(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101189
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】柔軟紙の製造方法、及び紙用柔軟剤
(51)【国際特許分類】
D21H 17/10 20060101AFI20220629BHJP
D21H 21/22 20060101ALI20220629BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
D21H17/10
D21H21/22
A47K10/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215623
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 多加志
(72)【発明者】
【氏名】山田 理生
【テーマコード(参考)】
2D135
4L055
【Fターム(参考)】
2D135AA07
2D135AB01
2D135AD01
2D135BA02
2D135BA08
2D135DA29
4L055AG06
4L055AG32
4L055AG34
4L055AG35
4L055AH29
4L055AH50
4L055FA11
4L055FA16
4L055GA29
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】良好な柔軟性を有する紙を、予め柔軟剤を配合したパルプスラリーを抄紙することによって製造する方法を提供すること。
【解決手段】レシチンを含む柔軟剤とパルプとを含有するパルプスラリーを抄紙することを特徴とする柔軟紙の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシチンを含む柔軟剤とパルプとを含有するパルプスラリーを抄紙することを特徴とする柔軟紙の製造方法。
【請求項2】
前記柔軟剤が、下記式(1-1)~(1-2):
【化1】
〔前記式(1-1)中、R
11は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
12は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は-(AO)
m14-Hを表し、R
13は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n11は0~3の整数であり、前記(1-2)中、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、-CH
3、-(AO)
m15-H、-(AO)
m16-C(=O)-R
16、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
16は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、前記式(1-1)及び(1-2)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m11~m16はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される第三級アミン及び下記式(2-1)~(2-3):
【化2】
〔前記式(2-1)中、R
21は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
22は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
23は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
24は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基を表し、前記式(2-2)中、R
25は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
26は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基、-(AO)
m23-H、又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
27は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)
m24-Hを表し、m21、m23及びm24はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-3)中、R
28は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)
m25-Hを表し、R
29は及びR
30はそれぞれ独立に、-CH
3、-(AO)
m26-H、-(AO)
m27-C(=O)-R
31、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
31は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、m22及びm25~m27はそれぞれ独立に1~20の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-2)及び前記式(2-3)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、前記式(2-1)~(2-3)中、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。〕
で表される第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミン系添加成分を更に含むものであることを特徴とする請求項1に記載の柔軟紙の製造方法。
【請求項3】
前記柔軟剤が、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、及びジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンスルホン共重合体、ポリアミンポリアミド、ポリアミン-エピクロルヒドリン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミンを更に含むものであることを特徴とする請求項2に記載の柔軟紙の製造方法。
【請求項4】
レシチンと、
下記式(1-1)~(1-2):
【化3】
〔前記式(1-1)中、R
11は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
12は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は-(AO)
m14-Hを表し、R
13は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n11は0~3の整数であり、前記(1-2)中、R
14及びR
15はそれぞれ独立に、-CH
3、-(AO)
m15-H、-(AO)
m16-C(=O)-R
16、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
16は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、前記式(1-1)及び(1-2)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m11~m16はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される第三級アミン及び下記式(2-1)~(2-3):
【化4】
〔前記式(2-1)中、R
21は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
22は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
23は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
24は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基を表し、前記式(2-2)中、R
25は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
26は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基、-(AO)
m23-H、又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
27は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)
m24-Hを表し、m21、m23及びm24はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-3)中、R
28は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)
m25-Hを表し、R
29は及びR
30はそれぞれ独立に、-CH
3、-(AO)
m26-H、-(AO)
m27-C(=O)-R
31、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R
31は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、m22及びm25~m27はそれぞれ独立に1~20の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-2)及び前記式(2-3)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、前記式(2-1)~(2-3)中、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。〕
