(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101298
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】エネルギー吸収部品
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20220629BHJP
B60R 19/34 20060101ALI20220629BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B62D21/15 C
B60R19/34
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215790
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】假屋 房亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善継
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一郎
(72)【発明者】
【氏名】楊 陽
(72)【発明者】
【氏名】趙 希禄
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203BB14
3D203CA23
3D203CA37
3D203CA43
3D203CA45
3D203DA22
3J066AA23
3J066BA03
3J066BB01
3J066BD07
3J066BF01
3J066BG08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能が良好なエネルギー吸収部品を提供する。
【解決手段】エネルギー吸収部品1は、外殻部2と、外殻部の内部に位置する補強部品3とを備え、外殻部は外周長が最小となる部分が長手方向の一方の半部に位置する筒状の部材であり、補強部品は筒状の部品であり、補強部品は多角形の仮想上底面及び仮想下底面に挟まれる側面に対角線の折り線を有する多角柱の最小ユニットが、仮想上底面又は仮想下底面に垂直な方向に3段以上形成された構造、又は、外形が凹状の箇所と凸状の箇所とが長手方向に交互に形成され、かつ、長手方向の軸線に垂直な断面において、矩形と矩形に内接する楕円に対し、矩形の中央を中心として所定の角度をあけて矩形の縁に向けて延びる複数の仮想線分に沿って、楕円の縁から矩形の縁よりも内側の区間に設定された点どうしを結ぶ断面形状を有する構造を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝突エネルギーを吸収可能なエネルギー吸収部品であって、
外殻部と、
前記外殻部の内部に位置する補強部品と、を備え、
前記外殻部は、外周長が最小となる部分が長手方向の一方の半部に位置する、筒状の部材であり、
前記補強部品は、筒状の部品であり、
前記補強部品は、
多角形の仮想上底面及び仮想下底面に挟まれる側面に対角線の折り線を有する多角柱の最小ユニットが、前記仮想上底面又は前記仮想下底面に垂直な方向に3段以上形成された構造、又は、
外形が凹状の箇所と凸状の箇所とが長手方向に交互に形成され、かつ、長手方向の軸線に垂直な断面において、矩形と該矩形に内接する楕円に対し、該矩形の中央を中心として所定の角度をあけて該矩形の縁に向けて延びる複数の仮想線分に沿って、該楕円の縁から該矩形の縁よりも内側の区間に設定された点どうしを結ぶ断面形状を有する構造を有することを特徴とする、エネルギー吸収部品。
【請求項2】
前記長手方向の一方の半部は、車体の前方側として位置することが可能な半部である、請求項1に記載のエネルギー吸収部品。
【請求項3】
前記外殻部は、長手方向の前記一方の半部の端における外周長が、長手方向の他方の半部の端における外周長よりも小さい、請求項1又は2に記載のエネルギー吸収部品。
【請求項4】
前記補強部品が板厚1.0m以下の鋼板からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー吸収部品。
【請求項5】
前記外殻部の全長Lと、前記外殻部の長手方向の前記一方側の半部における外形断面積の最小値と長手方向の他方側の半部における外形断面積の最大値の平均値Aとが、下式(1)を満足する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエネルギー吸収部品。
L≧2×√A (1)
【請求項6】
前記外殻部の長手方向の前記一方側の半部の端における外周長Lfと長手方向の他方側の半部の端における外周長Lrとが、下式(2)を満足する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエネルギー吸収部品
Lf≦0.9×Lr (2)
【請求項7】
前記鋼板の降伏強度(YP)が150~650MPaである、請求項2に記載のエネルギー吸収部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー吸収部品、特には、自動車の車体に用いられるクラッシュボックスに好適に用いることのできるエネルギー吸収部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が衝突した際のようなエネルギーを吸収する部品として、該部品自体が荷重により圧潰することによってエネルギーを吸収する構造が一般的に用いられている。例えば、クラッシュボックスは、車体のバンパーとサイドメンバーとの中間に配置され、衝突時の前後方向の荷重により、クラッシュボックスの軸方向に蛇腹状に圧潰して衝突エネルギーを吸収する。
【0003】
衝突時にクラッシュボックスが圧潰することでサイドメンバーの損傷を防ぐことができれば、バンパー及びクラッシュボックスを交換することにより容易に車体の補修が可能となる。
【0004】
クラッシュボックスに必要な性能としては、吸収エネルギーが大きいこと、サイドメンバーの損傷を低減するため部品前方(例えば車両のフロントのクラッシュボックスの場合は車両の前方であり、車両のリアのクラッシュボックスの場合は車両の後方である)から圧潰変形すること、乗員への衝撃を低減するため初期の反力(変形荷重)が小さいことに加え、燃費性能の向上の観点からは軽量化も求められている。
