発生装置
8 オリフィス出口の周壁
10 入口部
15 オリフィス
20 拡径部
23 第2の凹部
40 第1の凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状本体の入口から径を漸減させる入口部と、該入口部に連続するオリフィスと、該オリフィスに連続する拡径部とが順次形成されるファインバブル発生装置であって、
前記オリフィスの出口周壁は半径方向立面とされ、
前記拡径部は、前記オリフィスの中心線の延長先にある出口のみで開放されるファインバブル発生装置を用いるファインバブル発生方法であって、
気体が加圧溶解されていない水を前記入口部へ導入し、ナノオーダのファインバブルを発生させるファインバブル発生方法。
【請求項2】
前記気体を溶解させない水は、加圧された水道水である、請求項1に記載の発生方法。