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特開2022-101285不定形耐火組成物、不定形耐火物及び不定形耐火物の製造方法
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  • 特開-不定形耐火組成物、不定形耐火物及び不定形耐火物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101285
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】不定形耐火組成物、不定形耐火物及び不定形耐火物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20220629BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C04B35/66
F27D1/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215772
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】391040711
【氏名又は名称】AGCセラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 正人
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051BE00
(57)【要約】
【課題】優れた熱伝導性を維持しつつ、急速昇温適性に優れる不定形耐火組成物、当該不定形耐火組成物により形成される不定形耐火物、及びその製造方法の提供。
【解決手段】炭化ケイ素と、乳酸アルミニウムと、有機繊維とを含む、不定形耐火組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素と、乳酸アルミニウムと、有機繊維とを含む、不定形耐火組成物。
【請求項2】
骨材として、前記炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の不定形耐火組成物。
【請求項3】
耐火性粉末として、前記炭化ケイ素を含む、請求項1又は請求項2に記載の不定形耐火組成物。
【請求項4】
前記有機繊維が、ポリプロピレン繊維を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項5】
ベントナイトをさらに含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項6】
前記乳酸アルミニウムが、塩基性乳酸アルミニウム及び塩基性乳酸アルミニウムの水和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項7】
前記有機繊維の繊維長が、10μm~20mmである、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項8】
前記不定形耐火組成物における前記乳酸アルミニウムの含有率が、0.1質量%~0.9質量%である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項9】
前記不定形耐火組成物における前記有機繊維の含有率が、0.005質量%~0.5質量%である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項10】
前記不定形耐火組成物における前記炭化ケイ素の含有率が、70質量%~95質量%である、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項11】
吹付け施工に用いられる、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物により形成される、不定形耐火物。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の不定形耐火組成物を施工対象物に吹き付け、乾燥させることを含む、不定形耐火物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不定形耐火組成物、不定形耐火物及び不定形耐火物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不定形耐火組成物は、その施工性が向上しており、また補修が容易であることから様々な分野において広く使用されている。
