(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101355
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ブーツ用インナープロテクター
(51)【国際特許分類】
A41D 13/015 20060101AFI20220629BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20220629BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A41D13/015 103
A41D13/06
A41D13/05 143
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215883
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】500487413
【氏名又は名称】有限会社ポルテ
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】竹北 孝文
(72)【発明者】
【氏名】竹北 昌成
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA15
3B011AB01
3B011AB15
3B011AC04
(57)【要約】
【課題】エイの尾棘等に対応し得る耐突き刺し性能に優れたブーツ用のインナープロテクターを提供する。
【解決手段】
挿入される足の外周囲を保護する耐突き刺し性能のあるプロテクター本体と、該プロテクター本体の外周面をカバーする外装カバーおよび内周面をカバーする内装カバーよりなり、プロテクター本体は、挿入される足の外形に応じて、その外形面を多数の領域に分割すると共に、該分割された多数の領域の各領域をカバーし得る所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある多数枚のプレート材と、該多数枚のプレート材を各プレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように保持する伸縮性のある繊維部材とから構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
適用されるブーツ内側の寸法と形状に対応した寸法と形状を有し、ブーツ内にフィットした状態で挿入セットされ、同挿入セット状態において足が挿入されるブーツ用インナープレートであって、上記挿入される足の外周囲を保護する耐突き刺し性能のあるプロテクター本体と、該プロテクター本体の外周面をカバーする外装カバーおよび内周面をカバーする内装カバーとからなり、上記プロテクター本体は、上記挿入される足の外形に応じて、その外形面を複数の領域に分割すると共に、該分割された複数の領域の各領域をカバーし得る所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材と、該複数枚のプレート材を各プレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように保持する所定の繊維部材とからなることを特徴とするブーツ用インナープロテクター。
【請求項2】
複数枚のプレート材と、該複数枚のプレート材を保持する伸縮性のある繊維生地からなるプロテクター本体は、足のプロテクト面に応じて構成された複数のプロテクターユニットよりなり、それら複数のプロテクターユニットを一体に組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1記載のブーツ用インナープロテクター。
【請求項3】
足の左右両側面に対応したプロテクターユニットは、それぞれ所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を所定の位置に保持した伸縮性のある繊維生地を複数枚重ね合わせて構成されている一方、足の前部面および後部面に対応したプロテクターユニットは、所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を保持した伸縮性のある1枚の繊維生地により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のブーツ用インナープロテクター。
【請求項4】
所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材は、それぞれ所定の外形寸法、所定の外形形状の金属製の薄板を、同金属製の薄板と略同一の外形形状で、同金属製の薄板の外形寸法よりも所定寸法大きい外形寸法の強度の高い2枚の繊維生地間に配置し、その外周囲をヒートシールすることによって構成されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載のブーツ用インナープロテクター。
【請求項5】
複数枚のプレート材の対応する伸縮性のある繊維生地に対する縫い付けは、金属製の薄板外周のヒートシール部の全体を縫い付けるのではなく、それぞれの必要な可動量、隣り合うプレート材との自由な重なり合い、同重なりあう部分における相対的な移動量を考慮して、所望の位置に、所望の長さ縫い付けられていることを特徴とする請求項3又は4記載のブーツ用インナープロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ブーツ用インナープロテクターの構成に関し、より詳しくは、耐突き刺し性能に優れたブーツ用インナープロテクターの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では釣りの幅も広がり、シーバスフィッシングに代表されるように、水中に入り込んで魚を釣るウエーディングが人気となっている。ウエーディンでは、下半身が水に浸かった状態で釣りをするために、一般に腰又は胸近くまでの長さのウエーダーが着用される。
【0003】
ウエーダーには、ブーツ一体型のものとブーツ別体型のものがある。ブーツ一体型のものは、一足のブーツと、該一足のブーツの上端部分に股下部分を防水状態で接合したトラウザー(腰までのもの/胸までのもの)と、該トラウザーの上端部左右に下端部を連結した一対のショルダーベルトとからなっている(例えば特許文献1を参照)。また、ブーツ別体型のものは、上記トラウザーの股下部分の下部が足先まで連続したソックス構造(ストッキング構造)になっていて、ウエーダーを着用した上で、ソックス部の上からブーツを履く構成となっている。そして、何れの場合にも、上記ブーツには、ゴム製(PVC製)の底が滑りにくい釣り用の長靴が使用されている(釣り用の長靴の構成を示すものとして、例えば特許文献2、特許文献3を参照)。
【0004】
ところが、上記のような構成のウエーダーおよびブーツを着用して、干潟でシーバス等の釣りを行う場合、アカエイ等のエイの尾棘(びきょく)による被害に遭う可能性がある。
【0005】
すなわち、エイ(特に赤エイやマダラエイ、ナルトビエイなど)の尾には尾棘という返しの付いた相当に長い棘があり、この棘が足に刺さると毒が注入され、激痛が走る。そして、必ず病院での治療が必要とされている。この棘は、相当に丈夫で鋭く、実験の結果によると、アルミ缶をも貫通する。したがって、上記ウエーダーはもちろん、ゴム製のブーツをも容易に貫通してしまい、それらは何らエイの尾棘に対するプロテクターとしては機能しない。
【0006】
そこで、最近では、例えばウエーディング用のエイガードと称して、ブーツの外側に複数組のプレート構造のプロテクト材を取り付けるアウタータイプのプロテクターやアラミド繊維等の耐突き刺し性、耐切創性に優れた強化繊維を多数枚重合してソックス構造に形成したインナータイプのプロテクターが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-48482号公報
【特許文献2】特開2015-104603号公報
【特許文献3】特開2015-231464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記アウタータイプのプロテクターの場合、各プレート構造のプロテクト材に強度の高い合成樹脂成型板や金属製加工板を用いれば、少なくとも当該プロテクト材でカバーされている部分だけは有効に保護される。しかし、面積の大きなプレート構造のプロテクト材を複数組用意して、それらを隙間なく長靴外周面に取り付けるのは容易でなく、どうしても隙間ができる。また、取付自体が面倒で、歩行時の自由度も低下する。また、使用中にプロテクト材間にずれが生じ、確実な保護ができない。
【0009】
一方、インナータイプのプロテクターの場合、素材が繊維で柔軟性があり全体としてソックス構造に編成されているので、そのまま履けばよく、上記アウタータイプのプロテクターの欠点はある程度解決される。しかし、インナータイプのプロテクターの場合、あくまでも繊維構造体なので、プロテクト部の厚さや繊維メッシュの径には自ずと限りがあり、エイの尾棘の鋭利さ及び長さには十分に対応することができていないのが実情である。
