(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101215
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ポータブルトイレ用バケツおよびポータブルトイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 11/04 20060101AFI20220629BHJP
B65D 25/32 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A47K11/04
B65D25/32 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215668
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】永野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】青山 智行
(72)【発明者】
【氏名】土井 健史
(72)【発明者】
【氏名】高▲浜▼ 智久
【テーマコード(参考)】
2D036
3E062
【Fターム(参考)】
2D036HA02
2D036HA12
2D036HA23
2D036HA25
2D036HA27
2D036HA31
2D036HA42
3E062AA20
3E062AB01
3E062AC02
3E062HA06
3E062HB02
3E062HB07
3E062HC11
3E062HD02
(57)【要約】
【課題】取っ手が容器に対して回動可能であり、利用者が取っ手を立てて持ち上げたときに、取っ手が容器に対して回動しないように固定可能であると共に取っ手が容器から外れにくいポータブルトイレ用バケツを提供する。
【解決手段】容器20には、円孔31と、円孔31から上方に延びる縦孔32と、を含んだ軸孔30が形成されている。取っ手50は、軸孔30に挿入された軸54と、軸54の先端側に設けられたストッパ56とを有している。軸54は、円孔31内にて回動可能であり、取っ手50を立てて持ち上げると、円孔31から縦孔32に移動して縦孔32に嵌まり込むように構成されている。ストッパ56の突部56Bは、取っ手50を倒したときには縦孔32の内側に位置し、取っ手50を立てて持ち上げたときには、縦孔32の周囲部と重なるように形成されている。
【選択図】
図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口した上縁部を有する容器と、
前記上縁部を跨ぐように前記容器に架け渡され、前記容器に回動可能に係合した取っ手と、を備え、
前記容器には、下孔と、前記下孔から上方に延びる上孔と、を含んだ軸孔が形成され、
前記取っ手は、前記軸孔に挿入された軸と、前記軸の先端側に設けられたストッパとを有し、
前記軸は、前記下孔内にて回動可能であり、前記取っ手を立てて持ち上げると前記下孔から前記上孔に移動して前記上孔に嵌まり込むように構成され、
前記ストッパは、前記取っ手を倒したときに前記軸の軸線方向から見て、少なくとも一部が前記下孔の内側に位置するストッパ本体部と、前記ストッパ本体部から上方に突出した突部と、を有し、
前記突部は、前記取っ手を倒したときには前記軸の軸線方向から見て前記上孔の内側に位置し、前記取っ手を立てて持ち上げたときには前記軸の軸線方向から見て前記容器の前記上孔の周囲部と重なるように形成されている、ポータブルトイレ用バケツ。
【請求項2】
前記下孔は、円孔であり、
前記ストッパ本体部は、前記軸の軸線方向から見て、前記上孔の孔幅よりも大きな外径を有する円形に形成されており、
前記軸は、横断面形状が四角形状に形成されている、請求項1に記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項3】
前記軸孔は、前記容器の左側部分および右側部分に形成され、
前記軸および前記ストッパは、前記取っ手の両側に設けられている、請求項1または2に記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項4】
前記突部は、前記取っ手を後方に倒したときに前記軸の軸線方向から見て前記上孔の内側に位置し、前記取っ手を立てて持ち上げたときに前記軸の軸線方向から見て前記上孔の前方に位置するように形成されている、請求項3に記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項5】
前記下孔は、円孔であり、
前記上孔は、前記円孔の前端から上方に直線状に延びる前縁と、前記前縁の後方に位置し、上方に直線状に延びる後縁とを有している、請求項3または4に記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項6】
前記容器の前後長さは、前記容器の左右長さよりも長い、請求項3~5のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項7】
前記容器の前端と前記軸孔との間の前後方向の長さは、前記容器の後端と前記軸孔との間の前後方向の長さよりも長い、請求項3~6のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項8】
前記容器の底壁は、前方に行くほど上方に向かうように傾斜している、請求項3~7のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項9】
前記容器の前記上縁部は、上下に延びる外周壁と、前記外周壁の前部から前方に突出する液切り板とを有している、請求項3~8のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項10】
前記容器の前記上縁部の前端部に、下方に凹んだ注ぎ口が形成されている、請求項3~9のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項11】
前記容器は、前記上孔の周囲部分から前記軸の軸線方向の一方に突出する逆U字状の補強リブを有し、
前記軸は、前記取っ手を立てて持ち上げたときに前記補強リブの内側に挿入される補強部を有している、請求項1~10のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項12】
前記容器は、前記補強リブから前記上孔の側方に延びる横リブを有している、請求項11に記載のポータブルトイレ用バケツ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載のポータブルトイレ用バケツを備えたポータブルトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブルトイレのトイレ本体に着脱可能に装着されるポータブルトイレ用バケツおよびそれを備えたポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルトイレは、便座の下方に配置される着脱可能なバケツを備えている。ポータブルトイレの使用後、使用者または介護者等(以下、それらを総称して利用者という)は、バケツ本体からバケツを取り外し、例えば便所等の汚水排出場所まで運ぶ。そして、利用者は、バケツに溜まった汚水を便所の便器等に排出する。
