(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010141
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルス第VIII因子ベクター、関連ウイルス粒子、及びそれらを含む治療的製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20220106BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220106BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220106BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20220106BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220106BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220106BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220106BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220106BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220106BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220106BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220106BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K9/08 ZNA
A61K9/10
A61K31/573
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K48/00
A61P7/04
C12N15/864 100Z
C12N15/12
C12N7/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021181755
(22)【出願日】2021-11-08
(62)【分割の表示】P 2018515603の分割
【原出願日】2016-09-23
(31)【優先権主張番号】62/323,182
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/232,242
(32)【優先日】2015-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/365,544
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】506136483
【氏名又は名称】バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート バンティング
(72)【発明者】
【氏名】ピーター キャメロン コロシ
(72)【発明者】
【氏名】エルノ パンゴール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB13
4C076CC14
4C076DD23D
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076EE23F
4C076FF13
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF61
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA66
4C084ZA53
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086DA10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA10
4C087BC83
4C087MA05
4C087MA16
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA53
(57)【要約】
【課題】アデノ随伴ウイルス第VIII因子ベクター、関連ウイルス粒子、及びそれらを含む治療的製剤の提供。
【解決手段】本発明は、高い発現活性を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)第VIII因子(FVIII)ベクター及び完全長または切断型の機能性FVIIIタンパク質を発現するAAV FVIIIベクターを含む、AAV FVIIIをコード/発現するベクター及びウイルスを提供する。本発明は、本明細書に記載されるAAV FVIIIベクターを作製する方法、かかるベクターを含むか、またはそれを発現する組換えAAV FVIIIウイルス粒子、それらを含む関連薬学的製剤、及びその治療的使用にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/232,242号、2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,182号、及び2016年7月22に出願された米国仮特許出願第62/365,544号の優先権利益を主張し、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高い発現活性を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)第VIII因子(FVIII)ベクター及び完全長または切断型の機能性FVIIIタンパク質を発現するAAV FVIIIベクターを含む、AAV FVIIIベクターに関する。本発明は、本明細書に記載されるAAV FVIIIベクターを作製する方法、かかるベクターを含むか、またはそれを発現する組換えAAV FVIIIウイルス粒子、それらを含む関連薬学的製剤、及びその治療的使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト及びいくつかの他の霊長類種に感染する、小型の複製欠損の無エンベロープの動物ウイルスである。AAVのいくつかの特徴により、このウイルスは遺伝子治療による治療用タンパク質の送達のための魅力的なビヒクルとなっており、例えば、AAVが、ヒト疾患を引き起こすことが知られておらず、軽度の免疫応答を誘導すること、ならびにAAVベクターが、宿主細胞ゲノム内への組込みなしに分裂細胞及び静止細胞の両方に感染可能であることが挙げられる。AAVを用いる遺伝子治療ベクターは、いくつかの臨床試験で、例えば、血友病Bの治療のためのヒト第IX因子(FIX)の肝臓への送達への使用が成功している(Nathwani et al.,New Engl.J.Med.365:2357-2365,2011)。
【0004】
しかしながら、AAV遺伝子治療ベクターにはいくつかの欠点がある。具体的には、AAVベクターのクローニング容量が、当該ウイルスのDNAパッケージング容量の影響により、限定されている。野生型AAVの一本鎖DNAゲノムは約4.7キロ塩基(kb)である。実際には、最大約5.0kbのAAVゲノムは、AAVウイルス粒子の中に完全にパッケージングされている(すなわち、完全長である)と思われる。AAVベクター内の核酸ゲノムは約145塩基のAAV逆方向末端反復(ITR)を2つ有していなければならないという要件により、AAVベクターのDNAパッケージング容量は、最大約4.4kbのタンパク質コード配列がカプシド形成され得る。
【0005】
このサイズ制限により、巨大な治療用遺伝子、すなわち、約4.4kb長よりも長い遺伝子は、一般に、AAVベクターでの使用に適していない。そのような治療用遺伝子の1つは、第VIII因子(FVIII)遺伝子であり、この遺伝子は、N末端からC末端へ、19アミノ酸のシグナルペプチド、及び3つの巨大ドメイン(すなわち、重鎖またはAドメイン、中央またはBドメイン、及び軽鎖またはCドメイン)を含む、2332アミノ酸のポリペプチドをコードする約7.0kbのmRNAを有する。FVIIIにおけるAAVベクターのサイズ制限を克服するために使用された戦略の1つは、一方のAAVベクターが重鎖またはAドメインをコードし、もう一方のAAVベクターが軽鎖またはCドメインをコードする、2つのAAVベクターを使用することであった(例えば、Coutuらの米国特許第6,221,349号、同第6,200,560号、及び同第7,351,577号を参照のこと)。このサイズ制限を回避する別の戦略は、タンパク質の中央部分またはBドメインが欠失しており、SQ配列として知られている14アミノ酸リンカーで置換されているFVIIIをコードするAAVベクターを作製することであった(Ward et al.,Blood 117:798-807,2011、及びMcIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013)。
【0006】
5.0kbよりも長いAAVゲノムを有するAAVベクターが文献で報告されているが、これらの場合の多くで、コードされた遺伝子の5’末端または3’末端が切断されていると思われる(Hirsch et al.,Molec.Ther.18:6-8,2010及びGhosh et al.,Biotech.Genet.Engin.Rev.24:165-178,2007)。しかしながら、AAV感染細胞において、5’末端切断及び3’末端切断を有する核酸の間で、重複した相同組換えが生じる結果、当該巨大タンパク質をコードする「完全な」核酸が作製され、それにより、機能的な完全長遺伝子が再構築されることが示されている。
【0007】
血友病Aを治療するための遺伝子治療法において有用な、機能性第VIII因子タンパク質をコードする新規のAAVベクター、及びそれを含む組換えAAVウイルスが必要とされている。したがって、本発明は、組換えAAVウイルスが治療用タンパク質をコードする核酸全体をカプシド形成することにより(すなわち、完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクター)、ゲノムのサイズ超過という上記の問題を回避するような、または、切断されていてもされていなくてもよい機能的に活性な第VIII因子タンパク質を少なくとも生成するような、機能的に活性なFVIIIをコードするAAVベクターに関する。本発明はまた、高いFVIII発現活性を有するAAV FVIIIベクターの産生に関する。最後に、本発明は、本明細書に記載されるAAV FVIIIベクター、関連する薬学的製剤、及び血友病Aに罹患している対象における血友病Aの治療のための関連する投与の方法にうちのいずれかを含む、AAV第VIII因子ベクター及び/または組換え第VIII因子AAV粒子/ウイルスを含む薬学的製剤に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,221,349号明細書
【特許文献2】米国特許第6,200,560号明細書
【特許文献3】米国特許第7,351,577号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nathwani et al.,New Engl.J.Med.365:2357-2365,2011
【非特許文献2】Ward et al.,Blood 117:798-807,2011
【非特許文献3】McIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013
【非特許文献4】Hirsch et al.,Molec.Ther.18:6-8,2010
【非特許文献5】Ghosh et al.,Biotech.Genet.Engin.Rev.24:165-178,2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、機能的に活性なFVIIIをコードするAAVベクター(本明細書では「AAV FVIIIベクター」と称される)を提供する。本発明の組換えAAVベクターは、AAVウイルスの非自然発生する誘導体を含み、これに、機能性FVIIIタンパク質をコードする核酸配列が導入されている。機能的に活性なFVIIIをコードするゲノムは、好ましくは、7.0kb長以下、より好ましくは6.5kb長以下、さらにより好ましくは6.0kb長以下、さらにより好ましくは5.5kb長以下、さらにより好ましくは5.0kb長以下であり、増強されたプロモーター機能を有する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「機能的に活性なFVIII」は、培養細胞において発現される場合のインビトロにおいて、または細胞もしくは体組織において発現される場合のインビボにおいて、野生型FVIIIタンパク質の機能性を有するFVIIIタンパク質である。これには、例えば、機能的に血液凝固カスケードの一因となること、及び血友病Aに罹患している対象における血液が凝固するのにかかる時間を短縮することが含まれる。野生型FVIIIは、凝固カスケードを介した血液凝固に関与しており、活性化FIX(FIXa)の補助因子として働いて、カルシウムイオン及びリン脂質の存在下で、第X因子(FX)を活性化FX(FXa)に変換する錯体を形成する。したがって、機能的に活性なFVIIIは、FIXaとの錯体を形成し得、この錯体はFXをFXaに変換し得る。機能的に活性なFVIIIタンパク質の一例は、WO2015/038625(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される、FVIII SQタンパク質である。
【0012】
本明細書で使用される場合、「AAVベクター」とは、AAVウイルスゲノムに異種である転写調節エレメント、すなわち、1つ以上のプロモーター及び/またはエンハンサー、ならびに任意に、ポリアデニル化配列及び/または当該タンパク質コード配列のエクソン間に挿入された1つ以上のイントロンに動作可能に連結されたタンパク質コード配列(好ましくは機能性第VIIIコード配列)に隣接している、AAV5’逆方向末端反復(ITR)配列及びAAV3’ITRを有する、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸を指す。一本鎖AAVベクターは、AAVウイルス粒子のゲノム中に存在する核酸を指し、本明細書に開示される核酸配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかであり得る。このような一本鎖核酸のサイズは、塩基単位で提供される。二本鎖AAVベクターは、AAVベクター核酸を発現または遺伝子導入するために使用される、プラスミド、例えば、pUC19のDNA中、または二本鎖ウイルス、例えば、バキュロウイルスのゲノム中に存在する核酸を指す。このような二本鎖核酸のサイズは、塩基対(bp)単位で提供される。
【0013】
「逆方向末端反復(ITR)」という用語は、本明細書で使用される場合、DNA複製の開始点として、及びウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしてシスに機能する、AAVゲノムの5’末端及び3’末端に見出される、当該技術分野において認知されている領域を指す。AAV ITRは、AAV repコード領域と一緒になって、宿主細胞ゲノムからの除去及びレスキュー、ならびに宿主細胞ゲノムへの2つの隣接するITR間に挿入されたヌクレオチド配列の組込みを効率的に提供する。ある特定のAAV関連ITRの配列は、Yan et al.,J.Virol.79(1):364-379(2005)(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)により開示されている。本明細書での使用を見出すITR配列は、完全長野生型AAV ITRまたはその断片であり得るか、または複製起点としてシスに機能することができる完全長野生型AAV ITRの配列変化であり得る。本発明の組換えAAV FVIIIベクターにおいて有用なAAV ITRは、任意の既知のAAV血清型に由来し得、ある特定の好ましい実施形態において、AAV2またはAAV5血清型に由来し得る。
【0014】
「転写調節エレメント」は、遺伝子転写の調節に関与する遺伝子のヌクレオチド配列を指し、転写因子が結合することで、RNAポリメラーゼの結合を助け、発現を促進する、プロモーター、ならびに応答エレメント、アクチベーター、及びエンハンサー配列、ならびに抑制タンパク質が結合することで、RNAポリメラーゼの結合を阻止し、発現を妨げる、オペレーターまたはサイレンサー配列が含まれる。「肝臓特異的転写調節エレメント」という用語は、肝組織中に特異的に遺伝子発現を調節する調節エレメントを指す。肝臓特異的調節エレメントの例としては、マウスサイレチン(thyretin)プロモーター(mTTR)、内在性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、及びその活性断片、ヒトアルブミン最小プロモーター、ならびにマウスアルブミンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。Enh1と共に、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6等の、肝臓特異的転写因子結合部位に由来するエンハンサーも考慮される。
【0015】
一実施形態において、本発明のAAVベクターは、14アミノ酸SQ配列によって置換されたBドメインを有する機能的に活性なFVIIIタンパク質をコードする核酸を含む。SQ配列は、Ward et al.,Blood,117:798-807,2011、McIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013、WO2013/186563、及びWO2015/038625において開示されている。FVIIIコード領域配列は、コドンを最適化したFVIIIコード配列であり得る(例えば、2011年1月13日に公開されたWO2011/005968、2015年3月19日に公開されたWO2015/038625、及びMcIntosh et
al.,Blood 121:3335-3344,2013を参照されたく、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。好ましい一実施形態において、AAVベクターまたは組換えAAVウイルス粒子の機能的に活性なヒトFVIIIタンパク質をコードする核酸は、配列番号1のヌクレオチド403~4776からなる。この配列は、本明細書において「FVIII-SQ」と称される。
【0016】
第1の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図2Aに概略的に示されるProto1を含み、配列番号1に記載される核酸配列を含む。
【0017】
第2の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図2Bに概略的に示されるProto1Sを含み、配列番号2に記載される核酸配列を含む。
【0018】
第3の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図2Cに概略的に示されるProto2Sを含み、配列番号3に記載される核酸配列を含む。
【0019】
第4の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図2Dに概略的に示されるProto3Sを含み、配列番号4に記載される核酸配列を含む。
【0020】
別の実施形態において、本発明の組換えAAVベクターは、SQ配列を含むBドメイン全体、及び軽鎖またはCドメインのすぐN末端側に位置するa3ドメインを欠失している機能性FVIIIをコードする核酸を含む。FVIIIコード領域配列は、コドンを最適化した配列であり得る(例えば、2011年1月13日に公開されたWO2011/005968、2015年3月19日に公開されたWO2015/038625、及びMcIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013を参照のこと)。
【0021】
第1の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図3Aに概略的に示されるProto4を含み、配列番号5に記載される核酸配列を含む。
【0022】
第2の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図3Bに概略的に示されるProto5を含み、配列番号6に記載される核酸配列を含む。
【0023】
第3の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図3Cに概略的に示されるProto6を含み、配列番号7に記載される核酸配列を含む。
【0024】
第4の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、
図3Dに概略的に示されるProto7を含み、配列番号8に記載される核酸配列を含む。
【0025】
他の実施形態において、本発明の組換えAAVベクターは、AAV2 5’逆方向末端反復(ITR)(当該技術分野において公知であるように改変されてもされなくてもよい)、肝臓特異的転写調節領域、コドンを最適化した機能的に活性なFVIIIコード領域、任意に1つ以上のイントロン、ポリアデニル化配列、及びAAV2 3’ITR(当該技術分野において公知であるように改変されてもされなくてもよい)を含む核酸を含む。好ましい一実施形態において、肝臓特異的転写調節領域は、短縮型ApoEエンハンサー配列、186塩基ヒトアルファ抗トリプシン(hAAT)近位プロモーター(5’非翻訳領域(UTR)の42塩基を含む)、ならびに(i)34塩基ヒトApoE/C1エンハンサー、(ii)32塩基ヒトAATプロモーター遠位X領域、及び(iii)ヒトAAT近位プロモーターの遠位エレメントの80の追加塩基からなる群から選択される1つ以上のエンハンサーを含み、コドンを最適化した機能的に活性なFVIIIコード領域はFVIII SQ変異体をコードする。別の好ましい実施形態において、肝臓特異的転写調節領域は、α1-ミクログロブリンエンハンサー配列及び186塩基ヒトアルファ抗トリプシン(AAT)近位プロモーターを含む。
【0026】
第1の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号9に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATGを含む。
【0027】
第2の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号10に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATGbGHポリAを含む。
【0028】
第3の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号11に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATG短bGHポリA配列を含む。
【0029】
第4の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号12に記載される核酸配列を含むコンストラクト103ATGを含む。
【0030】
第5の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号13に記載される核酸配列を含むコンストラクト103ATG短bGHポリAを含む。
【0031】
第6の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号14に記載される核酸配列を含むコンストラクト105ATGbGHポリAを含む。
【0032】
第7の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号15に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172ATG FVIIIを含む。
【0033】
第8の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号16に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172ATG FVIII hAATを含む。
【0034】
第9の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号17に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIIIを含む。
【0035】
第10の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号18に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIIIhAATを含む。
【0036】
第11の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号19に記載される核酸配列を含むコンストラクト2×セルピンA hAATATG FVIIIを含む。
【0037】
第12の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号20に記載される核酸配列を含むコンストラクト2×セルピンA hAATATG FVIII 2×μ-グロブリンエンハンサーを含む。
【0038】
第13の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号21に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATG短ポリA2×μ-グロブリンエンハンサーを含む。
【0039】
第14の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号22に記載される核酸配列を含むコンストラクト第VIII因子-BMN001を含む。
【0040】
第15の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号23に記載される核酸配列を含むコンストラクト第VIII因子-BMN002配列を含む。
【0041】
第16の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号24に記載される核酸配列を含むコンストラクト99を含む。
【0042】
第17の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号25に記載される核酸配列を含むコンストラクト100を含む。
【0043】
第18の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号26に記載される核酸配列を含むコンストラクト100の逆配向を含む。
【0044】
第19の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号27に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATを含む。
【0045】
第20の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号28に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT 2×MGを含む。
【0046】
第21の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号29に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT 2×MG bGHポリAを含む。
【0047】
第22の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号30に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT 2×MG(逆)bGHポリAを含む。
【0048】
第23の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号31に記載される核酸配列を含むコンストラクト100bGHポリAを含む。
【0049】
第24の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号32に記載される核酸配列を含むコンストラクト100~400を含む。
【0050】
第25の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号33に記載される核酸配列を含むコンストラクト101を含む。
【0051】
第26の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号34に記載される核酸配列を含むコンストラクト102配列を含む。
【0052】
第27の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号35に記載される核酸配列を含むコンストラクト103を含む。
【0053】
第29の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号36に記載される核酸配列を含むコンストラクト103逆配向を含む。
【0054】
