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特開2022-101480表面反射防止塗料および表面反射防止塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101480
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】表面反射防止塗料および表面反射防止塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220629BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20220629BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220629BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220629BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220629BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220629BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220629BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C09D201/00
G02B5/00 B
G02B7/02 D
C09D7/63
C09D7/65
C09D7/61
C09D163/00
C09D133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187396
(22)【出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020215644
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】393002634
【氏名又は名称】キヤノン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】中谷 直治
【テーマコード(参考)】
2H042
2H044
4J038
【Fターム(参考)】
2H042AA09
2H042AA15
2H042AA22
2H042AA26
2H044AD01
4J038CG141
4J038CG142
4J038DB061
4J038DG121
4J038DG261
4J038DH002
4J038HA446
4J038JB18
4J038JC32
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA19
4J038PB08
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】全光線反射率を低減することができ、優れた低光沢性を有する表面反射防止塗膜を形成可能な表面反射防止塗料を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂、染料、樹脂粒子、およびシリカを含有する表面反射防止塗料であって、前記染料の含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して3質量部以上23質量部以下であり、前記樹脂粒子は、40μm以上100μm以下の平均粒子径を有し、前記樹脂粒子の含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上54質量部以下であり、シリカの含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して25質量部以上36質量部以下であり、前記表面反射防止塗膜は、1.80を超える屈折率を有する黒色微粒子を含有しないことを特徴とする表面反射防止塗料。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、染料、樹脂粒子、およびシリカを含有する表面反射防止塗料であって、
前記染料の含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して3質量部以上23質量部以下であり、
前記樹脂粒子は、40μm以上100μm以下の平均粒子径を有し、前記樹脂粒子の含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上54質量部以下であり、
前記シリカの含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して25質量部以上36質量部以下であり、
前記表面反射防止塗料は、1.80を超える屈折率を有する黒色微粒子を含有しない、ことを特徴とする表面反射防止塗料。
【請求項2】
前記染料の含有割合が、前記バインダー樹脂100質量部に対して5質量部以上18質量部以下である請求項1に記載の表面反射防止塗料。
【請求項3】
前記シリカが、湿式シリカである請求項1または2に記載の表面反射防止塗料。
【請求項4】
前記バインダー樹脂が、エポキシ樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載の表面反射防止塗料。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂の硬化剤が、脂環族アミン系硬化剤、または脂肪族アミン系硬化剤である請求項4に記載の表面反射防止塗料。
【請求項6】
前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂である請求項1~3のいずれか1項に記載の表面反射防止塗料。
【請求項7】
前記樹脂粒子が、ポリアミド樹脂粒子である請求項1~6のいずれか1項に記載の表面反射防止塗料。
【請求項8】
前記樹脂粒子が、アクリル樹脂粒子である請求項1~6のいずれか1項に記載の表面反射防止塗料。
【請求項9】
前記染料が、ニグロシン系染料を含有する請求項1~8のいずれか1項に記載の表面反射防止塗料。
【請求項10】
さらに、シランカップリング剤を含有する請求項1~9のいずれか1項に記載の表面反射防止塗料。
【請求項11】
バインダー樹脂、染料、樹脂粒子、およびシリカを含有する表面反射防止塗膜であって、
前記染料の含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して3質量部以上23質量部以下であり、
前記樹脂粒子は、40μm以上100μm以下の平均粒子径を有し、前記樹脂粒子の含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上54質量部以下であり、
前記シリカの含有割合は、前記バインダー樹脂100質量部に対して25質量部以上36質量部以下であり、
前記表面反射防止塗膜は、1.80を超える屈折率を有する黒色微粒子を含有しないことを特徴とする表面反射防止塗膜。
【請求項12】
前記表面反射防止塗膜の表面が、14μm以上80μm以下のRzjisおよび0.03mm以上0.24mm以下のRSmを有する請求項11に記載の表面反射防止塗膜。
【請求項13】
前記表面反射防止塗膜が、50μm以上150μm以下の厚さを有する請求項11または12に記載の表面反射防止塗膜。
【請求項14】
