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特開2022-101408固体撮像装置、AD変換回路および電流補償回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101408
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】固体撮像装置、AD変換回路および電流補償回路
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/378 20110101AFI20220629BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20220629BHJP
   H03M 1/56 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H04N5/378
H04N5/374
H03M1/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215940
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 玄
【テーマコード(参考)】
5C024
5J022
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024GY31
5C024HX23
5C024HX29
5C024HX35
5C024HX47
5C024HX50
5J022AA09
5J022AB01
5J022BA02
5J022CB08
5J022CF01
5J022CF02
5J022CF03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】固体撮像素子の列AD変換器に用いる増幅器のバイアス電圧の変動によるノイズを低減する。
【解決手段】固体撮像装置において、AD変換回路は、信号を受ける一方の入力端子と所定の傾きで変化する参照信号を受ける他方の入力端子とを持つ差動型の第一増幅器21と、第一増幅器の一つの出力が入力される片線接地型の第二増幅器22と、を有する比較器を備える。第二増幅器22は。第一増幅器21のオートゼロ動作時における電圧を増幅した電圧に基づいて第二増幅器22のオートゼロ電圧を決めると共に、オートゼロ電圧をバイアス電圧とする自己バイアス回路を有する。比較器は、一列方向に複数個配置され、他方の入力端子に入力されるアナログ電圧に基づいたデジタル値を並行動作して出力するよう構成される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を受ける一方の入力端子と所定の傾きで変化する参照信号を受ける他方の入力端子とを持つ差動型の第一増幅器と、前記第一増幅器の一つの出力が入力される片線接地型の第二増幅器と、を有する比較器を備え、
前記第二増幅器は前記第一増幅器のオートゼロ動作時における電圧を増幅した電圧に基づいて前記第二増幅器のオートゼロ電圧を決めると共に、前記オートゼロ電圧をバイアス電圧とする自己バイアス回路を有し、
前記比較器は一列方向に複数個配置され、前記他方の入力端子に入力されるアナログ電圧に基づいたデジタル値を並行動作して出力するよう構成されるAD変換回路。
【請求項2】
請求項1のAD変換回路において、
前記自己バイアス回路は前記オートゼロ電圧を保持する容量素子を有するAD変換回路。
【請求項3】
請求項2のAD変換回路において、
前記容量素子の電圧保持電極は他の比較器の容量素子の電圧保持電極と接続されないAD変換回路。
【請求項4】
請求項1のAD変換回路において、
前記第二増幅器は増幅段トランジスタと電流源とを有し、
前記増幅段トランジスタとは逆極性の電流補償トランジスタを配置し、前記片線接地型の増幅器の増幅開始前または増幅完了後に前記片線接地型の増幅器の電流が停止する期間にも、前記電流源に流れる電流と同じ量の補償電流を前記電流補償トランジスタに流すように構成される電流補償回路を有するAD変換回路。
【請求項5】
請求項4のAD変換回路において、
さらに、前記電流補償トランジスタと直列に配置され、前記片線接地型の増幅器の出力を受ける電流スイッチトランジスタを有し、
電流スイッチトランジスタは、前記片線接地型の増幅器の出力に基づいて前記電流補償トランジスタに前記補償電流を流したり、前記補償電流を停止したりするように構成されるAD変換回路。
【請求項6】
増幅段トランジスタと電流源とを有する片線接地型の増幅器に用いられる電流補償回路であって、
前記増幅段トランジスタとは逆極性の電流補償トランジスタを配置し、前記片線接地型の増幅器の増幅開始前または増幅完了後に前記片線接地型の増幅器の電流が停止する期間にも、前記電流源に流れる電流と同じ量の補償電流を前記電流補償トランジスタに流すように構成される電流補償回路。
【請求項7】
請求項6の電流補償回路において、
さらに、前記電流補償トランジスタと直列に配置され、前記片線接地型の増幅器の出力を受ける電流スイッチトランジスタを有し、
電流スイッチトランジスタは、前記片線接地型の増幅器の出力に基づいて前記電流補償トランジスタに前記補償電流を流したり、前記補償電流を停止したりするように構成される電流補償回路。
【請求項8】
入射光量に応じた輝度信号電圧を信号線に出力する複数の画素が行列状に配列された画素部と、
所定のスルーレートのランプ信号の参照電圧をランプ信号線に出力する参照電圧生成回路と、
前記画素部から複数の画素単位で読み出される輝度信号電圧をAD変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路を制御する制御回路と、
を有し、
前記AD変換回路は、
画素の列配列に対応して配置され、前記輝度信号電圧と参照電圧とを比較判定し、その判定信号を出力する複数の比較器、を含み、
前記各比較器は、
前記参照電圧と前記輝度信号電圧との比較動作を行い、所定の比較ポイントとなると出力を反転する第一増幅器と、
前記第一増幅器の出力が反転すると電流経路が形成されて前記第一増幅器の出力をゲインアップして出力する第二増幅器と、
を有し、
前記制御回路は、前記第一増幅器のオートゼロ動作時における電圧を増幅した電圧に基づいて前記第二増幅器のオートゼロ電圧を決めるように構成される固体撮像装置。
【請求項9】
請求項8の固体撮像装置において、
前記第一増幅器は、第一容量素子を介して前記信号線に接続された第一入力端子と、第二容量素子を介して前記ランプ信号線に接続された第2入力端子と、を有する固体撮像装置。
【請求項10】
請求項9の固体撮像装置において、さらに、
前記第一容量素子に接続される第一スイッチと、
前記第二容量素子に接続される第二スイッチと、
を有し
前記第二増幅器は、
前記第一増幅器の出力がゲートに入力される第一導電型の第一トランジスタと、
前記第一トランジスタと直列に接続され、ゲートとドレイン間に行動作開始時に各カラム毎に動作点を決めるための第三スイッチが配置され、ゲートが第三容量素子に接続された第二導電型の第二トランジスタと、を有し、