第30の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号37に記載される核酸配列を含むコンストラクト103ATを含む。
【0055】
第31の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号38に記載される核酸配列を含むコンストラクト103AT 2xMGを含む。
【0056】
第32の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号39に記載される核酸配列を含むコンストラクト103AT 2xMGbGHポリAを含む。
【0057】
第33の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号40に記載される核酸配列を含むコンストラクト103bGHポリAを含む。
【0058】
第34の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号41に記載される核酸配列を含むコンストラクト104を含む。
【0059】
第35の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号42に記載される核酸配列を含むコンストラクト105を含む。
【0060】
第36の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号43に記載される核酸配列を含むコンストラクト106を含む。
【0061】
第37の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号44に記載される核酸配列を含むコンストラクト106ATを含む。
【0062】
第38の態様では、本発明の組換えAAVベクターは、配列番号45に記載される核酸配列を含むp-100 ATGBを含む。
【0063】
さらに他の実施形態において、本発明は、機能性第VIII因子ポリペプチドをコードするベクターコンストラクトを対象とし、当該コンストラクトは、1つ以上の異なる配向(複数可)の、上述のコンストラクト及びこれらの組み合わせの個々の成分のうちの1つ以上を含む。本発明はまた、逆配向の上述のコンストラクトを対象とする。本発明はまた、本明細書に記載されるAAV FVIIIベクターを含む組換えAAVウイルス粒子、及び血友病Aの治療のためのそれらの使用を対象とする。
【0064】
一本鎖形態での本発明のAAVベクターは、約7.0kb長未満、または6.5kb長未満、または6.4kb長未満、または6.3kb長未満、または6.2kb長未満、または6.0kb長未満、または5.8kb長未満、または5.6kb長未満、または5.5kb長未満、または5.4kb長未満、または5.4kb長未満、または5.2kb長未満、または5.0kb長未満である。一本鎖形態での本発明のAAVベクターは、約5.0kb~約6.5kb長、または約4.8kb~約5.2k長、または4.8kb~5.3kb長、または約4.9kb~約5.5kb長、または約4.8kb~約6.0kb長、または約5.0kb~6.2kb長、または約5.1kb~約6.3kb長、または約5.2kb~約6.4kb長、または約5.5kb~約6.5kb長の範囲である。
【0065】
別の実施形態において、本発明は、本発明のAAVベクターのうちのいずれかを含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を生成する方法を提供する。本方法は、本発明のAAVベクター(様々なAAV cap及びrep遺伝子と関連する)のうちのいずれかで形質移入された細胞を培養するステップと、組換えAAV FVIIIウイルス粒子を形質移入された細胞の上清から回収するステップと、を含む。
【0066】
組換えAAV産生に有用な本発明の細胞は、High Five、Sf9、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf9、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、及びAo38等の昆虫細胞を含む、バキュロウイルスに感染しやすいあらゆる細胞型である。使用される好ましい哺乳動物細胞は、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT 1080、A549、Cos-7、ARPE-19、及びMRC-5であり得る。
【0067】
本発明はまた、本発明のAAVベクターのうちのいずれかを含む組換えウイルス粒子、または本発明の上述の方法によって生成される任意のウイルス粒子を提供する。
【0068】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」または「AAVウイルス」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質及び本明細書に記載されるカプシド形成されたポリヌクレオチドAAVベクターからなるウイルス粒子を指す。粒子は、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達されるトランス遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、典型的に、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と称される。したがって、このようなベクターは、AAVベクター粒子内に含有されることから、AAVベクター粒子の生成には、必然的にAAVベクターの生成が含まれる。
【0069】
本発明はまた、本発明のAAVベクターのうちのいずれかを含む細胞、及び本発明のこれらの細胞によって生成されるウイルス粒子を提供する。
【0070】
別の実施形態において、本発明は、血友病Aに罹患している患者を治療する方法を提供し、本方法は、この患者に、治療上有効量の本発明のAAVベクターのうちのいずれか、または本発明のウイルス粒子、または本発明の方法によって生成されるウイルス粒子を投与することを含む。
【0071】
別の実施形態において、本発明は、循環FVIIIタンパク質レベルの増加を必要とする対象における循環FVIIIタンパク質レベルを増加させる方法を提供し、本方法は、当該患者に、本発明のAAVベクター、または本発明のウイルス粒子、または本発明の方法によって生成されるウイルス粒子のうちのいずれかを投与することを含む。
【0072】
別の実施形態において、本発明は、FVIIIタンパク質の発現の誘導を必要とする対象におけるFVIIIタンパク質の発現を誘導するための方法を提供し、本方法は、当該患者に、本発明のAAVベクター、または本発明のウイルス粒子、または本発明の方法によって生成されるウイルス粒子のうちのいずれかを投与することを含む。
【0073】
別の実施形態において、本発明は、FVIIIタンパク質の発現の増加を必要とする対象におけるFVIIIタンパク質の発現を増加させるための方法を提供し、本方法は、当該患者に、本発明のAAVベクター、または本発明のウイルス粒子、または本発明の方法によって生成されるウイルス粒子のうちのいずれかを投与することを含む。
【0074】
本発明はまた、当該治療上有効量の当該組換えAAV FVIIIウイルスの投与後に、当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在を決定するステップをさらに含む、本発明の方法のうちのいずれかも提供する。さらに、本発明は、当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の存在の決定後に、当該対象に、有効量のコルチコステロイドを投与するステップをさらに含む、本発明の方法のうちのいずれかも提供する。
【0075】
さらなる一実施形態において、本発明は、血友病Aの治療用薬剤の調製のために、本発明のAAVベクターまたは本発明の組換えAAVウイルス粒子のうちのいずれかの使用を提供する。一態様では、この薬剤は、血友病Aを治療するのに有効な量でヒトFVIIIを発現する、ある量のAAVベクターまたは組換えAAV FVIIIウイルス粒子を含む。本発明はまた、薬剤の投与後に、対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在が決定される、本発明の使用のうちのいずれかも提供する。対象が血清中に抗AAVカプシド抗体を有することが決定された場合、血清中に抗AAVカプシド抗体を有する対象への投与のための薬剤の調製における有効量のコルチコステロイドの使用。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、血友病Aの治療用のAAVベクターまたは本発明の組換えAAVウイルス粒子のうちのいずれかを含む組成物を提供する。一態様では、本組成物は、血友病Aを治療するのに有効な量でヒトFVIIIを発現する、ある量のAAVベクターまたは組換えAAV FVIIIウイルス粒子を含む。加えて、本発明の組成物のうちのいずれかは、組成物の投与後に、血清中に抗AAVカプシド抗体を有することが決定された対象に、有効量のコルチコステロイドと共に投与される。
【0077】
別の実施形態において、本発明のAAVベクターは、血友病Aに罹患している患者を治療するために有用なAAVウイルス粒子を生成するために使用される。
【0078】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される組換えFVIIIをコードするAAVウイルス粒子を含む薬学的製剤を提供する。より具体的には、ある特定の態様では、本発明は、組換えAAV FVIIIをコードするウイルス、緩衝剤、等張剤、増量剤、及び界面活性剤を含む薬学的製剤を対象とする。特に好ましい実施形態において、本発明の薬学的製剤は、AAV5-FVIII-SQ、p-100 ATGB、もしくは他の本明細書に記載されるベクターのうちのいずれかを含み、及び/または65℃以下で保存中、少なくとも2週間安定している。本発明のさらに他の実施形態において、薬学的製剤は、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約1mg/ml~約20mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約5mg/ml~約40mg/mlの濃度のマンニトール、及び約0.1mg/ml~約4mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む。特に好ましい実施形態において、本発明の薬学的製剤は、約1.42mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約8.18mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約20mg/mlの濃度のマンニトール、及び約2mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む。本発明の薬学的製剤は、液体形態であり得、かつ約1E12vg/ml~約2E14vg/mlの濃度の、より好ましくは約2E13vg/mlの濃度のAAV FVIIIウイルス粒子を含み得る。一実施形態において、本発明の薬学的製剤は、血友病Aに罹患しているヒトに静脈内投与に有用である。
【0079】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象を治療するための方法も対象とし、本方法は、対象に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップを含み、このウイルスは、任意に、上述のように製剤化され得る。好ましい一実施形態において、血友病Aに罹患している対象は、ヒトである。一実施形態において、組換えAAV FVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。一実施形態において、投与ステップは、静脈内(IV)投与によって達成される。本発明のある特定の態様では、投与ステップは、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、投与ステップは、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、対象に投与される治療上有効量のAAV FVIIIウイルスは、最小の2E13vg/体重kg、時には、少なくとも6E13vg/体重kgである。ある特定の実施形態において、治療上有効量のAAV FVIIIウイルスの投与に加えて、対象は、AAV
FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するために、コルチコステロイドで予防的に、治療的に、またはその両方で治療される。一実施形態において、関連した肝毒性は、ベースライン(すなわち、FVIII AAVを事前に投与する)アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベルを治療後のALTレベルと比較することによって測定され、治療後のALTレベルの増加は、関連した肝毒性の証拠となる。予防的コルチコステロイド治療は、対象における肝毒性を予防する及び/または測定したALTレベルの増加を防ぐためのコルチコステロイドの投与を指す。治療的コルチコステロイド治療は、AVV FVIIIウイルスの投与によって引き起こされる肝毒性を軽減する及び/またはAAV FVIIIウイルスの投与によって引き起こされる対象の血流中の上昇したALT濃度を減少させるためのコルチコステロイドの投与を指す。ある特定の実施形態において、予防的または治療的コルチコステロイド治療は、対象への少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mg/日、またはそれ以上のコルチコステロイドの投与を含み得る。ある特定の実施形態において、対象の予防的または治療的コルチコステロイド治療は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上の連続期間にわたってなされ得る。
【0080】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象を治療するのに用いるための治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを含む組成物も対象とする。一実施形態において、AAV FVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。別の実施形態において、AAV FVIIIウイルスは、p-100 ATGBベクターを含む。本組成物は、任意に、上述のように製剤化され得る。ある特定の実施形態において、治療上有効量のAAV FVIIIウイルスを含む組成物は、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防する及び/または治療するのに用いるための予防的及び/または治療的コルチコステロイドを含む組成物と共に投与される。予防的または治療的コルチコステロイド治療剤を含む組成物は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mg/日、またはそれ以上のコルチコステロイドを含み得る。ある特定の実施形態において、予防的または治療的コルチコステロイドを含む組成物は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって投与され得る。
【0081】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象の治療のための薬剤の調製における治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスの使用も対象とする。ある特定の実施形態において、AAVFVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQ、またはp-100
ATGBベクターを含むウイルスである。この薬剤は、任意に、上述のように製剤化され得る。好ましい一実施形態において、血友病Aに罹患している対象は、ヒトである。一実施形態において、薬剤は、静脈内(IV)投与によって投与される。本発明の一態様では、薬剤の投与は、対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質、好ましくは、投与の16週間以上後に対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、薬剤はまた、AAV FVIIIウイルスの投与に関連したあらゆる肝毒性の予防及び/または治療のための予防的及び/または治療的コルチコステロイドも含む。予防的または治療的コルチコステロイド治療剤からなる薬剤は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mg/日、またはそれ以上のコルチコステロイドを含み得る。ある特定の実施形態において、予防的または治療的コルチコステロイドを含む薬剤は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって投与され得る。
【0082】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象における出血症状発現中の出血時間を減少させるための方法も対象とし、本方法は、対象に、本明細書に記載される治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップを含み、このウイルスは、任意に、上述のように製剤化され得る。好ましい一実施形態において、血友病Aに罹患している対象は、ヒトである。一実施形態において、投与ステップは、静脈内(IV)投与によって達成される。ある特定の実施形態において、投与ステップは、出血症状発現の少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50週間、またはそれ以上前に行われる。本発明の一態様では、投与ステップは、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、投与ステップは、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、治療上有効量のAAV FVIIIウイルスの投与に加えて、対象は、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するために、コルチコステロイドで予防的に、治療的に、またはその両方で治療される。
【0083】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象における出血症状発現の出血時間を減少させるため、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを含む組成物も対象とする。一実施形態において、AAVFVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。本組成物は、任意に、上述のように製剤化され得る。好ましい一実施形態において、血友病Aに罹患している対象は、ヒトである。組成物は、出血症状発現前に投与され得る。一実施形態において、組成物は、出血症状発現前に静脈内(IV)投与によって投与される。本発明の一態様では、投与ステップは、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、投与ステップは、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、出血時間を減少するのに用いるための治療上有効量のAAV FVIIIウイルスを含む組成物は、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するのに用いるための予防的及び/または治療的コルチコステロイドを含む組成物と共に投与される。
【0084】
本発明はまた、出血時間を減少させる方法のうちのいずれかも提供し、本方法は、当該治療上有効量の当該組換えAAV FVIIIウイルスの投与後に、当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在を決定するステップをさらに含む。さらに、本発明は、出血時間を減少させる方法のうちのいずれかを提供し、本方法は、当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の存在の決定後に、当該対象に、有効量のコルチコステロイドを投与するステップをさらに含む。
【0085】
本発明はまたは、血友病Aに罹患している対象における出血症状発現の出血時間を減少させるための薬剤の調製における治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスの使用も対象とする。一実施形態において、AAVFVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。この薬剤は、任意に、上述のように製剤化され得る。好ましい一実施形態において、血友病Aに罹患している対象は、ヒトである。薬剤は、出血症状発現前に投与され得る。一実施形態において、薬剤は、出血症状発現前に静脈内(IV)投与によって投与される。本発明の一態様では、薬剤の投与は、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは、対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、薬剤の投与は、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、出血時間を減少するために治療上有効量のAAV FVIIIウイルスを含む薬剤はまた、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するための予防的及び/または治療的コルチコステロイドも含む。さらに、出血時間を減少するのに用いるために本発明の組成物のうちのいずれかが、組成物の投与後に、血清中に抗AAVカプシド抗体を有することが決定された対象に、有効量のコルチコステロイドと共に投与される。
【0086】
本発明はまた、治療を必要とする対象における機能性FVIIIタンパク質の発現を誘導するための方法も対象とし、本方法は、対象に、本明細書に記載される組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップを含み、このウイルスは、任意に、上述のように製剤化され得、かかる投与は、対象の血流中での、機能性FVIIIタンパク質の発現の増加または機能性FVIIIタンパク質の濃度の増加をもたらす。好ましい一実施形態において、必要とする対象は、ヒトである。一実施形態において、投与ステップは、静脈内(IV)投与によって達成される。本発明の一態様では、投与ステップは、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、投与ステップは、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、AAV FVIIIウイルスの投与に加えて、対象は、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するために、コルチコステロイドで予防的に、治療的に、またはその両方で治療される。さらに、出血時間を減少させるための薬剤の投与後に本発明の使用のうちのいずれかにおいて、対象の血清中での抗AAVカプシド抗体の不在または存在が決定される。対象が血清中に抗AAVカプシド抗体を有することが決定された場合、血清中に抗AAVカプシド抗体を有する対象への投与のための薬剤の調製における有効量のコルチコステロイドの使用が企図される。
【0087】
本発明はまた、FVIIIタンパク質の発現の増加を必要とする対象におけるFVIIIタンパク質の発現を増加させるための方法も対象とし、本方法は、対象に、本明細書に記載される組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップを含み、このウイルスは、任意に、上述のように製剤化され得、かかる投与は、対象の血流中での、機能性FVIIIタンパク質の発現の増加または機能性FVIIIタンパク質の濃度の増加をもたらす。好ましい一実施形態において、必要とする対象は、ヒトである。一実施形態において、投与ステップは、静脈内(IV)投与によって達成される。本発明の一態様では、投与ステップは、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、投与ステップは、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、AAV FVIIIウイルスの投与に加えて、対象は、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するために、コルチコステロイドで予防的に、治療的に、またはその両方で治療される。
【0088】
本発明はまた、FVIIIタンパク質の発現の増加または誘発を必要とする対象におけるFVIIIタンパク質の発現を増加または誘発させるのに用いるための治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを含む組成物も対象とする。一実施形態において、AAVFVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。本組成物は、任意に、上述のように製剤化され得る。好ましい一実施形態において、必要とする対象は、血友病Aに罹患しているヒトである。組成物は、出血症状発現前に投与され得る。一実施形態において、組成物は、出血症状発現前に静脈内(IV)投与によって投与される。本発明の一態様では、投与ステップは、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、投与ステップは、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、FVIIIタンパク質の発現を増加または誘導させるのに用いるための治療上有効量のAAV FVIIIウイルスを含む組成物は、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するのに用いるための予防的及び/または治療的コルチコステロイドを含む組成物と共に投与される。
【0089】
本発明はまた、FVIIIタンパク質の発現の増加または誘発を必要とする対象におけるFVIIIタンパク質の発現を増加または誘発させるのに用いるための薬剤の調製における治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスの使用も対象とする。一実施形態において、必要とする対象は、血友病Aに罹患しているヒトである。一実施形態において、AAVFVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。この薬剤は、任意に、上述のように製剤化され得る。薬剤は、出血症状発現前に投与され得る。一実施形態において、薬剤は、出血症状発現前に静脈内(IV)投与によって投与される。本発明の一態様では、薬剤の投与は、対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質、好ましくは、対象の血流中に少なくとも約5IU/dlの第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、薬剤の投与は、投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20週間、またはそれ以上後に対象の血流中に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の第VIII因子タンパク質の発現をもたらす。ある特定の実施形態において、FVIIIタンパク質の発現を増加または誘導させるための治療上有効量のAAV FVIIIウイルスを含む薬剤はまた、上述のように、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するための予防的及び/または治療的コルチコステロイドも含む。
【0090】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象を治療する方法も対象とし、本方法は、(i)当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在を決定するステップと、(ii)当該対象に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップと、を含む。
【0091】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象の治療のための薬剤の調製における治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスの使用も対象とし、抗AAVカプシド抗体は、対象の血清に不在である。
【0092】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象を治療するのに用いるための治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを含む組成物も対象とし、抗AAVカプシド抗体は、対象の血清に不在である。
【0093】
