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  • 特開-リチウム空気電池及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101332
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】リチウム空気電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20220629BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220629BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20220629BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20220629BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M4/40
H01M4/64 A
H01M2/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215851
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】安川 栄起
(72)【発明者】
【氏名】木村 伸
(72)【発明者】
【氏名】山口 祥司
(72)【発明者】
【氏名】角田 宏郁
(72)【発明者】
【氏名】大谷 晴彦
【テーマコード(参考)】
5H017
5H021
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AA07
5H017DD08
5H021AA06
5H021CC04
5H021HH04
5H032AA02
5H032AS02
5H032AS12
5H032BB05
5H032CC06
5H032CC12
5H032CC17
5H032HH04
5H032HH08
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA20
5H050CA12
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA19
5H050GA13
5H050HA07
5H050HA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層102を含む正極101、リチウムを含む負極活物質層105を含む負極104、及び正極層と負極活物質層との間に非水電解質を備え、特定の液量の非水電解液を含んだ、リチウム空気電池100が提供され、さらに1以上のセパレータ109と固体電解質108とを含むリチウム空気電池が提供される。また、前記リチウム空気電池の製造方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解質層を備えるリチウム空気電池であって、
前記リチウム空気電池が非水電解液を含んでおり、
以下の式を満たす、リチウム空気電池
4.1≦E/C(mL/Ah)≦6.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm)と定義する)。
【請求項2】
前記のE/C(mL/Ah)の下限値が、5.4である、請求項1に記載のリチウム空気電池。
【請求項3】
前記正極が、正極活物質としての酸素を取り込むための酸素流路として機能する正極集電体をさらに備える、請求項1又は2に記載のリチウム空気電池。
【請求項4】
前記負極が、負極集電体をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム空気電池
【請求項5】
前記非水電解質層が、1以上のセパレータを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
【請求項6】
前記非水電解質層が、固体電解質をさらに含む、請求項4又は5に記載のリチウム空気電池。
【請求項7】
前記固体電解質が、酸化物系固体電解質を含む、請求項6に記載のリチウム空気電池。
【請求項8】
前記非水電解質層が、2以上のセパレータを含み、当該セパレータ間に前記固体電解質の層を備える、請求項6又は7に記載のリチウム空気電池。
【請求項9】
前記セパレータ上に前記固体電解質の層が形成されている、請求項5~7のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
【請求項10】
前記セパレータの外縁が、前記正極層及び前記負極活物質層の外縁の外側にあり、且つ、前記固体電解質の層の外縁が、前記セパレータの外縁と略等しいか、又は前記セパレータの外縁よりも外側にある、請求項8又は9に記載のリチウム空気電池。
【請求項11】
多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解液を透過する1以上のセパレータと非水電解液を透過しない固体電解質層とを含む非水電解質層を備えるリチウム空気電池の製造方法であって、
前記リチウム空気電池が前記非水電解液を含むようにするために、
