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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101233
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20220629BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B60C19/00 J
B60C15/06 A
B60C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215689
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA39
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC25
3D131BC31
3D131BC51
3D131DA01
3D131DA15
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA54
3D131HA01
3D131HA32
3D131HA35
3D131HA42
3D131HA43
3D131HA46
3D131LA06
3D131LA20
3D131LA24
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】電子部品を保護することが可能なタイヤを提供すること。
【解決手段】タイヤ1は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、ビード11の少なくとも一部を包み込むフリッパー50と、一方のビード11から他方のビード11に延びるプライ本体24と、ビード11で折り返されるプライ折り返し部25と、を有し、フリッパー50を包み込むカーカスプライ23と、フリッパー50と接するようにタイヤ内に埋設された電子部品としてのRFIDタグ40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーとを有する一対のビードと、
前記ビードの少なくとも一部を包み込むフリッパーと、
一方のビードから他方のビードに延びるプライ本体と、前記ビードで折り返されるプライ折り返し部と、を有し、前記フリッパーを包み込むカーカスプライと、
前記フリッパーと接するようにタイヤ内に埋設された電子部品と、を備えるタイヤ。
【請求項2】
前記電子部品は、前記ビードフィラーと前記フリッパーとの間に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記電子部品は、前記カーカスプライと前記フリッパーとの間に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記フリッパーは、前記ビードコアおよび前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側を覆う内側部と、前記ビードコアおよび前記ビードフィラーのタイヤ幅方向外側を覆う外側部と、を備え、
前記電子部品は、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側において、前記フリッパーの前記内側部と、前記フリッパーの前記外側部との間に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記電子部品は、少なくともその一部が、前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側に10mmの位置以内に配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記フリッパーは、有機繊維コード層を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が埋設されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFIDタグ等の電子部品を埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器としてのリーダとが通信を行うことにより、タイヤの製造管理、使用履歴管理等を行うことができる。例えば特許文献1には、RFタグを、スティフナーの近傍に埋設したタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-37236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される技術によれば、タイヤの製造管理、出荷管理、使用履歴管理等を行うことができる。しかしながら、特許文献1に示される技術においては、RFタグが、スティフナーとサイドゴムの間に配置されており、RFタグとタイヤ外壁との間に、カーカスプライのような繊維層が存在しない。よって、タイヤが大きく歪んだ場合や、タイヤに衝撃が加わった場合に、RFタグが保護されずに、損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子部品を保護することが可能なタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤは、ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーとを有する一対のビードと、前記ビードの少なくとも一部を包み込むフリッパーと、一方のビードから他方のビードに延びるプライ本体と、前記ビードで折り返されるプライ折り返し部と、を有し、前記フリッパーを包み込むカーカスプライと、前記フリッパーと接するようにタイヤ内に埋設された電子部品と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電子部品を保護することが可能なタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2図1のタイヤの部分拡大断面図である。
図3】上記実施形態に係るタイヤのフリッパーを説明するための図である。
図4】ビードコアとRFIDタグの距離と、通信距離との関係を示す図である。
図5】上記実施形態の第1変形例に係るタイヤの部分拡大断面図である。
図6】上記実施形態の第2変形例に係るタイヤの部分拡大断面図である。
図7】上記実施形態の第3変形例に係るタイヤの部分拡大断面図である。
図8A】第2実施形態に係るタイヤにおける、保護部材によって保護された、RFIDタグを示す図である。
図8B図8Aのb-b断面を示す図である。
図8C図8Aのc-c断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤ1の基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
【0010】