本発明はまた、血友病Aに罹患している対象を治療する方法も対象とし、本方法は、(i)当該対象に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップと、(ii)当該治療上有効量の当該組換えAAV FVIIIウイルスの投与後に、当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在を決定するステップと、を含む。一実施形態において、本方法は、当該対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の存在の決定後に、当該対象に、有効量のコルチコステロイドを投与するステップをさらに含む。
【0094】
本発明は、血友病Aの治療のための薬剤の調製における治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスの使用を対象とし、薬剤の投与後に、対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在が決定される。対象が血清中に抗AAVカプシド抗体を有することが決定された場合、血清中に抗AAVカプシド抗体を有する対象への投与のための薬剤の調製における有効量のコルチコステロイドの使用。本発明はまた、血友病Aの治療のために有効量の組換えAAV FVIIIを含む組成物も対象とし、この組成物は、組成物の投与後に、血清中に抗AAVカプシド抗体を有することが決定された対象に、有効量のコルチコステロイドと共に投与される。
【0095】
本発明の他の実施形態は、本特許明細書を読む際に当業者には明らかであろう。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
組換えAAV FVIIIウイルス、緩衝剤、等張剤、増量剤、及び界面活性剤を含む、薬学的製剤。
(項目2)
前記組換えAAV FVIIIウイルスが、AAV5-FVIII-SQである、項目1に記載の薬学的製剤。
(項目3)
65℃以下で保存中、少なくとも2週間安定している、項目1または2に記載の薬学的製剤。
(項目4)
約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約1mg/ml~約20mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約5mg/ml~約40mg/mlの濃度のマンニトール、及び約0.1mg/ml~約4mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
(項目5)
約1.42mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約8.18mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約20mg/mlの濃度のマンニトール、及び約2mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
(項目6)
液体である、項目1~5のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
(項目7)
前記AAV FVIIIウイルスを約1E12vg/ml~約2E14vg/mlの濃度で含む、項目1~6のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
(項目8)
前記AAV FVIIIウイルスを約2E13vg/mlの濃度で含む、項目7に記載の薬学的製剤。
(項目9)
血友病Aに罹患している患者へのIV投与に有用である、項目1~8のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
(項目10)
血友病Aに罹患している対象を治療する方法であって、前記対象に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、方法。
(項目11)
前記組換えAAV FVIIIウイルスが、AAV5-FVIII-SQである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記投与ステップが、静脈内投与によるものである、項目10または11に記載の方法。
(項目13)
前記投与ステップが、前記対象に、約1E12vg/kg~約1E14vg/kgの組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、項目10~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記投与ステップが、前記対象に、約6E12vg/kg~約6E13vg/kgの組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、項目10~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記対象における少なくとも約5IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質の発現をもたらす、項目10~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記対象が、前記投与の3週間以上後に少なくとも約5IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質を発現する、項目10~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記対象における少なくとも約1IU/dlの機能性FVIII活性の増加をもたらす、項目10~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記投与ステップが、項目1~9のいずれか一項に記載の薬学的製剤を投与することを含む、項目10~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記薬学的製剤が、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約1mg/ml~約20mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約5mg/ml~約40mg/mlの濃度のマンニトール、及び約0.1mg/ml~約4mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記薬学的製剤が、約1.42mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約8.18mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約20mg/mlの濃度のマンニトール、及び約2mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記対象が、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療される、項目10~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記対象が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療される、項目10~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記対象が、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療される、項目10~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記対象が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療される、項目10~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記治療上有効量の前記組換えAAV FVIIIウイルスの投与後に、前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在を決定するステップをさらに含む、項目10~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の存在の決定後に、前記対象に、有効量のコルチコステロイドを投与するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
血友病Aに罹患している対象における出血症状発現の出血時間を短縮する方法であって、前記対象に、前記出血症状発現前に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、方法。
(項目28)
前記投与ステップが、前記出血症状発現の少なくとも3週間前に起こる、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記組換えAAV FVIIIウイルスが、AAV5-FVIII-SQである、項目27または28に記載の方法。
(項目30)
前記投与ステップが、静脈内投与によるものである、項目27~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記投与ステップが、前記対象に、約1E12vg/kg~約1E14vg/kgの組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、項目27~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記投与ステップが、前記対象に、約6E12vg/kg~約6E13vg/kgの組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、項目27~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記対象における少なくとも約5IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質の発現をもたらす、項目27~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記対象が、前記投与の3週間以上後に少なくとも約5IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質を発現する、項目27~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記対象における少なくとも約1IU/dlの機能性FVIII活性の増加をもたらす、項目27~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記投与ステップが、項目1~9のいずれか一項に記載の薬学的製剤を投与することを含む、項目27~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記薬学的製剤が、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約1mg/ml~約20mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約5mg/ml~約40mg/mlの濃度のマンニトール、及び約0.1mg/ml~約4mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記薬学的製剤が、約1.42mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約8.18mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約20mg/mlの濃度のマンニトール、及び約2mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記対象が、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療される、項目27~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記対象が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療される、項目27~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記対象が、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療される、項目27~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記対象が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療される、項目41に記載の方法。
(項目43)
第VIII因子タンパク質発現の増加を必要とする対象における第VIII因子タンパク質発現を増加させる方法であって、前記対象に、組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、方法。
(項目44)
前記組換えAAV FVIIIウイルスが、AAV5-FVIII-SQである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記投与ステップが、静脈内投与によるものである、項目43または44に記載の方法。
(項目46)
前記投与ステップが、前記対象に、約1E12vg/kg~約1E14vg/kgの組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、項目43~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記投与ステップが、前記対象に、約6E12vg/kg~約6E13vg/kgの組換えAAV FVIIIウイルスを投与することを含む、項目43~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記対象における少なくとも約5IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質の発現をもたらす、項目43~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記対象が、前記投与の3週間以上後に少なくとも約5IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質を発現する、項目43~48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記対象における少なくとも約1IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質の発現をもたらす、項目43~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記対象が、前記投与の3週間以上後に少なくとも約1IU/dlの機能性第VIII因子タンパク質を発現する、項目43~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記対象における少なくとも約1IU/dlの機能性FVIII活性の増加をもたらす、項目43~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記投与ステップが、項目1~9のいずれか一項に記載の薬学的製剤を投与することを含む、項目43~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記薬学的製剤が、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約0.1mg/ml~約3mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約1mg/ml~約20mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約5mg/ml~約40mg/mlの濃度のマンニトール、及び約0.1mg/ml~約4mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記薬学的製剤が、約1.42mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの濃度の一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約8.18mg/mlの濃度の塩化ナトリウム、約20mg/mlの濃度のマンニトール、及び約2mg/mlの濃度のポロキサマー188を含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記対象が、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療される、項目43~55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記コルチコステロイド治療が、予防的に行われる、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記コルチコステロイド治療が、治療的に行われる、項目56または57に記載の方法。
(項目59)
前記対象が、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週間、またはそれ以上の連続期間にわたって5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療される、項目43~58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記治療上有効量の前記組換えAAV FVIIIウイルスの投与後に、前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在を決定するステップをさらに含む、項目43~59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の存在の決定後に、前記対象に、有効量のコルチコステロイドを投与するステップをさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
血友病Aに罹患している対象を治療する方法であって、(i)前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在を決定するステップと、(ii)前記対象に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップと、を含む、方法。
(項目63)
血友病Aに罹患している対象を治療する方法であって、(i)前記対象に、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスを投与するステップと、(ii)前記治療上有効量の前記組換えAAV FVIIIウイルスの投与後に、前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の不在または存在を決定するステップと、を含む、方法。
(項目64)
前記対象の血清中の抗AAVカプシド抗体の存在の決定後に、前記対象に、有効量のコルチコステロイドを投与するステップをさらに含む、項目63に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】例示的なFVIIIをコードする組換えAAVベクターの概略図を提供する。左から右に、ベクターは、AAV2 5’ITR配列、野生型AAV2ウイルス配列、34塩基ヒトApoE/C1エンハンサー配列、32塩基ヒトAATプロモーター遠位X領域配列、42塩基の5’UTR配列を含む186塩基ヒトAATプロモーター配列、コドンを最適化したヒトFVIII SQ配列、49塩基合成Proudfootポリアデニル化配列、野生型AAV2ウイルス配列、及びAAV2 3’ITR配列(2011年1月13日に公開されたWO2011/005968(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びMcIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013を参照のこと)を含む。このベクターは、5081塩基長である。
【
図2A】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto1、(B)Proto1S、(C)Proto2S、及び(D)Proto3S。
【
図2B】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto1、(B)Proto1S、(C)Proto2S、及び(D)Proto3S。
【
図2C】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto1、(B)Proto1S、(C)Proto2S、及び(D)Proto3S。
【
図2D】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto1、(B)Proto1S、(C)Proto2S、及び(D)Proto3S。
【
図3A】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto4、(B)Proto5、(C)Proto6、及び(D)Proto7。
【
図3B】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto4、(B)Proto5、(C)Proto6、及び(D)Proto7。
【
図3C】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto4、(B)Proto5、(C)Proto6、及び(D)Proto7。
【
図3D】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)Proto4、(B)Proto5、(C)Proto6、及び(D)Proto7。
【
図4A】本発明のある特定の組換えAAV FVIIIベクターの概略図を提供する。(A)コンストラクト100ATG、(B)コンストラクト100ATGbGHポリA、(C)コンストラクト100ATG短bGHポリA、(D)コンストラクト103ATG、(E)コンストラクト103ATG短bGHポリA、(F)コンストラクト105ATG bGHポリA、(G)コンストラクトDC172ATG FVIII、(H)コンストラクトDC172ATG FVIII hAAT、(I)コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII、(J)コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIIIhAAT、(K)コンストラクト2×セルピンA hAATATG FVIII、(L)コンストラクト2×セルピンA hAATATG FVIII 2×μ-グロブリンエンハンサー、(M)コンストラクト100ATG短bGHポリA 2×μ-グロブリンエンハンサー、(N)コンストラクト第VIII因子BMN001、(O)コンストラクト第VIII因子BMN002、(P)コンストラクト99、(Q)コンストラクト100、(R)コンストラクト100の逆配向、(S)コンストラクト100AT,(T)コンストラクト100AT 2×MG,(U)コンストラクト100AT 2×MG bGHポリA、(V)コンストラクト100AT 2×MG(逆)bGHポリA、(W)コンストラクト100bGHポリA、(X)コンストラクト100-400、(Y)コンストラクト101、(Z)コンストラクト102、(AA)コンストラクト103、(BB)コンストラクト103逆配向、(CC)コンストラクト103AT、(DD)コンストラクト103AT 2×MG、(EE)コンストラクト103AT 2×MGbGHポリA、(FF)コンストラクト103bGHポリA、(GG)コンストラクト104、(HH)コンストラクト105、(II)コンストラクト106、及び(JJ)コンストラクト106AT。
【
図5】Rag2マウスにおける組換えAAV FVIII Protoコンストラクトの評価の結果を提供し、Protoウイルスコンストラクトが、
図1に示されるベクターと同様に、FVIIIを形質導入することを示し、y軸は、ELISA分析によって決定されるFVIIIタンパク質(ng/ml)を表す。
【
図6】本発明の様々な組換えAAV FVIIIコンストラクトが、マウス尾静脈流体力学的注入アッセイにおいて測定されるように、FVIIIタンパク質のインビボ発現を誘導することを示す。
【
図7】本発明の様々な組換えAAV FVIIIコンストラクトが、マウス尾静脈流体力学的注入アッセイにおいて測定されるように、FVIIIタンパク質のインビボ発現を誘導することを示す。
【
図8】本発明の様々な組換えAAV FVIIIコンストラクトが、マウス尾静脈流体力学的注入アッセイにおいて測定されるように、FVIIIタンパク質のインビボ発現を誘導することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本発明は、機能的に活性なFVIIIをコードするAAVベクター、例えば、完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクター、または高い発現活性を有するAAV FVIIIベクターを提供する。本発明の組換えAAV FVIIIベクターは、改善された導入遺伝子の発現、ならびに改善されたAAVウイルス産生収率及び簡易化した精製を有する。FVIIIタンパク質コード領域への1つ以上のイントロンの導入が、発現を増強する。エンハンサーの数及び位置の再構成は、発現を増強する。
【0098】
例示的なAAV FVIIIベクター
2011年1月13日に公開されたWO2011/005968(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びMcIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013に記載される、
図1に示される例示的な組換えAAV
FVIIIベクターは、大容量、すなわち、5.0kb超のAAV FVIIIベクターである。
図1に示されるように、このAAV FVIIIベクターは、左から右に、AAV血清型2(AAV2)5’ITR、野生型AAV2由来ウイルス配列、34塩基ヒトアポリポタンパク質E(ApoE)/C1エンハンサー要素、32塩基ヒトアルファ抗トリプシン(AAT)プロモーター遠位X領域、5’非翻訳領域(UTR)配列の42塩基を含む186塩基ヒトAAT(hAAT)プロモーター、FVIII Bドメインが14アミノ酸のSQ配列で置換されているコドンを最適化したヒトFVIII配列、49塩基合成Proudfootポリアデニル化配列、野生型AAV2由来ウイルス配列、及びAAV2 3’ITRを含む。このベクターは、5081塩基長であり、WO2011/005968に記載されるように、インビトロ及びインビボの両方で機能的に活性なFVIIIを発現する。
【0099】
Proto1、Proto1S、Proto2S、及びProto3Sベクター
大容量AAVベクターと関連する問題を回避するため、及び/またはAAVベクターからFVIIIトランス遺伝子の発現を増加させるために、本発明は、機能性FVIIIタンパク質をコードする、完全にパッケージングされた、より小型の、すなわち5.0kb未満のAAVベクターを提供する。組換えAAV Proto1コンストラクトの4970bpヌクレオチド配列は、配列番号1に提供される。
【0100】
組換えAAV FVIIIベクターProto1を作製するために、機能的に活性なFVIIIの産生には不必要であると決定された配列を、
図1に示されるベクターから除去した。実施例1に示されるように、野生型AAV2ウイルス配列3’~AAV2 5’ITRの53塩基、AAV2ウイルス配列5’~AAV2 3’ITRの46塩基、及びコドンを最適化したFVIIIタンパク質コード領域に隣接する12塩基を含む、111塩基の外来性DNAを除去した。
図1に示されるベクターのコドンを最適化したFVIII
SQ配列はまた、「FVIII-SQ」と称される、新規のコドンを最適化したFVIII SQ配列によって置換された。次いで、FVIII-SQコード配列(配列番号1の塩基403~4776)を、Proto1ベクターに導入した。得られたProto1ベクターは、4970塩基長であり、左から右に、改変AAV血清型2(AAV2)5’ITR、34塩基ヒトアポリポタンパク質E(ApoE)/C1エンハンサー要素、32塩基ヒトアルファ抗トリプシン(AAT)プロモーター遠位X領域、5’非翻訳領域(UTR)配列の42塩基を含む186塩基hAATプロモーター、FVIII Bドメインが14アミノ酸のSQ配列で置換されている新規のコドンを最適化したヒトFVIII配列、49塩基合成Proudfootポリアデニル化配列、及び改変AAV2 3’ITRを含む。設計されるとき、Proto1ベクターが、インビトロまたはインビボのいずれかで機能性FVIIIポリペプチドを発現することが可能であり得るかどうかは不明であった。
【0101】
AAVベクターProto1Sを作製するために、AAV2 5’ITRの3’末端の10塩基、及びAAV2 3’ITRの5’末端の10塩基を、Proto1ベクターから除去した。得られたProto1Sベクターは、4950塩基長である。Proto1Sの配列のヌクレオチド配列は、配列番号2に記載されている。
【0102】