【0003】
不定形耐火組成物は、一般的に、結合剤としてアルミナセメントを含むが、不定形耐火組成物がアルミナセメントを含むことにより、不定形耐火組成物により製造される不定形耐火物の耐熱性が低下する傾向にある。そのため、アルミナセメントの含有量を減らす試みが行われており、例えば、特許文献1では、アルミナセメントの含有量を減らし、骨材に耐火性粉末を添加した不定形耐火組成物等が提案されている。
【0004】
施工後の不定形耐火組成物は、昇温速度及び乾燥温度等の乾燥条件によっては、不定形耐火物に亀裂が発生するおそれ、及び耐火物中の水蒸気圧が急激に上昇する結果、爆裂現象が発生するおそれがあり、乾燥条件の設定は厳密に行う必要がある。
特許文献2においては、上記亀裂及び爆裂現象の発生を防止するため、不定形耐火組成物に塩基性有機酸アルミニウム及びポリビニルアルコールを含有させることが行われている。
また、特許文献3では、骨材と、塩基性乳酸アルミニウムと、アルミナセメントとを含む流し込み施工用耐火物が提案されている。
また、特許文献4では、骨材と、塩基性乳酸アルミニウムと、ポリビニルアルコール短繊維と、アルミナセメントとを含む流し込み施工用不定形耐火物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-137607号公報
【特許文献2】特開2013-249226号公報
【特許文献3】特開平3-83869号公報
【特許文献4】特開平10-265275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボイラー等(例えば、発電ボイラ付きストーカ焼却炉等)の炉内等における不定形耐火物は、排熱回収効率の観点から高い熱伝導性が要求される。不定形耐火物の熱伝導を向上させる材料として炭化ケイ素が知られているが、かかる高熱伝導性の材料を使用すると、爆裂現象が発生しやすいため、より厳密な乾燥条件の管理が求められる。
【0007】
その一方で、工期短縮等のため、高い昇温速度によっても、上記問題の生じない、急速昇温適性の高い不定形耐火組成物が求められている。しかしながら、現在のところ、熱伝導性及び急速昇温適性に優れる不定形耐火組成物は知られておらず、その開発が求められている。
【0008】
上記事情に鑑み、本開示は、優れた熱伝導性を維持しつつ、急速昇温適性に優れる不定形耐火組成物、当該不定形耐火組成物により形成される不定形耐火物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
【0010】
<1> 炭化ケイ素と、乳酸アルミニウムと、有機繊維とを含む、不定形耐火組成物。
<2> 骨材として、炭化ケイ素を含む、<1>に記載の不定形耐火組成物。
<3> 耐火性粉末として、炭化ケイ素を含む、<1>又は<2>に記載の不定形耐火組成物。
<4> 有機繊維が、ポリプロピレン繊維を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<5> ベントナイトをさらに含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<6> 乳酸アルミニウムが、塩基性乳酸アルミニウム及び塩基性乳酸アルミニウムの水和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<7> 有機繊維の繊維長が、10μm~20mmである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<8> 不定形耐火組成物における乳酸アルミニウムの含有率が、0.1質量%~0.9質量%である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<9> 不定形耐火組成物における有機繊維の含有率が、0.005質量%~0.5質量%である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<10> 不定形耐火組成物における炭化ケイ素の含有率が、70質量%~95質量%である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<11> 吹付け施工に用いられる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物により形成される、不定形耐火物。