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
【0011】
なお、図1の断面図は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図(タイヤ子午線断面図)である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
なお、上述の内容は、図2、5~7についても同様である。
【0013】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、ビード11の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール12と、サイドウォール12の各々のタイヤ径方向外側に連なって踏面(路面との接地面)13Cを構成するタイヤの周方向に延びる環状のトレッド13と、を備える。
【0014】
図2に、図1に示される本実施形態のタイヤ1における、ビード11およびサイドウォール12のタイヤ径方向内側領域周辺の拡大断面図を示す。
【0015】
ビード11は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを備える。
【0016】
ビードコア21は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状の部材であり、空気が充填されたタイヤ1を、ホイールのリム(不図示)に固定する役目を果たす部材である。
【0017】
ビードフィラー22は、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出する、先端先細り形状のゴム部材である。ビードフィラー22は、タイヤ径方向外側端22Aと、タイヤ径方向内側端22Bを有する。ビードフィラー22のタイヤ径方向内側端22Bは、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21Aと接触している。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。ビードフィラー22は、例えば周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。ビードフィラーを構成するゴムのモジュラスは、少なくとも後述のインナーライナー29を構成するゴムおよびサイドウォールゴム30を構成するゴムのモジュラスよりも高い。
【0018】
タイヤ1の内部には、一対のビード11間を架け渡されたカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、タイヤ1の骨格となるプライを構成しており、一対のビード11間を、一対のサイドウォール12およびトレッド13を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
【0019】
カーカスプライ23は、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延び、トレッド13とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、サイドウォール12の領域において、プライ本体24に重ね合わされている。プライ折り返し部25は、端部25Aを有する。本実施形態においては、プライ折り返し部25の端部25Aは、トレッド13の領域に位置している。
【0020】
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。本実施形態においては、カーカスプライ23を構成するプライコードは、タイヤ1の中心から放射状(ラジアル方向)に配置されている。すなわち、本実施形態のタイヤ1は、プライコードが放射状に延びるように配置された所謂ラジアルタイヤである。
【0021】
なお、本実施形態のカーカスプライ23は、1層のプライ本体24を備える1層構造のカーカスプライ23である。しかしながら、カーカスプライ23は、複数層のプライ本体24を備える複数層構造のカーカスプライ23であってもよい。
【0022】
ビード11は、チェーハー31と、チェーハー31のタイヤ幅方向外側に配置されたリムストリップゴム32と、をさらに備える。
【0023】
チェーハー31は、ビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23を覆うように設けられている。より詳細には、チェーハー31は、ビードコア21周辺のカーカスプライ23のタイヤ幅方向内側、タイヤ径方向内側、タイヤ幅方向外側を覆うように設けられている。チェーハー31は、プライ本体24のタイヤ幅方向内側に配置された第1の端部31Aと、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置された第2の端部31Bと、を有する。チェーハー31は、例えば繊維を練り込んだゴムや、モジュラスの高いゴムにより構成されており、タイヤ1を構成する構成部材の中で、比較的強度が高い。例えば、後述のインナーライナー29やサイドウォールゴム30よりも強度が高い。
【0024】
リムストリップゴム32は、チェーハー31およびカーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側に配置されており、ホイールにタイヤ1が装着される際に、そのタイヤ幅方向外側が、ホイールのリム(不図示)と接触するゴム部材である。リムストリップゴム32は、タイヤ径方向外側端32Aと、タイヤ径方向内側端32Bを有する。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。
【0025】
ビード11には、フリッパー50が配置されている。フリッパー50は、ビードコア21を覆うように設けられている補強繊維層である。フリッパー50は、ビード全体の剛性を高める。これにより、ビード11とリムとの圧着性が高まり、ビード11のリム外れの発生を抑制することができる。フリッパー50は、ビードコア21と、ビードコア21周り設けられたカーカスプライ23との間に挟まれるようにして配置されている。より詳細には、フリッパー50は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側を覆う第1部分51と、タイヤ径方向内側を覆う第2部分52と、タイヤ幅方向外側を覆う第3部分53と、を備える。フリッパー50は、ビード11の少なくとも一部を包み込む。本実施形態においては、フリッパー50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とによって、ビード11を構成するビードコア21の少なくとも一部を包み込む。本実施形態においては、フリッパー50は、ビード11を構成するビードコア21と、ビードフィラー22とを包み込んでいる。
【0026】