前記負極活物質層の上に第1のセパレータを配置し、前記第1のセパレータを通して前記負極活物質層及び第1のセパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
前記第1のセパレータの上に前記固体電解質層を配置する工程と、
前記固体電解質層の上に第2のセパレータを配置し、前記第2のセパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
前記第2のセパレータの上に前記正極層を配置し、前記正極層に前記非水電解液を充填する工程と、
を含むか、あるいは、
前記リチウム空気電池が前記非水電解液を含むようにするために、
前記負極活物質層の上に、前記固体電解質層を表面の一方又は双方に形成したセパレータを配置し、当該セパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
当該セパレータの上に前記正極層を配置し、前記正極層に前記非水電解液を充填する工程と、
を含み、
以下の式を満たす、リチウム空気電池の製造方法
4.1≦E/C(mL/Ah)≦6.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm)と定義する)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質として酸素を用い、負極活物質としてリチウムを用いるリチウム空気電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極活物質として空気中の酸素を用い、負極活物質としてリチウムを用いるリチウム空気電池は、リチウムと酸素が反応することによってリチウム酸化物が生じ、この反応によって放電がなされる。このように、リチウム空気電池では、大気中の酸素を正極活物質として用いるので、リチウムイオン電池と異なり正極活物質を電池に貯蔵する必要がなく、より高いエネルギー密度を示すことが期待されている。
【0003】
リチウム空気電池の例として、例えば、特許文献1では、長期に亘って安定作動が可能なリチウム空気電池を提供することが検討されている。特許文献1には、長期の電池作動時において、外部から混入した水分がリチウム空気電池の内部に浸入することによって負極である金属リチウムが腐食され、リチウム空気電池の長時間放電という特徴を損ねる要因になり得ることが記載され、これに対して、界面活性剤を添加することにより、外部から電解液に水分が浸入した場合においても、水分を界面活性剤が直ちに取り囲み、逆ミセル(w/oマイクロエマルション)が形成され、水分の金属リチウム負極への接触を防止し、同負極の腐食を抑制することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5421076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水分による金属リチウム負極の腐食は、特許文献1において指摘された態様である外部から混入した水分による場合に限られず、本発明者らの検討によれば、正極活物質である酸素と電解液とが反応し、その副反応として生じる水分によって生じる腐食についても対応を考慮する必要があることがわかった。このように、外部からの電解液への水分の混入のみならず、正極活物質である酸素と電解液との反応の副反応に起因して生じる水分も考慮して、負極である金属リチウムの腐食を抑制し、充放電特性の悪化を抑制し、ひいては充放電サイクル特性の悪化を抑制することを課題とした場合、特許文献1に開示されている界面活性剤を添加する方法では、極めて多量の界面活性剤が必要になることが懸念されるという問題があった。
また、特許文献1には、リチウム空気電池の電解液の液量については何ら開示されていないところ、本発明者らの検討によれば、リチウム空気電池の非水電解液の液量は、正極(本願では、空気極と称することもある)活物質である酸素の電池内の拡散に対しても大きな影響を及ぼすことがわかった。リチウム空気電池の放電過程において、非水電解液中のリチウムイオンと正極活物質である酸素とが反応することにより、過酸化リチウムが空気極層内に形成される。しかし、電解液中への酸素の溶解量には限りがあるため、放電過程において空気極層のうち酸素流路近傍で過酸化リチウムの生成が生じ易くなり、充放電サイクルが進むにつれて、残存した過酸化リチウムにより必要な酸素の拡散が阻害され、充放電サイクル特性に悪影響を及ぼすことが懸念されるという問題があった。そして、とりわけ、空気極層の厚みが大きくなるとこの傾向は顕著となるという問題があった。
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであって、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、意外なことに、リチウム空気電池に含まれる正極層の単位面積当たりの非水電解液の液量と、正極層の単位面積当たりの放電量とが一定の関係にある場合に、充放電サイクル特性に顕著な効果があることを見出すに至り、また、リチウム空気電池が特定の位置に固体電解質を備えることにより、充放電サイクル特性にさらに優れたな効果があることを見出すに至り、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] 炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解質層を備えるリチウム空気電池であって、
