(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101246
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】検体用容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20220629BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220629BHJP
G01N 1/04 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G01N1/00 101B
G01N33/48 S
G01N1/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215704
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】501004095
【氏名又は名称】ジュテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(71)【出願人】
【識別番号】515316517
【氏名又は名称】株式会社ビケンバイオミクス
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 昇
(72)【発明者】
【氏名】西原 利彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 進吾
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045AA22
2G045AA40
2G045CA25
2G045CB04
2G045CB07
2G045HA14
2G052AA28
2G052CA02
2G052CA16
2G052DA02
2G052DA12
2G052DA15
2G052JA23
(57)【要約】
【課題】検便用等の検体用容器において、検査装置との関係で収納部が小径になっていても、検体採取に際して容器本体を棚板等に安定良く自立させ得る構造を提供する。
【解決手段】検体用容器は、容器本体1とキャップ2と外筒3とで構成されている。容器本体1は小径の収納部8とこれより大径の雄ねじ部5とを有しており、容器本体1を大径の外筒3で抱持している。従って、検体採取に際して、容器本体1に液体が入れられた状態でキャップ2を外して台等の水平面に置いたとしても、安定良く自立させ得る。外筒3と容器本体1とは、その下端部に設けた係合爪16と環状係合溝17とから成る係合手段によって外れないように保持されている。検体用容器を治具18にセットして外筒3に下向きの力を掛けると、係合片15が治具の受け部20で押し広げられて係合爪16が環状係合溝17から離脱する。従って、外筒3を容易に取り外しできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きに開口して検体が入れられる有底筒状で細長い容器本体と、前記容器本体を塞ぐキャップと、前記容器本体のうち前記キャップよりも下方の部位を外側から囲う外筒とを備えており、
前記外筒は、前記容器本体に取り外し可能に装着されていると共に、水平面に自立可能である、
検体用容器。
【請求項2】
前記外筒の内面に、前記容器本体との間隔を保持する上下長手のリブが形成されている、 請求項1に記載した検体用容器。
【請求項3】
前記容器本体と外筒とに、当該容器本体と外筒とを軸方向に相対動させると弾性に抗して係脱する係合手段が形成されている、
請求項1又は2に記載した検体用容器。
【請求項4】
前記係合手段は前記容器本体及び外筒の下端部に設けており、専用の治具にセットして上から外筒を押さえると係合が解除される、
請求項3に記載した検体用容器。
【請求項5】
前記係合手段は、前記容器本体の下端部の外周面に形成した環状係合溝と、前記外筒の下端部に形成した下向きの係合片とから成っており、前記治具によって前記係合片が押し広げられて前記環状係合溝から離脱するように設定されている、
請求項4に記載した検体用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、検便用容器のように検体(試料)を収容する容器に関するものである。ここに、検体には、例えば便や血液、唾液のような検査対象のみと、便を付着させたスティックのように、検査対象物が付着している物との両方を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
例えば検便用として、合成樹脂製の容器が広く使用されている。この検便用容器は、上向きに開口した容器本体とこれを塞ぐねじ蓋方式のキャップとから成る基本構成であり、特許文献1に開示されているように、容器内には培地液が入れられている。特許文献1では容器は円形に形成されているが、特許文献2には角形の検体用容器が開示されている。両特許文献とも採便棒をキャップに取付けているが、採便棒がキャップとは別体になっているタイプもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5-32768号公報