<13> <1>~<11>のいずれか1つに記載の不定形耐火組成物を施工対象物に吹き付け、乾燥させることを含む、不定形耐火物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、優れた熱伝導性を維持しつつ、急速昇温適性に優れる不定形耐火組成物、当該不定形耐火組成物により形成される不定形耐火物、及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、気流搬送式吹付け施工法を利用した不定形耐火物の製造方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、合成例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する化合物を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0015】
(不定形耐火組成物)
本開示の不定形耐火組成物は、炭化ケイ素と、乳酸アルミニウムと、有機繊維とを含む。
【0016】
本開示の不定形耐火組成物によれば、優れた熱伝導性を維持しつつ、急速昇温適性に優れる不定形耐火組成物を提供できる。
【0017】
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
本開示の不定形耐火組成物は、熱伝導性の高い炭化ケイ素を含んでいる。不定形耐火組成物に含まれる炭化ケイ素は一般的に緻密構造を有しているが、本開示の不定形耐火組成物が乳酸アルミニウム及び有機繊維を共に含んでおり、施工水添加に起因するゲル化により体積収縮した際、連続した気孔が形成される。上記気孔から、内部の水蒸気を外部に放出できるため、高い昇温速度とした場合であっても、亀裂及び爆裂現象の発生を防止でき、急速昇温適性が改良されると推測される。
【0018】
以下、本開示の不定形耐火組成物が含む各成分について説明する。
【0019】
(炭化ケイ素)
本開示の不定形耐火組成物は、炭化ケイ素を含む。
本開示の不定形耐火組成物は、骨材として、炭化ケイ素を含んでいてもよく、耐火性粉末として、炭化ケイ素を含んでいてもよく、骨材及び耐火性粉末として、炭化ケイ素を含んでいてもよい。
本開示において、骨材として、炭化ケイ素を含むとは、平均粒子径30μm以上10mm以下の炭化ケイ素を含むことを意味する。
また、本開示において、耐火性粉末として、炭化ケイ素を含むとは、平均粒子径1μm以上30μm未満の炭化ケイ素を含むことを意味する。
また、本開示において、骨材及び耐火性粉末として、炭化ケイ素を含むとは、平均粒子径30μm以上10mm以下の炭化ケイ素及び平均粒子径1μm以上30μm未満の炭化ケイ素を含むことを意味する。
炭化ケイ素の平均粒子径は、JIS Z 8815:1994に準拠したふるい分け試験により測定できる。
また、100μm以下の炭化ケイ素の平均粒子径は、JIS Z 8825:2013に準拠したレーザー回折式粒度分布測定法により測定でき、累積平均径が50%となる粒子径である。
【0020】
また、搬送性の観点から、搬送管の内径に対する炭化ケイ素の平均粒子径は、1/10~1/2が好ましく、1/7~1/3がより好ましい。
不定形耐火組成物に含まれる炭化ケイ素の総量100質量%に対する、上記関係を満たす炭化ケイ素の割合は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0021】
不定形耐火組成物が、平均粒子径30μm以上10mm以下の炭化ケイ素(以下、特定炭化ケイ素Aともいう。)を含む場合、最密充填による物性向上の観点から、不定形耐火組成物に含まれる炭化ケイ素の総量100質量%に対する、特定炭化ケイ素Aの含有率は、60質量%~98質量%が好ましく、70質量%~97質量%がより好ましく、85質量%~95質量%がさらに好ましい。
【0022】
不定形耐火組成物が、平均粒子径1μm以上30μm未満の炭化ケイ素(以下、特定炭化ケイ素Bともいう。)を含む場合、最密充填による物性向上の観点から、不定形耐火組成物に含まれる炭化ケイ素の総量100質量%に対する、特定炭化ケイ素Bの含有率は、2質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましく、5質量%~15質量%がさらに好ましい。
【0023】
熱伝導性の観点から、不定形耐火組成物における炭化ケイ素の含有率は、60質量%~95質量%が好ましく、70質量%~95質量%がより好ましく、80質量%~95質量%がさらに好ましい。