前記リチウム空気電池が非水電解液を含んでおり、
以下の式を満たす、リチウム空気電池
4.1≦E/C(mL/Ah)≦6.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm)と定義する)。
[2] 前記のE/C(mL/Ah)の下限値が、5.4である、[1]に記載のリチウム空気電池。
[3] 前記正極が、正極活物質としての酸素を取り込むための酸素流路として機能する正極集電体をさらに備える、[1]又は[2]に記載のリチウム空気電池。
[4] 前記負極が、負極集電体をさらに備える、[1]~[3]のいずれかに記載のリチウム空気電池
[5] 前記非水電解質層が、1以上のセパレータを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のリチウム空気電池。
[6] 前記非水電解質層が、固体電解質をさらに含む、[4]又は[5]に記載のリチウム空気電池。
[7] 前記固体電解質が、酸化物系固体電解質を含む、[6]に記載のリチウム空気電池。
[8] 前記非水電解質層が、2以上のセパレータを含み、当該セパレータ間に前記固体電解質の層を備える、[6]又は[7]に記載のリチウム空気電池。
[9] 前記セパレータ上に前記固体電解質が形成されている、[5]~[7]のいずれかに記載のリチウム空気電池。
[10] 前記セパレータの外縁が、前記正極層及び前記負極活物質層の外縁の外側にあり、且つ、前記固体電解質の層の外縁が、前記セパレータの外縁と略等しいか、又は前記セパレータの外縁よりも外側にある、[8]又は[9]に記載のリチウム空気電池。
[11] 多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解液を透過する1以上のセパレータと非水電解液を透過しない固体電解質層とを含む非水電解質層を備えるリチウム空気電池の製造方法であって、
前記リチウム空気電池が前記非水電解液を含むようにするために、
前記負極活物質層の上に第1のセパレータを配置し、前記第1のセパレータを通して前記負極活物質層及び第1のセパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
前記第1のセパレータの上に前記固体電解質層を配置する工程と、
前記固体電解質層の上に第2のセパレータを配置し、前記第2のセパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
前記第2のセパレータの上に前記正極層を配置し、前記正極層に前記非水電解液を充填する工程と、
を含むか、あるいは、
前記リチウム空気電池が前記非水電解液を含むようにするために、
前記負極活物質層の上に、前記固体電解質層を表面の一方又は双方に形成したセパレータを配置し、当該セパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
当該セパレータの上に前記正極層を配置し、前記正極層に前記非水電解液を充填する工程と、
を含み、
以下の式を満たす、リチウム空気電池の製造方法
4.1≦E/C(mL/Ah)≦6.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm)と定義する)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び正極層と負極活物質層との間に非水電解質を備え、特定の液量の非水電解液を含んだリチウム空気電池であって、充放電サイクルに優れたリチウム空気電池を提供することができる。
本発明によれば、例えば、1以上のセパレータと固体電解質とをさらに含む、上記リチウム空気電池であって、充放電サイクルに優れたリチウム空気電池を提供することができる。
また、本発明によれば、例えば、上記リチウム空気電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態であるリチウム空気電池の構造を示す断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態であるリチウム空気電池の構造を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例を示すために、図1に記載されたリチウム空気電池100の構成について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
<リチウム空気電池の構成>
【0010】
図1は、本発明実地の形態におけるリチウム空気電池の構造を示す断面模式図である。
リチウム空気電池100は、正極101と負極104とが非水電解質層107を介して積層された積層構造体からなる。この積層構造体は、スプリング115を介して、ガラスプレート110及びステンレス板111によって拘束されている。
【0011】
正極(空気極)101
正極(空気極)101は、正極層102及び酸素流路兼正極集電体103から構成される。
【0012】
