(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101482
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】シート折り装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 45/18 20060101AFI20220629BHJP
B65H 45/14 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B65H45/18
B65H45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191712
(22)【出願日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】P 2020214610
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】渥美 慶一
(72)【発明者】
【氏名】坂野 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】依田 暁登
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108AA01
3F108AB01
3F108AC01
3F108BA03
3F108BA08
3F108BA09
3F108BB23
3F108CC02
3F108CD04
3F108EA07
(57)【要約】
【課題】シートを折り処理する際にシート案内手段に作用する負荷を少なくし得るシート折り装置を提供する。
【解決手段】シート折り装置Bは、折りローラ対111が搬送ローラ対110から搬送されるシートの先端側をニップして停止した状態で、搬送ローラ対がシートを搬送し続けることによって折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、突き板115が突き押しして折りローラ対に向けて移動している間に、折りローラ対がシートの搬送を開始してシートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成し、その後に、折りローラ対が、ループが形成されたシートの第2位置をシートの後端と整合させてニップすることにより、第2の折り目を形成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に配置され、シートを所定の搬送方向に搬送する送りローラと、
前記送りローラの前記搬送方向下流側に配置され、シートの所定位置をニップ部でニップして折り目を形成する折りローラ対と、
シートの前記所定位置を突いて前記折りローラ対にニップさせる突き位置に移動する突き部材と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、前記突き部材が突き押しして前記突き位置に向けて移動している間に、前記折りローラ対が、前記停止した状態からシートの搬送を開始してシートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成する第1の折り処理を行い、
前記折りローラ対が、前記第1の折り処理の後に、前記ループが形成されたシートの第2位置を前記ニップ部でニップすることにより、第2の折り目を形成する第2の折り処理を行うように、
前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、シート折り装置。
【請求項2】
前記送りローラにより搬送されるシートの厚さを認識するシート厚認識手段を更に備え、
前記制御部は、
前記シート厚認識手段がシートの厚みを所定の厚さ以上と認識した場合、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、前記突き部材が突き押しして前記突き位置に向けて移動している間に、前記折りローラ対が、前記停止した状態からシートの搬送を開始してシートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成する第1の折り処理を行い、
前記折りローラ対が、前記第1の折り処理の後に、前記ループが形成されたシートの第2位置を前記ニップ部でニップすることにより、第2の折り目を形成する第2の折り処理を行うように、
前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、請求項1に記載のシート折り装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記シート厚認識手段がシートの厚みを前記所定の厚さよりも厚い第2の厚さ以上と認識した場合、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、前記突き部材が突き押しして前記突き位置に向けて移動している間に、前記折りローラ対が前記停止した状態からシートの搬送を開始するタイミングを、前記シート厚認識手段がシートの厚みを前記所定の厚さ以上で前記第2の厚さよりも小さいと認識した場合よりも早くするように、
前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、ことを特徴とする請求項2に記載のシート折り装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記折りローラ対がシートの前記第1の折り目に前記第1の折り処理を施した後、前記突き部材を前記突き位置に停止させた状態で、前記折りローラ対を前記搬送方向とは反対方向に所定量回転させて、シートを前記搬送方向とは反対方向に搬送する、請求項1乃至3のいずれかに記載のシート折り装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記シート厚認識手段がシートの厚みを前記第2の厚さ以上と認識した場合、
前記折りローラ対がシートの前記第1の折り目に前記第1の折り処理を施した後、前記突き部材を前記突き位置に停止させた状態で、前記折りローラ対を前記搬送方向とは反対方向に、前記シート厚認識手段がシートの厚みを前記所定の厚さ以上で前記第2の厚さよりも小さいと認識した場合よりも多い所定量回転させて、シートを前記搬送方向とは反対方向に搬送する、ことを特徴とする請求項3に記載のシート折り装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記シート厚認識手段がシートの厚みを前記所定の厚さより小さいと認識した場合、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、前記突き部材が突き押しして前記突き位置に移動すると、前記折りローラ対が、前記停止した状態からシートの搬送を開始してシートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成する第1の折り処理を行い、
