(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101430
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】積層型電子部品及び誘電体組成物
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021081476
(22)【出願日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2020-0183641
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュン シク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェオン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ハム、テ ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、イン テ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信頼性に優れ、均一な非粒成長界の実現が可能で、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率が減少し、耐電圧特性及び誘電率特性に優れた積層型電子部品及び誘電体組成物を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、本体に配置される外部電極131、132と、を有する。誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が55%以上である。誘電体組成物は。BaTiO
3系主成分と第1副成分とを含み、第1副成分はBaCO
3及びSiO
2を含み、BaCO
3は、主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上であり、SiO
2の含量は、主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が55%以上である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層はBaTiO3系の主成分と第1副成分とを含む誘電体組成物を有し、
前記第1副成分はBaCO3及びSiO2を含み、
前記BaCO3は、前記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上であり、
前記SiO2の含量は、前記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が55%~65%である、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層はBaTiO3系の主成分と第1副成分とを含む誘電体組成物を有し、
前記第1副成分はBaCO3及びSiO2を含み、
前記BaCO3の含量は、前記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上5.0mol%以下であり、
前記SiO2の含量は、前記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上9.5mol%以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体組成物は第2副成分をさらに含み、
前記第2副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩を、前記主成分のTi100モルに対して、0.1から2.0モルの含量で含む、請求項2または4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体組成物は第3副成分を含み、
前記第3副成分は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Tb、Tm、Yb及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素を含み、前記第3副成分の含量は、前記主成分のTi100モルに対して4.0モル以下である、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体組成物は第4副成分を含み、
前記第4副成分はAlを含む酸化物を含み、前記第4副成分の含量は前記主成分のTi100モルに対して0.5モル以下である、請求項6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層の平均厚さは0.45μm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記内部電極の平均厚さは0.45μm以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
BaTiO3系の主成分と第1副成分とを含み、
前記第1副成分はBaCO3及びSiO2を含み、
前記BaCO3は、前記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上であり、
前記SiO2の含量は、前記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上である誘電体組成物。
【請求項11】
前記BaCO3の含量は、前記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上5.0mol%以下であり、
前記SiO2の含量は、前記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上9.5mol%以下である、請求項10に記載の誘電体組成物。
【請求項12】
前記主成分の粉末の平均粒径は100nm以下である、請求項10または11に記載の誘電体組成物。
【請求項13】
前記誘電体組成物は第2副成分をさらに含み、
前記第2副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩を、前記主成分のTi100モルに対して、0.1から2.0モルの含量で含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項14】
前記誘電体組成物は第3副成分を含み、
前記第3副成分は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Tb、Tm、Yb及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素を含み、前記第3副成分の含量は、前記主成分のTi100モルに対して4.0モル以下である、請求項13に記載の誘電体組成物。
【請求項15】
前記誘電体組成物は第4副成分を含み、
前記第4副成分はAlを含む酸化物を含み、前記第4副成分の含量は前記主成分のTi100モルに対して0.5モル以下である、請求項14に記載の誘電体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層型電子部品及び誘電体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、多様な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電させるか、又は放電させる役割を果たすチップ状のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型で且つ高容量が保障され、実装が容易であるというメリットから、様々な電子装置の部品として使用することができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化へのニーズが増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要がある。現在のところ、誘電体層の厚さは約0.6μmの水準まで達しており、薄層化が進み続けている。
【0005】
しかし、誘電体層の厚さが薄くなるほど、単位厚さ当たりに印加される電界が大きくなる。そのため、温度及び有効容量の変化率の増加、破壊電圧の減少などといった問題点が発生し、信頼性が低下する恐れがある。