前記制御回路は、
前記第一スイッチ、前記第二スイッチおよび前記第三スイッチをオンし、
前記第三スイッチをオンしたまま前記第一スイッチおよび前記第二スイッチをオフして前記第一容量素子および前記第二容量素子に前記第一増幅器のノイズ電圧を蓄積させると共に、前記第一容量素子および前記第二容量素子に蓄積されたノイズ電圧を前記第一増幅器により増幅し、前記第二増幅器の動作点電圧を決定し、
前記第一スイッチおよび前記第二スイッチをオフしたまま前記第三スイッチをオンして、前記第三容量素子に前記第二増幅器のノイズ電圧および前記動作点電圧を蓄積するように構成される固体撮像装置。
【請求項11】
請求項10の固体撮像装置において、
前記第二増幅器に電流が流れないときに電流を流す電流補償回路を有し、
前記電流補償回路は、
前記第一増幅器の出力がゲートに入力される第二導電型の第三トランジスタと、
前記第三トランジスタと直列に接続され、ゲートが前記第三容量素子に接続された第二導電型の第四トランジスタと、
直列接続された前記第二トランジスタと前記第三トランジスタとを含んで形成される電流経路に配置される第一導電型の第五トランジスタと、
を有し、
前記第二増幅器の出力レベル基づいて、前記第五トランジスタのオン、オフを行うよう構成される固体撮像装置。
【請求項12】
請求項8の固体撮像装置において、
前記比較器は、さらに、前記第二増幅器の出力信号を受けて前記比較器の出力信号として出力する二値化回路を有する固体撮像装置。
【請求項13】
請求項10の固体撮像装置において、
前記第一増幅器は、前記輝度信号電圧と前記参照電圧が交差するまでは、前記第一トランジスタがオフし、交差後はオンするレベルの比較出力を前記第一トランジスタに出力する固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は固体撮像装置に関し、例えば、固体撮像装置のAD変換回路に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置は、複数の画素が行列状に配列された画素アレイを有する。画素アレイの各列には垂直信号線が設けられている。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサは固体撮像装置の一例である。CMOSイメージセンサの場合、各画素は、少なくとも1つの光電変換素子と、光電変換素子に蓄積された電荷に応じた電気信号(輝度信号)を垂直信号線に出力する増幅トランジスタとを含む。
【0003】
CMOSイメージセンサでは、さらに、画素アレイの列にそれぞれ対応してカラム回路が設けられる。各カラム回路には、対応する画素の電気信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器(以下、AD変換回路という。)が設けられる。
【0004】
AD変換回路に使用される比較器は、画素から垂直信号線を介して出力された輝度信号電圧と参照電圧とを比較判定する。一般的に、比較器は複数段の増幅器で構成され、例えば二段増幅器構成の場合、初段の増幅器で低速信号比較動作を行い、動作帯域を狭くし、二段目の増幅器でゲインアップする構成となっている。また、増幅器には電流源トランジスタが設けられ、各電流源トランジスタの制御電極には、共通のバイアス回路からバイアス電圧が与えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-120310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、多数のAD変換回路が並列動作するときに、例えば、各AD変換回路の二段目の増幅器にバイアス電圧を供給する共通バイアス線にノイズが乗ってバイアス電圧が変動する場合がある。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、AD変換回路は、信号を受ける一方の入力端子と所定の傾きで変化する参照信号を受ける他方の入力端子とを持つ差動型の第一増幅器と、第一増幅器の一つの出力が入力される片線接地型の第二増幅器と、を有する比較器を備える。第二増幅器は第一増幅器のオートゼロ動作時における電圧を増幅した電圧に基づいて第二増幅器のオートゼロ電圧を決めると共に、オートゼロ電圧をバイアス電圧とする自己バイアス回路を有する。比較器は一列方向に複数個配置され、他方の入力端子に入力されるアナログ電圧に基づいたデジタル値を並行動作して出力するよう構成される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、バイアス電圧の変動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は実施形態における固体撮像装置を例示した構成図である。
図2図2は実施形態における固体撮像装置の画素を例示した構成図である。
図3図3図1に示す比較器を例示した構成図である。
図4図4図1に示す参照電圧生成回路の構成の一例を示す回路図である。
図5図5図1に示すバイアス生成回路の構成の一例を示す回路図である。
図6図6図3に示すAD変換回路を例示した構成図である。
図7図7は第一増幅器および第二増幅器のAZスイッチがオンしている状態を示す図である。
図8図8は第一増幅器のAZスイッチがオフし第二増幅器のAZスイッチがオンしている状態を示す図である。
図9図9は第一増幅器および第二増幅器のAZスイッチがオフしている状態を示す図である。
図10図10はオートゼロ動作後における第一増幅器と第二増幅器の状態を示す図である。
図11図11は第二増幅器の電流を示す図である。
図12図12は電流補償回路の構成および動作を説明するための図である。
図13図13は第二増幅器と電流補償回路の電流を示す図である。
図14図14図1に示す比較器の動作を例示したタイミング図である。
図15図15は比較器を例示した構成図である。
図16図16は積分型AD変換回路の動作原理を説明する図である。
図17図17図15に示す比較器における課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0012】
実施形態における固体撮像装置をより明確にするため、まず、本開示者が見出した固体撮像装置における課題について図15から図17を用いて説明する。図15は比較器を例示した構成図である。図16は積分型AD変換回路の動作原理を説明する図である。図17図15に示す比較器における課題を説明する図である。
【0013】
上述したように、固体撮像装置は比較器を有するAD変換回路を備える。図15に示すように、積分型AD変換回路を構成する比較器50は、画素から出力される輝度信号(LS)と、参照電圧としてのランプ信号(RAMP)と、を比較する。比較器50は、第一増幅器51と第二増幅器52と二値化回路54とを備える。図15においては、第一増幅器51を完全差動増幅器で構成し、第二増幅器52を差動増幅器で構成する例を示している。
【0014】