で表される第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミン系添加成分と
を含むことを特徴とする紙用柔軟剤。
【請求項5】
ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、及びジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンスルホン共重合体、ポリアミンポリアミド、ポリアミン-エピクロルヒドリン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミンを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の紙用柔軟剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟紙の製造方法、及び紙用柔軟剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、キッチンペーパー等の家庭用紙においては、その用途に応じて適度な柔軟性が要求されており、また、雑誌や書籍等の印刷用紙においても、その用途における柔軟性、すなわち、雑誌や書籍等を開いたときに自然に閉じることがなく、開いた状態を十分に保持できる程度のしなやかさが要求されている。
【0003】
このような柔軟性を有する紙を製造する方法としては、製造工程の観点から、柔軟剤を含まないパルプスラリーを抄紙して製造される紙に、柔軟剤を塗布や含浸、噴霧等により付着させる方法(以下、「外添法」ともいう)と、予め柔軟剤を添加したパルプスラリーを抄紙する方法(以下、「内添法」ともいう)とに大別される。
【0004】
外添法により製造した紙においては、風合いが向上し、保湿性(しっとり感)が付与されるという特徴があるものの、紙の物理的な柔軟性はあまり向上しないという問題があった。これに対して、内添法により製造した紙においては、柔軟剤がセルロース分子間の水素結合を阻害するため、物理的に柔軟性が発現するという特徴がある。
【0005】
このような内添法に用いられる従来の柔軟剤としては、アミド化合物と第四級アンモニウム化合物とを含有するもの(特開2004-308095号公報(特許文献1))や、高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物の高級脂肪酸エステルからなるもの(特開2002-275792号公報(特許文献2))、非イオン性界面活性剤と第四級アンモニウム化合物とを含有するもの(特開2004-044058号公報(特許文献3))等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-308095号公報
【特許文献2】特開2002-275792号公報
【特許文献3】特開2004-044058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の柔軟剤を用いて内添法により製造された紙においては、柔軟性が必ずしも十分なものではなかった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、良好な柔軟性を有する紙を得ることが可能な紙用柔軟剤、並びに、良好な柔軟性を有する紙を、予め柔軟剤を配合したパルプスラリーを抄紙することによって製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、レシチンを含む柔軟剤を予め配合したパルプスラリーを抄紙することによって、良好な柔軟性を有する紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の柔軟紙の製造方法は、レシチンを含む柔軟剤とパルプとを含有するパルプスラリーを抄紙することを特徴とする方法である。
【0011】
本発明の柔軟紙の製造方法においては、前記柔軟剤が、下記式(1-1)~(1-2):
【0012】
【0013】
〔前記式(1-1)中、R11は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R12は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は-(AO)m14-Hを表し、R13は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n11は0~3の整数であり、前記(1-2)中、R14及びR15はそれぞれ独立に、-CH3、-(AO)m15-H、-(AO)m16-C(=O)-R16、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R16は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、前記式(1-1)及び(1-2)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m11~m16はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される第三級アミン及び下記式(2-1)~(2-3):
【0014】
【0015】
〔前記式(2-1)中、R21は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R22は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R23は炭素数1~3のアルキル基を表し、R24は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基を表し、前記式(2-2)中、R25は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R26は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基、-(AO)m23-H、又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R27は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)m24-Hを表し、m21、m23及びm24はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-3)中、R28は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)m25-Hを表し、R29は及びR30はそれぞれ独立に、-CH3、-(AO)m26-H、-(AO)m27-C(=O)-R31、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R31は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、m22及びm25~m27はそれぞれ独立に1~20の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-2)及び前記式(2-3)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、前記式(2-1)~(2-3)中、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。〕
で表される第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミン系添加成分を更に含むものであることが好ましく、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、及びジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンスルホン共重合体、ポリアミンポリアミド、ポリアミン-エピクロルヒドリン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミンを更に含むものであることがより好ましい。
【0016】
また、本発明の柔軟剤は、レシチンと、下記式(1-1)~(1-2):
【0017】
【0018】
〔前記式(1-1)中、R11は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R12は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は-(AO)m14-Hを表し、R13は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n11は0~3の整数であり、前記(1-2)中、R14及びR15はそれぞれ独立に、-CH3、-(AO)m15-H、-(AO)m16-C(=O)-R16、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R16は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、前記式(1-1)及び(1-2)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m11~m16はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよい。〕
で表される第三級アミン及び下記式(2-1)~(2-3):
【0019】
【0020】