【0006】
このような問題を解決するためには、積層セラミックキャパシタの構造的な側面だけでなく、特に誘電体の組成的な側面から、高い信頼性を確保することができる新たな方法が必要な実情である。
【0007】
現在の水準から信頼性の水準をより一層高めることのできる誘電体組成を確保すれば、より薄層化した積層セラミックキャパシタを作製することができると予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品及び誘電体組成物を提供するためである。
【0009】
本発明の様々な目的の一つは、均一な非粒成長界の実現が可能な積層型電子部品及び誘電体組成物を提供するためである。
【0010】
本発明の様々な目的の一つは、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率が減少した積層型電子部品及び誘電体組成物を提供するためである。
【0011】
本発明の様々な目的の一つは、耐電圧特性及び誘電率特性に優れた積層型電子部品及び誘電体組成物を提供するためである。
【0012】
但し、本発明の目的は、上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、BaTiO3系主成分及び第1副成分を含み、上記第1副成分はBaCO3及びSiO2を含み、上記BaCO3は上記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上であり、上記SiO2の含量は上記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上である。
【0014】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層に含まれる複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は55%以上である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品及び誘電体組成物の信頼性を向上させることができる。
【0016】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】
図1のI-I'線に沿って切って見た場合の断面図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿って切って見た場合の断面図を概略的に示したものである。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図5】試験番号1の誘電体層の断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージである。
【
図6】
図5のイメージを粒径測定ソフトウェアであるZootosを用いて各誘電体結晶粒のフェレ径(Feret diameter)を測定する写真ある。
【
図7】試験番号1の誘電体結晶粒のサイズ分布を示したグラフである。
【
図8】試験番号2の誘電体結晶粒のサイズ分布を示したグラフである。
【
図9】試験番号3の誘電体結晶粒のサイズ分布を示したグラフである。
【
図10】試験番号4の誘電体結晶粒のサイズ分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0019】
そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成のサイズ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示したものであり、本発明は必ずしも図示されたところに限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素については同一の参照符号を使用して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、これは特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0020】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0021】
[誘電体組成物]
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、BaTiO3系主成分と第1副成分を含み、上記第1副成分はBaCO3及びSiO2を含み、上記BaCO3は上記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上であり、上記SiO2の含量は上記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上である。
【0022】
一般に、DF(Dissipation Factor)の増加、有効容量変化率の増加、破壊電圧の減少などは異常粒成長(Abnormal grain growth)を伴う誘電体結晶粒サイズの散布に起因するものと知られている。
【0023】
また、BaCO3、SiO2などの液状元素が添加される場合、異常粒成長(Abnormal grain growth)を誘発させると知られている。したがって、従来はBaCO3、SiO2などの液状元素を少量添加することが一般であった。
【0024】
これに対し、本発明では、液状元素を多量添加して異常粒成長(Abnormal grain growth)を同時多発的に誘発させることで、粒子間衝突(grain impingement)により、選択的な一部粒子の成長ではなく、均等な粒成長による均一な微細構造を確保した。これにより、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率の減少、破壊電圧の向上などの効果を確保し、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、BaTiO3系主成分に、BaCO3を上記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上添加し、SiO2を上記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上添加することにより、誘電体結晶粒の均一な非粒成長界を実現することができる。これにより、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率の減少、破壊電圧の向上などの効果を確保し、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0026】
以下では、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0027】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体組成物はBaTiO3で表される主成分を含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態によると、上記主成分はBaTiO3、(Ba1-xCax)(Ti1-yCay)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti1-yZry)O3(ここで、0<y≦0.5)からなる群から選択される一つ以上を含むが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0029】
特に、小型化及び高容量化へのニーズに応じて誘電体層を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、一般に100nm以下の微粒粉末を用いるようになり、粉末のサイズが小さくなるほど粒成長の駆動力が大きくなる。これにより、異常粒成長(Abnormal grain growth)が発生する可能性が高くなって均一な微細組織が得られ難くなる。
【0030】
しかし、後述のように液状元素を多量添加する場合、異常粒成長(Abnormal grain growth)を同時多発的に誘発させることで、粒子間衝突(grain impingement)により、選択的な一部粒子の成長ではなく、均等な粒成長による均一な微細構造を確保することができる。
【0031】
