(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101409
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】声と口輪筋および表情筋のトレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 23/03 20060101AFI20220629BHJP
G09B 15/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A63B23/03
G09B15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215942
(22)【出願日】2020-12-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月1日に販促用のチラシに掲載 令和2年10月1日に出願人のウェブサイト(https://lipop.net)掲載
(71)【出願人】
【識別番号】520386464
【氏名又は名称】藤 良登
(74)【代理人】
【識別番号】100195970
【弁理士】
【氏名又は名称】本夛 伸介
(72)【発明者】
【氏名】藤 良登
(57)【要約】
【課題】本発明は、特に口輪筋と表情筋を無理なく鍛えることによって、美顔と美声ならびに美姿勢を創り出すためのトレーニング器具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のボイストレーニング器具は、口唇支持部と、口唇支持部の上部から前方に延在する重心バランス円柱部及び略円錐状の負荷加重部とを備え、口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道を設けた構造的な特徴を有するものであり、当該器具の使用においては、腹式呼吸を取り入れることによって、無駄のない口輪筋及び表情筋の強化トレーニングを図ることができ、結果的に歌い手のパフォーマンスに不可欠な美顔、美声及び美姿勢の三位一体の美的効果を実現し得るものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口唇支持部と、口唇支持部の上部から前方に延在する重心バランス円柱部及び略円錐状の負荷加重部とを備え、口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道を設けたことを特徴とする口輪筋及び表情筋のトレーニング器具。
【請求項2】
口唇支持部の原型が略三角形であって、該三角形の口唇側の1辺が歯列に沿って略半楕円状に成型されたことを特徴とする請求項1に記載の口輪筋及び表情筋のトレーニング器具。
【請求項3】
略円錐状の負荷加重部には、その先端に向かう長手方向の上下各2箇所に凹面を設けたことを特徴とする請求項1乃至2に記載の口輪筋及び表情筋のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口輪筋と表情筋を無理なく鍛えることによって、美顔と美声ならびに美姿勢を創り出すためのトレーニング器具に関するものである。
さらに詳細には、歌い手の豊かな表情と美しい声と姿を演出するためのボイストレーニングに適した器具を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
日常、我々は何気に、眼や鼻の開閉、口で飲む・食べる・吹く・しゃべるなどの行為を行っているが、特に声を発し、豊かな表情の変化をもたらすことができるのは、頭部や顔に存在する筋肉運動によるものである。
【0003】
頭部の筋肉は下顎を動かす咀嚼筋(そしゃくきん)と顔の表情を作り出す表情筋に大別される。表情筋(ひょうじょうきん)はまたの名を顔面筋(がんめんきん)とも呼び、その名称どおり、喜怒哀楽などの顔の豊かな表情を作り出す筋肉である。表情筋は頭蓋骨の表面や筋膜から起始し、皮下の結合組織内を走行して皮膚に停止するところ、他の骨格筋とは異なり、骨と骨をつなぐ筋ではないため、皮筋に分類される。
【0004】
表情筋はすべて顔面神経によって支配されているが、当該表情筋には、他者に自分の「感情」と、それが次にどのような行動に結びつきやすいかを察知させる機能があり、他の動物種に比して人間の卓越した能力の一つである。
【0005】
一方の口輪筋(こうりんきん)は、口の周りを取り囲むようについている筋肉で、主に唇の動きに関与し、口を閉じたりすぼめたりする動作にも作用する。口輪筋には様々な表情筋が付着していて、表情筋の7割が口元と言われるくらい顔の筋肉の中心的な存在である。
【0006】
