(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101327
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】マスクケース
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215846
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】514057075
【氏名又は名称】株式会社伸光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】添田 薫
(72)【発明者】
【氏名】角田 正典
(57)【要約】
【課題】手指でマスク本体に触れずに衛生マスクを取外すことができるマスクケースを提供する。
【解決手段】マスクケース10は、ケース本体部12と、抗菌シート部13と、連結部14とを有する。マスクケース10は、ケース本体部12を顔に装着した衛生マスク1に添えた状態で、耳介から外した耳掛け紐3aがなす輪の中に抗菌シート部13を挿通し、ケース本体部12と重なる方向に抗菌シート部13を連結部14にて回動することで、抗菌シート部13とケース本体部12が衛生マスク1を両面から挟み込む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体部と、
抗菌シート部と、
前記ケース本体部と前記抗菌シート部との間にある連結部とを有し、
前記抗菌シート部は、前記ケース本体部と重なる方向に前記連結部にて回動することで、前記衛生マスクを前記ケース本体部との間に挟み込んで収納可能であるマスクケース。
【請求項2】
前記抗菌シート部は、前記ケース本体部を顔に装着した前記衛生マスクに添えた状態として回動可能であり、
前記抗菌シート部は、耳介または頭部から外した前記衛生マスクの一方の装着紐がなす輪の中に挿入可能として構成されている
請求項1記載のマスクケース。
【請求項3】
前記ケース本体部は、前記衛生マスクの内面が前記抗菌シート部の両面を挟むように前記衛生マスクを屈曲させる可撓性を有する
請求項1または2記載のマスクケース。
【請求項4】
前記抗菌シート部は、前記衛生マスクの内面と接触可能な抗菌メッシュシートを有する
請求項1~3何れか1項記載のマスクケース。
【請求項5】
前記抗菌メッシュシートは、接触する前記衛生マスクの前記内面よりも大きい形状である
請求項4記載のマスクケース。
【請求項6】
前記抗菌メッシュシートは、形状変形可能な可撓性を有する
請求項4または5記載のマスクケース。
【請求項7】
前記抗菌メッシュシートは、抗菌作用を有する金属による抗菌表面を有する抗菌性金属メッシュシートである
請求項4~6何れか1項記載のマスクケース。
【請求項8】
前記抗菌作用を有する金属は、抗菌剤として、銅、銀、亜鉛、コバルト、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、モリブデン、鉛、タングステン、バナジウム、ジルコニウム、銅-すず-亜鉛の三元合金、又はこれらの何れかを含有する合金である
請求項7記載のマスクケース。
【請求項9】
前記ケース本体部は、前記衛生マスクの外面と接触可能な内面抗菌部を有する
請求項1~8何れか1項記載のマスクケース。
【請求項10】
さらに、前記抗菌シート部を前記ケース本体部に対して着脱可能とする取付部を有する
請求項1~9何れか1項記載のマスクケース。
【請求項11】
前記ケース本体部は、その全部又は一部が合成樹脂シート又は植物由来の自然素材シートで形成されている
請求項1~10何れか1項記載のマスクケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生マスクを収納するマスクケースに関する。
【背景技術】
【0002】
着用している衛生マスクを外して収納するためにマスクケースが使われている。従来のマスクケースは、例えば洋形封筒や書類を綴じるファイル型のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3228448号公報、
図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマスクケースに衛生マスクを収納するには、衛生マスクの一対の耳掛け紐を手指でそれぞれ耳介から外し、マスクケースを開き、衛生マスクを手指で持って収納する。このため細菌やウイルスが付着しているおそれのある衛生マスクを手指で持たなければならない。
【0005】