第一増幅器51の入力端子51aは、容量素子C1Mを介して画素から出力される輝度信号(LS)が入力される端子51eに接続されている。また、第一増幅器51の入力端子51bは、容量素子C1Pを介してランプ信号(RAMP)が入力される端子51fに接続されている。
【0015】
第一増幅器51の出力端子51cと第二増幅器52の入力端子52aとの間は容量素子C2Pを介して接続されている。また、第一増幅器51の出力端子51dと第二増幅器52の入力端子52bとの間は容量素子C2Mを介して接続されている。
【0016】
第一増幅器51および第二増幅器52はまず比較の判定基準電圧を決める必要があり、これを決める操作のことを以下、初期化動作またはオートゼロ動作と呼ぶ。よって、第一増幅器51の入出力端子間及び第二増幅器52の入出力端子間に入れられたスイッチAZ1,AZ2を閉じるオートゼロ動作により、外部の信号DCレベルに依存せず、各増幅器に最適な動作点で動作させる。容量素子C1P,C1M,C2P,C2Mはオートゼロレベルのサンプリング容量である。容量素子C1Mにより輝度信号(LS)に応じた電圧が生成される。容量素子C1Pによりランプ信号(RAMP)に応じた電圧が生成される。容量素子C2Pにより出力端子51cの出力電圧に応じた電圧が生成される。容量素子C2Mにより出力端子51dの出力電圧に応じた電圧が生成される。
【0017】
第二増幅器52の出力端子52cは二値化回路54に接続されている。二値化回路54は、pチャネルMOS(PMOS)トランジスタMP51、nチャネルMOS(NMOS)トランジスタMN51と、NMOSトランジスタMN53を含む。PMOSトランジスタのゲートには制御信号(RSTB)が入力されている。また、NMOSトランジスタMN51のゲートには第二増幅器52の出力が入力されている。また、NMOSトランジスタMN51のゲートには制御信号(EN)が入力されている。二値化回路54はインバータ回路を含む。なお、本開示の図面においては、PMOSトランジスタはゲートに〇を付して、NMOSトランジスタと区別している。
【0018】
第一増幅器51において、二つの入力端子51a,51bがゲートに接続される二つのNMOSトランジスタによりNMOSトランジスタCS1を電流源とする差動の比較部が構成されている。NMOSトランジスタCS1のソースは接地電位(AGND1)が供給される配線に接続されている。
【0019】
第二増幅器52において、二つの入力端子52a,52bがゲートに接続される二つのPMOSトランジスタによりPMOSトランジスタCS2を電流源とする差動の比較部が構成されている。PMOSトランジスタCS2のソースは電源電位(AVDD2)が供給される配線に接続されている。PMOSトランジスタCS3および差動の比較部の出力ノードN2がゲートに接続されるNMOSトランジスタは、当該NMOSトランジスタのゲート電極を入力とするソース接地増幅回路である。PMOSトランジスタCS3は、定電流源として動作する負荷トランジスタである。PMOSトランジスタCS3のソースは電源電位(AVDD2)が供給される配線に接続されている。
【0020】
一段目の第一増幅器51でA1倍に増幅し、二段目の第二増幅器52でA2倍に増幅する。このため、第二増幅器52の定電流源トランジスタとしてのPMOSトランジスタCS2には大きな電流が流れ、第二増幅器52の出力ノードN2の出力電圧(VOUT2P)は変化が急峻になる。その結果、PMOSトランジスタCS2にバイアス電圧(BIASP)を供給する共通バイアス線CBLにノイズが乗る。
【0021】
なお、第一増幅器51の定電流源トランジスタとしてのNMOSトランジスタCS1の電流(i11)は、第二増幅器52のPMOSトランジスタCS2の電流(i12)よりも小さい。また、電流(i11)は、定電流源トランジスタとしてのPMOSトランジスタCS3の電流(i13)よりも大きい。電流の大小は一例であってこれに限定されるものではない。
【0022】
図15に示す積分型AD変換回路では、図16に示すように、ランプ信号(RAMP)の電圧が画素からの輝度信号(LS)の電圧と交差するタイミングで比較器50の出力が反転して動作する。暗画素の輝度信号(LS)の電圧(VDR)は明画素の輝度信号(LS)の電圧(VBR)よりも高く、暗画素の方が動作時刻は早い。すなわち、明るさによって動作時刻が異なる。よって、明画素側の比較器50の第二増幅器52は、共通バイアス線CBLを介して暗画素側の比較器50の動作の影響を受けてしまう。
【0023】
例えば、図17の矢印PX1に示すように、画素アレイPAの行方向の大部分が暗く、中央の一部が明るい被写体を撮像したような場合、暗画素(黒色画素)に対する多数の比較器に同様の値を有する画素信号が入力されることとなる。このため、多数のAD変換回路ADCの比較器の出力が一斉反転することになる。これにより、明画素(灰色画素)に対応する比較器に共通バイアス線CBLを介して影響を与え、明画素(灰色画素)に縞模様が出る。
【0024】
他方、図17の矢印PX2に示すように、行方向の大部分が明るく、中央の一部が暗い被写体を撮像したような場合、明画素(白色画素)に対する多数の比較器に同様の値を有する画素信号が入力されることとなる。このため、多数の比較器の出力が一斉反転することになる。しかし、この一斉反転は暗画素(灰色画素)に対応する比較器の反転動作よりも後に行われる。そのため、暗画素(灰色画素)に対応する比較器に影響を与えない。
【0025】
このように多数の比較器の出力が一斉反転すると、電流変動などによりノイズが生じ、共通バイアス線CBLに影響を及ぼすことがある。また、AD変換期間中の電流変動が誤差に繋がる。そして、このような問題は、一斉反転する列数が増加するほど悪化するため、多画素化になるほど、影響が増加することになる。なお、第二増幅器52が差動型増幅器である例を説明したが、共通バイアス線を用いる片線接地増幅器であっても同様の課題がある。
【0026】
このように、複数のAD変換回路が並列動作する固体撮像素子において、AD変換回路を構成する比較器の第二増幅器に共通バイアス線を用いる場合に、共通バイアス線にノイズが乗ることが課題として見出された。このようなノイズは、バイアス電圧を変動させ、固体撮像装置の性能を向上させることができない。
【0027】
また、固体撮像装置に搭載されるAD変換回路の数は一般に数千であり、AD変換回路の電力低減が要求されている。そこで、消費電力を低減する固体撮像装置も提案する。
【0028】
実施形態における固体撮像装置について図1を用いて説明する。図1は実施形態における固体撮像装置を例示した構成図である。
【0029】
固体撮像装置1は、画素アレイ(PA)17、制御回路(CTL)10、行選択回路(RSL)11、参照電圧生成回路(RVG)12およびバイアス回路(BIS)13を備えている。また、固体撮像装置1は、カウンタ回路(CNT)14、水平転送回路(HTR)15、信号処理回路(SIP)16および複数のAD変換回路18を備えている。固体撮像装置1は、例えば、CMOSイメージセンサである。
【0030】