【0024】
(乳酸アルミニウム)
乳酸アルミニウムとしては、Al(OCOCH(OH)CHで表される乳酸アルミニウム正塩、Al(OH)(OCOCH(OH)CH又はAl(OH)(OCOCH(OH)CH)で表される塩基性乳酸アルミニウム及びこれらの水和物等が挙げられる。
上記した中でも、乳酸アルミニウムは、塩基性乳酸アルミニウム及び塩基性乳酸アルミニウムの水和物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
また、乳酸アルミニウムとしては、クエン酸又はグリコール酸等との複合塩を使用してもよい。
【0025】
不定形耐火組成物における乳酸アルミニウムの含有率は、0.1質量%~0.9質量%が好ましく、0.2質量%~0.8質量%がより好ましく、0.3質量%~0.7質量%がさらに好ましい。
乳酸アルミニウムの含有率を0.1質量%以上とすることにより、急速昇温適性をより改良できる。
乳酸アルミニウムの含有率を0.9質量%以下とすることにより、本開示の不定形耐火組成物を用いて製造した不定形耐火物の養生収縮亀裂の発生を抑制できる。
【0026】
(有機繊維)
有機繊維の種類は、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維及びセルロース繊維等が挙げられる。これらの中でも、急速昇温適性の観点からは、有機繊維はポリプロピレン繊維を含むことが好ましい。
本開示の不定形耐火組成物は、有機繊維を2種含んでもよい。
【0027】
有機繊維の繊維長は、10μm~20mmが好ましく、100μm~15mmがより好ましく、1.0mm~10mmが特に好ましい。
有機繊維の繊維長が10μm以上であることにより、急速昇温適性をより改良できる。
有機繊維の繊維長が20mm以下であることにより、気流搬送式吹付け機による搬送性を改良できる。
本開示の不定形耐火組成物は、繊維長の異なる2種以上の有機繊維を含んでもよい。
なお、本開示において、繊維長は、JIS L 1015:2010に準拠して測定する。
【0028】
有機繊維の繊度は、0.1dtex~20dtexが好ましく、0.5dtex~15dtexがより好ましい。
有機繊維の繊度が0.1dtex以上であることにより、急速昇温適性をより改良できる。
有機繊維の繊度が20dtex以下であることにより、気流搬送式吹付け機による搬送性を改良できる。
なお、本開示において、繊度は、JIS L 1015:2010に準拠して測定する。
【0029】
本開示の不定形耐火組成物における有機繊維の含有率は、0.005質量%~0.7質量%が好ましく、0.01質量%~0.5質量%がより好ましく、0.05質量%~0.4質量%がさらに好ましく、0.1質量%~0.3質量%が特に好ましい。
有機繊維の含有率を0.005質量%以上とすることにより、急速昇温適性をより改良できる。
有機繊維の含有率を0.7質量%以下とすることにより、気流搬送式吹付け機による搬送性を改良できる。
【0030】
(ベントナイト)
本開示の不定形耐火組成物は、ベントナイトを含んでもよい。
ベントナイトは、粘土鉱物モンモリロナイトを主成分とする弱アルカリ性粘土岩である。
また、ベントナイトは、石英、α-クリストバライト及びオパール等の珪酸鉱物を副成分として含みうる。
さらに、ベントナイトは、長石、マイカ及びゼオライト等のケイ酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト及びジプサム等の炭酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、並びにパイライト等の硫化鉱物などを随伴しうる。
【0031】
急結作用の観点から、ベントナイトの平均粒子径は、45μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
また、ベントナイトの平均粒子径は、例えば、1μm以上であってもよい。
本開示において、ベントナイトの平均粒子径は、JIS Z 8825:2013に準拠したレーザー回折式粒度分布測定法により測定でき、累積平均径が50%となる粒子径である。
【0032】
本開示の不定形耐火組成物におけるベントナイトの含有率は、0.5質量%~5質量%が好ましく、1質量%~3質量%がより好ましい。
ベントナイトの含有率を0.5質量%以上とすることにより、吹付け時の発塵を低減できる。
ベントナイトの含有率を5質量%以下とすることにより、不定形耐火組成物を用いて製造される耐火物の強度及び耐腐食性及び気流搬送式吹付け機による搬送性を改良できる。