〔前記式(2-1)中、R21は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R22は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R23は炭素数1~3のアルキル基を表し、R24は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基を表し、前記式(2-2)中、R25は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R26は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基、-(AO)m23-H、又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R27は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)m24-Hを表し、m21、m23及びm24はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-3)中、R28は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)m25-Hを表し、R29は及びR30はそれぞれ独立に、-CH3、-(AO)m26-H、-(AO)m27-C(=O)-R31、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R31は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、m22及びm25~m27はそれぞれ独立に1~20の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、前記式(2-2)及び前記式(2-3)中、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、前記式(2-1)~(2-3)中、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。〕
で表される第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミン系添加成分とを含むことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の柔軟剤においては、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、及びジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンスルホン共重合体、ポリアミンポリアミド、ポリアミン-エピクロルヒドリン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミンを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、良好な柔軟性を有する紙を、予め柔軟剤を配合したパルプスラリーを抄紙することによって製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
〔柔軟紙の製造方法〕
先ず、本発明の柔軟紙の製造方法について説明する。本発明の柔軟紙の製造方法は、レシチンを含む柔軟剤とパルプとを含有するパルプスラリーを抄紙する方法である。これにより、良好な柔軟性を有する紙を得ることができる。
【0025】
(パルプ)
本発明において、原料のパルプとしては特に制限はなく、従来の柔軟紙の製造に用いられる原料パルプを用いることができ、例えば、広葉樹や針葉樹等から得られる木材パルプ、バガスやケナフ、竹パルプや藁パルプ等の植物繊維、古紙再生パルプ等を用いることができる。これらのパルプは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明に用いられるパルプスラリーにおいて、このようなパルプ(紙料固形分)の濃度としては抄紙可能な濃度であれば特に制限はなく、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0027】
(レシチン)
レシチンとしては、例えば、植物や動物、微生物等の生体から抽出され、必要に応じて精製したものを使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。これらのレシチンの中でも、動物由来のレシチン、植物由来のレシチンが好ましく、動物由来のレシチンとしては、卵黄や乳等由来のレシチンが挙げられ、植物由来のレシチンとしては、大豆、菜種、小麦、米、コーン、綿実、紅花、アマニ、ゴマ、ひまわり種子等が挙げられる。また、本発明においては、これらのレシチンの水素添加物(水素添加レシチン)、酵素分解物(酵素分解レシチン)、分別物(分別レシチン)等を使用することもできる。
【0028】
本発明に用いられるパルプスラリーにおいて、このようなレシチンの配合量としては、パルプ(紙料固形分)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。レシチンの配合量が前記範囲内にあると、レシチンが紙に均一に付着するため、紙に良好な柔軟性が付与され、さらに、良好な風合いも付与される。
【0029】
(アミン系添加成分)
本発明に用いられる柔軟剤には、後述する第三級アミン及び第四級アンモニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミン系添加成分が更に含まれていることが好ましい。これにより、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上する。
【0030】
本発明に用いられる第三級アミンは、下記式(1-1)~(1-2):
【0031】
【0032】
で表されるものである。
【0033】
前記式(1-1)中、R11は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R12は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は-(AO)m14-Hを表し、R13は炭素数2~4のアルキレン基を表し、n11は0~3の整数であり、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m11、m12及びm14はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよい。R11及びR12の前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。R13の前記アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R11の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、10~22が好ましい。また、R12の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、この第三級アミンの水溶性と柔軟性付与とのバランスの観点から、10~22が好ましい。n11としては、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上するという観点から、n11=0又は1が好ましい。
【0034】
このような前記式(1-1)で表される第三級アミンは公知の方法により合成することができる。例えば、前記式(1-1)中、m11、m12、m14=1の第三級アミンは、所定の脂肪族炭化水素基を有する第一級又は第二級の脂肪族アミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。また、前記式(1-1)中、m11、m12、m14>1の第三級アミンは、前記式(1-1)中、m11、m12、m14=1の第三級アミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、アルカリ触媒の存在下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~200℃が好ましく、100~160℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、0.1~40時間が好ましく、0.5~20時間がより好ましい。前記アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。
【0035】
また、前記式(1-2)中、R14及びR15はそれぞれ独立に、-CH3、-(AO)m15-H、-(AO)m16-C(=O)-R16、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R16は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m13、m15及びm16はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよい。R14及びR15の前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。R16の前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。R14及びR15の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、10~22が好ましい。また、R16の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上するという観点から、11~21が好ましい。m13、m15及びm16としては、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上するという観点から、m13、m15、m16=1が好ましい。
【0036】