行選択回路11は、制御回路10によって制御され、複数の画素19が複数行及び複数列にマトリックス状に配置された画素アレイ17において、一行ずつ順次選択し、選択した行の制御線111を有効化する。
【0031】
画素アレイ17は、複数の画素19を含んでいる。画素アレイ17において、複数の画素19は、複数行及び複数列から構成されるマトリックス状に配置されている。各画素19は、対応する複数の制御線111を有効化レベルにされたことに応じて有効化される。そして、有効化された各画素19は、入射光量に応じた電圧の輝度信号電圧を対応する輝度信号線197に出力する。画素19の動作は、制御回路10により制御されている。
【0032】
画素アレイ17においては、映像や画面イメージを画素行毎に光電変換し、輝度信号(LS)をAD変換回路18に出力する。AD変換回路18は、各垂直信号線197に対応して複数設けられている。例えば、数千個設けられている。イメージセンサ内にコラム状に配置されており、垂直信号線197に出力された輝度信号電圧をAD変換する。
【0033】
AD変換回路18は積分型のAD変換回路であり、垂直信号線197毎に複数列配列されている。AD変換回路18は比較器20とラッチ40とを含む。比較器20は、参照電圧生成回路12により生成されるランプ信号(RAMP)と、行線毎に画素から垂直信号線197を経由し得られる輝度信号(LS)と、を比較する。ラッチ40は比較器20の比較時間をカウントするカウンタ回路14のカウント結果を保持する。各ラッチ40の出力は、水平転送回路15を介して信号処理回路16に転送される。比較器20の具体的な構成および機能ついては後で詳述する。
【0034】
AD変換回路18においては、垂直信号線197に読み出された輝度信号(LS)は列毎(カラム毎)に配置された比較器20である傾きを持った線形に変化するスロープ波形であるランプ信号(RAMP)と比較される。このとき、カウンタ回路14が動作しており、ランプ波形のあるランプ信号(RAMP)の電位とカウンタ値が一対一の対応を取りながら変化することで輝度信号(LS)の電位をデジタル信号に変換する。ランプ信号(RAMP)の変化は電圧の変化を時間の変化に変換するものであり、その時間をある周期(クロック)で数えることでデジタル値に変換するものである。そして輝度信号(LS)とランプ信号(RAMP)が交わったとき、比較器20の出力が反転し、その時のカウンタ回路14のカウント値をラッチ40に保持し、AD変換を完了させる。
【0035】
以上のAD変換期間終了後、水平転送回路15により、ラッチ40に保持されたデータが、信号処理回路16に入力され、所定の信号処理により2次元画像が生成される。
【0036】
図1に示す画素アレイ17を構成する画素19について図2を用いて説明する。図2は実施形態における固体撮像装置の画素を例示した構成図である。
【0037】
画素19は、光電変換素子フォトダイオード191と、例えば、4つのNMOSのトランジスタを含んでいる。4つのトランジスタは、例えば、リセットトランジスタ192、転送トランジスタ193、行選択トランジスタ194、増幅トランジスタ195である。
【0038】
リセットトランジスタ192は、リセット制御信号(RST)に従って、フローティングディフュージョン196を所定の電圧レベルにリセットする。転送トランジスタ193は、転送制御信号(TX)にしたがって、フォトダイオード191によって生成された電気信号を伝達する。行選択トランジスタ194は、行選択信号(SEL)に従って、増幅トランジスタ195より伝達されたアナログ信号である輝度信号(LS)を垂直信号線197に出力する。増幅トランジスタ195は、フローティングディフュージョン196の電位を増幅する。ここで、リセット制御信号(RST)、転送制御信号(TX)および行選択信号(SEL)は複数の制御線111を介して行選択回路11から供給される。
【0039】
フォトダイオード191は、入射光の光量に応じた量の電子に光電変換する。転送トランジスタ193は、転送制御信号(TX)がハイレベル(以下、Hレベルと略す。)のとき、オン状態となり、フォトダイオード191で光電変換された電子をフローティングディフュージョン196に転送する。
【0040】
行選択信号(SEL)がHレベルになると、増幅トランジスタ195と垂直信号線197とが接続される。増幅トランジスタ195のゲート電極にはフローティングディフュージョン196が接続されており、画素電流源とソースフォロワ回路を構成する。これにより、フローティングディフュージョン196の電位に応じた電圧を垂直信号線197に出力する。
【0041】
より具体的には、画素19をHレベルにして転送トランジス193がオンすることによりフォトダイオード191の電荷をフローティングディフュージョン196に転送してフォトダイオード191を初期化する。次に、画素19をローレベル(以下、Lレベルと略す。)にして転送トランジスタ193をオフにして、所定の期間光電変換を行い、電荷を蓄積する。
【0042】
読み出し時においては、リセット制御信号(RST)をHレベルとすることにより、リセットトランジスタ192が導通し、フローティングディフュージョン196がリセットされる。続いて、行選択信号(SEL)がHレベルとなることにより、行選択トランジスタ194が垂直信号線197と接続され、ソースフォロワ回路が構成される。リセット制御信号(RST)がLレベルになり、リセットトランジスタ192がオフすると、垂直信号線197には、フォトダイオード191からの電荷が転送される前の暗状態の電圧値(「Dark電圧」とも称する。)が出力される。
【0043】
次に、転送制御信号(TX)がHレベルになり、転送トランジスタ193が導通し、フォトダイオード191により光電変換されて蓄積された電荷が、フローティングディフュージョン196に転送される。転送された電荷に応じてフローティングディフュージョン196が変化し、垂直信号線197には、画素の光量に応じた電圧値(「Signal電圧」とも称する。)が出力される。
【0044】
Dark電圧とSignal電圧の差分を画像信号とすることにより、いわゆる相関二重サンプリング(CDS:Correlated Double Sampling)動作を行って、画素19のDC成分のばらつきやリセットノイズの影響を相殺することができる。
【0045】
画素19の読み出しが完了すると、行選択信号(SEL)がLレベルとなり、行選択トランジスタ194がオフ状態になる。これらの読み出し動作は1行の画素19について、並列に行われる。このため、リセットトランジスタ192、転送トランジスタ193、行選択トランジスタ194の各リセット制御信号(RST)、転送制御信号(TX)、行選択信号(SEL)が行単位で共有されている。
【0046】
比較器20の概略について図3を用いて説明する。図3図1に示す比較器を例示した構成図である。
【0047】
比較器20は、第一増幅器21と第二増幅器22と二値化回路24とを備える。比較器20は、画素19から垂直信号線197に出力された輝度信号(LS)の電圧と、参照電圧信号線121に供給されたランプ信号(RAMP)の電圧と、を比較する。ランプ信号(RAMP)の方が小さいとき、その出力線241における出力信号(OUT)は、Hレベルを出力するように動作する。