【0010】
本願発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、ブーツ内に挿入される足の外形に応じて、その外形面を複数の領域に分割すると共に、該分割された各領域をカバーし得る耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を準備し、これら複数枚のプレート材のプレート部を隣り合うプレート材のプレート部と相互に所定の幅で重なり合うように伸縮性のある繊維部材を用いて配置することにより、装着感が良好でありながら、エイの尾棘の鋭利さ及び長さにも対応できる確実なプロテクトを可能としたブーツ用インナープロテクターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上述の問題を解決するために、次のような有効な課題解決手段を備えて構成されている。
【0012】
(1)請求項1の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、適用されるブーツ内側の寸法と形状に対応した寸法と形状を有し、ブーツ内にフィットした状態で挿入セットされ、同セット状態において足が挿入されるブーツ用インナープレートであって、上記挿入される足の外周囲を保護する耐突き刺し性能のあるプロテクター本体と、該プロテクター本体の外周面をカバーする外装カバーおよび同プロテクター本体の内周面をカバーする内装カバーとからなり、上記プロテクター本体が、上記挿入される足の外形に応じて、その外形面を複数の領域に分割すると共に、該分割された複数の領域の各領域をカバーし得る所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材と、該複数枚のプレート材をプレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように保持する伸縮性のある繊維生地とからなることを特徴としている。
【0013】
ブーツ内に挿入される足の外形に応じて、その外形面を複数の領域に分割すると共に、該分割された複数の領域の各領域をカバーし得る耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材と、これら複数枚のプレート材のプレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように保持する伸縮性のある繊維生地により耐突き刺し性能の高いプロテクター本体を構成し、このプロテクター本体の外周面に外装カバー、内周面に内装カバーを設けると、ウエーダー用など所望のブーツ内に自由に着脱可能な状態で挿入セットすることができる耐突き刺し性能の高いブーツ用のインナープロテクターを形成することができる。
【0014】
この場合、上記複数枚のプレート材には、たとえばエイの尾棘やワニ亀の歯などに対しても十分な耐突き刺し性能を有する、薄くて、曲げ変形が容易ではあるが、十分に強度が高い所望のプレート材が採用される。そして、それにより、エイの尾棘やワニ亀の歯などに対する十分な耐突き刺し性能を実現する。
【0015】
また、上記複数枚のプレート材は、それら各プレート材のプレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように配置保持されるが、同状態での配置は、伸縮性のある繊維材を介して保護すべき部位に応じて複数層又は単層に配置することにより実現される。複数枚のプレート材を保持する伸縮性のある繊維材には、たとえばポリウレタンにナイロンを巻いたものをメッシュ状に編み込んだパワーネットなどの、丈夫で十分な伸縮性のあるニット生地が採用される。したがって、それ自体として、厚さが薄く、曲げ変形が容易な、上記複数枚のプレート材は、さらに伸縮性のある繊維材によって所定の位置に保持されていることにより、それぞれ足の動きに応じた、より自由な変形が可能となり、歩行時等における足の動きの自由度が高くなる。
【0016】
(2)請求項2の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1の発明の課題解決手段の構成において、複数枚のプレート材と、該複数枚のプレート材を保持する伸縮性のある繊維生地からなるプロテクター本体は、足のプロテクト面に応じて構成された複数のプロテクターユニットよりなり、それら複数のプロテクターユニットを一体に組み合わせて構成されていることを特徴としている。
【0017】
一般的なウエーダー用ブーツは、膝から下の部分を覆うものが殆どである。したがって、インナープロテクターもそれに対応して、膝下部分から脛部および脹脛部、足首部、甲部、爪先部を覆うものとして構成される。しかし、その場合、脛部および脹脛部は殆ど曲げられないのに対し、足首部は前後に大きく曲げ伸ばしされる。また、脛部および脹脛部の側面は緩やかな曲面形状であるのに対し、足首部の側面には踝があり、部分的な凸部を形成している。このように、足の外形および動きは部位によって異なり、一様ではない。
【0018】
したがって、足の外形に応じて、その外形面を複数の領域に分割すると共に、該分割された複数の領域の各領域をカバーし得る所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材と、該複数枚のプレート材をプレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように伸縮性のある繊維生地により保持して足の外周面を保護するとしても、その構造は部位に応じた適切な構成のものとする必要がある。
【0019】
そこで、この発明の課題解決手段では、複数枚のプレート材と、該複数枚のプレート材を保持する伸縮性のある繊維生地とからなるプロテクター本体を、足のプロテクト面に応じた構成の複数のプロテクターユニットにより構成することによって、部位によって異なる足の外形や動きに適切に対応して、安定したプロテクト機能を発揮できるようにしている。
【0020】
(3)請求項3の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項2の発明の課題解決手段の構成において、足の左右両側面に対応したプロテクターユニットは、それぞれ所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を所定の位置に保持した伸縮性のある繊維生地を複数枚重ね合わせて構成されている一方、足の前部面および後部面に対応したプロテクターユニットは、所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を保持した伸縮性のある1枚の繊維生地により構成されていることを特徴としている。
【0021】
脛部および脹脛の側面である足の左右両側面は、全体として緩やかな曲面を成し、前後方向の幅も広く、上下方向の寸法も大きい。したがって、複数枚のプレート材をより適切に重ね合わせて配置することが必要になる。それには、1枚の繊維生地だけでは足りない。また、所定枚数以上のプレート材を1枚の繊維生地上に配置する場合、縫い付けスペースが不足する。そこで、足の左右両側面に対応したプロテクターユニットは、所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を所定の位置に保持した伸縮性のある繊維生地を複数枚使用し、それらを重ね合わせて構成する。
【0022】
このようにすると、全体として緩やかな曲面を成し、前後方向の幅も広く、上下方向の寸法も大きい、足の左右両側面の曲面に柔軟に沿わせることができ、かつ前後方向の幅も広く、上下方向の寸法も大きい、広いプロテクト面を確実に保護することができる。
【0023】
他方、足の前部面および後部面に対応したプロテクターユニットは、所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を保持した伸縮性のある1枚の繊維生地により構成する。足の前部面である脛部から甲部、爪先部にかけては、比較左右方向の幅が狭く、たとえば伸縮性のある1枚の繊維生地に所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を上方から下方に相互に重なる状態で保持させるだけでも適切に保護することができ、自由な曲げ伸ばしが可能となる。また、足の後部面である脹脛部後面から踵部にかけても、同様に比較的左右方向の幅が狭く、たとえば伸縮性のある1枚の繊維生地に所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を上方から下方に相互に重なる状態で保持させるだけでも適切に保護することができ、自由な曲げ伸ばしが可能となる。そして、これら左右、前後各4組のプロテクターユニットを相互に縫い付けるなどして一体化することにより、適切にブーツ内にフィットするプロテクター本体を形成する。