【0005】
このようなクラッシュボックスの構造については多くの検討がされており、例えば、特許文献1には、対向して配置された一対のコーナー部と、該一対のコーナー部同士を結ぶ線に対して80°以上100°以下の角度で交差して配置された他の一対のコーナー部と、を備え、かつ四角形の基本横断面形状を備える横断面形状を有する金属製の筒体から構成され、当該筒体の軸方向の一方の端部から他方の端部へ向けて衝撃荷重を入力されるクラッシュボックスであって、前記一対のコーナー部の成す角度(α)は90°以上150°以下であるとともに前記他の一対のコーナー部の成す角度(β)は30°以上90°以下であり、該一対のコーナー部の少なくともいずれか一方のコーナーを挟む二つの辺それぞれに設けられる、長手方向へ延びるとともに内部へ向けて凸となる1又は複数の溝を有するとともに、前記一方の端部の側における前記筒体の断面周長は、前記他方の端部の側における当該筒体の断面周長よりも小さいことを特徴とするクラッシュボックスが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、中空断面の上下方向の中央付近で中空領域を上下に仕切るように水平状に延びた中板を備えていることを特徴とする、クラッシュボックスが開示されている。
【0007】
初期のピーク荷重を低減する観点からは、特許文献3には、反転螺旋型折紙構造を用いたエネルギー吸収構造体であって、該エネルギー吸収構造体は、多角形の仮想上底面及び仮想下底面に挟まれる側面に対角線の折り線を有する多角柱の反転螺旋型折紙構造からなる最小ユニットが、仮想上底面又は仮想下底面に垂直な方向に3段以上形成される筒状の金属体を具備することを特徴とするエネルギー吸収構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-51581号公報
【特許文献2】特開2007-30778号公報
【特許文献3】特開2011-58579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エネルギー吸収部品は、エネルギー吸収性能が高いことが好ましく、特にトラックなどの車種では、車体重量が大きく運動エネルギーも大きくなるため、エネルギー吸収部品には、より大きなエネルギー吸収性能が必要となる。そのため、クラッシュボックスに用いるエネルギー吸収部品の場合、板厚を厚くすることや、部品全長を長くすることで吸収エネルギーを確保することも考えられる。しかしながら、単に板厚を厚くした場合、初期の反力が大きくなり、乗員や車体への衝撃が大きくなるという問題があるため、部品全長を長くすることが好ましい対応である。しかしながら、部品全長が長くなった場合には、圧潰変形時に部品全体が折れ曲がれ易くなり、部品全体が折れ曲がってしまうと十分な吸収エネルギーが得られないという課題があった。
【0010】
特許文献1や特許文献2に記載された技術は、部品全長が短いクラッシュボックスを対象としており、部品全長が長いクラッシュボックスに適用することは困難であるという問題があった。また、特許文献3に記載された反転らせん型折紙構造では、部品全長が長い場合でも部品全体が折れ曲がることなく安定して圧潰させることができるが、圧潰の開始位置の制御が困難であるという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能が良好な、エネルギー吸収部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)衝突エネルギーを吸収可能なエネルギー吸収部品であって、
外殻部と、
前記外殻部の内部に位置する補強部品と、を備え、
前記外殻部は、外周長が最小となる部分が長手方向の一方の半部に位置する、筒状の部材であり、
前記補強部品は、筒状の部品であり、
前記補強部品は、
多角形の仮想上底面及び仮想下底面に挟まれる側面に対角線の折り線を有する多角柱の最小ユニットが、前記仮想上底面又は前記仮想下底面に垂直な方向に3段以上形成された構造、又は、
外形が凹状の箇所と凸状の箇所とが長手方向に交互に形成され、かつ、長手方向の軸線に垂直な断面において、矩形と該矩形に内接する楕円に対し、該矩形の中央を中心として予め定められた角度をあけて該矩形の縁に向けて延びる複数の仮想線分に沿って、該楕円の縁から該矩形の縁よりも内側の区間に設定された点どうしを結ぶ断面形状を有する構造を有することを特徴とする、エネルギー吸収部品。
ここで、「半部」とは、外殻部を長手方向に2分割した際の半分の部分である。
【0013】
(2)前記長手方向の一方の半部は、車体の前方側として位置することが可能な半部である、上記(1)に記載のエネルギー吸収部品。
【0014】
(3)前記外殻部は、長手方向の前記一方の半部の端における外周長が、長手方向の他方の半部の端における外周長よりも小さい、上記(1)又は(2)に記載のエネルギー吸収部品。
【0015】
(4)前記補強部品が板厚1.0m以下の鋼板からなる、上記(1)~(3)のいずれかに記載のエネルギー吸収部品。
【0016】
(5)前記外殻部の全長Lと、前記外殻部の長手方向の前記一方側の半部における外形断面積の最小値と長手方向の他方側の半部における外形断面積の最大値の平均値Aとが、下式(1)を満足する、上記(1)~(4)のいずれかに記載のエネルギー吸収部品。
L≧2×√A (1)
ここで外形断面積とは、外殻部を外形が等しい中実部品とした場合の断面積である。
【0017】
(6)前記外殻部の長手方向の前記一方側の半部の端における外周長Lfと長手方向の他方側の半部の端における外周長Lrとが、下式(2)を満足する、上記(1)~(5)のいずれかに記載のエネルギー吸収部品
Lf≦0.9×Lr (2)
【0018】
(7)前記鋼板の降伏強度(YP)が150~650MPaである、上記(2)に記載のエネルギー吸収部品。