第1部分51は、ビードコア21よりもタイヤ径方向外側に延出している。本実施形態においては、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。第1部分51は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側に加えて、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側を覆うように配置されている。
【0027】
第1部分51は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側とプライ本体24との間に挟まれて配置されている部分と、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側とプライ本体24との間に挟まれて配置されている部分と、を有する。本実施形態においては、第1部分51はさらに、プライ本体24とフリッパー50の第3部分53との間に挟まれて配置されている部分と、プライ本体24プライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分とを有する。
【0028】
なお、本実施形態においては、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aは、サイドウォール12における、タイヤ内腔部がタイヤ幅方向に一番広がっている部分に対応するタイヤ径方向位置に配置されている。このように、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aは、タイヤ内腔部がタイヤ幅方向に一番広がっている部分に対応するタイヤ径方向位置か、あるいはそれよりもタイヤ径方向内側に配置されていることが好ましい。また、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと同等のタイヤ径方向位置か、あるいはそれよりもタイヤ径方向内側に配置されていてもよい。フリッパー50は、ビード11の少なくとも一部を包み込んでいればよい。タイヤ1に求められる剛性に応じて、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aのタイヤ径方向位置は調整される。
【0029】
第2部分52は、ビードコア21のタイヤ径方向内側と、カーカスプライ23との間に挟まれて配置されている。
【0030】
第3部分53は、ビードコア21よりもタイヤ径方向外側に延出している。本実施形態においては、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。第3部分53は、ビードコア21のタイヤ幅方向外側に加えて、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側を覆うように配置されている。
【0031】
第3部分53は、ビードコア21のタイヤ幅方向外側とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分と、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側とプライ折り返し部25との間に挟まれて配置されている部分と、を有する。本実施形態においては、第3部分53はさらに、プライ折り返し部25とフリッパー50の第1部分51との間に挟まれて配置されている部分を有する。
【0032】
なお、本実施形態においては、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aは、サイドウォール12における、タイヤ内腔部がタイヤ幅方向に一番広がっている部分に対応するタイヤ径方向位置よりもタイヤ径方向内側に配置されている。第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aは、タイヤ内腔部がタイヤ幅方向に一番広がっている部分に対応するタイヤ径方向位置か、あるいはそれよりもタイヤ径方向内側に配置されていることが好ましい。また、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと同等のタイヤ径方向位置か、あるいはそれよりもタイヤ径方向内側に配置されていてもよい。フリッパー50は、ビード11の少なくとも一部を包み込んでいればよい。タイヤ1に求められる剛性に応じて、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aのタイヤ径方向位置は調整される。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aは、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aよりもタイヤ径方向外側に位置している。したがって、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aは、フリッパー50のタイヤ径方向外側端を構成する。なお、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aが、第1部分51のタイヤ径方向外側端51Aよりもタイヤ径方向外側に位置していてもよい。この場合は、第3部分53のタイヤ径方向外側端53Aが、フリッパー50のタイヤ径方向外側端を構成する。
【0034】
本実施形態のフリッパー50は、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維を含む有機繊維コード層により構成されている。図3は、フリッパー50を構成する有機繊維コード層を説明するための図であり、タイヤ1内に配置されているフリッパー50を、タイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かって見た場合の仮想的な図である。フリッパー50は、複数の有機繊維を撚り合わせて形成した複数のコード50Aと、複数のコード50Aを被覆して一体化するトッピングゴムとしてのゴム50Bとを含んで構成される。図3においては、フリッパー50の第3部分53を構成する複数のコード50Aが実線で示されている。
【0035】
図3に示すように、フリッパーを構成する複数のコード50Aは、ラジアル方向Rに対して傾斜して延び、傾斜状態でタイヤ周方向Cに間隔をあけて配置されている。タイヤ1のラジアル方向Rと、フリッパー50のコード50Aの延在方向とのなす角度θは、20°以上50°以下であることが好ましい。なお、本実施形態においては、カーカスプライ23を構成するプライコードは、タイヤ1の中心から放射状(ラジアル方向)に配置されている。よって、本実施形態においては、カーカスプライ23のプライコードの延在方向と、フリッパー50のコード50Aの延在方向とのなす角度θは、20°以上50°以下となっている。
【0036】