【0033】
(炭化ケイ素以外の耐火性粉末)
本開示の不定形耐火組成物は、上記したように、耐火性粉末として、炭化ケイ素を含んでいてもよいが、1種又は2種以上の炭化ケイ素以外の耐火性粉末を含んでもよい。
炭化ケイ素以外の耐火性粉末は、骨材間の隙間に入り込み、骨材同士を結合させることができるものであれば、その種類は、特に限定されない。その他の耐火性粉末としては、例えば、アルミナ、チタニア、ボーキサイト、ダイアスポア、ムライト、バン土頁岩、シャモット、パイロフィライト、シリマナイト、アンダリュウサイト、ケイ石、クロム鉄鉱、スピネル、マグネシア、ジルコニア、ジルコン、クロミア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム及びシリカ等が挙げられる。
上記した材料は、全部又はその一部を液体に分散させたコロイドの状態で使用してもよい。
【0034】
炭化ケイ素以外の耐火性粉末の平均粒子径は、0.1μm以上30μm未満が好ましく、0.5μm以上5μm未満がより好ましい。
本開示において、耐火性粉末の平均粒子径の測定は、JIS Z 8825:2013に準拠したレーザー回折式粒度分布測定法により測定でき、累積平均径が50%となる粒子径である。
【0035】
本開示の不定形耐火組成物における炭化ケイ素以外の耐火性粉末の含有率は、1質量%~24質量%が好ましく、3質量%~20質量%がより好ましい。
炭化ケイ素以外の耐火性粉末の含有率を1質量%以上とすることにより、不定形耐火組成物を用いて製造される耐火物の強度及び耐腐食性を改良できる。
炭化ケイ素以外の耐火性粉末の含有率を24質量%以下とすることにより、吹付け時の発塵を低減でき、且つ、気流搬送式吹付け機による搬送性を改良できる。
【0036】
(炭化ケイ素以外の骨材)
不定形耐火組成物は、上記したように、骨材として、炭化ケイ素を含んでいてもよいが、炭化ケイ素以外の骨材を1種又は2種以上含んでもよい。
炭化ケイ素以外の骨材としては、例えば、アルミナ、ボーキサイト、ダイアスポア、ムライト、カイヤナイト、バン土頁岩、シャモット、ケイ石、パイロフィライト、シリマナイト、アンダリュウサイト、クロム鉄鉱、スピネル、マグネシア、ジルコニア、ジルコン、クロミア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素、黒鉛、ホウ化チタン及びホウ化ジルコニウム等が挙げられる。
【0037】
炭化ケイ素以外の骨材の好ましい平均粒子径は、30μm以上10mm以下が好ましい。本開示の不定形耐火組成物は、平均粒子径の異なる2種以上の骨材を含んでもよい。
【0038】
熱伝導性の観点から、不定形耐火組成物における炭化ケイ素以外の骨材の含有率は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0039】
(結合剤)
本開示の不定形耐火組成物は、1種又は2種以上の結合剤を含んでもよい。
結合剤の種類は、特に限定されず、例えば、アルミナセメント、ハイアルミナセメント、活性マグネシア、低反応性アルカリ土類金属酸化物と水溶性有機酸塩又は水溶性無機酸塩との組み合わせ、リン酸及びリン酸アルミニウム等のリン酸塩、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウム等のケイ酸塩、リグニンスルホン酸塩、並びに水溶性フェノールなどが挙げられる。
上記した中でも、常温から高温まで広い温度範囲において不定形耐火組成物を用いて製造される耐火物の強度を維持できるため、アルミナセメントが好ましい。
【0040】
養生時の圧縮強度の観点からは、結合剤の平均粒子径は、40μm未満が好ましく、20μm未満がより好ましく、15μm未満がさらに好ましい。
また、結合剤の平均粒子径は、例えば、1μm以上であってもよい。
本開示において、結合剤の平均粒子径の測定は、JIS Z 8825:2013に準拠したレーザー回折式粒度分布測定法により測定でき、累積平均径が50%となる粒子径である。
【0041】
本開示の不定形耐火組成物における結合剤の含有率は、1質量%~15質量%が好ましく、3質量%~12質量%がより好ましい。
結合剤の含有率を1質量%以上とすることにより、不定形耐火組成物を用いて製造される不定形耐火物の強度及び耐腐食性を改良できる。また、硬化時間を短縮でき、工期をより短縮できる。
結合剤の含有率を15質量%以下とすることにより、不定形耐火組成物の硬化時間を不定形耐火物の形成に適したものにできる。