ここで、「降伏強度」は、「JIS Z 2241」に示される金属材料引張試験方法により測定されるものであり、該引張試験で測定される応力-歪み曲線において、上降伏点がある鋼板では、上降伏点を降伏強度とし、上降伏点が無い鋼板では、0.2%耐力(オフセット法)を降伏強度とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能が良好なエネルギー吸収部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の第1の実施形態にかかるエネルギー吸収部品の透過斜視図である。
【
図1B】
図1Aのエネルギー吸収部品の外殻部を示す斜視図である。
【
図1C】
図1Aのエネルギー吸収部品の補強部品を示す斜視図である。
【
図3A】回転角θが0度のときの最小ユニットの斜視図である。
【
図3C】仮想上底面を回転角θで回転させた後の最小ユニットを説明するための図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態にかかるエネルギー吸収部品の透過斜視図である。
【
図5】第2の実施形態のエネルギー吸収部品の外殻部を示す斜視図である。
【
図6】第2の実施形態のエネルギー吸収部品の外殻部について詳細に示す斜視図である。
【
図7C】矩形断面の中央から放射状に延びる仮想線分の説明図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態にかかるエネルギー吸収部品の透過斜視図である。
【
図9】第3の実施形態のエネルギー吸収部品の補強部品を示す斜視図である。
【
図10】比較例にかかるエネルギー吸収部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に例示説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態にかかるエネルギー吸収部品の透過斜視図である。
図1Aに示すように、本実施形態のエネルギー吸収部品1は、外殻部2と、外殻部2の内部に位置する補強部品3と、を備えている。エネルギー吸収部品1は、筒状の外殻部2及び筒状の補強部品からなる部品であり、筒の延在方向(長手方向)の一方側を車体のフロント側の前方又はリア側の後方(すなわち衝突の際の力が入ってくる方向)に位置するように車体のバンパー(フロントバンパー又はリアバンパー)とサイドメンバーとの中間に配置して、クラッシュボックスとして用いることができる。エネルギー吸収部品1は、以下のように、(例えば車体の)衝突エネルギーを吸収可能なものである。以下、エネルギー吸収部品1の構成要素である外殻部2及び補強部品3について説明する。
【0023】
図1Bは、
図1Aのエネルギー吸収部品の外殻部を示す斜視図である。
図1Bに示すように、外殻部2は、中空断面を有する筒状の部材である。筒状の具体的な形状として、図示例では外殻部2は、略楕円形の断面を有している。これによりエネルギー吸収性能をより高めることができる。しかしながら、外殻部2の断面形状は、他にも円形、矩形等の多角形等様々な形状とすることができる。また、外殻部2の長手方向の全長Lと、外殻部2の長手方向の一方側の半部(車体のフロント側の前方又はリア側の後方として位置することが可能な半部)における外形断面積の最小値と長手方向の他方側の半部における外形断面積の最大値の平均値Aとが、下式(1)を満足することが好ましい。
L≧2×√A (1)
上記式(1)を満たすことで、部品全長を長くして吸収エネルギーを大きめに確保することができるからである。これにより、トラック等の衝突時に大きなエネルギーが発生する車体のクラッシュボックスとしても好適に用いることができる。
同様の理由により、上記全長Lと、上記平均値Aとが、下式(1´)を満足することがより好ましい。
L≧3.5×√A (1´)
適用される対象(車種等)にもよるため、特には限定されないものの、上記と同様の理由により、Lは30cm以上であることが好ましく、45cm以上であることがより好ましい。
外殻部2は、特には限定されないが、金属板、例えば鋼板からなるものとすることができる。この場合の鋼板は、例えば熱延鋼板や冷延鋼板等とすることができる。鋼板は、加工の容易性等に鑑みて板厚を一定とすることが好ましいが、厚さが変化する部分を有していても良い。外殻部2の板厚は、1.4~5.0mmとすることが好ましい。外殻部2の板厚を1.4mm以上とすることにより、剛性を確保してエネルギー吸収性能をより向上させ、一方で、外殻部2の板厚を5.0mm以下とすることにより、エネルギー吸収部品1の軽量化が可能であるからである。
【0024】
ここで、外殻部2は、外周長が最小となる部分が長手方向の一方の半部に位置している。特に本例では、外殻部2は、長手方向の一方の半部の端における外周長が、長手方向の他方の半部の端における外周長よりも小さい。本例では、長手方向の一方の半部の端における外周長が最小であり、そこから長手方向の他方の半部の端に向かって、外周長が漸増し、他方の半部の端における外周長が最大となっている。
特に、外殻部2の長手方向の一方側の半部の端における外周長Lfと長手方向の他方側の半部の端における外周長Lrとが、下式(2)を満足することが好ましい。後述する圧潰の開始位置の制御をより確実なものとすることができるからである。
Lf≦0.9×Lr (2)
また、同様の理由により、上記LfとLrとが下式(2´)を満足することがより好ましい。
Lf≦0.88×Lr (2´)
一方で、上記一方側の端付近での剛性をある程度確保してエネルギー吸収性能を高めるために、下式(2´´)を満足することが好ましい。
Lf≧0.7×Lr (2´´)
また、適用される対象(車種等)にもよるため、特には限定されないものの、上記と同様の理由により、Lfは、例えば、300~400mmとすることができる。
【0025】
次に、
図1Cは、
図1Aのエネルギー吸収部品の補強部品を示す斜視図である。補強部品3は、反転らせん構造を有する筒状の部品である。補強部品3は、金属板からなり、鋼板とすることが好ましい。鋼板の板厚は1.0mm以下とすることが好ましい。エネルギー吸収部品1を軽量化することができるからである。一方で、ある程度の剛性を確保してエネルギー吸収性能を向上させる観点からは、鋼板の板厚は、0.2mm以上とすることが好ましい。この場合、鋼板の降伏強度(YP)は150~650MPaとすることが好ましい。鋼板の降伏強度を150MPa以上とすることにより、エネルギー吸収性能を高めることができ、一方で、650MPa以下とすることで初期の反力を低減することができるからである。以下、