このような前記式(1-2)で表される第三級アミンは公知の方法により合成することができる。例えば、トリアルカノールアミン又は前記式(1-1)で表される第三級アミン1モルに対して、所定の脂肪族カルボン酸を所定のモル数、エステル化触媒の存在下、常圧下又は減圧下でエステル化反応させることによって合成することができる。エステル化反応の反応温度としては特に制限はないが、70~250℃が好ましく、100~230℃がより好ましい。また、エステル化反応の反応時間としては特に制限はないが、0.5~40時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。前記エステル化触媒としては、三酸化アンチモン、ジブチル錫オキサイド等の有機スズ系重合触媒;ゲルマニウム系触媒;無機チタン系触媒;有機チタン系触媒;有機コバルト系触媒;酢酸亜鉛、酢酸マンガン等のエステル交換触媒等の従来公知の触媒が挙げられる。
【0037】
また、本発明に用いられる第四級アンモニウム化合物は、下記式(2-1)~(2-3):
【0038】
【0039】
で表されるものである。
【0040】
前記式(2-1)中、R21は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R22は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R23は炭素数1~3のアルキル基を表し、R24は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基を表し、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。R21及びR22の前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。R22~R24の前記アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R21及びR22の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、10~22が好ましい。また、R22~R24の前記アルキル基としてはメチル基が好ましい。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0041】
このような前記式(2-1)で表される第四級アンモニウム化合物として、具体的には、塩化アルキル(炭素数12~16)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(炭素数16~18)トリメチルアンモニウム、塩化牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ココイルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジオレイルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0042】
このような前記式(2-1)で表される第四級アンモニウム化合物は公知の方法により合成することができる。例えば、前記式(2-1)中、R24が炭素数1~3のアルキル基の第四級アンモニウム化合物は、所定の脂肪族炭化水素基を有する第三級アミン1モルに対して、アルキル基の炭素数が1~3であるハロゲン化アルキルやジアルキル硫酸エステルなどの第四級化剤1モルを、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。また、市販の前記式(2-1)で表される第四級アンモニウム化合物(例えば、花王株式会社製「コータミンシリーズ」、ライオン株式会社製「リポカードシリーズ」、日油株式会社製「ニッサンカチオンシリーズ」)を使用してもよい。
【0043】
また、前記式(2-1)中、R24がベンジル基の第四級アンモニウム化合物は、所定の脂肪族炭化水素基を有する第三級アミン1モルに対して、ベンジルクロライド1モルを、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0044】
また、前記式(2-2)中、R25は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R26は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基、-(AO)m23-H、又は炭素数1~3のアルキル基を表し、R27は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)m24-Hを表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m21、m23及びm24はそれぞれ独立に1~4の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。R25及びR26の前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。R26及びR27の前記アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R25及びR26の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、10~22が好ましい。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0045】
このような前記式(2-2)で表される第四級アンモニウム化合物は公知の方法により合成することができる。例えば、前記式(2-2)中、R27が炭素数1~3のアルキル基の第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-1)で表される第三級アミン1モルに対して、アルキル基の炭素数が1~3であるハロゲン化アルキルやジアルキル硫酸エステルなどの第四級化剤1モルを、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0046】
また、前記式(2-2)中、R27がベンジル基の第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-1)で表される第三級アミン1モルに対して、ベンジルクロライド1モルを、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0047】
さらに、前記式(2-2)中、R27が-(AO)m24-Hの第四級アンモニウム化合物は、m24の数により合成方法が異なる。m24=1の場合は、所定の第三級アミンに所定のアルキレンオキサイドにて第四級化反応を行い、m24>1の場合は、所定の第三級アミンに所定の脂肪族炭化水素基R25を生成し得るハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニルで第四級化反応を行う。具体的には、m24=1の第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-1)で表される第三級アミン1モル、及びこれと同質量の蒸留水を耐圧反応容器に仕込み、対イオンXp-を生成し得る任意の酸をモル当量混合して中和し、反応容器内を窒素置換した後、所定のアルキレンオキサイド1モルを、付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~120℃が好ましく、80~100℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、0.1~40時間が好ましく、0.5~20時間がより好ましい。また、m24>1の第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-1)で表される第三級アミン1モルに所定の脂肪族炭化水素基R25を生成し得るハロゲン化アルキル又はハロゲン化アルケニル1モルを、付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0048】
また、前記式(2-3)中、R28は炭素数1~3のアルキル基、ベンジル基、又は-(AO)m25-Hを表し、R29は及びR30はそれぞれ独立に、-CH3、-(AO)m26-H、-(AO)m27-C(=O)-R31、又は炭素数8~26の脂肪族炭化水素基を表し、R31は炭素数11~25の脂肪族炭化水素基を表し、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基を表し、m22及びm25~m27はそれぞれ独立に1~20の数であり、分子内にAOが複数存在する場合、複数存在するAOは同一であっても異なっていてもよく、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。R29~R31の前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、飽和であっても不飽和であってもよい。R28の前記アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R29及びR30の前記脂肪族炭化水素基の炭素数としては、10~22が好ましい。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0049】
このような前記式(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物は公知の方法により合成することができる。例えば、前記式(2-3)中、R28が炭素数1~3のアルキル基の第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-2)で表される第三級アミン1モルに対して、アルキル基の炭素数が1~3であるハロゲン化アルキルやジアルキル硫酸エステルなどの第四級化剤1モルを、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0050】