【0048】
第一増幅器21の入力端子21aと第一増幅器21の出力端子21cとの間はスイッチAZ11を介して接続されている。ここで、入力端子21aは負入力端子または反転入力端子ともいう。出力端子21cは正出力端子ともいう。また、第一増幅器21の入力端子21bと第一増幅器21の出力端子21dとの間はスイッチAZ12を介して接続されている。ここで、入力端子21bは正入力端子または非反転入力端子ともいう。出力端子21dは負出力端子ともいう。よって、第一増幅器21の入出力端子間に入れられたスイッチAZ11,AZ12を閉じるオートゼロ動作により、外部の信号DCレベルに依存せず、第一増幅器21に最適な動作点で動作させることが可能である。
【0049】
第一増幅器21の入力端子21aは、容量素子C11を介して画素19からの輝度信号線197に接続されている。これにより、垂直信号線197の入力電圧に応じた電圧が生成される。以下、この電圧を輝度信号電圧と称する。第一増幅器21の入力端子21bは、容量素子C12を介して、参照電圧信号線121に接続されている。
【0050】
第一増幅器21の出力端子21cは、容量素子を介さないで第二増幅器22の入力端子22aに接続されている。第二増幅器22の出力端子22bは、二値化回路24に入力される。
【0051】
参照電圧生成回路12およびバイアス回路13について図4及び図5を用いて説明する。図4は、図1に示す参照電圧生成回路の構成の一例を示す回路図である。図5は、図1に示すバイアス生成回路の構成の一例を示す回路図である。
【0052】
図4に示すように、参照電圧生成回路12は、演算増幅器122および電流DAC(Digital to Analog Converter)123を含む。演算増幅器122の正入力端子122aは出力端子122cと短絡され、正入力端子122には、制御回路10によって制御される電流DAC123が接続される。出力端子122cは参照電圧信号線121に接続され、参照電圧生成回路12は、図16に示すようなランプ信号(RAMP)を出力する。参照電圧生成回路12は、ランプ信号(RAMP)を所定の初期電圧から所定の傾きで電圧を低くしていく。
【0053】
図5に示すように、バイアス回路13は、定電流源133およびPMOSトランジスタ132を含む。定電流源133はPMOSトランジスタ132のソースおよびゲートが接続され、バイアス信号線131にバイアス電圧(VBIAS)を出力する。
【0054】
図1に示すカウンタ回路14は、制御回路10によって制御され、カウンタ信号線141を介して各AD変換回路18のラッチ40に接続される。
【0055】
AD変換回路18の比較器20の構成、機能について図6を用いて説明する。図6図3に示すAD変換回路を例示した構成図である。なお、本実施形態において、第一導電型はpチャネルまたはnチャネルであり、第二導電型はnチャネルまたはpチャネルである。
【0056】
第一増幅器21はPMOSトランジスタMP11~MP14およびNMOSトランジスタMN11~MN13を有する。第一増幅器21は差動入力電圧を増幅する差動型の増幅器として機能する。
【0057】
PMOSトランジスタMP11のソースおよびPMOSトランジスタMP12のソースは電源電位(AVDD)が供給される電源線31に接続されている。PMOSトランジスタMP11のドレインがNMOSトランジスタMN11のドレインに接続され、その接続点によりノードN11が形成されている。また、PMOSトランジスタMP11のドレインとゲートが接続され、その接続点がPMOSトランジスタMP12のゲートに接続されている。PMOSトランジスタMP12のドレインがNMOSトランジスタMN12のドレインに接続され、その接続点により第一増幅器21の出力ノードN12(出力端子21c)が形成されている。
【0058】
NMOSトランジスタMN11とNMOSトランジスタMN12のソース同士が接続され、その接続点がNMOSトランジスタMN13のドレインに接続されている。NMOSトランジスタMN13のソースは基準電位または接地電位(AGND)が供給される接地線32に接続されている。NMOSトランジスタMN11のゲートが容量素子C12の第一電極に接続され、その接続点によりノードN13(入力端子21b)が形成されている。そして、容量素子C12の第2電極はランプ信号(RAMP)が供給される参照電圧信号線121に接続されている。NMOSトランジスタMN12のゲートが容量素子C11の第一電極に接続され、その接続点によりノードN14(入力端子21a)が形成されている。そして、容量素子C11の第二電極は輝度信号(LS)が供給される垂直信号線197に接続されている。
【0059】
また、NMOSトランジスタMN13のゲートがバイアス信号線131および容量素子C13の第一電極に接続されている。そして、容量素子C13の第二電極は接地線32に接続されている。
【0060】
PMOSトランジスタMP13のソースがノードN11に接続され、ドレインがノードN13に接続されている。PMOSトランジスタMP14のソースがノードN12に接続され、ドレインがノードN14に接続されている。そして、PMOSトランジスタMP13,MP14のゲートは第一AZ信号(AZ1B)が供給される信号線に共通に接続されている。第一AZ信号(AZ1B)はLレベルでアクティブの信号であり、制御回路10から供給される。
【0061】
このような構成を有する第一増幅器21において、PMOSトランジスタMP11,MP12によりカレントミラー回路が構成されている。また、NMOSトランジスタMN11,MN12によりNMOSトランジスタMN13を電流源とする差動の比較部が構成されている。また、PMOSトランジスタMP13,MP14は、図3に示すスイッチAZ11,AZ12に対応し、オートゼロスイッチ(AZスイッチ)として機能する。容量素子C11,C12がAZレベルのサンプリング容量として機能する。そして、第一増幅器21の出力信号(VOUT1)は出力ノードN12から出力端子21cを介して第二増幅器22に出力される。
【0062】
第二増幅器22は、PMOSトランジスタMP21、NMOSトランジスタMN21,MN22,およびAZレベルのサンプリング容量としての容量素子C21を有する。第二増幅器22は一つの入力電圧を増幅する片線接地型の増幅器として機能する。そして、NMOSトランジスタMN21,MN22および容量素子C21により自己バイアス回路221が構成される。
【0063】
PMOSトランジスタMP21のソースが電源線31に接続され、ゲートが入力端子22aを介して第一増幅器21の出力端子21cに接続されている。PMOSトランジスタMP21のドレインがNMOSトランジスタMN21のドレインに接続され、その接続点によりノードN21が形成されている。
【0064】
NMOSトランジスタMN21のソースが接地線32に接続され、ゲートが容量素子C21の第一電極に接続され、その接続点によりノードN22が形成されている。容量素子C21の第二電極は接地線32に接続されている。