前記折りローラ対が、前記第1の折り処理の後に、前記ループが形成されるシートの第2位置を前記ニップ部でニップすることにより、第2の折り目を形成する第2の折り処理を行うように、
前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、請求項1に記載のシート折り装置。
【請求項7】
シートを突き押しして前記突き位置に移動した前記突き部材を前記突き位置に停止した状態に保持するための保持力を、前記シート厚認識手段が認識したシートの厚みに応じて発生させる手段を更に備える、請求項1乃至6に記載のシート折り装置。
【請求項8】
搬送経路に配置され、シートを所定の搬送方向に搬送する送りローラと、
前記送りローラの前記搬送方向下流側に配置され、シートの所定位置をニップ部でニップして折り目を形成する折りローラ対と、
シートの前記所定位置を突いて前記折りローラ対にニップさせる突き位置に移動する突き部材と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの前記搬送方向の先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを前記突き部材が突き押しして前記突き位置に向けて移動している間に、前記折りローラ対が、停止した状態からシートの搬送を開始し、
前記突き部材を前記突き位置で停止し、前記突き部材を前記突き位置に停止させた状態で、前記折りローラ対を前記搬送方向とは反対方向に所定量回転させて停止させ、前記送りローラと前記折りローラ対を前記搬送方向に回転させてシートの搬送を開始し、シートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成する第1の折り処理を行い、
前記第1の折り処理の後に、前記ループが形成されているシートの第2位置を前記ニップ部でニップすることにより、第2折り目を形成する第2の折り処理を行うように、前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、
シート折り装置。
【請求項9】
前記送りローラにより搬送されるシートの厚さを認識するシート厚認識手段を更に備え、
前記制御部は、前記シート厚認識手段がシートの厚みを所定の厚さ以上と認識した場合、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの前記搬送方向の先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、前記突き部材が突き押しして前記突き位置に向けて移動している間に、前記折りローラ対が、停止した状態からシートの搬送を開始し、
前記突き部材を前記突き位置より前記搬送方向上流の所定位置で停止し、前記突き部材を前記所定位置に停止させた状態で、前記折りローラ対を前記搬送方向とは反対方向に所定量回転させて停止させ、前記突き部材を前記所定位置から前記突き位置に移動しながら前記送りローラを前記搬送方向に回転させてシートの搬送を開始し、前記突き部材を前記突き位置で停止した後に前記折りローラ対を前記搬送方向に回転させ、シートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成する第1の折り処理を行い、
前記第1の折り処理の後に、前記ループが形成されているシートの第2位置を前記ニップ部でニップすることにより、第2折り目を形成する第2の折り処理を行うように、前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、
請求項8に記載のシート折り装置。
【請求項10】
シートに画像形成を行う画像形成部と、
前記画像形成部から搬送されるシートに対して折り処理を行うシート折り装置を備え、
前記シート折り装置は、請求項1乃至9のいずれか1項の構成を備えるシート折り装置である、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに折り処理を行うシート折り装置、及び、シートに折り処理を行うシート折り機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ等の画像形成装置で画像形成されたシートに所定の位置で折り処理を行うシート折り装置が広く知られている。折り処理には、シートの中央位置での二つ折り、シートを2カ所で内折りする三つ折り、シートを交互に内折り外折りして三つ折りする所謂Z折り等がある。
【0003】
水平な上ガイド板の上流側に送りローラ対を、下流側に紙折りローラ対を備え、紙折りローラ対の上流側に紙片案内偏向部材(即ち、突き部材)を配設した紙片折り畳み装置が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0004】
特許文献1に記載の装置は、シートを搬送するシート搬送手段と、シート搬送手段により搬送されたシートの折り畳み動作を行うシート折り手段を備える。同文献には、シート先端がシート折り手段にニップされ停止した状態で、シート搬送手段でシートを搬送し、シート搬送手段とシート折り手段との間にシートを湾曲させ弛ませる。シートを弛ませた部分にシート案内手段(突き部材)を突き込むことで、搬送されるシートに対しZ折りを形成する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2に記載の装置は、特許文献1の装置と同様に、シートに弛み部分を形成し、その弛み部分にシート案内手段を突き込む際、シート案内手段の先端に配置されたローラを、シートを案内するガイドに押し当てる。同文献には、押し当てた状態を保持しながら、シート案内手段がシートの上をガイドに沿って移動し、シートの折り曲げ位置をシート折り手段へ導く技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-68583号公報