前記表面反射防止塗膜のクロスカット試験(JIS K5600-5-6)の分類値が2以下である請求項11~13のいずれか1項に記載の表面反射防止塗膜。
【請求項15】
前記表面反射防止塗膜の可視光領域(400-700nm)における全光線反射率が、3%以下である請求項11~14のいずれか1項に記載の表面反射防止塗膜。
【請求項16】
前記表面反射防止塗膜の近赤外領域(780-2000nm)における全光線反射率が、20%以下である請求項11~15のいずれか1項に記載の表面反射防止塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反射防止塗料および前記表面反射防止塗料を用いて形成された表面反射防止塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやビデオカメラ等の光学機器では、鏡筒等の光路部における乱反射や散乱による迷光を生じることで、結像した画像にゴーストやフレアが発生し画質低下の原因の一つとなることがある。そこでこのような迷光による光学性能の低下を抑制するため、鏡筒部や絞り等の光路部に黒色の反射防止塗料を塗装する、あるいは反射防止フィルムを貼り付けることで対応している。
【0003】
一方で黒色の反射防止塗料や反射防止フィルムは、カメラ等の光学機器にとどまらず、メータ等の発光を伴った表示装置において、周辺部の反射防止を行うことで視認性を向上するためにも用いられるようになってきている。
その他にも、黒色の反射防止塗料や反射防止フィルムは、意匠性を向上させる塗料としても注目を集めている。
【0004】
特許文献1では、光学機器用の反射防止塗料として、合成樹脂バインダー中に合成樹脂微粒子とカーボンブラック微粒子とを分散させてなる塗料が提案されている。
また、特許文献2には、薄膜化時の遮光性と低光沢の実現のため、バインダー樹脂に対して、染料、黒色微粒子、およびマット剤の量を制御した遮光材の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-140043号公報
【特許文献2】特許第6552491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の反射防止塗料を用いて形成された塗膜においては、光沢度を低くする効果が示されている一方で、拡散反射を含む全光線反射率の低減については、改善の余地があった。また、特許文献2に記載の遮光材では、低光沢性および全光線反射率の低減ともに、改善の余地があった。
そこで本発明の課題は、全光線反射率を低減することができ、優れた低光沢性を有する表面反射防止塗膜を形成可能な表面反射防止塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表面反射防止塗料は、バインダー樹脂、染料、樹脂粒子、およびシリカを含有する表面反射防止塗料であって、前記染料の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して3質量部以上23質量部以下であり、前記樹脂粒子は、40μm以上100μm以下の平均粒子径を有し、前記樹脂粒子の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上54質量部以下であり、前記シリカの含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して25質量部以上36質量部以下であり、前記表面反射防止塗料は、1.80を超える屈折率を有する黒色微粒子を含有しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、全光線反射率を低減することができ、優れた低光沢性を有する表面反射防止塗膜を形成可能な表面反射防止塗料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】黒色微粒子における光の反射を模式的に示した図である。
図2】本発明に係る表面反射防止塗膜の断面を模式的に示した図である。
図3】染料を含有する塗膜に入射した光の吸収を模式的に示した図である。
図4】全光線反射率の測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。以降、表面反射防止塗料を単に「塗料」、表面反射防止塗膜を単に「塗膜」と表現する場合がある。
本発明に係る表面反射防止塗料は、バインダー樹脂、染料、樹脂粒子、およびシリカを含有する。また一方で、本発明に係る表面反射防止塗料は、1.80を超える屈折率を有する黒色微粒子を含有しない。
【0011】
特許文献1および2においても用いられているように、黒色微粒子は、着色や光の吸収を目的として使用される。しかし本発明者らは、塗膜が黒色微粒子を含まないことで、全光線反射率を低減できることを見出した。
【0012】
図1は、黒色微粒子を含有する塗膜に入射した光の反射を模式的に示した図である。黒色微粒子5を含有する表面反射防止塗膜6に光が入射した際、図1に示すように、入射光10に対して塗膜6の表面で反射する反射光11のほかに、塗膜6の内部に透過する透過光12がある。透過光12の一部は、塗膜6内の黒色微粒子5に入射する。
【0013】
黒色微粒子5は、一般に1.80を超える屈折率を有し、例えばカーボンブラックでは1.84以上の屈折率を有する。そのため、バインダー樹脂1が有する屈折率(例えば、エポキシ樹脂:1.55~1.61、アクリル樹脂:1.49~1.53、ウレタン樹脂:1.5~1.55)と比べると屈折率の値が大きい。すなわち、黒色微粒子5とバインダー樹脂1とでは屈折率の差が大きい。そのため、黒色微粒子5に入射した透過光12は、屈折率の差が大きいバインダー樹脂1と黒色微粒子5との界面で拡散反射しやすく、拡散反射光13が発生する。黒色微粒子5の表面で発生した拡散反射光13は、塗膜6内から塗膜6外へ放出され、拡散反射防止性能を低下させると考えられる。そのため、塗膜6が黒色微粒子5を含有しないことで、拡散反射防止性能を向上させることが可能になると考えられる。
【0014】
また、シリカが有する屈折率は、1.44~1.5程度であり、バインダー樹脂が有する屈折率と近い値を有する。そのため、屈折率の差によるシリカとバインダーの界面における光の反射の影響は大きくないと考えられる。
【0015】
本発明に係る表面反射防止塗料が含まない黒色微粒子としては、カーボンブラック、チタンブラック、およびマグネタイト系ブラック等が挙げられる。
【0016】
図2は、本発明に係る表面反射防止塗膜の断面を模式的に示した図である。
図2に示す通り、本発明に係る表面反射防止塗膜6においては、バインダー樹脂1が染料2を含有する。そのため、塗膜6に入射した光を染料2で吸収することができる。
【0017】
図3は、染料を含有する塗膜に入射した光の吸収を模式的に示した図である。
先にも述べたように、表面反射防止塗膜6に光が入射した際、入射光10に対して塗膜6の表面で反射する反射光11のほかに、塗膜6の内部に透過する透過光12がある。このとき、図3に示すとおり、染料2はバインダー樹脂1に溶解しているため、バインダー樹脂1との界面を有しなく、バインダー樹脂1に入射した透過光12は染料2の部分で反射されずに吸収されながら減衰する。そのため、光を吸収するための着色剤として、黒色微粒子を用いず、染料2を単独で使用することで、塗膜6の拡散反射防止性能はより良好となる。
【0018】
また、図2に示す通り、本発明に係る表面反射防止塗膜6は、樹脂粒子3およびシリカ4を含有する。
【0019】