また、前記式(2-3)中、R28がベンジル基の第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-2)で表される第三級アミン1モルに対して、ベンジルクロライド1モルを、無触媒条件下で付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~150℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0051】
さらに、前記式(2-3)中、R28が-(AO)m25-Hの第四級アンモニウム化合物は、前記式(1-2)で表される第三級アミン1モル、及びこれと同質量の蒸留水を耐圧反応容器に仕込み、対イオンXp-を生成し得る任意の酸をモル当量混合して中和し、反応容器内を窒素置換した後、所定のアルキレンオキサイド1モルを、付加反応させることによって合成することができる。付加反応の反応温度としては特に制限はないが、70~120℃が好ましく、80~100℃がより好ましい。また、付加反応の反応時間としては特に制限はないが、1~12時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0052】
本発明に用いられるパルプスラリーにおいて、このようなアミン系添加成分の配合量としては、パルプ(紙料固形分)100質量部に対して、1~400質量部が好ましく、10~200質量部がより好ましい。アミン系添加成分の配合量が前記範囲内にあると、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上するとともに、抄紙時に泡立ちが起こりにくく、生産性が向上する。一方、アミン系添加成分の配合量が前記下限未満になると、紙に付与される柔軟性及び風合いが十分に向上しない場合があり、他方、前記上限を超えると、抄紙時に泡立ちが発生し、生産性が低下する傾向にある。
【0053】
(ポリアミン)
本発明に用いられる柔軟剤には、レシチン及び前記アミン系添加成分に加えて、後述するポリアミンが更に含まれていることが好ましい。これにより、紙に付与される柔軟性及び風合いが更に向上する。
【0054】
本発明に用いられるポリアミンは、第一級アミノ基が3つ以上結合した脂肪族炭化水素である。このポリアミンは、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0055】
このようなポリアミンとしては、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、及びジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンスルホン共重合体、ポリアミンポリアミド、ポリアミン-エピクロルヒドリン共重合体が挙げられる。これらのポリアミンの中でも、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上するという観点から、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物が好ましい。
【0056】
前記ポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、下記式(3-1)で表される構造及び/又は下記式(3-2)で表される構造を含むものである。
【0057】
【0058】
前記式(3-1)及び(3-2)中、n31及びn32はそれぞれ独立に、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩の重量平均分子量が1000~1000000となる整数であり、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0059】
本発明に用いられるポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、前記式(3-1)で表される構造と前記式(3-2)で表される構造のうちのいずれか一方が含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。
【0060】
このようなポリジアリルジメチルアンモニウム塩は公知の方法により合成することができる。例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド(例えば、和光純薬工業株式会社製「V-50」)等の重合開始剤の存在下で、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを重合させることによって合成することができる。
【0061】
また、前記ポリビニルアミンは、下記式(3-3)で表される構造を含むものである。
【0062】
【0063】
前記式(3-3)中、n33は、ポリビニルアミンの重量平均分子量が1000~1000000となる整数であり、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0064】
このようなポリビニルアミンは公知の方法により合成することができる。例えば、重合開始剤又は連鎖移動触媒の存在下で、N-ビニルホルムアミドを重合させ、その後、加水分解反応を行うことによって合成することができる。
【0065】
さらに、前記ポリエチレンイミンは、下記式(3-4)で表される直鎖型構造又は下記式(3-5)で表される分岐型構造を含むものである。
【0066】
【0067】
前記式(3-4)中、n34は、ポリエチレンイミンの重量平均分子量が1000~1000000となる整数であり、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0068】
このようなポリエチレンイミンは公知の方法により合成することができる。例えば、酸触媒の存在下で、エチレンイミンを開環重合させることによって合成することができる。
【0069】
前記ジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物は、下記式(3-6)で表される構造を含むものである。
【0070】
【0071】
前記式(3-6)中、n35は、ジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物の重量平均分子量が1000~1000000となる整数であり、Xは対イオンを表し、pは対イオンXの価数を表し、1~3の整数である。Xとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン、臭素イオン等)、有機アニオン(酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等の炭素数1~3のアルキル硫酸エステルイオン等)が挙げられる。
【0072】
このようなジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物は公知の方法により合成することができる。例えば、ジメチルアミンにエピクロルヒドリンを滴下してジメチルアミンとエピクロルヒドリンとを重縮合反応させることによって合成することができる。
【0073】
このようなポリアミンの重量平均分子量としては特に制限はないが、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上するという観点から、1000~1000000が好ましく、1000~200000がより好ましい。
【0074】
本発明に用いられるパルプスラリーにおいて、このようなポリアミンの配合量としては、パルプ(紙料固形分)100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。ポリアミンの配合量が前記範囲内にあると、紙に付与される柔軟性及び風合いが更に向上する。一方、ポリアミンの配合量が前記下限未満になると、紙に付与される柔軟性及び風合いが十分に向上しない場合があり、他方、前記上限を超えると、レシチンの乳化、分散が阻害されやすく、紙に付与される柔軟性及び風合いが十分に向上しない場合がある。
【0075】
(柔軟紙の製造方法)
本発明の柔軟紙の製造方法は、レシチン、及び、必要に応じて前記アミン系添加成分、さらに必要に応じて前記ポリアミンを含む柔軟剤と、パルプとを含有するパルプスラリーを調製し、この柔軟剤を含有するパルプスラリーを抄紙することにより柔軟紙を製造する方法である。
【0076】
本発明の柔軟紙の製造方法においては、例えば、叩解装置(ビーター)等を用いてパルプ繊維を叩き解す工程(叩解工程)やパルパー等を用いて古紙を解す工程(離解工程)、パルプスラリーに各種薬品を配合する工程(調成工程)等において柔軟剤を配合してもよいが、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上しやすいという観点から、柔軟剤を除く各種薬品を必要に応じて配合したパルプスラリーを調成した後、抄紙する前に柔軟剤を配合することが好ましい。
【0077】
前記各種薬品としては、例えば、凝結材、サイズ剤、紙力増強剤、ドライヤー剥離剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、歩留向上剤、消泡剤、填料、顔料、染料、分散剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0078】
また、柔軟剤の各成分の添加方法としては、パルプスラリーに原液のまま直接添加してもよいが、パルプスラリーにおける各成分の分散性の観点から、各成分を予め水に分散させ、この分散液をパルプスラリーに添加することが好ましい。また、柔軟剤の各成分の分散液は、それぞれ独立にパルプスラリーに添加してもよいし、柔軟剤の全成分を含む分散液を予め調製し、この柔軟剤分散液をパルプスラリーに添加してもよい。
【0079】