【0024】
この場合、足の左右両側面を保護するプロテクターユニットは、たとえば後端側では、上記足の側面を保護する伸縮性のある複数枚の繊維生地の両端が上端側から下端側まで直接一体に縫い合わされる一方、前端側では左右方向に所定の間隔を開けて伸縮性のある所定の幅の繊維生地を介して間接的に縫い合わされる。そして、後端側では、上記直接縫い合わせた伸縮性のある複数枚の繊維生地の後端部背面側の左右方向に所定の間隔を開けて所定の幅の伸縮性のある繊維生地の両端を縫い付けることによって、上記直接縫い合わせた後端部背面との間にポケット部を作り、同ポケット部に1枚の繊維生地に所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を上方から下方に相互に重なる状態で保持させた後面部側プロテクターユニットを収納する。これにより、同後面部側プロテクターユニットの複数枚のプレート材が上記左右両側面側プロテクターユニットの複数枚のプレート材の後端部に重なる状態で保持されることになる。
【0025】
また、前端側では、上記伸縮性のある複数枚の繊維生地の両端に対して左右方向に所定の間隔を開けて間接的に縫い合わせた上記伸縮性のある所定の幅の繊維生地の前面側に位置して、さらに、それよりも左右方向の幅が広い伸縮性のある繊維生地の両端を上記伸縮性のある複数枚の繊維生地の両端部を超えた所定位置に縫い付けることにより、上記所定の幅の伸縮性のある繊維生地との間にポケット部を作り、同ポケット部に1枚の繊維生地に所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を上方から下方に相互に重なる状態で保持させた前面部側プロテクターユニットを収納する。これにより、同前面部側プロテクターユニットの複数枚のプレート材が上記左右両側面側プロテクターユニットの複数枚のプレート材に重なる状態で保持されることになる。
【0026】
これらの結果、ブーツ内の足の足裏部を除く全周囲が耐突き刺し性能の高い複数枚(多数枚)のプレート材で確実に覆われることになる。
【0027】
(4)請求項4の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項1、2又は3の発明の課題解決手段の構成において、所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材は、それぞれ所定の外形寸法、所定の外形形状の金属製の薄板を、同金属製の薄板と略同一の外形形状で、同金属製の薄板の外形寸法よりも所定寸法大きい外形寸法の強度の高い2枚の繊維生地間に配置し、その外周囲をヒートシールすることによって構成されている。
【0028】
このような構成によれば、確実な耐突き刺し性能を実現する複数枚の金属製の薄板の各々が強度の高い2枚の繊維生地で包まれた相互に摺動しやすいプレート材となり、しかも金属製の薄板外周の所定の幅のヒートシール部を伸縮性のある複数枚の繊維生地に対する縫い付け部として利用し、所望に縫い付けることができる。
【0029】
また、金属製の薄板を包む強度の高い2枚の繊維生地は、重なり合う金属製の薄板相互の干渉防止材となり、金属製の薄板同士が直接干渉しないので、静粛性も高くなる。また、縫い付けられている繊維生地自体が伸縮性のある繊維生地であることと合わせて、撓み時の拘束力が殆どなく、可動性も良好となる。したがって、スムーズで静粛な曲げ変形が実現される。その結果、プロテクター本体全体としても、非常に可撓性の高い柔軟なものとなる。したがって、足挿入時の挿入感も良好となる。
【0030】
上記金属製の薄板には、たとえばSUS304ステンレス鋼板などの、薄くて、曲げ変形が容易で、しかも十分に強度が高い金属板が採用される。その結果、エイの尾棘やワニ亀の歯などに対する十分な耐突き刺し性能を実現することができる。また、ウエーディング時に長時間に亘ってブーツに作用する高い水圧にも十分な耐圧機能を発揮することができる。
【0031】
上記金属製の薄板を包む強度の高い2枚の繊維生地には、たとえば強度が高くて、生地表面の摺動性が高い、ポリエステル繊維等の繊維生地が採用される。その結果、プレート材自体の安定した強度、プレート材相互間の効果的な可動性が実現される。
【0032】
(5)請求項5の発明の課題解決手段
この発明の課題解決手段は、上記請求項3又は4の課題解決手段の構成において、複数枚のプレート材の対応する伸縮性のある繊維生地に対する縫い付けは、金属製の薄板外周のヒートシール部の全体を縫い付けるのではなく、それぞれの必要な可動量、隣り合うプレート材との自由な重なり合い、同重なりあう部分における相対的な移動量を考慮して、所望の位置に、所望の長さ縫い付けられていることを特徴としている。
【0033】
すでに述べたように、足の外形および動きは部位によって異なり、一様ではない。したがって、足の外形に応じて、その外形面を多数の領域に分割すると共に、該分割された多数の領域の各領域をカバーし得る所定の大きさ、所定の形状の耐突き刺し性能のある複数枚のプレート材を、プレート部の周縁部が相互に所定の幅で隙間なく重なり合うように、伸縮性のある繊維生地に縫い付けるとしても、複数枚のプレート材のプレート部各々の必要な可動量、隣り合うプレート材相互の自由な重なり合い、同重なりあう部分における相対的な移動量などを考慮して、所望の位置に、所望の長さ適切に縫い付けなければならない。
【0034】
この発明の課題解決手段は、そのような課題に対応し、複数枚のプレート材を対応する伸縮性のある繊維生地に対して縫い付けるに際し、金属製の薄板外周のヒートシール部の全体を縫い付けるのではなく、それぞれの必要な可動量、隣り合うプレート材相互の自由な重なり合い、同重なりあう部分における相対的な移動量を考慮して、所望の位置に、所望の長さ縫い付けるようにしたものである。
【0035】
このような構成によると、対応する足のプロテクト面の部位に応じた外形、必要な曲げ伸ばし度合、変形度合に応じたプレート材の大きさ、形状の選定に加えて、所望の縫い付け位置、所望の縫い付け量で縫い付けられるようになり、それぞれの必要な可動量、隣り合うプレート材相互の自由な重なり合い、同重なりあう部分における相対的な移動量が確保され、より自由で適切な保護が可能となる。
【発明の効果】
【0036】
以上の結果、この出願の発明によると、隙間のない確実なプロテクトを可能としながら、柔軟性に優れ、プロテクター全体として自由な変形が可能なブーツ用インナープロテクターを提供することができる。しかも、変形時の異音も発生せず、非常に静粛性が高い。また、歩行性にも優れたものとなる。
【0037】
さらに、一般のウエーダーブーツの場合、ウエーディング中においてブーツ部に作用する水圧が、そのまま足に作用し、足の血行が悪くなるなど、圧迫感が大きい。しかし、この出願の発明の場合、耐突き刺し性能の高い複数枚のプレート材が、足回り全体を確実に保護するので、そのような水圧による圧迫感からも確実に解放される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターを適用して構成したブーツ一体型ウエーダーの構成の一例を示す正面図である。
【
図2】同
図1のウエーダーにおけるブーツ部分の概略的な構成を示す側面図である。
【
図3】この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターの外観構成(プロテクター本体に外装カバーおよび内装カバーを縫い付けた最終製品形態における外観構成)を示す斜視図である。
【
図4】同ブーツ用インナープロテクターの構成を示す底面図である。
【
図5】同ブーツ用インナープロテクターの構成を示す側面図(右側面図)である。
【
図6】同ブーツ用インナープロテクターの構成を示す正面図(前面図)である。
【
図7】同ブーツ用インナープロテクターの構成を示す背面図(後面図)である。
【
図8】同ブーツ用インナープロテクターの構成を示す
図3のA-A線切断部におけるプロテクター上半分部分の拡大断面図である。
【
図9】同ブーツ用インナープロテクターの構成を示す
図3のA-A線切断部における下半分部分の拡大断面図である。
【
図10】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図3のB-B線切断部の拡大断面図である。
【
図11】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図10のQ1部分の拡大図である。
【
図12】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図10のQ2部分の拡大図である。
【
図13】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図10のQ3部分の拡大図である。
【
図14】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図10のQ4部分の拡大図である。