本発明の目的は、衛生マスクを安全に収納することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、マスクケースである。マスクケースは、ケース本体部と、抗菌シート部と、前記ケース本体部と前記抗菌シート部との間にある連結部とを有する。前記抗菌シート部は、前記ケース本体部と重なる方向に前記連結部にて回動することで、前記衛生マスクを前記ケース本体部との間に挟み込んで収納可能であるマスクケースとして構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、顔から外した衛生マスクをマスクケースに収納する際の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は第1実施形態のマスクケースを示す正面図である。
【
図2】
図2はマスクケースに衛生マスクを収納する第1の過程を示す説明図である。
【
図10】
図10は第2実施形態のマスクケースを示す正面図である。
【
図11】
図11は第3実施形態のマスクケースを示す背面図である。
【
図12】
図12は第4実施形態のマスクケースを示す正面図である。
【
図13】
図13は第5実施形態のマスクケースの分解斜視図である。
【
図14】
図14は第5実施形態のマスクケースを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一態様による実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。また、以下では、本発明の一態様としてマスクケースを例示している。以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0010】
【0011】
マスクケース10の構成
【0012】
マスクケース10は、全体が薄いシート体11として構成されており、ケース本体部12と抗菌シート部13とを有している。マスクケース10は、
図1で展開状態を示すように、横長の長方形として形成されている。
【0013】
ケース本体部12は、可撓性のシート状の部材で形成されている。具体的には、例えば樹脂フィルム、樹脂薄板等の合成樹脂シートにて構成することができる。その他にも、例えば植物由来の自然素材シートを用いることもできる。近年、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への取り組みが注目されているが、マスクケース10としても、それを意識した自然素材を利用することができる。その一例としては、バナナ由来のバナナ繊維シート、パイナップル由来のパイナップル繊維シート等を利用することができる。ケース本体部12は、横長の長方形として形成されており、収納対象物となる衛生マスク1の全面を載置可能な大きさ及び形状で形成されている。このようにケース本体部12は、全部又は一部を合成樹脂シートや自然素材シートで形成することができる。
【0014】
抗菌シート部13は、ケース本体部12の長手方向の一端から伸長する延設部として形成されている。抗菌シート部13は、抗菌メッシュシート13aと外縁部13bとを有する。
【0015】
抗菌メッシュシート13aは、マスクケース10に収納した衛生マスク1の顔側の面(衛生マスク1の内面)と接触可能とされている部分である。抗菌メッシュシート13aは、本実施形態では抗菌性金属メッシュシートにて形成されている。抗菌性金属メッシュシートを含む抗菌シート部13は、全体として形状変形可能な可撓性を有するものである。
【0016】
抗菌性金属メッシュシートは、抗菌作用を有する金属による抗菌表面を有するメッシュシートである。抗菌性金属メッシュシートの構造は、第1に、メッシュ基材それ自体の材質を、抗菌作用を有する金属又は合金とすることができる。また、前記構造は、第2に、メッシュ基材の材質を、抗菌作用が無い金属や合金、合成樹脂材、繊維材、熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体とし、このようなメッシュ基材に抗菌作用を有する金属材料、合金材料を抗菌材として含有する抗菌層を形成したものとしてもよい。そうした抗菌層の形成方法は、鍍金、塗装、浸漬、印刷、3Dプリンティング等により形成することができる。さらに、前記構造は、第3に、抗菌作用を有する金属材料、合金材料を抗菌材(抗菌充填材)として含有する合成樹脂材、繊維材、熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体により形成したものとしてもよい。このような合成樹脂材、ゴム状弾性体の抗菌性成形体、抗菌繊維体としても、抗菌表面を実現することが可能である。
【0017】