【0003】
バケツは、容器と、容器の上部に架け渡された取っ手とを有している。利用者は、取っ手を持ち上げることにより、バケツを取り外すことができる。また、利用者は、取っ手を掴みながら移動することにより、バケツを運ぶことができる。バケツを取り外すときおよび運ぶときには、取っ手は立てた状態で掴まれるが、ポータブルトイレの使用時には、取っ手は邪魔にならないよう倒した状態とされる。そのため、取っ手は、容器に対して回動可能に組み立てられている。
【0004】
しかし、取っ手が回動可能であると、利用者が取っ手を掴んでバケツを運ぶ際に、容器が揺れてしまい、汚水が外部に飛び散るおそれがある。また、運ぶ途中で容器が家具などに当たった場合、容器が傾いて汚水がこぼれてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本願発明者は、ポータブルトイレ用バケツに対して、取っ手を持ち上げると容器に対して回動しないように固定される機構(以下、ロック機構という)を設けることを考えた。例えば特許文献1には、ポータブルトイレ用ではないが、そのようなロック機構を備えたバケツが開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されたロック機構は、
図32(a)に示すように、容器500に形成された軸孔501と、取っ手510に備えられた軸511とにより構成されている。軸孔501はナス型に形成されており、円孔502と、円孔502の上方の縦孔503とからなっている。取っ手510の軸511は、横断面形状が四角形状に形成されている。
図32(a)に示すように、取っ手510を倒した状態では、軸511は円孔502の内部に位置しているため、取っ手510は回動可能である。一方、
図32(b)に示すように、取っ手510を立てて持ち上げると、軸511は円孔502から縦孔503に移動するので、回動不能となる。これにより、取っ手510は容器500に対して回動不能に固定される。
【0007】
図33に示すように、取っ手510の軸511が軸孔501から抜けないように、軸511の先端部には、円孔502の内径よりも若干大きな外径を有する鍔部512が設けられている。鍔部512は円錐形状に形成されている。鍔部512を円孔502に向かって押しつけると、円孔502が一時的に押し広げられ、鍔部512は円孔502を通過する。鍔部512が軸孔501の裏側に位置することにより、軸511は軸孔501から抜けないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ポータブルトイレ用バケツは、汚水を貯めた状態で運ばれる。万一、運んでいる途中で取っ手510が外れると、容器500が傾いて汚水がこぼれてしまう。ポータブルトイレ用バケツでは、運んでいる途中に取っ手510が容器500から外れないことが強く求められる。
【0010】
本発明の目的は、取っ手が容器に対して回動可能であり、利用者が取っ手を立てて持ち上げたときに、取っ手が容器に対して回動しないように固定可能であると共に取っ手が容器から外れにくいポータブルトイレ用バケツおよびそれを備えたポータブルトイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るポータブルトイレ用バケツは、上方に開口した上縁部を有する容器と、前記上縁部を跨ぐように前記容器に架け渡され、前記容器に回動可能に係合した取っ手と、を備える。前記容器には、下孔と、前記下孔から上方に延びる上孔と、を含んだ軸孔が形成されている。前記取っ手は、前記軸孔に挿入された軸と、前記軸の先端側に設けられたストッパとを有している。前記軸は、前記下孔内にて回動可能であり、前記取っ手を立てて持ち上げると前記下孔から前記上孔に移動して前記上孔に嵌まり込むように構成されている。前記ストッパは、前記取っ手を倒したときに前記軸の軸線方向から見て、少なくとも一部が前記下孔の内側に位置するストッパ本体部と、前記ストッパ本体部から上方に突出した突部と、を有している。前記突部は、前記取っ手を倒したときには前記軸の軸線方向から見て前記上孔の内側に位置し、前記取っ手を立てて持ち上げたときには前記軸の軸線方向から見て前記容器の前記上孔の周囲部と重なるように形成されている。
【0012】
上記ポータブルトイレ用バケツによれば、取っ手の軸は容器の下孔の内部にて回動可能であるので、取っ手は容器に対して回動可能である。バケツをポータブルトイレのトイレ本体に装着しているときに、取っ手を倒すことができるので、ポータブルトイレの使用時に取っ手は邪魔にならない。一方、取っ手を立てて持ち上げると、取っ手の軸は容器の下孔から上孔に移動し、上孔に嵌まり込む。これにより、取っ手は容器に対して回転しないように固定される。そのため、汚水がこぼれないようにバケツを運ぶことが容易となる。取っ手は軸の先端側に設けられたストッパを備えているが、取っ手を倒した状態では、ストッパの突部は、軸の軸線方向から見て上孔の内側に位置する。そのため、軸孔にストッパを通すことは容易であり、取っ手を容器に容易に取り付けることができる。取っ手を立てて持ち上げた状態では、ストッパの突部は、軸の軸線方向から見て容器の上孔の周囲部分と重なる。そのため、取っ手が軸の軸線方向にずれても、ストッパの突部が上孔の周囲部分に当接するので、軸が上孔から抜けることはなく、取っ手が容器から外れることは防止される。したがって、取っ手が容器から外れにくいポータブルトイレ用バケツを提供することができる。
【0013】
前記下孔は、円孔であってもよい。前記ストッパ本体部は、前記軸の軸線方向から見て、前記上孔の孔幅よりも大きな外径を有する円形に形成されていてもよい。前記軸は、横断面形状が四角形状に形成されていてもよい。
【0014】
前記軸孔は、前記容器の左側部分および右側部分に形成されていてもよい。前記軸および前記ストッパは、前記取っ手の両側に設けられていてもよい。
【0015】
前記突部は、前記取っ手を後方に倒したときに前記軸の軸線方向から見て前記上孔の内側に位置し、前記取っ手を立てて持ち上げたときに前記軸の軸線方向から見て前記上孔の前方に位置するように形成されていてもよい。
【0016】
このことにより、取っ手を後方に倒した状態では、ストッパの突部は上孔の内側に位置するので、ストッパを軸孔に通すことができる。取っ手を後方に倒すことにより、取っ手を容器に取り付けることができる。取っ手を立てて持ち上げたときには、ストッパの突部は上孔の前方に位置するので、突部は容器の上孔の前側部分と係合可能となる。そのため、取っ手が容器から抜けることが防止される。
【0017】
前記下孔は、円孔であってもよい。前記上孔は、前記円孔の前端から上方に直線状に延びる前縁と、前記前縁の後方に位置し、上方に直線状に延びる後縁とを有していてもよい。
【0018】
このことにより、上孔の前縁の上下長さを確保しながら、軸孔の上下寸法を抑えることができる。よって、軸孔を小型化することができる。