【特許文献2】意匠登録第1236788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の検体用容器は、検査機関において検査装置にセットして分析が行われるが、検査装置に嵌合可能な外径に設定されている。そして、検査装置の種類によって容器の外径も異なってくるが、検査装置の精度向上によって少量の検体でも分析できるようになっていることなどが影響して、容器には総じて小径化の要請が高くなっている。
【0005】
他方、被験者がトイレで採便するにおいては、キャップに採便棒が取付けられている場合は、キャップを空けて採便し、それからキャップを容器本体に取付けて検体を封入することになるが、万一、容器本体を台や棚等に置いた状態で採便しようとすると、 容器本体は小径で安定性が悪いため、台や棚に置くに際して倒れてしまい、液体が零れてしまうアクシデントが発生しやすいという問題があった。
【0006】
採便棒がキャップとは別体になっている場合も同様であり、キャップを空けて容器本体を台や棚に置いてから採便し、採便後には、採便棒を容器本体に投入してからキャップを閉めるという手順を踏んだ場合、容器本体が台や棚に置くに際して倒れてしまい、液体が零れてしまうアクシデントが発生しやすいという問題があった。
【0007】
更に述べると、キャップは人が容易に開閉できるようにある程度の外径が必要であるのに対して、容器本体の収納部はできるだけ細いのが好ましいことから、容器本体は、キャップがねじ込まれる雄ねじ部を収納部よりも大径に設定することが有り得るが、この場合は、容器本体の上部が大径になって重心が高くなるため、安定性が著しく低下して、採便時に容器本体を台や棚においた状態で倒れてしまうアクシデントが発生しやすくなる。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は様々な構成を備えており、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は上位概念を成すもので、
「上向きに開口して検体が入れられる有底筒状で細長い容器本体と、前記容器本体を塞ぐキャップと、前記容器本体のうち前記キャップよりも下方の部位を外側から囲う外筒とを備えており、
前記外筒は、前記容器本体に取り外し可能に装着されていると共に、水平面に自立可能である」
という構成になっている。本願発明において、外筒は自立の補助のためのものであるので、少なくとも容器本体の下部を覆う高さであれば足りる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記外筒の内面に、前記容器本体との間隔を保持する上下長手のリブが形成されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記容器本体と外筒とに、当該容器本体と外筒とを軸方向に相対動させると係脱する係合手段が形成されている」
という構成になっている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、
「前記係合手段は前記容器本体及び外筒の下端部に設けており、専用の治具にセットして上から外筒を押さえると係合が解除される」
という構成になっている。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4において、
「前記係合手段は、前記容器本体の下端部の外周面に形成した環状係合溝と、前記外筒の下端部に形成した下向きの係合片とから成っており、前記治具によって前記係合片が押し広げられて前記環状係合溝から離脱するように設定されている」、
という構成になっている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、容器本体が細くて自立させるに際して安定性が悪くても、安定して自立させ得る外筒が備わっているため、検体(試料)を採取するに際して、キャップを空けたままで、安定した状態で台や棚板などに自立させることができる。
【0015】
従って、容器本体に培地等の液体が入っていても、液体が零れてしまうようなアクシデントを防止できる。換言すると、容器本体が倒れて液体が零れ出るようなアクシデントを招来することなく、キャップを空けたままで安心して検体を採取できる。
【0016】
そして、外筒は容器本体から取り外しできるため、分析に際しては、外筒を取り外すことにより、遠心式分析装置のような装置にセットして問題なく検査・分析できる。従って、本願発明では、検査・分析の容易性・正確性を確保しつつ、検体の採取を安心して行える。
【0017】
請求項2のように構成すると、外筒の外径をできるだけ大きくして自立安定性を高めつつ、リブによって外筒と容器本体との間の間隔を保持できる。従って、容器本体の外径をできるだけ大きして容器本体の自立安定性を高めつつ、外筒を過剰に厚肉化することなく容器本体をガタ付きのない状態に保持できる。
【0018】
外筒を容器本体に離脱しないように取り付ける方法としては、外筒に雌ねじを形成する一方、容器本体には外筒が螺合する雌ねじを形成するといったことも可能であるが、請求項3のように係合手段を採用して、外筒を容器本体に対して軸方向に相対動させることによって外筒を容器本体に着脱する構成を採用すると、外筒の取付け・取り外しをワンタッチ的に能率良く行えるため好適である。