【
図15】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図3のC-C線切断部における拡大断面図である。
【
図16】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図15のH1部分の拡大図である。
【
図17】同ブーツ用インナープロテクターの断面構造を示す
図15のH2部分の拡大図である。
【
図18】同ブーツ用インナープロテクターにおけるプロテクター本体の構成を示す斜視図である。
【
図19】同プロテクター本体の胴回り部前部におけるプロテクターユニット収納用ポケット部の構成を示す
図18のD-D線切断部の拡大断面図である。
【
図20】同プロテクター本体の胴回り部後部におけるプロテクターユニット収納用ポケット部の構成を示す
図18のE-E線切断部の拡大断面図である。
【
図21】同プロテクター本体における側面側プロテクター部の構成を示す側面図である。
【
図22】同プロテクター本体における側面側プロテクター部の構成を示す
図21のF-F線切断部の拡大断面図である。
【
図23】同プロテクター本体における側面側プロテクター部の構成を示す
図21のG-G線切断部の拡大断面図である。
【
図24】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの構成を示す側面図である。
【
図25】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの基布部分の構成を示す側面図である。
【
図26】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの各プレート材の構成を示す側面図である。
【
図27】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの所定プレート材の構成を示す拡大側面図である。
【
図28】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの所定プレート材の構成を示す
図27のH-H線切断部での拡大断面図である。
【
図29】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの他のプレート材の構成を示す拡大側面図である。
【
図30】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの他のプレート材の構成を示す
図29のI-I線切断部での拡大断面図である。
【
図31】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの相互に重なり合うプレート材各々の相対移動を可能とする縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す第1の例の側面図である。
【
図32】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第1のプロテクターユニットの相互に重なり合うプレート材各々の相対移動を可能とする縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す第2の例の側面図である。
【
図33】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの構成を示す側面図である。
【
図34】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの基布部分の構成を示す側面図である。
【
図35】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの各プレート材の構成を示す側面図である。
【
図36】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの所定プレート材の構成を示す拡大側面図である。
【
図37】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの所定プレート材の構成を示す
図36のJ-J線切断部での拡大断面図である。
【
図38】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの他のプレート材の構成を示す拡大側面図である。
【
図39】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの他のプレート材の構成を示す
図38のK-K線切断部での拡大断面図である。
【
図40】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの相互に重なり合うプレート材各々の相対移動を可能とする縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す第1の例の側面図である。
【
図41】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第2のプロテクターユニットの相互に重なり合うプレート材各々の相対移動を可能とする縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す第2の例の側面図である。
【
図42】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第3のプロテクターユニットの構成を示す側面図である。
【
図43】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第3のプロテクターユニットの構成を示す
図42の裏面側から見た側面図である。
【
図44】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第3のプロテクターユニットの基布部分の構成を示す側面図である。
【
図45】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第3のプロテクターユニットの各プレート材の構成を示す側面図である。
【
図46】同プロテクター本体の側面側プロテクター部における第3のプロテクターユニットの相互に重なり合うプレート材各々の相対移動を可能とする縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す第1の例の側面図である。
【
図47】同プロテクター本体の前面側プロテクター部における第4のプロテクターユニットの構成を示す正面図である。
【
図48】同プロテクター本体の前面側プロテクター部における第4のプロテクターユニットの基布部分の構成を示す正面図である。
【
図49】同プロテクター本体の前面側プロテクター部における第4のプロテクターユニットの各プレート材の構成を示す側面図である。
【
図50】同プロテクター本体の前面側プロテクター部における第4のプロテクターユニットの各プレート材の
図48の基布に対する縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す説明用正面図である。
【
図51】同プロテクター本体の前面側プロテクター部における第4のプロテクターユニットの構成を示す
図47のL-L線切断部での拡大断面図である。
【
図52】同プロテクター本体の前面側プロテクター部における第4のプロテクターユニットの構成を示す
図51の要部(仮想線囲繞部)の拡大断面図である。
【
図53】同プロテクター本体の後面側プロテクター部における第5のプロテクターユニットの構成を示す背面図(後面図)である。
【
図54】同プロテクター本体の後面側プロテクター部における第5のプロテクターユニットの基布部分の構成を示す背面図である。
【
図55】同プロテクター本体の後面側プロテクター部における第5のプロテクターユニットの各プレート材の構成を示す背面図である。
【
図56】同プロテクター本体の後面側プロテクター部における第5のプロテクターユニットの各プレート材の
図52の基布に対する縫い付け状態(縫い付け位置及び縫い付け量)を示す説明用背面図である。
【
図57】同プロテクター本体の後面側プロテクター部における第5のプロテクターユニットの構成を示す
図52のM-M線切断部での断面図である。
【
図58】同プロテクター本体の後面側プロテクター部における第5のプロテクターユニットの構成を示す
図57の要部(仮想線囲繞部)の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、添付の図面を参照して、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターの全体および要部の構成、並びに作用効果について、詳細に説明する。
【0040】
<この出願の発明のブーツ用インナープレートが適用されるブーツの一例>