【0019】
前記容器の前後長さは、前記容器の左右長さよりも長くてもよい。
【0020】
前記容器の前端と前記軸孔との間の前後方向の長さは、前記容器の後端と前記軸孔との間の前後方向の長さよりも長くてもよい。
【0021】
前記容器の底壁は、前方に行くほど上方に向かうように傾斜していてもよい。
【0022】
ポータブルトイレでは、使用前に、所定の水位となるようにバケツに水が溜められる。上記事項によれば、水量が比較的少なくても、容器内において水位を確保しやすくなる。よって、節水することができる。
【0023】
前記容器の前記上縁部は、上下に延びる外周壁と、前記外周壁の前部から前方に突出する液切り板とを有していてもよい。
【0024】
このことにより、容器を傾けて汚水を排出したときに、汚水は液切り板の先端から流れ落ちる。汚水が外周壁を伝ってしまうことが抑制され、外周壁が汚れてしまうことが抑制される。よって、汚水の排出によって容器の外周壁が汚れてしまうことを抑制することができる。
【0025】
前記容器の前記上縁部の前端部に、下方に凹んだ注ぎ口が形成されていてもよい。
【0026】
このことにより、容器を傾けたときに、汚水は注ぎ口から集中的に排出される。よって、汚水が左右に飛散することが防止され、汚水を便器等に良好に排出することができる。この場合にも取っ手が容器から外れることは防止されるので、利用者は安心して注ぎ口から汚水を排出することができる。
【0027】
前記容器は、前記上孔の周囲部分から前記軸の軸線方向の一方に突出する逆U字状の補強リブを有していてもよい。前記軸は、前記取っ手を立てて持ち上げたときに前記補強リブの内側に挿入される補強部を有していてもよい。
【0028】
このことにより、上孔の周囲部分の剛性が高くなる。上孔の周囲部分は変形し難いため、軸が上孔から外れることがより一層防止される。よって、取っ手が容器から外れることをより一層確実に防止することができる。
【0029】
前記容器は、前記補強リブから前記上孔の側方に延びる横リブを有していてもよい。
【0030】
このことにより、上孔の周囲部分は更に変形し難くなり、軸が上孔から外れることが更に確実に防止される。よって、取っ手が容器から外れることを更に確実に防止することができる。
【0031】
本発明に係るポータブルトイレは、前述のポータブルトイレ用バケツを備えたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、取っ手が容器に対して回動可能であり、利用者が取っ手を立てて持ち上げたときに、取っ手が容器に対して回動しないように固定可能であると共に取っ手が容器から外れにくいポータブルトイレ用バケツおよびそれを備えたポータブルトイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態に係るポータブルトイレの斜視図である。
【
図2】実施形態に係るポータブルトイレ用バケツの斜視図である。
【
図10】他の変形例に係る容器の
図7相当図である。
【
図12】容器の軸孔付近を拡大して示す左側面図である。
【
図13】容器の軸孔付近を拡大して示す斜視図である。
【
図19】取っ手を前方に倒したときのポータブルトイレ用バケツの左側面図である。
【
図20】取っ手を立てて持ち上げたときのポータブルトイレ用バケツの左側面図である。
【
図21】取っ手を後方に倒したときのポータブルトイレ用バケツの左側面図である。
【
図22】取っ手を立てて持ち上げたときの軸および軸孔の係合状態を表す図である。
【
図23】取っ手を後方に倒したときのストッパの位置を表す図である。
【
図24】取っ手を上方に回動しているときのストッパの位置を表す図である。
【
図25】取っ手を立てて持ち上げたときのストッパの位置を表す図である。
【
図26】ポータブルトイレ用バケツおよび容器内の水を模式的に表す図であり、(a)は容器が傾いていない状態、(b)は容器が後下がりに傾いた状態、(c)は容器が前下がりに傾いた状態をそれぞれ表す。
【
図27】(a)は容器を傾ける前のポータブルトイレ用バケツおよび便器を模式的に表す側面図であり、(b)はそのときの軸および軸孔の係合状態を表す図である。
【
図28】(a)は容器を傾けているときのポータブルトイレ用バケツおよび便器を模式的に表す側面図であり、(b)はそのときの軸および軸孔の係合状態を表す図である。
【
図29】(a)は容器を更に傾けたときのポータブルトイレ用バケツおよび便器を模式的に表す側面図であり、(b)はそのときの軸および軸孔の係合状態を表す図である。
【
図30】他の実施形態に係るポータブルトイレ用バケツについて、取っ手を前方に倒したときのストッパの位置を表す図である。
【
図31】他の実施形態に係るポータブルトイレ用バケツの斜視図である。
【
図32】持ち上げたときに取っ手を容器に対して回動しないように固定する従来のロック機構の説明図であり、(a)は取っ手を倒した状態、(b)は取っ手を立てた状態をそれぞれ表している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るポータブルトイレおよびポータブルトイレ用バケツについて説明する。
図1は、本実施形態に係るポータブルトイレ1の斜視図である。なお、ポータブルトイレ1に関する以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、後述する便座5に座った利用者から見た前、後、左、右、上、下の各方向をそれぞれ意味するものとする。
【0035】
<ポータブルトイレ>
ポータブルトイレ1は、トイレ本体2と、トイレ本体2に着脱可能に装着されるポータブルトイレ用バケツ(以下、単にバケツという)10とを備えている。
【0036】
<トイレ本体>
まず、トイレ本体2について説明する。トイレ本体2は、椅子部3と、椅子部3を支持する脚4と、便座5と、背もたれ6と、肘掛け7と、蓋8とを備えている。椅子部3は、上方に開口した箱状に形成されている。バケツ10は、椅子部3の内側に装着される。便座5は、椅子部3の後部に回動可能に取り付けられている。便座5を前方に回動させると、便座5を水平に倒すことができ、利用者は便座5の上に座ることができる。便座5を上方に回動させると、便座5を立たせることができ、椅子部3の内側を開放することができる。便座5を立たせた状態とすることにより、バケツ10を椅子部3から上方に取り外すことができ、また、バケツ10を椅子部3に向けて上方から取り付けることができる。
【0037】
なお、
図1に示すトイレ本体2は一例に過ぎない。バケツ10が着脱可能に装着される限り、トイレ本体2の構成は特に限定されない。肘掛け7、背もたれ6、または蓋8は、必ずしも必要ではない。椅子部3が床に直接載置されるように形成されている場合、脚4は無くてもよい。
【0038】
<バケツ>
次に、バケツ10について説明する。以下のバケツ10に関する説明では、前、後、左、右とは、バケツ10がトイレ本体2に装着されているときに、便座5に座った利用者から見た前、後、左、右の各方向をそれぞれ意味するものとする。上、下は、バケツ10が水平面に置かれたときの上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号F、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表すものとする。