シリカ4は、光を散乱させる効果を有し、艶消し剤として使用される。シリカ4に入射した光は、シリカ4の表面で散乱して反射する光と、シリカ4の内部に透過する光とがあり、シリカ4の内部を透過した光は、シリカ4から放出される際にも散乱する。そのため、塗膜6の内部の染料によってより光が吸収されやすくなる。
【0020】
また、塗膜6が樹脂粒子3を含有することで、塗膜6の表面を粗面化することができ、これにより光の正反射率を低減することができる。特に光の入射角が高い場合に、正反射率を低減する効果は大きくなる。さらに、塗膜6の表面を粗面化することで、塗膜6の表面積を大きくすることができ、塗膜6の表面に存在するシリカ4による、塗膜6内部へ光を散乱する効果をより高く得ることができる。
【0021】
本発明に係る表面反射防止塗料においては、シリカ4および樹脂粒子3を、後述する特定の割合で含有することで、優れた低光沢性を有する塗膜6を形成することができる。
【0022】
以下、本発明に用いられる各材料についてさらに詳細に説明する。
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂の種類は特に限定されず、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、およびポリエステル樹脂等の公知の樹脂が使用できる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種類以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂は、接着性、耐薬品性、耐候性、および割れに対する耐性に優れており、これら性能は分子量が高いほど優れる傾向にある。しかし、分子量が高すぎると液粘度が高くなりすぎて、塗膜を製造する際におけるハンドリング性が低下する。よって上記性能とハンドリング性との観点から、エポキシ樹脂の分子量は、1,000~5,000であることが好ましい。エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物の総称であり、通常、硬化剤と併用して硬化される。
【0024】
エポキシ樹脂としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、4官能型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含有ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)等の複素環型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、PO変性エポキシ樹脂。
【0025】
特にビスフェノールA型エポキシ樹脂は、接着性、耐薬品性、耐候性、および割れに対する耐性に優れ、塗膜の製造における塗布液のハンドリング性を優れたものにすることができる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の例としては、EP4100(ADEKA社製)、JER1004(三菱ケミカル社製)、JER1007(三菱ケミカル社製)、JER1010(三菱ケミカル社製)等がある。
【0026】
硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸または酸無水物系硬化剤、塩基性活性水素化合物、イミダゾール類等の活性水素化合物が挙げられる。また硬化剤としてケチミン化アミン、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジド等の潜在性硬化剤を用いることもできる。中でもアミン系硬化剤を用いることが好ましい。アミン系硬化剤は分子運動可能なセグメントが長く、硬化した樹脂の機械的特性に優れている。
【0027】
アミン系硬化剤としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチロールプロパントリス〔ポリ(プロピレングリコール)、アミン末端〕エーテル等の脂肪族アミン;イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂環族アミン;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン;直鎖状ジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン等の2級アミン類または3級アミン類;ダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させて得たポリアミドアミン。
【0028】
プロピレングリコール等の構造を有する脂肪族アミン系硬化剤を用いると、塗膜の柔軟性が高くなり、ひび割れの発生を抑制することができる。プロピレングリコール等の構造を有する脂肪アミン族系硬化剤を使用すると、架橋点の分子が動きやすくなるため、柔軟性が向上すると考えられる。
また、シクロヘキシル等の構造を有する脂環族アミン系硬化剤を用いると靭性が高くなるため、ひび割れの発生を抑制することができる。シクロヘキシル等の構造を有する脂環族アミン系硬化剤を使用すると、架橋点の剛性が向上するため、靱性が高くなると考えられる。そのため硬化剤は、脂肪族アミン系硬化剤、または脂環族アミン系硬化剤であることが特に好ましい。
上記の通り脂肪族アミン系、または脂環族アミン系の硬化剤を使用することで柔軟性や靭性が向上し、結果的に基材との密着性が向上すると考えられる。
【0029】
酸または酸無水物系硬化剤としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。アジピン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、デカンジカルボン酸等のポリカルボン酸;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等の芳香族無水物;無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の環状脂肪族酸無水物;ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ポリ(エチル)オクタデカン二酸無水物等の脂肪族酸無水物。
【0030】
塩基性活性水素化合物としては、例えば、有機酸ジヒドラジド等が挙げられる。
イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタンデシルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
硬化剤の他に、硬化反応の速度を制御するために触媒を用いても良い。
触媒としては、例えば、3級アミン、イミダゾール、三フッ化ホウ素-アミン錯体、有機酸化合物、フェノール類、有機金属化合物等が挙げられる。
【0032】
アクリル樹脂は、架橋の必要がなく、基材への塗布後、溶剤の乾燥のみで塗膜にできるため工程を簡素化することができる。アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートの重合体およびその共重合体を示す。なお、本明細書中では、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0033】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、以下のものを挙げることができる。メチル、エチル、プロピル、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等。