この出願の発明の実施の形態では、この出願の発明のブーツ用インナープレートが適用されるブーツとして、例えば釣り用のゴム製の長靴が選ばれており、さらに詳しくは、同釣り用のゴム製の長靴として、例えば
図1および
図2に示す、釣り用のウエーダー1に一体化されたゴム製の長靴11L,11Rが選ばれている。そして、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用のインナープレート2は、例えば
図2に示されるように、それらウエーダー1に一体化されたゴム製の長靴11L,11Rの内側に挿入して使用されるようになっている。
【0041】
先ず、
図1および
図2を参照して、上記釣り用のウエーダー1および同ウエーダー1に一体化されているゴム製の長靴11L、11Rの構成について説明する。
【0042】
図1に示すウエーダー1は、背カバーを備えたトラウザー構成のウエーダーとなっており、ウエーダー本体部分が基本的にトラウザー12によって構成されている。トラウザー12は、上方側から下方側に背カバー部12B、ウエスト部12W、股下部12L,12Rからなり、ウエスト部12Wの上端にはウエストベルト12WBが設けられている。また、背カバー部12Bの上端とウエストベルト12WBを通す前部側ベルトループ12BLとの間にはショルダーベルト13L,13Rが設けられている。
【0043】
そして、同トラウザー12の左右一対の股下部12L,12Rの裾部分に対して、左右一対のゴム製長靴11L,11Rの胴部11a,11aの上端が一体に接合されている。符号14が、その接合部を示す。
【0044】
これら左右一対一足のゴム製長靴11L,11R(
図2では右足用のもので代表している)は、筒状の胴部11aと、山形の甲部11bと、フラットな底部11cとの3つの部分からなっている。胴部11aおよび甲部11bは、例えば材質の異なる複数枚の素材を貼り合わせて高強度に構成されている。また、底部11cも厚さ、材質の異なる複数の素材を重合して構成されており、この実施の形態では、最下層部(最外層部)のアウターソール15は、柔軟性がありながらも強度が高く、かつ厚さも厚いものとなっている。これにより、靴底部分についても、エイの尾棘に対する有効なプロテクト機能を実現している。
【0045】
そして、このような構成の一足の長靴11L,11Rの内側に、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクター2L,2Rが、例えば
図1、
図2中に破線で示すように挿入される。このブーツ用インナープロテクター2L,2Rも、長靴11L,11Rの構成に応じ、それぞれ胴部2a、甲部2b、底部2cを有して構成されている。
【0046】
<この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープレートの構成および作用>
次に、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクター2L,2Rの構成および作用について、詳細に説明する。
上記ゴム製の長靴11L,11Rは、左右一対のもので一足であり、インナープロテクターも、上記のように、本来それぞれの長靴11L,11Rに対応した左右一対のインナープロテクター2L,2Rとして構成されている。
【0047】
したがって、本来左右一対のインナープロテクター2L,2Rそれぞれの構成について説明するべきであるが、この実施の形態の場合、それら左右一対のインナープロテクター2L,2Rの構成は、基本的には左右同一のものである。したがって、以下の説明では、左右の区別をすることなく(2L,2Rの符号を使用することなく)、共通のインナープロテクター2として、その一方分の構成の概略について、
図3~
図58を参照して詳細に説明する。
【0048】
【0049】
すなわち、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクター2は、例えば
図3~
図20に示すように、
図21~
図46、
図47~
図52、
図53~
図58のような複数組、複数種のプロテクターパーツを一体に縫い付けることによって一体に構成した
図18~
図20に示すプロテクター本体20の外周面側および内周面側に、それぞれ強度および剛性が高い外装カバー31および内装カバー32を縫い付けることによって全体をカバーし、それによって所定レベル以上の剛性を実現し、インナーブーツとしての形状安定性を高くした構成のものとなっている。外装カバー31および内装カバー32には、後述する前面カバー31bおよび32b部分を除いて、ポリエステル等の強度の高い繊維生地が採用されており、それぞれ所定値以上の厚さに設定することによって、必要な剛性及び形状安定性を実現している。これら外装カバー31および内装カバー32には、一例として、それぞれ長靴の黒色に合わせた黒色の生地が用いられている。また、外装カバー31には、内装カバー32よりも相対的に厚手の丈夫な生地が選ばれている。
【0050】
<外装カバー31および内装カバー32の構成:
図3~
図17参照>
外装カバー31は、大別して、
図18~
図20に示すプロテクター本体20の左右各側面側をカバーする側面カバー31a,31aと、プロテクター本体20の前面側をカバーする前面カバー31bと、プロテクター本体20の底面側をカバーする底面カバー31cと、プロテクター本体20の爪先面側をカバーする爪先面カバー31dと、上記前面カバー31bの上端側左右方向の強度を補強し、かつデザイン的なアクセントを形成する前面部上端側カバー(補強帯)31eと、上記側面カバー31a,31a、前面カバー31b、前面部上端側カバー31eにより形成される胴回り部上端の開口部周縁を後述する内装カバー32各部の上端と重ね合わせて一体にテーピングする縁取りカバー31fとからなっている。
【0051】
この実施の形態の場合、上記胴回り部上端の開口部から甲部先端の爪先部分まで伸びる前面カバー31b部分は、足首部前面側の屈伸性を良好にするために、たとえばポリウレタンにナイロンを巻いたものをメッシュ状に編み込んだパワーネットなどの丈夫で十分な伸縮性のあるニット生地が採用されており、しかも、同生地は、それぞれ左右両側外端を上記各側面カバー31a,31aの前端側に縫い付けた左右2枚の生地よりなっていて、それら左右2枚の生地を前面部中央で縫い合わせた構成となっている(
図6参照)。
【0052】
したがって、そのままでは上記胴回り部の左右両方向への締結強度が弱く、開口部が広がりやすい。そこで、同前面カバー31b部分の上端側所定幅部分に上記のように前面部上端側カバー(補強帯)31eを設け、同前面部上端側カバー31eを上記各側面カバー31a,31aの前端側に縫い付けることによって、開口部の強度、締結力を高くしている。これによって、胴回り部および甲部の自由な変形を可能としながら、胴回り部周方向の十分な強度、締結力を実現している。そのため、この前面部上端側カバー31eには、各側面カバー31a,31aと同様に強度の高いポリエステル生地が採用されている。
【0053】
一方、上記各側面カバー31a,31aの後端側は、上記胴回り部上端の開口部から踵部下端にかけて、胴回り部後面の中央部で相互に縫い合わされて一体に連結されている(
図7参照)。
【0054】
また、底面カバー31cは、その外周部を上記側面カバー31a,31aの足周り下端および爪先面カバー31d下端に対して、後述する内装カバー32の底面カバー32cの外周部と一緒に一体に縫い付けられている(
図3~
図9、
図15~
図17参照)。
【0055】
他方、内装カバー32は、後述するプロテクター本体20(
図18参照)の側部側プロテクター部21,21部分を覆って上記外装カバー31の左右各側面カバー31a,31aに対応する左右各側面カバー32a,32aと、同プロテクター本体20の前部側プロテクター部22を覆って上記外装カバー31の前面カバー31bに対応する前面カバー32bと、上記外装カバー31の底面カバー31cに対応し、その外周部を上記外装カバー31の底面カバー31cと一緒に上記外装カバー側面カバー31a,31aの足周り下端および爪先面カバー31d下端に対して一体に縫い付けられた底面カバー32cと、外装カバー31の爪先面カバー31dに対応する爪先面カバー32dと、上記前面カバー32bの上端側左右方向の強度を補強する前面部上端側カバー(補強帯)32eとからなっている。
【0056】
この実施の形態の場合、内装カバー32側でも、上記胴回り部上端の開口部から甲部先端の爪先部分まで伸びる前面カバー32b部分は、外装カバー31の場合と同様に、足首部前面側の屈伸性を良好にするために、たとえばポリウレタンにナイロンを巻いたものをメッシュ状に編み込んだパワーネットなどの丈夫で十分な伸縮性のあるニット生地が採用されており、しかも、同生地は、それぞれ左右両側外端を上記各側面カバー32a,32aの前端側に縫い付けた左右2枚の生地よりなっていて、それら左右2枚の生地を前面部中央で縫い合わせた構成となっている。したがって、そのままでは内面側においても上記胴回り部の左右両方向への締結強度が弱く、開口部が広がりやすい。そこで、同前面カバー32b部分の上端側所定幅部分に上記のように前面部上端側カバー(補強帯)32eを設け、同前面部上端側カバー32eを上記各側面カバー32a,32aの前端側に縫い付けることによって、開口部の強度、締結力を高くしている。これによって、胴回り部および甲部の自由な変形を可能としながら、胴回り部の十分な強度、締結力を実現している。そのため、この前面部上端側カバー32eには、各側面カバー32a,32aと同様に強度の高いポリエステル生地が採用されている。