【0039】
特に断らない限り、前方とは、水平方向の前向きの方向だけでなく、当該方向から左右に45度以内の角度で傾いた方向も含まれるものとする。後方とは、水平方向の後向きの方向だけでなく、当該方向から左右に45度以内の角度で傾いた方向も含まれるものとする。左方とは、水平方向の左向きの方向だけでなく、当該方向から前後に45度以内の角度で傾いた方向も含まれるものとする。右方とは、水平方向の右向きの方向だけでなく、当該方向から前後に45度以内の角度で傾いた方向も含まれるものとする。上方とは、鉛直方向の上向きの方向だけでなく、当該方向から前後に45度以内の角度で傾いた方向も含まれるものとする。下方とは、鉛直方向の下向きの方向だけでなく、当該方向から前後に45度以内の角度で傾いた方向も含まれるものとする。
【0040】
図2は、本実施形態に係るバケツ10の斜視図である。バケツ10は、容器20と取っ手50とを有している。容器20は、上方に開口した上縁部22を有している。取っ手50は、容器20の左側部分から右側部分に架け渡されている。取っ手50は、上縁部22を跨ぐように容器20に架け渡されている。詳細は後述するが、取っ手50は容器20に対して、軸線C1周りに回動可能に係合している。
【0041】
<容器>
図3、
図4、
図5、
図6は、それぞれ容器20の平面図、左側面図、背面図、底面図である。
図7は容器20の縦断面図であり、
図5のVII-VII線断面図である。
図8は容器20の水平断面図であり、
図4のVIII-VIII線断面図である。
図7に示すように、容器20は、底壁24と、底壁24から上方に延びる周壁26と、周壁26の上方に位置する上縁部22と、底壁24の下側に設けられた環状脚28とを備えている。
【0042】
図3に示すように、底壁24は、上方から見て円形に形成されている。
図7に示すように、底壁24は下方に凹んだ凹状に形成されている。本実施形態では、底壁24は、水平に延びかつ上方から見て円形の水平壁24Aと、水平壁24Aの外周端から斜め上方に傾斜した傾斜壁24Bとを有している。
【0043】
ただし、底壁24の形状は特に限定されない。
図9に示すように、底壁24は凹状に湾曲していてもよい。底壁24は、屈曲部がないように形成されていてもよい。なお、この場合にも、底壁24は、上方から見て円形に形成されている。底壁24は、半球状に形成されていてもよい。
【0044】
図10に示すように、底壁24は、前方に行くほど上方に向かうように傾斜していてもよい。この場合にも、底壁24は、上方から見て円形に形成されていてもよい。
【0045】
図8に示すように、周壁26は、水平断面が円弧状の後側周壁26Aと、後側周壁26Aから前方に延び、水平断面が前方に凸状の前側周壁26Bとを有している。
図4に示すように側方から見て、前側周壁26Bの輪郭は、上方に行くほど水平線に対する傾斜角度αが小さくなるように湾曲している部分26BLを有している。当該湾曲部分26BLが前側周壁26Bの輪郭の全体に占める割合は特に限定されないが、50%以上であることが好ましく、65%以上であることが更に好ましい。本実施形態では80%以上である。前側周壁26Bの輪郭の全体が上記湾曲部分26BLであってもよい。
【0046】
図7に示すように、上方に行くほど水平線に対する傾斜角度αが小さくなるように湾曲している部分26BLの上方には、上部垂直壁26BUが設けられている。上部垂直壁26BUは、略鉛直の壁である。上部垂直壁26BUは、鉛直に延びていてもよく、鉛直面から若干傾いていてもよい。例えば、上部垂直壁26BUは、鉛直面から±10度以内、好ましくは±5度以内の角度で傾いていてもよい。上部垂直壁26BUは、ポータブルトイレ1の使用時に、放尿の勢いで尿が容器20の前方に飛び散らないようにする役割を果たす。尿の飛び散りを防ぐ観点から、上部垂直壁26BUの上下寸法は3mm以上が好ましく、8mm以上が更に好ましい。一方、上部垂直壁26BUの上下寸法が大きいと、ポータブルトイレ1の使用後、容器20を前方に傾けて汚水を排出する際に、残った最後の汚水が上部垂直壁26BUの手前でジャンプし、上部垂直壁26BUに当たって飛び出しやすくなる傾向がある。このような汚水の飛び散りを防止する観点から、上部垂直壁26BUの上下寸法は30mm以下が好ましく、20mm以下が更に好ましい。上下垂直壁26BUの上下寸法を17mm以下にすれば、汚水の飛び出しをより一層防止することができる。
【0047】
図11は、前側周壁26Bの鉛直断面図であり、
図4のXI-XI線断面図である。
図11に示す鉛直断面は、前側周壁26Bの後端26Bbと容器20の前端20fとの中間位置における前側周壁26Bの鉛直断面である。
図11に示すように、前側周壁26Bは、下壁部27Dと、下壁部27Dの左端から上方に延びる左壁部27Lと、下壁部27Dの右端から上方に延びる右壁部27Rとを有している。
図3に示すように、これら下壁部27D、左壁部27L、および右壁部27Rにより、上方から見て前後に延びる流路27が形成されている。
【0048】
流路27の左右の幅W27は、比較的大きくなっている。なお、ここで言う流路27の左右の幅W27とは、流路27の前記断面(前側周壁26Bの後端26Bbと容器20の前端20fとの中間位置の断面)における左右の幅のことである。流路27の左右の幅W27は、底壁24の半径r24の半分よりも大きい。また、流路27の左右の幅W27は、底壁24の水平壁24Aの半径r24Aよりも大きい。ここでは、流路27の左右の幅W27は、底壁24の半径r24よりも大きくなっている。また、流路27の左右の幅W27は、環状脚28の半径r28(
図6参照)よりも大きい。なお、環状脚28の半径とは、環状脚28の内径の1/2を意味することとする。環状脚28は、下方から見て略環状に形成されている。略環状には、底壁24の中心24C周りに一周した形状(すなわち、厳密な環状)と、
図6に示すように、環状の一部に切れ目28aが設けられている形状とが含まれる。
【0049】
流路27の左右の幅W27の上限値は特に限定されないが、例えば、170mm以下が好ましい。これにより、標準的な和式便器の比較的小さな溜水部に対しても、汚水を溢れさせずに一気に注ぎやすくなる。
【0050】
ポータブルトイレ1では、使用前に、バケツ10に予め定められた所定容積の水を溜めておくことが推奨される。
図7に示すように、周壁26には、容器20の中に所定容積の水が貯留されるときの水面の位置を示す目印として、段差25が設けられている。ここでは、段差25は、容器20の中に1リットルの容積の水が貯留されるときの水面の位置に設けられている。1リットルの水を溜めておけば十分な水位を確保することができるので、通常、便は水中に没し、臭気の発生を抑えることができる。段差25は、後側周壁26Aに設けられているが、前側周壁26Bに設けられていてもよい。なお、目印は、視認可能なものであればよく、段差25に限られない。目印として、段差25に代えて、溝、突起などを用いてもよい。また、目印として、着色した線、図形、文字、記号などを用いてもよい。ただし、目印として段差25を用いることとすれば、汚れが堆積しても視認性を確保することができ、また、長期間の使用後も消えたりしないので、特に好ましい。