さらに、柔軟剤の各成分を水に分散させる場合、レシチンについては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性又は両性の各種界面活性剤や、グリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、トリエタノールアミンや水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物、エタノール等の溶剤等を用いて分散させてもよいが、本発明においては、前記アミン系添加成分がレシチンの分散剤として作用するため、前記アミン系添加成分を用いてレシチンを水に分散させることが好ましい。一方、前記アミン系添加成分や前記ポリアミンについては、分散剤を用いずに、水に均一に分散させることができる。
【0080】
次に、本発明の紙用柔軟剤について説明する。本発明の紙用柔軟剤は、レシチンと前記アミン系添加成分とを含むものである。レシチンと前記アミン系添加成分とを含む柔軟剤において、前記アミン系添加成分がレシチンの分散剤として作用し、紙に付与される柔軟性及び風合いが向上する。
【0081】
また、本発明の紙用柔軟剤においては、前記ポリアミンを更に含むことが好ましい。これにより、紙に付与される柔軟性及び風合いが更に向上する。
【実施例0082】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した第三級アミン、第四級アンモニウム化合物及びポリアミンを以下に示す。
【0083】
〔第三級アミン〕
<下記式(1-1)で表される第三級アミン>
【0084】
【0085】
・m11=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級モノアミン(n11=0):実施例A1、A2、C1~C4、比較例2、9で使用
表1のR11に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。
【0086】
・m11=2+1かつR12が(EO)2(PO)1-H(m14=2+1)又はm11=4の第三級モノアミン(n11=0):実施例A3、A4で使用
先ず、表1のR11に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族モノアミン又は表1のR11及びR12に示す脂肪族炭化水素基を有する第二級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1かつR12がEO-H(m14=1)又はm11=1の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1かつR12がEO-H(m14=1)又はm11=1、n11=0)1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムの存在下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=2+1かつR12が(EO)2(PO)1-H(m14=2+1)又はm11=4の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。
【0087】
・m11及びm12=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級ジアミン(n11=1):実施例A5で使用
表1のR11に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族ジアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11及びm12=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級ジアミン(n11=1)を合成した。
【0088】
<下記式(1-2)で表される第三級アミン>
【0089】
【0090】
・m13=1かつR14及びR15がEO-H(m15=1)又はEO-C(=O)-C17H33(m16=1)の第三級モノアミン:実施例A6~A8、C5~C8で、比較例3、10使用
トリエタノールアミン1モルに対して、所定の脂肪族カルボン酸を所定のモル数、エステル化触媒としてn-テトラブトキシチタンの存在下、160℃でエステル化反応させ、前記式(1-2)中、m13=1かつR14及びR15がEO-H(m15=1)又はEO-C(=O)-C17H33(m16=1)の第三級モノアミンを合成した。
【0091】
・m13=2かつR15が(EO)2-C(=O)-C17H33(m16=2)の第三級モノアミン:実施例A9で使用
先ず、表2のR14に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1かつR12がEO-H(m14=1)、n11=0)1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムの存在下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=2かつR12が(EO)2-H(m14=2)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。その後、この第三級モノアミン(m11=2かつR12が(EO)2-H(m14=2)、n11=0)1モルに対して、所定の脂肪族カルボン酸を所定のモル数、エステル化触媒としてn-テトラブトキシチタンの存在下、160℃でエステル化反応させ、前記式(1-2)中、m13=2かつR15が(EO)2-C(=O)-C17H33(m16=2)の第三級モノアミンを合成した。
【0092】
〔第四級アンモニウム化合物〕
<下記式(2-1)で表される第四級アンモニウム化合物>
【0093】
【0094】
・R21及びR22がC18H35、R23及びR24がCH3、XがCl、p=1の第四級アンモニウム化合物:実施例B1で使用
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポカード2O-75I」。
【0095】
・R21及びR22がC12H25、R23及びR24がCH3、XがCl、p=1の第四級アンモニウム化合物:実施例B2、C9~C12,D1~D4、比較例4、5、11で使用
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポカード2C-75」。
【0096】
・R21がC18H35、R22、R23及びR24がCH3、XがCl、p=1の第四級アンモニウム化合物:実施例B3で使用
ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「リポカードT-28」。
【0097】
・R21がC16H33、R22及びR23がCH3、R24がCH2-C6H5、XがCl、p=1の第四級アンモニウム化合物:実施例B4で使用
表3のR21~R23に示す脂肪族炭化水素基を有する第三級の脂肪族モノアミン1モルに対して、ベンジルクロライドを所定のモル数、無触媒条件下、100℃で付加反応させ、前記式(2-1)中、R24がCH2-C6H5の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0098】
<下記式(2-2)で表される第四級アンモニウム化合物>
【0099】
【0100】
・R27がCH3、m21=1の第四級アンモニウム化合物:実施例B5、B6、C13~C16、比較例6、12で使用
先ず、表4のR25及びR26に示す脂肪族炭化水素基を有する第二級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1、n11=0)1モルに対して、ジメチル硫酸を所定のモル数、無触媒条件下、100℃で付加反応させ、前記式(2-2)中、R27がCH3、m21=1の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0101】
・R27がCH2-C6H5、m21=1かつR26がEO-H(m23=1)の第四級アンモニウム化合物:実施例B7で使用
先ず、表4のR25に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1かつR12がEO-H(m14=1)、n11=0)1モルに対して、ベンジルクロライドを所定のモル数、無触媒条件下、100℃で付加反応させ、前記式(2-2)中、R27がCH2-C6H5、m21=1かつR26がEO-H(m23=1)の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0102】
・R27がCH2-C6H5、m21=2+1かつR26が(EO)2(PO)1-H(m23=2+1)の第四級アンモニウム化合物:実施例B8で使用
先ず、表4のR25に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1かつR12がEO-H(m14=1)、n11=0)1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムの存在下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=2+1かつR12が(EO)2(PO)1-H(m14=2+1)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。その後、この第三級モノアミン(m11=2+1かつR12が(EO)2(PO)1-H(m14=2+1)、n11=0)1モルに対して、ベンジルクロライドを所定のモル数、無触媒条件下、100℃で付加反応させ、前記式(2-2)中、R27がCH2-C6H5、m21=2+1かつR26が(EO)2(PO)1-H(m23=2+1)の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0103】
・R27がEO-H(m24=1)、m21=4の第四級アンモニウム化合物:実施例B9で使用