酸素流路兼正極集電体103
酸素流路兼正極集電体103は酸素を透過することができ、集電機能を備える必要がある。すなわち、正極集電体103は、集電機能に加えて、正極活物質としての酸素を取り込むための酸素流路としても機能する。後述する実施例では、酸素流路兼正極集電体として、燃料電池のガス拡散層に使用されることがあるカーボンペーパー(TGP-060、東レ株式会社製)を用いたが、酸素を透過することができ、かつ集電機能を備えるものであれば必ずしもカーボンペーパーには限定されず、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)の群から選ばれる金属を有するメッシュなどを用いてもよい。
【0013】
正極層(空気極層)102
正極層(空気極層)102は導電性があり、多孔質構造であることが必要である。正極層の材質としては、炭素、金属、炭化物、酸化物などが挙げられるが、炭素が好ましく、炭素物質を主体とする多孔質構造の正極層を含む正極を好適に用いることができる。多孔質構造の正極層(空気極層)は、放電反応で生成する過酸化リチウムが析出する反応場となる。
正極層102、すなわち多孔質構造の空気極層は、材料混合工程、シート成型工程、溶媒浸漬工程、乾燥工程、及び焼成工程を含む製造方法によって得ることができる。
【0014】
正極層(空気極層)102の製造方法
材料混合工程は、例えば、多孔質炭素粒子を50重量%以上80重量%以下、炭素繊維を1重量%以上15重量%以下、結着用高分子材料を5重量%以上49重量%以下となるように秤量し、それらを均一に分散するため、N-メチルピロリドンからなる溶媒を用いて合剤スラリーを調製する工程である。
ここで、多孔質炭素粒子としては、上述のとおり、ケッチェンブラック(登録商標)を含むカーボンブラック、その他テンプレート法にて形成された炭素粒子などを用いることができる。
炭素繊維としては、例えば、繊維径が0.1μm以上20μm以下、長さが1mm以上20mm以下の炭素繊維を用いることができる。
結着用高分子材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデンを用いることができる。
溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)などを用いることができる。
【0015】
シート成型工程は、前記合剤スラリーを成型する工程である。シート成型方法は特に制限されないが、例えば、公知のドクターブレードなどを用いた湿式製膜法を挙げることができる。その他にも、ロールコーター法、ダイコーター法、スピンコート法、スプレーコーティング法などを挙げることもできる。成型後の形は、目的に応じて様々な形とすることができる。例えば、均一な厚みのシート状とすることができる。
【0016】
溶媒浸漬工程は、非溶媒誘起相分離法にて、結着用高分子材料に対する溶解度が低い溶媒中に前記シート成型工程で成型した試料(シート)を浸漬し、多孔膜化する工程である。溶媒浸漬工程で用いられる溶媒としては、例えば、水、及びエチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、並びに、これらの混合溶媒などを挙げることができる。
【0017】
乾燥工程は、試料から各種溶媒を揮発させる工程である。乾燥方法としては、乾燥空気環境下に置く方法、減圧乾燥法、真空乾燥法などを挙げることができる。この乾燥工程では、乾燥速度を速めるために、溶媒の沸点を超える程度の温度で加温してもよい。
【0018】
焼成工程は、前記乾燥工程後の試料(シート)を焼成処理する工程である。焼成処理は、例えば、オーブン炉、赤外線照射、ベーク板などを用いて行うことができる。
ここで、焼成工程は、一度の熱処理とすることもできるが、不融化と焼成の2段階熱処理とすることもできる。焼成の熱処理温度は800℃以上1400℃以下が好ましく、そのときの雰囲気はアルゴン(Ar)ガス、窒素(N)ガスなどによる不活性雰囲気が好ましい。
例えば、結着用高分子としてPANを用いた場合は、約300℃で空気中にて不融化させる熱処理を行い、その後、Arガス、Nガスなどによる不活性雰囲気中にて800℃以上1400℃以下の熱処理を行うことが好ましい。
【0019】
以上の工程により、自立性を有するのに十分で実用的な機械的強度を有する正極層102(空気極層)が製造される。この正極層102(空気極層)は、自立性を有するとともに、高い空気透過性、高いイオン輸送効率及び広い反応場を兼ね備える。
【0020】
負極104
負極104は、リチウムを含む負極活物質層を含む必要があり、集電体をさらに備えてもよい。負極104として、例えば、集電体106と、その上にリチウムを含む負極活物質層105からなる構造体を挙げることができる。負極活物質層105としては、リチウムを吸放出する金属又は合金からなる材料を挙げることができ、代表的にはリチウム金属を挙げることができる。
非水電界質層107
【0021】
正極(空気極)101と負極104の間には非水電解質層107が配置される。