【0051】
図7に示すように、上縁部22は、周壁26の上方に位置する内周壁22Aと、内周壁22Aの上端から外側に延びる上壁22Bと、上壁22Bの外端から下方に延びる外周壁22Cとを有している。上縁部22は、内側から外側に向けて下方に折り返されたような形状に形成されている。上縁部22は、断面が逆U字状に形成されている。なお、内周壁22Aは前述の上部垂直壁26BUと一致していてもよく、上部垂直壁26BUの一部であってもよい。
【0052】
図4に示すように、容器20の左側部分および右側部分には、取っ手50(
図2参照)が係合される軸孔30が形成されている。ここでは、軸孔30は、上縁部22の外周壁22Cの左側部分および右側部分に形成されている。
【0053】
図12に示すように、軸孔30は、円孔31と、円孔31から上方に延びる縦孔32とを含んでいる。なお、
図12における仮想線30sは、円孔31と縦孔32との境界を表す線である。円孔31は下方に位置する下孔の一例であり、縦孔32は下孔から上方に延びる上孔の一例である。縦孔32は、円孔31から上方に真っ直ぐに延びている。縦孔32は、上下に直線状に延びる前縁32fおよび後縁32bと、前縁32fおよび後縁32bの上端同士を繋ぐ上縁32tを有している。上縁32tは水平に延びている。後縁32bは前縁32fの後方に形成されており、前縁32fと対向している。本実施形態では、前縁32fは円孔31の前端31fから上方に延びている。軸孔30はb型に形成されている。縦孔32の中心線(前縁32fと後縁32bとの中間を通る上下に延びる線)32CLは、円孔31の中心31Cから前縁32f側にずれている。前縁32fの上下長さH32fは、前縁32fと後縁32bとの間の孔幅W32よりも長い。
【0054】
図13に示すように、外周壁22Cの縦孔32の周囲部分には、外側に突出する逆U字状の補強リブ34が設けられている。補強リブ34は、外周壁22Cから軸線方向の一方に突出している。詳しくは、左側の縦孔32の周囲部分には、左方に突出する補強リブ34が設けられ、右側の縦孔32の周囲部分には、右方に突出する補強リブ34が設けられている。補強リブ34は、縦孔32の前方に位置する前リブ34Aと、縦孔32の後方に位置する後リブ34Bと、縦孔32の上方に位置する上リブ34Tとを有している。また、円孔31の周囲部分にも、外側に突出する円弧状の補強リブ35が設けられている。補強リブ34と補強リブ35とは繋がっている。本実施形態では、補強リブ34および補強リブ35は、軸孔30の全体を囲むように形成されている。
【0055】
また、外周壁22Cには、補強リブ34から前方および後方に延びる横リブ36A,36Bが設けられている。横リブ36Aは横リブ36Bの上方に形成されている。下側の横リブ36Bの前後長さは、上側の横リブ36Aの前後長さよりも長くなっている。
【0056】
図4および
図5に示すように、上縁部22の後側かつ左右方向の中央の部分には、後方に突出する持ち手40が設けられている。
図14は、持ち手40の縦断面図であり、
図7のXIV部分の拡大図である。
図14に示すように、持ち手40は、外周壁22Cの下端から後方かつ下方に延びる湾曲壁41と、湾曲壁41の後端から後方に延びる横壁42と、横壁42の後端から下方に延びる縦壁43とを有している。また、
図5に示すように、持ち手40は、それぞれ湾曲壁41、横壁42、および縦壁43の左方および右方に設けられた左壁44Lおよび右壁44Rを有している。本実施形態では、横壁42は水平方向に延び、縦壁43は鉛直方向に延びている。ただし、横壁42は水平方向から若干傾いていてもよく、縦壁43は鉛直方向から若干傾いていてもよい。
【0057】
持ち手40の左右の長さW40(
図5参照)は、少なくとも3本の指が挿入できる長さに設定されている。ここでは、持ち手40の左右の長さW40は、35mm以上に設定されている。なお、持ち手の左右の長さW40は、持ち手40の内寸のことである。すなわち、持ち手40の左壁44Lの右側面と右壁44Rの左側面との間の間隔のことである。
図14に示すように、持ち手40を引っ掛けやすいように、縦壁43の上下の長さH43は2mm以上であり、好ましくは4mm以上である。湾曲壁41の曲率半径Rは、少なくとも1mm以上であり、好ましくは3mm以上である。また、湾曲壁41の曲率半径Rは、30mm以下が好ましい。
【0058】
図15は、容器20の前端部の拡大断面図であり、
図7のXV部分の拡大図である。
図15に示すように、容器20の上縁部22には、外周壁22Cの前部から前方に突出する液切り板23が設けられている。ここでは、液切り板23は、上壁22Bと面一に形成されている。
【0059】
図2に示すように、容器20の前後長さは、容器20の左右長さよりも長くなっている。
図4に示すように、容器20の前端20fと軸孔30との間の前後方向の長さL20fは、容器20の後端20bと軸孔30との間の前後方向の長さL20bよりも長い。なお、容器20の前端20fと軸孔30との間の前後方向の長さとは、容器20の前端20fと軸孔30の前後方向の中央位置(ここでは、円孔31の中心31Cの位置)との間の前後方向の長さのことである。同様に、容器20の後端20bと軸孔30との間の前後方向の長さとは、容器20の後端20bと軸孔30の前後方向の中央位置(ここでは、円孔31の中心31Cの位置)との間の前後方向の長さのことである。
【0060】
以上が容器の構成である。次に、取っ手50について説明する。
図16は取っ手50の斜視図である。
図17は、
図16のXVII部分の拡大図である。
【0061】
<取っ手>
図16に示すように、取っ手50は、柄部51と、柄部51の両端部に設けられた係合部52とを有している。係合部52は、容器20の軸孔30に係合する部分である。
図17に示すように、係合部52は、柄部51の先端部から内側に延びている。係合部52は、軸54と、軸54の内側に設けられたストッパ56と、軸54の外側に設けられた補強部58とを有している。ストッパ56は、軸54の先端側に設けられている。詳しくは、取っ手50の右側の係合部52は、補強部58と、補強部58の左方に設けられた軸54と、軸54の左方に設けられたストッパ56とを有している。取っ手50の左側の係合部52は、補強部58と、補強部58の右方に設けられた軸54と、軸54の右方に設けられたストッパ56とを有している。
【0062】
軸54は四角柱状に形成されている。
図18に示すように、軸54の横断面形状は、四角形状に形成されている。なお、ここで言う四角形状には、隅部が直角の厳密な四角形に限らず、
図18に示すように隅部に丸みが設けられた四角形状も含まれる。軸54は、第1軸縁54aと、第1軸縁54aの反対側に位置する第2軸縁54bと、第1軸縁54aの一端と第2軸縁54bの一端とを結ぶ第3軸縁54cと、第1軸縁54aの他端と第2軸縁54bの他端とを結ぶ第4軸縁54dとを有している。第1軸縁54aおよび第2軸縁54bの長さは、第3軸縁54cおよび第4軸縁54dの長さよりも長くなっている。