【特許文献2】特開2005-67741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献に記載のシート折り装置では、紙折りローラ対がシートの先端を保持して停止した状態で、シート案内手段が、シートの折り目となる部分を突き押しして、紙折りローラ対へと近付けていくので、シート案内手段に掛かる負荷が大きいという問題がある。
【0008】
更に、シートの剛性が高い場合やシートの厚みが大きい場合には、シート案内手段に掛かる負荷が更に増大する。そのため、シート案内手段が、シートの折り目となる部分を紙折りローラ対へと近付けるために、シートを突き押し搬送している途中で停止してしまい、搬送不良(ジャム)を引き起こす虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点を解消するためになされたものであり、シートに折り処理を施す際に、シート案内手段に作用する負荷を少なくし得るシート折り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシート折り装置は、
搬送経路に配置され、シートを所定の搬送方向に搬送する送りローラと、
前記送りローラの前記搬送方向下流側に配置され、シートの所定位置をニップ部でニップして折り目を形成する折りローラ対と、
シートの前記所定位置を突いて前記折りローラ対にニップさせる突き位置に移動する突き部材と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記折りローラ対が前記送りローラから搬送されるシートの先端側を前記ニップ部でニップして停止した状態で、前記送りローラがシートを搬送し続けることによって前記折りローラ対の上流側にループが形成されるシートを、前記突き部材が突き押しして前記突き位置に向けて移動している間に、前記折りローラ対が、前記停止した状態からシートの搬送を開始してシートの第1位置をニップすることにより、第1の折り目を形成する第1の折り処理を行い、
前記折りローラ対が、前記第1の折り処理の後に、前記ループが形成されたシートの第2位置を前記ニップ部でニップすることにより、第2の折り目を形成する第2の折り処理を行うように、
前記送りローラ、前記折りローラ対及び前記突き部材の動作を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート折り装置は、突き位置に向けて突き部材によって突き押しされるシートが、それと同時に前記折りローラ対によっても搬送されるので、シートを突き押しして移動する突き部材にかかる負荷を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の好適な実施形態による画像形成システムの全体構成図。
【
図3】シート折り装置の制御構成を示すブロック図。
【
図4】シート折り装置の折り処理動作を説明するフローチャート。
【
図5】(a)~(c)図は、シート折り装置の折り処理を工程順に示す図。
【
図6】(d)~(f)図は、
図5に続く折り処理を工程順に示す図。
【
図7】(g)、(h)図は、
図6に続く折り処理を工程順に示す図。
【
図9】(a)、(b)図は、本発明の別の変形例による折り処理を示す図。
【
図10】(a)、(b)図は、本発明の別の変形例による折り処理を示す図。
【
図11】(a)、(b)図は、突き板の停止位置を示す図。
【
図12】(a)~(f)図は、シート折り装置の折り処理を工程順に示す図。
【
図13】シート折り装置の折り処理動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明によるシート折り装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、複写機である画像形成装置Aと、画像形成装置Aの排紙口に連接されたシート折り装置Bと、その下流側に連接された後処理装置Cとからなる画像形成システムの構成全体を示している。
【0014】
[画像形成装置]
図1の画像形成装置Aは、以下に説明するように、静電印刷装置であり、複写機、プリンタ、印刷機など、様々な構造のものを採用することができる。画像形成装置Aは、ケーシング内に給紙部2と、印字部3と、排紙部4と、制御部とが内蔵されている。給紙部2には、シートサイズに応じた複数のカセットが準備され、前記制御部から指示されたサイズのシートが、給紙経路6に繰り出される。給紙経路6にはレジストローラ7が設けられ、シートを先端揃えした後、所定のタイミングで下流側の印字部3に給送する。
【0015】
印字部3には静電ドラム10が設けられ、静電ドラム10の周囲には、印字ヘッド9、現像器11、転写チャージャ12などが配置されている。印字ヘッド9は、例えばレーザ発光器などで構成され、静電ドラム10上に静電潜像を形成し、この潜像に現像器11でトナーインクを付着させ、転写チャージャ12でシートに印刷する。この印刷されたシートは、定着器13で定着され、排紙経路17に搬出される。排紙部4には、前記ケーシングに形成した排紙口14と、排紙ローラ15とが配置されている。
図1中、符号16は循環経路であり、排紙経路17から搬出されたシートをスイッチバック経路で表裏反転した後、再びレジストローラ7に送り、該シートの裏面に画像形成をする。このように片面又は両面に画像形成された印刷済みのシートは、排紙口14から排紙ローラ15で搬出される。
【0016】
画像形成装置Aは、前記ケーシングの上に、印字ヘッド9で印刷する原稿画像を光学的に読み取るスキャナユニット20を備える。スキャナユニット20は、一般に知られているように、原稿シートを載置するプラテン23と、プラテン23に沿って原稿画像をスキャンするキャリッジ21と、キャリッジ21から送られる光学像を光電変換する光学読取手段(例えば、CCDデバイス)22とから構成される。図示するように、プラテン23上には、原稿シートを自動的にプラテン23に給送する原稿送り装置25が配設されている。
【0017】
[シート折り装置]
図1のシート折り装置Bは、画像形成装置Aの排紙口14に連接され、画像形成装置Aで画像形成されて搬出されたシートに折り処理を行う。同図に示すように、シート折り装置Bは、搬送経路に沿って上流側に設けられた搬送ローラ対110と、その下流側に設けられた折りローラ対111とを備える。
【0018】
図2に示すように、搬送ローラ対110は、ゴムローラで形成される搬送上ローラ110aと搬送下ローラ110bとを有する。搬送下ローラ110bは、搬送上ローラ110aに対して対向配置され、図示しないばねの弾性力により付勢されて搬送上ローラ110aに圧接され、従動的に回転する。搬送上ローラ110aは、図示しない搬送駆動機構の搬送駆動モータに連結されており、該搬送駆動モータの回転によって回転する。搬送ローラ対110は、搬送方向へ回転駆動して、上流側の画像形成装置Aから排紙されて受け取ったシートを、前記搬送経路に沿って下流へ通過させる。