【0065】
NMOSトランジスタMN22のドレインがノードN21に接続され、ソースがノードN22に接続されている。そして、NMOSトランジスタMN22のゲートは第二AZ信号(AZ2T)が供給される信号線に共通に接続されている。第二AZ信号(AZ2T)はハイレベルでアクティブの信号であり、制御回路10から供給される。
【0066】
このような構成を有する第二増幅器22において、PMOSトランジスタMP21はゲートを入力とする増幅回路が構成されている。また、NMOSトランジスタMN21は定電流源として機能する。また、NMOSトランジスタMN22がAZスイッチとして機能し、容量素子C21がAZレベルのサンプリング容量として機能する。
【0067】
第一増幅器21のオートゼロ動作について説明する。オートゼロ動作を行うときには垂直信号線197にはリセットレベル(Dark電圧)を入力し、参照電圧信号線121には参照電圧生成回路12の初期電圧を入力する。
【0068】
スイッチAZ11を構成するPMOSトランジスタMP14およびスイッチAZ12を構成するPMOSトランジスタMP13のゲートには共通にオートゼロ動作を行うための第一AZ信号(AZ1B)が供給される。第一AZ信号(AZ1B)の立ち下がりタイミングでPMOSトランジスタMP13,MP14がオンし、第一増幅器21がオートゼロ状態となる。NMOSトランジスタMN11とNMOSトランジスタMN12のゲート電圧が等しくなるところで動作点が決まり、回路が平衡する。
【0069】
続いて第一AZ信号(AZ1B)の立ち上がりタイミングでとPMOSトランジスタMP13,MP14がオフし、NMOSトランジスタMN11とNMOSトランジスタMN12のゲートは共にフローティングになる。このとき垂直信号線197の電圧とNMOSトランジスタMN12のゲート電圧との差は容量素子C11に保持され、参照電圧信号線121の電圧とNMOSトランジスタMN11のゲート電圧との差は容量素子C12に保持される。
【0070】
第二増幅器22のオートゼロ動作および自己バイアス回路について図7から図9を用いて説明する。図7は第一増幅器および第二増幅器のAZスイッチがオンしている状態を示す図である。図8は第一増幅器のAZスイッチがオフし第二増幅器のAZスイッチがオンしている状態を示す図である。図9は第一増幅器および第二増幅器のAZスイッチがオフしている状態を示す図である。
【0071】
図7に示すように、第一増幅器21のAZスイッチとしてのスイッチAZ11および第二増幅器22のAZスイッチとしてのNMOSトランジスタMN22がオンしている。第一増幅器21のノイズ電圧をVn1、第二増幅器22のノイズ電圧をVn2とすると、それぞれのノイズ電圧は図7に示す式(1)(2)で表される。ここで、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、C1は容量素子C11の容量値、C2は容量素子C21の容量値である。
【0072】
図8に示すように、時刻t1で、スイッチAZ11をオフし、NMOSトランジスタMN22はオンのままにすると、第一増幅器21のVn1は容量素子C11に蓄積される。第一増幅器21の出力電圧(V1)は、図8に示す式(3)で表される。ここで、Aは第一増幅器21のゲインである。第二増幅器22の動作点電圧をVAZとすると、VAZは第一増幅器21のノイズを含んで最適化される。
【0073】
図9に示すように、時刻t2(>t1)で、スイッチAZ11をオフのまま、NMOSトランジスタMN22をオフにすると、容量素子C21に下記の電圧が蓄積されて保持される。容量素子C21の電圧をVbiasとすると、図9に示す式(4)で表される。
【0074】
よって、NMOSトランジスタMN21のゲートには所定電圧としてのVbiasが供給され、第一増幅器21の出力信号(OUT1)がLレベルの場合、NMOSトランジスタMN21に定電流(i2)が流れる。NMOSトランジスタMN21,MN22および容量素子C21により自己バイアス回路221が構成され、容量素子C21はバイアス電圧(Vbias)を供給する。
【0075】
オートゼロ動作によって決定された出力電流値は第二増幅器22の出力反転後まで容量素子C21によって保持されるため、第二増幅器22の反転ポイントや加工ばらつきに対する耐性が悪化することはない。
【0076】
次に、電流補償回路について図10から図13を用いて説明する。図10はオートゼロ動作後における第一増幅器と第二増幅器の状態を示す図である。図11は第二増幅器の電流を示す図である。図12は電流補償回路の構成および動作を説明するための図である。図13は第二増幅器と電流補償回路の電流を示す図である。
【0077】
図10に示すように、AD変換の初期状態においては参照電圧信号線121におけるランプ信号(RAMP)の電圧は垂直信号線197における輝度信号(LS)の電圧よりも高い。よって、第一増幅器21の出力信号(OUT1)はHレベルであり、第二増幅器22の入力電圧は、Hレベルにある。したがって、PMOSトランジスタMP21はオフ状態であるので、第二増幅器22の出力信号(OUT2)は、Lレベルとなっている。このとき、NMOSトランジスタMN21のドレイン-ソース間には電流は流れない。
【0078】
参照電圧信号線121におけるランプ信号(RAMP)の電圧が、垂直信号線197における輝度信号(LS)の電圧よりも小さくなると、第一増幅器21の出力信号(OUT1)は反転してLレベルになる。このとき、PMOSトランジスタMP21は、オン状態になり、PMOSトランジスタMP21のドレイン電流は、NMOSトランジスタMN21を流れて電流が安定する。第二増幅器22は電流を定電流(i2)にリミットすることはできるが、常時流し続けることはできない。これにより、第一増幅器21の出力反転前後で第二増幅器22の電流変化が生じる。したがって、アナログ電源の状態が異なるいわゆる電源段差(ラッシュ電流)が発生し、AD変換の誤差の原因となる。
【0079】
そこで、第二増幅器22は電流補償回路23を付加することが好ましい。電流補償回路23は、PMOSトランジスタMP31、NMOSトランジスタMN31,MN32を有する。
【0080】
図12に示すように、電流補償回路23において、NMOSトランジスタMN31のソースが電源線31に接続され、ゲートが第一増幅器21の出力端子21cに接続されている。NMOSトランジスタMN31のドレインがPMOSトランジスタMP31のソースに接続され、ゲートは第二増幅器22のノードN21に接続されている。電流スイッチとしてのPMOSトランジスタMP31のドレインがNMOSトランジスタMN32のドレインに接続されている。NMOSトランジスタMN32のソースが接地線32に接続され、ゲートが第二増幅器のノードN22に接続されている。
【0081】