抗菌作用を有する金属としては、細菌やウイルスの増殖を抑制する抗菌作用(殺菌作用、除菌作用を含む。)を有するすべての金属を用いることができる。具体的には、例えば銅、銀、亜鉛、コバルト、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、モリブデン、鉛、タングステン、バナジウム、ジルコニウム及びこれらの1以上を含む合金を用いることができる。また、抗菌性金属メッシュシートには、抗菌作用(殺菌作用)を促進させる表面処理液により金属メッシュシートを表面処理した抗菌層を有するものとしてもよい。このような殺菌用表面処理液としては、例えば国際公開第2019/008950に記載のものを例示できる。本実施形態の抗菌メッシュシート13aには、金属製のメッシュ基材の全体(メッシュ基材をなす線材表面)を銅-すず-亜鉛からなる三元合金皮膜で被覆したものを使用することができる。そのような三元合金皮膜としては、例えば株式会社特殊鍍金化工所の三元合金皮膜「CSZ」(登録商標。以下同じ。)を好適に用いることができる。そしてこれをメッシュ基材の線材に鍍金により被覆することで、抗菌メッシュシート13aの材料として特に好ましい抗菌性金属メッシュシートを得ることができる。
【0018】
ここで三元合金皮膜(「CSZ」)の特徴を説明する。三元合金皮膜を形成する三元合金は、銅:50~55質量%、すず:30~35質量%、亜鉛:15~20質量%の合金組成を有する。三元合金皮膜は、金属メッシュ基材を形成する金属線材に対して均一な厚みで金属メッシュ基材の全面を被覆するめっき膜として形成されている。三元合金皮膜は抗菌表面としての機能性を有し、銅や銀と同様の抗菌効果を有しており、抗菌シート部13の表裏両面の全面にわたって細菌やウイルスの増殖を抑制する抗菌作用を奏することができる。また、三元合金皮膜は、ニッケルを含まず生体に対して金属アレルギー反応を起こしにくい特徴を有する。
【0019】
抗菌メッシュシート13aのメッシュサイズは、50~635メッシュのものを使用することができる。但し、衛生マスク1を着脱する際に、抗菌シート部13が顔に触れる可能性がある場合には、50メッシュ以上80メッシュ未満及び140メッシュを超え635メッシュ以下のものを使用するのが好ましい。つまり80メッシュ以上140メッシュ以下のメッシュサイズのものは使用しないことが好ましい。メッシュサイズが80メッシュ以上140メッシュ以下であると、特に男性の場合にひげが抗菌メッシュシート13aのメッシュ開口の中に入り込んで引っ掛かり(ひげトラップ)、抗菌シート部13を動かすたびにひげが引っ張られて痛くなり、使用感が不快となるおそれがあるからである。したがって、衛生マスクを外してからマスクケース10に収納する場合、女性用や子供用のマスクケース10の場合には、前述のひげトラップを考慮する必要がないため、抗菌メッシュシート13aのメッシュサイズは、50~635メッシュのものを使用することができる。
【0020】
抗菌シート部13の大きさは、好ましくは衛生マスク1を半折した半折片(右片又は左片)を被覆できるサイズであることが好ましい。細菌やウイルスが付着しているおそれのある衛生マスク1の内面について抗菌の必要性が高いからである。さらに抗菌シート部13は、半折片よりも大きい形状であるのが好ましい。衛生マスク1の内面の全面を被覆して抗菌できると、より衛生的だからである。
【0021】
外縁部13bは、抗菌シート部13となる抗菌メッシュシート13aの外周のホツレを防止したり、肌触りを改善したりするために設けられている。外縁部13bは、一例として、抗菌シート部13を形成する抗菌性金属メッシュシートの外周縁を表裏から挟むように形成することができる。このような外縁部13bは、一例として、不織布、樹脂フィルム、熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体シート、皮革等の素材のものを用いることができ、接着、熱圧着、一体成形等により抗菌性金属メッシュシートの外周縁に固着することができる。また、外縁部13bは、3Dプリンタにてウレタン系、シリコーン系等のゴム状弾性材を用いて形成することもできる。さらに、3Dプリンタにて外縁部13bを形成した抗菌メッシュシート13aを用意し、これをケース本体部12と一体化することも可能である。
【0022】
ケース本体部12と抗菌シート部13との間には連結部14が位置している。連結部14は、ケース本体部12に対して抗菌シート部13を回動させる部分である。つまり連結部14は、ケース本体部12及び抗菌シート部13と構造的に独立していること、例えばケース本体部12や抗菌シート部13(外縁部13b)と異材質で形成されていることや、連結部14が別部材であることは必須とするものではなく、回動して屈曲する部分を連結部14として指している。この点、本実施形態では、後述するとおり、ケース本体部12と抗菌シート部13の外縁部13bとが一連一体のシート材で構成されており、連結部14も間にある部分として構成されている。連結部14は、抗菌シート部13をケース本体部12と接するまで回動させることによって、抗菌シート部13を折畳むことのできる「可動屈曲部」として構成されている。