また、本開示の不定形耐火組成物が、アルミナセメントを含む場合、不定形耐火組成物の硬化時間及び不定形耐火組成物により製造される不定形耐火物の耐熱性の観点から、不定形耐火組成物におけるアルミナセメントの含有率は、1質量%~10質量%が好ましく、3質量%~9質量%がより好ましい。
【0042】
(分散剤)
本開示の不定形耐火組成物は、1種又は2種以上の分散剤を含んでもよい。
分散剤の種類は、特に限定されず、例えば、リン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤及びスルホン酸系分散剤等が挙げられる。
リン酸系分散剤としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム及びヘキサメタリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩が挙げられる。
カルボン酸系分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩及びポリアクリル酸塩等が挙げられる。
スルホン酸系分散剤としては、例えば、メラミンスルホン酸塩及びβ-ナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0043】
本開示の不定形耐火組成物における分散剤の含有率は、0.05質量%~0.5質量%が好ましく、0.07質量%~0.3質量%が好ましい。
分散剤の含有率を0.05質量%以上とすることにより、不定形耐火組成物を用いて製造される耐火物の強度及び耐腐食性を改良できる。
分散剤の含有率を0.5質量%以下とすることにより、長期養生性を改良できる。
【0044】
本開示の不定形耐火組成物は、上記各成分を従来公知の方法により混練することにより製造できる。
混練には、オムニミキサー、パドルミキサー、ナウタミキサー、アイリッヒミキサー、ボルテックスミキサー又は連続混練装置を使用できる。
【0045】
(不定形耐火組成物の用途)
本開示の不定形耐火組成物は、不定形耐火物の製造に使用できる。
不定形耐火物の製造は、吹付け施工により行ってもよく、流し込み施工により行ってもよく、打込み施工により行ってもよいが、本開示の不定形耐火組成物は、吹付け施工による不定形耐火物の製造により適している。また、工期短縮の観点からも、吹付け施工により行うことが好ましい。
吹付け施工は、乾式吹付け施工であっても、湿式吹付け施工であってもよいが、不定形耐火物の強度の観点からは、湿式吹付け施工が好ましい。
【0046】
(不定形耐火物)
本開示の不定形耐火物は、上記不定形耐火組成物により形成されたものである。
【0047】
(不定形耐火物の製造方法)
本開示の不定形耐火物の製造方法は、上記不定形耐火組成物を施工対象物に吹き付け、乾燥させることを含む。
また、本開示の不定形耐火組成物の製造方法は、施工対象物への吹き付け前に、不定形耐火組成へ施工水を加えることを含むことができる。
【0048】
以下、本開示の不定形耐火組成物を用いた不定形耐火物の製造方法の一例を、図1を参照しながら説明する。
【0049】
まず、図1において表される気流搬送式吹付け施工装置1について説明する。
図1に示したように、この吹付け施工装置1は、気流搬送機2と、搬送管3と、施工水添加手段4と、施工水添加部5と、吹付けノズル6と、コンプレッサー7と、を備える。
【0050】
気流搬送機2は、粉末状の不定形耐火組成物21を、コンプレッサー7の圧縮空気を利用して所定の固体/気体比率で搬送管3内に搬送し、搬送された不定形耐火組成物21は、さらに搬送管3の一端側(気流搬送機2側)から他端側(吹付けノズル6側)へ搬送する。
【0051】
コンプレッサー7は、圧縮空気を気流搬送機2へ供給するものである。
不定形耐火組成物21は、気流搬送機2において、コンプレッサー7から供給される圧縮空気により、搬送管3内を搬送される。
気流搬送機2としては、粉末状の不定形耐火組成物21を、圧縮空気を利用して搬送管3内を搬送できるものであれば特に制限はないが、例えば、AGCプライブリコ株式会社製のニードガン(商品名)等の吹付け機等を使用できる。
【0052】
粉末状の不定形耐火組成物21を、連続的に所定の量、気流搬送機2に供給し、コンプレッサー7から供給される圧縮空気を利用して、搬送管3に送り込むことにより、時間当たりの不定形耐火組成物21の搬送量を調整できる。
【0053】
搬送管3内に送り込まれた不定形耐火組成物21は、気流搬送機2に供給される圧縮空気により、搬送管3内を吹付けノズル6方向に搬送される。