PMOSトランジスタMP31が電流経路をオン、オフする電流スイッチとして機能する。PMOSトランジスタMP31のゲートレベルは、第二増幅器22の出力信号(OUT2)によって制御されている。第二増幅器22の出力信号(OUT2)がLレベルのとき、PMOSトランジスタMP31はオンとなり、電流補償回路23に定電流(i3)が流れる。第二増幅器22の出力信号(OUT2)がPMOSトランジスタMP31の閾値電圧を超えた時点でPMOSトランジスタMP31はオフとなり、電流補償回路23に流れる定電流(i3)をカットする。
【0082】
第一増幅器21の出力信号(OUT1)がHレベルの場合、PMOSトランジスタMP21はオフであり、NMOSトランジスタMN31はオンである。このとき、第二増幅器22には電流が流れず、第二増幅器22の出力信号(OUT2)はLレベルである。よって、PMOSトランジスタMP31はオンして電流補償回路23に電流が流れる。
【0083】
他方、第一増幅器21の出力信号(OUT1)がLレベルの場合、PMOSトランジスタMP21はオンであり、NMOSトランジスタMN31はオフである。このとき、第二増幅器22には電流が流れ、第二増幅器22の出力信号(OUT2)はHレベルでありる。よって、PMOSトランジスタMP31はオフして電流補償回路23に電流が流れるない。
【0084】
したがって、図13に示すように、第二増幅器22に電流が流れるときは電流補償回路23には電流が流れず、第二増幅器22に電流が流れないときは電流補償回路23には電流が流れる。これにより、第二増幅器22および電流補償回路23の何れか一方に電流が流れ、第二増幅器22および電流補償回路23の電流は一定になり、電源段差が発生しなくなる。
【0085】
図6に示すように、二値化回路24は、PMOSトランジスタMP41,MP42およびNMOSトランジスタMN41,MN42,MN43を有する。そして、PMOSトランジスタMP42およびNMOSトランジスタMN42によりインバータ回路が構成される。
【0086】
PMOSトランジスタMP41のソースが電源線31に接続され、ゲートはリセット信号(RSTB)が供給される信号線103に接続されている。PMOSトランジスタMP41のドレインがNMOSトランジスタMN43のドレインに接続され、その接続点によりノードN41が形成されている。
【0087】
NMOSトランジスタMN43のソースがNMOSトランジスタMN41のドレインに接続され、ゲートはイネーブル信号(EN)が供給される信号線104に接続されている。NMOSトランジスタMN41のソースが接地線32に接続され、ゲートが第二増幅器22の出力端子22bに接続されている。
【0088】
PMOSトランジスタMP42のソースは電源電位(LVDD)が供給される電源線33に接続され、ゲートはノードN41に接続されている。PMOSトランジスタMP42のドレインがNMOSトランジスタMN42のドレインに接続され、その接続点により出力ノードN42が形成されている。NMOSトランジスタMN42のソースが接地線32に接続され、ゲートがノードN41に接続されている。
【0089】
リセット信号(RSTB)がLレベルのとき、PMOSトランジスタMP41は、オン状態になる。これにより、ノードN41は、Hレベルになる。リセット信号(RSTB)がHレベルになるとノードN41は配線容量などの寄生容量素子に電圧が保持されてHレベルを維持する。
【0090】
AD変換においては、イネーブル信号(EN)がHレベルのとき2値化回路24が有効化される。二値化回路24の入力電圧である第二増幅器22の出力信号(OUT2)の電圧がNMOSトランジスタMN41のしきい電圧を超えると、NMOSトランジスタMN41がオンし、ノードN41がLレベルに引き下げられる。したがって、二値化回路24の出力信号(OUT)がHレベルに変化してこれにより出力が確定する。なお、出力信号(OUT)は、LVDDの振幅でHレベル/Lレベルを出力する。
【0091】
なお、第一増幅器21の定電流源トランジスタとしてのNMOSトランジスタMN13の電流(i1)は、図6に示す第一増幅器51の定電流源トランジスタとしてのNMOSトランジスタCS1の電流(i11)よりも小さい。例えば、第一増幅器51の消費電流の5μAに対して第一増幅器21の消費電流は2.8μAである。また、第二増幅器22の定電流源トランジスタとしてのNMOSトランジスタMN21の電流(i2)は図6に示す第二増幅器52の定電流源トランジスタとしてのPMOSトランジスタCS2の電流(i12)よりも非常に小さい。例えば、第二増幅器52の消費電流の25μAに対して第二増幅器22の消費電流は0.7μAである。また、電流補償回路23のNMOSトランジスタMN32の電流(i3)はNMOSトランジスタMN21の電流(i2)と同程度あり、NMOSトランジスタMN13の電流(i1)よりも小さい。
【0092】
次に、AD変換回路18の動作を説明する。図14図1に示すAD変換回路の動作を例示したタイミング図である。
【0093】
まず、図14に示す各信号の詳細について説明する。図14に示す動作の期間が1回のAD変換に必要な期間である。このような動作の期間を、動作状況により期間I~期間VIの6つのフェーズに分けることができる。期間Iは、リセット期間(RST)である。期間IIは、Dark電圧のための設定期間である。期間IIIは、Dark電圧のAD変換期間である。期間IVは、転送制御信号(TX)により制御する期間である。期間Vは、Signal電圧のための設定期間である。期間VIは、Signal電圧のAD変換期間である。
【0094】
ランプ信号(RAMP)はDark電圧のAD変換期間(期間III)およびSignal電圧のAD変換期間(期間VI)でスイープされ、それ以外の期間は所定の電圧(初期電圧)を保持する。輝度信号(LS)は期間IIおよび期間IIIにおいて、Dark電圧が出力され、期間Vおよび期間VIにおいて、Signal電圧が出力される。
【0095】
リセット制御信号(RST)および転送制御信号(TX)は画素19を制御する信号で、期間Iにおいて、リセット制御信号(RST)をアクティブ(Hレベル)にすることで、画素19のリセットを行う。また、期間IVにおいて、転送制御信号(TX)をアクティブにすることでSignal電圧の読み出しを行う。
【0096】
第一AZ信号(AZ1B)、第二AZ信号(AZ2T)は期間IIにおいて、比較器20の第一増幅器21及び第二増幅器22のオートゼロ動作を行う。第一AZ信号(AZ1B)および第二Z信号(AZ2T)をアクティブとすることで、第一増幅器21および第二増幅器22を初期化する。ここで、第一AZ信号(AZ1B)のアクティブはLレベルであり、第二AZ信号(AZ2T)のアクティブはHレベルである。第二AZ信号(AZ2T)のアクティブの期間は第二AZ信号(AZ1B)のアクティブの期間よりも長い。
【0097】
リセット信号(RSTB)、イネーブル信号(EN)は比較器20内の二値化回路24を制御する信号である。リセット信号(RSTB)がLレベルでリセット動作を行う。イネーブル信号(EN)がHレベルで有効化する。期間I、II、IV、Vでは、リセット、非イネーブル状態とし、Dark電圧のAD変換期間(期間III)、Signal電圧のAD変換期間(期間VI)で、非リセット、イネーブル状態とする。