【0023】
ケース本体部12には留め具15が設けられている。留め具15は、マグネット、面ファスナー、ベルト、スライド式ジッパー、チャック等、ケース本体部12を折り畳んだ状態を維持することができれば、どのようなものでもよい。なお、本実施形態では面ファスナーの留め具15を図示している。
【0024】
マスクケース10の使用方法
【0025】
衛生マスク1の取外し方法
【0026】
衛生マスク1へのマスクケース10の添え付け:
以下に説明する使用方法(衛生マスクの取外し方法、装着方法)では、「装着紐」として耳介に掛け止める耳掛け紐3を有する衛生マスク1を例示して説明する。しかしながら、一例として、米国労働安全衛生研究所が定めるN95規格に適合する医療用マスクに見られるような「装着紐」としての人体の後頭部に引っ掛ける掛け紐を有する衛生マスクについても、衛生マスク1の場合と同様にマスクケース10の使用方法を適用することが可能である。
【0027】
顔に装着している衛生マスク1を取外すには、先ず
図2で示すように、マスクケース10を手指で持ち、ケース本体部12を衛生マスク1のマスク本体2の正面に添えて押さえる。マスク本体2は、顔に装着している状態では、中央部の上側が鼻の上の方へ、また中央部の下側が顎の下の方へ上下に開いて装着していることが多い。こうした状態でもケース本体部12は、マスク本体2のほとんどを覆うように添えることができる。したがってマスクケース10を持つ手指がマスク本体2の外面に付着している細菌やウイルスに触れてしまうのを抑制することができる。
【0028】
耳掛け紐3の取外し:
次に、
図3、
図4で示すように、衛生マスク1の片側の耳掛け紐3を抗菌シート部13の外周に引掛ける。具体的には、例えば、左手でケース本体部12を抑えている場合には、右手で衛生マスク1の右の耳掛け紐3aを、右耳の耳介から外してから右耳の近くにある抗菌シート部13の外周に引掛ける(
図3、
図4)。あるいは、耳掛け紐3aの輪の中に抗菌シート部13を挿入することで、抗菌シート部13の外周に右の耳掛け紐3aを引掛けるようにする。
【0029】
この過程では、耳掛け紐3aを抗菌シート部13の外周に引掛けることも、逆に抗菌シート部13を耳掛け紐3aの輪の中に通すことも可能であり、そのどちらでも耳掛け紐3aのマスクケース10への係止を容易に行うことができる。
【0030】
また前記過程では、前述のように抗菌シート部13を耳掛け紐3aに挿入する場合には、抗菌シート部13を連結部14にて容易に回動させることが可能であるため、挿入する操作を容易に行うことができる。さらに抗菌シート部13は全体がシート状であり形状変形が容易である。こうした構造的な特徴においても、耳掛け紐3aの輪の中に挿入する操作を容易に行うことができる。
【0031】
抗菌シート部13の折畳み:
そして、
図5で示すように、左手でケース本体部12の右側を押さえる力を緩めながら、抗菌シート部13をケース本体部12と重なる方向へ連結部14で回動させることによって、ケース本体部12を顔から離す。これとともに抗菌シート部13の外周に引っ掛かっているマスク本体2の右側も顔から離れ、抗菌シート部13が回動を続けながら最後にはマスク本体2の顔側の面(内面)と接触することとなる。
【0032】
この過程では、マスクケース10は、ケース本体部12が顔に装着した衛生マスク1に沿うように湾曲するが、前述のようにケース本体部12の右側を押さえる左手を離すと、湾曲状態から解放されて直線状に復元する。これにより衛生マスク1と顔との間にスペースが形成されるため、前述のように抗菌シート部13を顔側へ回動させ易くすることができる。
【0033】
衛生マスク1の取外し:
マスク本体2の内面が抗菌シート部13と接触すると、マスク本体2の外面はケース本体部12と接触している。すなわち、
図5~
図7で示すように、マスク本体2の右半分は抗菌シート部13とケース本体部12とで挟持可能となる。このため例えば右側の親指で抗菌シート部13を押さえ、他の指でケース本体部12を押さえることで、マスクケース10と衛生マスク1とを片手で摘まむように保持することができる。この状態で、左手で左耳の耳介から衛生マスク1の左の耳掛け紐3bを外して、顔からマスクケース10と衛生マスク1とを離す。
【0034】