したがって、主成分粉末の平均粒径が100nm以下である場合に、本発明による均一な非粒成長界を実現する効果がより効果的になることができる。
【0032】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第1副成分元素としてBaCO3及びSiO2を含み、上記BaCO3は上記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上であり、上記SiO2の含量は上記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上である。液状形成元素であるBaCO3及びSiO2を過量添加することによって温度による粒成長挙動が緩やかになり、焼成ウィンドウが広くなることができ、異常粒成長(Abnormal grain growth)を同時多発的に誘発させることで粒子間衝突(grain impingement)により、選択的一部粒子の成長ではなく均等な粒成長を確保することができる。
【0033】
これにより、誘電体結晶粒の均一な非粒成長界を実現することができ、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率の減少、破壊電圧の向上などの効果を確保することで積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0034】
BaCO3の含量が上記主成分のTi100モルに対して4.0mol%未満であるか、SiO2の含量が上記主成分のTi100モルに対して7.0mol%未満である場合には、異常粒成長(Abnormal grain growth)を誘発させる効果が不十分であることから、粒子間衝突(grain impingement)が不足することがあるため、均一な微細構造の確保が難しくなることもある。
【0035】
また、BaCO3及びSiO2が上記含量範囲を満たすことにより、焼結後に誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は55%以上であってもよい。
【0036】
一実施形態において、上記BaCO3の含量は、上記主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上5.0mol%以下であり、上記SiO2の含量は上記主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上9.5mol%以下であってよい。これにより、信頼性を向上させると共に高い誘電率を確保することができる。
【0037】
BaCO3の含量が上記主成分のTi100モルに対して5.0mol%超過であるか、SiO2の含量が上記主成分のTi100モルに対して9.5mol%超過である場合には、より均一な微細組織を確保することができるが、誘電率が低下してMLCCにおける容量不足を招く可能性がある。
【0038】
また、BaCO3及びSiO2が上記含量範囲を満すことで、焼結後の誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は55%~65%になることができる。
【0039】
一方、本発明の一実施形態による誘電体組成物の常温誘電率は、特に限定する必要はないが、例えば、常温誘電率が2000以上であってもよい。
【0040】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩を含むことができる。
【0041】
上記第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩は、上記主成分のTi100モルに対して、0.1から2.0モルの含量で含まれることができる。
【0042】
上記第2副成分は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下、及び高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0043】
上記第2副成分の含量は、上記主成分のTi100モルに対して含まれる量であって、特に各副成分に含まれる金属イオンのモルとして定義することができる。
【0044】
上記第2副成分の含量が0.1モル未満であると、焼成温度が高くなり、高温耐電圧特性が多少低下することができる。
【0045】
上記第2副成分の含量が2.0モル以上の場合には、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下することができる。
【0046】
特に、本発明の一実施形態による誘電体組成物は、上記主成分100モルに対して0.1から2.0モルの含量を有する第2副成分を含むことができることから、低温焼成が可能であり、高い高温耐電圧特性が得られる。
【0047】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Tb、Tm、Yb及びNdのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第3副成分を含むことができる。
【0048】
上記第3副成分は、上記主成分のTi100モルに対して4.0モル以下を含むことができる。
【0049】
上記第3副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せずに、第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Tb、Tm、Yb及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0050】
例えば、上記第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Tb、Tm、Yb及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素の含量の総和は、上記主成分のTi100モルに対して4.0モル以下であってもよい。
【0051】
上記第3副成分は、本発明の一実施形態において、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの信頼性の低下を防止する役割を果たす。
【0052】
上記第3副成分の含量が上記主成分のTi100モルに対して4.0モルを超える場合には、パイロクロ(Pyrochlore、RE2Ti2O7)(ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素)の二次相生成により高温耐電圧特性が低下することができる。
【0053】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は第4副成分として、Alを含む酸化物を含むことができる。
【0054】
上記誘電体組成物は、上記主成分のTi100モルに対して、Alを含む酸化物である0.5モル以下の第4副成分をさらに含むことができる。
【0055】
上記第4副成分の含量は、ガラス、酸化物または炭酸塩のような添加形態を区分せずに、第4副成分に含まれたAlの元素の含量を基準とすることができる。
【0056】
上記第4副成分は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下、及び高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0057】
上記第4副成分の含量が上記主成分100モルに対して、0.5モルを超えると、焼結性及び緻密度の低下、二次相の生成などの問題が発生し得るため好ましくない。
【0058】
[積層型電子部品]
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2は、
図1のI-I'線に沿って切って見た場合の断面図を概略的に示したものである。
図3は、
図1のII-II'線に沿って切って見た場合の断面図を概略的に示したものである。
図4は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【0059】
以下では、
図1から
図4を参照し、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、上述の誘電体組成物において説明した内容と重複する部分に対しては重複する説明を避けるために省略する。また、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、上述の誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用することができる。