先ず、表4のR25及びR26に示す脂肪族炭化水素基を有する第二級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1、n11=0)1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムの存在下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=4の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。その後、この第三級モノアミン(m11=4、n11=0)1モル、及びこれと同質量の蒸留水を耐圧反応容器に仕込み、酢酸0.97モルを混合して中和し、反応容器内を窒素置換した後、所定のアルキレンオキサイド1モルを、90℃で付加反応させ、前記式(2-2)中、R27がEO-H(m24=1)、m21=4の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0104】
<下記式(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物>
【0105】
【0106】
・R28がCH2-C6H5、m22=1かつR29及びR30がEO-H(m26=1)又はEO-C(=O)-C17H33(m27=1)の第四級アンモニウム化合物:実施例B10、B11、C17~C20、比較例7、13で使用
トリエタノールアミン1モルに対して、所定の脂肪族カルボン酸を所定のモル数、エステル化触媒としてn-テトラブトキシチタンの存在下、160℃でエステル化反応させ、前記式(1-2)中、m13=1かつR14及びR15がEO-H(m15=1)又はEO-C(=O)-C17H33(m16=1)の第三級モノアミンを合成した。次に、この第三級モノアミン(m13=1かつR14及びR15がEO-H(m15=1)又はEO-C(=O)-C17H33(m16=1))1モルに対して、ベンジルクロライドを所定のモル数、無触媒条件下、100℃で付加反応させ、前記式(2-3)中、R28がCH2-C6H5、m22=1かつR29及びR30がEO-H(m26=1)又はEO-C(=O)-C17H33(m27=1)の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0107】
・R28がCH2-C6H5、m22=2かつR30がEO-C(=O)-C17H33(m27=2)の第四級アンモニウム化合物:実施例B12で使用
先ず、表5のR29に示す脂肪族炭化水素基を有する第一級の脂肪族モノアミン1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、無触媒条件下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=1かつR12がEO-H(m14=1)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=1かつR12がEO-H(m14=1)、n11=0)1モルに対して、所定のアルキレンオキサイドを所定のモル数、アルカリ触媒として水酸化ナトリウムの存在下、120℃で付加反応させ、前記式(1-1)中、m11=2かつR12が(EO)2-H(m14=2)の第三級モノアミン(n11=0)を合成した。次に、この第三級モノアミン(m11=2かつR12が(EO)2-H(m14=2)、n11=0)1モルに対して、所定の脂肪族カルボン酸を所定のモル数、エステル化触媒としてn-テトラブトキシチタンの存在下、160℃でエステル化反応させ、前記式(1-2)中、m13=2かつR15が(EO)2-C(=O)-C17H33(m16=2)の第三級モノアミンを合成した。その後、この第三級モノアミン(m13=2かつR15が(EO)2-C(=O)-C17H33(m16=2))1モルに対して、ベンジルクロライドを所定のモル数、無触媒条件下、100℃で付加反応させ、前記式(2-3)中、R28がCH2-C6H5、m22=2かつR30が(EO)2-C(=O)-C17H33(m27=2)の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0108】
・R28がEO-H(m25=1)、m22=1かつR29及びR30がEO-C(=O)-C17H33(m27=1)の第四級アンモニウム化合物:実施例B13で使用
トリエタノールアミン1モルに対して、所定の脂肪族カルボン酸を所定のモル数、エステル化触媒としてn-テトラブトキシチタンの存在下、160℃でエステル化反応させ、前記式(1-2)中、m13=1かつR14及びR15がEO-C(=O)-C17H33(m16=1)の第三級モノアミンを合成した。次に、この第三級モノアミン(m13=1かつR14及びR15がEO-C(=O)-C17H33(m16=1)1モル、及びこれと同質量の蒸留水を耐圧反応容器に仕込み、酢酸0.97モルを混合して中和し、反応容器内を窒素置換した後、所定のアルキレンオキサイド1モルを、90℃で付加反応させ、前記式(2-3)中、R28がEO-H(m25=1)、m22=1かつR29及びR30がEO-C(=O)-C17H33(m27=1)の第四級アンモニウム化合物を合成した。
【0109】
〔ポリアミン〕
・ポリジアリルジメチルアンモニウム塩(下記式(3-1)):実施例C9、C13、C17、比較例8~13で使用
ニットーボーメディカル株式会社製「PAS-H-10L」、重量平均分子量:200,000、下記式(3-1)中、XはCl、p=1。
【0110】
【0111】
・ポリビニルアミン(下記式(3-3)):実施例C10、C14、C18で使用
三菱ケミカル株式会社製「PVAM-0570B」、重量平均分子量:100,000、下記式(3-3)中、XはCl、p=1。
【0112】
【0113】
・ポリエチレンイミン(下記式(3-5)):実施例C11、C15、C19で使用
株式会社日本触媒製「エポミンSP-200」、重量平均分子量:10,000。
【0114】
【0115】
・ジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物(下記式(3-6)):実施例C12、C16、C20で使用
ジメチルアミンにエピクロルヒドリンを滴下して重縮合反応を行うことによって得られたもの、重量平均分子量:50,000、下記式(3-6)中、XはCl、p=1。
【0116】
【0117】
(実施例A1)
広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)をカナダ標準型ろ水度550~600mlになるように叩解機を用いて叩解して、紙料固形分(パルプ)1質量%のパルプスラリーを調製した。ケミスターラーを用いてこのパルプスラリーを攪拌しながら、紙料固形分(パルプ)100質量部に対して、大豆レシチン0.7質量部と前記式(1-1)で表され、表1に示すR11、R12、R13、AO、m11、m12及びn11を有する第三級アミン0.3質量部とからなる柔軟剤を添加し、紙料を調成した。この紙料を、スタンダードシートマシン抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)を用いて坪量40g/m2に抄紙した。次いで、エアシートプレス機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて圧力700kPaで5分間プレス処理を行い、さらに、試験用のヤンキードライヤー(熊谷理機工業株式会社製)を用いて105℃で5分間乾燥し、試験紙を得た。
【0118】
(実施例A2~A5)
第三級アミンとして、前記式(1-1)で表され、表1に示すR11、R12、R13、AO、m11、m12及びn11を有する第三級アミン0.3質量部を用いた以外は実施例A1と同様にして試験紙を作製した。
【0119】
(実施例A6~A9)
第三級アミンとして、前記式(1-2)で表され、表2に示すR14、R15、R16、AO及びm13を有する第三級アミン0.3質量部を用いた以外は実施例A1と同様にして試験紙を作製した。
【0120】
(実施例B1~B4)
第三級アミンの代わりに、前記式(2-1)で表され、表3に示すR21、R22、R23、R24、X及びpを有する第四級アンモニウム化合物0.3質量部を用いた以外は実施例A1と同様にして試験紙を作製した。
【0121】
(実施例B5~B9)
第三級アミンの代わりに、前記式(2-2)で表され、表4に示すR25、R26、R27、AO、m21、X及びpを有する第四級アンモニウム化合物0.3質量部を用いた以外は実施例A1と同様にして試験紙を作製した。
【0122】
(実施例B10~B13)
第三級アミンの代わりに、前記式(2-3)で表され、表5に示すR28、R29、R30、R31、AO、m22、X及びpを有する第四級アンモニウム化合物0.3質量部を用いた以外は実施例A1と同様にして試験紙を作製した。
【0123】
(実施例C1~C4)
柔軟剤として、表6に示す量の、大豆レシチンと前記式(1-1)で表され、R11がC18H35、R12がEO-H、AOがEO、m11=1及びn11=0である第三級アミンとポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン又はジメチルアミンのエピクロルヒドリン重縮合物とからなる柔軟剤を用いた以外は実施例A2と同様にして試験紙を作製した。
【0124】
(実施例C5~C8)
第三級アミンとして、表6に示す量の、前記式(1-2)で表され、R14がEO-H、R15がEO-C(=O)-C17H33、R16がC17H33、AOがEO及びm13=1である第三級アミンを用いた以外は実施例C1~C4と同様にして試験紙を作製した。
【0125】
(実施例C9~C12)
第三級アミンの代わりに、表7に示す量の、前記式(2-1)で表され、R21及びR22がC12H25、R23及びR24がCH3、XがCl及びp=1である第四級アンモニウム化合物を用いた以外は実施例C1~C4と同様にして試験紙を作製した。