非水電解質層は、1以上のセパレータを含んでもよく、2以上のセパレータを含んでもよく、固体電解質(層)をさらに含んでもよい。一例として、非水電解質層107は、固体電解質(層)108及びセパレータ109から構成される。好ましい実施形態では、非水電解質層は、2以上のセパレータを含み、当該セパレータ間に固体電解質の層を備える。別の好ましい実施形態では、1以上のセパレータの上に、固体電解質の層が形成されている。さらに好ましい実施形態では、セパレータの外縁が、正極層及び負極活物質層の外縁の外側にあり、且つ、固体電解質の層の外縁が、セパレータの外縁と略等しいか、又はセパレータの外縁よりも外側にある。このように、非水電解質層が、セパレータと固体電解質(層)とを特定の位置関係において備える構成を採用することにより、正極側非水電解液と負極側非水電解液が、セパレータを通じて移動することを抑制することができる。
セパレータ109
【0022】
セパレータ109としては、リチウムイオンが通過可能であり、多孔質構造の絶縁性材料で、かつ、正極層(空気極層)102、負極活物質層105、及び電解液との反応性を有さない任意の無機材料、又は有機材料が適用される。また、セパレータ109は電解液を保液する役割も果たす。この条件を満たせば、特に制限はなく、既存の金属電池に使用されるセパレータを使用することができる。例えば、セパレータ109は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどの合成樹脂からなる多孔質膜、ガラス繊維及び不織布からなる群から選択される。
セパレータ109は、正極(空気極)101と負極104との間の短絡を防ぐため、各活物質層よりも大きなサイズにすることが好ましい。
【0023】
固体電解質(層)108
固体電解質ないし固体電解質層108は、リチウムイオンを選択的に透過することができ、それ以外の成分を確実に遮断できる緻密な構造体であり、かつ非水電解液と反応性を有さないことが必要である。この条件を満たせば、固体電解質ないし固体電解質層108には特に制限はなく、既存の酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質、ポリマー系固体電解質が適用される。電解液の非透過性、非水電解液との反応性を考慮すると、酸化物系固体電解質が好ましい。例えば、固体電解質(層)108としては、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12、Li1.5Al0.5Ge1.512(LAGP)、La0.55Li0.33TiO、LiLaZr12などが挙げられる。
【0024】
固体電解質層108は、2つのセパレータに挟まれた位置に配置されてもよいし、セパレータ上に固体電解質の粒子を塗布することによってセパレータの上に固体電解質(層)が形成されていてもよい。
正極側非水電解液と負極側非水電解液が、セパレータを通じて移動することを抑制するため、固体電解質層108は、セパレータ109と同じサイズか、セパレータ109よりも大きなサイズにすることが好ましい。
【0025】
電解液
電解液としては、リチウム金属塩を含有する非水系の任意の電解液が好ましい。前記非水系電解液(非水電解液)において、リチウム金属塩としてリチウム塩を用いる場合は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiSiF、LiAsF、LiN(SO、Li(FSON、LiCFSO(LiTfO)、Li(CFSON(LiTFSI)、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiB(Cなどのリチウム塩を挙げることができる。
前記非水電解液において、非水溶媒は、グライム類(モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム)、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,2-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ジメチル、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、トリエチルホスフィンオキシド、1,3-ジオキソラン及びスルホランからなる群から選択されるが、これらに制限されない。また、これらの溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいが、2種以上を混合して使用してもよい。
固体電解質(層)108を介して、正極側非水電解液と負極側非水電解液は、同一組成の電解液でもよく、異なる組成の電解液でもよい。
【0026】
E/C(mL/Ah)
本発明のリチウム空気電池は、以下の式を満たす特徴を有する。
4.1≦E/C(mL/Ah)≦6.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm)と定義する)。
本発明のリチウム空気電池が示すE/C(以下、液量係数、ないし液量係数E/Cと称することもある)の下限値は、好ましくは4.1であり、より好ましくは4.3であり、さらに好ましくは4.5であり、上限値は6.4であり、より好ましくは5.5である。