図2を参照して、反転らせん構造について詳細に説明する。
【0026】
図2に示すように、反転らせん構造とは、多角形の仮想上底面32及び仮想下底面34に挟まれる側面36に対角線38の折り線を有する多角柱の反転らせん型折紙構造からなる最小ユニット30が、仮想上底面32又は仮想下底面34に垂直な方向に3段以上形成される構造である。
【0027】
最小ユニット30は、圧潰時には仮想上底面32及び仮想下底面34がらせん状にそれぞれ反転しながら潰れていく構造である。最小ユニット30の反転らせん型折紙構造は、多角形の仮想上底面32及び仮想下底面34に挟まれる側面36に、対角線38の折り線を有する多角柱のものである。図示例では、正六角形の仮想上底面32及び仮想下底面34 からなる最小ユニット30を4段一連に繋げた構成を示している。しかしながら、多角形であれば六角形に限定されるものではなく、また、不等辺多角形であっても良い。さらに、最小ユニットの段数も、3段以上であれば良く、4段に限定されるものではない。なお、説明を簡単化するために、
図2では
図1Cより段数を少なくして説明している。
【0028】
ここで、最小ユニット30の側面36の各辺の折り線や、対角線38の折り線については、筒状の金属体に予め折り目を付したり、切り欠きや肉薄加工をしたりすることにより、折り線の位置で折れるように構成しておけば良い。
【0029】
また、最小ユニット30の側面36の形状や対角線38については、図示例では、最小ユニット30毎に、向きが逆になるように構成されている。より具体的には、最小ユニット30の各段は、他の段の仮想上底面32又は仮想下底面34と面対称となるように構成されている。
【0030】
次に、補強部品3の圧潰時の動作について説明する。補強部品3は、最上段の最小ユニット30の仮想上底面32側からの圧潰エネルギーを受けた場合に、側面36に設けられた対角線38に沿って折れ曲がると共に、隣接する側面36のつなぎ目及び上下の最小ユニット30のつなぎ目が折れ曲がり、側面36が密着して折り畳まれる。即ち、側面36間のつなぎ目は山折で折れ曲がり、対角線38は谷折りで折れ曲がる。そして、最小ユニット30間のつなぎ目、即ち、仮想上底面32又は仮想下底面34の周囲の辺は、山折で折れ曲がる。
【0031】
そして、最小ユニット30は、反転らせん型折紙構造であるため、圧潰時に仮想上底面232と仮想下底面34とがらせん状にそれぞれ反転しながら、即ち、ねじれながら回転して潰れる。したがって、各最小ユニット30では、仮想上底面32と仮想下底面34の間では、相対的に回転が生じる。ここで、最小ユニット30を軸方向に偶数段、即ち、図示例のように4段とし、各段が他の段の仮想上底面32又は仮想下底面34と面対称となるように構成した場合には、最上段の最小ユニット30の回転が、次段の最小ユニット30の回転によって相殺され、以降、これが繰り返される。したがって、最上段の仮想上底面と、最下段の仮想下底面に、回転ねじれを生じさせないようにする場合には、偶数段且つ面対称となるように構成すれば良い。
【0032】
補強部品3は、上述のような動作で最上段の最小ユニット30の仮想上底面側からの圧潰エネルギーを吸収する。このときのエネルギー吸収量を最大とするためには、側面36 の形状を決定する仮想上下底面の回転角θ、側面36及び対角線38の各辺の面取り形状、仮想上底面32又は仮想下底面34の周辺長に対する最小ユニット30の高さhのアスペクト比を、以下のように決定すれば良い。
【0033】
まず、回転角θについて説明する。
図3は、最小ユニット30における回転角θを説明するための斜視図であり、
図3Aは、回転角θが0度のときの最小ユニット30の斜視図、
図3Bは、回転角θを定義するための説明図、
図3Cは、仮想上底面32を回転角θで回転させた後の最小ユニット30を説明するための図である。図中、
図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0034】
最小ユニット30の側面36の形状は、
図3Aに示されるように、仮想上底面32を仮想上底面32の中心点Oで
図3A中の矢印の方向に回転角θで回転させた際の仮想上底面の各辺と仮想下底面の各辺を繋げた側面形状で決定される。より具体的には、
図3Bに示される回転角θと角度α及び角度βとの関係は以下の式で表わされる。
【数1】
但し、hは最小ユニット30の高さ、Lは仮想上底面32又は仮想下底面34の周辺長、Rは仮想上底面32の頂点での回転直径である。
【0035】
図3Bに示されるように、回転角θに応じて、多角柱の展開図上での側面36の平行四 辺形の形状が決定され、その対角線38も決定される。なお、
図3Aに示されるA点が、回転により
図3Cに示されるA´点に移動することになる。ここで、回転角θは、好ましくは10度以下であれば良い。回転角θが10度以下の場合には、エネルギー吸収量が最大となり、回転角θが28度以上となると、回転角θが0度の場合のエネルギー吸収量の70% 程度となる。なお、上述の図示例では、仮想上底面32を回転させることで、側面36及び対角線38の形状を決定したが、仮想上底面32と仮想下底面34が相対的に回転されれば良いため、仮想下底面34を回転させて側面36及び対角線38の形状を決定しても勿論良い。
【0036】
ここで、少なくとも1つの最小ユニット30の回転角θは、他の最小ユニット30と異なっても良い。回転角θが大きくなると、反転らせん型折紙構造は潰れやすくなる。したがって、例えば圧潰エネルギーの作用する方向から、各最小ユニット30の回転角θを順に小さくしていくことで、圧潰エネルギー作用時の反力を徐々に高めるように構成することも可能である。例えば、補強部品の長手方向の一方側の半部での回転角を、補強部品の長手方向の他方側の半部での回転角より大きくすることで、より一層圧潰の開始位置が上記一方側となることを確実にすることができる。例えば、最大の回転角を有する位置が、補強部品の長手方向の一方側の半部となるようにしても良いし、補強部品の長手方向の一方側の半部での平均の回転角を、補強部品の長手方向の他方側の半部での平均の回転角より大きくすることもできるし、上記のように、圧潰エネルギーの作用する方向(長手方向の一方側)から、各最小ユニット30の回転角θを順に小さくしていくこともできる。