【0019】
請求項4のように、治具を使用して外筒を容器本体から離脱させる構成を採用すると、片手で外筒を掴んで容器本体を治具に上から押し当てるワンアクションの動作により、外筒を簡単に取り外すことができる。そして、外筒は、基本的には治具を使用しないと取り外しできないため、運搬や検体採取に際して何らかの理由によって外筒が外れてしまうアクシデントは発生せず、信頼性に優れている。
【0020】
特に、請求項5の構成を採用すると、係合片は治具によって押し広げられることにより、係合片と環状係合溝とをしっかりと噛み合わせつつ両者の係合を容易に解除できるため、運搬中等において外筒が容器本体から離脱するような事態を確実に防止しつつ、外筒を容易に取り外しできて好適である。
【0021】
更に、本願発明では、一方の手でキャップを掴んで他方の手で外筒を掴み、両者を軸方向に相対動させることによって外筒を容器本体から取り外しできる構造も選択可能である。或いは、ドライバ等の棒状部材で容器本体を下から押すことにより、外筒を容器本体から取り外すことができる構造も採用可能である。従って、この場合は、治具の有無に左右されることなく外筒の取り外しを確実化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は一部破断縦断面図、(B)は分離断面図である。
【
図2】(A)は外筒の下部の破断斜視図、(B)は容器を治具にセットした状態での一部破断縦断面図、(C)は(A)の要部拡大図である。
【
図3】(A)は外筒が離脱した状態での一部破断縦断面図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は外筒の底面図である。
【
図4】(A)は容器本体と外筒との一部破断分離図、(B)は(A)のB-B視図、(C)は(A)のC-C視底面図、(D)は(A)のD-D視断面図、(E)は(D)のE-E視図である。
【
図5】第2実施形態を示す図で、(A)は一部破断縦断面図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)は(B)のC-C視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1).第1実施形態
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は検便用の容器に適用しており、この容器は、
図1(A)に示すように、上向きに開口した有底筒状の容器本体1と、容器本体の上部に装着されたキャップ2と、容器本体1をキャップ2よりも下方の部位において外側から囲う外筒3とを備えており、容器本体1の内部に採便棒4が入れられている。各部材は剛性樹脂製である。
【0024】
採便棒4は、その上端に設けた円板状の摘み4aと下端に設けた楕円板状の採取部4b、及び、上下中途部に設けた振れ止めリング4cとを備えている。図示していないが、容器本体1の内部には、培地用等の液体が適量(採取部4bが十分に漬かる程度)入れられている。
【0025】
キャップ2はねじ蓋であり、従って、容器本体1の上部には雄ねじ部5が形成されており、キャップ2の天面から、雄ねじ部5の内部に密嵌するシール用の中足6が下向きに突出している。また、雄ねじ部5の下端にはフランジ7が連接されており、フランジ7よりも下方に位置した収納部8は、雄ねじ部5よりも小径になっている。そして、キャップ2の外径と外筒3の外径とを略同径に設定している。この場合、キャップ2の外径と外筒3の外径(すなわち容器の最大径)を20mm以下に設定しておくと、メール便を使用して配送できる利点がある。
【0026】
フランジ7の外径は外筒3の外径よりも小径になって、外筒3の上端はフランジ7の上面まで延びている。そこで、外筒3の上部にフランジ7が嵌入する内向き段部9を形成している。
【0027】
容器本体1の下端部には、底板10を設けている。底板10は容器本体1の下端よりも少し上に位置しているが、容器本体1の下端に配置してもよい。外筒3の外径は容器本体1のフランジ7よりも大径である一方、容器本体1の収納部8は雄ねじ部5よりも小径になっているため、外筒3の肉厚を必要最小限度に抑えると、外筒3と収納部8との間に空間が空いている。そこで、外筒3の内面に複数本(4本)の縦長リブ11を設けて、容器本体1の振れ動きを阻止している。なお、縦長リブ11の高さは任意に設定できる。
【0028】
外筒3の下端は容器本体1の下端よりも下方に位置しており、外筒3の下端に、容器本体1における収納部8の下部を外側から抱持する上向きに突出した係合リング部12が、内向きフランジ12aを介して一体に形成されている。
【0029】
図2(A)に明示するように、係合リング部12のうち軸心を挟んだ2か所に、一対の下向き切り開き溝13を形成し、かつ、
図2(B)に示すように、下向き切り開き溝13と連続した周方向切り開き溝14(
図2(C)及び
図3(C)参照)を形成することにより、係合リング部12に、溝13,14で分断された係合片15を形成し、係合片15の中途高さ位置に、内向きの係合爪16を突設している。
【0030】