【0063】
取っ手50は容器20に対して回動可能に係合するので、
図19に示すように、取っ手50は前方に倒すことができる。また、
図20に示すように、取っ手50は立てることができる。また、
図21に示すように、取っ手50は後方に倒すことができる。なお、取っ手50を後方に倒したときに、取っ手50は持ち手40の横壁42の上に載せられる。取っ手50を後方に倒したときに、取っ手50は持ち手40によって支持される。
【0064】
軸54は軸孔30に挿入されている。軸54は、円孔31内にて回動可能な大きさに形成されている。軸54の横断面の最大寸法L54(ここでは、対角方向の寸法である。
図18参照)は、円孔31の内径よりも小さくなっている。軸54が円孔31内にある場合、取っ手50を回動させることができる。取っ手50が倒れた状態では、軸54は円孔31内に配置される。
【0065】
取っ手50を立てて持ち上げると(
図20参照)、
図22に示すように、軸54は円孔31から縦孔32に移動し、縦孔32に嵌まり込む。軸54が縦孔32に嵌まり込むと、軸54の回動は縦孔32によって規制される。そのため、取っ手50を立てて持ち上げると、取っ手50は回動不能となる。軸54および縦孔32は、取っ手50を立てて持ち上げたときに取っ手50を容器20に対して回動不能に固定するロック機構55を構成している。
【0066】
軸54が縦孔32に嵌まり込むと、第1軸縁54aは縦孔32の前縁32fに対向し、第2軸縁54bは縦孔32の後縁32bに対向する。第3軸縁54cは、縦孔32の上縁32tに当接する。縦孔32の孔幅W32(
図12参照)は、第3軸縁54cの長さH54cと等しいか、あるいは、第3軸縁54cの長さH54cよりも若干大きい。縦孔32の前縁32fの上下長さH32fは、第1軸縁54aの長さH54aよりも長い。縦孔32の後縁32bの上下長さH32bは、第1軸縁54aの長さH54aよりも短い。
【0067】
図18に示すように、補強部58は軸54と同様、四角柱状に形成されている。補強部58の横断面形状は、軸54よりも一回り大きな四角形状に形成されている。
図22に示すように、軸54が縦孔32に嵌まり込むと、補強部58は補強リブ34の内側に挿入される。補強部58は補強リブ34の内側に嵌まり込み、補強リブ34と接触する。
【0068】
図17に示すように、ストッパ56は、円板状のストッパ本体部56Aと、ストッパ本体部56Aから突出した突部56Bとを有している。軸54の軸線方向から見て、ストッパ56はb型に形成されている。ストッパ56は、取っ手50の係合部52が軸孔30から抜けることを防止するために設けられている。
図23~
図25は、軸54の軸線方向から見たときの軸孔30、ストッパ56、および軸54を模式的に表した図である。
図23~
図25は、容器20の右側の外周壁22Cを裏側から見た図(言い換えると、容器20の右側の外周壁22Cを左側から右向きに見た図)である。
【0069】
図23に示すように、取っ手50を倒したときに軸線方向から見て、ストッパ本体部56Aの少なくとも一部は、円孔31の内側に位置している。ストッパ本体部56Aは、軸線方向から見て円孔31の内径以下の外径を有する円形状に形成されていてもよいが、ここでは、円孔31の内径よりも若干大きな外径を有する円形状に形成されている。ストッパ本体部56Aの外径D56Aは、縦孔32の孔幅W32よりも大きい。
【0070】
図21に示すように取っ手50を後方に倒したときに、
図23に示すように軸線方向から見て、突部56Bはストッパ本体部56Aから上方に突出している。取っ手50を後方に倒したときに軸線方向から見て、突部56Bは、縦孔32の内側に位置している。容器20は樹脂製であり、弾性を有している。取っ手50を後方に倒した状態でストッパ56を軸孔30に挿入すると、円孔31はストッパ本体部56Aによって一時的に押し広げられる。よって、ストッパ本体部56Aは円孔31を通過することができる。また、突部56は縦孔32の内側に位置しているので、そのまま縦孔32を通過することができる。よって、取っ手50を後方に倒した状態でストッパ56を表側から軸孔30に押し当てることにより、ストッパ56を軸孔30の裏側(言い換えると、外周壁22Cの内側)に配置することができる。
【0071】
図24に示すように、取っ手50を倒れた状態から回動させると、突部56Bは、軸線方向から見て軸孔30の外側に移動する。突部56Bは、軸線方向から見て外周壁22Cの軸孔30の周囲部分と重なる。突部56Bが軸孔30の周囲部分と当接することにより、取っ手50が軸線方向にずれることが規制され、取っ手50が軸孔30から抜けることが防止される。
【0072】
図20に示すように取っ手50を立てて持ち上げると、
図25に示すように、軸54は円孔31から縦孔32に移動する。突部56Bは、軸線方向から見て縦孔32の前方に位置する。この場合にも、突部56Bは、軸線方向から見て外周壁22Cの軸孔30の周囲部分と重なる。よって、取っ手50が軸孔30から抜けることが防止される。
【0073】
ポータブルトイレ1を使用した後、利用者は、取っ手50を立てて持ち上げることにより、バケツ10をトイレ本体2から取り外す。また、利用者は、取っ手50を掴みながら移動することにより、バケツ10を便所まで運ぶ。前述したように、容器20は、軸孔30の前方部分の長さL20fの方が、軸孔30の後方部分の長さL20bよりも長くなっている(
図4参照)。しかし、前側周壁26Bは、側方から見て前斜め上向きに傾斜している。容器20は、所定量以下の水が貯留される場合に、容器20および水の全体の重心の前後方向の位置が、水位に拘わらず軸孔30の近傍に位置するように形成されている。すなわち、容器20は、所定容積以下の水が貯留される場合、容器20および水の合計の重心が実質的に軸孔30の真下に位置するように形成され、水位が変わっても重心の前後位置の変動が少なくなるように形成されている。
【0074】
容器20の貯留量が多すぎるとバケツ10を運ぶことが大変となるため、ポータブルトイレ1では、予め容器20の貯留容積の上限値を設定することが多い。上記所定容積は、例えば、容器20の貯留容積の上限値と等しくてもよい。ただし、限定されない。上記所定容積は、容器20の貯留容積の上限値よりも少なくてもよい。ここでは、
図20に示すように、容器20は、容器20の内容積の50%以下の水が貯留される場合に、容器20および水の全体の重心の前後方向の位置が、水位に拘わらず軸孔30の前端から10mm前方の位置P1と、軸孔30の後端から10mm後方の位置P2との間に位置するように形成されている。
【0075】
上述の通りバケツ10は、水位が変わっても重心の前後位置の変動が少なくなるように形成されているが、バケツ10をトイレ本体2から取り外したり、運搬したりする際に、バケツ10が揺れたり、家具等に触れることによって傾く場合がある。容器20の形状によっては、傾いた側に重心が移動し、傾きを促進するように重力が働く場合があり得る。その場合、傾きが大きくなって、容器20から汚水がこぼれる現象が起こり得る。例えば、軸孔30の軸線C1(