【0019】
折りローラ対111は、ゴムローラで形成される折り上ローラ111aと折り下ローラ111bとを有する。折り下ローラ111bは、折り上ローラ111aに対向して配置され、図示しないばねの弾性力により付勢されて折り下ローラ111bに圧接されている。折りローラ111aは、図示しない折り駆動機構の折り駆動モータに連結されており、該折り駆動モータの回転によって、正逆転や駆動速度など自在に駆動回転する。
【0020】
折りローラ対111の上流側の上部には、センサ118が配置されている。センサ118は、シートの先端の搬送タイミングを検知し、それにより、前記搬送経路を搬送されるシートを停止させるタイミングを制御することができる。具体的には、センサ118がシートの先端の搬送タイミングを検知し、シートの先端が折りローラ対111のニップ部の中心に到達したと判断されると、その後の折りローラ対111の回転を停止させる。
【0021】
搬送ローラ対110と折りローラ対111の間には、搬送上ガイド113が配置されている。搬送上ガイド113は、シート先端を搬送ローラ対111から突き板115まで導くように、搬送ローラ対110の直後から突き板115の上部まで形成されている。搬送上ガイド113は、搬送されるシートの流れを規制するためのもので、前記搬送経路の搬送面に対して上側に配置され、下流側に向けて下方へ湾曲した形状に形成されている。
【0022】
搬送上ガイド113の下方には、搬送下ガイド114が配置されている。搬送下ガイド114は、搬送上ガイド113と協働して、搬送されるシートの流れを規制するもので、前記搬送経路に対して下側に配置され、搬送上ガイド113に対応して同様に下流側に向けて下方へ湾曲した形状に形成されている。搬送下ガイド114の下流側には、空隙が設けられ、前記搬送経路を下方へ開放している。
【0023】
搬送上ガイド113の下流側には、折り上ガイド116が、前記搬送経路の上部に、折り上ローラ111aの上流と下流とに跨って配置されている。折り上ガイド116は、前記搬送経路を搬送されるシートの先端およびシート折り曲げ部を、折りローラ対111に導くように形成されている。
【0024】
折り上ガイド116に対向する前記搬送経路の下部には、折り下ガイド117が、折り下ローラ111bの上流と下流とに跨って配置されている。折り下ガイド117は、折りローラ対111の上流側で、折り上ガイド116と協働して、前記搬送経路を搬送されるシートの先端およびシート折り曲げ部を折りローラ対111のニップ部へ導くために、前記搬送経路の搬送方向に関して平行な水平面と傾斜面とを形成している。
【0025】
搬送ローラ対110と折りローラ対111との間には、突き板115が、折りローラ対111の上流側で前記搬送経路と平行に移動可能に配置されている。突き板115は、図示しない突き板駆動機構の突き板駆動モータに連結され、該突き板駆動モータの駆動によって、搬送方向に沿って搬送下ガイド114の下側の上流側位置と折りローラ対111の手前の下流側位置との間を移動する
【0026】
[制御部]
図3は、シート折り装置Bの前記制御部の構成を示している。前記制御部は、シート折り装置Bにおけるシートの折り処理を制御する折り制御部301を備える。折り制御部301は、制御手段311と、シート厚認識手段312と、保持力調整手段313とを備え、例えばCPUなどで構成される。折り制御部301は、ROMに格納された折り制御プログラム302を呼び出して、必要に応じて一時的な情報を記憶部303に格納しながら、折り処理を実行する。
【0027】
同図に示すセンサ304には、図示しないシート位置検知手段が含まれる。入力部305は、例えばスイッチなどの、折り制御部301に対して操作を可能とするための入力インターフェースを備える。通信部309は、例えばUARTなどの、画像形成装置Aなどと通信するためのシリアル通信インターフェースを備える。
【0028】
折り制御部301は、搬送モータ306、折りモータ307、突きモータ308に信号を送信して、それらの駆動を制御することができる。折り制御部301からの制御信号により、搬送モータ306は搬送ローラ対110を、折りモータ307は折りローラ対111を、突きモータ308は突き板115をそれぞれ駆動することができる。
【0029】
折り制御部301は、画像形成装置Aから排紙されるシートの剛度や厚さなど、搬送するシートに関する情報を取得する。これらの情報は、画像形成装置Aから排紙されたシートの折り処理がシート折り装置B内で開始する前に入力される。前記情報の取得は、基本的に、画像形成装置Aから通信部309を介した通信によって行われるが、シート折り装置B内に設けたセンサ等から取得することもできる
【0030】
[折り処理動作]
折り制御部301によるシートの折り処理動作を、
図4のフローチャートを用いて説明する。折り処理動作は、シートにZ折りの1つ目の折り目を形成する第1の折り処理と、Z折りの2つ目の折り目を形成する第2の折り処理とを、一連の動作で連続して行う。
【0031】
最初に、搬送ローラ対110を回転駆動して(ステップSt01)、シートを折りローラ対111まで搬送する。このとき、突き板115は、搬送下ガイド114と折り下ガイド117との間の前記空隙を埋めて、シートの先端を折り下ガイド117まで導くように配置されている。
【0032】
次に、折りローラ対111を回転駆動して(ステップSt02)、シート先端をニップする。センサ118がオンになる(ステップSt03のYes)と、カウンタにより所定の値カウントした後、シート先端が折りローラ対111にニップされたと認識して、折りローラ対111を停止させる(ステップSt04)。
【0033】
シートにZ折りを形成するために、突き板115は、搬送下ガイド114と折り下ガイド117間の位置から搬送下ガイド114の下方の退避位置へと平行移動させる。これにより、搬送下ガイド114と折り下ガイド117の間に前記空隙が形成され、その下方には、搬送ローラ対110と折りローラ対111の間でシートのループを作成するためのループ空間が画成される(ステップSt05)。
【0034】
搬送ローラ対110によるシートの搬送が、突き板115が前記退避位置に移動してから所定量に達すると、突き板115を折りローラ対111に向けて水平移動を開始させる(ステップSt06)。シートは、折りローラ対111が停止した状態のまま、搬送ローラ対110によって送り出され、それにより前記空隙から前記ループ空間に垂れ下がるループ形状となる。突き板115が、ループ形状のシートを突き押ししながら、折りローラ対111のニップ部に向けて押し込まれることによって、シートにZ折りの1つ目の折り目が形成される。