なお、フリッパー50は、ビードコア21で巻き返されている。よって、フリッパー50の第1部分51を構成する複数のコード50Aは、破線で示されるように、ラジアル方向Rに対して、第3部分53を構成する複数のコード50Aとは反対方向に傾斜している。第1部分51においても、タイヤ1のラジアル方向Rと、フリッパー50のコード50Aの延在方向とのなす角度θは、20°以上50°以下であることが好ましい。
【0037】
サイドウォール12は、カーカスプライ23の幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム30を備える。
【0038】
サイドウォールゴム30は、タイヤ1の外壁面を構成するゴム部材である。サイドウォールゴム30は、タイヤ径方向外側端30Aと、タイヤ径方向内側端30Bを有する。このサイドウォールゴム30は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0039】
トレッド13は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されたベルトとしてのスチールベルト26と、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置されたキャッププライ27と、キャッププライ27のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴム28と、を備える。
【0040】
スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、トレッド13と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層構造のスチールベルト(内側のスチールベルト261と外側のスチールベルト262)が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。なお、スチールコードを用いたスチールベルト26に替えて、アラミド繊維を用いたタイヤコード等を用いたベルトを用いてもよい。なお、本実施形態の2層構造のスチールベルト26は、内側のスチールベルト261が外側のスチールベルト262よりも幅広である。したがって、内側のスチールベルト261のタイヤ幅方向外側端が、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aを構成する。
【0041】
キャッププライ27は、スチールベルト26のタイヤ径方向外側に配置された部材であり、ベルト補強層としての機能を有する。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、トッピングゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。本実施形態においては、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向外側に延出している。
【0042】
トレッドゴム28は、踏面(路面との接地面)13Cを構成する部材である。トレッドゴム28は、タイヤ幅方向外側端28Aを有する。トレッドゴム28の踏面13Cには、複数の溝で構成されるトレッドパターン(不図示)が設けられている。
【0043】
ビード11、サイドウォール12、トレッド13において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0044】
ここで、図1に示されるように、サイドウォール12のサイドウォールゴム30は、トレッド13に向かって延出している。一方、トレッド13のトレッドゴム28は、サイドウォール12に向かって延出している。その結果、カーカスプライ23の一部領域のタイヤ外表面側において、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが積層された状態となっている。より詳細には、サイドウォールゴム30とトレッドゴム28とが共に存在する領域、すなわちサイドウォール12とトレッド13の移行領域において、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、トレッドゴム28と、サイドウォールゴム30とが、順に積層された状態となっている。
【0045】
図1および図2に示されるように、ビード11およびサイドウォール12におけるカーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32と、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側に配置されたサイドウォールゴム30が配置されている。そして、本実施形態においては、リムストリップゴム32のタイヤ径方向外側端32Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりも、タイヤ径方向外側に配置されている。これにより、リム装着部付近で局所的な変形が生じることをより効果的に抑制することができる。
【0046】
また、図1および図2に示されるように、ビード11とサイドウォール12の移行領域付近においては、カーカスプライ23のタイヤ外表面側に、リムストリップゴム32とサイドウォールゴム30とが、順に積層された状態となっている。また、この移行領域付近には、タイヤ幅方向外側に突出する頂部33Aを有してタイヤ周方向に環状に連続して延びるリムプロテクタ33が設けられている。本実施形態においては、リムストリップゴム32とサイドウォールゴム30の境界部分にリムプロテクタ33の頂部33Aが設けられている。すなわち、リムプロテクタ33の頂部33Aの位置は、サイドウォールゴム30のタイヤ径方向内側端30Bの位置と一致している。リムプロテクタ33は、外傷からリムを保護する機能を有する。
【0047】
また、図1および図2に示されるように、チェーハー31の第1の端部31Aは、カーカスプライ23のプライ本体24とインナーライナー29との間に挟まれるように配置されている。チェーハー31の第2の端部31Bは、カーカスプライ23のプライ折り返し部25とリムストリップゴム32との間に挟まれるように配置されている。
【0048】
本実施形態においては、図1に示すように、プライ折り返し部25は、トレッド13まで延出している。そして、プライ折り返し部25の端部25Aは、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aよりもタイヤ幅方向内側に配置されている。すなわち、トレッド13のタイヤ幅方向外側領域において、プライ本体24のタイヤ外表面側に、プライ折り返し部25と、スチールベルト26とが、順に積層された状態となっている。このように、プライ折り返し部25と、スチールベルト26は、タイヤ内腔側からタイヤ外表面側に向かう部材積層方向において、重なる部分を有している。これにより、タイヤ全体の剛性を高めることができる。ただし、プライ折り返し部25と、スチールベルト26は、タイヤ内腔側からタイヤ外表面側に向かう部材積層方向において、重なる部分を有していなくてもよい。
【0049】