【0037】
次に、折り線の面取り形状について説明する。上述のように形成された最小ユニット30において、最小ユニット30の側面36及び対角線38の折り線や最小ユニット30間のつなぎ目の各辺に面取り(丸め加工)を行っても良い。面取りを行うことで、吸収エネルギー量をより大きくすることが可能である。
【0038】
次に、アスペクト比について説明する。上述の図示例では、最小ユニット30の仮想上底面32又は仮想下底面34の周辺長Lに対する最小ユニット30の高さhのアスペクト比は、他の最小ユニット30のアスペクト比と同じにしている。しかしながら、少なくとも1 つの最小ユニットのアスペクト比が他の最小ユニットと異なるように構成しても良い。例えば、すべての最小ユニット30の仮想上底面32及び仮想下底面34の周辺長が一定の場合、各段の最小ユニット毎にその高さを異ならせるように構成しても良い。これにより、各段の最小ユニット30のエネルギー吸収量をそれぞれ異ならせることが可能である。例えば、圧潰エネルギーの作用する方向から、各最小ユニット30の高さを順に高くしていくことで、圧潰エネルギー作用時の反力を徐々に高めるように構成することも可能である。例えば、補強部品の長手方向の一方側の半部での最小ユニットの高さを、補強部品の長手方向の他方側の半部での最小ユニットの高さより小さくすることで、より一層圧潰の開始位置が上記一方側となることを確実にすることができる。例えば、最小の高さを有する最小ユニットが、補強部品の長手方向の一方側の半部となるようにしても良いし、補強部品の長手方向の一方側の半部での平均の最小ユニットの高さを、補強部品の長手方向の他方側の半部での平均の最小ユニットの高さより小さくすることもできるし、上記のように、圧潰エネルギーの作用する方向(長手方向の一方側)から、各最小ユニット30の高さを順に大きくしていくこともできる。
【0039】
ここで、外殻部2の内部に位置する補強部品3は、外殻部2の内周面に溶接などによって取り付けることができる。また、補強部品3と外殻部2の長手方向の端部にフランジをそれぞれ設け、補強部品3と外殻部2のフランジ同士を接合して取り付けたり、平板状の部品にそれぞれのフランジを接合して取り付けたりすることもできる。
【0040】
以下、第1の実施形態のエネルギー吸収部品の作用効果について説明する。以下、外殻部2の長手方向の一方の半部が車体のフロント側の前方となるように配置されている場合を例にして説明する。第1の実施形態のエネルギー吸収部品1は、外殻部2と、外殻部2の内部に位置する補強部品3とを備えており、補強部品3は、筒状の反転らせん構造であるため、車体のフロント側の前方からの衝突エネルギーに対して、上述したような仮想上底面32と仮想下底面34とがらせん状にそれぞれ反転しながら回転して潰れる、安定的な圧潰が可能であり、圧潰が不安定で部品全体が折れ曲がってしまう場合と比べて大きなエネルギーを吸収することができる。さらに外殻部2があるため、これがない場合に比べて剛性が高く、さらに大きなエネルギーを吸収することができる。そして、外殻部2は、外周長が最小となる部分が長手方向の一方の半部に位置する筒状の部材であるため、当該一方側の剛性が相対的に低く潰れやすいため、その内部の補強部品3の圧潰の開始位置も当該一方側に制御することができる。これにより、一方側から他方側へと圧潰が安定的に進んでいくことができるため、この点でもより大きなエネルギーを吸収することができる。また、特に外殻部2及び補強部品3以外の重さのある補強部材を用いたり、あるいは、外殻部2や補強部品3の厚さを必要以上に大きくしたりすることもないため、軽量化も可能であり、初期の反力も小さくすることが可能である。
以上のように、第1の実施形態のエネルギー吸収部品によれば、軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能を良好にすることができる。
なお、例えば、外殻部2の長手方向の一方の半部が車体のリア側の後方となるように配置されている場合も、車体の後方からの衝突に対して上記と同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態にかかるエネルギー吸収部品の透過斜視図である。
図4に示すように、第2の実施形態のエネルギー吸収部品4も、車体の衝突エネルギーを吸収可能なエネルギー吸収部品であって、外殻部5と、外殻部5の内部に位置する補強部品3とを備えている。
図5に示す外殻部5は、外周長が最小となる部分が長手方向の一方の半部に位置する筒状の部材である点において、第1の実施形態と同様であるが、多角形折紙構造を有している点で第1の実施形態と異なっている。なお、補強部品3については、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。以下、外殻部5の多角形折紙構造について詳細に説明する。
【0042】
図6は、第2の実施形態にかかるエネルギー吸収部品4の外殻部5の一例の斜視図である。