【0035】
ここで、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値より大きいと判断した場合(ステップSt07のYes)、突き板115が、折りローラ対111のニップ部付近に設定された停止位置より手前の即ち上流側の所定位置まで進んだところで、折りローラ対111を搬送方向へ回転駆動する(ステップSt08)。それにより、折りローラ対111にニップされたシートの先端は、下流側へ搬送される。突き板115は、折りローラ対111によって下流側へ搬送されるシートに誘導されるように、折りローラ対111のニップ部へ進入する。
【0036】
このように、突き板115により突き押しされているシートが、それと同時に折りローラ対111により搬送されるという補助動作によって、シートの突き押しにより突き板115にかかる負荷が、かかる補助動作がない場合よりも軽減される。また、シートの剛度や厚さが所定の値より大きいと判断する基準として、例えばシートの坪量が91g/m2を超える場合を設定することができる。
【0037】
上述したようにループ形状になったシートの突き押しによって形成されたシートの折り目が、折りローラ対111のニップ部付近の停止位置に到達したところで、突き板115の折りローラ対111のニップ部に向けた水平移動の動作を停止させる(ステップSt09)。同時に、折りローラ対111の回転駆動も停止させる(ステップSt10)。
【0038】
その後、突き板115を停止させた状態のまま、折りローラ対111を逆転即ち搬送方向とは反対方向に回転駆動する(ステップSt11)。それにより、シートは、突き板115によって形成された折り目の位置が搬送方向にシフトすることなく、シート先端のみが搬送方向とは反対方向へ戻される。
【0039】
次に、シート先端が所定の逆転停止位置に到達したところで、折りローラ対111の逆転動作を停止させる(ステップSt12)。その後、再び折りローラ対111を正転即ち搬送方向へ回転駆動させ、シートを搬送方向に搬送することによって、シートにZ折りの2つ目の折りを形成する(ステップSt13)。その後、突き板115は、前記停止させた状態から再び上流側の退避位置へ移動させ(ステップSt14)、一連の折り処理動作を終了する。
【0040】
ステップSt07で、シートの剛性や厚さが前記所定の値以下と判断された場合(ステップSt07のNo)、突き板115が折りローラ対111付近の前記停止位置に到達すると、折りローラ対111を搬送方向に回転駆動して、シートを搬送方向に搬送する(ステップSt13)。これにより、突き板115に突き押しされたシートの折り目位置を折りローラ対111にニップさせ、シートにZ折りの1つ目の折りを形成する。この場合、折りローラ対111を、突き板115が前記停止位置より手前の前記所定の位置まで進んだところで搬送方向へ回転駆動させ、シートを下流側へ搬送する前記補助動作は行わない。この後、突き板115は、前記停止位置から再び上流側の退避位置へ移動させ(ステップSt14)、一連の折り処理動作を終了する。
【0041】
次に、シートの剛度や厚さが前記所定の値より大きい場合の折り処理動作について、
図5~
図7を用いて具体的に説明する。
図5~
図7は、シート折り装置Bが画像形成装置Aからシートを搬入し、搬送しながら折り処理する過程を工程順に示している。
【0042】
先ず、
図5(a)で示すように、上流側の画像形成装置Aから排紙されたシートは、搬送方向へ回転駆動している搬送ローラ対110によって、搬送ローラ対110を通過し、搬送上ガイド113と搬送下ガイド114間の搬送経路を下流側へ搬送される。
【0043】
シートは、
図5(b)で示すように、搬送上ガイド113と突き板115間の搬送経路及び折り上ガイド116と折り下ガイド117の搬送経路を通して搬送される。シート先端がセンサ118で検知され、折りローラ対111にニップされて更に所定量搬送されると、折りローラ対111の回転駆動を停止させる。
【0044】
次に、
図5(c)で示すように、シート先端を折りローラ対111にニップさせて保持した状態で、突き板115を上流側へ前記退避位置まで移動させ、搬送下ガイド114と折り下ガイド117間の下側に、シートにループを形成させるためのループ空間を画成する。この後も搬送ローラ対110を回転駆動し続けることによって、シートには、前記ループ空間に垂れ下がるループが形成される。
【0045】
図6(d)で示すように、搬送ローラ対110によりシートを搬送方向に所定量送りこみ、ループを形成させる。この後、突き板115を前記退避位置から下流側へ水平移動させる。
【0046】
次に、
図6(e)で示すように、突き板115がシートを突き押ししながら、折りローラ対111のニップ部に向けて移動している途中、所定の位置まで到達したところで、折りローラ対111を搬送方向へ回転駆動する。この折りローラ対111の回転動作を開始させるタイミングは、折りローラ対111のニップ部に向けて移動している突き板115がシートから受ける負荷が最も大きくなる位置よりも手前に設定することが望ましい。
【0047】
これにより、シートは、その先端が折りローラ対111のニップ部よりも下流側へ進むように搬送される。このとき、シートのループは、図示するように、突き板115の下方にあって、ループの上側部分が突き板115に突き押しされて下流側へ移動しながら、ループの下側部分は折りローラ対111によって下流側へ搬送される。それにより、突き板115は、シートを突き押ししつつ、同時に折りローラ対111によって下流側に搬送されるシートに導かれるように、折りローラ対111のニップ部へ進入するので、シートの突き押し動作によって突き板115に掛かる負荷が軽減される。突板115がシートを突き押しして移動する速度と折りローラ対111がシートを搬送する速度とは、同じであるように設定することが好ましい。
【0048】
突板115により、その先端が突き当たっているシートの部分が折り曲げられた状態で折り上ガイド116と折り下ガイド117間の上下隙間に押し込まれることによって、シートには、Z折りの1つ目の折り目が形成される。
図6(f)で示すように、シートの1つ目の折り目が、突き板115に押し込まれて折りローラ対111のニップ部付近に到達したところで、突き板115及び折りローラ対111の動作を停止させる。
【0049】