【0034】
上記の重合体および共重合体としては、例えば、以下のものを挙げることができる。メチルメタクリレート重合体、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリレート共重合体、その他、(メタ)アクリレートを主成分として、これらに、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、ビニルトルエン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル等のコモノマーの共重合体等。
【0035】
ポリウレタン樹脂は、水酸基を2個以上有する化合物(ポリオール)に、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(イソシアネート化合物)を硬化剤として、二液硬化型塗料として用いることができる。
【0036】
イソシアネート化合物は、水酸基以外にも、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基等の官能基をもつ活性水素化合物とも硬化反応する。そのため、ポリオールとこれら活性水素化合物との併用、あるいはポリオール分子中にこれら活性水素官能基の導入する等により、硬化後の塗膜の強度や塗料の安定性を調整することが可能である。
【0037】
硬化反応速度の制御のため、触媒を用いることも可能である。イソシアネート化合物は、あらかじめイソシアネート基をブロック剤によりマスキングしておくことで、塗料中でポリオールと共存させておき、塗膜形成時に加熱硬化が可能な、一液硬化型塗料とすることもできる。
【0038】
さらに、イソシアネート化合物の分子量を高くすることで、硬化反応を遅くさせ、大気中の水分と反応硬化させる、いわゆる湿気硬化型塗料とすることもできる。
【0039】
ポリオールとしては、例えば、以下のものを挙げることができる。比較的低分子量の1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールや、比較的高分子量のポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、含リンポリオール、ひまし油ポリオール、水添ひまし油ポリオール、フェノール系ポリオール等。
【0040】
上記で挙げたポリオールのうち、好ましいものは、プロピレングリコールとの付加重合体、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、フェノール系ポリオールである。
また、これらポリオールは、必要により、2種以上を混合して使用しても良い。
【0041】
イソシアネート化合物としては、1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、以下のものを挙げることができる。ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族ジイソシアネート類;キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族-脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ジイソシアネート類;ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、水添TDI(HTDI)、水添XDI(H6XDI)、水添MDI(H12MDI)等の水添ジイソシアネート類;これらの2量体、3量体、4量体以上の多量体のポリイソシアネート類;これらとトリメチロールプロパン等の多価アルコール、水または低分子量ポリエステル樹脂との付加物等。
【0042】
ポリオールとイソシアネート化合物は、塗料中に混合した時点からウレタン硬化反応が開始するため、ポットライフが短い。このポットライフを延長させるため、イソシアネート化合物の反応基(イソシアネート基)を適当なブロック剤でブロックしたブロックイソシアネート化合物として使用することもできる。
【0043】
<染料>
染料の種類は、塗膜の表面反射防止性能を保持できる限りにおいて制限はない。求める吸収波長に応じた波長吸収特性を持つ染料を、任意に選択して用いることができる。染料は黒色の染料であることが好ましい。
染料は、1種類を用いても良いし、赤色の染料、黄色の染料および青色の染料等の複数種の染料を併用し、吸収波長を調整して用いても良い。
【0044】
染料の種類としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料および金属フタロシアニン染料等が挙げられる。
【0045】
可視光領域の波長の光を吸収する目的で添加される染料としては、アゾ系染料およびニグロシン系染料が挙げられる。アゾ系染料の例としては、例えばソルベントブラック3(例えば、OIL BLACK HBB(オリヱント化学工業社製))、VALIFAST BLACK 1807、OIL BLACK 803(いずれもオリヱント化学工業社製)等がある。またニグロシン系染料としては、ソルベントブラック7(例えば、Solbon Black EZ-807、OIL BLACK BS(いずれもオリヱント化学工業社製))、ソルベントブラック5(例えば、NUBIAN BLACK NH-805(オリヱント化学工業社製))等が挙げられる。
【0046】
可視光領域に吸収を持つ染料としては、2重結合と単結合の繰り返しを多く含む化合物を好ましく用いることができる。アゾ系染料およびニグロシン系染料は、2重結合と単結合の繰り返しを含み、可視光領域に吸収を持つので本発明に係る塗料の調製で使用する染料として好ましい。
さらに、可視光領域と近赤外領域との両方の光を吸収する染料としては、可視光領域と近赤外領域とに広く吸収波長をもつニグロシン系染料を用いることが好ましい。ニグロシン系染料が近赤外領域に吸収波長をもつ理由は定かではないが、ニグロシン系染料は可視光領域の光を吸収するとともに、アゾ系染料に比べて近赤外領域の光を吸収する特性を有する。
また、ニグロシン系染料は、アゾ系染料と比較して、耐溶剤性に優れている。ニグロシン系染料は、アジン骨格を有する化合物からなる混合物であり、アゾ系染料と比べて分子サイズが大きいのでバインダー樹脂と立体的に絡みやすい。そのためバインダー樹脂から染料が染み出しにくいことから、耐溶剤性に優れていると考えられる。
【0047】
本発明に係る表面反射防止塗料における染料の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して3質量部以上23質量部以下である。
染料の含有割合が、バインダー樹脂100質量部に対して3質量部以上であれば、染料としての光を吸収する効果を十分に得ることができ、形成した塗膜において全光線反射率を低減する効果を得ることができる。染料の含有割合が、バインダー樹脂100質量部に対して23質量部以下であれば、耐溶剤性能が向上し、また、シリカの2次粒子間で形成される微小な粗さの凹部に染料が入り込むことが抑制され、シリカによる光を散乱させる効果が低減することを抑制することができる。
【0048】
表面反射防止塗料における染料の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して5質量部以上18質量部以下であることが好ましい。
【0049】