また口輪筋は、意識しないと動かすことが少ないため、衰えてくると口角が下がり、しわが増える結果、フェイスラインが崩れ顔の印象も大きく変わってくる。
したがって、口輪筋を適時に継続して鍛えることは体の健康にも大変良い影響をもたらす。
【0007】
さらに、人間の発声行為においては、顔の表情と身振りを含めた全体の姿勢とはいわば三位一体であり、歌い手のパフォーマンス上もとても大事な要素である。
このようなことから、表情筋や口輪筋を強化するためのトレーニング器具が提供されている。例えば、特許文献1乃至3が挙げられる。
【0008】
特許文献1には、口の周囲にある表情筋の維持、強化を図るのに好適なトレーニン器具が開示されており、当該トレーニング器具は、管状部材の一端に口縁受け部が形成された雌スライダーの中空部へ、棒状部材の一端に口縁 受け部が形成された雄スライダーを摺動可能に差し込んで構成され、前記雌スライダーは更に、雄スライダー及び/又は雌スライダーの摺動時に両スライダーへ反発力を付与するコイルスプリングを前記中空部に設けると共に、雄スライダーに形成されたストッパと当接して雄スライダーの抜けを規制するストッパ受け部が前記管状部材の他端に形成されたものである。
【0009】
特許文献2には、特に、口輪筋、咀嚼筋群、舌筋群を同時にトレーニングして効率的に相乗効果を得られるようにした口腔筋トレーニング器具に関する技術が開示されている。当該口腔筋トレーニング器具は、弾性樹脂を成型してなり、実質的に人間の歯列に沿ったU字形に形成された咬合部と、前記咬合部の中央部から後方に延在する舌支え部と、前記咬合部の中央部から前方に延在する棒状の突出部とを備えることを最も主要な特徴とするものである。
【0010】
特許文献1及び2に開示された器具はいずれも、局所的な使用故に、特定の場所に負荷がかかりすぎ、顔や口角全体にバランスのとれたトレーニングとしては向かない。結果的に、表情筋も断片的な強化にとどまるため、自然な笑顔を演出することができない。そもそも発声訓練を想定していないことから、出願人らが意図したトレーニングができない。
このようなことから、とりわけ、歌い手がトレーニングする器具としてはまったく不十分である。
【0011】
特許文献3には、口に横向きに銜え噛挟みしながら発声トレーニング等を行なう発声トレーニング器具に関する技術が開示されているが、簡便性を欠き、使用方法も煩雑である。
また、上記特許文献1及び2と同様に、口輪筋や表情筋の強化を十分に考慮したものではない。
【0012】
このように、発声訓練を同時進行させながら、口輪筋と表情筋を無理なく鍛えることのできる簡便なトレーニングツールの提供はいまだ実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第3040070号
【特許文献2】特開2008-67732号公報
【特許文献3】特開2015-166803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の未達の問題に鑑みてなされたものであり、特に口輪筋と表情筋を無理なく鍛えることによって、美顔と美声ならびに美姿勢を創り出すためのトレーニング器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記の課題を解決すべく、口元周りの筋力アップ、声帯のケア、そして発声に大切な舌の稼働力アップの必要性に着目し開発を行った。
加えて、美姿勢に必須のウエストのシェイプアップを図るべく、発声時に腹式呼吸を取り入れる事ができる器具構造を検討した。複式呼吸は、腹筋、腰筋を使用するため、上記ウエストのシェイプアップに適したものだからである。
【0016】
口元周りの筋力をアップする為には唇で物を挟み、負荷を与え、持ち上げる一連の行為が必要であるところ、挟んだ部分に負荷を与える為に、先端を膨らませ、そこに加重が掛かるような構造を発案した。
また、唇を支点として、モーメントが掛かるよう更に口唇指示部から一定の距離を置いて重心バランスをとりつつ、呼気道を設けて器具全体を構成するに至ったものである。
【0017】
本発明のボイス器具としての好ましい重量は、全体で約10gである。この重量を基準としてスタートしながら、徐々に重量を挙げるトレーニングができるよう、本発明器具においては、その器具構造を工夫している。
【0018】
このように、本発明に係る器具全体の構成は、口唇で挟みながら一定の可変の負荷重量をかけられる構造をとり、口輪筋と表情筋を強化しつつも腹式呼吸による発声訓練ができるよう、特定の呼気道を設けたことが特徴であり、口唇指示部においては唇で挟みやすい成型をすることによって、所望の効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明によれば、口唇支持部と、口唇支持部の上部から前方に延在する重心バランス円柱部及び略円錐状の負荷加重部とを備え、口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道を設けたことを特徴とする口輪筋及び表情筋のトレーニング器具が提供される。