【0060】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が55%以上である。
【0061】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は、六面体形状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0062】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面(1、2)、上記第1及び第2面(1、2)と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面(3、4)、第1及び第2面(1、2)と連結され、第3及び第4面(3、4)と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面(5、6)を有することができる。
【0063】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難いほど一体化することができる。
【0064】
誘電体層111は、上述の誘電体組成物を用いて形成されてもよい。
【0065】
誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は55%以上である。これにより、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率の減少、破壊電圧の向上などの効果を確保し、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0066】
100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が55%未満である場合には、微細組織が不均一で信頼性が低下する恐れがある。
【0067】
100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は、本体の第3方向の中央から第1及び第2方向に切断した断面の第1及び第2方向の中央を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから測定することができる。
【0068】
具体的に、ZEISS社のSEMを用いて50kの倍率でスキャンしたイメージにおいて、粒径測定ソフトウェアであるZootosを用いて測定した各誘電体結晶粒のフェレ径(Feret diameter)を誘電体結晶粒の大きさとし、誘電体結晶粒のサイズ別分布を分析した。
【0069】
一実施形態において、誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は55%~65%であってもよい。これにより、信頼性を向上させると共に高い誘電率を確保することができる。
【0070】
100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が65%を超える場合には、誘電率が低下する恐れがある。
【0071】
一方、誘電体層111の厚さ(td)は特に限定する必要はない。
但し、一般に誘電体層を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に誘電体層の厚さが0.45μm以下であると、信頼性が低下する恐れがあった。
【0072】
上述のように、本発明の一実施形態によると、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率の減少、破壊電圧の向上などの効果を確保することができるため、誘電体層111の厚さが0.45μm以下である場合でも優れた信頼性を確保することができる。
【0073】
したがって、誘電体層111の厚さが0.45μm以下である場合に、本発明による信頼性向上の効果がより顕著になることができる。
【0074】
上記誘電体層111の厚さ(td)は、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0075】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0076】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部から切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層に対して、長さ方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0077】
上記等間隔の30個の地点で測定した厚さは、第1及び第2内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部(A)から測定することができる。
【0078】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部(A)と、上記容量形成部(A)の第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0079】
また、上記容量形成部(A)は、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されてもよい。
【0080】
カバー部112、113は、上記容量形成部(A)の第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部(A)の第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0081】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部(A)の上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0082】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0083】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0084】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さ(tp)は20μm以下であってもよい。
【0085】
また、上記容量形成部(A)の側面には、マージン部114、115が配置されてもよい。
【0086】
マージン部114、115は、本体110の第5面(5)に配置されたマージン部114と、第6面(6)に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されてもよい。
【0087】
マージン部114、115は、
図3に示されているように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両先端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0088】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0089】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される個所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0090】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層してから内部電極が本体の第5及び第6面(5、6)に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部(A)の両側面に幅方向(第3方向)に積層することでマージン部114、115を形成することもできる。
【0091】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層される。
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面(3、4)にそれぞれ露出することができる。