【0057】
<プロテクター本体20の構成:
図18~
図58参照>
プロテクター本体20は、たとえば
図18~
図20に示すように、左右両側に位置してプロテクター本体20の胴回り部の一部を構成する側部側プロテクター部21,21と、前部に位置してプロテクター本体20の胴回り部の一部を構成する前部側プロテクター部22と、後部に位置してプロテクター本体20の胴回り部の一部を構成する後部側プロテクター部23とからなっている。
【0058】
側部側プロテクター部21,21は、それぞれ共通な第1~第3の3枚のプロテクターユニット21A~21Cからなっている。また、前部側プロテクター部22は、前カバーユニット22Aと、第4のプロテクターユニット22Bと、後カバーユニット22Cとからなっている。後部側プロテクター部23は、第5のプロテクターユニット23Aと後カバーユニット23Bとからなっている。
【0059】
<側部側プロテクター部21,21の構成:
図21~
図46参照>
側部側プロテクター部21,21は、たとえば
図21~
図23から明らかなように、各々第1~第3のプロテクターユニット21A~21Cを重ね合わせて構成されている。第1~第3のプロテクターユニット21A~21Cは、それぞれ
図24~
図32、
図33~
図41、
図42~
図46に示すように、上述した
図2のブーツ11R(11L)内側の側面形状に合わせて裁断された第1~第3の基布24a~24cと、該第1~第3の基布24a~24cに対して、それぞれ所定の位置に縫い付けられた所定の大きさ、所定の形状のプレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21とから構成されている。
【0060】
第1~第3の基布24a~24cは、たとえば、強靭で、それぞれ縦、横、斜めの各方向に伸縮性のある所定メッシュ径の上述したパワーネット生地等のニット生地を採用して構成されている。これら第1~第3の各基布24a~24cに対応する各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21は、たとえば
図27および
図28(P1)、
図29および
図30(P2)、
図36および
図37(P9)、
図38および
図39(P10)で代表して示すように、それぞれ所定の大きさ、所定の形状の金属製(SUS304等)の薄板25を同金属製の薄板25と同一の形状で、所定寸法大きい上下2枚のポリエステル生地26,26で挟み、その外周縁部26a,26a相互をヒートシール材を介して一体にヒートシールすることによって完全に包み込んだ袋状体に構成されている。そして、そのヒートシールにより相互に接合一体化された外周縁部26a,26a部分が縫い付け部に形成されている。各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21の外周縁部26a,26aの幅は、基本的に周方向に等しく形成されているが、一部、第1の基布24aに縫い付けられる最上端位置のプレート材P1と第2の基布24bに縫い付けられる最上端位置のプレート材P9のみは、上部側の外周縁部26a,26aの幅が所定寸法大きく形成され、それぞれ第1の基布24aの上端および第2の基布24bの上端に一致する形で縫い付けられている。
【0061】
上記各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21の上記各基布24a~24cに対する縫い付け位置は、当該各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21が縫い付けられた
図24、
図33、
図42の状態の各基布24a~24c3枚を相互に重ね合わせた
図21の重合状態(3層状態)において、各基布24a~24c(24c~24a)を通した平面が、同
図21に示すように、各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21中の各金属性の薄板25,25・・、25,25・・、25,25・・によって、隙間なくカバーされる縫い付け位置に設定されている。各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21中の金属性の薄板25,25・・、25,25・・、25,25・・の大きさおよび形状も、足の部位に応じた変形のしやすさを考慮しながら、同縫い付け位置において、そのような確実なカバー状態を実現することができる大きさおよび形状のものとなっている。
【0062】
この場合、上記各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21の各基布24a~24cに対する縫い付けは、基本的に表面側でも裏面側でも良いが、この実施の形態では、たとえば足面側の第1の基布24aおよび中間部の第2の基布24bの場合には表面側(外側)に縫い付け、ブーツ側の第3の基布24cの場合には、たとえば
図43に示すように、先ず同第3の基布24cの裏面側(足面側)に縫い付け、その後、第1、第2の基布24a、24bと同じ
図42の状態(同じ向き)で重合されるようになっている。このようにすると、足側、ブーツ側の表面が共に基布面だけとなり、プレート材による凹凸もなくなるので、最終的に3枚を重合して上述した各外装カバー31、内装カバー32を縫い付けるのが容易になる。また、外装カバー31、内挿カバー32を縫い付けた後の各カバー面もフラットになる。
【0063】
この実施の形態の場合、上記各プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21の各基布24a~24cに対する縫い付けは、それぞれ上記外周縁部26a,26aの全周を縫い付けるのではなく、同じ基布上において相互に所定寸法以上重なり合うプレート材があり、それらが相互に重なり合った状態で逆方向に相対摺動する部分では、共に対向する部分の縫い目Sを必要な寸法だけなくして所定幅の開放面を形成し、相互に自由な嵌り合い、相対摺動が可能となるようにしている。そして、それによりパワーネット等の伸縮性のあるニット生地よりなる各基布24a~24cの伸縮性、金属製の薄板25,25・・の可撓性と合わせて、各基布24a~24c面上におけるプレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21のより自由な変形、自由な相対摺動動作を実現している。これにより、ハードな金属製の薄板25,25・・を多数枚重ね合わせながらも、全体が繊維材に近い柔軟性を実現している。
【0064】
すなわち、この実施の形態の場合、たとえば
図24に示す第1のプロテクターユニット21Aにおけるプレート材の配置では、プレート材P1の右下端とプレート材P2の左上端、プレート材P4の下端とプレート材P6の上端とがそれぞれ所定寸法以上に重なり合う関係にある。
【0065】
そこで、たとえばプレート材P1とプレート材P2については、
図31に示すように、プレート材P1の右下端Bとプレート材P2の左上端A部分が相互に嵌り合う所定幅部分には縫い目Sを設けず、自由な嵌り合いが可能となるようにしている。一方、その他のプレート材相互の重なり合い、嵌り合いが無い部分については、それぞれ縫い目Sを設けて確実に基布24aに固定している。
【0066】
また、プレート材P4とプレート材P6についても同様であり、プレート材P4の下端Bとプレート材P6の上端Aとが自由に嵌り合えるような縫い目Sのない状態としている。一方、その他のプレート材相互の重なり合い、嵌り合いが無い部分については、それぞれ縫い目Sを設けて確実に基布24aに固定している。
【0067】
さらに、たとえば
図33に示す第2のプロテクターユニット21Bにおけるプレート材の配置では、プレート材P9の左下端とプレート材P10の右上端、プレート材P10の右下端とプレート材P11の左上端、プレート材P11の左下端とプレート材P12の右上端がそれぞれ所定寸法以上に重なり合い、嵌り合う関係にある。
【0068】
そこで、この場合にも、それら各プレート材P9、P10、P11、P12相互の重なり合い、嵌り合う部分B,Aについて、それぞれ
図40に示すように、十分な幅の縫い目Sのない部分を設けて、自由な嵌り合いが可能となるようにしている。一方、その他のプレート材相互の重なり合い、嵌り合いが無い部分については、それぞれ縫い目Sを設けて確実に基布24bに固定している。
【0069】