【0020】
ここで、口唇支持部(以下、唇に挟む部分として、単にテイルと呼ぶことがある)の原型は略三角形であって、該三角形の口唇側の1辺が歯列に沿って略半楕円状に成型されているものがより好ましい。当該成型は、口唇部の上下動が発声行為に伴ってしやすくするための大きな特徴であり、半楕円状にカット成型することで、発声に大事な舌の稼働トレーニング上の効果をより発揮させるための不可欠な条件である。
【0021】
テイルの幅は、声帯の振動を最適に増幅するように設計されており、口元をマッサージする様な効果を発揮することから、使用者にとっては、筋肉の血行が良くなりリラックスできる。
【0022】
本発明に係る器具において設けられた「口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道」は、発声を促し、その際に使用される口輪筋強化のための程良い負荷(過負荷防止)のために必須構造である。呼気道は、概ね直径6mmが好ましいが、器具全体の大きさに対しての多少の比率変更は許容されるものである。
【0023】
本発明に係る器具における「略円錐状の負荷加重部」には、その先端に向かう長手方向の上下各2箇所に凹面を設けられることが好ましい実施態様の一つである。
【0024】
上下各2箇所に設けられた凹面の機能は全く異なる。形状は重量バランスの関係で同一形状であるが、上の2箇所には、トレーニングの結果重量を上げて負荷を増やす場合に設けられている。例えば、凹面から切り抜かれた小片キットを埋め込み、負荷調整をすることが許容されるものである。
【0025】
下の2箇所の凹面は、手の指を軽く添えて支えるための便宜的なものであり、右利きと左利きのいずれでも支えが出来るように左右対称で、かつ上下と同一形状の成型がなされているものである。上下と同一の凹面にしているのは、使用再開時に、反転しても使いやすいように考案された便宜的な措置である。
【0026】
すなわち、本発明によれば、次のボイストレーニング用の機器が提供されるものである。
(1)口唇支持部と、口唇支持部の上部から前方に延在する重心バランス円柱部及び略円錐状の負荷加重部とを備え、口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道を設けたことを特徴とする口輪筋及び表情筋のトレーニング器具。
(2)口唇支持部の原型が略三角形であって、該三角形の口唇側の1辺が歯列に沿って略半楕円状に成型されたことを特徴とする上記(1)に記載の口輪筋及び表情筋のトレーニング器具。
(3)略円錐状の負荷加重部には、その先端に向かう長手方向の上下各2箇所に凹面を設けたことを特徴とする上記(1)乃至(2)に記載の口輪筋及び表情筋のトレーニング器具。
【0027】
【発明の効果】
【0028】
本発明のボイストレーニング器具は、口唇支持部と、口唇支持部の上部から前方に延在する重心バランス円柱部及び略円錐状の負荷加重部とを備え、口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道を設けた構造的な特徴を有するものであり、当該器具の使用においては、腹式呼吸を取り入れることによって、無駄のない口輪筋及び表情筋の強化トレーニングを図ることができ、結果的に歌い手のパフォーマンスに不可欠な美顔、美声及び美姿勢の三位一体の美的効果を実現し得るものである。
【0029】
また、本発明の器具を使用してボイストレーニングを実施することによる波及的な効果も認められている。
すなわち、必要な部位で無駄のない口輪筋や表情筋が強化されることで、無理のない発声が叶う結果、良好な声帯ケアへと繋がり、それがポリープの予防にもなる。姿勢矯正が促される結果、嚥下機能の低下予防へと繋がり、誤嚥の防止・改善にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明のボイストレーニング用の器具(平面図)
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明に係るトレーニング機器の実施の形態について具体的に説明するが、本発明の範囲は当該実施形態の例に限定されるものではない。
【0032】
前述のとおり、本発明は、口輪筋と表情筋を無理なく鍛えることによって、美顔と美声ならびに美姿勢を創り出すためのトレーニング器具に関するものである。歌い手の豊かな表情と美しい声と姿を演出するためのボイストレーニングに適した器具を提供するものである。
【0033】
すなわち、本発明によれば、