【0126】
(実施例C13~C16)
第三級アミンの代わりに、表7に示す量の、前記式(2-2)で表され、R25が及びR26がC18H35、R27がCH3、AOがEO、m21=1、XがCH3SO4及びp=1である第四級アンモニウム化合物を用いた以外は実施例C1~C4と同様にして試験紙を作製した。
【0127】
(実施例C17~C20)
第三級アミンの代わりに、表7に示す量の、前記式(2-3)で表され、R28がCH2-C6H5、R29及びR30がEO-C(=O)-C17H33、R31がC17H33、AOがEO、m22=1、XがCl及びp=1である第四級アンモニウム化合物を用いた以外は実施例C1~C4と同様にして試験紙を作製した。
【0128】
(実施例D1~D4)
大豆レシチン及び第四級アンモニウム化合物の量を表8に示す量に変更した以外は実施例B2と同様にして試験紙を作製した。
【0129】
(比較例1)
柔軟剤を添加しなかった以外は実施例A1と同様にして試験紙を作製した。
【0130】
(比較例2)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(1-1)で表され、R11がC18H35、R12がEO-H、AOがEO、m11=1及びn11=0である第三級アミンのみからなる柔軟剤を用いた以外は実施例A2と同様にして試験紙を作製した。
【0131】
(比較例3)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(1-2)で表され、R14がEO-H、R15がEO-C(=O)-C17H33、R16がC17H33、AOがEO及びm13=1である第三級アミンのみからなる柔軟剤を用いた以外は実施例A6と同様にして試験紙を作製した。
【0132】
(比較例4~5)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(2-1)で表され、R21及びR22がC12H25、R23及びR24がCH3、XがCl及びp=1である第四級アンモニウム化合物のみからなる柔軟剤を用いた以外は実施例B2と同様にして試験紙を作製した。
【0133】
(比較例6)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(2-2)で表され、R25が及びR26がC18H35、R27がCH3、AOがEO、m21=1、XがCH3SO4及びp=1である第四級アンモニウム化合物のみからなる柔軟剤を用いた以外は実施例B6と同様にして試験紙を作製した。
【0134】
(比較例7)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(2-3)で表され、R28がCH2-C6H5、R29及びR30がEO-C(=O)-C17H33、R31がC17H33、AOがEO、m22=1、XがCl及びp=1である第四級アンモニウム化合物のみからなる柔軟剤を用いた以外は実施例B10と同様にして試験紙を作製した。
【0135】
(比較例8)
柔軟剤として、大豆レシチン及び第三級アミンを添加せず、表9に示す量のポリジアリルジメチルアンモニウム塩のみからなる柔軟剤を用いた以外は実施例C1と同様にして試験紙を作製した。
【0136】
(比較例9)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(1-1)で表され、R11がC18H35、R12がEO-H、AOがEO、m11=1及びn11=0である第三級アミンとポリジアリルジメチルアンモニウム塩とからなる柔軟剤を用いた以外は実施例C1と同様にして試験紙を作製した。
【0137】
(比較例10)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(1-2)で表され、R14がEO-H、R15がEO-C(=O)-C17H33、R16がC17H33、AOがEO及びm13=1である第三級アミンとポリジアリルジメチルアンモニウム塩とからなる柔軟剤を用いた以外は実施例C5と同様にして試験紙を作製した。
【0138】
(比較例11)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(2-1)で表され、R21及びR22がC12H25、R23及びR24がCH3、XがCl及びp=1である第四級アンモニウム化合物とポリジアリルジメチルアンモニウム塩とからなる柔軟剤を用いた以外は実施例C9と同様にして試験紙を作製した。
【0139】
(比較例12)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(2-2)で表され、R25が及びR26がC18H35、R27がCH3、AOがEO、m21=1、XがCH3SO4及びp=1である第四級アンモニウム化合物とポリジアリルジメチルアンモニウム塩とからなる柔軟剤を用いた以外は実施例C13と同様にして試験紙を作製した。
【0140】
(比較例13)
柔軟剤として、大豆レシチンを添加せず、表9に示す量の、前記式(2-3)で表され、R28がCH2-C6H5、R29及びR30がEO-C(=O)-C17H33、R31がC17H33、AOがEO、m22=1、XがCl及びp=1である第四級アンモニウム化合物とポリジアリルジメチルアンモニウム塩とからなる柔軟剤を用いた以外は実施例C17と同様にして試験紙を作製した。
【0141】
<柔軟性>
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.34(2000)「紙-柔らかさ試験方法」に準拠し、ハンドルオメーターを用いて、試験紙を押込むときに発生する抵抗力[gf]を測定した。試験紙は、100mm×100mmの大きさに切り、折り曲げ有効ストロークを12mmとし、試験紙受板クリアランスを10mmとして測定した。その結果を表1~表9に示す。測定値が小さい方が、柔軟性に優れていることを意味する。
【0142】
<風合い>
試験紙を5枚片手で握り、柔らかさの官能評価を行い、下記の5段階の基準により評価した。10名により評価を行い、その平均値を求めた。その結果を表1~表9に示す。
【0143】
(評価基準)
5:非常に柔らかい。
4:柔らかい。
3:やや柔らかい。
2:柔軟剤不使用のものと同じ。
1:硬い。
【0144】
<密度>
JIS P 8118:2014に従い、1枚の紙の厚さと質量の測定値から、密度(単位容積当たりの質量)を算出した。その結果を表1~表9に示す。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
表1~表7に示したように、レシチンと前記式(1-1)~(1-2)で表される第三級アミンとを含有する柔軟剤をパルプスラリーに配合して抄紙した場合(実施例A1~A9)、レシチンと前記式(2-1)~(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物とを含有する柔軟剤をパルプスラリーに配合して抄紙した場合(実施例B1~B13)、レシチンと前記式(1-1)~(1-2)で表される第三級アミンと前記ポリアミンとを含有する柔軟剤をパルプスラリーに配合して抄紙した場合(実施例C1~C8)、並びにレシチンと前記式(2-1)~(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物と前記ポリアミンとを含有する柔軟剤をパルプスラリーに配合して抄紙した場合(実施例C9~C20)には、柔軟性及び風合いに優れた、低密度の柔軟紙が得られることがわかった。
【0155】
一方、表9に示したように、柔軟剤を配合しなかった場合(比較例1)、レシチンを含まず、前記式(1-1)~(1-2)で表される第三級アミンのみを含有する柔軟剤を配合した場合(比較例2~3)、レシチンを含まず、前記式(2-1)~(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物のみを含有する柔軟剤を配合した場合(比較例4~7)、レシチンを含まず、前記ポリアミンのみを含有する柔軟剤を配合した場合(比較例8)、レシチンを含まず、前記式(1-1)~(1-2)で表される第三級アミンと前記ポリアミンのみを含有する柔軟剤を配合した場合(比較例9~10)、並びにレシチンを含まず、前記式(2-1)~(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物と前記ポリアミンのみを含有する柔軟剤を配合した場合(比較例11~13)には、実施例A1~A9、実施例B1~B13及び実施例C1~C20に比べて、柔軟性及び風合いに劣り、密度も高くなることがわかった。
【0156】
また、表1~表7に示したように、レシチンと、前記式(1-1)~(1-2)で表される第三級アミン又は前記式(2-1)~(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物とを含有する柔軟剤に前記ポリアミンを配合することによって、柔軟性及び風合いが向上し、低密度化することがわかった(実施例C1~C20)。
【0157】
一方、表9に示したように、レシチンを含まず、前記式(1-1)~(1-2)で表される第三級アミン又は前記式(2-1)~(2-3)で表される第四級アンモニウム化合物のみを含有する柔軟剤に前記ポリアミンを配合しても、柔軟性及び風合いは向上せず、密度も変化しなかった(比較例9~13)。
以上説明したように、本発明によれば、良好な柔軟性を有する紙を得ることが可能となる。良好な柔軟性を有する紙は、めくりやすさ、風合い、手触り、層間剥離のしやすさに優れているため、本発明の柔軟紙の製造方法は、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、キッチンペーパー等の家庭用紙等の製造方法として特に有用である。また、新聞用紙、塗工紙、インクジェット記録紙や感熱記録紙等の記録用紙、包装用紙、板紙、ライナー、段ボール用紙、壁紙、襖紙用紙等の製造に用いることもできる。