また、同第2のプロテクターユニット21Bでは、プレート材P13の上端とプレート材P14の左下端、プレート材P14の右下部とプレート材P15の左上部、プレート材P15の右上端とプレート材P16の左下端がそれぞれ所定寸法以上に重なり合い、嵌り合う関係にある。
【0070】
そこで、この場合にも、それら各プレートP13、P14、P15、P16相互の重なり合い、嵌り合う部分B,Aについて、それぞれ
図41に示すように、所定の幅の縫い目Sのない部分を設けて、自由な嵌り合いが可能となるようにしている。一方、その他のプレート材相互の重なり合い、嵌り合いが無い部分については、それぞれ縫い目Sを設けて確実に基布24bに固定している。
【0071】
このようにして、プレート材P1~P8、P9~P16、P17~P21を縫い付けた左右一対の第1~第3の基布24a~24cは、上述した図 20のように相互に重合され、その後端側が、
図18および
図20に示すように直接一体に縫い付けられて相互に連結される。他方、その前端側は、
図18および
図19に示すように上記前部側プロテクター22の後カバーユニット22Cの両端側に縫い付けられて相互に連結される(詳細については、後述する)。
【0072】
<前部側プロテクター部22の構成:
図18、
図19および
図47~
図52参照>
次に、前部側プロテクター部22は、たとえば
図18および
図19に示す前カバーユニット22Aと、
図47~
図52に示す第4のプロテクターユニット22Bと、
図18および
図19に示す後カバーユニット22Cとからなっている。
図47~
図52に示す第4のプロテクターユニット22Bは、
図18および
図19に示す前カバーユニット22Aと後カバーユニット22Cとで形成されるプロテクターユニット収納用ポケット41(
図19参照)内に収納して保持されている(
図19参照)。
【0073】
前カバーユニット22A(
図18および
図19参照)は、上記第1~第3の基布24a~24cと同じく伸縮性のあるパワーユニット等のニット生地からなっている。また、後カバーユニット22Cも、上記第1~第3の基布24a~24cと同じく伸縮性のあるパワーユニット等のニット生地からなっている。前カバーユニット22Aは、その左右両側を上記側部側プロテクター部21,21の重合状態にある第1~第3の基布24a~24c、24a~24cの内のブーツ側第3の基布24c,24cの所定幅cだけ内側位置に縫い付けられている(
図19参照)。他方、後カバーユニット22Cは、その左右両側を上述した第1~第3の基布24a~24c前端側相互の縫い合わせ位置に一緒に縫い付けられている(
図19参照)。そして、それにより前カバーユニット22Aと後カバーユニット22Cとの間には、上記第4のプロテクターユニット22Bを収納するためのプロテクターユニット収納用ポケット41が形成されている。そして、このプロテクターユニット収納用ポケット41内に足の前面側をカバーする第4のプロテクターユニット22B(
図47~
図49参照)が収納される。
【0074】
第4のプロテクターユニット22Bは、たとえば
図47~
図49に示すように、上述した
図2のブーツ11R(11L)内側の前面から爪先側までの形状に合わせて裁断された、上端側では左右の寸法が大きく、下端側に行くに従って、左右の寸法が小さくなる形状の第4の基布28(
図48参照)と、該第4の基布28の上面に、たとえば
図47に示すように、相互に所定の重なり幅を持った状態で上端側から下端側に並設する状態で縫い付けられた第1~第14のプレート材P22~P35とから構成されている。第4の基布28も、上記第1~第3の基布24a~24cと同じく伸縮性の高いパワーユニット等のニット生地により構成されている。
【0075】
第1~第14のプレート材P22~P35(
図49参照)も、基本的には、上述の第1の基布24aに縫い付けられた第1~第8のプレート材P1~P8、第2の基布24bに縫い付けられた第1~第8のプレート材P9~P16、第3の基布24cに縫い付けられた第1~第5のプレート材P17~P21と同様に、所定の大きさ、所定の形状の金属性の薄板25を同金属製の薄板25と同一の形状で、所定寸法大きい上下2枚のポリエステル生地26,26で挟み、その周縁26a,26a相互をヒートシール材を介して一体にヒートシールすることによって完全に包み込んだ袋状の構成のものとなっている。ただし、この第4のプロテクターユニット22Bの場合は、ブーツ前面部分の前後面への曲げ変形作用が容易になるように、それぞれの形状が横方向に長く、上下方向の幅が小さく形成されている。特に、最下端(甲部先端)の爪先部分に対応する第14のプレート材P35は、上端側がフラットであるが下端側は、爪先部の形状に合わせて円弧形状となっている(
図49参照)。また、最上端の第1のプレート材P22のポリエステル生地周縁部26aの寸法は特に大きく形成され、第4の基布26の上端と一緒に上述した縁取りカバー31fで縫い合わされるようになっている。
【0076】
また、この場合、上記第1~第14のプレート材P22~P35(
図49)の第4の基布26に対する縫い付け(
図47)は、たとえば
図50に示すような関係でなされている。すなわち、上端側第1、第2のプレート材P22、P23の縫い付け量は、
図50中の右側に示すように、ほぼ上部側2/3部分を縫い付けて、安定した固定状態を維持するようにしているが、第3のプレート材P24になると、上部1/3程度の縫い付け量となり、さらに、足首前部に対応する第4~第13のプレート材P25~P34になると、上部1/4程度の略水平な縫い付け量となり、非常に曲げ変形しやすい縫い付け構造となっている。これにより、特に足首前部の曲げ伸ばしが自由になる。なお、
図50中の符号S、S・・は、それぞれの縫い目(シーム)を示している。一方、余り変形しない最下端爪先側の第14のプレート材P35は、ほぼ全周が上下に分けて基布26に縫い付けられ、その全体が確実に固定されている。そして、さらに、その先端側が、たとえば上記後カバーユニット22Cの下端に縫い付けられて係止されている。
【0077】
そして、以上の構成の場合、上記
図47の第4のプロテクターユニット22Bは、上述した
図19のプロテクターユニット収納用ポケット41の左右両端間の寸法bに対応した左右幅寸法に形成されており(前部上端から爪先部まで)、プロテクターユニット収納用ポケット41内に収納された状態では、上述した側部側プロテクター部21、21の前端部間の隙間(第1~第3のプロテクターユニット21A~21C、21A~21C間の隙間)aを前部上端から爪先部まで確実にカバー(プロテクト)するようになる。
【0078】
すなわち、
図19から明らかなように、後カバーユニット22Cとの間でプロテクターユニット収納用ポケット41を形成する前カバーユニット22Aの横幅bは、後カバーユニット22Cの横幅aよりも大きく、左右で第1~第3のプロテクターユニット21A~21Cと所定幅c、cだけ有効に重なるように構成されている。したがって、後カバーユニット22C部分を含めて前面部を十分に保護することができ、しかも、第4のプロテクターユニット22Bは、上記プロテクターユニット収納用ポケット41内において、上下両端側が係止されているだけであるから、その動きは自由であり、前後方向へのスムーズな曲げ変形が可能となる。
【0079】
このように、前部側プロテクター部22部分では、足の左右両側を保護する側部側プロテクター部21,21の第1~第3のプロテクターユニット21A~21Cが所定の幅の伸縮性のあるパワーユニット等のニット生地よりなる後カバーユニット22Cを介して間接的に連結されており、また、その前側にも同様のニット生地よりなる前カバーユニット22Aが設けられ、その左右両端が上記第3のプロテクターユニット21Cの前部両端に縫い付けられている。そして、これら後カバーユニット22Cと前カバーユニット22Aとの間に第4のプロテクターユニット22Bを自由に変形可能な状態で収納し得るプロテクターユニット収納用ポケット41が形成され、第4のプロテクターユニット22Bが同自由に変形可能な状態で収納されている。
【0080】
したがって、同部分では、左右方向の広がり、収縮が自由であり、胴回り部全体の内径の調整を行うことができ、所定のバインディング力を得ることもできる。そのため、ユーザーの足の大きさ、形状に応じた微調整が可能となり、使用時の装着感(履き心地)が向上する。
【0081】
前カバーユニット22Aの幅は、後カバーユニット22Cの幅よりも所定寸法以上大きく、第1~第3のプロテクターユニット21A~21C、21A~21C間を収納された第4のプロテクターユニット22Bで十分にカバーできるようになっている。
【0082】
<後部側プロテクター部23の構成:
図53~
図58参照>
次に、後部側プロテクター部23は、上述のように、第5のプロテクターユニット23Aと、後カバーユニット23Bとからなっている。ここでは、後カバーユニット23Bの構成から先に説明する。
【0083】