搬送管3の長さは、特に限定されるものではないが、例えば、10m~200mとできる。
【0054】
搬送管3は、圧縮空気により、粉末状の不定形耐火組成物21を吹付けノズルまで搬送するための通路である。
また、搬送途中において施工水が不定形耐火組成物21に添加され、不定形耐火組成物21が湿潤状態となった場合であっても、圧縮空気により不定形耐火組成物は吹付けノズル6まで搬送される。
すなわち、搬送管3は、気流搬送機2と吹付けノズル6を接続して、粉末状の不定形耐火組成物21及び湿潤状態の不定形耐火組成物21を安定して搬送できるものであればよい。
【0055】
この搬送管3は、特に限定されず、例えば、鋼等の金属製の搬送管、ゴム製の搬送管及びポリエチレン等の樹脂製の搬送管等が挙げられる。
ゴム製の搬送管及び樹脂製の搬送管は、現場の状況に合わせた配置ができ、且つ移動が容易であり好ましい。また、施工場所が高所である場合にも、安定した施工が可能であるため、ゴム製の搬送管及び樹脂製の搬送管は好ましい。
【0056】
搬送管3の内径は、搬送する不定形耐火組成物21の量及び大きさ、並びに施工を行う現場環境等に応じ適宜変更することが好ましい。
例えば、単位時間当りの吹付け量の観点からは、搬送管3の内径は、65mm以下が好ましい。
また圧力損失の防止という観点からは、搬送管3の内径は、25mm以上が好ましい。
【0057】
不定形耐火組成物21においては、含有される成分が凝集等により塊を形成しうる。
搬送容易性の観点から、搬送管3の内径に対する、不定形耐火組成物21に含有される上記塊の最大粒子直径の比(塊の最大粒子直径/搬送管の内径)は、1/10~1/2が好ましく、1/7~1/3がより好ましい。
通常、搬送管の内径が38mm~65mmであれば、上記条件を満たす。
なお、本開示において、上記塊の最大粒子直径の測定は、JIS Z 8815:1994に準拠したふるい分け試験により測定することができる。
【0058】
搬送管3の長さは、不定形耐火組成物21の搬送を安定して行うことができれば制限されない。
【0059】
施工水添加手段4は、粉末状の不定形耐火組成物21が搬送されている搬送管3内に施工水を添加して不定形耐火組成物21を湿潤状態とするものである。
湿潤状態となった不定形耐火組成物21は、気流搬送機2による圧縮空気により吹付けノズル6まで搬送される。
施工水は、施工水添加手段4により、搬送管3の施工水添加部5において、不定形耐火組成物21に添加される。
【0060】
施工水添加手段4は、例えば、ステンレス等からなる金属製の配管、ゴム製のホース又はポリエチレン等の樹脂製のホースが好ましい。
施工水添加手段4の内径は、添加する施工水の量及び施工現場の環境等により適宜選択すればよく、通常、9mm~25mmが好ましい。
施工水添加手段4の長さは、施工水供給源の位置に応じ適宜変更することが好ましいが、通常、施工水の供給源は気流搬送機2の近傍に配設されているため、施工水添加手段4は搬送管3と同程度の長さとなる。
【0061】
施工水添加手段4は、搬送管3内へ施工水を供給できるように搬送管3の途中に設けられた、施工水添加部5の水添加口(図示せず)において接続される。
不定形耐火組成物21及び施工水の混合性の観点、並びに不定形耐火組成物21の堆積及び搬送管3の閉塞の防止の観点から、施工水添加部5の配置位置は、吹付けノズル6の先端から上流側に0.3m~1m離れた位置が好ましい。
【0062】
吹付け特性と施工体の物性の観点から、不定形耐火組成物21の総量100質量部に対する添加される施工水の添加量は、5質量部~15質量部が好ましく、7質量部~13質量部がより好ましい。
【0063】
なお、粉体、水及び空気の分散系の構造における研究では、一般には、かかる3つの系は種々の構造を取り得るが、搬送管内において湿潤状態の不定形耐火組成物21は、粉体と水との連続した粒子に空気が閉じ込められた、いわゆる、「繊条(II)域」(梅屋:学振136委員会、不定形耐火物施工技術協議会研究会資料)を構成し、湿潤状態の不定形耐火組成物21は、搬送管内を浮遊しながら搬送されるものと思われる。
しかし、これはメカニズムの推定であり、本開示の解釈を拘束するものではない。
【0064】
吹付けノズル6は、搬送管3の先端に取り付けられており、施工水の添加された不定形耐火組成物21を施工対象物22へ吹付けるものである。
吹付けノズル6は、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。