ここで、図1に示すように、フリッパー50と、スチールベルト26は、タイヤ内腔側からタイヤ外表面側に向かう部材積層方向において、重なる部分を有していない。具体的には、フリッパー50は、トレッド13までは延びていない。本実施形態においては、フリッパー50のタイヤ径方向外側端51Aは、サイドウォール12に位置している。すなわち、フリッパー50は、サイドウォール12まで延びているものの、トレッド13までは延びていない。一方、トレッド13のスチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aは、トレッド13に位置しており、サイドウォール12まで延びていない。このように、スチールベルト26とフリッパー50とが重なりを有していないため、パンク等によってタイヤに大きな負荷がかかり、スチールベルト26に大きな力が加わった場合においても、その力が直接的にフリッパー50に伝わることを抑制することができる。
【0050】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0051】
図1図2に示されるように、RFIDタグ40は、フリッパー50と接するように配置されている。この構成により、RFIDタグ40は、補強繊維層としてのフリッパー50によって移動が規制されるため、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。よって、追加の部品を用いることなく、RFIDタグ40の耐久性を向上させることができる。また、本実施形態によれば、衝撃保護性も向上する。すなわち、タイヤが外部から衝撃を受けたとしても、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間に繊維層としてのカーカスプライ23が存在するため、RFIDタグ40にかかる負荷を小さくすることができる。
【0052】
本実施形態においては、具体的には、RFIDタグ40は、ビードフィラー22とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40が高モジュラスのビードフィラー22と補強繊維層であるフリッパー50との間に設けられているため、RFIDタグ40の周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。そして、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間には、繊維層としてのプライ折り返し部25および補強繊維層としてのフリッパー50の第3部分53が存在するため、RFIDタグ40にかかる負荷をより小さくすることができる。
【0053】
本実施形態においては、より具体的には、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側とフリッパー50の第1部分51との間に配置されている。すなわち、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間には、繊維層としてのプライ折り返し部25と、補強繊維層としてのフリッパー50の第3部分53と、ビードフィラー22とが存在する。このように、RFIDタグ40が、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側に配置され、タイヤ1の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠くなることにより、RFIDタグ40にかかる負荷をさらに小さくすることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、RFIDタグ40は、チェーハー31の第2の端部31Bよりもタイヤ径方向内側に配置されている。これにより、外部から力が加わった場合においても、RFIDタグ40にかかる負荷をより小さくすることができる。なお、本実施においては、RFIDタグ40は、チェーハー31の第1の端部31Aよりもタイヤ径方向外側に配置されている。
【0055】
図1および図2に示されるように、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向内側端22Bよりも、タイヤ径方向外側端22Aに近い位置に配置されることが好ましい。より好ましくは、RFIDタグ40は、少なくともその一部が、ビードコアのタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置よりも、タイヤ径方向外側に配置されている。さらに好ましくは、RFIDタグ40のアンテナを含む全ての部分が、ビードコアのタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置よりも、タイヤ径方向外側に配置されている。例えば、本実施形態のRFIDタグ40は、図1および図2に示されるように、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側の10mmの領域範囲L1に配置されることが好ましい。すなわち、RFIDタグ40は、少なくともその一部が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置以内に配置されることが好ましい。
【0056】
図4は、ビードコア21のタイヤ径方向外側端21AとRFIDタグ40の離間距離に対する通信距離の関係を調べた結果を示している。なお、縦軸の通信距離は、最長通信距離を100として通信距離を指数化したものである。この値としては40以上であればよく、好ましくは60以上、さらに好ましくは80以上である。
【0057】
ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響をおよぼす可能性が特に高い金属部材である。図4より、RFIDタグ40は、ビードコア21からなるべく離れた位置に配置された方がよいことが分かる。本実施形態に示されるように、RFIDタグ40を、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aから10mmの領域範囲L1に配置することにより、通信に対する悪影響を抑制することができる。これにより、RFIDタグ40と外部のリーダとの好適な通信性を確保することが可能となる。
【0058】
ここで、本実施形態のRFIDタグ40は、タイヤ1の製造工程において、加硫工程の前にタイヤ構成部材に取り付けられる。具体的には、RFIDタグ40は、ビードフィラー22またはフリッパー50に取り付けられる。このとき、ビードフィラー22およびフリッパー50のトッピングゴム50Bは加硫前の生ゴムの状態である。よって、生ゴムの粘着性を利用して、RFIDタグ40は、ビードフィラー22またはフリッパー50に貼り付けられる。なお、RFIDタグ40は、接着剤等を用いて貼り付けられてもよい。その後、RFIDタグ40を、ビードフィラー22とフリッパー50との間に挟み込む。挟み込んだ後、RFIDタグ40を含む各タイヤ構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