AAVベクターProto2Sを作製するために、合成100塩基イントロンは、Proto1Sベクター中のFVIII-SQ配列のエクソン1と2の間に挿入した。34塩基ApoE/C1エンハンサー及び32塩基ヒトAATプロモーター遠位X領域を、ヒトAATプロモーターの上流から除去し、合成イントロン内に逆配向(これらの要素がヒトAATプロモーターの上流に位置するときの配向と比較して)に挿入した。得られるProto2Sベクターは、4983塩基長である。Proto2Sの配列のヌクレオチド配列は、配列番号3に記載されている。
【0103】
AAVベクターProto3Sを作製するために、ヒトAATプロモーター遠位X領域を、Proto2Sベクターから除去し、逆配向の34塩基ApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。得られるProto3Sベクターは、4984塩基長である。Proto3Sの配列のヌクレオチド配列は、配列番号4に記載されている。
【0104】
Proto4、ProtoS、Proto6、及びProto7ベクター
AAV FVIIIベクターのサイズをさらに減少させるため、及び/またはAAVベクターからのFVIIIトランス遺伝子の発現を増加させるために、本発明はまた、完全にパッケージングされた、より小型の、すなわち5.0kb未満のBドメイン及びa3ドメイン欠失FVIIIをコードするAAVベクターを提供する。
【0105】
AAVベクターProto4を作製するために、14アミノ酸のSQ配列及びCドメインに隣接して位置するa3ドメインを、Proto1ベクターから除去した。欠失したFVIII配列の合計量は、55アミノ酸または165塩基である。得られるProto4ベクターは、4805塩基長である。Proto4の配列のヌクレオチド配列は、配列番号5に記載されている。
【0106】
AAVベクターProto5を作製するために、129塩基の切断型FVIIIイントロンを、Proto4ベクター中のコドンを最適化したFVIII配列のエクソン1と2の間に挿入した。得られるProto5ベクターは、4934塩基長である。Proto5の配列のヌクレオチド配列は、配列番号6に記載されている。
【0107】
AAV Proto6ベクターを作製するために、34塩基のFVIIIイントロンを、Proto5ベクター中の順配向の34塩基ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。得られるProto6ベクターは、4934塩基長である。Proto6の配列のヌクレオチド配列は、配列番号7に記載されている。
【0108】
AAV Proto7ベクターを作製するために、34塩基のFVIIIイントロンを、Proto5ベクター中の順配向の34塩基ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。得られるProto7ベクターは、4934塩基長である。Proto7の配列のヌクレオチド配列は、配列番号8に記載されている。
【0109】
改善されたプロモーター/エンハンサー配列を有するさらなる組換えAAV FVIIIベクター
Bドメイン及びa3ドメイン欠失FVIIIの発現を増加させるために、強力なプロモーターを有する大容量AAVベクターを作製し、これらのコンストラクトを、改変されたエンハンサー配列及び/またはプロモーター配列を伴って作製した。いくつかの実施形態において、AAV FVIIIベクターは、切断型の機能性FVIIIを発現する。これらのコンストラクトは、ApoEHCRもしくはその断片、μ-グロブリンエンハンサーもしくはその断片、ヒトアルファ1抗トリプシンプロモーター(hAAT)もしくはその断片、セルピンAエンハンサーもしくはその断片、LP1プロモーターエンハンサーもしくはその断片、またはマクログロブリンエンハンサーもしくその断片等の1つ以上のプロモーター及びエンハンサー配列を含んだ。これらのコンストラクトは、bGHポリA配列または合成ウサギβ-グロビンポリA配列等のポリアデニル化配列を含む。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、hAATイントロンまたはヒトβ-グロビンイントロン等のイントロンまたはイントロンの断片を含む。いくつかの実施形態において、組換えAAV FVIIIベクターは、新規のコドンを最適化したFVIII-SQコード配列を含む。
【0110】
コンストラクト100ATG(
図4A)は、5511塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号9に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~502は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基727~910は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基923~5296は、FVIII-SQであり、塩基5305~5352は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5367~5511は、3’AAV2 ITRである。
【0111】
コンストラクト100ATGbGHポリA(
図4B)は、5688塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号10に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~502は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基727~910は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基923~5296は、FVIII-SQであり、塩基5305~5529は、bGHポリAであり、塩基5544~5688は、3’AAV2 ITRである。
【0112】
コンストラクト100ATG短bGHポリA(
図4C)は、5613塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号11に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~502は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基727~910は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基923~5296は、FVIII-SQであり、塩基5305~5454は、短bGHポリAであり、塩基5469~5613は、3’AAV2 ITRである。
【0113】
コンストラクト103ATG(
図4D)は、5362塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号12に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は、4コピー(4×)の44bp ApoE反復であり、塩基360~577は、hAATプロモーターであり、塩基578~761は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基774~5147は、FVIII-SQであり、塩基5156~5203は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5218~5362は、3’AAV2 ITRである。
【0114】
コンストラクト103ATG短bGHポリA(
図4E)は、5464塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号13に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は、4コピー(4×)の44bpApoE反復であり、塩基360~577は、hAATプロモーターであり、塩基578~761は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基774~5147は、FVIII-SQであり、塩基5156~5305は、bGH短ポリAであり、塩基5320~5464は、3’AAV2 ITRである。
【0115】
コンストラクト105ATGbGHポリA(
図4F)は、6354塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号14に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基173~512は、2コピー(2x)の170bp ミクログロブリンエンハンサーであり、塩基519~736は、hAATプロモーターであり、塩基737~920は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基933~5306は、FVIII-SQであり、塩基5315~5539は、bGHポリAであり、塩基5546~6195は、2コピー(2x)の325bp ApoEHCRであり、塩基6210~6354は、3’AAV2 ITRである。
【0116】
コンストラクトDC172ATG FVIII(
図4G)は、6308塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号15に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~449は、2コピー(2x)の145bpマクログロブリンエンハンサーであり、塩基450~1347は、898bp hAATプロモーターであり、塩基1348~1531は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基1544~5917は、FVIII-SQであり、塩基5926~6149は、bGHポリAであり、塩基6164~6308は、3’AAV2 ITRである。
【0117】
コンストラクトDC172ATG FVIII hAAT(
図4H)は、5635塩基長である。このコンストラクトは、配列番号16に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~449は、2コピー(2x)の145bpマクログロブリンエンハンサーであり、塩基457~674は、hAATプロモーターであり、塩基675~858は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基871~5244は、FVIII-SQであり、塩基5253~5476は、bGHポリAであり、塩基5490~5635は、3’AAV2 ITRである。
【0118】
コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII(
図4I)は、6962塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号17に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~807は、2コピー(2×)の321bp ApoEHCRであり、塩基814~1103は、2コピー(2×)の145bpマクログロブリンエンハンサーであり、塩基1104~2001は、898bp hAATプロモーターであり、塩基2002~2185は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基2198~6571は、FVIII-SQであり、塩基6580~6803は、bGHポリAであり、塩基6818~6962は、3’AAV2
ITRである。
【0119】
コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII hAAT(
図4J)は、6289塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号18に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~807は、2コピー(2×)の321bp ApoEHCRであり、塩基814~1103は、2コピー(2×)の145bpマクログロブリンエンハンサーであり、塩基1111~1328は、hAATプロモーターであり、塩基1329~1512は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基1525~5898は、FVIII-SQであり、塩基5907~6130は、bGHポリAであり、塩基6245~6289は、3’AAV2 ITRである。
【0120】
コンストラクト2×セルピンA hAATATG FVIII(
図4K)は、5430塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号19に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基168~309は、2コピー(2×)の71bp セルピンAエンハンサーであり、塩基326~543は、hAATプロモーターであり、塩基544~727は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基740~5113は、FVIII-SQであり、塩基5122~5271は、短bGHポリAであり、塩基5286~5430は、3’AAV2 ITRである。
【0121】
コンストラクト2×セルピンA hAATATG FVIII 2×μ-グロブリンエンハンサー(
図4L)は、5779塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号20に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基168~309は、2コピー(2×)の71bp セルピンAエンハンサーであり、塩基326~543は、hAATプロモーターであり、塩基544~727は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基740~5113は、FVIII-SQであり、塩基5122~5271は、短bGHポリAであり、塩基5279~5618は、2コピー(2×)の170bpμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基5635~5779は、3’AAV2 ITRである。
【0122】
コンストラクト100ATG短bGHポリA 2×μ-グロブリンエンハンサー(
図4M)は、5962塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号21に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~502は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基727~910は、改変ヒトβ-グロビン第2イントロンであり、塩基923~5296は、FVIII-SQであり、塩基5305~5454は、短bGHポリAであり、塩基5462~5801は、2コピー(2×)の170bp ミクログロブリンエンハンサーであり、塩基5818~5962は、3’AAV2 ITRである。
【0123】
コンストラクト第VIII因子BMN001(
図4N)は、5919塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号22に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~480は、ApoEHCRであり、塩基487~884は、398bp hAATプロモーターであり、塩基885~1145は、切断型のhAATイントロンであり、塩基1155~5528は、FVIII-SQであり、塩基5537~5760は、bGHポリAであり、塩基5775~5919は、3’AAV2 ITRである。
【0124】
コンストラクト第VIII因子BMN002(
図4O)は、5306塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号23に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基175~705は、LP1プロモーター/エンハンサーであり、塩基718~5091は、FVIII-SQであり、塩基5100~5147は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5162~5306は、3’AAV2 ITRである。
【0125】
コンストラクト99(
図4P)は、5461塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号24に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~627は、ApoEHCR/MARであり、塩基634~866は、hAATプロモーターであり、塩基873~5246は、FVIII-SQであり、塩基5255~5302は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5317~5461は、3’AAV2 ITRである。
【0126】
コンストラクト100(
図4Q)は、5327塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号25に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基739~5112は、FVIII-SQであり、塩基5121~5168は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5183~5327は、3’AAV2 ITRである。
【0127】
コンストラクト100の逆配向(
図4R)は、5309塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号26に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160-484は、逆配向のApoEHCRであり、塩基491~708は、hAATプロモーターであり、塩基721~5094は、FVIII-SQであり、塩基5103~5150は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5165~5309は、3’AAV2 ITRである。
【0128】
コンストラクト100AT(
図4S)は、5532塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号27に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基727~931は、hAATイントロンであり、塩基944~5317は、FVIII-SQであり、塩基5326~5373は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5388~5532は、3’AAV2 ITRである。
【0129】
コンストラクト100AT 2×MG(
図4T)は、5877塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号28に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基508~847は、2コピー(2×)の170bp μ-グロブリンエンハンサーであり、塩基854~1071は、hAATプロモーターであり、塩基1072~1276は、hAATイントロンであり、塩基1289~5662は、FVIII-SQであり、塩基5671~5718は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5733~5877は、3’AAV2 ITRである。
【0130】
コンストラクト100AT 2×MGbGHポリA(
図4U)は、6054塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号29に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基508~847は、2コピー(2×)の170bp μ-グロブリンエンハンサーであり、塩基854~1071は、hAATプロモーターであり、塩基1072~1276は、hAATイントロンであり、塩基1289~5662は、FVIII-SQであり、塩基5671~5895は、bGHポリAであり、塩基5910~6054は、3’AAV2 ITRである。
【0131】
コンストラクト100AT 2×MG(逆)bGHポリA(
図4V)は、6054塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号30に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基508~847は、2コピー(2×)の170bp逆配向のμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基854~1071は、hAATプロモーターであり、塩基1072~1276は、hAATイントロンであり、塩基1289~5662は、FVIII-SQであり、塩基5671~5895は、bGHポリAであり、塩基5910~6054は、3’AAV2 ITRである。
【0132】
コンストラクト100bGHポリA(
図4W)は、5504塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号31に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基509~726は、hAATプロモーターであり、塩基739~5112は、FVIII-SQであり、塩基対5121~5345は、bGHポリAであり、塩基5360~5504は、3’AAV2 ITRである。
【0133】
コンストラクト100~400(
図4X)は、5507塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号32に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~493は、ApoEHCRであり、塩基512~906は、398bp hAATプロモーターであり、塩基919~5292は、FVIII-SQであり、塩基5301~5348は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5363~5507は、3’AAV2 ITRである。
【0134】
コンストラクト101(
図4Y)は、5311塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号33に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基170~477は、2コピー(2×)の154bp ApoEHCRであり、塩基493~710は、hAATプロモーターであり、塩基723~5096は、FVIII-SQであり、塩基5105~5152は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5167~5311は、3’AAV2 ITRである。
【0135】
コンストラクト102(
図4Z)は、5156塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号34に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~322は、154bpApoEHCRであり、塩基338~555は、hAATプロモーターであり、塩基568~4941は、FVIII-SQであり、塩基4950-4997は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5012~5156は、3’AAV2 ITRである。
【0136】
コンストラクト103(
図4AA)は、5178塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号35に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2
ITRであり、塩基169-344は、4コピー(4×)の44bp ApoEHCRであり、塩基360~577は、hAATプロモーターであり、塩基590~4963は、FVIII-SQであり、塩基4972~5019は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5034~5178は、3’AAV2 ITRである。
【0137】
コンストラクト103の逆配向(
図4BB)は、5160塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号36に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基160~335は、4コピー(4×)の44bp逆配向のApoEHCRであり、塩基342~559は、hAATプロモーターであり、塩基572~4945は、FVIII-SQであり、塩基4954~5001は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5016~5160は、3’AAV2 ITRである。
【0138】
コンストラクト103AT(
図4CC)は、5383塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号37に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は、4コピー(4×)の44bp ApoEHCRであり、塩基360~577は、hAATプロモーターであり、塩基578~782は、hAATイントロンであり、塩基795~4374は、FVIII-SQであり、塩基5177~5224は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5239~5383は、3’AAV2 ITRである。
【0139】
コンストラクト103AT 2×MG(
図4DD)は、5728塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号38に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は、4コピー(4×)の44bpのApoEHCRであり、塩基359~698は、2コピー(2×)の170bpのμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基705~922は、hAATプロモーターであり、塩基923~1127は、hAATイントロンであり、塩基1140~5513は、FVIII-SQであり、塩基5522~5569は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5584~5728は、3’AAV2 ITRである。
【0140】
コンストラクト103AT 2×MG bGHポリA(
図4EE)は、5905塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号39に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は、4コピー(4×)の44bpのApoEHCRであり、塩基359~698は、2コピー(2×)の170bpのμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基705~922は、hAATプロモーターであり、塩基923~1127は、hAATイントロンであり、塩基1140~5513は、FVIII-SQであり、塩基5522~5746は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5761~5905は、5’AAV2 ITRである。
【0141】
コンストラクト103bGHポリA(
図4FF)は、5355塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号40に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は、4コピー(4×)の44bpのApoEHCRであり、塩基360~577は、hAATプロモーターであり、塩基590~4963は、FVIII-SQであり、塩基4972~5196は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5211~5355は、3’AAV2 ITRである。
【0142】
コンストラクト104(
図4GG)は、5618塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号41に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2
ITRであり、塩基169~784は、4コピー(4×)の154bpのApoEHCRであり、塩基800~1017は、hAATプロモーターであり、塩基1030~5403は、FVIII-SQであり、塩基5412~5459は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5474~5618は、3’AAV2 ITRである。
【0143】
コンストラクト105(