シリカの種類としては、乾式シリカ、湿式シリカがあるが、湿式シリカを用いることが好ましい。乾式シリカは表面に微細な凹凸を有し、シリカの表面で光が拡散反射しやすいのに対し、湿式シリカは表面が平滑であり、光がシリカの表面で反射しづらく、シリカ内部を通過して塗膜の内部に細かく散乱しやすい。そのため、塗膜の内部で染料等により光が吸収されやすくなり、表面反射防止性能が向上する。
【0050】
本発明に係る表面反射防止塗料におけるシリカの含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して25質量部以上36質量部以下である。
シリカの含有割合がバインダー樹脂100質量部に対して25質量部以上であれば、塗膜を形成した際にシリカがバインダー樹脂中に埋没することを抑制でき、塗膜の表面におけるシリカによるつや消し性能を十分に発現することができる。シリカの含有割合がバインダー樹脂100質量部に対して36質量部以下であれば、塗膜におけるバインダー樹脂からのシリカの露出が過剰とならず、表面反射防止性能の低下を抑制することができる。また、形成した塗膜の表面が剥がれやすくなることを防止でき、膜としての耐久性能を高く維持することができる。さらに、塗料におけるシリカの含有割合を上記値の範囲内とすることで、形成する塗膜の表面に後述する所望のRSm(輪郭曲線要素の平均長さ)を付与しやすくすることができる。
シリカは、2次粒子が1μm以上15μm以下の体積平均粒子径を有することが好ましい。これにより、形成する塗膜の表面に後述する所望のRSmを付与しやすくすることができ、反射防止性能を向上させることができる。
【0051】
<樹脂粒子>
樹脂粒子としては、ポリアミド樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、およびシリコーン樹脂粒子等が挙げられる。
これらの中でもポリアミド樹脂粒子およびアクリル樹脂粒子はハンドリング性が良く、バインダー樹脂およびシリカとの馴染み易さの観点から好ましく用いることができる。また、ポリアミド樹脂は屈折率が、1.53であり、バインダー樹脂の屈折率と近い値を有する。そのため、バインダー樹脂との屈折率の差による樹脂粒子とバインダー樹脂との界面における反射を低減することができる。
【0052】
樹脂粒子は、40μm以上100μm以下の平均粒子径を有する。樹脂粒子の平均粒子径が40μm以上であれば、形成した塗膜の表面を十分に粗面化することができ、表面反射防止性能を十分に得ることができる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であれば、塗膜から樹脂粒子が脱落することを抑制でき、塗膜の表面の耐久性を高く維持することができる。
なお、本発明において樹脂粒子が有する平均粒子径は、レーザー回折散乱法により、粒度分布を測定して決定される体積平均粒子径を指す。
【0053】
本発明に係る表面反射防止塗料における樹脂粒子の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上54質量部以下である。
樹脂粒子の含有割合がバインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上であれば、形成した塗膜の表面に一定以上の粗さを得ることができ、表面反射防止性能を十分に得ることができる。樹脂粒子の含有割合がバインダー樹脂100質量部に対して54質量部以下であれば、形成した塗膜においてバインダー樹脂から樹脂粒子が露出することを抑制でき、表面反射防止性能が低下することを抑制することができる。また、塗膜から樹脂粒子が脱落しやすくなることを防止でき、塗膜の表面の耐久性を高く維持することができる。さらに、塗料における樹脂粒子の含有割合が上記値の範囲内にあることで、形成する塗膜の表面に後述する所望のRzjis(十点平均粗さ)を付与することができる。
【0054】
<溶剤>
表面反射防止塗料は、必要に応じて溶剤を含有していてもよい。
溶剤は有機溶剤を使用することが好ましい。すなわち、塗料は、バインダー樹脂、シリカ、樹脂粒子等を有機溶剤で希釈したものとすることができる。
有機溶剤としては、バインダー樹脂が溶解し、シリカ、樹脂粒子等が分散可能であれば、特に制限無く使用できる。例えば、トルエンや酢酸エチル、酢酸ブチル、n-ブタノール、エタノール、1-プロパノール、ヘキサノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、メチルエチルケトン、エチレングリコール等があげられる。
【0055】
希釈率も用途に合わせて任意に調整可能である。例えば、スプレー、ディップ、または筆塗り等の塗布方法により、適宜調整可能である。
また、塗布の条件から乾燥速度をコントロールするために、複数の溶剤を混合して用いてもよい。複数の溶剤を混合することで、乾燥速度をコントロールできる。
【0056】
<他の添加剤>
表面反射防止塗料は、形成される塗膜の表面反射防止性能を保持する範囲内で、他の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
例えば、塗膜と基材との密着性を高めること、若しくは塗膜中のシリカとバインダー樹脂との密着性を高めることを目的として、密着性付与剤としてのシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、反応性の官能基として活性水素基または電子吸引性基を少なくとも一つ有することが好ましい。
【0058】
活性水素基としては、水酸基、アミノ基およびメルカプト基が挙げられ、電子吸引性基としてはイソシアネート基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、スチリル基およびビニル基が挙げられる。これらシランカップリング剤は、特にガラス製の光学素子に塗膜を形成する際に、光学素子表面とカップリング反応により化学結合を形成するとともに、活性水素化合物や電子吸引性化合物とも付加反応による化学結合を形成する。この両者の化学結合により、塗膜内部から光学素子表面まで連続した化学結合を形成する。
これらシランカップリング剤は、1種を用いても良いし、2種以上を同時に用いても良い。
【0059】
シランカップリング剤は、表面反射防止塗料から有機溶剤を除いた量に対して0.5質量%以上20.0質量%以下の割合で含有することが好ましい。シランカップリング剤の含有割合が、表面反射防止塗料から有機溶剤を除いた量に対して0.5質量%以上であれば、シランカップリング剤による密着性を向上させる効果を得ることができる。また、シランカップリング剤の含有割合が、表面反射防止塗料から有機溶剤を除いた量に対して20.0%以下であれば、表面反射防止性能の低下を抑制することができる。
【0060】
また、疎水化処理されていないシリカを使用した場合は、シランカップリング剤を用いることでバインダーとシリカとの密着性が向上し、形成する塗膜の表面の耐久性が向上する。
【0061】
表面反射防止塗料は、必要に応じて防腐剤および防カビ剤等の添加剤を含有していてもよい。防腐剤および防カビ剤の例としては、ベンズイミダゾール系、イソチアゾリル系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパルギル系、ベンゾチアゾール系、フェノール系、トリアジン系、アダマンタン系、ピリジン系等が挙げられる。
【0062】
<表面反射防止塗料の製造方法>