【0092】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面(4)と離隔して第3面(3)に露出し、第2内部電極122は第3面(3)と離隔して第4面(4) に露出することができる。
【0093】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0094】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0095】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうちいずれか一つ以上を含むことができる。
【0096】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0097】
一方、内部電極121、122の厚さ(te)は特に限定する必要はない。
但し、一般に内部電極を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.45μm以下である場合には、信頼性が低下する恐れがあった。
【0098】
上述のように、本発明の一実施形態によると、DF(Dissipation Factor)及び有効容量変化率の減少、破壊電圧の向上などの効果を確保することができるため、内部電極121、122の厚さが0.45μm以下の場合でも優れた信頼性を確保することができる。
【0099】
したがって、内部電極121、122の厚さが0.45μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0100】
上記内部電極121、122の厚さ(te)は、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0101】
上記内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0102】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部から切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122に対して、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定することができる。
【0103】
上記等間隔である30個の地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部(A)から測定することができる。
【0104】
外部電極131、132は、本体110の第3面(3)及び第4面(4)に配置されてもよい。
【0105】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面(3、4)にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0106】
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されてもよい。
【0107】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わることができる。
【0108】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成することができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0109】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0110】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0111】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0112】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びこれらの合金のうちいずれか一つ以上であってもよい。
【0113】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0114】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bはNiめっき層またはSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0115】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性及び絶縁抵抗の向上効果がより顕著になることができる。
【0116】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズ等を考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下、幅が0.22mm以下である場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味することができる。
【0117】
[実施形態]
本発明の実施形態は、チタン酸バリウム(BaTiO3)を主成分として含み、BaCO3及びSiO2を上記主成分のTi100モルに対して下記表1に記載の含量を有する誘電体組成物を用意した後、上記誘電体組成物を含むセラミックグリーンシートを用いて誘電体層を形成したプロトタイプ積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)を設けた。
【0118】
上記のように完成したプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)の試験番号1から4について誘電率、DF及び有効容量変化率を測定し、下記表1に記載した。
【0119】
有効容量及びDFは計測器を用いた測定値であり、誘電率は誘電体の厚さと誘電体結晶粒のサイズに換算した値である。
【0120】
【0121】
試験番号1の場合、BaCO3の含量が4.0mol%未満、SiO2の含量が7.0mol%未満であり、DF及び有効容量変化率が大きく、信頼性に劣っていることが確認できる。
【0122】
これに対し、試験番号2から4の場合、BaCO3の含量が4.0mol%以上、SiO2の含量が7.0mol%以上であり、DF及び有効容量変化率が小さく、信頼性に優れることが確認できる。
【0123】
但し、試験番号4の場合、誘電率が1300とやや低かった。したがって、信頼性を向上させながらも高い誘電率を確保するためには、BaCO3の含量は、主成分のTi100モルに対して4.0mol%以上5.0mol%以下であり、SiO2の含量は、主成分のTi100モルに対して7.0mol%以上9.5mol%以下であることが好ましい。
【0124】
図5は、試験番号1のサンプルチップの第3方向の中央から第1及び第2方向に切断した断面の第1及び第2方向の中央部をZEISS社のSEMを用いて50kの倍率でスキャンしたイメージである。
図6は、
図5のイメージを粒径測定ソフトウェアであるZootosを用いて各誘電体結晶粒のフェレ径(Feret diameter)を測定する写真であり、
図7は、Zootosを用いて測定した各誘電体結晶粒のサイズ別分布を分析したグラフである。
【0125】
図8から
図10は、試験番号2から4に対する誘電体結晶粒のサイズ別分布を分析したグラフであり、
図7のような方法により分析して得られたグラフである。
【0126】
図7から
図10を参照すると、BaCO
3及びSiO
2の含量が増加するにつれて誘電体結晶粒のサイズ分布が次第に均一になり、小さくなることが確認できる。
【0127】
また、上記表1の結果と総合してみると、複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合は55%以上であることが信頼性向上の面から好ましいことが分かる。また、複数の誘電体結晶粒のうち、100~250nmサイズの誘電体結晶粒の個数割合が55%である場合、信頼性を向上させると共に高い誘電率が確保できることが確認できる。
【0128】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0129】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a:電極層
132b:めっき層