図4HH)は、5993塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号42に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2
ITRであり、塩基173~512は、2コピー(2×)の170bpのμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基519~736は、hAATプロモーターであり、塩基749~5122は、FVIII-SQであり、塩基5131~5178は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5185~5834は、2コピー(2×)のApoEHCRであり、塩基5849~5993は、3’AAV2 ITRである。
【0144】
コンストラクト106(
図4II)は、5337塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号43に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2
ITRであり、塩基173~512は、2コピー(2×)の170bpのμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基519~736は、hAATプロモーターであり、塩基749~5122は、FVIII-SQであり、塩基5131~5178は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5193~5337は、3’AAV2 ITRである。
【0145】
コンストラクト106AT(
図4JJ)は、5542塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号44に記載されており、塩基1~145は、5’AAV2 ITRであり、塩基173~512は、2コピー(2×)の170bpのμ-グロブリンエンハンサーであり、塩基519~736は、hAATプロモーターであり、塩基737~941は、hAATイントロンであり、塩基954~5327は、FVIII-SQであり、塩基5336~5383は、合成ウサギβ-グロビンポリAであり、塩基5398~5542は、3’AAV2 ITRである。
【0146】
コンストラクトp-100 ATGBは、5640塩基長である。このコンストラクトのヌクレオチド配列は、配列番号45に記載されており、5’AAV2 ITR、ApoEHCR、hAATプロモーター、改変ヒトβ-グロビン第2イントロン、FVIII-SQをコードする配列、bGHポリA配列、及び3’AAV2 ITRを含む。
【0147】
AAVベクター
本明細書で使用される場合、「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの一般的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、ある特定の機能が同時感染しているヘルパーウイルスによって与えられる、細胞内でのみ増殖する一本鎖DNAパルボウイルスである。現在、以下の表1に示されるとおり、特徴付けられているAAVの血清型は13種存在する。AAVの概説及び総説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228、及びBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)に見出され得る。しかしながら、様々な血清型は、遺伝子レベルにおいてでさえ、構造的にかつ機能的に、極めて密接に関連していることが周知であるため、これらの同じ原理が追加のAAV血清型に適用可能であろうことが十分に予想される。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.、及びRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照のこと)。例えば、すべてのAAV血清型は、相同なrep遺伝子によってもたらされるとてもよく似た複製特性を明らかに示し、すべて、3つの関連するカプシドタンパク質を保有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った血清型間の広範な交差ハイブリダイゼーション、及び「逆方向末端反復配列」(ITR)に対応する末端での類似する自己アニーリングセグメントの存在を示すヘテロ二本鎖分析によってさらに示唆される。類似の感染性パターンはまた、それぞれの血清型における複製機能が同様の調節管理下にあることも示唆する。
【0148】
本明細書で使用される場合、「AAVベクター」は、AAV末端反復配列(ITR)によって挟まれ、1つ以上の発現制御エレメントに動作可能に連結された対象となる1つ以上のポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含むベクターを指す。かかるAAVベクターは、rep及びcap遺伝子生成物をコード及び発現するベクターが形質移入された宿主細胞中に存在するときに、感染ウイルス粒子内への複製及びパッケージングされ得る。
【0149】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質及びカプシド形成されたポリヌクレオチドAAVベクターからなるウイルス粒子を指す。粒子は、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達されるトランス遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、典型的に、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と称される。したがって、このようなベクターは、AAVベクター粒子内に含有されることから、AAVベクター粒子の生成には、必然的にAAVベクターの生成が含まれる。
【0150】
AAVの「rep」及び「cap」遺伝子は、それぞれ、複製タンパク質及びカプシド形成されたタンパク質をコードする遺伝子である。AAVのrep及びcap遺伝子は、今までに、調べられたすべてのAAV血清型において見出されており、本明細書及び引用された参考文献に記載されている。野生型AAVでは、rep及びcap遺伝子は通常、ウイルスゲノム内で互いに隣接して見出され(すなわち、これらは隣接または重複する転写単位として共に「連結」している)、これらは通常、AAV血清型の間で保存されている。AAVのrep及びcap遺伝子はまた、個々に、及び集合的に、「AAVパッケージング遺伝子」とも称される。本明細書に従ってAAVのcap遺伝子は、rep及びアデノのヘルパー機能の存在下でAAVベクターをパッケージングすることが可能であり、標的細胞受容体と結合することが可能な、Capタンパク質をコードしている。いくつかの実施形態において、AAVのcap遺伝子は、特定のAAV血清型、例えば、以下に表1に示される血清型に由来するアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質をコードしている。
【表1】
【0151】
AAVの生成に使用されるAAV配列は、任意のAAV血清型のゲノムに由来され得る。通常、AAV血清型は、アミノ酸及び核酸レベルで有意に相同的なゲノム配列を有し、同様の一連の遺伝的機能を与え、本質的に物理的かつ機能的に等価なビリオンを生成し、ほぼ同一の機構により複製及び構築する。AAV血清型のゲノム配列及びゲノム類似性の考察については、例えば、GenBank受託番号U89790、GenBank受託番号J01901、GenBank受託番号AF043303、GenBank受託番号AF085716、Chiorini et al.,J.Vir.71:6823-33(1997)、Srivastava et al.,J.Vir.45:555-64(1983)、Chiorini et al.,J.Vir.73:1309-1319(1999)、Rutledge et al.,J.Vir.72:309-319(1998)、及びWu et al.,J.Vir.74:8635-47(2000)を参照のこと。
【0152】
すべての知られているAAV血清型のゲノム機構は非常に似ている。AAVのゲノムは、約5,000ヌクレオチド(nt)長未満の直鎖状一本鎖DNA分子である。逆方向末端反復(ITR)は、非構造複製(Rep)タンパク質及び構造(VP)タンパク質の独自のコードクレオチド配列に隣接している。VPタンパク質は、カプシドを形成する。末端145ntは、自己相補的であり、T形ヘアピンを形成するエネルギー的に安定な分子内二本鎖が形成され得るように組織化されている。これらのヘアピン構造体は、ウイルスDNA複製の開始点として機能し、細胞DNAポリメラーゼ錯体のためのプライマーとしての役割を果たす。Rep遺伝子は、Repタンパク質、Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40をコードする。Rep78及びRep68は、p5プロモーターから転写され、Rep52及びRep40は、p19プロモーターから転写される。cap遺伝子は、VPタンパク質、VP1、VP2、及びVP3をコードする。cap遺伝子は、p40プロモーターから転写される。本発明のベクターに使用されるITRは、関連するcap遺伝子と同じ血清型に対応し得るか、または異なり得る。特に好ましい実施形態において、本発明のベクターに使用されるITRは、AAV2血清型に対応し、cap遺伝子は、AAV5血清型に対応する。
【0153】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列は、Sf9またはHEK細胞等の特定の細胞型における発現のための発現制御配列に動作的に連結している。昆虫宿主細胞または哺乳類宿主細胞において外来遺伝子を発現するための、当業者に公知の手法が、本発明を実施するために使用され得る。昆虫細胞においてのポリペプチドの分子工学及び発現のための方法論は、例えば、Summers and Smith.1986.A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures,Texas Agricultural Experimental Station Bull.No.7555,College Station,Tex.、Luckow.1991.In Prokop et al.,Cloning and Expression of Heterologous Genes in Insect
Cells with Baculovirus Vectors’ Recombinant DNA Technology and Applications,97-152、King,L.A.and R.D.Possee,1992,The baculovirus expression system,Chapman and Hall,United Kingdom、O’Reilly,D.R.,L.K.Miller,V.A.Luckow,1992,Baculovirus Expression Vectors:A Laboratory Manual,New York、W.H.Freeman and Richardson,C.D.,1995,Baculovirus Expression Protocols,Methods in
Molecular Biology,volume 39、米国特許第4,745,051号、US2003148506、及びWO03/074714に記載されている。AAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写に特に適しているプロモーターは、例えば、多角体(polyhedron)プロモーターである。しかしながら、昆虫細胞において活性な他のプロモーターが、当該技術分野において既知であり、例えば、p10、p35、またはIE-1プロモーター、及び上記の参考文献に記載されるさらなるプロモーターも企図される。
【0154】
異種タンパク質の発現のための昆虫細胞の使用は、文書により十分に裏付けられており、核酸、例えばベクター、例えば昆虫細胞適合ベクターをそのような細胞に導入する方法、及びそのような細胞を培養液中で維持する方法等である。例えば、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,ed.Richard,Humana Press,NJ(1995)、O’Reilly et al.,BACULOVIRUS
EXPRESSION VECTORS,A LABORATORY MANUAL,Oxford Univ.Press(1994)、Samulski et al.,J.Vir.63:3822-8(1989)、Kajigaya et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 88:4646-50(1991)、Ruffing et al.,J.Vir.66:6922-30(1992)、Kirnbauer et al.,Vir.219:37-44(1996)、Zhao et al.,Vir.272:382-93(2000)、及びSamulskiらの米国特許第6,204,059号を参照のこと。いくつかの実施形態において、昆虫細胞におけるAAVをコードする核酸コンストラクトは、昆虫細胞適合ベクターである。「昆虫細胞適合ベクター」または「ベクター」は、本明細書で使用される場合、昆虫または昆虫細胞の増殖性形質転換またはトランスフェクションが可能である核酸分子を指す。昆虫または昆虫細胞の増殖性形質転換またはトランスフェクションが可能である核酸分子を指す。昆虫細胞適合であればいかなるベクターも使用することができる。このベクターは、昆虫細胞ゲノムに組み込まれ得るが、昆虫細胞においてベクターの存在は永続的である必要はなく、一過性のエピソーム性ベクターも含まれる。ベクターは、任意の既知の手段によって、例えば、細胞の化学的処理、エレクトロポレーション、または感染によって導入され得る。いくつかの実施形態において、ベクターは、バキュロウイルス、ウイルスベクター、またはプラスミドである。より好ましい実施形態において、ベクターは、バキュロウイルスであり、すなわち、コンストラクトが、バキュロウイルスベクターである。バキュロウイルスベクター及びそれらの使用法は、昆虫細胞の分子工学に関する上記の参考文献に記載されている。
【0155】
バキュロウイルスは、節足動物のエンベロープを有するDNAウイルスであり、そのうちの2つのメンバーは、細胞培養液中で組換えタンパク質を生成するための周知の発現ベクターである。バキュロウイルスは、巨大なゲノム内容物の特定の細胞への送達を可能にするように操作可能である、環状の二本鎖ゲノム(80~200kbp)を有する。ベクターとして使用されるウイルスは、通常、Autographa californica多カプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)またはBombyx mori(Bm)NPV)(Kato et al.,2010)である。
【0156】
バキュロウイルスは、一般に、組換えタンパク質の発現のための昆虫細胞の感染に使用される。具体的には、昆虫における異種遺伝子の発現は、例えば、米国特許第4,745,051号、Friesen et al(1986)、EP 127,839、EP 155,476、Vlak et al(1988)、Miller et al(1988)、Carbonell et al(1988)、Maeda et al(1985)、Lebacq-Verheyden et al(1988)、Smith et al(1985)、Miyajima et al(1987)、及びMartin
et al(1988)に記載されているように達成することができる。タンパク質産生のために使用することができる、多数のバキュロウイルス株及び変異体及び対応する許容昆虫宿主細胞は、Luckow et al(1988)、Miller et al(1986)、Maeda et al(1985)、及びMcKenna(1989)において記載されている。
【0157】
組換えAAVを生成するための方法
本開示は、昆虫または哺乳動物細胞において組換えAAVを生成するための材料及び方法を提供する。いくつかの実施形態において、ウイルスコンストラクトは、対象となる1つ以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの挿入を可能にするために、プロモーター及びプロモーターの制限酵素認識部位下流をさらに含み、プロモーター及び制限酵素認識部位は、5’AAV ITRの下流及び3’AAV ITRの上流に位置している。いくつかの実施形態において、ウイルスコンストラクトは、制限酵素認識部位の転写後の調節エレメント下流及び3’AAV ITRの上流をさらに含む。いくつかの実施形態において、ウイルスコンストラクトは、制限酵素認識部位で挿入され、プロモーターで動作に連結されたポリヌクレオチドをさらに含み、ポリヌクレオチドは、対象となるタンパク質のコード領域を含む。当業者が認識するように、本出願に開示されているAAVベクターのうちの任意の1つは、組換えAAVを生成するためのウイルスコンストラクトとして、本方法において使用することができる。
【0158】
いくつかの実施形態において、ヘルパー機能は、アデノウイルスまたはバキュロウイルスのヘルパー遺伝子を含む1つ以上のヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルスによって提供される。アデノウイルスまたはバキュロウイルスのヘルパー遺伝子の非限定的な例としては、E1A、E1B、E2A、E4、及びVAが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、AAVパッケージングにヘルパー機能を提供し得る。
【0159】
AAVのヘルパーウイルスは、当該技術分野において公知であり、例えば、Adenoviridaeファミリー及びHerpesviridaeファミリーからのウイルスが含まれる。AAVのヘルパーウイルスの例としては、米国特許出願公開第2011/0201088号(この米国特許出願公開の開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるSAdV-13ヘルパーウイルス及びSAdV-13様ヘルパーウイルス、ヘルパーベクターpHELP(Applied Viromics)が挙げられるが、これらに限定されない。適切なヘルパー機能をAAVに提供し得るAAVのいかなるヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドも本明細書で使用することができることは、当業者に理解されよう。
【0160】
いくつかの実施形態において、AAV cap遺伝子は、プラスミド中に存在する。プラスミドは、cap遺伝子と同じ血清型に対応してもしなくてもよい、AAV rep遺伝子をさらに含むことができる。任意のAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、及びこれらの任意の変異体が挙げられるが、これらに限定されない)からのcap遺伝子及び/またはrep遺伝子は、組換えAAVを生成するために使用することができる。いくつかの実施形態において、AAV cap遺伝子は、血清型1、血清型2、血清型4、血清型5、血清型6、血清型7、血清型8、血清型9、血清型10、血清型11、血清型12、血清型13、またはこれらの変異体からのカプシドをコードする。
【0161】
いくつかの実施形態において、昆虫細胞または哺乳類細胞が、ヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルス、AAVcap遺伝子をコードするウイルスコンストラクト及びプラスミドを形質移入され得;同時形質移入後に組換えAAVウイルスが種々の時点において収集され得る。例えば、組換えAAVウイルスは、同時形質移入の約12時間後、約24時間後、約36時間後、約48時間後、約72時間後、約96時間後、約120時間後、またはこれらいずれか2つの時点の間の時間後に、収集され得る。
【0162】
組換えAAVはまた、感染性組換えAAVを生成するのに適している当該技術分野において公知の任意の従来の方法を用いて生成され得る。いくつかの例では、組換えAAVは、AAV粒子生成に必要な成分のいくつかを安定的に発現する昆虫細胞または哺乳類細胞を用いることによって生成され得る。例えば、AAV rep及びcap遺伝子、ならびにネオマイシン耐性遺伝子等の選択可能なマーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)が、細胞のゲノム内に組み込まれ得る。次いで、昆虫または哺乳類細胞は、ヘルパーウイルス(例えば、ヘルパー機能を与えるアデノウイルスまたはバキュロウイルス)、ならびに5’及び3’AAV ITR(及び、必要に応じて、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターに同時感染され得る。この方法の利点は、細胞が選択可能であること、及び組換えAAVの大量生産に適していることである。別の非限定例として、プラスミドではなく、アデノウイルスまたはバキュロウイルスは、rep及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するために使用することができる。さらに別の非限定的な例として、5’及び3’AAV LTRならびにrep-cap遺伝子を含有するウイルスベクターの両方が産生細胞のDNAに安定的に組み込まれ得、ヘルパー機能は、組換えAAVを生成するために野生型アデノウイルスによって提供され得る。
【0163】
AAV生成で使用される細胞型
本発明のAAVベクターを含むウイルス粒子は、AAVまたは生物学的生成物の生成を可能にし、かつ培養液中で維持することができる、あらゆる無脊椎動物細胞型を用いて生成してもよい。例えば、使用される昆虫細胞株は、SF9、SF21、SF900+等のSpodoptera frugiperda、ショウジョウバエ細胞株、蚊細胞株、例えば、Aedes albopictus由来細胞株、家蚕細胞株、例えば、Bombyxmori細胞株、Trichoplusia ni細胞株、High Five細胞またはLepidoptera細胞株、例えば、Ascalapha odorata細胞株からのものであり得る。好ましい昆虫細胞は、High Five、Sf9、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf9、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、及びAo38を含む、バキュロウイルスに感染しやすい昆虫種からの細胞である。
【0164】
バキュロウイルスは、節足動物のエンベロープを有するDNAウイルスであり、そのうちの2つのメンバーは、細胞培養液中で組換えタンパク質を生成するための周知の発現ベクターである。バキュロウイルスは、巨大なゲノム内容物の特定の細胞への送達を可能にするように操作可能である、環状の二本鎖ゲノム(80~200kbp)を有する。ベクターとして使用されるウイルスは、通常、Autographa californica多カプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)またはBombyx mori(Bm-NPV)(Kato et al.,2010)である。
【0165】
バキュロウイルスは、一般に、組換えタンパク質の発現のための昆虫細胞の感染に使用される。具体的には、昆虫における異種遺伝子の発現は、例えば、米国特許第4,745,051号、Friesen et al(1986)、EP 127,839、EP 155,476、Vlak et al(1988)、Miller et al(1988)、Carbonell et al(1988)、Maeda et al(1985)、Lebacq-Verheyden et al(1988)、Smith et al(1985)、Miyajima et al(1987)、及びMartin
et al(1988)に記載されているように達成することができる。タンパク質産生のために使用することができる、多数のバキュロウイルス株及び変異体及び対応する許容昆虫宿主細胞は、Luckow et al(1988)、Miller et al(1986)、Maeda et al(1985)、及びMcKenna(1989)において記載されている。
【0166】
本発明の別の態様では、本発明の方法はまた、AAVの複製または生物学的産物の生成を可能にし、かつ培養液中で維持することができる、あらゆる哺乳動物細胞型を用いて実行される。使用される好ましい哺乳動物細胞は、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT 1080、A549、Cos-7、ARPE-19、及びMRC-5細胞であり得る。
【0167】
AAV FVIIIベクターの試験
本発明の完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクターを試験するためのアッセイは、例えば、(1)肝臓特異的なmRNA発現及びスプライシング、ならびにインビトロでのFVIIIタンパク質の生成及び分泌を試験するためのヒト肝臓由来の細胞株、HepG2細胞におけるAAVベクター核酸を含む二本鎖DNAプラスミドの一過性トランスフェクション、(2)HEK293細胞及びバキュロウイルスに感染した昆虫細胞におけるAAV FVIIIベクターを含むAAVビリオンの生成、(3)アルカリ性ゲル分析及び複製アッセイにおけるAAVベクター核酸の評価、ならびに(4)Rag2マウスにおけるFVIII発現、FVIII活性、及びFVIII比活性の評価、を含む。これらのアッセイは、実施例により詳細に記載されている。
【0168】
本発明の完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクターは、
図1に示される代表的なベクターと少なくとも同じ発現及び/または活性、好ましくは、
図1に示されるベクターと比較して1.5倍、2倍、3倍、4倍、もしくは5倍、またはそれ以上の発現及び/または活性を示す。
【0169】
本発明の完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクターは、断片ゲノムの混入がほとんどまたは全くない高いベクター収率、好ましくは、
図1に示されるベクターと比較して1.5倍、2倍、3倍、4倍、もしくは5倍、またはそれ以上高いベクター収率を有する。
【0170】
薬学的製剤
他の実施形態において、本発明は、血友病Aに罹患している対象への投与に有用なFVIII AAVベクター/ビリオンの薬学的製剤を対象とする。ある特定の態様では、本発明の薬学的製剤は、本明細書で開示されているベクターから生成される組換えAAV FVIIIビリオンを含む液体製剤であり、製剤中の組換えAAV FVIIIビリオンの濃度は、大きく異なり得る。ある特定の実施形態において、製剤中の組換えAAV FVIIIビリオンの濃度は、1E12vg/ml~2E14vg/mlの範囲であり得る。特に好ましい実施形態において、製剤中の組換えAAV FVIIIビリオンの濃度は、約2E13vg/mlである。別の好ましい実施形態において、製剤中に存在する組換えAAV FVIIIビリオンは、AAV5カプシド中の
図2Aに概略的に示されるProto1ベクターのカプシド形成に由来するAAV5-FVIII-SQである。
【0171】
他の態様では、本発明のAAV FVIII薬学的製剤は、保存及び/または血友病Aの治療のために対象への投与のために有利な特性を有する製剤を提供するために、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。ある特定の実施形態において、本発明の薬学的製剤は、安定性の検出可能な変化を伴わずに、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも6週間、さらにより好ましくは、少なくとも約8週間の期間中、65℃以下で保存することができる。この件について、「安定した」という用語は、製剤中に存在する組換えAAV FVIIIウイルスが、保存中、その物理的安定性、化学的安定性、及び/または生物学的活性を本質的に保持することを意味する。本発明のある特定の実施形態において、薬学的製剤中に存在する組換えAAV FVIIIウイルスは、-65℃で決定期間の保存中、ヒト患者におけるその生物学的活性の少なくとも約80%、より好ましくは、ヒト患者におけるその生物学的活性の少なくとも約85%、90%、95%、98%、または99%保持する。
【0172】
ある特定の態様では、組換えAAV FVIIIビリオンを含む製剤は、1つ以上の緩衝剤をさらに含む。例えば、様々な態様では、本発明の製剤は、約0.1mg/ml~約3mg/ml、約0.5mg/ml~約2.5mg/ml、約1mg/ml~約2mg/ml、または約1.4mg/ml~約1.6mg/mlの濃度の二塩基性リン酸ナトリウムを含む。特に好ましい実施形態において、本発明のAAV FVIII製剤は、約1.42mg/mlの二塩基性リン酸ナトリウム(乾燥した)を含む。本発明の組換えAAV
FVIII製剤での用途を見出し得る別の緩衝剤は、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物であり、いくつかの実施形態において、約0.1mg/ml~約3mg/ml、約0.5mg/ml~約2.5mg/ml、約1mg/ml~約2mg/ml、または約1.3mg/ml~約1.5mg/mlの濃度での用途を見出す。特に好ましい実施形態において、本発明のAAV FVIII製剤は、約1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物を含む。本発明のなおさらに特定の好ましい実施形態において、本発明の組換えAAV FVIII製剤は、約1.42mg/mlの二塩基性リン酸ナトリウム及び約1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物を含む。