すなわち、後カバーユニット23Bは、上記第1~第3の基布24a~24cと同じく伸縮性のあるパワーユニット等のニット生地からなっている。そして、同後カバーユニット23Bは、たとえば
図20に示すように、上記直接縫い合わされて相互に連結一体化されている側部側プロテクター部21,21の第1~第3の基布24a~24c,24a~24c後端側の連結部をカバーするに十分な横幅と上下長さを有し、その左右両端側を上記後端側で直接縫い合わされて相互に連結一体化されている側部側プロテクター部21,21の第1~第3の基布24a~24c,24a~24cの内のブーツ側第3の基布24c,24cの所定幅内側位置に縫い付けられている。そして、それにより同相互に連結された第1~第3の基布24a~24c,24a~24cの後端部分との間に、上記第5のプロテクターユニット23Aを収納するためのプロテクターユニット収納用ポケット42を形成している。そして、このプロテクターユニット収納用ポケット42内に足の後面側をカバーする第5のプロテクターユニット23A(
図53参照)が収納されている。
【0084】
第5のプロテクターユニット23Aは、たとえば
図54に示すように、上述した
図2のブーツ11R(11L)内側の後面側の形状に合わせて裁断された、上端側から下端側までの幅寸法が等しい短冊形状の第5の基布29と、該第5の基布29の上面に、たとえば
図53に示すように、相互に所定の重なり幅を持った状態で上端側から下端側に並列する状態で縫い付けられた第1~第11のプレート材P36~P46とから構成されている。第5の基布29も、上記第1~第3の基布24a~24cと同じく伸縮性の高いパワーネット等のニット生地により構成されている。
【0085】
第1~第11のプレート材P36~P46も、基本的には、上述の第1の基布24aに縫い付けられたプレート材P1~P8、第2の基布24bに縫い付けられたプレート材P9~P16、第3の基布24cに縫い付けられたプレート材P17~P21と同様に、所定の大きさ、所定の形状の金属性の薄板25を同金属製の薄板25と同一の形状で、所定寸法大きい上下2枚のポリエステル生地26,26で挟み、その周縁26a,26a相互をヒートシール材を介して一体にヒートシールすることによって完全に包み込んだ袋状の構成のものとなっている。
【0086】
ただし、この第5のプロテクターユニット23Aの場合は、第1~第3のプレート材P36~P38は若干上下に長い方形板であるが、第4~第11のプレート材P39~P46は、ブーツ後面部分の前後面への曲げ変形作用が容易になるように、それぞれの形状が横方向に長く、上下方向の幅が小さく形成されている。特に、最上端側の第1のプレート材P36の上縁部26aは、所定寸法大きく形成され、第5の基布29の上端と一緒に上述した縁取りカバー31fで縫い合わされるようになっている。
【0087】
また、この場合、第1~第11のプレート材P36~P46の第5の基布29に対する縫い付けは、第1~第3のプレート材P36~P38の縫い付け量は、
図56に示すように、ほぼ上部側1/2部分を縫い付けて、安定した固定状態を維持するようにしているが、第4~第11のプレート材P39~P45では、上部1/3程度の縫い付け量としており、それによって非常に曲げ変形しやすい構成としている。他方、最下端の第11のプレート材P46は、そのほぼ全周を上下に分けて基布29に縫い付け、確実に固定している。そして、その先端は、基布29と共に上記後カバーユニット23Bの下端に縫い付けて係止されている。
【0088】
そして、以上の構成の場合、上記
図53の第5のプロテクターユニット23Aは、上述した
図20のプロテクターユニット収納用ポケット42の左右両端間の寸法dに対応した左右幅寸法に形成されており(前部上端から踵部下端まで)、プロテクターユニット収納用ポケット42内に収納された状態では、上述した側部側プロテクター部21、21の相互に連結された後端部のプレート材が無い所定幅部分(第1~第3のプロテクターユニット21A~21C、21A~21Cの各プレート材P1、P10、P17、P3、P12、P19が相互に重ならない部分:
図21参照)eを上端から踵部下端まで確実にカバー(プロテクト)する。
【0089】
すなわち、
図20から明らかなように、相互に連結された第1~第3のプロテクターユニット21A~21C,21A~21C後端部との間でプロテクターユニット収納用ポケット42を形成する後カバーユニット23Bの横幅dは、相互に連結された第1~第3のプロテクターユニット21A~21C,21A~21C後端部のプレート材が無い所定幅部分eよりも十分に大きく、左右で上記第1~第3のプロテクターユニット21A~21C,21A~21Cのプレート材部分と十分に重なるように構成されている。したがって、足の後面部分を有効に保護することができる。しかも、第5のプロテクターユニット23Aは、上記プロテクターユニット収納用ポケット42内において、上下両端側が係止されているだけであるから、その動きは自由であり、前後方向へのスムーズな曲げ変形が可能となる。
【0090】
<この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターの特徴>
以上の構成によれば、上記側部側プロテクター部21,21、前部側プロテクター部22、後部側プロテクター部23の各々が、それぞれ相互に一体に縫い付けられることにより、ブーツ内の胴回り部から側部、甲部、爪先部、踵部の全体に亘って、隙間なく、耐突き刺し性能の高い金属製の薄板25,25・・を強度の高いポリエステル等の生地内に収納した摺動性の高い多数枚のプレート材P1~P21,P1~P21、P22~P35、P36~P46が分布し、かつ、それら各プレート材が伸縮性のあるニット製の繊維生地により保持されて自由に変形し得る強度の高いプロテクター本体20が形成される。
【0091】
そして、同プロテクター本体20の外周面および内周面には、さらに底部を含めて、同プロテクター本体20の外周面および内周面をカバーし、安定したデザイン、形態に維持する所定の生地剛性がある外装カバー31および内装カバー32が高強度に縫い付けられる。
【0092】
この結果、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターによると、ブーツ内の足の隙間のない確実なプロテクトを可能としながら、全体としてしなやかな柔軟性があり、プロテクター全体として自由な変形が可能な、装着感の良好なブーツ用インナープロテクターを提供することができる。特に、パワーユニットなどの伸縮性のあるニット生地が使用されており、バインディング力が高いので、フィット感が高く、歩行性にも優れたものとなる。また、同時に、ユーザーの足の大きさ、形状に応じた、微調整も可能となる。。
【0093】
さらに、一般のウエーダーブーツの場合、ウエーディング中においてブーツ部に作用する水圧が、そのまま足に作用し、足の血行が悪くなるなど、圧迫感が大きい。しかし、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターの場合、耐突き刺し性能の高い複数枚のプレート材が、足回り全体を確実に保護するので、そのような水圧による圧迫感からも確実に解放される。
【0094】
また、耐突き刺し性能を実現するプレート材には、ステンレス(SUS304など)等の金属製の薄板を使用しているので、各種エイの尾棘やワニ亀等の歯にも十分に対応することができ、ウエーディング等のブーツに限らず、湖沼調査、その他の広い用途に利用することができる。
【0095】
<各種の変形例について>
(1)以上の実施の形態では、この出願の発明の実施の形態に係るブーツ用インナープロテクターをウエーダー一体型の釣り用ブーツ(長靴)に適用する場合について説明したが、この出願の発明のブーツ用インナープロテクターは、ウエーダー別体型の釣り用ブーツ、その他の各種のブーツに対しても適用することができる。
【0096】
(2)上述した各種の基布やカバーユニットに使用したパワーネット等の伸縮性のある生地としては、上述した構成のものに限らず、市場に提供されている種々のものの採用が可能であり、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
1:ウエーダー
2(2R,2L):インナープロテクター
11R(11L):長靴
12:トラウザー
20:プロテクター本体
21:側部側プロテクター部
21A:第1のプロテクターユニット
21B:第2のプロテクターユニット
21C:第3のプロテクターユニット
22:前部側プロテクター部
22A:前カバーユニット
22B:第4のプロテクターユニット
22C:後カバーユニット
23:後部側プロテクター部
23A:第5のプロテクターユニット
23B:後カバーユニット
24a:第1の基布
24b:第2の基布
24c:第3の基布
25:金属製の薄板
26:ポリエステル生地
26a:外周縁部
28:基布
29:基布
31:外装カバー
32:内装カバー
P1~P8,P9~P16,P17~P21,P22~P35,P36~
P46:プレート材
31:外装カバー
32:内装カバー