(1)口唇支持部と、口唇支持部の上部から前方に延在する重心バランス円柱部及び略円錐状の負荷加重部とを備え、口唇指示部から負荷加重部の先端に向けて貫通する呼気道を設けたことを特徴とする口輪筋及び表情筋のトレーニング器具が提供される。
(2)口唇支持部の原型が略三角形であって、該三角形の口唇側の1辺が歯列に沿って略半楕円状に成型されたことを特徴とする上記(1)に記載の口輪筋及び表情筋のトレーニング器具が提供される。
(3)略円錐状の負荷加重部には、その先端に向かう長手方向の上下各2箇所に凹面を設けたことを特徴とする上記(1)乃至(2)に記載の口輪筋及び表情筋のトレーニング器具が提供される。
【0034】
まず本発明に係るトレーニング器具の使用方法を説明する。
一連の手順は、5つのステップで構成される。
1. 顔を正面に向ける
2. 口角をあげて器具の口唇支持部を唇で挟む(歯でかまない)
3. 器具先端部が少し上向きになるように姿勢を正して維持する
4. ロングトーンの練習(腹式呼吸)
5. 発声(ロングトーンと高低音の発声トレーニング)
6. 舌を使って声を切る練習
以下、このステップに沿って、順次、実効性を高めるための注意点と得られる効果について詳述する。
【0035】
準備として、正面を向き、本発明に係る器具の口唇支持部(テイルの部分;
図1の(1))を、唇で軽く挟む。この時に注意する事は、テイルに歯が当たらない様にする事である。歯は軽く合わせ、少し隙間を作る。そしてその手前にテイルが位置する様にする。歯に近接しすぎると、息が抜けにくくなるためその点注意する必要がある。
唇は口角を少し上げ気味に横に引っ張りながら挟むのが好ましい。
さらに、大切なことは、少し器具の先端が上向きになる様に挟む事である。先が重いと感じた時は、親指で下から支える。便宜的に下部左右に凹面(
図3の(6))を設けていることから、利き腕の親指を軽く充てることで楽にセッティングが可能である。これで正しい使用スタートの準備が完了である。
【0036】
トレーニングの態様については後述するが、本発明の器具でのトレーニングを重ねていくと、だんだんと唇の力(口輪筋)がつき、支えなしで上向きに保持出来る様になるが、それまでは、
図3の(6)部分に適宜親指の支えをおきながら、実施するのが好ましい。
【0037】
本発明の器具においては、段階的な負荷加重による実施ができるように、略円錐状の負荷加重部(
図3の(6))に凹部が設けられている。切りかれた同一形状の重りを載せても良いし、微調整なら、例えば、粘土等を埋め込むことによって、自分の口輪筋力に応じたトレーニングが可能である。
上記トレーニング実施の結果、得られる効果として、口元のシワの軽減やほうれい線の軽減が促され、若々しい笑顔の保持に役立つ。
また、発声による声帯の振動を増幅して、唇の力(口輪筋)や笑顔の力(表情筋)などの血行を良くしたり、筋肉をリラックスさせたりと、マッサージと同等の効果を発揮し得るものである。
【0038】
次に、実際のトレーニング例について説明する。より実効性を高めるためには、 トレーニング姿勢が重要である。
まずは深呼吸をするように姿勢を正し、胸を張る。続いて顔を正面にむけて、上述のとおり、口唇支持部(
図1の(1))を唇で挟む。
「ウー」と少し長めに、自分に負担がない、自然な声を出し、テイルの部分が振動していることを感じ取れたら、さらに「ウー」と声を息が切れるまで発声してみる。声の大きさは、初期訓練ではあくまでも自然な感じで無理なく出す程度で良い。器具の先端部(
図1参照)が少し上向きになっている状態を維持するのが重要である。
【0039】
当該一連のトレーニングを基本とし、効果を得るためには、一日3分乃至5分程度を行う必要があるが、この際、声をだす時の身体の筋肉の使い方がポイントである。
すなわち、「ウー」と一つの音を一定に保ち長く発声する事をロングトーンと言うが、本発明に係る器具使用においては、当該ロングトーンの時に腹式呼吸を使いながらトレーニングを重ねることで所望の口輪筋及び表情筋強化の実効性をあげることができるものである。この点、腹式呼吸は歌を上手に歌うのに大切なものであることを勘案するに、実に理にかなったトレーニング法である。しかも、この呼吸法がウエストのシェイプアップに繋がるという点で美姿勢と一体の本発明の効果が期待できるものである。
【0040】
ここで、上記トレーニングに関し、腹式呼吸を体験するには、次の方法が好ましい。
まず背もたれのある椅子を用意し、椅子に浅く腰掛け後、胸を張り正面を向きつつ、本発明の器具を上記要領で唇に挟んでみる。先端は上向きである。そしてそのまま、背中を倒し背もたれに当てる(この時、腰から頭の先まで一直線上にある事を認識する点に注意)。顔は斜め上を向いている状態であるが、同時に「ウー」と無理のない声でロングトーンを行う。
【0041】