図6に示すように、外殻部5は、筒状の部材であり、長手方向の一方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部51が形成されている。図示例では、外殻部5は、2つの段部51、52を有している。そして、段部51では、外側から内側に向かう凹状の外形を有しており、段部52では、内側から外側に向かう凸状の外形を有している。本例では、外殻部5の長手方向の一方側の半部の端から段部51までは外周長が漸減し、段部51から段部52までは外周長が漸増し、段部52から長手方向の他方側の半部の端までは外周長が漸減している。本例では、外殻部5は、段部51において最小の外周長を有し、かつ、段部52において最大の外周長を有している。なお、外殻部5は、長手方向の一方側の半部に外周長が最小となるような部分が形成されていれば良く、本例のように、一方側の半部の端の外周長を最小としても良く、あるいは、本例以外にも様々な形状が可能である。例えば、段部の個数は特には限定されず、また、長手方向に外周長が変化しない箇所を含んでいても良く、また、外周長が最大となる位置が長手方向の一方の半部側に位置していても良く、本例のように他方側の半部の端の外周長が最大となるようにしても良い。段部を3つ以上有する場合、一例としては、外殻部5の長手方向の一方側の半部の端から他方側の半部の端に向かって、外周長が漸減する部分と漸増する部分とが長手方向に交互に配置されることにより、外形が凹状の段部と凸状の段部とが長手方向に交互に形成されるように構成することができる。例えば、外周長が最小となるような部分を形成する段部での外周長は、長手方向での最大の外周長となる部分の外周長の70~90%とすることが好ましい。70%以上とすることによりある程度の剛性を確保して吸収エネルギーを大きくすることができ、一方で、90%以下とすることで、後述の圧潰開始位置の制御をより確実にすることができるからである。段部が3つ以上ある場合、2番目に小さな外周長となる段部も長手方向の一方側の半部に位置することが、後述の圧潰開始位置の制御をより確実にする観点から好ましい。。最適な段部の数は、全長Lなどにより変化するが、全長Lが35cm以上となる場合には、3~7個とすることが好ましい。特には限定されないが、圧潰開始位置の制御の観点から、段部間の長手方向の長さ(離間距離)は、全長L/(段部数+1)の±10%以内とすることが好ましい。
【0043】
次に、外殻部5の断面形状について説明する。外殻部5は、長手方向の軸線に垂直な断面において、矩形(矩形断面)と該矩形(矩形断面)に内接する楕円に対し、矩形(矩形断面)の中央を中心として所定の角度をあけて矩形(矩形断面)の縁に向けて延びる複数の仮想線分に沿って、楕円の縁から矩形(矩形断面)の縁よりも内側の区間に設定された点どうしを結ぶ断面形状を有している。
図7Aは矩形断面の説明図であり、
図7Bは矩形断面に内接する楕円の説明図であり、
図7Cは矩形断面の中央から放射状に延びる仮想線分の説明図であり、
図7Dは外形の節点の説明図であり、
図7Eは節点を結んだ外形形状の説明図であり、
図7Fは奇数段目の外形形状の説明図である。
【0044】
まず、
図7Aにおいて、加工前の矩形断面を有する四角錐状のパイプに対して、
図7Bに示すように内接する楕円を導出する。次に、
図7Cにおいて、矩形断面の中心を原点とするX軸方向(幅方向)およびY軸方向(高さ方向)を仮定し、XY平面の第1象限に相当する領域を対象とする。第1象限の領域において、X軸からY軸までの間の90度の角度範囲を、予め定められた角度間隔の一例として、6分割する。なお、何分割するかは、設計や仕様等に応じて任意に変更可能であるが、多すぎると加工が困難になり、少なすぎると強度が不足するため、5分割~8分割の範囲が好適である。
【0045】
そして、矩形断面の中心から、90度を6分割する放射状の仮想線分を導出する。すなわち、予め定められた角度の一例として、15度の間隔で仮想線分を導出する。そして、各仮想線分が楕円と交差する点を、第1の節点a1~a5とする。また、各仮想線分が矩形断面の縁と交差する点を、第2の節点b1~b5とする。
【0046】
図7Dにおいて、各仮想線分に沿って、第1の節点と第2の節点の距離に対して、第2の節点側から、所定の距離の一例としての[|ai-bi|/20]の位置に、第3の節点ci(i=1~5)を設定する。すなわち、第3の節点ciは、仮想線分において、楕円の縁から矩形断面の縁よりも内側の区間に設定された点である。なお、第3の節点ciの位置が第2の節点biに近すぎると矩形断面のものに近づき、第3の節点ciの位置が第1の節点aiに近すぎると矩形断面の母材から加工する際の変形量が多くなり加工が困難になるため、性能と母材の材質、加工方法等に応じて矩形断面から楕円までの中間で選択可能である。
【0047】
図7Eにおいて、X軸と矩形断面との交点Aと、
図7Dで導出された第3の節点ciと、Y軸と矩形断面との交点Bとを接続する。
図7Fにおいて、上記の第3の節点ciを、第2象限~第4象限についても導出する。このようにして導出された第3の節点ciやX軸とY軸と矩形断面との交点を結んだ多角形状の形を外殻部5の断面形状(外形形状)とする。
【0048】
なお、このような多角形折紙構造は、母材の内部に液体を充填した状態から型押しし、不要部分を削除する等して形成することができる。
【0049】
以下、第2の実施形態のエネルギー吸収部品の作用効果について説明する。以下、外殻部5の長手方向の一方の半部が車体のフロント側の前方となるように配置されている場合を例にして説明する。以下、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。第2の実施形態では、外周長が最小となる部分が段部51であり、当該段部51は、凹形状をなす部分であるため、当該箇所及びその付近から圧潰が開始しやすくなり、圧潰開始位置の制御をより一層確実にすることができる。また、上記の例では、外周長が最大となる部分が段部52であり、他方側の半部に位置しており、当該段部52が凸形状をなすことから、他方側の半部では圧潰が開始しにくく、このことも一方側の半部で圧潰が開始することをより一層確実にしている。また、上記の例では、外殻部5は、上述した断面形状(楕円形に近い多角形状の断面形状)を有しているため、断面形状が矩形である場合に比べて剛性を確保してより大きなエネルギー吸収性能を達成することができる。
以上のように、第2の実施形態のエネルギー吸収部品によっても、軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能が良好にすることができる。
第2の実施形態は、補強部材の圧潰の開始位置をより一層確実に制御することができる点で特に有利である。また、重量当たりの吸収エネルギーの点からも有利である。
なお、例えば、外殻部5の長手方向の一方の半部が車体のリア側の後方となるように配置されている場合も、車体の後方からの衝突に対して上記と同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態にかかるエネルギー吸収部品の透過斜視図である。