図3(C)に示すように、周方向切り開き溝14は90°よりも少し広い範囲に広がっているため、周方向切り開き溝14が形成されていない部分の広がり角度は、周方向切り開き溝14の広がり角度よりも小さくなっている。そして、周方向切り開き溝14が形成されていない2か所の部分に、それぞれ既述の縦長リブ11を一対ずつ配置している。従って、縦長リブ11は、周方向に均等には配置されていない。なお、周方向切り開き溝14の広がり角度は任意に設定できる。
【0031】
そして、容器本体1における収納部8の下端部に、外筒3の係合リング部12が嵌まり込む小径部8aを形成して、この小径部8aの外周面に、係合爪16が嵌合する環状係合溝17を形成している。
【0032】
係合爪16の内径(容器本体の軸心から係合爪16までの距離)は係合リング部12の上端の内径よりも小径になっており、係合爪16は、その弾性に抗して外向きに広がり変形することによって環状係合溝17に嵌合する。係合爪16が環状係合溝17に嵌合した状態では、係合爪16は弾性変形していない。(この場合も、当然ながら、係合爪16を環状係合溝17から離脱させるためには、係合片15を外向きに広がり変形させる必要がある。)。
【0033】
係合爪16及び環状係合溝17は、請求項に記載した係合手段の一例を成している。環状係合溝17は、上下中間部が最も深くて上下に向けて湾曲しつつ浅くなっており、従って、全体として円弧状の凹面になっているが、く字形に屈曲した形状に形成したり、内面が上に向けて拡がった横向きV形に形成したりしてもよい。係合手段としては、容器本体1に係合爪を形成して、外筒3に係合凹所を形成してもよい。
【0034】
係合片15は、その上部のみが係合リング部12と繋がっており、下端は自由端になっている。従って、係合片15がその上端を支点にして弾性に抗して外側(外筒3の半径方向)に回動することにより、係合爪16が環状係合溝17に係合する。なお、係合片15は3つ以上形成してもよい。
【0035】
被験者はキャップ2を開閉するに際しては、容器本体1を掴んでキャップ2を回転させるので、容器本体1と外筒3とは相対回転しないように回り止めされている必要がある。この点は、
図4に示す構造を採用している。
【0036】
すなわち、容器本体1の下端部に形成した小径部8aに一対の下向きの位置決めリブ8bを形成している一方、外筒3に形成した係合リング部12に、下向きリブ8bが上から嵌入する位置決め溝12cを形成しており、位置決めリブ8bと位置決め溝12cとの噛み合いによって外筒3を回り止めしている。この場合、位置決め溝12cは、係合爪16(及び係合片15)と干渉しないように、周方向切り開き溝14が形成されていないエリアに設けている。なお、他の構造の回り止め手段を採用してもよい(例えば、フランジ7と内向き段部9とを噛み合わせることも可能である。)。
【0037】
(2).まとめ
本実施形態では、出荷段階では、容器本体1に液体のみを入れて、採便棒4は別部材として包装しておき、採便後に、採便棒4を容器本体1に入れてキャップ2で封止し、配送等によって検査機関に送ることができる。或いは、採便棒4を容器本体1に入れておいて、液体は別の容器に入れて同梱し、採便棒4を抜き取ってから液体を容器本体1に入れるといったことも可能である。更に、採便棒4及び液体を容器本体1とは別々に包装しておくことも可能である。
【0038】
いずれにしても、被験者は、採便前に容器本体1からキャップ2を外して、液体が入れられた容器本体1に採便棒4を投入できるように準備しておく。そして、被験者が採便した後は、液体が入れられた容器本体1に採便棒4を投入して、キャップ2をねじ込んで封止してから、宅配等の適宜手段で検査機関に送ることになる。
【0039】
そして、容器本体1は、収納部8よりも雄ねじ部5が大径になっていて重心が高い位置にあるため、検体用容器が容器本体1とキャップ2だけで構成されていると、採便に際してキャップ2を外した容器本体1を台や棚板に置くに際して、自立安定性が著しく悪くて倒れやすくなるが、本実施形態では、容器本体1よりも大径の外筒3が台や棚板に載るため、外筒3を台や棚板等の水平面に置いたとしても、容器本体1を安定よく保持できる。従って、容器本体1が倒れて液体が零れてしまうようなアクシデントを、防止又は著しく抑制できる。
【0040】
そして、容器本体1は、外筒3の内向き段部9で支持された状態で、係合爪16と環状係合溝17との嵌まり合いにより、外筒3に対して上向き動不能に保持されているが、係合爪16と環状係合溝17は外筒3の下部で囲われていて物が当たることはないため、配送等に際して外筒3が容器本体1から外れるような不測の事態は生じない。
【0041】
更に、外筒3の取り外しは、
図2,3に示す治具18を使用して簡単に行える。治具18は、円形等のベース19から円形の受け部20を上向きに突設した形態であり、受け部20は、外筒3の係合リング部12に嵌まり込むと共に容器本体1の下端が当たる外径に設定している。そして、係合片15の下端の内径は、治具18における受け部20の外径よりも小径になっており、かつ、容器を治具18にセットした状態で、係合片15の下端が治具18における受け部20の上端部外周面に当たるように設定している。
【0042】
従って、
図3に示すように、検体用容器を治具18にセットして、外筒3を手で掴んで下向きの力を掛けると、係合片15は、治具18における受け部20のガイド作用によって広がり変形し、係合爪16が環状係合溝17から離脱する。これにより、係合爪16と環状係合溝17との係合(嵌合)が解除されて、外筒3を容器本体1から取り外すことができる。