E/Cが上限値以下であるメリットとしては、後述する実施例に示したとおり、上限値を超えているリチウム空気電池に比べて、充放電サイクル特性が優れているということである。その理由として、本発明者らは、非水電解液の液量を精密かつ適切に制限することにより、非水電解液の機能を十分に発揮すると同時に、正極活物質である酸素が空気極層全体に容易に行きわたることによって、好ましからざる過酸化リチウムの偏析が抑制され、このことが、充放電サイクル特性が改善に寄与していると推測している。
一方で、E/Cが下限値以上であるメリットとしては、本発明のリチウム空気電池が機能する上で必須の構成要素である非水電解液について、その液量が不足することなく、機能を発揮する程度にその液量を確保することができ、優れた充放電特性及び充放電サイクル特性を発揮するということにある。
【0027】
その他の構成
図1に示すリチウム空気電池100について、その他の構成について説明する。
リチウム空気電池100は、正極層102及び負極活物質層105が正方形の形状であり、ガラスプレート110、ステンレス板111、固定ねじ112、固定用座金113、支柱114、スプリング115、スペーサ116を備えている。
下側ステンレス板111のコーナー部4か所は、円柱状の4本の支柱114とあらかじめ接合されており、また、上側のステンレス板111には支柱114に相対する位置に、支柱114が通る穴が開けられている。
【0028】
正極101、非水電解質層107、負極104及び2枚のガラスプレート110は、2枚のステンレス板111によって上下から挟み込まれる構成となっており、上側ステンレス板111の4隅の穴に支柱114が通されて挟み込まれている。上側ステンレス板111の穴を通じて突き抜けた支柱114にスペーサ116、スプリング115、固定用座金113が通されている。支柱114にはねじが切ってあり、固定用ねじ112で固定され、固定ねじ112の締め付け度合によって、ステンレス板111の間にかかる圧力を制御することができる。
【0029】
ガラスプレート110は、ステンレス板111及び支柱114を通じて、正極101と負極104とが短絡することを防ぐ絶縁体として機能している。
【0030】
<リチウム空気電池の製造方法>
本発明のリチウム空気電池は、多孔質構造の正極層を含む正極、リチウムを含む負極活物質層を含む負極、及び前記正極層と前記負極活物質層との間に非水電解液を透過する1以上のセパレータと非水電解液を透過しない固体電解質層とを含む非水電解質層を備えるリチウム空気電池の製造方法であって、以下の工程を備える。すなわち、
前記リチウム空気電池が前記非水電解液を含むようにするために、
前記負極活物質層の上に第1のセパレータを配置し、前記第1のセパレータを通して前記負極活物質層及び第1のセパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
前記第1のセパレータの上に前記固体電解質層を配置する工程と、
前記固体電解質層の上に第2のセパレータを配置し、前記第2のセパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
前記第2のセパレータの上に前記正極層を配置し、前記正極層に前記非水電解液を充填する工程と、
を含むか、あるいは、
前記リチウム空気電池が前記非水電解液を含むようにするために、
前記負極活物質層の上に、前記固体電解質層を表面の一方又は双方に形成したセパレータを配置し、当該セパレータに前記非水電解液を充填する工程と、
当該セパレータの上に前記正極層を配置し、前記正極層に前記非水電解液を充填する工程と、
を含む。
さらに、本発明の製造方法で製造されたリチウム空気電池は、以下の式を満たす:
4.1≦E/C(mL/Ah)≦6.4
(ただし、前記正極層の面積がA(cm)であり、前記リチウム空気電池に含まれる前記非水電解液の前記正極層の単位面積当たりの液量をE/A(μL/cm)とし、0.1Cにおける前記正極層の単位面積当たりの放電容量をC/A(mAh/cm)と定義する)。
本発明の製造方法で製造されたリチウム空気電池が示すE/Cの好適な上限値及び下限値については、上述のとおりである。
リチウム空気電池100の製造方法について、さらに、その一例を説明する。
【0031】
正極層(空気極層)102の製造方法に関しては、上述のとおりである。
【0032】
負極104は、例えば、次のようにして準備し、製造する。すなわち、矩形状に切り出された負極集電体106の上に、負極集電体106の短辺と同じ長さの正方形状のリチウムなどによる負極活物質層105を準備し、重なるように積層し、負極104を得る。
【0033】
次いで、負極活物質層105の上にセパレータ109を配置し、所定量の非水電解液をセパレータ109に充填させる。さらにセパレータ109の上に固体電解質層108を正方形の形状の中心が重なるように配置し、その上にセパレータ109を正方形の形状の中心が重なるように積層し、所定量の非水電解液をセパレータ109に充填させる。
【0034】
さらに、セパレータ109の上に正極層102を正方形の形状の中心が重なるように重ね、所定量の非水電解液を正極層102に充填させる。
【0035】
その後、酸素流路兼正極集電体103を、正極層102の3辺と重なるように積層する。このとき、正極と負極の短絡を抑制するため、正極層102と重ならない部分を、負極集電体106と反対方向に取り出すことが好ましい。
【0036】