この過程では、抗菌シート部13がマスク本体2の右半分よりも大きな形状であるため、右側の親指で抗菌シート部13を押さえるときにマスク本体2の内面に直接触れないようにすることができる。もちろんマスク本体2の外面も、前述のようにケース本体部12によって覆われて直接触れないようにすることができる。また、マスク本体2の右端は、折り返された連結部14によって外部に露出しないように隠される。このため衛生マスク1の右端側がマスクケース10から飛び出てしまうことがなく、マスクケース10の内側に確実に収納することができる。
【0035】
マスクケース10の折畳みと衛生マスク1の収納:
最後に、
図6で示すように、マスクケース10の右側または左側、あるいは双方をマスクケース10の中央で折り曲げる。これによって
図8、
図9で示すように、マスクケース10が半折りになり、留め具15で止めることでマスクケース10の半折状態が維持される。この半折状態としたマスクケース10の中に衛生マスク1が収納される。
【0036】
この過程では、マスクケース10のマスク本体2が可撓性であるため、マスクケース10を容易に折り畳むことができる。折り畳む際には、抗菌シート部13がマスクケース10の半分の大きさであることから、折畳んだ抗菌シート部13の先端を折り曲げる支点としてマスク本体2を容易に回動させることができる。
【0037】
マスクケース10に衛生マスク1が収納されると、衛生マスク1のマスク本体2の内面が抗菌シート部13の抗菌メッシュシート13aと直接接触する。したがって、マスクケース10は、衛生マスク1を収納した状態で、マスク本体2の内面に付着している細菌やウイルスの増殖を抑制することができる。
【0038】
マスクケース10は、耳掛け紐3を内部に収納せず、マスクケース10の外部に飛び出させた状態で収納する。このためマスクケース10であれば、耳掛け紐3a、3bをフックなどに引掛けるようにすることで、衛生マスク1を保持するために耳掛け紐3a、3bを有効利用することができる。
【0039】
衛生マスク1の装着方法
【0040】
マスクケース10は、収納している衛生マスク1を、装着時にマスク本体2に手指で触れることなく顔に装着できる。装着の手順は、取外しの手順と逆である。先ず折り畳んだマスクケース10を開く。
【0041】
次に、右手で抗菌シート部13とケース本体部12の外面とを挟むように摘まむことで、マスクケース10を持って顔の前に移動し、左の耳掛け紐3bを左耳の耳介に引掛ける。
【0042】
そして、抗菌シート部13をマスク本体2の内面から離すように回動させてから、衛生マスク1の右の耳掛け紐3aを右耳に引掛ける。これによって衛生マスク1の左右の耳掛け紐3a,3bが両耳に引っ掛かる。
【0043】
最後に抗菌シート部13を右の耳掛け紐3aの輪の中から抜きながら、マスクケース10を衛生マスク1から引き離すようにする。
【0044】
以上のようにしてマスクケース10を使うことで、マスク本体2に手指で触れることなく、マスクケース10に収納している衛生マスク1を顔に容易に装着することができる。したがって、衛生マスク1に付着しているおそれのある細菌やウイルスに手指が触れてしまうことを抑制することができる。
【0045】
実施形態の効果
【0046】
既に説明したもののほか、本発明の一態様である第1実施形態によれば以下の効果を奏する。
【0047】
マスクケース10は、ケース本体部12と、抗菌シート部13と、ケース本体部12と抗菌シート部13との間にある連結部14とを有し、抗菌シート部13は、ケース本体部12と重なる方向に連結部14にて回動することで、衛生マスク1をケース本体部12との間に挟み込んで収納可能であるように構成されている。
【0048】
このように抗菌シート部13を回動させることで、衛生マスク1をケース本体部12との間に挟み込んで収納可能であるため、使用済みのマスク本体2を手指で触れることなく、衛生マスク1をマスクケース10に収納することができる。そして、抗菌シート部13とケース本体部12が衛生マスク1を両面から挟み込むので、衛生マスク1をマスクケース10に収納した状態では、マスク本体2の内面が抗菌シート部13と接触する。このため、その抗菌効果によってマスク本体2の内面における細菌やウイルスの増殖を抑制することができる。特に抗菌シート部13には、抗菌メッシュシート13aとして、銅-すず-亜鉛からなる三元合金皮膜の表面を有する抗菌性金属メッシュシートを用いると、細菌やウイルスに対する優れた増殖抑制効果を奏することができる。
【0049】
国立感染症研究所 国立国際医療研究センター 国際感染症センターが発行する「新型コロナウイルス感染症に関する感染管理」(改訂2020年6月2日)によれば、一旦外したマスクを保管する際に、内側が汚染されないように工夫することが推奨されているが、マスクケース10は、抗菌シート部13がマスク本体2の内面に対して直接接触するため、推奨されている一旦外した衛生マスク1の保管方法を実現することのできる「マスク保管具」として活用することが可能である。