図2参照)を通る鉛直面から離れた箇所に、傾いた側に水の溜まり得る溜まり隅形状が存在する場合等である。しかし、傾いた側に溜まる水の容積を減らすように容器20の形状を工夫することにより、上記現象を回避することができる。例えば、溜まり隅となる底と前後壁とのなす角度を小さくするように、底に角度をつけたり、底と前後壁の間を曲面や球面にしたり、底を深くしたりすることにより、上記現象を回避することができる。
【0076】
本実施形態では、容器20は以下のように形成されている。
図26(a)~(c)において、鉛直線VPは、軸孔30の軸線C1を通る鉛直面を表す。角度θは、水平面に対する容器20の傾斜角度を表す。符号Gは、容器20および水の全体の重心の位置を表す。本実施形態では、容器20は、容器20の内容積の50%以下の水が貯留される場合に、
図26(b)に示すように、少なくとも容器20が水平面に対して0度よりも大きくかつ20度未満の角度θで後下がりに傾いた場合に、重心Gが鉛直面VPよりも前方に位置するように形成されている。また、容器20は、容器20の内容積の50%以下の水が貯留される場合に、
図26(c)に示すように、少なくとも容器20が水平面に対して0度よりも大きくかつ20度未満の角度θで前下がりに傾いたときに、重心Gが鉛直面VPよりも後方に位置するように形成されている。
【0077】
本実施形態によれば、バケツ10をトイレ本体2から取り外す際または運搬する際に、少なくとも、容器20が20度未満の角度で傾いている場合に、重力はその傾きを戻すように作用する。したがって、傾きが大きくなることが防止され、容器20から汚水がこぼれることが抑制される。なお、容器20は、20度以上の角度で傾いている場合にも、その傾きを戻すように重力が作用するように構成されていてもいてもよい。
【0078】
以上が、本実施形態に係るポータブルトイレ1およびバケツ10の構成である。次に、バケツ10の使用方法の一例について説明する。
【0079】
<バケツの使用方法>
利用者がポータブルトイレ1を使用すると、バケツ10に汚水が溜める。利用者はバケツ10の汚水を捨てるために、まず、取っ手50を立てて持ち上げることにより、バケツ10をトイレ本体2から取り外す。この際、取っ手50の軸54が容器20の縦孔32に嵌まり込み、取っ手50は容器20に回動不能に固定される。そのため、利用者は、バケツ10を容易に取り外すことができる。
【0080】
次に、利用者は、取っ手50を掴みながら便所に移動する。この際、取っ手50は容器20に回動不能に固定されているので、容器20が揺れることは抑制される。また、運ぶ途中で容器20が家具などに当たっても、大きく傾くことはない。そのため、バケツ10を運んでいるときに、汚水がこぼれることを防止することができる。
【0081】
利用者は、便所に到着した後、バケツ10の汚水を便所の便器に排出する。
図27~
図29を参照しながら、バケツ10から便器に汚水を排出する動作を説明する。
図27(a)、
図28(a)、
図29(a)は、バケツおよび便器を模式的に表す側面図であり、
図27(b)、
図28(b)、
図29(b)は、軸および軸孔を模式的に表す図である。
【0082】
図27(a)に示すように、利用者は、便器60の上方にて、一方の手h1で取っ手50を掴みながら、他方の手h2を容器20の持ち手40に下方から引っ掛ける。そして、持ち手40を持ち上げることにより、取っ手50と共に容器20を前方に傾ける。
【0083】
図28(a)に示すように、容器20の傾きを徐々に大きくすることにより、容器20内の汚水は便器に速やかに排出される。この際、
図28(b)に示すように、取っ手50の軸54は縦孔32の周囲部分から押され、軸54には縦孔32から傾くような力(矢印A1参照)が作用する。しかし、縦孔32の前縁32fの上下長さは軸54の第1軸縁54aの長さよりも長いので、軸54が傾いたとしても、第1軸縁54aの下端部54adは縦孔32の前縁32fに支持されたままである。そのため、軸54が縦孔32から外れることは防止される。
【0084】
したがって、
図29(a)および(b)に示すように、容器20を大きく傾けても、軸54は縦孔32から外れず、取っ手50の固定は解除されない。取っ手50が固定された状態を維持したまま、利用者の意図通りに容器20を傾けることができる。容器20を傾けている最中に取っ手50の固定が意図せずに解除されてしまうと、容器20が一気に傾き、汚水が急激に排出されて便器60の外に飛び散るおそれがある。しかし、本実施形態によれば、そのようなことを防止することができる。
【0085】
以上のように容器20から汚水を排出した後、利用者はバケツ10を洗浄する。この際、例えば、バケツ10を流し台または浴槽の床面等の上に置き、取っ手50を後方に倒す。これにより、取っ手50に邪魔されずに、容器20の中を洗浄することができる。
【0086】
利用者は、バケツ10を洗浄した後、容器20に所定容積の水を溜める。そして、取っ手50を立てて持ち上げ、取っ手50を掴みながらバケツ10を運び、トイレ本体2に装着する。その後、取っ手50を後方に倒し、便座5(
図1参照)を前方に倒す。これにより、ポータブルトイレ1は再び利用可能となる。なお、容器20に水を溜める作業は、バケツ10をトイレ本体2に装着する前に限らず、トイレ本体2に装着した後に行ってもよい。
【0087】
以上がバケツ10の使用方法の一例である。なお、ここでは、バケツ10の汚水を便所の便器60に排出することとしたが、汚水の排出場所は便所の便器に限定されない。
【0088】
<実施形態の効果>
次に、本実施形態によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0089】
前述したように、本実施形態に係るバケツ10によれば、取っ手50の軸54は容器20の円孔31の内部にて回動可能であるので、取っ手50は容器20に対して回動可能である。バケツ10をポータブルトイレ1のトイレ本体2に装着しているときに、取っ手50を後方に倒すことができるので(
図1参照)、ポータブルトイレ1の使用時に取っ手50は邪魔にならない。一方、取っ手50を立てて持ち上げると、取っ手50の軸54は容器20の円孔31から縦孔32に移動し、縦孔32に嵌まり込む。これにより、取っ手50は容器20に対して回動しないように固定される。そのため、利用者は、汚水がこぼれないようにバケツ10を運ぶことが容易となる。
【0090】
取っ手50は軸54の先端側に設けられたストッパ56を備えているが、取っ手50を後方に倒した状態では、ストッパ56の突部56Bは、軸54の軸線方向から見て縦孔32の内側に位置する。そのため、軸孔30にストッパ56を通すことは容易であり、取っ手50を容器20に容易に取り付けることができる。取っ手50を立てて持ち上げた状態では、ストッパ56の突部56Bは、軸54の軸線方向から見て容器20の縦孔32の周囲部分と重なる。そのため、取っ手50が軸54の軸線方向にずれても、ストッパ56の突部56Bが縦孔32の周囲部分に当接するので、軸54が軸孔30から抜けることはなく、取っ手50が容器20から外れることは防止される。したがって、取っ手50は容器20から外れにくい。
【0091】