表面反射防止塗料の製造は、バインダー樹脂、染料、樹脂粒子、シリカ、および必要に応じて溶剤等のその他の材料を混合し、分散することで製造することができる。混合後の溶液の分散は、公知の分散方法により行うことができ、例えば、ボールミル、ペイントシェーカー、バスケットミル、ダイノーミル、ウルトラビスコミル、アニュラー型分散機等が使用可能である。
【0063】
<表面反射防止塗膜>
本発明に係る表面反射防止塗膜は、これまで述べてきた本発明に係る表面反射防止塗料を用いて形成された塗膜である。
表面反射防止塗膜の表面は、14μm以上80μm以下のRzjis、および0.03mm以上0.24mm以下のRSmを有することが好ましい。
Rzjisは、10点平均粗さであり、樹脂粒子が有する平均粒子径および塗膜における樹脂粒子の含有割合により調整することができる。
塗膜の表面が14μm以上のRzjisを有することで、塗膜の表面の粗さを大きくすることができ、塗膜の表面における正反射(特に85°鏡面光沢(Gs(85)))を抑制する効果を高く得ることができる。また、塗膜の表面が80μm以下のRzjisを有することで、塗膜の表面がより向上した耐久性を有し、樹脂粒子の脱落等を抑制することができる。
【0064】
一方、RSmは輪郭曲線要素の平均長さであり、塗膜の表面に存在するシリカの状態により影響される。RSmが0.03mm以上であれば、塗膜の表面が平滑にならず、シリカによる微細な凹凸部が形成されることで拡散反射防止性能を向上する効果が高く得られる。また、RSmが0.24mm以下であれば、シリカによる凹凸部の間隔が開き過ぎず、微細な凹凸部が形成されることで拡散反射防止性能が低減することを抑制することができる。
【0065】
表面反射防止塗膜は、50μm以上150μm以下の厚さを有することが好ましい。
塗膜が50μm以上の厚さを有することで、樹脂粒子が脱落することを抑制でき、塗膜の耐久性が向上する。また、塗膜が150μm以下の厚さを有することで、塗膜の表面に所望の粗さが付与されないことを防止でき、表面反射防止性能を高く得ることができる。
表面反射防止塗膜のクロスカット試験(JIS K5600-5-6)の分類値は、2以下であることが好ましい。これにより高い密着性を有する塗膜とすることができる。
また、表面反射防止塗膜の可視光領域(400-700nm)における全光線反射率は、3%以下であることが好ましく、表面反射防止塗膜の近赤外領域(780-2000nm)における全光線反射率は、20%以下であることが好ましい。
【0066】
<表面反射防止塗膜の製造方法>
本発明に係る表面反射防止塗料を基材に塗布、乾燥させて表面反射防止塗膜を形成させることができる。基材はガラス、樹脂、金属等、公知のものに塗布することができる。塗膜の形成方法は特に限定されず公知の塗布方法を用いることができる。例えば、塗布方法はスプレー、刷毛、ローラ、ロールコート、アプリケーター、ディップ塗装等が挙げられる。また、乾燥方法は、熱風、遠赤外線、自然乾燥等用途に応じて選択可能である。
【実施例0067】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることは無い。
各実施例および比較例に使用した原材料を以下に示す。
【0068】
〔バインダー樹脂〕
・樹脂A-1:エポキシ樹脂
主剤:jER1004k(三菱ケミカル社製)
潜在性硬化剤:jERキュア H3(三菱ケミカル社製)
・樹脂A-2:エポキシ樹脂
主剤:jER1004k(三菱ケミカル社製)
脂環族アミン系硬化剤:jERキュア 113(三菱ケミカル社製)
・樹脂A-3:エポキシ樹脂
主剤:jER1004k(三菱ケミカル社製)
脂肪族アミン系硬化剤:jERキュア3080(三菱ケミカル社製)
・樹脂A-4:エポキシ樹脂
主剤:EP4100(ADEKA社製)
脂環族アミン系硬化剤:jERキュア 113(三菱ケミカル社製)
・樹脂A-5:エポキシ樹脂
主剤:jER1007(三菱ケミカル社製)
脂環族アミン系硬化剤:jERキュア 113(三菱ケミカル社製)
・樹脂B:アクリル樹脂(商品名:アクリディックA-166、DIC社製)
・樹脂C:ポリウレタン樹脂
主剤:ポリオール(商品名:デュラノールG4672、旭化成社製)
硬化剤:イソシアネート(商品名:デュラネートTPA-100、旭化成社製)
・シリカA:湿式シリカ(商品名:ACEMATT OK-412、エボニック・ジャパン社製)
・シリカB:乾式シリカ(商品名:ACEMATT 3300、エボニック・ジャパン社製)
・樹脂粒子A:ポリアミド(PA)樹脂粒子(平均粒子径20μm)(商品名:TR-2、東レ社製)
・樹脂粒子B:ポリアミド(PA)樹脂粒子(平均粒子径50μm)(商品名:ベストジント2157、ダイセル・エボニック社製)
・樹脂粒子C:ポリアミド(PA)樹脂粒子(平均粒子径80μm)(商品名:ダイアミドWS200P、ダイセル・エボニック社製)
・樹脂粒子D:アクリル樹脂粒子(平均粒子径50μm)(商品名:ART PEARL SE-050T、根元社製)
・樹脂粒子E:ポリアミド(PA)樹脂粒子(平均粒子径40μm)(商品名:ベストジント2157の分級品、ダイセル・エボニック社製)
・樹脂粒子F:ポリアミド(PA)樹脂粒子(平均粒子径100μm)(商品名:ダイアミドWS200Pの分級品、ダイセル・エボニック社製)
・染料A(商品名:OIL BLACK HBB、オリヱント化学工業社製)
・染料B(商品名:NUBIAN BLACK TN-870、オリヱント化学工業社製)
・染料C(商品名:NUBIAN BLACK NH-805、オリヱント化学工業社製)
・黒色微粒子1:カーボンブラック(商品名:RAVEN 5000UII、コロンビアンケミカル社製)
・密着性付与剤1:シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業社製)
・有機溶剤1:酢酸ブチル(キシダ化学社製)/トルエン(キシダ化学社製)の混合液(質量比1:1)
【0069】
(実施例1)
<表面反射防止塗料の調製>
樹脂A-1のエポキシ樹脂100質量部(主剤90質量部+潜在性硬化剤10質量部)に対し、染料Aを10質量部、シリカAを27質量部、樹脂粒子Bを5質量部、樹脂粒子Cを5質量部、密着性付与剤1を17質量部、および有機溶剤1を200質量部、準備した。まず、樹脂A-1の主剤に準備した染料A、シリカA、樹脂粒子B、樹脂粒子C、密着性付与剤1および有機溶剤1を混合し、塗料混合液を調製した。塗料混合液は全体量が200gになるように各成分の量を調整した。
次に、容量500mLのボールミルに、φ15mmのボール24個とφ10mmのボール23個(計135g)を投入し、60rpmで塗料混合液を5時間分散した。分散後、塗料混合液に樹脂A-1の潜在性硬化剤10質量部を加えて10分間攪拌し、表面反射防止塗料を得た。
なお、樹脂A-1の主剤と潜在性硬化剤との質量比率は、エポキシ当量と標準配合量から算出した。
【0070】
<表面反射防止塗膜の作製>
上記表面反射防止塗料の調製で得た表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。その後、室温にて120分乾燥後、さらに80度にて120分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した。
【0071】
(実施例2、6~12、14、16、比較例1~7)
実施例1において、染料、シリカ、および樹脂粒子の種類および量を表1、2、および4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。また、得られた塗料を用いて実施例1と同様にして塗膜を作製した。