次いで、正極101、負極104及び非水電解質層107からなる積層体を、ガラスプレート110及びステンレス板111により、スプリング115及びスペーサ116を用いて拘束し、工程用座金113及び固定ねじ112で固定する。このとき、正極101、負極104及び非水電解質層107に13~14N/cmの圧力が印加されるように固定ねじで調整する。
【0037】
以上の工程で、リチウム空気電池100を得る。ここで、リチウム空気電池の組立は乾燥空気下、例えば露点温度-50℃以下の乾燥空気下で行うことが好ましい。
なお、リチウム空気電池200を製造する場合は、上述の工程において、固体電解質層108を含まない以外は、リチウム空気電池100と同様に組み立てればよい。
【0038】
<リチウム空気電池の充放電特性及び充放電サイクル測定の測定方法>
後述する実施例において実際に作製したリチウム空気電池の充放電特性及び充放電サイクル特性の測定方法について説明する。
充放電サイクル特性の評価には、東洋システム製充放電評価装置(TOSCAT-3100)を用いて行った。放電過程はセルに対し、0.4mA/cmの電流密度とし、10時間のCC放電もしくはカットオフ電圧が2.0Vに達するまで行った。一方、充電過程は、放電過程と同様に0.4mA/cmの電流密度とし、10時間又は4.2VまでのCC充電を行って、充放電サイクル特性を評価した。初期サイクルの放電容量の80%を下回った場合に充放電サイクル測定を停止し、初期サイクルの放電容量の80%を下回る放電回数をサイクル数と定義した。
【実施例0039】
以下、実施例に基づき、本発明のリチウム空気電池の作成及びその特性について、更に詳しく説明する。なお、これらの記載は本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
正極の作製
最初に、多孔質炭素粒子68重量%、炭素繊維9重量%、結着用高分子材料23重量%及びそれらを均一に分散するN-メチルピロリドンからなる溶媒を用いて合剤スラリーを調製した。
ここで、多孔質炭素粒子としてはケッチェンブラック(登録商標)を用いた。炭素繊維としては繊維平均径5μm、平均長さ3mmの炭素繊維を用いた。結着用高分子材料としてはポリアクリロニトリル(PAN)を用いた。
合剤はドクターブレードを用いた湿式製膜法にて均一な厚みに成型してシート化した。成形後、非溶媒誘起相分離法にてメタノール(貧溶媒)中に浸漬して、成型試料を多孔質膜化した。
次に、シート状試料から揮発性の溶媒を取り除く50~80℃で10時間以上の乾燥工程を行い、引き続き大気中で280℃で3時間の不融化熱処理を行い、その後、真空置換後の窒素ガス雰囲気下の焼成炉中で1050℃で3時間の焼成を行い、長さ140mm、幅100mm、高さ200μmの多孔質構造の炭素試料を作製した。
この多孔質構造の炭素試料から20mm×20mmの形状に切り出すことで、正極を得た。
酸素流路兼正極集電体には、カーボンペーパー(TGP-060、東レ株式会社製)を60mmx20mmに切り出して用いた。
【0041】
負極の作製
負極集電体には、厚み12μmの銅箔を60mm×20mm形状に切り出して用い、また負極活物質層には、厚み50μmのリチウム箔を20mm×20mm形状に切り出して用い、負極活物質層である20mm角のリチウム箔の3辺が負極集電体の3辺に重なるように貼り合わせることで、負極を得た。
【0042】
非水電解液の調製
非水電解液は、3種類の電解質、すなわち0.5mol/LのLi(CFSON(LiTFSI)、0.5mol/LのLiNO及び0.2mol/LのLiBrを、テトラグライム(TEGDME)溶媒に溶解することで得た。
【0043】
固体電解質の調製
固体電解質には、株式会社オハラ製固体電解質LICGCTM AG-01(NASICON型Li1+x+yAl(Ti,Ge)2-xSi3-y12)(22mmx22m、厚さ180μm)を用いた。
【0044】
非水電解液の注液までのリチウム空気電池の組立
リチウム空気電池の組立は露点温度-50℃以下の乾燥空気下で行った。
前記負極の負極活物質層の上にポリエチレン製のセパレータを配置し、前記非水電解液をセパレータに充填させた。さらにセパレータの上に固体電解質層を正方形の形状の中心が重なるように配置し、その上にポリエチレン製のセパレータを正方形の形状の中心が重なるように積層し、非水電解液をセパレータに充填させた。
【0045】
さらに、セパレータの上に正極層を正方形の形状の中心が重なるように重ね、非水電解液を正極層に充填させた。次いで、酸素流路兼正極集電体を正極層の3辺と重なるように積層した。以下、この構造体を、注液前リチウム空気電池と称する。
【0046】
非水電解液の注液後のリチウム空気電池の組立

非水電解液を注液した後、正極、負極及び非水電解質層からなる積層体を、ガラスプレート及びステンレス板により、スプリングを介在させて拘束し、工程用座金及び固定ねじで固定した。このとき、正極、負極及び非水電解質層に13~14N/cmの圧力が印加されるように固定ねじで調整し、リチウム空気電池を得た。以下、このリチウム空気電池を、注液後リチウム空気電池と称する。
【0047】
[例1]
前記の注液前リチウム空気電池に対して、87.6μLの非水電解液を注入した。すなわち、換算すると、前記の注液前リチウム空気電池に対して、非水電解液の正極層の単位面積当たりの液量(以下、電解液量、ないし電解液量E/Aと称する)で、21.9μL/cmの非水電解液を注液した。