次に、突き板115を停止させた状態のまま、折りローラ対111を逆転即ち搬送方向とは反対方向に回転駆動させる。これにより、シートは、
図7(g)で示すように、1つ目の折り目の位置を変えずに維持した状態で、シート先端のみを搬送方向とは反対方向へ戻すことができる。シート先端が、折りローラ対111のニップ部より下流側の所定位置に到達したところで、折りローラ対111の逆転動作を停止させる。
【0050】
図7(g)では、シート先端が折りローラ対111の下流側でニップ部直前の位置に到達したところで、折りローラ対111の逆転動作を停止させている。しかしながら、折りローラ対111の逆転動作を停止させるタイミングは、これに限定されるものではなく、シート先端がニップ部の下流側にあってニップされた状態が維持される限り、異なる位置に設定することができる。
【0051】
この後、
図7(h)で示すように、突き板115を停止状態から前記退避位置に移動させると共に、折りローラ対111を搬送方向に回転駆動する。これにより、シートの1つ目の折り目が折りローラ対111にニップされて折られ、第1の折り処理が終了する。
【0052】
この後、シートは、更に搬送方向に搬送されることによって、折りローラ対111の上流側でループを形成していた部分が、折り上ガイド116と折り下ガイド117との間で上下から絞られる。最終的には、このシートの絞られた部分が、シートの後端側と重ね合わされ、折りローラ対111にニップされて折られ、2つ目の折り目が形成されて、第2の折り処理が終了する。
【0053】
[シートの厚さに応じた折り処理動作の制御]
シートは、その厚さによって剛性が高くなるので、
図4のステップSt08に関連して説明したように折りローラ対111の駆動開始のタイミングを早く設定しても、突き板115先端の突き押しにより曲げられたシートの上面が、反り返って折り上ガイド116の下面に接触して大きな抵抗となり、突き板115に掛かる負荷を十分に軽減できない虞がある。そこで、
図4のステップSt08における折りローラ対111の駆動開始タイミングは、通信部309から取得したシートの厚さや剛性に応じて、変更、調整することが好ましい。
【0054】
具体的には、折り制御部301のシート厚認識手段312が、画像形成装置Aから搬入するシートの厚さを所定の厚さより更に厚い第2の所定の厚さ以上と認識した場合、突き板115の先端が、搬送方向に
図8に示す第2の所定位置(Ps403)まで進んだところで、折りローラ対111の搬送方向への回転駆動を開始する。シートの厚さについて、上述した実施形態において前記所定の厚さを、シートの坪量が91g/m
2を超える場合に設定したが、ここでは、それより厚い前記第2の所定の厚さとして、例えばシートの坪量が105g/m
2を超える場合を基準に設定することができる。
【0055】
図8は、シートの厚さに対応した突き板115先端の位置と折りローラ対111による搬送方向のシート搬送量(搬送方向長さ)を示している。図中、突き板115の停止位置Ps401は、折りローラ対111のニップ部付近に設定される。シートの厚さが前記所定の厚さより大きくかつ前記第2の所定の厚さを超えない場合の所定位置Ps402は、図示するように、停止位置Ps401より搬送方向上流側に設定する。第2の所定位置Ps403は、所定位置Ps402よりも更に搬送方向上流側に設定する。
【0056】
シートの厚さが前記所定の厚さより大きい場合、その厚さに対応して、突き板115の先端が所定の位置Ps402または第2の所定の位置Ps403に到達したとき、折りローラ対111の回転駆動を開始し、突き板115が停止位置Ps401に到達したとき、折りローラ対111の回転駆動を停止する。
【0057】
図9(a)は、
図4のステップSt08において、突き板115先端が所定位置Ps402に到達したときに折りローラ対111を駆動開始した場合のシートの搬送量CR1を示している。
図9(b)は、突き板115先端が第2の所定位置Ps403に到達したときに折りローラ対111を駆動開始した場合のシートの搬送量CR2を示している。両図の比較から分かるように、折りローラ対111の駆動開始タイミングが第2の所定位置Ps403の場合(
図9(b))、折りローラ対111によるシートの搬送量CR2は、折りローラ対111の駆動開始タイミングが所定位置Ps402の場合(
図9(a))の搬送量CR1と比較して多くなる。
【0058】
突き板115の突き押しによって形成されかつ押し出されたシートの折り目が折りローラ対111のニップ部に到達する前に、折りローラ対111の回転駆動を開始すると、シート先端は、搬送方向にシートの折り目より下流側へ搬送される。そこで、シート先端を搬送方向にシートの折り目位置まで戻すためには、突き板115を停止位置Ps401で停止させた状態で、折りローラ対111を逆転駆動すればよい。これにより、シートの先端位置をシートの折り目の位置に整合させ、又は近付けることができる。
【0059】
図10は、
図4のステップSt11において、折りローラ対111を逆転駆動する場合の、搬送方向とは反対方向の逆向きシート搬送量を示している。
図10(a)は、
図4のステップSt08で折りローラ対111の駆動開始タイミングが所定位置Ps402の場合における、折りローラ対111による逆向きシート搬送量CB1を示している。
図10(b)は、折りローラ対111の駆動開始タイミングが第2の所定位置Ps403の場合における、折りローラ対111による逆向きシート搬送量CB2を示している。両図の比較から分かるように、ステップSt08におけるシートの搬送量CR1及びCR2に対応して、折りローラ対111による逆向きシート搬送量は、折りローラ対111の駆動開始タイミングが第2の所定位置Ps403の場合に、所定位置Ps402の場合よりも多くする。
【0060】
図4のステップSt11に関連して上述したように、折りローラ対111を逆転駆動する際、突き板115は、前記停止位置に停止した状態に保持されている。具体的には、折り制御部301の保持力調整手段313により、突きモータ308にホールド電流を印加することによって、突き板115を前記停止位置に確実に保持することができる。このホールド電流は、前記停止位置で停止状態の突き板115に作用する様々な外力に対応して設定するのが好ましい。本実施形態において、ホールド電流は、保持力調整手段313により、通信部309から取得したシートの剛性や厚さに応じて出力され、シートの剛性や厚さが前記所定の厚さ又は前記第2の所定の厚さ以上と認識した場合に、前記所定の厚さ未満と認識した場合とよりも、高く出力される。
【0061】