【0173】
別の態様では、本発明の組換えAAV FVIII製剤は、好ましくは、約1mg/ml~約20mg/ml、例えば、約1mg/ml~約10mg/ml、約5mg/ml~約15mg/ml、または約8mg/ml~約20mg/mlの濃度で、塩化ナトリウム等の1つ以上の等張剤を含み得る。特に好ましい実施形態において、本発明の製剤は、約8.18mg/mlの塩化ナトリウムを含む。当該技術分野において公知の他の緩衝剤及び等張剤は、好適であり、本開示の製剤で用いるために日常的に使用され得る。
【0174】
別の態様では、本発明の組換えAAV FVIII製剤は、1つ以上の増量剤を含み得る。例示的な増量剤としては、マンニトール、スクロース、デキストラン、ラクトース、トレハロース、及びポビドン(PVP K24)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の好ましい実施形態において、本発明の製剤は、約5mg/ml~約40mg/ml、または約10mg/ml~約30mg/ml、または約15mg/ml~約25mg/mlの量で存在し得る、マンニトールを含む。特に好ましい実施形態において、マンニトールは、約20mg/mlの濃度で存在する。
【0175】
さらに別の態様では、本発明の組換えAAV FVIII製剤は、非イオン性界面活性剤であり得る、1つ以上の界面活性剤を含み得る。例示的な界面活性剤には、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、界面活性剤は、TWEEN 80(ポリソルベート80、またはその化学名ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても知られている)、ナトリウムドデシルスルフェート、ステアリン酸ナトリウム、アンモニウムラウリルスフフェート、TRITON AG 98(Rhone-Poulenc)、ポロキサマー407、ポロキサマー188等、及びこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。特に好ましい実施形態において、本発明の製剤は、約0.1mg/ml~約4mg/ml、または約0.5mg/ml~約3mg/ml、約1mg/ml~約3mg/ml、約1.5mg/ml~約2.5mg/ml、または約1.8mg/ml~約2.2mg/mlの濃度で存在し得る、ポロキサマー188を含む。特に好ましい実施形態において、ポロキサマー188は、約2.0mg/mlの濃度で存在する。
【0176】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明の薬学的製剤は、約1.42mg/mlの二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、約8.18mg/mlの塩化ナトリウム、約20mg/mlのマンニトール、及び約2mg/mlのポロキサマー188を含む液体溶液中で製剤化されたAAV5-FVIII-SQを含む。
【0177】
本開示の組換えAAV FVIIIウイルスを含有する製剤は、安定しており、品質、効能、または純度の許容できない変化を生じることなく、長期間の間保存され得る。一態様では、製剤は、少なくとも1ヶ月間、例えば、少なくとも1ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、またはそれ以上の間、約5℃(例えば、2℃~8℃)の温度で安定している。別の態様では、製剤は、少なくとも6ヶ月間、例えば、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、またはそれ以上の間、約-20℃以下の温度で安定している。別の態様では、製剤は、少なくとも6ヶ月間、例えば、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、またはそれ以上の間、約-40℃以下の温度で安定している。別の態様では、製剤は、少なくとも6ヶ月間、例えば、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、少なくとも24ヶ月間、少なくとも36ヶ月間、またはそれ以上の間、約-60℃以下の温度で安定している。
【0178】
治療方法
ある特定の実施形態において、本発明は、血友病Aに罹患している対象を治療するための方法を対象とし、本方法は、その対象に、治療上有効量のAAV FVIIIベクター、組換えAAV FVIIIウイルス、またはそれを含む薬学的組成物を投与することを含む。さらに他の実施形態において、本発明は、血友病Aに罹患している対象における出血症状発現中に出血時間を減少させるための方法を対象とし、本方法は、対象に、治療上有効量の、AAV FVIIIベクター、組換えAAV FVIIIウイルス、またはそれを含む薬学的組成物を投与することを含む。この点については、血友病Aに罹患している対象における血友病Aの治療に関してまたは出血症状発現中の出血時間を減少させるための方法で用いるための「治療上有効量」は、(1)例えば、打撲、関節痛、または腫れ、長期間頭痛、嘔吐、または疲労を含む、血友病Aの生理学的症状のうちの1つ以上を、ある程度、軽減、阻害、または予防、(2)血液を凝血する能力の改善、(3)出血症状発現中の出血時間全体の減少、(4)対象の血漿中の機能性FVIIIタンパク質の濃度または活性の測定可能な増加をもたらす投与、及び/または(5)障害と関連する1つ以上の症状のある程度の緩和、の効果のうちの1つ以上を引き起こすことができる量を指す。「治療上有効量」のAAV FVIIIベクターもしくはウイルス、または本明細書に記載される治療のために、それを含む薬学的組成物は、実験的に及び日常的な様式で決定され得る。しかしながら、ある特定の実施形態において、「治療上有効量」の組換えAAV FVIIIウイルスは、約1E12vg/体重kg~約1E14vg/体重kg、好ましくは、約6E12vg/体重kg~約6E13vg/体重kgの範囲に及ぶ。特に好ましい実施形態において、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスは、約2E13vg/体重kgである。別の特に好ましい実施形態において、治療上有効量の組換えAAV FVIIIウイルスは、約6E13vg/体重kgである。
【0179】
本発明の組換えAAV FVIIIベクター/ウイルスは、様々な既知の投与技術を通して、対象、好ましくは哺乳動物対象、より好ましくはヒト対象に投与され得る。好ましい一実施形態において、組換えAAV FVIII遺伝子療法ウイルスは、単回ボーラスとしてまたは長期間にわたって静脈内注射によって投与され、少なくとも約1、5、10、15、30、45、60、75、90、120、150、180、210、もしくは240分、またはそれ以上であり得る。本発明の特に好ましい実施形態において、投与された組換えAAV FVIIIウイルスは、AAV5-FVIII-SQである。
【0180】
本発明の、組換えAAV FVIIIベクター/ウイルス、またはそれを含む薬学的製剤の投与は、好ましくは、投与前の対象の血漿中に存在する機能性FVIIIタンパク質の活性量と比較して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15IU/dl、またはそれ以上の対象の血漿中の機能性FVIIIタンパク質の活性量の増加をもたらす。ある特定の実施形態において、本発明の、組換えAAV FVIIIベクター/ウイルス、またはそれを含む薬学的製剤の投与は、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10IU/dl、またはそれ以上の対象の血漿中の機能性FVIIIタンパク質の活性の発現をもたらす。この点においては、FVIII活性に関して、「IU」または「国際単位」という用語は、十分理解され、かつ許容された用語であり、1IUのFVIII活性が、1mlの正常ヒト血漿中のFVIIIの量に相当する。血漿中のFVIII活性は、例えば、活性化部分トロンボプラスチン時間(APPT)方法を含む、多くの公知及び許容されるアッセイによって定量的に決定され得る(例えば、Miletich JP:Activated partial thromboplastin time.In Williams Hematology.Fifth edition.Edited by E Beutler,MA Lichtman,BA Coller,TJ Kipps.New York,McGraw-Hill,1995,ppL85-86,Greaves and Preston,Approach to the bleeding patient.In Hemostasis and Thrombosis:Basic Principles and Clinical Practice.Fourth edition.Edited by RW Colman,J Hirsh,VJ Marder,et al.Philadelphia,JB Lippincott Co,2001,pp1197-1234、及びOlson et al,Arch.Pathol.Lab.Med.122:782-798(1998)を参照のこと)または発色性FXaアッセイ(Harris et al.,Thromb.Res.128(6):125-129(2011))。
【0181】
本発明の他の実施形態において、対象における出血時間は、例えば、Ivy方法(例えば、Ivy et al.,Surg.Gynec.Obstet.60:781(1935)及びIvy et al.,J.Lab.Clin.Med.26:1812(1941)を参照のこと)またはDuke方法(例えば、Duke et al.,JAMA 55:1185(1910)を参照のこと)を含む、公知の及び許容される技術によって測定され得る。対象における「出血症状発現」は、外面的にまたは内面的に、対象における出血をもたらす損傷を指し、通常、損傷から凝血の形成の時間期間を含む。
【0182】
本発明のAAV FVIIIウイルスの投与は、場合によっては、観察可能な肝毒性度をもたらし得る。肝毒性は、例えば、AAV FVIII投与前(すなわち、ベースライン)及びAAV FVIII投与後の両方で、対象の血流中のある特定の肝臓関連酵素(複数可)(例えばアラニントランスアミナーゼ、ALT)の濃度を測定する、様々な公知の日常的に使用される技術によって測定され得る。(投与前と比較して)AAV FVIII投与後のALT濃度の観察可能な増加は、薬剤誘発性の肝毒性を示す。本発明のある特定の実施形態において、治療上有効量のAAV FVIIIウイルスの投与に加えて、対象は、AAV FVIIIウイルスの投与と関連するあらゆる肝毒性を予防及び/または治療するために、コルチコステロイドで予防的に、治療的に、またはその両方で治療され得る。「予防的」コルチコステロイド治療は、対象における肝毒性を予防する及び/または測定したALTレベルの増加を防ぐためのコルチコステロイドの投与を指す。「治療的」コルチコステロイド治療は、AVV FVIIIウイルスの投与によって引き起こされる肝毒性を軽減する及び/またはAAV FVIIIウイルスの投与によって引き起こされる対象の血流中の上昇したALT濃度を減少させるためのコルチコステロイドの投与を指す。ある特定の実施形態において、予防的または治療的コルチコステロイド治療は、対象への少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mg/日、またはそれ以上のコルチコステロイドの投与を含み得る。ある特定の実施形態において、対象の予防的または治療的コルチコステロイド治療は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10週間、またはそれ以上の連続期間にわたってなされ得る。本明細書に記載される方法での用途を見出すコルチコステロイドは、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾン、フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン等を含む、任意の周知のまたは日常的に使用されるコルチコステロイドを含む。
【0183】
抗AAV抗体の検出
全身性AAV媒介性の第VIII因子遺伝子導入による肝臓への成功した形質導入の可能性を最大限に生かすために、上述のヒト患者への治療的レジメンにおけるAAVベクターの投与前に、見込み患者は、細胞の形質導入をブロッキングすることが可能であるか、またはそうでなければ治療的レジメンの全体的効率を減少させる抗AAVカプシド抗体の存在について評価され得る。かかる抗体は、見込み患者の血清中に存在し得、任意の血清型のAAVカプシドに対して作られ得る。一実施形態において、事前の抗体に対して作られた血清型は、AAV5である。
【0184】
事前のAAV免疫を検出するための方法は、当該技術分野において公知であり、日常的に使用されており、細胞に基づいたインビトロ形質導入阻害(TI)アッセイ、インビボ(例えば、マウスにおける)TIアッセイ、及び全抗カプシド抗体(TAb)のELISAに基づいた検出を含む(例えば、Masat et al.,Discov.Med.15:379-389(2013)及びBoutin et al.,Hum.Gene
Ther.21:704-712(2010)を参照のこと)。TIアッセイは、AAV誘導性レポーターベクターが予め導入されている宿主細胞を使用し得る。レポーターベクターは、発現がAAVウイルスによって宿主細胞の形質導入時に誘導される、GFP等の誘導性レポーターベクターを含み得る。宿主細胞の形質導入を阻止/減少させることができるヒト血清中に存在する抗AAVカプシド抗体は、それによって、系のレポーター遺伝子の全体の発現を減少させ得る。したがって、かかるアッセイは、治療的FVIII AAVウイルスによって細胞の形質導入を阻止/減少させることができるヒト血清中の抗AAVカプシド抗体の存在を検出するために使用され得る。
【0185】
抗AAVカプシド抗体を検出するためのTAbアッセイは、ヒト血清を通過する、「捕捉剤」として固相結合AAVカプシドを使用し得、それによって、血清中に存在する抗カプシド抗体が固相結合「捕捉剤」に結合することができる。一旦非特異的結合を除去するために洗浄されると、「検出剤」は、捕捉剤と結合する抗カプシド抗体の存在を検出するために使用され得る。検出剤は、抗体、AAVカプシド等であり得、結合抗カプシド抗体の検出及び定量化に役立つように検出可能に標識され得る。一実施形態において、検出剤は、電気化学発光技術及び装置を用いて検出され得るルテニウムまたはルテニウム錯体で標識される。
【0186】
同じ上述の方法論は、対象となる治療的AAVウイルスで以前に治療された患者における抗AAVカプシド免疫応答の作製を評価及び検出するために使用され得る。したがって、これらの技術が、治療的FVIII AAVウイルスによる治療前に抗AAVカプシド抗体の存在を評価するために使用され得るだけでなく、それらはまた、投与後に投与された治療的FVIII AAVウイルスに対して免疫応答の誘導を評価及び測定するために使用され得る。したがって、本発明は、ヒト血清中の抗AAVカプシド抗体を検出するための技術及び血友病Aの治療のための治療的FVIII AAVウイルスの投与のための技術を組み合わせる方法を企図し、ヒト血清中の抗AAVカプシド抗体を検出するための技術は、治療的FVIII AAVウイルスの投与前または投与後のいずれかで行われ得る。
【0187】
本発明の他の態様及び利点は、以下の実例を考慮することにより理解されよう。
【実施例0188】
実施例1
Proto1、Proto1S、Proto2S、及びProto3Sベクターの作製
2011年1月13日に公開されたWO2011/005968(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及びMcIntosh et al.,Blood 121:3335-3344,2013に詳述される、
図1に概略的に示される組換えAAV
FVIIIベクターは、大容量、すなわち、5.0kb超のAAVベクターである。
図1に示されるように、このベクターは、左から右に、AAV血清型2(AAV2)5’ITR、野生型AAV2ウイルス配列、34塩基ヒトアポリポタンパク質E(ApoE)/C1エンハンサー、32塩基ヒトアルファ抗トリプシン(AAT)プロモーター遠位X領域、42塩基の5’非翻訳領域(UTR)配列を含む186塩基ヒトAATプロモーター、Bドメインが14アミノ酸のSQ配列で置換されているコドンを最適化したヒトFVIII配列、49塩基合成ポリアデニル化配列、野生型AAV2ウイルス配列、及びAAV2 3’ITRを含む。このベクターは、5081塩基長である。
【0189】
図1に示されるFVIIIベクターよりも小さいベクターを得るために、FVIIIの発現及び/もしくは活性、またはAAVビリオン生成に不必要であると本明細書において本発明者らによって考えられているDNA配列を、元のベクター配列から除去した。AAV2ウイルス配列3’~AAV2 5’ITRの53塩基、AAV2ウイルス配列5’~AAV2 3’ITRの46塩基、及びコドンを最適化したFVIII SQコード領域に隣接した11塩基を含む、外来性DNA配列を除去した。SQリンカーを保有する新規のコドンを最適化したB-ドメイン欠失FVIIIコード配列はまた、新規の組換えAAV FVIIIベクターに生成され、導入された。ある特定の配列の変化が、AAV2 5’及び3’ITRになされた。4970塩基長である、結果として得られるProto1ベクターは、
図2Aにおいて図式形態で示され、完全ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載される。本明細書において本発明者らは、Proto1が感染性組換えAAVウイルスを生成し、機能性第VIII因子ポリペプチドをコードすることを実証した。
【0190】
AAV2 ITR内のヘアピンループに隣接する配列はまた、組換えAAVベクターにおいて不要であり得る(Srivastava et al.,米国特許第6,521,225号、Wang et al.,J.Virol.70:1668-1677,1996、及びWang et al.,J.Virol.71:3077-3082,1997を参照のこと)。Proto1ベクターのサイズをさらに減少させるために、AAV2
5’ITR内のヘアピンループの3’側に隣接したAAV2配列の10塩基を除去し、AAV2配列の10塩基を、AAV2 3’ITR内のヘアピンループの5’側に隣接したAAV2配列の10塩基を除去した。4950塩基長である結果として得られるProto1Sベクターは、
図2Bにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号2に記載される。
【0191】
Proto1Sベクター中のFVIII SQ変異体の発現を増加させる試みにおいて、100塩基の合成イントロンを、コドンを最適化したFVIII配列中のエクソン1とエクソン2の間に挿入した。イントロンの挿入は、例えば、インターフェロン遺伝子等のイントロンを含まない遺伝子における、mRNA発現のレベルを増加させ得ることが知られている。
【0192】
エンハンサーは、距離及び配向に非依存的に働くと定義される。34塩基ApoE/C1エンハンサーは、米国特許第8,030,065号(FIX発現)及びWO2011/005968(FVIII発現)(これらの両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)における、その推定的なエンハンサー活性によって例証されるように、FVIII発現に関して距離及び配向に非依存的に働く。Di Simone et al.,EMBO J.6:2759-2766,1987に記載される、32塩基ヒトAATプロモーター遠位X領域は、異種プロモーターの発現を増強する調節ドメイン内に位置する。
【0193】
Proto1Sベクター中のFVIII SQ変異体の発現をさらに増加させるための別の試みにおいて、合成イントロン配列は、34塩基ヒトApoE/C1エンハンサー及び32塩基ヒトAATプロモーター遠位X領域を組み入れ、ヒトAATプロモーターの上流のその位置から移動された。これら2つの調節エレメントを、Proto1Sにおけるそれらの配向に対して逆配向に挿入した。4983塩基長である結果として得られるProto2Sベクターは、
図2Cにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号3に記載される。
【0194】
ヒトAATプロモーター遠位X領域は、イントロン内の転写開始点から下流で機能することが以前に示されていなかったため、Proto2Sベクター中のこの調節エレメントを、イントロン内のエンハンサーの第1コピーと同じ配向の、34塩基ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーと置換した。4985塩基長である結果として得られるProto3Sベクターは、
図2Dにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号4に記載される。
【0195】
Proto1、Proto1S、Proto2S、及びProto3Sベクター核酸を、pUC19細菌発現プラスミド内にクローン化し、それによって、二本鎖形態のAAV
FVIIIベクターを作製した。
【0196】
実施例2
Proto4、Proto5、Proto6、及びProto7ベクターの作製
Proto1ベクターのサイズをさらに減少させるため、及び/またはProto1ベクターと比較して、FVIIIの発現を増加させるために、軽鎖またはCドメインに隣接して位置するa3ドメインを除去した。a3ドメインは、von Willenbrand因子への結合に関与するが、インビボで機能的に活性なFVIIIには不要であり得る。
【0197】
Proto1ベクターから開始して、14アミノ酸のSQ配列及び41アミノ酸のa3ドメイン(野生型FVIIIのアミノ酸1649~1689に対応する)を除去した。4805塩基長である結果として得られるProto4ベクターは、
図3Aにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号5に記載される。
【0198】
Bドメイン及びa3ドメイン欠失FVIIIの発現を増加させる試みにおいて、129塩基の切断型のFVIIIイントロンを、Proto4ベクター中のコドンを最適化したFVIII配列中のエクソン1とエクソン2の間に挿入した。4934塩基長である結果として得られるProto5ベクターは、
図3Bにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号6に記載される。
【0199】
Bドメイン及びa3ドメイン欠失FVIIIの発現をさらに増加させる試みにおいて、34塩基ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーを、Proto5ベクター中の順配向または逆配向のいずれかに挿入した。4934塩基長であり、イントロンの順配向ApoE/C1エンハンサーを有する結果として得られるProto6ベクターは、
図3Cにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号7に記載される。
【0200】
4934塩基長であり、イントロンの逆配向ApoE/C1エンハンサーを有する結果として得られるProto7ベクターは、
図3Dにおいて図式形態で示され、配列は、配列番号8に記載される。
【0201】
Proto4、Proto5、Proto6、及びProto7ベクター核酸を、pUC19細菌発現プラスミド内にクローン化し、それによって、二本鎖形態のAAV FVIIIベクターを作製した。
【0202】
実施例3
AAV FVIIIベクターの発現及び活性を試験するためのアッセイ
本発明の組換えAAV FVIIIベクターを試験するためのアッセイは、例えば、(1)肝臓特異的なmRNA発現及びスプライシング、ならびにインビトロでのFVIIIタンパク質の生成及び分泌を試験するためのヒト肝臓由来の細胞株、HepG2細胞におけるAAVベクター核酸を含む二本鎖DNAプラスミドの一過性トランスフェクション、(2)293細胞及びバキュロウイルスに感染した昆虫細胞におけるAAV FVIIIベクターを含むAAVビリオンの生成、(3)アルカリ性ゲル分析及び複製アッセイにおけるAAVベクター核酸の評価、ならびに(4)Rag2マウスにおけるFVIII発現、FVIII活性、及びFVIII比活性の評価、を含む。
【0203】
一過性トランスフェクションアッセイ
予備的なインビトロアッセイは、本発明のAAV FVIIIベクターからのFVIIIの発現及び活性が、
図1に示されるFVIII発現ベクターからのものと比較するために行われる。本発明のAAV FVIIIベクターの二本鎖形態が、ヒト肝細胞株である、HepG2に一過性に形質移入される。トランスフェクションの後、例えば、24または48時間後、培養上清中のFVIII抗原及び活性が測定される。
【0204】
このアッセイを用いて、Proto1、Proto1S、及びProto2Sベクターを一過性に形質移入されたHepG2細胞におけるFVIII活性は、
図1のFVIIIベクターを用いて得られたFVIII活性と同様であり、Proto1、Proto1S、及びProto2Sベクターが、機能性第VIII因子タンパク質を発現可能であったことを示した。
【0205】
293細胞及びバキュロウイルス感染昆虫細胞におけるAAV FVIIIビリオンの産生
本発明の組換えAAV FVIIIベクターがFVIIIをコードする核酸を実際にパッケージングしていることを実証するために、実施例1及び2に記載されるように作製された二本鎖形態のAAV FVIIIベクターを、AAVビリオンを産生可能な細胞内に導入する。第一のAAVウイルス産生系では、二本鎖形態のAAV FVIIIベクター核酸を含むプラスミドは、AAV Cap及びRepタンパク質を発現するプラスミド、ならびにAAVビリオン産生に必要とされるアデノウイルスヘルパー機能を発現するプラスミドと共に、293細胞に同時トランスフェクトされる。第二のAAVウイルス産生系では、AAV FVIIIベクター核酸、ならびにAAV Cap及びRepタンパク質を発現する、バキュロウイルスコンストラクトを作製し、次いで、昆虫Sf9細胞に同時感染させる。一過性に形質移入された293細胞またはバキュロウイルス感染Sf9細胞内で産生される、結果として得られるAAVビリオンを、当該技術分野において公知の標準方法によって精製及び分析する。
【0206】
アルカリ性ゲルアッセイ及び複製アッセイによる評価
アルカリ性ゲル電気泳動アッセイを用いて、パッケージングされた核酸のサイズを決定する。複製中心アッセイを用いて、AAV FVIIIベクターが両方のパッケージング法によって無傷な形態でパッケージングされているかどうかを決定する。
【0207】
プライマー伸長アッセイを用いて、完全な末端を有する、すなわち、AAV2 5’ITR(センス鎖)または3’ITR(アンチセンス鎖)内のヘアピンループの5’末端において終結している、AAV FVIIIベクター核酸の量を定量化する。
【0208】
あるいは、PCRアッセイを用いて、AAV FVIIIベクター核酸が完全な末端を有しているかどうか、すなわち、AAV2 5’ITR(センス鎖)または3’ITR(アンチセンス鎖)内のヘアピンループの5‘末端において終結しているかどうかを決定する。
【0209】
Rag2マウスにおける評価
一過性に形質移入された293細胞またはバキュロウイルス感染Sf9細胞パッケージングベクターにおいて産生されるAAVビリオンを、静脈内投与される、2e11、2e12、及び2e13ウイルスゲノム(vg)/kgで、Rag2マウスにおいて、FVIIIの発現及び活性について試験する。FVIIIの発現及び/または活性は、AAVウイルスまたはヒトFVIIIタンパク質に対する宿主免疫応答の存在によって複雑化されないため、Rag2マウスをこのアッセイで使用する。
【0210】
ELISAに基づくアッセイを用いて、FVIII抗原を決定する。FXa活性化アッセイ及び/または凝固アッセイを用いて、FVIII活性を決定する。FVIII抗原及び活性アッセイを用いて、FVIII比活性を決定する。
【0211】
現在好ましいその実施形態を考慮することによって、本発明の実施における多数の変更形態及び変形形態の発生が当業者に予期される。したがって、本発明の範囲に置かれるべき唯一の限定は、添付の特許請求の範囲に現れるもののみである。
【0212】
実施例4
改善されたプロモーター/エンハンサー配列を有するコンストラクトの作製
機能性FVIIIの発現を増加させる強力なプロモーターを有するさらなる組換えAAVベクターを作製するために、改変されたエンハンサー及び/またはプロモーター配列を有するコンストラクトを作製した。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、短縮型のApoEまたはμ-グロブリンエンハンサーを含んだ。これらのコンストラクトを標準的なDNAクローニング技術を用いて作製し、その配列を、配列番号9~45に示す。
【0213】
実施例5
AAVウイルス粒子の作製
組換えバクミドの作製
DH10 Bacコンピテント細胞を、氷上で解凍した。組換えシャトルプラスミド(例えば、pFB-GFP)を添加し、コンピテント細胞と穏やかに混合し、氷上で30分間インキュベートした。次いで、コンピテント細胞を、約42℃の温度で30秒間加熱し、次いで、2分間冷却した。コンピテント細胞を、42℃で30秒間熱ショックし、氷上で2分間冷却した。SOCを細胞に添加し、撹拌しながら37℃で4時間インキュベートして、組換えを起こさせた。インキュベーション期間中、2枚のLBプレート(形質転換のための種々の抗生物質(例えば、カナマイシン、ゲンタマイシン、及びテトラサイクリン)を追加で含有する上にX-galを塗布し、続いてIPTGを塗布した。