【0050】
抗菌シート部13は、ケース本体部12を顔に装着した衛生マスク1に添えた状態として回動可能であり、耳介から外した一方の耳掛け紐3aがなす輪の中に挿通可能として構成されている。
【0051】
このため衛生マスク1を顔から取外す際に、マスクケース10のケース本体部12を衛生マスク1に添えた状態とすることで、手指がマスク本体2に触れるようにすることができる。そして抗菌シート部13は、ケース本体部12を顔に装着した衛生マスク1に添えた状態で回動可能である。このため、衛生マスク1を顔に装着したまま、抗菌シート部13を回動させることで、抗菌シート部13とケース本体部12とでマスク本体2を挟持することができる。さらに抗菌シート部13は、耳介から外した一方の耳掛け紐3aがなす輪の中に挿通可能であるため、一方の耳掛け紐3aを耳介から外しても衛生マスク1を落下させずに保持することができる。
【0052】
使用済みのマスクケース10は、家庭用の中性洗剤によって洗浄して付着している異物を除去することが可能である。そして洗浄した抗菌メッシュシート13aはアイロンやスチームアイロンによってアイロンがけすることが可能である。アイロンやスチームアイロンは低温側で80℃から設定可能であり、抗菌メッシュシート13aに付着している細菌やウイルスを殺菌することができる。つまりマスクケース10は、繰り返し使用することができる。
【0053】
なお、抗菌メッシュシート13aにアイロンがけをする場合、ケース本体部12や外縁部13bが耐熱性の低い樹脂フィルムであると加熱により変形するおそれがある。このため、アイロンがケース本体部12や外縁部13bと接触しないように気を付けてアイロンがけをするようにする。また、ケース本体部12を樹脂フィルムで形成する一方で、外縁部13bを不織布等の布材として構成することで、外縁部13bにアイロンがけをしても問題の無い構造とすることができる。この場合には、後述する第4実施形態で説明する抗菌シート部13を着脱可能な取付部41を設ける構成としてもよい。
【0054】
【0055】
図10に第2実施形態のマスクケース20を示す。第2実施形態が第1実施形態と相違する点は、連結部14の上端と下端に耳掛け紐3の凹部16を設けた点であり、その他は第1実施形態と共通する。凹部16は、耳掛け紐3を掛け止めることができる深さを有しており、ここに耳掛け紐3を係留できる。
【0056】
凹部16を有する第2実施形態のマスクケース20によれば、衛生マスク1を取外す際に、抗菌シート部13を挿通した耳掛け紐3を連結部14に係留しやすくなる。また、凹部16を設けると連結部14の長さが短くなり、抗菌シート部13が回動しやすくなる。したがって、マスクケース20を使った衛生マスク1の脱着を容易に行うことができる。
【0057】
【0058】
図11に第3実施形態のマスクケース30を示す。第3実施形態が第1実施形態と相違する点は、ケース本体部12の顔側の面(内面)に内面抗菌部31を設けた点であり、その他は第1実施形態と共通する。内面抗菌部31は、抗菌シート部13と同様に抗菌メッシュシート13a、具体的には抗菌性金属メッシュシートにて構成することができる。また内面抗菌部31は、ケース本体部12の内面に相応する形状とされており、接着、粘着等により固定されている。
【0059】
内面抗菌部31を有する第3実施形態のマスクケース30によれば、内面抗菌部31が衛生マスク1の外面と直接接触することができる。このため衛生マスク1をマスクケース30に収納した状態で、マスク本体2の外面に付着しているおそれのある細菌やウイルスの増殖を抑制することができる。この結果、マスクケース30ならば、衛生マスク1のマスク本体2の外面と内面の双方を抗菌性金属メッシュシートと直接接触させることで、衛生マスク1の外面と内面に対して同時に抗菌効果を発揮することができる。
【0060】
【0061】
図12に第4実施形態のマスクケース40を示す。第4実施形態が第1実施形態と相違する点は、ケース本体部12に対して抗菌シート部13を着脱可能とする取付部41を有する点であり、その他は第1実施形態と共通する。取付部41にはファスナーやボタンを使用することができる。ファスナーの場合には、スライドファスナー、面ファスナー等を使用することができる。
図12ではスライドファスナーを例示している。ボタンの場合には、二つ穴ボタン、四つ穴ボタン、スナップボタン、マグネットホック、ドットボタン等を使用することができる。
【0062】