注液後リチウム空気電池について、0.1Cにおける放電容量を測定したところ、16mAhであり、0.1Cにおける正極層の単位面積当たりの放電容量C/Aに換算すると、4mA/cmであった。
したがって、例1のE/C(以下、液量係数、ないし液量係数E/Cと称する)は、5.48mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は18であった。
【0048】
[例2]
電解液量E/Aを25.5μL/cmに変更した以外は、例1と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、例2の液量係数E/Cは、6.38mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は17であった。
【0049】
[比較例1]
電解液量E/Aを30.0μL/cmに変更した以外は、例1と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、比較例1の液量係数E/Cは、7.50mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は1であった。
【0050】
[比較例2]
電解液量E/Aを34.5μL/cmに変更した以外は、例1と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、例2の液量係数E/Cは、8.63mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は1であった。
【0051】
[例3]
固体電解質層を積層しなかった以外は、例1と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、例3の液量係数E/Cは、5.48mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は12であった。
[例4]
固体電解質層を積層しなかった以外は、例2と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、例4の液量係数E/Cは、6.38mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は13であった。
【0052】
<比較例3>
固体電解質層を積層しなかった以外は、比較例1と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、比較例3の液量係数E/Cは、7.50mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は2であった。
【0053】
<比較例4>
固体電解質層を積層しなかった以外は、比較例2と同様の方法で、注液前リチウム空気電池を作製し、注液を行い、注液後リチウム空気電池を作製し、0.1Cにおける放電容量を測定した。
その結果、比較例4の液量係数E/Cは、8.63mL/Ahであった。
さらに、充放電サイクル測定を行ったところ、サイクル数は3であった。
【0054】
以上の実験結果を表1に示す。上述のとおり、表1における最右列のサイクル数とは、各充放電サイクルの放電過程において、初期サイクルの放電容量の80%以上を保持した充放電回数のことを指す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1によれば、固体電解質層の有無にかかわらず、液量係数E/C(mL/Ah)が大きい場合は、充放電サイクル数の低下が顕著である(比較例1~4)。
その一方で、液量係数E/C(mL/Ah)が6.4以下の場合は、固体電解質層なしの場合でも充放電サイクル特性が改善されており(例3、例4)、固体電解質層ありの場合はさらに、充放電サイクル特性が改善されていることが示されている(例1、例2)。
以上の結果より、正極層の単位面積当たりの非水電解液の液量E/A(μL/cm)と、0.1Cにおける正極層の単位面積当たりの放電容量C/A(mAh/cm)との比として定義される液量係数E/C(mL/Ah)を、6.4以下とすることによって充放電サイクル特性が改善でき、さらに、正極層と負極層との間に固体電解質を設けることによって、充放電サイクル特性がさらに改善できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、充放電サイクル特性に優れたリチウム空気電池及びその製造方法が提供される。そのため、本発明は、今後需要が大幅に拡大すると見込まれるリチウム空気電池に好んで用いられることが期待できる。
【符号の説明】
【0058】
100 リチウム空気電池
101 正極
102 正極層
103 酸素流路兼正極集電体
104 負極
105 負極活物質層
106 負極集電体
107 非水電解質層
108 固体電解質(層)
109 セパレータ
110 ガラスプレート
111 ステンレス板
112 固定ねじ
113 固定用座金
114 支柱
115 スプリング
116 スペーサ
200 リチウム空気電池
図1
図2