【0059】
これにより、本実施形態においては、タイヤ製造時において、剛性を有し、粘着性を有する生ゴムにより被覆されている補強繊維層としてのフリッパー50またはビードフィラー22にRFIDタグ40を貼り付けることができる。よって、タイヤの製造工程において、RFIDタグ40の組み付け作業が容易となる。
【0060】
なお、タイヤに埋設するRFIDタグ40は、後述する図8AにおいてRFIDタグ40として示されるように、アンテナを含めると、長手方向を有することが多い。このようなRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち図1~2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0061】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。また、電子部品は、導電性の部材と電気接触すると、電子部品の性能変化が生じ、電子部品の特性を維持することが困難となる可能性がある。また、電子部品は、過度な応力がかかることにより、破損する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0062】
図5は、本実施形態の第1変形例におけるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面の部分拡大断面図である。
【0063】
図5に示されるように、本変形例のRFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側とフリッパー50の第3部分53との間に配置されている。
【0064】
本変形例においても、RFIDタグ40は、フリッパー50と接するように配置されている。よって、RFIDタグ40は、補強繊維層としてのフリッパー50によって移動が規制されるため、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。
【0065】
また、本変形例においても、RFIDタグ40が高モジュラスのビードフィラー22と補強繊維層であるフリッパー50との間に配置されているため、RFIDタグ40の周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。
【0066】
そして、本変形例においては、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間には、繊維層としてのプライ折り返し部25および補強繊維層としてのフリッパー50の第3部分53が存在するため、RFIDタグ40にかかる負荷を小さくすることができる。
【0067】
そして、本変形例においては、RFIDタグ40が、タイヤの外表面に比較的近い位置に配置されているため、外部とRFIDタグ40との通信性が良好となる。
【0068】
図6は、本実施形態の第2変形例におけるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面の部分拡大断面図である。
【0069】
図6に示すように、本変形例のRFIDタグ40は、カーカスプライ23とフリッパー50との間に配置されている。より具体的には、RFIDタグ40は、カーカスプライ23のプライ本体24とフリッパー50の第1部分51との間に配置されている。
【0070】
本変形例においても、RFIDタグ40は、フリッパー50と接するように配置されている。よって、RFIDタグ40は、補強繊維層としてのフリッパー50によって移動が規制されるため、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。
【0071】
そして、本変形例においては、RFIDタグ40が繊維層としてのカーカスプライ23と補強繊維層であるフリッパー50との間に設けられているため、RFIDタグ40の周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。また、加硫時や使用時において、RFIDタグ40が、インナーライナー29やビードフィラー22といった周囲のゴム部材を直接押圧することを防ぐことができる。よって、周囲のゴム部材が破損し難い。
【0072】
そして、本変形例においては、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間には、繊維層としてのプライ折り返し部25と、補強繊維層としてのフリッパー50の第3部分53および第1部分51と、ビードフィラー22とが存在する。このように、RFIDタグ40が、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側に配置され、タイヤ1の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠くなることにより、RFIDタグ40にかかる負荷をさらに小さくすることができる。
【0073】
図7は、本実施形態の第3変形例におけるタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面の部分拡大断面図である。
【0074】
図7に示すように、本変形例のRFIDタグ40は、カーカスプライ23とフリッパー50との間に配置されている。より具体的には、RFIDタグ40は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25とフリッパー50の第3部分53との間に配置されている。
【0075】
本変形例においても、RFIDタグ40は、フリッパー50と接するように配置されている。よって、RFIDタグ40は、補強繊維層としてのフリッパー50によって移動が規制されるため、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。
【0076】
そして、本変形例においても、RFIDタグ40が繊維層としてのカーカスプライ23と補強繊維層であるフリッパー50との間に設けられているため、RFIDタグ40の周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。また、加硫時や使用時において、RFIDタグ40が、インナーライナー29やビードフィラー22といった周囲のゴム部材を直接押圧することを防ぐことができる。よって、周囲のゴム部材が破損し難い。
【0077】
そして、本変形例においては、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間には、繊維層としてのプライ折り返し部25が存在するため、RFIDタグ40にかかる負荷を小さくすることができる。
【0078】
そして、本変形例においては、RFIDタグ40が、タイヤの外表面に比較的近い位置に配置されているため、外部とRFIDタグ40との通信性が良好となる。
【0079】