なお、搬送用の圧縮空気は施工対象物22に吹付けられた時の衝撃により外気中に脱気する。吹付けされた不定形耐火組成物21は脱気後、急速に凝集し、その後硬化して不定形耐火物23となり、強固な炉壁が形成される。なお、施工の際には必要に応じて型枠等を使用してもよい。
【実施例0065】
以下、上記実施形態を調製例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの例に限定されない。例1~例9が実施例であり、例10~例11が比較例である。
また、表中の数値は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0066】
(例1~例11)
表1に示した配合で各種成分を混練し、不定形耐火組成物を製造した。表1に示した各種成分の詳細は以下の通りである。
・炭化ケイ素:平均粒子径30μm以上10mm以下の炭化ケイ素及び平均粒子径1μm以上30μm未満の炭化ケイ素の混合物(それぞれを質量基準で、75.15:5の比率で含む))
・アルミナ及びシリカの混合物(炭化ケイ素以外の骨材、平均粒子径30μm以上10mm以下)
・乳酸アルミニウム:塩基性乳酸アルミニウム
・有機繊維A:繊維長5mm、繊度2dtexのポリプロピレン繊維
・有機繊維B:繊維長0.5mm、繊度2dtexのポリプロピレン繊維
・有機繊維C:繊維長25mm、繊度2dtexのポリプロピレン繊維
・有機繊維D:繊維長3mm、繊度2dtexのPVA繊維(ビニロン)
・ベントナイト:平均粒子径10μm未満
・炭化ケイ素以外の耐火性粉末:平均粒子径0.5μm以上5μm未満の、アルミナ及びシリカヒュームの混合物
・結合剤:アルミナセメント、平均粒子径15μm未満
・分散剤:トリポリリン酸ナトリウム
【0067】
<<熱伝導性評価>>
例1~例11において製造した不定形耐火組成物10000gを1分間空練りし、その後、水を800g適宜添加し、3分間混練して混練物を得た。その混練物を180mm×114mm×65mmの型枠に突き込んで試験体を2個作製した。
20℃の環境にて24時間養生、800℃で3時間焼成して、JIS R 2251-1:2007に準じて、熱伝導率を測定した。下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
AA:熱伝導率が7W/(m・K)以上であった。
A:熱伝導率が5W/(m・K)以上7W/(m・K)未満であった。
B:熱伝導率が4W/(m・K)以上5W/(m・K)未満であったが、実用上問題のない程度である。
【0068】
<<急速昇温適性評価>>
例1~例11において製造した不定形耐火組成物10000gを1分間空練りし、その後、水を800g適宜添加し、3分間混練して混練物を得た。その混練物を高さ100mm×直径100mmの型枠に突き込んで円筒形試験体を2個作製した。
20℃の環境にて24時間養生した後、1000℃雰囲気の電気炉に入れ、30分後にこれを取り出し、目視により、爆裂の有無を観察し、下記評価基準に基づいて、急速昇温適性を評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
A:円筒形試験体に爆裂の発生は見られなかった。
B:円筒状試験体に1個の爆裂箇所が見られた
C:円筒状試験体に2個以上の爆裂箇所が見られ、急速昇温適性に問題があった。
【0069】
<<養生外観評価>>
下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。
(評価基準)
例1~例11において製造した不定形耐火組成物10000gを1分間空練りし、その後、水を800g適宜添加し、3分間混練して混練物を得た。その混練物を420mm×420mm×40mmの型枠に突き込んで試験体を1個作製した。
20℃の環境にて24時間養生した後、目視により、試験体の外観を観察し、下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1に示す。
A:試験体に養生収縮亀裂の発生は見られなかった。
B:試験体に養生収縮亀裂の発生が見られた。
【0070】
【表1】

【0071】
本開示の不定形耐火組成物によれば、優れた熱伝導性を維持しつつ、急速昇温適性に優れることが示された。
【符号の説明】
【0072】
1:気流搬送式吹付け施工装置、2:気流搬送機、3:搬送管、4:施工水添加手段、5:施工水添加部、6:吹付けノズル、7:コンプレッサー、21:不定形耐火組成物、22:施工対象物、23:不定形耐火物
図1