以上、シートの剛性や厚さが所定の値より大きいシートを折り処理する際に、突き板115にかかる負荷を軽減する方法として、折りローラ対111を駆動開始するタイミングを変える事について説明を行った。前述したように、シートの剛性や厚さが所定の値より大きいシートを折る際に、突き板115がシートを突き押しする負荷を軽減するために、突き板115がシートを押しながら折りローラ対111のニップ部に向けて移動している途中の所定位置に到達したところで、折りローラ対111を搬送方向に回転駆動する。その為、シートの先端が折りローラ対111のニップ部よりも下流側に進む事になり、突き板115を折りローラ対111のニップ部付近に到達した位置で停止させたまま、折りローラ対111を逆転、即ち搬送方向とは反対の方向に回転駆動させる必要がある。
【0062】
しかし、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値以下と判断した場合と同じ位置で突き板115を停止させてしまうと、折りローラ対111を逆転させた時、突き板115の先端と折りローラ対111のニップ部付近との間に充分な隙間がなく、逆転搬送させるシートに負荷がかかり、逆転搬送できなくなる場合がある。よって、シートの剛性や厚さが所定の値より大きいシートをより確実に折り処理する際の、突き板115の停止位置及び停止させるための制御について、以下の説明を行う。
【0063】
図11は、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値以下と判断した場合の、突き板115がシートの折り目折りローラ対111のニップ部付近に突き押しして停止した位置(第1突き位置)と、シートの剛性や厚さが所定の値より大きいシートを突き押しし、折りローラ対111を逆転してシートの先端付近を搬送方向と反対の方向に搬送する際の、突き板115の停止位置(第2突き位置)を示している。前述したように、折り上ガイド116に対向する搬送路の下部には、折り下ガイド117が、折り下ローラ111bの上流と下流とに跨って配置されている。折り下ガイド117は、折りローラ対111の上流側で、折り上ガイド116と協働して、搬送路を搬送されるシートの先端およびシート折り曲げ部を折りローラ対111のニップ部へ導くために、シートの厚み方向の幅が搬送方向に沿って徐々に狭くなる傾斜部と、シートの厚み方向の幅が搬送方向に沿って一定となる平行部とを有している。
【0064】
第1突き位置は、突き板115の先端が搬送路の平行部の領域にあって、シートの折り目を折りローラ対111に受け渡し可能な位置です。第1突き位置で、突き板115を停止させた場合、突き板115の先端は、折りローラ対111のニップ部には接しない。第2突き位置は、突き板115の先端が搬送路の平行部の領域にあって、第1突き位置よりも搬送方向の上流側に位置する。第2突き位置は、搬送路の傾斜部より搬送方向の下流側と第1突き位置との間で、適宜その位置を設定する事ができる。ただし、シートの折り目を折りローラ対111に受け渡しできないような隙間が、突き板115の先端と折りローラ対111のニップ部との間に確保されているのが好ましい。例えば、
図11に示すように、搬送方向に見て折りローラ対111の外周にかかる位置に突き板115の先端を停止させ、この位置を第2突き位置としても良い。この位置に停止させれば、突き板115の先端と折りローラ対111のニップ部との間に充分な間隔が確保される。これにより、折りローラ対111を逆転させシートを搬送方向と反対の方向に搬送させた際にかかる負荷を軽減することができる。
【0065】
次に、
図12を用いて、シートの剛度や厚さが所定の値より大きい場合で、突き板115を一時的に第2突き位置で停止させる折り処理動作について説明する。
図12は、シート折り装置Bが画像形成装置Aからシートを搬入し、搬送しながら折り処理する過程を工程順に示している。
【0066】
図12(a)で示すように、シートは、上流側の画像形成装置Aから排紙されたシートが、搬送方向へ回転駆動している搬送ローラ対110によって、搬送上ガイド113と搬送したガイド114との間の搬送経路を下流側に搬送される。更にシートは、それらの下流側に位置する搬送ガイド113と突き板115との間の搬送経路、及び折り上ガイド116と折り下ガイド117との間の搬送経路を通して搬送される。シート先端がセンサ118で検知され、折りローラ対111にニップされ更に所定量搬送されると折りローラ対111の回転駆動を停止させる。
【0067】
次に、
図12(b)で示すように、シート先端を折りローラ対111にニップさせて保持した状態で、突き板115を上流側へ退避位置まで移動させ、搬送下ガイド114と折り下ガイド117との間の下側に、シートにループを形成させるためのループ空間を画成する。その後、シート先端を折りローラ対111にニップさせて保持した状態で、搬送ローラ対110を回転駆動させることによって、シートには、ループ空間に垂れ下がるループが形成される。
【0068】
その後、
図6を用いて説明したのと同様に、突き板115を退避位置から下流側へ移動させる。突き板115が移動することで、突き板115の先端はシートを突き押ししながら折りローラ対111のニップ部に向けて移動する。突き板115が移動している途中、所定の位置まで到達したところで、折りローラ対111を搬送方向へ回転駆動する。折りローラ対111の回転動作を開始させるタイミングは、折りローラ対111のニップ部に向けて移動している突き板115がシートから受ける負荷が最も大きくなる位置よりも手前に設定することが望ましい。
【0069】
これにより、
図12(c)に示すように、シートはその先端が折りローラ対111のニップ部よりも下流側へ進むように搬送される。このとき、シートのループは、図示するように突き板115の下方にあって、ループの上側部分が突き板115に突き押しされて下流側へ移動しながら、ループの下側部分は折りローラ対111によって下流側へ搬送される。それにより、突き板115は、シートを突き押ししつつ、同時に折りローラ対111によって下流側に搬送されるシートに導かれるように、折りローラ対111のニップ部へ進入するので、シートの突き押し動作によって突き板115にかかる負荷が軽減される。突き板115がシートを突き押しして移動する速度と折りローラ対111がシートを搬送する速度とは、同じであるように設定することが好ましい。
【0070】
突き板115により、その先端が突き当たっているシートの部分が折り曲げられた状態で折り上ガイド116と折り下ガイド117との間の平行部に押し込まれることによって、シートには、Z折りの1つ目の折り目が形成される。シートの1つ目の折り目が、突き板115に押し込まれて第2突き位置に到達したところで、突き板115及び折りローラ対111の動作を停止させる。