【0098】
期間Iは、画素19のリセット期間である。AD変換回路18側は、特に動作の必要はない。
【0099】
期間IIは、比較器20のオートゼロ動作期間である。期間IIの前半において、第一増幅器21の入出力端子間に入れられたスイッチAZ11,AZ12を閉じる。すなわち、第一増幅器21の入力端子21aと、出力端子21cとがオン状態で接続され、第一増幅器21の入力端子21bと、出力端子21dとがオン状態で接続される。また、第二増幅器22のノードN21と、ノードN22とがオン状態で接続される。
【0100】
期間IIの後半において、第一増幅器21の入出力端子間に入れられたスイッチAZ11,AZ12を開く。すなわち、第一増幅器21の入力端子21aと、出力端子21cとがオフ状態で接続され、第一増幅器21の入力端子21bと、出力端子21dとがオフ状態で接続される。また、第二増幅器22のノードN21と、ノードN22とがオン状態で接続される。
【0101】
同時に、比較器20に接続された垂直信号線197には、画素19からの輝度信号(LS)としてDark電圧を印加する。比較器20の参照電圧信号線121側には、ランプ信号(RAMP)として初期電圧を印加する。
【0102】
以下より詳細に説明する。比較器20において、期間IIの前半において、第一AZ信号(AZ1B)がLレベル、第二AZ信号(AZ2T)はHレベルで供給される。これにより、第一増幅器21のAZスイッチとしてのPMOSトランジスタMP13、MP14がオンする。同様に、第二増幅器22のAZスイッチとしてのNMOSトランジスタMN22がオンする。これは、図7に示す状態に対応する。
【0103】
期間IIの後半において、第一AZ信号(AZ1B)がHレベルに切り替えられる。これにより、第一増幅器21のAZスイッチとしてのPMOSトランジスタMP13、MP14がオフする。これは、図8に示す状態に対応する。
【0104】
期間IIを終了するとき、第二AZ信号(AZ2T)はLレベルに切り替えらる。これにより、第二増幅器22のAZスイッチとしてのNMOSトランジスタMN22がオフする。これは、図9に示す状態に対応する。
【0105】
このようにAD変換回路18においては、比較器20を使用し、はじめに参照電圧生成回路12の初期電圧(オフセットレベル)、画素19のDark電圧(リセットレベル)および各カラム毎のAZレベルをサンプリングする。これらを、AZレベルのサンプリング容量である容量素子C11,C12に電荷を蓄える。第一増幅器21および第二増幅器22のオフセットレベルを容量素子C21に電荷を蓄える。
【0106】
期間IIIは、Dark電圧のAD変換期間である。第二増幅器22の容量素子C21には電荷が蓄積され、ノードN22の電位がNMOSトランジスタMN21および電流補償回路23のNMOSトランジスタMN32を導通させ得るレベルとなっている。また、このとき、図14に示すように、第一増幅器21の出力信号(OUT1)がHレベル、第二増幅器22の出力信号(VOUT2)はLレベルである。これは、図10に示す状態に対応する。その結果、電流補償回路23のNMOSトランジスタMN31、MN32および電流スイッチとしてのPMOSトランジスタMP31はオン状態に保持される。NMOSトランジスタMN32には極小の電流が流れる。
【0107】
比較器20の第一増幅器21において、期間IIIでは、オートゼロ動作時に蓄積したサンプリング容量である容量素子C11、C12のNMOSトランジスタMN11,MN12のゲート側ノードN13,N14はハイインピーダンス(HiZ)になっている。このため、参照電圧生成回路12によるランプ信号(RAMP)のランプ波変化に追従して差動トランジスタを構成するNMOSトランジスタMN11,MN12のゲート入力が変化し、輝度信号(LS)の電圧レベルとの比較を開始する。そして、ランプ信号(RAMP)と輝度信号(LS)の交差以降、第一増幅器21の出力信号(OUT1)がLレベルに急峻に変化する。
【0108】
これにより、第二増幅器22のPMOSトランジスタMPT21がオンして、電流が流れ始め、第二増幅器22の出力信号(OUT2)がLレベルからHレベルに変化する。ここで、NMOSトランジスタMN21は導通しており、極小の電流が流れる。第二増幅器22の出力信号(OUT2)がLレベルからハイレベルHに変化することにより、電流補償回路23の電流スイッチとしてのPMOSトランジスタMP31はオフ状態に切り替わる。これにより、電流補償回路23の電流経路が遮断され、NMOSトランジスタMN32には電流は流れなくなる。
【0109】
期間IVおよび期間Vは、それぞれの画素19からの信号の読み出し動作、及び、Signal電圧の整定を待つ期間である。AD変換回路18は、参照電圧生成回路12のランプ信号(RAMP)の電位を元に戻すなどSignal電圧変換の準備を行う。
【0110】
期間VIは、Signal電圧のAD変換を行う期間である。垂直信号線197には引き続き、画素19からの輝度信号電圧が印加されている。画素19側での期間IV、Vの動きで、Dark電圧に代わり、Signal電圧が入力される。期間VIにおいても、各カラム毎に比較器20は期間IIIと同じ動作をする。
【0111】
本実施形態によれば、下記の一つまたは複数の効果を有する。
【0112】
(1)第一増幅器21においてスイッチAZ11をオフしてオートゼロ動作終了する際に容量素子C11にノイズが蓄積される。このとき、第二増幅器22のオートゼロ動作が行われているので、第一増幅器21のノイズを含めて正しい動作点を確保できる。すなわち、第一増幅器21のノイズをキャンセルできる。
【0113】
(2)第二増幅器22のオートゼロ動作において自己バイアス電圧を設定することができる。自己バイアス電圧を用いることにより、共通バイアス線を経由するキックバイアスを防止できる。これにより、AD変換誤差が低減し、高画質を実現できる。
【0114】
(3)第二増幅器22に電流補償回路を設けることにより、電流の時間変化をなくせる。その結果、AD変換誤差が低減し、片線接地増幅器でも全差動増幅器並みの高画質を実現できる。
【0115】
(4)第二増幅器22は片線接地増幅器であるので、小面積化および低消費電力化することができる。
【0116】
(5)第一増幅器21の出力に容量素子が接続されないので、第一増幅器21を低消費電力化することができる。
【0117】
以上、本開示者によってなされた開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0118】
例えば、比較器は、実施形態における比較器20のトランジスタの極性(導電型)を逆極性(逆導電型)として構成し、接続する電源電位と接地電位も回路上逆として構成してもよい。
【符号の説明】
【0119】
18・・・AD変換回路
20・・・比較器
21・・・第一増幅器
21a・・・入力端子
21b・・・入力端子
22・・・第二増幅器
221・・・自己バイアス回路
図1
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