取付部41を有するマスクケース40によれば、取付部41を取外してケース本体部12と抗菌シート部13とを別々に洗浄したり、ケース本体部12から抗菌シート部13を取外した状態で抗菌メッシュシート13aにアイロンやスチームアイロンにてアイロンがけをすることもできる。アイロンやスチームアイロンは低温側で80℃から設定可能であり、抗菌メッシュシート13aに付着している細菌やウイルスを殺菌することができる。つまりマスクケース40は、繰り返し使用することができる。また、取付部41を設けることで、ケース本体部12と抗菌シート部13とを、異なる材質で形成することができ、それらの色、模様等のデザインバリエーションの幅が広げることができ、携帯小物としての所有価値を高めることができる。
【0063】
【0064】
図13に第5実施形態のマスクケース50を示す。マスクケース50は、全体がシート体51として構成されており、ケース本体部12と抗菌シート部13はそのシート体51の一部として構成されている。
【0065】
シート体51は、2枚の樹脂フィルム51aの外周縁を全周にわたって相互に接合して構成されている。接合方法は、例えば熱融着、熱溶着、超音波溶着、熱圧着、両面粘着テープや接着材等による接着等を利用することができる。
【0066】
本実施形態の2枚の樹脂フィルム51aは、同一素材で且つ同一形状であり、量産の容易性やコスト等を考慮して熱溶着による接合方法を利用することができる。樹脂フィルム51aの素材としては、例えば熱可塑性樹脂でなる樹脂フィルムを用いることができ、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)等でなる樹脂フィルムが用いられる。その他にも熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体シートを用いてもよい。樹脂フィルム51aの抗菌シート部13に対応する部分には、抗菌メッシュシート13aを露出するための開口51bが設けられている。
【0067】
マスクケース50を製造するには、
図13で示すように2枚の樹脂フィルム51aの間に抗菌メッシュシート13aを挟んで、樹脂フィルム51aの外周縁に接合部51cを形成する。接合部51cは、連続する線状でも断続する破線状でもよく、また線状ではなく帯状でもよく、選択した接合方法に応じて形成される。
図14ではそのうち断続する破線状の四角形状の接合部51cを例示している。本実施形態の抗菌メッシュシート13aは、開口51bを形成する3辺で接合部51cにより接合され、開口51bを形成する1辺(左辺)は接合されていないため、2枚の樹脂フィルム51aの間はポケット部51dとして使用することが可能となる。このポケット部51dには、例えば予備の衛生マスク1を収納することが可能である。しかしながら、確実に抗菌メッシュシート13aを固定する場合には、開口51bの4辺に対応して接合する接合部51cとしてもよい。
【0068】
このように製造されたマスクケース50は、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができることに加えて、同一形状の2枚の樹脂フィルム51aの間に開口51bから露出可能な状態で抗菌メッシュシート13aを挟み、2枚の樹脂フィルム51aどうしを、例えば熱プレスで接合することで形成できる。このためマスクケース50は大量生産に適した構成とすることができる。
【0069】
なお、マスクケース50は、ポケット部51dの内側に抗菌機能を持たせるように構成することができる。その一例として、マスクケース50は抗菌メッシュシート13aを樹脂フィルム51aと同等の長さとして構成できる。これによれば、ポケット部51dの内側にも抗菌メッシュシート13aを配置することが可能となる。
【0070】
さらに、マスクケース50は、一方の樹脂フィルム51aにはそれと同等の長さの抗菌メッシュシート13aを配置し、他方の樹脂フィルム51aにはそのマスク本体部12に対応する部分に抗菌メッシュシート13aを配置し、前述のように双方の樹脂フィルム51aを接合したものとして構成できる。これによれば、ポケット部51dに収納した衛生マスク1の外面と内面の両面に対して抗菌メッシュシート13aが直接接触できるため、両面に対して抗菌効果を発揮することができる。
【0071】
変形例
【0072】
前記第1実施形態では、右側に抗菌シート部13を配置して衛生マスク1を取外す例を示したが、左側に抗菌シート部13を配置して衛生マスク1を取外してもよい。利き手に応じてハンドリングが容易な配置としてよい。
【0073】