本実施形態では
図12に示すように、軸54の軸線方向から見て、軸孔30はb型に形成されている。縦孔32は、円孔31の前端31fから上方に直線状に延びる前縁32fと、前縁32fの後方に位置し、上方に直線状に延びる後縁32bとを有している。縦孔32の中心線32CLは、円孔31の中心31Cから前縁32f側にずれている。中心線32CLが円孔31の中心31Cを通るように縦孔32が形成されている場合、前縁32fの上下長さH32fを同等に確保しようとすると、軸孔30の上下長さを長くする必要がある。中心線32CLが円孔31の中心31Cを通る場合、軸孔30の上下長さは、円孔31の上下長さH31と前縁32fの上下長さH32fとを足した長さとなる。しかし、本実施形態によれば、軸孔30の上下長さは、円孔31の上下長さH31と前縁32fの上下長さH32fとを足した長さよりも短い。よって、軸孔30の全体の上下寸法を抑えながら、前縁32fの上下長さを確保することができる。本実施形態によれば、容器20を傾けたときに取っ手50の固定が解除されてしまうことを防止する効果を奏する軸孔30を、小型化することができる。
【0092】
ポータブルトイレ1では、使用前に、所定の水位となるようにバケツ10に水が溜められる。
図10に示すように、容器20の底壁24を、前方に行くほど上方に向かうように傾斜させることとすれば、水量が比較的少なくても、容器20内において水位を確保しやすくなる。よって、節水することができる。
【0093】
図15に示すように、容器20の上縁部22は、外周壁22Cの前部から前方に突出する液切り板23を有している。そのため、容器20を前方に傾けて汚水を排出したときに、汚水は液切り板23の先端から流れ落ちる。汚水が外周壁22Cや前側周壁26Bを伝ってしまうことが抑制され、外周壁22Cおよび前側周壁26Bが汚れてしまうことを抑制することができる。よって、汚水の排出によって容器20の外周壁22Cおよび前側周壁26Bが汚れてしまうことを抑制することができる。
【0094】
本実施形態によれば、容器20は逆U字状の補強リブ34を有し、軸54は、取っ手50を立てて持ち上げたときに補強リブ34の内側に挿入される補強部58を有している。そのため、容器20を傾けたときに、取っ手50から容器20に加わる力は、縦孔32の前縁32fだけでなく、補強リブ34によっても支持される。縦孔32の周囲部分は変形し難いため、軸54が縦孔32から外れることがより一層防止される。したがって、容器20を傾けたときに、取っ手50の固定が解除されてしまうことを更に効果的に防止することができる。
【0095】
本実施形態によれば、容器20は更に、補強リブ34から縦孔32の前方および後方に延びる横リブ36Aを有している。そのため、縦孔32の周囲部分は更に変形し難くなり、軸54が縦孔32から外れることが更に確実に防止される。容器20を傾けたときに、取っ手50の固定が解除されてしまうことを更に効果的に防止することができる。
【0096】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも様々な形態にて実施することができる。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0097】
前記実施形態では、取っ手50を後方に倒した状態でストッパ56を軸孔30に挿入するように構成されていたが(
図23参照)、
図30に示すように、取っ手50を前方に倒した状態でストッパ56を軸孔30に挿入するように構成されていてもよい。すなわち、ストッパ56は、取っ手50を前方に倒したときに軸線方向から見て、突部56Bが縦孔32の内側に位置するように形成されていてもよい。この場合、取っ手50を前方に倒すことにより、取っ手50を容器20に取り付けることができる。容器20をトイレ本体2に取り付けた時または床面等に置いた時に、取っ手50を後方に倒すと、ストッパ56の突部56Bは円孔31の下方に位置し、突部56Bは円孔31の下側部分と係合可能となる。そのため、取っ手50を持ち上げたときだけでなく、取っ手50を後方に倒したときも、取っ手50が容器20から抜けることを防止することができる。
【0098】
図3に示すように、前記実施形態では容器20の上縁部22に注ぎ口は形成されていないが、
図31に示すように、容器20の上縁部22の前端部に、下方に凹んだ注ぎ口29が形成されていてもよい。このことにより、容器20を前方に傾けたときに、汚水は注ぎ口29から集中的に排出される。よって、汚水が左右に飛散することが防止され、汚水を便器に良好に排出することができる。
【0099】
前述した容器20の底壁24および周壁26の形状は一例に過ぎず、何ら限定されない。
【0100】
取っ手50の軸54が回動可能である限り、下孔の形状は特に限定されない。下孔は円孔31に限定されない。下孔は、例えば長円孔であってもよく、矩形孔であってもよい。
【0101】
軸54の軸線方向から見て、ストッパ本体部56Aの形状は円形に限定されない。軸54の横断面形状は四角形状に限定されない。
【0102】
前記実施形態では、バケツ10は、前方に傾けることにより汚水を排出するように構成されている。しかし、汚水を排出するときにバケツ10を傾ける方向は、前方に限定されない。例えば、後方に傾けることにより汚水を排出するようにバケツ10が構成されている場合、軸孔30は前後逆の形状に形成すればよい。軸孔30が容器20の前側部分および後側部分に形成され、取っ手50が容器20の前側部分から後側部分に架け渡されている場合、容器20を左方または右方に傾けることにより汚水を排出することができる。
【0103】
ストッパ56の突部56Bは、取っ手50を立てたとき、または、後方に倒したときに、軸54の軸線方向から見て縦孔32の内側に位置するように構成されていてもよい。
【0104】
ストッパ56の突部56Bは、取っ手50を立てて持ち上げたときに、突部56Bの先端が軸孔30の後端30bよりも前方に位置するように構成されていてもよい。
【0105】
軸孔30は、軸54の軸線方向から見てb型に形成されていなくてもよい。軸54の軸線方向から見て、縦孔32の中心線32CLは、円孔31の中心31Cを通っていてもよい。
【0106】
容器20の前端20fと軸孔30との間の前後方向の長さL20fは、容器20の後端20bと軸孔30との間の前後方向の長さL20bと等しくてもよく、長さL20bよりも短くてもよい。
【0107】
容器20の液切り板23は無くてもよい。
【0108】
補強リブ34は無くてもよい。横リブ36Aまたは36Bは無くてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…ポータブルトイレ、2…トイレ本体、10…ポータブルトイレ用バケツ、20…容器、22…上縁部、22C…外周壁、23…液切り板、24…底壁、29…注ぎ口、30…軸孔、31…円孔(下孔)、32…縦孔(上孔)、32f…前縁、32b…後縁、34…補強リブ、36A…横リブ、36B…横リブ、50…取っ手、54…軸、54a…第1軸縁、54b…第2軸縁、54c…第3軸縁、54d…第4軸縁、56…ストッパ、56A…ストッパ本体部、56B…突部、58…補強部