なお、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側に配置されてもよい。例えば、フリッパー50が、ビードコア21およびビードフィラー22のタイヤ幅方向内側を覆う内側部(第1部分51)と、ビードコア21およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側を覆う外側部(第3部分53)と、を備え、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側において、フリッパー50の内側部(第1部分51)と、フリッパー50の外側部(第3部分53)との間に配置されていてもよい。この場合は、フリッパー50の内側部(第1部分51)および外側部(第3部分53)は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりも、タイヤ径方向外側に延出している。
【0080】
このような構成においても、RFIDタグ40は、フリッパー50と接するように配置されている。よって、RFIDタグ40は、補強繊維層としてのフリッパー50によって移動が規制されるため、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。
【0081】
そして、このような構成においても、RFIDタグ40が補強繊維層であるフリッパー50の内側部(第1部分51)と外側部(第3部分53)との間に設けられているため、RFIDタグ40の周辺は変形が少なく、応力が集中しにくい。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。また、加硫時や使用時において、RFIDタグ40が、インナーライナー29やビードフィラー22といった周囲のゴム部材を直接押圧することを防ぐことができる。よって、周囲のゴム部材が破損し難い。
【0082】
さらに、このような構成であれば、製造時において、フリッパー50にRFIDタグ40を配置し、RFIDタグ40を配置したフリッパー50をビードコア21およびビードフィラー22に巻き付けるといった簡単な作業により、RFIDタグ40をフリッパー50と接するようにタイヤ内に埋設することができる。
【0083】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0084】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、ビードコア21の少なくとも一部を包み込むフリッパー50と、一方のビード11から他方のビード11に延びるプライ本体24と、ビード11で折り返されるプライ折り返し部25と、を有し、フリッパー50を包み込むカーカスプライ23と、フリッパー50と接するようにタイヤ内に埋設された電子部品としてのRFIDタグ40と、を備える。このように、補強繊維層であるフリッパー50と接触した状態でRFIDタグ40が配置されているため、RFIDタグ40を保護することができる。
【0085】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤの周方向に延びる環状のトレッド13と、ビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22とを有する一対のビード11と、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延びるプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されるプライ折り返し部25と、を有するカーカスプライ23と、ビードコア21とカーカスプライ23との間に配置されたフリッパー50と、フリッパー50と接するようにタイヤ内に埋設された電子部品としてのRFIDタグ40と、を備え、トレッド13は、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側に配置されたベルトとしてのスチールベルト26を有し、フリッパー50とスチールベルト26は、タイヤ内腔側からタイヤ外表面側に向かう部材積層方向において、重なる部分を有しない。このように、スチールベルト26と重なる部分を有していない補強繊維層であるフリッパー50と接触した状態でRFIDタグ40が配置されているため、タイヤ1が大きく歪んだ場合や、タイヤ1に衝撃が加わった場合においても、RFIDタグ40を保護することができる。
【0086】
(3)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、ビードフィラー22とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40が高モジュラスのビードフィラー22とフリッパー50との間に配置されることにより、RFIDタグ40周辺の変形は少なくなり、応力が集中し難くなる。よって、RFIDタグ40が破損しにくい。
【0087】
(4)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向内側とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40がタイヤ1の外表面から遠い位置に配置されることにより、RFIDタグ40にかかる負荷をより小さくすることができる。
【0088】
(5)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ幅方向外側とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40がタイヤ1の外表面に近い位置に配置されることにより、外部とRFIDタグ40との通信性が良好となる。
【0089】
(6)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、カーカスプライ23とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40がカーカスプライ23とフリッパー50との間に配置されることにより、加硫時や使用時において、RFIDタグ40がタイヤのゴム構造体を直接押圧することを防ぐことができる。
【0090】
(7)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、プライ本体24とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40がタイヤ1の外表面から遠い位置に配置されることにより、RFIDタグ40にかかる負荷をより小さくすることができる。
【0091】
(8)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、プライ折り返し部25とフリッパー50との間に配置されている。このように、RFIDタグ40がタイヤ1の外表面に近い位置に配置されることにより、外部とRFIDタグ40との通信性が良好となる。