【0043】
この場合、治具18の受け部20に、外筒3の係合爪16が落ち込む段部21を形成しており、係合爪16が環状係合溝17から外れると、係合爪16が段部21に当たると共に、外筒3の下端が治具18におけるベース19の上面に当たるように設定している。このように設定すると、外筒3の下降ストロークを最小限度に抑制して、衝撃を緩和できる利点がある。ベース19の上面にゴム等の弾性体(クッション材)を配置してもよい。
【0044】
さて、係合爪16と環状係合溝17との嵌め合わせによって外筒3を容器本体1に取り付けている場合、例えば、キャップ2を片手で掴んで外筒3を下向きに引くことにより、外筒3を取り外せないことはないが、この場合は、外筒3を容易に取り外しできるようにすると、係合爪16と環状係合溝17との係合状態が解除されやすくなって、運搬中等において外筒3が離脱してしまうことが懸念される。さりとて、係合爪16を環状係合溝17にしっかりと係合させておくと、外筒3の取り外しが厄介になる。すなわち、外筒3は、取り外しの容易性と取付けの確実性とが相反することになる。
【0045】
これに対して、実施形態では、基本的には治具18を使用しないと外筒3を取り外しできないため、係合爪16を環状係合溝17にしっかりと噛み合わせて運搬中等に外筒3が外れてしまう不測の事態を防止しつつ、外筒3を容器本体1から軽い力で容易に取り外しできる。従って、外筒3の取り外しの容易性と取付けの確実性とを両立できる。
【0046】
なお、実施形態のように、環状係合溝17を円弧状に湾曲した凹面に形成すると、環状係合溝17の下半部は下に向かって深さが徐々に浅くなるように傾斜するため、外筒3に下向きの力を掛けるか又は容器本体1に上向きの力を掛けると、下半部のガイド作用によって係合片15を広げ変形させることができる。従って、ドライバ等の棒状部材で容器本体1を突き上げたり、棒状部材を容器本体1の底板10に当てた状態で外筒3に下向きに力を掛けたりしても、係合片15を広げ変形させて外筒3を取り外すことができる。環状係合溝17をく字状に形成した場合も同様である。
【0047】
治具18の受け部20を係合爪16の内径よりも小径に設定して、治具18によって係合片15が押し広げられることなく、受け部20の上面に容器本体1の下面が当たるように設定することも可能であり、この場合も、外筒3に下向きの力を掛けると係合片15が広がり変形して、外筒3を取り外すことができる。従って、治具18は、係合片15を押し広げる機能を持つ態様と、容器本体1の支持機能しか持たない態様との2種類があり得る。
【0048】
(3).第2実施形態
図5では、第2実施形態を示している。この実施形態では、容器本体1のフランジ7はキャップ2の外径よりも大径に設定されており、係合手段として、フランジ7には外向き環状突起22を形成し、容器本体1の段部9に環状凹所23を形成している。従って、外筒3には内向き環状突起24が形成されている。この場合、外向き環状突起22を断続的に分断された状態に形成したり、内向き環状突起24を断続的に分断された状態に形成したりして、係合強度を調整することも可能である。
【0049】
更に、本実施形態では、容器本体1のフランジ7から下向きリング25を形成し、下向きリング25の外周に外歯歯車状部26を形成する一方、外筒3のうち下向きリング25の外側に部位に内歯歯車状部27を形成して、両者を噛み合わせることによって外筒3の回り止めと成している。
【0050】
この実施形態では、一方の手でキャップ2を掴み、他方の手で外筒3を掴んだ状態で両者を上下方向に引き離すことにより、外向き環状突起22と環状凹所23との噛み合いを解除して外筒3を取り外すことができる。
【0051】
更に、この実施形態では、外筒3の下端に、内向きフランジ28で囲われた開口29を形成しており、治具30の受け部30aで容器本体1を押し出すことによって外筒3を取り外すことも可能である。専用の治具30に代えて、例えばドライバのような棒状材を使用することも可能である。
【0052】
この実施形態では、外筒3はキャップ2よりも大径になっているので、台や棚板に載置するに際しての自立安定性を更に向上できる。
【0053】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、外筒は必ずしも円形である必要はないのであり、小判形や楕円形、四角形などの形状も選択できる。また、係合手段としては、実施形態のような係合爪と係合凹所との組み合わせには限らず、他の構造も採用できる。
【0054】
また、本願発明は、検便用の容器のみでなく、他の検体の収容容器にも広く適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願発明は、検体用容器に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 容器本体
2 キャップ
3 外筒
5 雄ねじ部
7 フランジ
8 収納部
11 縦長リブ(上下長手のリブ)
12 係合リング部
13,14 切り開き溝
15 係合片
16 係合爪
17 環状係合溝
18 治具
20 受け部
22 外向き環状突起
23 環状凹所
24 内向き環状突起
25 下向きリング