なお、表1~4に記載の各材料の値は部数である。
【0072】
(実施例3、17)
実施例1において、染料、シリカ、および樹脂粒子の種類および量を表1および2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。また、アプリケーターのギャップを200μmに変更した以外は実施例1と同様にして、得られた塗料を用いて塗膜を作製した。
【0073】
(実施例4、15)
実施例1において、染料、シリカ、および樹脂粒子の種類および量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして塗料を調製した。また、アプリケーターのギャップを100μmに変更した以外は実施例1と同様にして、得られた塗料を用いて塗膜を作製した。
【0074】
(実施例5)
樹脂Bのアクリル樹脂100質量部に対し、染料Aを11質量部、シリカAを30質量部、樹脂粒子Bを25質量部、樹脂粒子Cを10質量部、密着性付与剤1を17質量部、および有機溶剤1を200質量部、準備した。次に準備した原材料を混合し、塗料混合液を調製した。塗料混合液は全体量が200gになるように各成分の量を調整した。
さらに、容量500mLのボールミルに、φ15mmのボール24個とφ10mmのボール23個(計135g)を投入し、60rpmで塗料混合液を5時間分散し、表面反射防止塗料を得た。
その後、得られた表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。塗布後、80度にて30分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した。
【0075】
(実施例13)
樹脂Cのウレタン樹脂(ポリオール86質量部+イソシアネート14質量部)100質量部に対し、染料Aを10質量部、シリカAを27質量部、樹脂粒子Bを23質量部、樹脂粒子Cを9質量部、密着性付与剤1を17質量部、および有機溶剤1を200質量部、準備した。まず、ポリオール(主剤)86質量部に準備した染料A、シリカA、樹脂粒子B、樹脂粒子C、密着性付与剤1、および有機溶剤1を混合し、塗料混合液を調製した。塗料混合液は全体量が200gになるように各成分の量を調整した。
次に、容量500mLのボールミルに、φ15mmのボール24個とφ10mmのボール23個(計135g)を投入し、60rpmで塗料混合液を5時間分散した。分散後、イソシアネート(硬化剤)を混合して表面反射防止塗料を得た。混合する際に、イソシアネートは溶剤により希釈して使用した。なお、用いたイソシアネートおよびポリオールの量は、NCO基:OH基の比率が1:1になる量である。
その後、得られた表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。塗布後、80度にて120分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した。
【0076】
(実施例18)
実施例11において、用いるバインダー樹脂の種類を、樹脂A-1から樹脂A-2に変え、用いる主剤および脂環族アミン系硬化剤の量をそれぞれ主剤97部、脂環族アミン系硬化剤3質量部とした。また用いる染料の種類を染料Aから染料Cに変更した。それ以外は、実施例11と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。その後、室温にて10分乾燥後、さらに80度にて240分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した。
【0077】
(実施例19)
実施例18において、用いる樹脂粒子を、樹脂粒子Bを分級して平均粒子径40μmとした樹脂粒子Eに変更した以外は、実施例18と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例18と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0078】
(実施例20)
実施例18において、用いる樹脂粒子を、樹脂粒子Cを分級して平均粒子径100μmとした樹脂粒子Fに変更した以外は、実施例18と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例18と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0079】
(実施例21~実施例24)
実施例18において、用いる樹脂粒子BおよびCの各量、シリカAの量、または染料Cの量のいずれかを表2に示すように変更した以外は、実施例18と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例18と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0080】
(実施例25)
実施例11において、用いるバインダー樹脂の種類を、樹脂A-1から樹脂A-3に変え、用いる主剤および脂肪族アミン系硬化剤の量をそれぞれ主剤96部、脂肪族アミン系硬化剤4質量部とした。また用いる染料の種類を染料Aから染料Cに変更した。それ以外は、実施例11と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。その後、室温にて10分乾燥後、さらに80度にて120分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した
【0081】
(実施例26~実施例31)
実施例25において、用いる樹脂粒子BおよびCの各量、シリカAの量、または染料Cの量のいずれかを表2および3に示すように変更した以外は、実施例25と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例25と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0082】
(実施例32)
実施例11において、用いるバインダー樹脂の種類を、樹脂A-1から樹脂A-4に変え、用いる主剤および脂環族アミン系硬化剤の量をそれぞれ主剤90部、脂環族アミン系硬化剤10質量部とした。また用いる染料の種類を染料Aから染料Cに変更した。それ以外は、実施例11と同様にして塗料混合液を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。その後、室温にて10分乾燥後、さらに80度にて240分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した。
【0083】
(実施例33~実施例38)
実施例32において、用いる樹脂粒子BおよびCの各量、シリカAの量、または染料Cの量のいずれかを表3に示すように変更した以外は、実施例32と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた塗料を用いて実施例32と同様にして塗膜を作製した。
【0084】
(実施例39)
実施例11において、用いるバインダー樹脂の種類を、樹脂A-1から樹脂A-5に変え、用いる主剤および脂肪族アミン系硬化剤の量をそれぞれ主剤97部、脂肪族アミン系硬化剤3質量部とした。それ以外は、実施例11と同様にして表面反射防止塗料を調製した。
続いて、得られた表面反射防止塗料を、ギャップを150μmに設定したアプリケーターを用いて、厚さ100μmのPETフィルム上に塗布した。その後、室温にて10分乾燥後、さらに80度にて240分乾燥させて表面反射防止塗膜を作製した