【0214】
ある量のインキュベーション混合物が得られ、これを希釈し、次いで、2枚のLBプレート上に塗布し、37℃で約30~48時間インキュベートした。いくつかの白色コロニーを、各プレートから選択し、LBプレート中に与えられた同じ抗生物質の組み合わせを含有するLB培地中で一晩培養した。次に、バクミドDNA及びグリセロールストックを調製し、-80℃で保存した。
【0215】
組換えバクミドDNAの精製
ある量のバクミドグリセロールストックを取り出し、上述のLBプレート中に与えられた同じ抗生物質の組み合わせを含有するLB培地中で培養する。培養物を37℃で一晩、振盪させながら増殖させる。次に、ある量のこの培養物を、微量遠心管内で、最高速度で約30秒間スピンさせる。
【0216】
ピペットを用いて、ペレットを再懸濁緩衝液中で再懸濁し、次に溶解緩衝液中で再懸濁し、管を数回反転させて緩衝液を混合し、次いで、室温で約5分間インキュベートした。例示的な再懸濁緩衝液は、50mMのTris-CL、pH8.0、10mMのEDTA、及び100ug/mLのRNase Aを含む。例示的な溶解緩衝液は、200mMのNaOH及び1% SDSを含む。ある量の沈殿緩衝液(例えば、3.0Mの酢酸カリウムを含む緩衝液、pH5.5)をゆっくりと加え、管を数回反転させて緩衝液を混合し、次いで、氷上で約10分間インキュベートした。管を最大速度で約10分間遠心し、上清を、イソプロパノールを含有する管内に注ぎ入れる。管を数回反転させて、溶液を混合した。
【0217】
次に、この溶液を、室温で約15分間、最大速度で遠心し、ピペットを用いて、遠心分離した直後に上清を取り除いた。
【0218】
ある量の70%エタノールを添加して、ペレットをすすぎ、最大速度で1分間再度スピンした。次いで、エタノールを除去し、溶液を再度スピンして、微量のエタノールを取り除く。ある量のTE/EB緩衝液を各管に添加し、ペレットをピペットで注意深く溶解させる。すぐに使用しない場合は、この溶液を-20℃で保存した。
【0219】
組換えバキュロウイルスのP0ストックの生成
Sf9細胞を、6ウェルプレート中の約1×106細胞/ウェル(または10cmウェルプレート中の6×106細胞または15cm皿中の1.7×107細胞)で播種し、細胞をトランスフェクション前に少なくとも1時間付着させた。
【0220】
トランスフェクション溶液A及びBを以下のとおりに調製する:溶液A:ある量のバクミドを、15mL管内の抗生物質を含有しないある量の無血清培地中に希釈した。溶液B:ある量のCellFectinを、15mL管内の抗生物質を含有しないある量の無血清培地中に希釈した。溶液Bを、溶液Aに添加し、ピペットで約3回、ピペットで穏やかに混合し、室温で30~45分間インキュベートした。次に、プレートからの培地を吸引し、抗生物質を含有しないある量の無血清培地を添加し、細胞を洗浄した。抗生物質を含有しないある量のSF900IIを、脂質-DNA混合物を含有する各管に添加した。
【0221】
細胞からの培地を吸引し、トランスフェクション溶液を細胞に添加し、細胞を28℃で約5時間インキュベートした。トランスフェクション溶液を除去し、ある量の無血清培地及び抗生物質を添加し、28℃で約4日間インキュベートした。組換えバキュロウイルスを含有する培地を収集し、1000rpmで約5分間回転させて、細胞残屑を除去した。バキュロウイルスを、4℃暗下で保存した。
【0222】
バキュロウイルス(P1)の増幅
Sf9細胞を、約4×106細胞/mLに増幅させ、振盪フラスコ内で新鮮な培地で約2×106細胞/mLに希釈した。ある量のSf9細胞に、ある量のP0ストックバキュロウイルスを感染させた。感染多重度(MOI)は、約0.1である。
【0223】
Sf9細胞を、約3日間インキュベートし、バキュロウイルスを回収した。細胞を2,000rpmで5分間スピンして、細胞をペレット状にし、上清を収集し、4℃暗下で保存した。Clontech社のRapid Titerキットプロトコルに従って、バキュロウイルスの力価を決定した。
【0224】
P1組換えバキュロウイルスを用いたAAVの生成
Sf9細胞を、約1×107細胞/mLに増殖させ、約5×106細胞/mLに希釈した。ある量の希釈したSf9細胞に、Bac-ベクター(5Moi)及びBac-ヘルパー(15Moi)を3日間感染させた。3日目に細胞生存を評価した(約50%~70%の死細胞が観察される)。
【0225】
細胞ペレットを、3000rpmで10分間の遠心分離により回収した。培地を除去し、細胞を溶解させた(または、すぐに使用しない場合は、細胞ペレットを、-20℃で保存した)。
【0226】
溶解及びバンド形成/精製プロトコル
ある量のSf9溶解緩衝液及びベンゾナーゼを各細胞ペレットに添加し、十分にボルテックスして、細胞を再懸濁させる。再懸濁させたSf9細胞を、氷上で約10分間インキュベートして、溶解物を冷却した。溶解物を約20秒間超音波処理して、細胞を十分に溶解させ、次いで、37℃で約30分間インキュベートした。
【0227】
ある量の5M NaClを添加し、混合物をボルテックスし、次いで、37℃でさらに30分間インキュベートした。ある量のNaClを添加して、塩濃度を約500mMにし、ボルテックスし、8,000rpm、15℃で20分間遠心分離して、清澄な溶解物を生成した。
【0228】
清澄な溶解物を、超遠心分離工程に進ませる。CsCl勾配は、長い針を有する注射器を通じて、初めに清澄な溶解物を添加し、次いで、ある量の1.32g/cc及びある量の1.55g/cc CsCl溶液を添加することにより調製した。CsCl溶液間の接触面に印を付けた。PBSを、遠心管の頂部まで添加し、管を注意深く平衡させ、密封した。
【0229】
管を55,000rpm、15℃で約20時間遠心した。各管の頂部に穴をあけ、2つのCsCl溶液の接触面マークの少し上に位置するAAVバンドに印を付ける。
【0230】
AAV溶液を70.1Tiローター用遠心管に移すことによって、第2のCsCl遠心分離を行い、管の頂部近くまである量のCsCl溶液を添加した。管を平衡させ、密封した。管を65,000rpmで約20時間遠心分離し、AAVバンド(より低いバンド、より高いバンドは空のカプシドである)を収集した。
【0231】
実施例5
Rag2マウスにおけるコンストラクトの評価
コドンを最適化したSQ FVIIIをコードする遺伝子配列を含むAAVビリオンを、
図1のFVIIIベクター、Proto1、Proto1S、Proto2S、及びProto3Sコンストラクトを用いた、バキュロウイルス及び293細胞を用いて作製した。パッケージングの限界は、バキュロウイルスの場合は約4800bp、293細胞の場合は約4950bpである。
【0232】
図5に示すように、切断型(T)または非切断型(NT)のゲノムで試験したすべてのコンストラクトは、FVIII配列を形質導入することができる。Proto1からのFVIIIの発現は、これらのAAVがバキュロウイルス系によって作製された場合に、
図1のFVIIIコンストラクトと同様であった。2S及びProto3Sにおけるイントロンの包含は、Proto1と比較して、改善したFVIIIの発現をもたらさなかった。293細胞内で作製されたAAVフランキング配列を含有する
図1のFVIIIベクターは、バキュロウイルス内で作製されたAAV配列を欠く同じベクターよりもさらに強力であった。結果として、有効性及び関連FVIII発現を増加させる試みにおいて、さらなるエンハンサーを、Proto1、例えば、コンストラクト101、102、102及び104に添加した。
【0233】
実施例6
改善されたプロモーター/エンハンサー配列を有するAAV FVIIIベクターの発現及び活性
さらなる組換えAAV FVIIIベクターの発現及び活性を、流体力学的注射プロトコルを用いて試験した。流体力学的送達は、インビボで様々な組換えAAV FVIIIベクターの効率をスクリーニングするための迅速な方法である。具体的には、AAV FVIIIプラスミドDNAは、上述のように作製し、次いで、TransIT-QR流体力学的送達溶液中で希釈した。プラスミドDNAを、(マウス重量(g)/10)=0.1mlの送達溶液)によって決定される体積で、5~6週齢C57Bl/6マウス(18~25g)の尾静脈に注射した。注射時間は、5秒間未満であった。次いで、各マウスからの血漿を、注射から48時間後に収集し、発現されたFVIIIタンパク質の量を、ELISAアッセイを用いて測定した。注射したマウスの血漿中のFVIIIの量を、ELISA試験を用いて測定し、組換えFVIII(Xyntha SQ等価)を、比較のための標準物質として用いた。
【0234】
FVIII発現を調査するために、本発明のある特定の組換えAAV FVIIIコンストラクトは、インビボで機能性FVIIIタンパク質の発現をもたらすそれらの能力を測定するために、流体力学的注射プロトコルにおいて試験した。
図6に示されるように、5μgのプラスミド投与で試験したすべてのコンストラクトは、様々な効率レベルで機能性FVIIIを生成した。
【0235】
図7及び8は、本発明の様々な組換えAAV FVIIIコンストラクトの1μgのプラスミド投与のための流体力学的注射についてのデータを提供する。
図7及び8に示されるように、試験された様々なコンストラクトの注射はすべて、様々な効率レベルでFVIIIタンパク質のインビボでの発現をもたらした。
【0236】
実施例7
p-100 ATGBベクターを含むAAVウイルスの分析
配列番号45として本明細書に示されるFVIII-SQをコードするベクターp-100 ATGBを含むAAVウイルス(「AAV5-p100ATGB-FVIII」)を、生成し、上の実施例5に記載される、Rag2マウスにおける機能性FVIII-SQタンパク質を発現する能力について評価した。より具体的には、Rag2マウスを、6E12vg/kg、2E13vg.kg、または6E13vg/kgのいずれかの投与でAAV5-FVIII-SQウイルスまたはAAV5-p100ATGB-FVIIIウイルスの単回投与で投与し、その後に、FVIIIタンパク質濃度を、マウスの血流中で決定した。これらの分析の結果は、AAV5-p100ATGB-FVIIIウイルスの投与が、試験した2つのより低量のAAV5-FVIII-SQウイルスを投与したよりも、循環機能性FVIIIタンパク質レベルが約3倍高かったことを示した。試験した最高用量でさえ、AAV5-p100ATGB-FVIIIウイルスが、AAV5-FVIII-SQウイルスを投与したよりも、循環機能性FVIIIタンパク質レベルが高かったが、観察された発現の差は、試験した最高用量で若干弱毒化した。これらの結果は、AAV5-p100ATGB-FVIIIウイルスがインビボで肝細胞を有効に形質導入し、機能性FVIIIタンパク質の高いレベルの発現を提供することを示す。
【0237】
実施例8
血友病Aのための特定の組換えFVIII AAVベクター/ウイルスの研究
血友病A(HA)は、5,000人の男性に1人の男性が冒されるX連鎖劣性出血性障害である。内因性凝固カスケードにおける必須の補助因子、凝固第VIII因子(FVIII)の活性の不足により生じる。この障害は、新規の変異体または後天性免疫プロセスのいずれかにより遺伝し得、FVIIIの不十分な量または機能不全性FVIIIをもたらすが、すべては、凝血障害プロセスを特徴とする。HA患者の臨床表現型は、大部分は、残留発現のレベルによって制御される。重度のHAは、1%未満の野生型のFVIII活性(1IU/dL未満)に分類され、中程度の疾患は、1~5%の野生型の活性(1IU/dl~5IU/dl)を含み、軽症型は、5~40%の活性(5IU/dl~40IU/dl)である。重度のHAの臨床症状は、しばしば、主に、関節及び軟組織において、依然として自然出血症状発現の状態であり、脳が関与する場合には、出血からの死亡のリスクを大幅に増加させる。
【0238】
重度のHAの治療は、現在、出血症状発現を予防または制御するために、それぞれ、予防として1週間につき2~3回及び出血時の両方で、血漿由来または組換えFVIIIタンパク質(rhFVIII)の濃縮物の静脈内注射からなる。rhFVIIIの半減期(最も承認された生成物において24時間下で)は、頻繁な注入を必要とし、HAの治療における大きな進歩であるが、重度のHA患者においては、治療中に複数の出血事象を継続して有することはよく見られる(オンデマンド治療において最大30~50の予防法を有する、平均1~7の症状の発現/年)。複数の出血事象の結果は、衰弱させる多関節の関節症の一因となり、その後、死亡のリスクを大幅に増加させる、基礎病理の発生である。化学的修飾(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーの直接複合)及びFVIII(例えば、FVIII-Fc融合タンパク質)の生体工学は、半減期を約50%向上させ、それ故に、期待できる投与の減少、及び活性レベルのトラフを1%超に維持することを示す。しかしながら、これらの長時間作用するFVIIIは、重度のHA患者において、FVIII活性の臨界値を維持するために頻回注入に依存したままである。したがって、患者に、正常かつ出血のない生活に適合するFVIIIレベルを与えるためのHAの完全な予防的治療への強い満たされない要求がある。
【0239】
遺伝子治療は、活性なFVIIIの連続的な内因性生成し、適切な遺伝子配列を有するベクターの単回静脈内投与による疾患修飾性療法の可能性を提供する。血友病Aは、臨床症状が血漿中で微量(200ng/ml)に循環する単一遺伝子生成物(FVIII)の欠如に起因するため、遺伝子置換アプローチによく適している。遺伝子発現の厳重に調節される制御は、必須ではなく、FVIIIのレベルの軽度増加(血漿中濃度のいかなる増加(2ng/ml)により、1%の活性の増加を促す)は、重症型の疾患を改善し得る。それ故に、内因性FVIII活性の比較的小さい変化は、疾患表現型の臨床的に関連する改善をもたらす。最後に、遺伝子の導入への反応は、構築された実験技術を用いて容易にアッセイされる定性的エンドポイントよりも有効な定量的エンドポイントを用いて評価され得る。
【0240】
FVIII置換においていくつかの異なる遺伝子導入戦略が評価されているが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、最も有望であることを示す。それらは、卓越した明確な安全性プロファイルを有し、肝臓等の特定組織に対して(とりわけ、血清型2、5、及び8に対して)、長期間の導入遺伝子の発現を向性に向かわせ得る。実際に、関連疾患である血友病Bに対して継続的な遺伝子治療臨床試験は、重度から中等度または軽度の出血表現型の変換には十分であるレベルでヒト第IX因子の安定した(36ヶ月超の)発現が組換えFIX AAV-8ベクターの単回末梢静脈投与後に達成可能であることを確立している。この試験の数人の参加者は、これまでは出血をもたらした行動を行った時でさえ、自然発症型出血に苦しむことなく、予防因子を中断することができた。それ故に、遺伝子療法治療は、彼らの生活の質において大幅な改善をもたらした。
【0241】
さらなる前臨床研究
組換えFVIII-SQをコードするベクターProto1(本明細書において、
図2A及び配列番号1に示される)は、上述のように、バキュロウイルス/Sf9に基づいた発現系を用いて組換えAAV5 FVIII-SQコードウイルスを生成するために使用された。作製されたウイルス(本明細書では、「AAV5-FVIII-SQ」と称される)は、精製され、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)を含有する0.001%ポロキサマー188において、前臨床動物試験のために製剤化された。
【0242】
AAV5-FVIII-SQ非臨床的プログラムは、ヒト患者における組換えウイルスの単回IV投与を支持するために、形質導入、FVIII-SQタンパク質の相対発現及び活性、ならびにAAV5カプシドの全安全性プロファイル及びAAV5-FVIII-SQのFVIII-SQ導入遺伝子の生成物成分を明らかにするために設計された。AAV5-FVIII-SQの非臨床的プロファイルは、インビトロ研究の1つ、マウスにおける10の単回投与研究、正常な野生型(WT)、Rag2-/-(B6.129S6-Rag2tm1Fwa N12)、及び第VIII因子-/-(B6;129S-F8tm1Kaz/J)(Rag2-/-マウス(Rag2-/-×FVIII-/-)、ならびにカニクイザル及びアカゲザルと交配させた)を通して評価された。
【0243】
薬力学的(PD)評価は、AAV5-FVIII-SQ遺伝子療法が、(i)マウスにおける、ReFacto(登録商標)(rhFVIII-SQ;欧州では、ReFacto(登録商標)として、米国では、Xyntha(登録商標)として市販)と比較して、正しくサイズ指定されたFVIII-SQ(軽鎖及び重鎖)の血漿発現をもたらす、(ii)AAV5-FVIII-SQの投与が、体外から投与されたReFacto(登録商標)と同様に、用量依存的な様式において、血友病Aのマウスモデルにおいて凝血障害を治療した、ならびに(iii)IV注入を介した提案された臨床投与経路は、血漿FVIII-SQタンパク質及び活性、または対応する肝臓RNA及びDNAレベルをマウスにおいて比較する時に、ボーラス投与と同様またはそれよりも良好である可能性があることを実証した。
【0244】
非ヒト霊長類における一時的FVIII-SQ発現は、種特異であると思われ、ヒト患者において安定した導入遺伝子の発現を達成した他の臨床研究において見られたような、診療所において生じることは予期されない。免疫原性は、診療所において厳重にモニタリングされ、タンパク質発現との関係が評価されよう。
【0245】
全非臨床的プログラムは、AAV5-FVIII-SQ及びその主な成分、AAV5カプシド及び導入遺伝子生成物FVIII-SQによる毒性の可能性を考慮した。FVIII-SQは、市販の組換え因子置換治療、ReFacto(登録商標)と同じアミノ酸配列を有する。毒物学的プログラムの設計は、標的臓器の特定、相対的血漿FVIII-SQタンパク質及び相対的活性、免疫原性及び肝臓DNAゲノム及びRNAを含む、AAV5-FVIII-SQの毒性学的プロファイルを特徴付けることを目的とした。4週及び13週の追跡期間を有する正常なCD-1マウスにおける、あるGLP単回投与研究を、AAV5-FVIII-SQを用いて行った。Rag2-/-×FVIII-/-マウス及び正常なサルにおけるPD研究は、組織学及び臨床病理学のさらなる毒性パラメータを含んだ。
【0246】
AAV5-FVIII-SQの非臨床的安全性プロファイルは、以下の免疫原性の予測された観察を含んだ:(i)すべてのAAV5ベクターで処置された免疫応答性動物(CD1マウス及びサル)の血漿中の抗AAV5抗体の検出、ならびに(ii)免疫応答性動物における抗FVIII-SQ抗体の検出が、FVIII発現または活性と相関しなかったが、6E12または6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを施された4匹のサルにおいて僅かにAPTTの延長におけるコントリビュータであり得ることが1匹のマウス及び数匹のサルにおいて観察された。抗体レベルは、成熟B及びTリンパ球を欠き、抗体応答を引き起こすことができないため、Rag2-/-由来マウスにおいて決定されなかった。しかしながら、サルFVIIIを用いた抗FVIII-SQ抗体の種間交差反応は、評価されず、凝血中の抗体の影響に関する確固たる結論を不可能にした。非用量依存的な最小から軽度の腎炎が、8週間後のRag2-/-×FVIII-/-マウスにおいて観察され、腎臓機能障害を示す腎臓臨床化学パラメータの対応する変化はなかった。腎臓所見は、13週間後にCD-1マウスにおいて観察されず、このことは、異種タンパク質への株特異的な反応を示唆した。肝臓臨床化学においてAAV5-FVIII-SQに関連した変化は、肝機能性障害または細胞毒性を示し得るサルにおいて観察されなかった。順応及び研究期間を通して体重減少により、14日目に、6E12vg/kgを施されたアカゲザルの予定該の殺処分が行われ、死亡率は、持続する体重減少及び進行中の大腸所見により、AAV5-FVIII-SQと関連しないと見なされた。肝臓臨床化学パラメータの変化を含む、他のAAV5-FVIII-SQに関連した所見は、AAV5-FVIII-SQを施された、カニクイザルまたはアカゲザルにおいて顕著であった。
【0247】
特異的な所見は、予測された免疫原性以外にはFVIII-SQ導入遺伝子生成物とは関連性がなかった。FVIII-SQ導入遺伝子生成物が市販の酵素処理、ReFacto(登録商標)と同じである最終配列を有するため、固有のFVIII特異的標的臓器毒性は、特定されなかった。
【0248】
予測された免疫原性に加えて、固有のAAV5カプシド関連の毒性は、非臨床的プログラムにおいて観察されなかった。AAVカプシドの免疫原性は、非臨床的及び臨床プログラムにおいてモニタリングされよう。
【0249】
正常及び疾患モデルマウスの両方ならびに限定された数のサルは、概念実証を確立し、6E12vg/kgのFIH投与量を選択するために、潜在的な種のスケーリング及び用量反応を評価するために使用された。開始用量は、マウス(正常及び疾患モデル、Rag2-/-×FVIII-/-)及びサルにおいて行われた前臨床研究からの全データを考慮した。活性に基づいて検出可能な薬理学的反応は、マウス及び2種のサルにおいて、6E12vg/kgで観察された。さらに正確な用量推奨を確定し得るような、マウスとカニクイザルとアカゲザルの間で一貫した種間スケーリングは、見られなかった。10倍の安全マージンは、投与した最高用量で正常マウスにおけるGLPの13週間研究において、6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQのNOAELに基づいた。臨床観察または化学のAAV5-FVIII-SQに関連した変化は、8週間後の10倍の安全マージンである、最大6E13vg/kgの用量でマウスにおいて観察されなかった。全体としては、すべての動物における抗AAV5抗体の予測された形成及び免疫コンピテント動物における抗FVIII-SQ抗体の低力価の限定された形成を除いた、AAV5-FVIII-SQに関連した所見は、正常マス及びサルにおいて、それぞれ、最大投与用量の6E13vg/kgでは観察されなかった。
【0250】
インビトロで1つ、及びインビボで9つの研究が、AAV5-FVIII-SQ(6つの非GLPマウス研究及び3つの非GLPサル研究)の主要薬力学的(PD)を評価するために行われた。すべての研修は、単回投与であり、静脈内(IV)投与経路を使用した。提案された臨床投与経路は、最長60分間のIV注入である。このプログラムにおける動物の大部分は、IVボーラス注射を介してAAV5-FVIII-SQが投与され、そのため、FVIII-SQ発現における投与期間の評価(30分間のIVボーラス対注入)は、1つのマウス研究を評価した。2E10~2E14vg/kgのAAV5-FVIII-SQを施されたマウスにおける2つの用量反応研究は、8週間後の肝臓におけるDNA及びRNAの発現を含む、FVIII-SQタンパク質及び活性の血漿濃度のPD関係を確立した。1つのマウス研究は、製造のために、バキュロウイルス感染細胞株の選択を支持した。1つのマウス研究は、4週間及び13週間にわたって、肝臓DNA及びRNAと共に、血漿FVIIIタンパク質及び活性を評価した。1つのマウス研究は、凝血の機能的評価として出血時間を評価した。2つのサル研究は、製造のために、ベクターAAV5及びバキュロウイルス感染細胞株の選択を支持した。第3のサル研究は、カニクイザル及びアカゲザルにおけるAAV5-FVIII-SQのPD効果を比較した。
【0251】
PDエンドポイント(血漿FVIII-SQタンパク質及び活性、肝臓DNAベクターゲノム及びRNA転写コピー)は、マウス及びサル研究において評価した。肝臓DNAベクターゲノム及びRNA転写コピーは、AAV5-FVIII-SQによる肝臓の形質導入を確認するために評価された。血漿FVIII-SQタンパク質及び活性は、FVIII-SQ導入遺伝子の肝臓発現のバイオマーカーとして使用された。いくつかの毒性エンドポイントは、2種にわたる用量関係を評価するために、1つのマウス研究(組織学)及び3つのサル研究(臨床病理学)に組み合わせられた。
【0252】
Rag2-/-×FVIII-/-マウスにおけるAAV5-FVIII-SQの薬力学的評価
この研究の目的は、6E12または6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与された雄Rag2-/-×FVIII-/-マウスにおける単回IV投与から4週間及び13週間にわたるAAV5-FVIII-SQの一次PDを評価することであった。PDエンドポイントは、血漿FVIII-SQタンパク質及び活性レベル、ならびに肝臓FVIII-SQ RNA及びDNAの存在を含んだ。6匹の雄Rag2-/-×FVIII-/-マウスは、研究開始時に8週齢であった。動物は、6つの群(10/群)に無作為に割り当てられ、尾静脈を介して、ビヒクル、6E12または6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQのいずれかの単回IV注射が与えられた。
【0253】
適切なモノクローナル抗体は、FVIII重鎖についてはGMA8023、FVIII軽鎖についてはGMA8001を、2μg/mlの最終濃度で一晩プレート上にコーティングされた。翌日、ウェルを、緑色希釈剤でブロックし、群4及び群6からのマウス血漿サンプル(50ul)、またはXyntha(登録商標)(500ng/ml)を添加された正常マウスサンプルを、等体積の緑色希釈剤で希釈し、100μlの混合物を、FVIII重鎖または軽鎖の濃縮のために個々のウェルに添加した。濃縮された血漿サンプルを、還元ポリアクリルアミドゲルを変性することによって分解し、ウエスタン分析のためのニトロセルロース膜に移した。FVIII重鎖を、ビオチン共役抗FVIIIポリクローナル(SAFC-APBIO、0.5μg/ml)及びストレプトアビジン共役アルカリホスファターゼ(0.25μg/ml)で連続インキュベーションによって検出した。FVIII-SQ軽鎖を、抗FVIIIモノクローナル(GMA8025、1.0μg/ml)及びロバ抗マウス共役アルカリホスファターゼ(0.25μg/ml)で連続インキュベーションによって検出した。膜を、アルカリホスファターゼ基質(WesternBlue)を沈殿する比色分析を用いて現像し、画像化した。
【0254】
ウエスタンブロットによって6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与した動物からの血清のAAV導入遺伝子由来のFVIII-SQ重鎖及び軽鎖の分子量の評価は、発現した血漿FVIII-SQ重鎖及び軽鎖が、rhFVIII-SQタンパク質と同様の分子のサイズであったことを確立した。これは、潜在的に切断型のゲノムの代わりに、FVIII-SQの重鎖及び軽鎖の両方の発現が、正しいサイズであったことを示す。かかる切断型のゲノムでベクターからのジスフェルリン及び血友病A第VIII因子の有効かつ機能的発現は、これまでに実証された。血漿FVIII-SQタンパク質の両鎖の分子量は、正しいサイズであり、対応するマウスは、FVIII-SQ活性を有した。
【0255】
Rag2-/-マウスにおけるIVボーラス及び注入研究
この研究の目的は、投与の5週間後にRag2-/-マウスにおける肝臓組織中での6.0E12及び2.0E13vg/kgのFVIII-SQ DNA及びRNAの単回IVボーラスまたは30分間のIV注入の効果、ならびに血漿FVIII-SQタンパク質及び活性レベルを比較することであった。60匹の雄Rag2-/-マウスは、研究開始時に約8週齢であった。動物は、6つの群(10動物/群)に無作為に分配された。群1~3及び4~6に、それぞれ、尾静脈を介して、単回IVボーラスまたは30分間のIV注入(ビヒクル、6.0E12、または2.0E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQ)を投与した。
【0256】
6.0E12vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与した動物において、hFVIII-SQベクターゲノム/肝臓細胞は、それぞれ、IV注入及び低速ボーラス群において、5.06E-2及び3.50E-2であった。肝臓中のFVIII-SQ発現コピー/μg RNAは、それぞれ、IV注入及びボーラス群において、3.76E4及び1.87E4であった。2.0E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与した動物において、DNA値は、注入群の場合は0.342ベクターゲノム/細胞であり、ボーラス群の場合は0.316ベクターゲノム/細胞であった。肝臓中のFVIII-SQ発現コピー/μg RNAは、注入群の場合は2.35E5であり、ボーラス群の場合は1.53E5であった。
【0257】
6.0E12vg/kgのAAV5-FVIII-SQ(低用量)を投与した動物において、ボーラスまたは30分間の注入によってIV投与した時の肝臓RNA及びDNAレベルまたは血漿FVIII-SQタンパク質及び活性の差がほとんどなかった。2.0E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与した動物において、IV注入による30分間にわたる投与は、血清中のFVIII-SQタンパク質及び活性をほぼ2倍にしたが、肝臓RNA及びDNAレベルは、同様のままであった。これらのデータに基づいて、IV注入を介した提案されたAAV5-FVIII-SQの臨床投与は、ボーラス投与と同様であるかまたはそれより良好である可能性が高い。