図8に示すように、第3の実施形態のエネルギー吸収部品6も、車体の衝突エネルギーを吸収可能なエネルギー吸収部品であって、外殻部2と、外殻部2の内部に位置する補強部品7とを備えている。
図8に示す外殻部2は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
図9に示す補強部品7は、多角形折紙構造を有している点で第1の実施形態と異なっている。以下、補強部品7の多角形折紙構造について説明する。
【0051】
補強部品7の多角形折紙構造についても、以下に説明するように、第2の実施形態で外殻部5の多角形折紙構造について説明したのと近似した構成である。ただし、圧潰の開始位置は外殻部2により制御するため、補強部品7では、長手方向の一方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部が形成されていている必要はなく、他方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部が形成されていても良い。もちろん、長手方向の一方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部が形成されていても良い。また、一例としては、補強部品5は、長手方向の一方側の半部の端から他方側の半部の端に向かって、外周長が漸減する部分と漸増する部分とが長手方向に交互に配置されることにより、外形が凹状の箇所と凸状の箇所とが長手方向に交互に形成されるように構成することができる。これにより、長手方向で凸部間に挟まれる凹部を起点に圧潰しやすくなり、安定的な圧潰が可能となる。なお、凹部が複数個の場合、凹部の外周長は長手方向の位置によって凹部間で異ならせることもでき、あるいは、同じとすることもできる。また、凸部が複数個の場合、凸部の外周長も長手方向の位置によって凸部間で異ならせることもでき、あるいは、同じとすることもできる。例えば、凹部をなす段部の外周長は、凸部をなす段部の外周長の70~90%とすることが好ましい。70%以上とすることによりある程度の剛性を確保して吸収エネルギーを大きくすることができ、一方で、90%以下とすることで、適度に圧潰しやすくなるからである。最適な段部の数は、全長Lなどにより変化するが、全長Lが35cm以上となる場合には、3~7個とすることが好ましい。特には限定されないが、圧潰開始位置の制御の観点から、段部間の長手方向の長さ(離間距離)は、全長L/(段部数+1)の±10%以内とすることが好ましい。
【0052】
補強部品7の多角形折紙構造の断面形状については、第2の実施形態で外殻部5の多角形折紙構造について説明したのと同様の構成(ただし、補強部品は外殻部の内部に配置されるため、断面積等は外殻部の多角形折紙構造の断面積等よりも小さくなる)であるので説明を省略する。
【0053】
以下、第3の実施形態のエネルギー吸収部品の作用効果について説明する。以下、外殻部2の長手方向の一方の半部が車体のフロント側の前方となるように配置されている場合を例にして説明する。以下、第1の実施形態と異なる点のみを説明する。第3の実施形態では、補強部品7が、上述の多角形折紙構造を有しているが、外形が凹状の箇所と凸状の箇所とが長手方向に交互に形成されているため、凹状の箇所が圧潰の起点となりやすく安定的な圧潰が可能であり、不安定な圧潰により部品全体が折れ曲がってしまう場合と比べて、エネルギー吸収性能が良い。また、補強部品7は、上述した楕円形に近い多角形状の断面形状を有しているため、断面形状が矩形である場合に比べて剛性を確保してより大きなエネルギー吸収性能を達成することができる。よって、このような多角形折紙構造の補強部品7によっても、安定的に圧潰してエネルギー吸収性能が良好となる。
以上のように、第3の実施形態のエネルギー吸収部品によっても、軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能が良好にすることができる。
なお、例えば、外殻部5の長手方向の一方の半部が車体のリア側の後方となるように配置されている場合も、車体の後方からの衝突に対して上記と同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
【0054】
(第4の実施形態)
図示は省略するが、第4の実施形態のエネルギー吸収部品も、車体の衝突エネルギーを吸収可能なエネルギー吸収部品であって、外殻部と、外殻部の内部に位置する補強部品とを備えている。第4の実施形態における外殻部は、第2の実施形態の外殻部と同様であり、また、第4の実施形態における補強部品は、第3の実施形態の補強部品と同様である。すなわち、第4の実施形態では、外殻部及び補強部品は、それぞれ第2及び第3の実施形態で先に述べたそれぞれの多角形折紙構造を有している。
第4の実施形態のエネルギー吸収部品によっても、第2の実施形態の外殻部、第3の実施形態の補強部品についてそれぞれ説明したのと同様の理由により、軽量であり初期の反力が小さく、部品前方から圧潰が開始し、エネルギー吸収性能が良好にすることができる。
【0055】
本開示のエネルギー吸収部品は、車体のクラッシュボックスに好適に用いることができ、トラック等の重荷重を有する車体のクラッシュボックスとして特に好適に用いることができる。本開示のエネルギー吸収部品は、車体のフロント側のクラッシュボックスとして用いることができ、又は、リア側のクラッシュボックスとして用いることもできる。
【実施例0056】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。本発明の効果を確かめるため、シミュレーション実験にて、比較例及び発明例1~3のエネルギー吸収部品を評価した。
【0057】
比較例として、
図10に示すような中空の筒状のエネルギー吸収部品を作成した。比較例において、車体のフロント側の前方となる一方側の半部の端における外周長(最小)を359mmとし、他方の半部の端における外周長(最大)を414mmとした。一方側の半部の端から他方側の半部の端に向かっては、外周長が漸増するものとした。長手方向の全長は576mmとした。この部材は、板厚3.5mmの鋼板からなるものとした。
【0058】