【0085】
(実施例40~実施例44)
実施例39において、用いる樹脂粒子BおよびCの各量、シリカAの量、または染料Cの量のいずれかを表3に示すように変更した以外は、実施例39と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例39と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0086】
(実施例45)
実施例39において、密着性付与剤を用いず、また用いる染料Cの量を表3に示すように変更した以外は、実施例39と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例39と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0087】
(比較例8~11)
実施例1において、さらに黒色微粒子1を20質量部用い、また、用いる染料A、シリカA、および樹脂粒子BおよびCの各量を表4に示すように変えて塗料混合液を調製した以外は、実施例1と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例1と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0088】
(比較例12~13)
実施例18において、用いるシリカAおよび樹脂粒子Cの各量を表4に示すように変えて塗料混合液を調製した以外は、実施例18と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例18と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0089】
(比較例14~15)
実施例32において、用いるシリカAおよび樹脂粒子Cの各量を表4に示すように変えて塗料混合液を調製した以外は、実施例32と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例32と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0090】
(比較例16~17)
実施例39において、用いるシリカAおよび樹脂粒子Cの各量を表4に示すように変えて塗料混合液を調製した以外は、実施例39と同様にして表面反射防止塗料を調製した。また、得られた表面反射防止塗料を用いて実施例39と同様にして表面反射防止塗膜を作製した。
【0091】
(正反射率測定)
低光沢性の評価として、正反射率の測定を行った。
正反射率の測定では、上記実施例および比較例で得られた表面反射防止塗膜に対し、ハンディー光沢計(商品名:PG-IIM ver.1.2、日本電色工業社製)を用いて、20°:Gs(20)、60°:Gs(60)、85°:Gs(85)を測定した。それぞれの角度について、測定は同一サンプルに対して3回行い、得られた3回の測定値の平均値を各角度における正反射率とした。各角度の正反射率を用いて以下のとおり評価した。
A:すべての角度における正反射率が、「0.5%以下」である。
B:すべての角度における正反射率が、「1.0%以下」で、かつ「0.5%を超え1.0%以下」の正反射率が一つ以上ある。
C:いずれか少なくとも一つの角度において、「1.0%を超える」正反射率がある。
測定結果および評価結果を表1~4に示す。
【0092】
(全光線反射率測定1)可視光(400-700nm)領域
可視光(400-700nm)領域の拡散反射の評価として、全光線反射率測定1を行った。
全光線反射率測定1は、上記実施例および比較例で得られた表面反射防止塗膜に対し、150mmφ積分球ユニットを取り付けた分光光度計(商品名:V-670、日本分光社製)を用いて行った。
測定においては、図4に示すように、表面反射防止塗膜6に対し、垂直に伸びる法線15に対して入射角14を特定の値として波長350nm~850nmまで1nm刻みの条件で入射光10を入射させた。そして、反射光11を含む拡散反射光13について測定を行った。測定は同一サンプルに対して3回行い、波長400nm~700nmで得られた測定値について3回の測定結果の平均値を算出し、可視光に対する全光線反射率とした。全光線反射率は以下のとおり評価した。
A:可視光に対する全光線反射率が、「2.5%以下」である。
B:可視光に対する全光線反射率が、「2.5%を超え、3.0%以下」である。
C:可視光に対する全光線反射率が、「3.0%を超える」。
測定結果および評価結果を表1~4に示す。
【0093】
(全光線反射率測定2)近赤外(780-2000nm)領域
近赤外(780-2000nm)領域の拡散反射の評価として、全光線反射率測定2を行った。
全光線反射率測定2は、上記実施例および比較例で得られた表面反射防止塗膜に対し、150mmφ積分球ユニットを取り付けた分光光度計(商品名:V-560、日本分光社製)を用いて行った。測定においては、上記全光線反射率1において、用いる光を波長780nm~2000nmまで1nm刻みの条件とした以外は、可視光に対する全光線反射率と同様に測定を行い、得られた値を近赤外光に対する全光線反射率とした。
A:近赤外光に対する全光線反射率が、「15%以下」である。
B:近赤外光に対する全光線反射率が、「15%を超える」。
測定結果および評価結果を表1~4に示す。
【0094】
(塗膜の膜厚測定)
実施例および比較例で得られた表面反射防止塗膜の厚さは、基材と、基材上に形成された塗膜とを合わせた厚さについてマイクロゲージを使用して測定した後、基材の厚さを差し引いて決定した。測定は同一サンプルに対して3回実施し、その平均値を表面反射防止塗膜の厚さとした。
【0095】
(塗膜の表面粗さ測定)
実施例および比較例で得られた表面反射防止塗膜の表面粗さとして、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE3500、小坂研究所製)を用いて、Rzjis(μm)と、RSm(mm)とを測定した。測定は同一サンプルに対して3回実施し、その平均値をそれぞれの測定値とした。測定条件は、以下の通りとした。測定結果を表1~4に示す。
・カットオフ:0.8mm
・測定長さ:2.5mm
・測定速度:0.1mm/sec
【0096】
(塗膜の密着性)
各実施例および比較例でPETフィルム上に表面反射防止塗膜を形成したのと同様にして、実施例および比較例で得られた表面反射防止塗料をガラス入PC上に塗布し、表面反射防止塗膜を得た。得られた表面反射防止塗膜について、クロスカット法(JIS K5600-5-6)を用いて膜の密着性を評価した。クロスカット法の評価は、JISに基づき0~5に分類し、以下の通り密着性を評価した。
A:クロスカット法の分類値が1以下。
B:クロスカット法の分類値が2。
C:クロスカット法の分類値が3以上。
測定結果および評価結果を表1~4に示す。
【0097】
(総合評価)
総合評価は、正反射率、全光線反射率1、全光線反射率2、および密着性の評価を用いて以下のとおり評価した。
A:すべて「A」である。
B:「C」を含まず、かつ、「B」が1つ以上ある。
C:「C」が1つ以上ある。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【符号の説明】
【0102】
1.バインダー樹脂
2.染料
3.樹脂粒子
4.シリカ
5.黒色微粒子
6.表面反射防止塗膜
10.入射光
11.反射光
12.透過光
13.拡散反射光
14.入射角
15.法線
図1
図2
図3
図4