前記第1実施形態では、衛生マスク1の片側の耳掛け紐3aを外してから抗菌シート部13の外周に引掛ける例を示した。しかしながら、例えば、ウレタン系素材で形成されたフィット感の高い立体型の衛生マスクでは耳掛け紐のループが小さくデザインされているものがあり、抗菌シート部13を挿入できないおそれがある。こうした場合には、耳掛け紐3aを抗菌シート部13の外周に引掛けずに、抗菌シート部13と衛生マスク1の内面との間に折り畳むようにして、衛生マスクをマスクケース10に収納してもよい。そして、この場合には、抗菌シート部13の反対側にある他方の耳掛け紐をマスクケース10の外に出すことができる。
【0074】
前記第1実施形態では、衛生マスク1の右の耳掛け紐3aを外してから抗菌シート部13を衛生マスク1の内面に回動させ、その後に他方の耳掛け紐3bを外す手順とする衛生マスク1の取外し方法(マスクケース10の使用方法)を例示したが、これに限定するものはない。例えば、マスクケース10を衛生マスク1の正面に添えて押さえ、その状態で、両方の耳掛け紐3a、3bを外してしまい、その後に抗菌シート部13を回動させて衛生マスク1の内面に折り畳むようにしてもよい。このようにしても抗菌シート部13を回動することができ、且つ抗菌シート部13を衛生マスク1の内面に折り畳むことによって、手指でマスク本体2を保持することなく、マスクケース10に衛生マスク1を収納することが可能である。なお、この場合、抗菌シート部13側にある衛生マスク1の耳掛け紐3は、抗菌シート部13の外周に掛けまわしても、あるいは抗菌シート部13と衛生マスク1の内面との間に折り畳むようにしてもよい。
【0075】
前記第1実施形態では、マスクケース10を使って顔に装着した衛生マスク1を取外す例を示したが、マスクケース10を展開した状態で机等においておき、衛生マスク1の双方の耳掛け紐3を外して展開したマスクケース10の上に置き、抗菌シート部13を回動させてから、ケース本体12を折り畳むようにしてもよい。このようにしても、衛生マスク1のマスク本体2を手指で触らずにマスクケース10に収納できる。
【0076】
前記第1実施形態では、
図8、
図9で示すうようにマスクケース10を半折りして収納状態とする例を示したが、折り数は三つ折り以上としてもよい。
【0077】
前記第1実施形態では、抗菌シート部13としてケース本体部12の長手方向における半分の長さとしたものを例示したが、ケース本体部12の長手方向の長さと実質的に同じ長さ(同一長さ、同一長さよりも僅かに短い長さを含む。)としてもよい。この場合、抗菌シート部13を回動させることで、衛生マスク1の内面の全面を一度で被覆することができる。
【0078】
前記第2実施形態では、マスクケース20に凹部21を設ける例を示したが、凹部21をスリット状に構成することもできる。これによればさらに抗菌シート部13が回動する際の抵抗を少なくすることができる。
【0079】
前記第1~第5実施形態では、衛生マスク1として、未使用状態で長方形状の不織布製のものを例示し、それに相応する長方形状のケース本体部12を例示したが、ケース本体部12は収納対象物となる衛生マスクの形状に応じて長さ、形状を変更することができる。例えば鼻部が上方に三角形状として突出し、顎部が下方に三角形状として突出する衛生マスクの場合、ケース本体部12は上下に突出する鼻部と顎部に相応する形状とすることができる。この場合、抗菌シート部13もそれに応じた形状としてよい。
【0080】
前記第1~第5実施形態のマスクケース10,20,30,40,50は、いずれも手指でマスク本体2に触れることなく衛生マスク1の着脱を可能とする構成であるが、このことはマスクケース10,20,30,40,50の使用に際して手指でマスク本体2に一切触れないことを必須とするものではない。
【0081】
なお、本発明の一態様による実施形態について詳細に説明したが、本発明の構成及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。特に、第1実施形態~第5実施形態の構成及び変形例の構成は、任意の組合せとして実施することができる。
【0082】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、マスクケース10,20,30,40,50の構成、動作も本発明の一態様による実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 衛生マスク
2 マスク本体
3 耳掛け紐(装着紐)
3a 右の耳掛け紐
3b 左の耳掛け紐
10 マスクケース(第1実施形態)
11 シート体
12 ケース本体部
13 抗菌シート部
13a 抗菌メッシュシート
13b 外縁部
14 連結部
15 留め具
20 マスクケース(第2実施形態)
21 凹部
30 マスクケース(第3実施形態)
31 内面抗菌部
40 マスクケース(第4実施形態)
41 取付部
50 マスクケース(第5実施形態)
51a シート体
51b 開口
51c 接合部
51d ポケット部