【0092】
(9)本実施形態に係るタイヤ1のフリッパー50は、ビードコア21およびビードフィラー22のタイヤ幅方向内側を覆う内側部(第1部分51)と、ビードコア21およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側を覆う外側部(第3部分53)と、を備え、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向外側において、フリッパー50の内側部(第1部分51)と、フリッパー50の外側部(第3部分53)との間に配置されている。このように、RFIDタグ40がフリッパー50の内側部と外側部との間に配置されることにより、加硫時や使用時において、RFIDタグ40がタイヤのゴム構造体を直接押圧することを防ぐことができる。
【0093】
(10)本実施形態に係るタイヤ1のRFIDタグ40は、少なくともその一部が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aからタイヤ径方向内側に10mmの位置以内に配置されている。これにより、外部とRFIDタグ40との好適な通信性を確保することができる。
【0094】
(11)本実施形態に係るタイヤ1のフリッパー50は、有機繊維コード層を含む。これにより、ビード11を効果的に補強することができる。
【0095】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤ1について、図8A~8Cを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。本実施形態においては、RFIDタグ40は、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆されている。
【0096】
図8Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。図8Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。図8B図8Aのb-b断面図、図8C図8Aのc-c断面図である。本実施形態においては、図8A~8Cに示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。
【0097】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。通信性および柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。
【0098】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0099】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0100】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。
【0101】
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍~2倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。
【0102】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0103】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0104】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシート431、432によって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。例えば、加硫前の各ゴム部材の所望の位置に、ゴムシート431、432によって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、ゴムシート431、432も加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシート431、432自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0105】
但し、保護部材43は、2枚のゴムシート431、432によって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0106】
なお、例えば図6および図7に示される第2変形例および第3変形例において、保護部材43によってRFIDタグ40を保護する構成を採用した場合、RFIDタグ40は、保護部材43により被覆されている状態で、カーカスプライ23とフリッパー50との間に挟まれることになる。この場合、カーカスプライ23とフリッパー50とが相対的に移動することによりRFIDタグ40が応力を受ける状況下においても、保護部材43の存在によって、RFIDタグ40が保護される。よって、RFIDタグ40の耐久性がさらに向上する。
【0107】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤ1の周方向に対して接線の方向、すなわち図1~2、5~7の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設されている。製造工程においては、ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、加硫前のタイヤ1の構成部材に貼り付けられる。
【0108】
このような態様とすることで、タイヤ1が変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を取り付ける作業が簡便となる。
【0109】
本実施形態に係るタイヤ1によれば、上記(1)~(11)に加えて以下の効果を奏する。
【0110】
(12)本実施形態においては、RFIDタグ40が、ゴムシート431、432により被覆されている。これにより、製造工程における作業性が向上する。また、RFIDタグ40にかかる応力を緩和する効果などが得られる。
【0111】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1 タイヤ
11 ビード
12 サイドウォール
13 トレッド
21 ビードコア
22 ビードフィラー
22A タイヤ径方向外側端
23 カーカスプライ
24 プライ本体
25 プライ折り返し部
26 スチールベルト(ベルト)
27 キャッププライ
28 トレッドゴム
29 インナーライナー
30 サイドウォールゴム
31 チェーハー
32 リムストリップゴム
40 RFIDタグ(電子部品)
50 フリッパー
51 第1部分(内側部)
52 第2部分
53 第3部分(外側部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C