【0258】
Rag2-/-×FVIII-/-マウスにおける出血時間の評価
この研究の目的は、野生型マウス(C57BL/6J)と比較して、雄Rag2-/-×FVIII-/-マウスにおけるAAV5-FVIII-SQの単回投与の8週間後の出血時間の機能性凝血エンドポイントを評価することであった。さらに、AAV5-FVIII-SQ治療の8週間後の出血時間の変化は、ReFacto(登録商標)で処置したRag2-/-×FVIII-/-マウスにおいて達成された結果と比較された。100匹の雄Rag2-/-×FVIII-/-マウス及び20匹の雄の週齢を適合させたC57BL/6Jマウスは、研究開始時に約8週齢であった。動物を、4つの群(20動物/用量)に無作為に分配し、尾静脈を介して、AAV5-FVIII-SQの単回IV注射を投与した(C57BL/6J:ビヒクル、Rag2-/-×FVIII-/-:ビヒクル、2.0E13または1E14vg/kgのAAV5-FVIII-SQ)。
【0259】
ReFacto(登録商標)を投与したRag2-/-×FVIII-/-動物は、出血時間及び体積の用量依存的な減少を有した。50U/kgのReFacto(登録商標)を投与したRag2-/-×FVIII-/-動物において、0.49±0.30gの平均血液損失及び18.1±9.39分の平均出血時間が観察された。200U/kgのReFacto(登録商標)を投与したRag2-/-×FVIII-/-マウスにおいて、0.134±0.19gの平均血液損失及び4.29±6.16分の平均出血時間があった。
【0260】
ReFacto(登録商標)及びFVIII-SQの血漿中濃度は、それぞれ、50U/kgのReFacto(登録商標)及び2E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与したマウスにおいて同様であった。
【0261】
AAV5-FVIII-SQのRag2-/-×FVIII-/-マウスへの投与は、投与から8週間後に血液損失体積及び出血時間の用量依存的な減少をもたらした。血液損失体積及び出血時間の用量依存的な減少は、投与から8週間後に観察された。1E14vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与した動物において、血液損失及び出血時間は、ReFacto(登録商標)処置で達成された補正値と比較して、野生型レベルに対して補正された。AAV5-FVIII-SQの投与は、体外から投与されたReFacto(登録商標)と同様に、用量依存的様式において、血友病Aのマウスモデルにおける凝血障害を治すことができる。
【0262】
Rag2-/-×FVIII-/-マウスにおける用量反応
2E11~2E12vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与したRag2-/-×FVIII-/-マウスにおいて、血漿FVIII-SQタンパク質または活性レベルは検出されなかった。
【0263】
本研究において、60匹の雄Rag2-/-×FVIII-/-マウスは、研究開始時に約8週齢であった。動物を、6つの群(10動物/用量)に無作為に分配し、尾静脈を介して、AAV5-FVIII-SQの単回IV注射を投与した(ビヒクル、2E12、6E12、2E13、6E13、及び2E14vg/kgのAAV5-FVIII-SQ)。
【0264】
FVIII-SQ血漿タンパク質レベルは、概ね、1.5E12vg/kg以上のAAV5-FVIII-SQを投与した動物において用量依存的であった。FVIII-SQタンパク質レベルは、1.7E11vg/kg以下のAAV5-FVIII-SQを投与した動物において定量レベルを下回った。PD活性は、概ね、用量と共に増加し、活性と相関性があった。1.8E13vg/kg以下のAAV5-FVIII-SQを投与した動物において、動物間変動性が観察され、サブセットの動物のみが、血漿FVIII-SQ及び活性の検出可能なレベルを有した。
【0265】
FVIII-SQタンパク質及び活性レベルと一致して、ベクターゲノムコピー及び発現コピー(RNA)が、1.5E12vg/kg以上のAAV5-FVIII-SQを投与した動物において観察された。ベクターゲノムDNAコピー及び発現コピーRNA/μg RNAは、概ね、用量と共に増加した。
【0266】
FVIII-SQ血漿タンパク質レベル、活性レベル、ならびにベクターゲノム及びRNAレベルは、概ね、1.5E12vg/kg以上のAAV5-FVIII-SQを投与したRag2-/-×FVIII-/-動物において用量依存的であった。1.5E12(2匹の動物)または1.8E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQ(10匹のうち8匹の動物)を投与したサブセットの動物において、用量は、6.0E12vg/kgのAAV5-FVIII-SQの提案されたFIH臨床用量の階層内であり、活性は、正常の2.8~66.4%の範囲であった。これは、結果として得られる血漿FVIII-SQタンパク質及び活性レベルが動物においてより一貫性のある反応を与える可能性があるため、臨床におけるPD活性が、6.0E12の用量レベルで達成され得ることを示す。
【0267】
カニクイザルにおけるカプシド選択
この研究の目的は、カニクイザルへの単回IVボーラスとして投与した時の8週間にわたるFVIII-SQ導入遺伝子を用いた2つのカプシド(AAV5.2 FVIII-SQ及びAAV8.2 FVIII-SQ、すなわち、それぞれ、AAV5及びAAV8カプシドタンパク質、及びAAV2 ITR)の相対的活性を評価することであった。8匹の雄カニクイザルは、研究開始時に2.8~4.1歳であり、体重は、2.6~3.6kgであった。すべての動物は、免疫枯渇させたカニクイザルの血清と比較して、抗AAV5または抗AAV8形質導入の阻害活性について予めスクリーニングした。動物は、4つの群に割り当てられ、単回低速ボーラス静脈内投与として、2.0E12または2.0E13vg/kgのAAV5.2-hFVIII-SQまたはAAV8.2-hFVIII-SQのいずれか(それぞれ、0.5及び5.0mL/kg)を投与した。
【0268】
AAV5.2hFVIII-SQ及びAAV8.2hFVIII-SQの単回注射の投与は、検出可能なレベルの血漿FVIII-SQタンパク質レベルをもたらし、これは、2.0E13のベクター/kgを投与したカニクイザルにおいて良好な耐容性を示した。肝臓臨床化学においてAAV5-FVIII-SQに関連した変化は、観察されず、これは、肝機能性障害が観察されなかったことを示した。AAV5カプシドが、継続した開発のために選択された。
【0269】
カニクイザルにおける単回投与IV研究
この研究の目的は、カニクイザルへの単回IVボーラスとして投与した時の8週間にわたる2つの細胞株(バキュロウイルスに感染したsf9昆虫及びヒト293細胞)で生成された2つの生産ロットのAAV5-FVIII-SQの相対的活性を評価することであった。8匹のナイーブ雄サルは、処置開始時に3.9~4.3歳であり、体重は、2.8~4.3kgであった。すべての動物は、研究への割り当て前に、抗AAV5抗体及びAAV5形質導入の阻害活性について予めスクリーニングした。各サル(2/用量群)は、単回低速ボーラスIV注射(2E13及び6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQ)を受け、8週間観察された。
【0270】
相対的血漿FVIII-SQタンパク質レベルは、8週間にわたって評価された。可能なAAV5-FVIII-SQに関連したAPTTの延長は、抗FVIII抗体形成を有する動物において観察された。これは、外因性因子置換においては既知の潜在的な免疫原性の結果である。肝臓臨床化学においてAAV5-FVIII-SQに関連した変化は、観察されず、これは、肝機能性障害が観察されなかったことを示した。血漿FVIII-SQレベルは、3~6週間にわたって増加したが、その後減少した。
【0271】
AAV5-FVIII-SQを投与したすべての動物は、投与の2週間後に、血漿中にFVIII-SQのレベルを発現した。全般に、FVIII-SQレベルは、経時的に増加し、その後、8週目までに減少した。血漿FVIII-SQのピークレベルは、4.8ng~67.4ngのFVIII-SQ/mlの範囲であった。
【0272】
カニクイザル及びアカゲザルにおける単回投与IV研究
6E12及び2E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与したカニクイザル及びアカゲザルにおいて、FVIII-SQの相対的発現が6週間にわたって評価された。肝臓臨床化学においてAAV5-FVIII-SQに関連した変化は、観察されず、これは、肝機能性障害がないことを示した。血漿FVIII-SQタンパク質レベルは、アカゲザルと比較して、カニクイザルにおいて高かった。血漿FVIII-SQレベルは、4~5週間にわたって増加したが、その後減少した。肝臓ベクターゲノムDNAは、AAV5-FVIII-SQを投与しすべての動物において検出され、これは、AAV5-FVIII-SQ形質導入レベルが、すべての動物において生じたことを暗示した。肝臓FVIII-SQ RNAコピーが、血漿FVIII-SQタンパク質を発現した動物において観察された。肝臓臨床化学においてAAV5-FVIII-SQに関連した変化は、生存サルにおいて観察されず、これは、肝機能性障害が観察されなかったことを示した。
【0273】
結論
全体的に見て、複数のRag2-/-×FVIII-/-マウス研究において、血漿FVIII-SQタンパク質及び正常ヒト活性の割合(%)は、一般に、用量に比例していると思われ、肝臓におけるDNA及びRNAについても同様であった。FVIII-SQ活性及びタンパク質レベルは、一般に、マウスにおいてAAV5-FVIII-SQの単回投与後に時間と共に増加したが、RNAは、時間と共に肝臓において増加した。血漿FVIII-SQタンパク質の発現及び活性は、これらの研究において相互関係を示す傾向があった。血漿FVIII-SQレベル及び活性によって証明されるように、6E12vg/kg以下のAAV5-FVIII-SQを投与した動物において、動物間及び研究間で高い変動性があった。血漿FVIII-SQタンパク質レベルの一貫性がある発現は、6E12vg/kg以上のAAV5-FVIII-SQを投与した動物において観察された。
【0274】
2E12~6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQを投与した限られた数のサルにおいて、血漿FVIII-SQレベルは、6E12vg/mL以上投与した動物において検出されたが、検出可能な血漿レベルは、2E12vg/kgを投与した動物においては観察されなかった。
【0275】
カニクイザルにおいて行われた研究において、FVIII-SQの発現は、投与の3~5週間後にピークであり、場合によっては、検出の限界を下回るレベルまで研究終了にかけて減少した。場合によっては、抗FVIII抗体は、血漿中のFVIII-SQレベルがピークになる前、またはピークになった後の動物において検出された。しかしながら、抗体は、FVIII-SQの減少した発現を有するすべての動物において検出されたわけではなく、このことは、他の潜在的な機構が、細胞毒性T-リンパ球(CTL)媒介性の形質導入細胞のクリアランス等の発現を阻害すること、またはあるいは、発現の他の非特異的な阻害剤を示唆した。非ヒト霊長類における一時的FVIII-SQ発現は、種特異であると思われ、診療所において生じることは予期されない。
【0276】
サルにおけるAAV5-FVIII-SQの単回IVボーラスは、提案された臨床開始用量6E12vg/kgから6E13vg/kgのAAV5-FVIII-SQで血漿中に測定可能なFVIII-SQタンパク質レベルをもたらし、マウスにおけるAAV5-FVIII-SQの投与は、比較可能な用量範囲にわたって研究において一貫して観察される血漿FVIII-SQタンパク質及び活性レベルをもたらした。第1/2相ヒト臨床試験の提案された開始用量、6E12vg/kgのAAV5-FVIII-SQは、サル及びマウスの両方において検出可能な血漿FVIII-SQタンパク質及び活性レベルも有した10倍の安全因子に基づいて選択され、治療量以下の結果の可能性を低下させた。
【0277】
重度の血友病Aに罹患しているヒト患者におけるAAV5-FVIII-SQの用量漸増安全性、耐容性、及び有効性研究
本研究において、
図2AのProto1 FVIII-SQベクターを含む組換えFVIII AAVビリオン(配列番号1)は、単回静脈投与によってヒト患者に送達されよう。この研究は、ベクターを形質導入した肝臓組織から合成される、血漿中に安定した潜在的に生涯にわたる活性hFVIIIの発現を達成するために設計される。この臨床研究は、ベクター用量と残留FVIII活性の増加との関係、及びこれらのレベルが、臨床表現型を変えるのに十分であるかどうかを評価するために設計された初のヒト研究である。用量と安全性の関係は、重度のHAに罹患している患者におけるhFVIIIの活性と相関関係を示すであろう。
【0278】
この研究の第一の目的は、(i)ヒトFVIII-SQをコードする組換えAAVの単回静脈投与の安全性を評価することと、(ii)注入の16週間後に、正常活性の5%以上(5IU/dL未満)でFVIIIの発現を達成するのに必要とされるFVIII-SQをコードする組換えAAVの用量を決定することである。血友病Aに罹患している個体におけるAAV媒介性のFVIII活性の動力学、持続時間、及び大きさが、決定され、適切な用量に対して相関関係を示すであろう。
【0279】
この研究の第二の目的は、(i)組換えFVIII AAVウイルスの全身投与後のFVIII導入遺伝子及び/またはAAVカプシドタンパク質に対する免疫応答を説明することと、(ii)研究期間中のFVIII置換療法の頻度におけるFVIII AAV投与の影響を評価することと、(iii)研究期間中の治療を必要とする出血症状発現の数における投与の影響を評価することである。
【0280】
組換えFVIII-SQをコードするベクターProto1(本明細書において、
図2A及び配列番号1に示される)は、バキュロウイルス/Sf9に基づいた発現系を用いて組換えAAV5-FVIII-SQウイルスを生成するために使用された。AAV5-FVIII-SQプロセスは、バッチ細胞培養、回収、精製、及び製剤化からなり、製剤化したバルク製剤原料(FBDS)をもたらす。FBDSは、タンデム0.2μmの滅菌フィルタを通して濾過し、充填前に滅菌バイオプロセス収集袋に収集される。次いで、AAV5-FVIII-SQは、1.1mlの滅菌FBDSを、2mlのクライオバイアルに充填することによって無菌で調製され、滅菌キャップで密封する。次いで、充填したバイアルを、ラベル付け、包装、及び-65℃以下で冷凍する前に、視覚的に検査する。
【0281】
臨床AAV5-FVIII-SQ液体製剤
上述の、非/前臨床研究のために使用されるAAV5-FVIII-SQ液体製剤がガラス及びプラスチック表面に対して組換えAAVの有意な吸着を示したため、ヒト臨床研究で用いるために有利な特性を有する新規のAAV5-FVIII-SQ製剤を開発するために、本明細書において作業が行われた。精製されたAAV5-FVIII-SQは、以下のとおりにヒト臨床研究のために製剤化された。
【0282】
精製された組換えAAV5-FVIII-SQウイルスは、1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、1.42mg/mlの二塩基性リン酸ナトリウム(乾燥)、8.18mg/mlの塩化ナトリウム、20mg/mlのマンニトール、及び2.0mg/mlのポロキサマー188(Pluronic F-68)、pH7.4を含む、ヒト患者へのIV投与に有用な液体製剤において様々な濃度で製剤化された。一実施形態において、上述の製剤中の組換えAAV5-FVIII-SQウイルスの濃度は、2E13vg/mlであった。結果として得られる液体製剤は、IV注入に有用な滅菌の透明/無色から淡黄色溶液であり、上述の非/前臨床研究のために使用された製剤と比較して、ガラス及びプラスチックへの結合に対するウイルス吸着損失を許容されるレベルまで低下させる。この液体製剤は、-65℃以下で保存中、延長期間中に安定していることが証明され、下述のヒト臨床研究において使用される。
【0283】
ヒト臨床研究の設計
重度の血友病Aに罹患しているこの初のヒト用量漸増研究への参加者は、(i)単回静脈投与(iv)として投与される、体重1キログラム当たり6E12ベクターゲノム、(ii)2E13vg/キログラム、静脈投与、または(iii)6E13vg/キログラム、静脈投与の、用量レベルに従って、最大3つのコホートのうちの1つに連続して登録され、注入の16週間後の追跡期間が続き、安全性及び有効性評価が得られるであろう。一次エンドポイント分析の16週間後に、安全性及び有効性は、約5年間評価されよう。
【0284】
患者は、コホート間で3週間毎またはそれ以上連続して登録されよう。3週間目に得られるFVIII活性が5IU/dL未満である場合、単一の患者が安全に投与された後に、用量漸増が生じ得る。3週間は、発現がほぼ最大である時間であると予測される。この漸増パラダイムは、治療量以下の用量に供される患者数を最小限に抑えることを目的とする。
【0285】
開始用量は、マウス及びサルの非臨床研究において観察されたFVIIIの発現及び安全性に基づいた。開始用量は、非ヒト霊長類における無毒性量(NOAEL)から有意な安全マージン(10倍)を有する。
【0286】
注射から約3週間後に、次の用量レベルを増減させる決定は、安全性パラメータ及びFVIII活性の検討に基づいてなされるであろう。FVIII活性が5IU/dL以上である場合、用量群の他の患者は、患者間で3週間待つことなく登録されよう。
【0287】
患者1は、体重1キログラム当たり6E12ベクターゲノム[vg]で静脈内流入によって投与されよう。活性レベルが21日で5IU/dL以上に達しない場合、より高い用量(2E13vg/キログラム)が、次の患者のために使用されよう。
【0288】
活性レベルが、患者2の後で、5IU/dL以上に達しない場合、より高い用量(6E13vg/キログラム)が、次の患者のために使用されよう。
【0289】
各用量に対して、活性レベルが5IU/dLに達し、かつ安全性の問題が見出されない場合、最大4人の患者がこの投与を受けるであろう。いかなる時点でも、活性レベルが10IU/dL以上に達した場合、さらなる用量漸増は行われないが、追加の患者は、1用量当たり合計6人の患者に対してこの用量レベルで投与されよう。
【0290】
肝臓酵素の頻繁なモニタリングが、この試験中のすべての患者に行われよう。ベースライン(すなわち、FVIIIベクター投与前)のアラニントランスアミナーゼ(ALT)濃度が決定され、投与後の1.5倍以上のALTの上昇は、治療的コルチコステロイドの使用をもたらすであろう。患者はまた、肝毒性を予防するために、コルチコステロイドを用いて、予防的(すなわち、FVIIIベクター投与前)に治療され得る。
【0291】
結果-患者1
患者1は、上述のように、体重1キログラム当たり6E12ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQで単回静脈内注入によって投与された。投与時に、患者1は、0.5IU/dl以下の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の7日後、患者1の循環血液第VIII因子レベルは、5.4IU/dlまで上昇し、投与の14日後には、19.2IU/dlまでさらに増加した。しかしながら、投与の21日後に、患者1の循環血液第VIII因子レベルは、0.5IU/dl以下まで減少し、その後、そのレベルを常に保った。
【0292】
結果-患者2
患者1の第VIII因子活性レベルが投与の21日間後に少なくとも5IU/dlではなかったため、患者2は、上述のように、単回静脈内注入によって、体重1キログラム当たり2E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQの用量まで増量した。投与時に、患者2は、0.1IU/dl以下の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者2の循環血液第VIII因子レベルは、0.7IU/dlまで増加し、投与の10週間後に2.1IU/dlまで増加し、投与の12週間後に2.4IU/dlまで増加し、投与の16週間後に1.9IU/dlまで増加し、投与の28週間後に2.4IU/dlまで増加し、後者は、投与前のレベルと比較して、少なくとも24倍の増加を表した。患者2で測定されたALTレベルは、28週間の観察期間中のいかなる時点でもベースラインを超えて1.5倍以上増加せず、したがって、コルチコステロイドでの治療は開始されなかった。
【0293】
結果-患者3
患者3は、上述のように、単回静脈内注入によって、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQの用量まで増量した。投与時に、患者3は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者3の循環血液第VIII因子レベルは、3.1IU/dlまで増加し、投与の10週間後に20.8IU/dlまで増加し、投与の12週間後に34.7IU/dlまで増加し、投与の16週間後に56.6IU/dlまで増加し、投与の28週間後に89.3IU/dlまで増加し、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0294】
患者3のALTレベルが、FVIIIベクター投与後にベースラインを超えて1.5倍増加することが観察されたため、対象は、継続観察期間にわたって、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療された。治療的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を低下させた。
【0295】
結果-患者4
患者4に、上述のように、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQを単回静脈内注入によって投与した。投与時に、患者4は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者4の循環血液第VIII因子レベルは、5.6IU/dlまで増加し、投与の10週間後に67.8IU/dlまで増加し、投与の12週間後に89IU/dlまで増加し、投与の16週間後に170IU/dl超まで増加し、投与の20週間後に219.2IU/dlまで増加し、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0296】
患者4は、継続観察期間にわたって、5mg/日~40mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療された。予防的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持した。
【0297】
結果-患者5
患者5に、上述のように、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQを単回静脈内注入によって投与した。投与時に、患者5は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者5の循環血液第VIII因子レベルは、2.2IU/dlまで増加し、投与の10週間後に24.4IU/dlまで増加し、投与の12週間後に59.4IU/dlまで増加し、投与の16週間後に126.5IU/dlまで増加し、投与の19週間後に271.2IU/dlまで増加し、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0298】
患者5は、継続観察期間にわたって、5mg/日~40mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的及び治療的の両方で治療された。予防的及び治療的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持した。
【0299】
結果-患者6
患者6に、上述のように、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQを単回静脈内注入によって投与した。投与時に、患者6は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者6の循環血液第VIII因子レベルは、1.0IU/dl未満であり、投与の10週間後に6.2IU/dlであり、投与の12週間後に19.6IU/dlであり、投与の16週間後に13IU/dlであり、投与の19週間後に13IU/dlであり、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0300】
患者6は、継続観察期間にわたって、5mg/日~60mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療された。治療的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持した。
【0301】
結果-患者7
患者7に、上述のように、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQを単回静脈内注入によって投与した。投与時に、患者7は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者7の循環血液第VIII因子レベルは、10.4IU/dlまで増加し、投与の10週間後に56.4IU/dlまで増加し、投与の12週間後に58IU/dlまで増加し、投与の16週間後に93.1IU/dlまで増加し、投与の18週間後に135.8IU/dlまで増加し、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0302】
患者7は、継続観察期間にわたって、5mg/日~40mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療された。予防的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持した。
【0303】
結果-患者8
患者8に、上述のように、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQを単回静脈内注入によって投与した。投与時に、患者8は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の21日間後に、患者8の循環血液第VIII因子レベルは、5.1IU/dlまで増加し、投与の10週間後に35.2IU/dlまで増加し、投与の12週間後に42.7IU/dlまで増加し、投与の16週間後に49.7IU/dlまで増加し、投与の17週間後に68.8IU/dlまで増加し、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0304】
患者8は、継続観察期間にわたって、10mg/日~40mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで予防的に治療された。予防的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持した。
【0305】
結果-患者9
患者9に、上述のように、体重1キログラム当たり6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQを単回静脈内注入によって投与した。投与時に、患者9は、1.0UL/dl未満の循環血液第VIII因子レベルを有した。投与の12週間後に、患者9の循環血液第VIII因子レベルは、78.7IU/dlまで増加し、ヒトにおける十分な血液凝固に必要とされる第VIII因子の濃度を優に上回り、患者における出血事象中の出血時間を減少させた。
【0306】
患者9は、継続観察期間にわたって、10mg/日~40mg/日の範囲の濃度のコルチコステロイドで治療的に治療された。治療的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持した。
【0307】
要約
この実施例8に表される結果は、ヒト患者における血友病Aの成功した療法は、本発明の組成物及び方法を用いて達成され得ることを実証する。より具体的には、体重1キログラム当たり少なくとも2E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQによる血友病Aに罹患しているヒトの治療が、治療後の少なくとも26週間にわたって2IU/dl以上の安定したFVIII活性をもたらし、体重1キログラム当たり少なくとも6E13ベクターゲノム[vg]のAAV5-FVIII-SQによる血友病Aに罹患しているヒトの治療が、治療したすべての患者において10IU/dl超の高く持続したFVIII活性をもたらしたことを本明細書において実証する。さらに、本明細書において提供されるデータは、AAV5-FVIII-SQによる治療が、良好な耐容性を示し、ALTレベルまたは肝毒性の他のマーカーの臨床的に関連する持続的上昇をもたらさないことを実証する。患者の予防的及び/または治療的コルチコステロイド治療は、第VIII因子レベルの同時減少またはいかなる関連する重篤な有害事象も伴わずに、許容されるレベルまで肝毒性関連のALT濃度を維持することができる。最後に、初期データは、コルチコステロイドで予防的または治療的のいずれかによって治療された患者が、FVIII発現またはALT濃度レベルに悪影響を及ぼすことなく、ステイロイド治療を順調に徐々に減らすことができることを実証する。