発明例1として、
図1に示したような筒状の外殻部の内部に反転らせん構造の補強部品が配置された構造のエネルギー吸収部品を作成した。外殻部については、車体のフロント側の前方となる一方側の半部の端における外周長(最小)を359mmとし、他方の半部の端における外周長(最大)を414mmとした。一方側の半部の端から他方側の半部の端に向かっては、外周長が漸増するものとした。長手方向の全長は576mmである。この部材は、板厚3.0mmの鋼板からなるものとした。補強部品については、それぞれが57.6mmの高さを有する10個の最小ユニットからなり、回転角を10°とし、断面形状を1辺の長さが28.87mmの正六角形とした。この部材は、板厚0.5mmの鋼板からなるものとした。
【0059】
発明例2として、
図6に示したような多角形折紙構造の筒状の外殻部の内部に反転らせん構造の補強部品が配置された構造のエネルギー吸収部品を作成した。外殻部については、車体のフロント側の前方となる一方側の半部での端の外周長を366.38mmとし、他方の半部の端における外周長を420.94mmとした。長手方向の全長は576mmとした。段部の個数は6個とし、外形が凸状となる段部と凹状となる段部とを長手方向に交互に配置した。前方となる側の端部と他方となる側の端部を直線で結んだ仮想面に対し、凸状となる段部に5mmの段差を与えた。断面形状は、上記X軸からY軸までの間の90度の角度範囲を6等分する放射状の仮想線分が上記楕円と交差する点を、第1の節点a1~a5とし、各仮想線分が矩形断面の縁と交差する点を、第2の節点b1~b5とし、[|ai-bi|/20]の位置に第3の節点ci(i=1~5)を設定し、X軸と矩形断面との交点と、第3の節点ciと、Y軸と矩形断面との交点Bとを接続することを行い、他の象限でも同様のことを行って決定されるものとした。この部材は、板厚2.7mmの鋼板からなるものとした。補強部品については、発明例1と同様のものを用いた。
【0060】
発明例3として、筒状の外殻部の内部に多角形折紙構造の補強部品が配置された構造のエネルギー吸収部品を作成した。外殻部については、発明例1と同様のものを用いた。補強部品は、段部の個数は6個とし、外形が凸状となる段部と凹状の段部とが長手方向に交互に形成され、車体のフロント側の前方となる一方側の半部での端の外周長を293.1mmとし、他方の半部の端における外周長を336.75mmとした。前方となる側の端部と他方となる側の端部を直線で結んだ仮想面に対し、凸状となる段部に4mmの段差を与えた。断面形状は、上記X軸からY軸までの間の90度の角度範囲を6等分する放射状の仮想線分が上記楕円と交差する点を、第1の節点a1~a5とし、各仮想線分が矩形断面の縁と交差する点を、第2の節点b1~b5とし、[|ai-bi|/20]の位置に第3の節点ci(i=1~5)を設定し、X軸と矩形断面との交点と、第3の節点ciと、Y軸と矩形断面との交点Bとを接続することを行い、他の象限でも同様のことを行って決定されるものとした。この部材は、板厚0.5mmの鋼板からなるものとした。
【0061】
比較例2として、発明例1で説明した反転らせん構造の補強部品のみで構成されるエネルギー吸収部品を作成した。ただし、鋼板の板厚を3.0mmとした。その他の形状は発明例1の補強部品と同様である。
【0062】
比較例1~2及び発明例1~3のエネルギー吸収部材を車体に対し、フロント側を想定してエネルギー吸収部品の後端側に3000kgの重量を付与し、初期速度56km/hで剛体壁に衝突させるシミュレーションを行い、初期ピーク荷重、圧潰開始位置、吸収エネルギーを評価した。外殻部および補強部品は鋼板からなるものとし、降伏強度は215MPaとした。また、用いた鋼板の密度を7.85g/cm3として重量を計算した。以下、表1に評価結果を示している。なお、表1において、圧潰モードの「〇」とは、車体のフロント側の前方の半部から圧潰したことを意味する。なお、質量の目標値は5.04kg以下であり、吸収エネルギーの目標値は、65kJ以上であり、初期ピーク荷重の目標値は335kN以下とした。
【0063】
【0064】
表1に示すように、発明例1~3によれば、軽量であり、安定的に圧潰し、エネルギー吸収性能が良好で、初期の反力を小さくすることができたことがわかる。
補強部品7の多角形折紙構造についても、以下に説明するように、第2の実施形態で外殻部5の多角形折紙構造について説明したのと近似した構成である。ただし、圧潰の開始位置は外殻部2により制御するため、補強部品7では、長手方向の一方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部が形成されていている必要はなく、他方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部が形成されていても良い。もちろん、長手方向の一方側の半部に外周長が最小となるような部分を形成する段部が形成されていても良い。また、一例としては、補強部品7は、長手方向の一方側の半部の端から他方側の半部の端に向かって、外周長が漸減する部分と漸増する部分とが長手方向に交互に配置されることにより、外形が凹状の箇所と凸状の箇所とが長手方向に交互に形成されるように構成することができる。これにより、長手方向で凸部間に挟まれる凹部を起点に圧潰しやすくなり、安定的な圧潰が可能となる。なお、凹部が複数個の場合、凹部の外周長は長手方向の位置によって凹部間で異ならせることもでき、あるいは、同じとすることもできる。また、凸部が複数個の場合、凸部の外周長も長手方向の位置によって凸部間で異ならせることもでき、あるいは、同じとすることもできる。例えば、凹部をなす段部の外周長は、凸部をなす段部の外周長の70~90%とすることが好ましい。70%以上とすることによりある程度の剛性を確保して吸収エネルギーを大きくすることができ、一方で、90%以下とすることで、適度に圧潰しやすくなるからである。最適な段部の数は、全長Lなどにより変化するが、全長Lが35cm以上となる場合には、3~7個とすることが好ましい。特には限定されないが、圧潰開始位置の制御の観点から、段部間の長手方向の長さ(離間距離)は、全長L/(段部数+1)の±10%以内とすることが好ましい。