次にそのまま発声しながら上半身をゆっくり起こすが、この時に、腹筋と腰筋が締まってきている(使用している)事を認識するのが肝要であるところ、この筋肉の使い方を覚えておくことが連日のトレーニングにおいて重要である。ブレス時には、背筋を伸ばしながら腹部を膨らまし、息を吸い込むと横隔膜が引き下がるのを実感できる。
【0042】
次にボイストレーニングについて説明する。本発明においては、リップロールの採択が好適である。リップロールとは、唇を閉じたまま空気を吐いて、「ブルブル」と振動させるボイストレーニングである。歌の途中で声が詰まったり、息が続かないのは、声帯や口元に余計な力が入っているからであり、吐く息も一定でなければ同じ現象を招来する。
【0043】
この点、本発明の器具を使用したトレーニングでは、先述のロングトーンをするだけで、口元に「ブルブル」と振動を与え、力まずに最後まで歌いきる発声を身に付ける事ができる。
伸びのある発声には、声帯、口輪筋、表情筋などの脱力が必要であるところ、本発明に係る器具は、このようなトレーニングにも適しているものである。また、声帯のケアにも繋がり、無理のない発声はポリープの予防にもなる。
【0044】
人とのコミニュケーションにおいては、明るい声が良い印象を与える。つまり、声質は、明るい声がパフォーマンス上重要であり、歌声も同じである。明るい発声には口元の筋力が必要であり、一声ごとに声を発するたびに、しっかりと発声に対して口の形を作ることが大切である。その為には、口輪筋、表情筋を鍛えることが必要で、本発明に係る器具は、このような声質向上の点でも最適なツールであり、唇で挟時は、器具先端を上向きに保つことで、その十分なトレーニング効果が知らずのうちにあがる。
また、結果的には、トレーニングの波及効果として、口元のシワの軽減や、ほうれい線の軽減に繋がり、若々しい笑顔の保持になるのである。
【0045】
発音訓練にも適した仕様になっている。すなわち、本発明に係るトレーニング器具は、構造上、舌を使い息を切る練習(スタッカート)が出来る様になっている。トレーニングとしては、ロングトーンをやりながら「トゥー、トゥー、トゥー」と言いながら舌を前歯に当てて、出る息をふさぐ。その後、段階的に「トゥートゥートゥー」だんだんと早くしていく。発声の時に、舌の稼働は大変重要であり、その動きのサポートとして、表情筋の筋力が必要である。
なお、舌の稼働は自ずと首元のシェイプアップにも繋がるため、上記の訓練メニューは美姿勢上も合理的な訓練である。
【0046】
安定した音程の維持の為には、横隔膜の安定した動きと、舌や口元の筋力が必要である。この点に関しては、本発明に係る器具によってトレーニングを行う過程で自ずと身につき、驚くべきことに音痴の改善にも繋がる。
また、高音を発声する時は瞬時に上半身の筋肉を絞める動きが必要であり、表情筋を横に引き上げ(笑顔)、声帯を絞めるのではなく、横に張るような感覚で高音を出す事が大切である。
【0047】
この点、本発明の器具によるトレーニングの時は、「ウ―」とのばしながらだんだんと高音になるにつれて、口輪筋を絞め表情筋を横に引き上げ気味にしていき、器具の先が上向きになっていく様にして、ロングトーンを行うと徐々に高音が出る様になる。
【0048】
声量をアップする為には、力強い腹式呼吸が必要である。本発明に係る器具によれば、ロングトーンをしながら、腹筋と腰筋を意識的に鍛えることで好結果を得ることができる。上述したロングトーンの説明において、腹式呼吸の感覚につき言及した時に、椅子を使った訓練法を紹介したが、この方法で家庭でも簡単に腹筋や腰筋を鍛えることができる。
これらのことを応用しながらロングトーンの訓練を重ね、だんだんとロングトーンが長くできるようトレーニングすることによって声量アップが実現できる。
【0049】
目標とする歌のパフォーマンス向上のためには、上記のとおり、個別の目的に応じた基礎訓練を実施しながら、かつ、楽しむ感覚で、本発明に係る器具を使用した実践的トレーニングを継続するのが好ましい。
その為には、一曲好きな曲に合わせて(約4分から5分)「ウ―」とか「トゥー」と発声しながら、音程、リズム及びブレスを合わせると、口輪筋、表情筋、舌筋、腹筋及び腰筋などを楽しく、実践的に鍛える事ができる。
【0050】
なお、歌をステージや大会で歌う場合には、上記の要領で日常のトレーニングで仕上げた感覚とパフォーマンス力を本番直前にブラッシュアップするため、或いは歌唱前のウォーミングアップとして、本発明に係る器具を使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
(1)口唇支持部
(2)重心バランス円柱部
(3)略円錐状の負荷加重部
(4)呼気道
(5)歯列に沿って構成された略半楕円状の成型部
(6)加重調整または親指支持用の凹部