【0071】
次に、突き板115を停止させた状態のまま、折りローラ対111を逆転即ち搬送方向とは反対方向に回転駆動させる。これにより、シートは
図12(d)で示すように、1つ目の折り目の位置を変えずに維持した状態で、シート先端のみを搬送方向とは反対方向へ戻すことができる。しかも、突き板115は第2突き位置に停止させた状態で停止しているため、突き板115の先端と折りローラ対111のニップ部との間に所定の間隔が確保されており、シート先端のみを搬送方向とは反対方向へ戻す際に、シートにかかる負荷を軽減することができる。シート先端が、折りローラ対111のニップ部の所定位置に到達したところで、折りローラ対111の逆転動作を停止させる。
【0072】
図12(d)では、シート先端が折りローラ対111のニップ部に到達したところで、折りローラ対111の逆転動作を停止させている。しかしながら、折りローラ対111の逆転動作を停止させるタイミングは、これに限定されるものではなく、シート先端がニップ部の下流側にあってニップされた状態が維持される限り、異なる位置に設定することができる。
【0073】
その後、
図12(e)に示すように、搬送ローラ対110を搬送方向に駆動すのと同時に、突き板115を第2突き位置から第1突き位置へと移動させる。これにより、シートの1つ目の折り目が折りローラ対111のニップ部付近に近づき、シートの1つ目の折り目を折りローラ対111に受け渡すことが可能となる。その後、
図12(f)に示すように、折りローラ対111を正転即ち搬送方向に回転させることで、シートの1つ目の折り目が折りローラ対111にニップされて折られ、第1の折り処理が終了する。
【0074】
この後、シートは、更に搬送方向に搬送されることによって、折りローラ対111の上流側でループを形成していた部分が、折り上ガイド116と折り下ガイド117との間で上下から絞られる。最終的には、このシートの絞られた部分が、シートの後端側と重ね合わせられ、折りローラ対111にニップされて折られ、2つ目の折り目が形成されて、第2の折り処理が終了する。
【0075】
[折り処理動作]
シートの剛度や厚さが所定の値より大きい場合で、突き板115を一時的に第2突き位置で停止させる折り制御部301によるシートの折り処理動作を、
図13のフローチャートを用いて説明する。折り処理動作は、シートにZ折りの1つ目の折り目を形成する第1の折り処理と、Z折りの2つ目の折り目を形成する第2の折り処理とを、一連の動作で連続して行う。
【0076】
最初に、搬送ローラ対110を回転駆動して(ステップSt101)、シートを折りローラ対111まで搬送する。このとき、突き板115は、搬送下ガイド114と折り下ガイド117との間の前記空隙を埋めて、シートの先端を折り下ガイド117まで導くように配置されている。
【0077】
次に、折りローラ対111を搬送方向に回転駆動する(ステップSt102)センサ118がオンになる(ステップSt103のYes)と、カウンタにより所定の値カウントした後、シート先端が折りローラ対111にニップされたと認識して、折りローラ対111を停止させる(ステップSt104)。
【0078】
シートにZ折りを形成するために、突き板115は、搬送下ガイド114と折り下ガイド117間の位置から搬送下ガイド114の下方の退避位置へと平行移動させる。これにより、搬送下ガイド114と折り下ガイド117の間に前記空隙が形成され、その下方には、搬送ローラ対110と折りローラ対111の間でシートのループを作成するためのループ空間が画成される(ステップSt105)。
【0079】
搬送ローラ対110によるシートの搬送が、突き板115が前記退避位置に移動してから所定量に達すると、突き板115を折りローラ対111に向けて水平移動を開始させる(ステップSt106)。シートは、折りローラ対111が停止した状態のまま、搬送ローラ対110によって送り出され、それにより前記空隙から前記ループ空間に垂れ下がるループ形状となる。突き板115が、ループ形状のシートを突き押ししながら、折りローラ対111のニップ部に向けて押し込まれることによって、シートにZ折りの1つ目の折り目が形成される。
【0080】
ここで、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値より大きいと判断した場合(ステップSt107のYes)、突き板115が、折りローラ対111のニップ部付近に設定された停止位置より手前の即ち上流側の所定位置まで進んだところで、折りローラ対111を搬送方向へ回転駆動する(ステップSt108)。それにより、折りローラ対111にニップされたシートの先端は、下流側へ搬送される。
【0081】
このように、突き板115により突き押しされているシートが、それと同時に折りローラ対111により搬送されるという補助動作によって、シートの突き押しにより突き板115にかかる負荷が、かかる補助動作がない場合よりも軽減される。また、シートの剛度や厚さが所定の値より大きいと判断する基準として、例えばシートの坪量が91g/m2を超える場合を設定することができる。
【0082】
上述したようにループ形状になったシートの1つ目の折り目を突き板115が突き押し、突き板115の先端が第2突き位置に到達したところで、突き板115の折りローラ対111のニップ部に向けた水平移動の動作を停止させる。同時に、折りローラ対111及び搬送ローラ対110の回転駆動も停止させる(ステップSt109)。
【0083】
その後、突き板115を停止させた状態のまま、折りローラ対111を逆転即ち搬送方向とは反対方向に回転駆動する(ステップSt110)。それにより、シートは、突き板115によって突き押しされた1つ目の折り目の位置が搬送方向と反対の方向にシフトすることなく、シート先端のみが搬送方向とは反対方向へ戻される。
【0084】
次に、シート先端が所定の逆転停止位置に到達したところで、折りローラ対111の逆転動作を停止させる(ステップSt111)。その後、突き板115を第2突き位置から第1突き位置へと移動開始する。それと同時に搬送ローラ対110を搬送方向に回転駆動する(ステップSt112)。突き板115の先端が第1突き位置に到達したこところで停止する(ステップSt113)。再び折りローラ対111を正転即ち搬送方向へ回転駆動させ、シートを搬送方向に搬送することによって、シートにZ折りの2つ目の折りを形成する(ステップSt114)。その後、突き板115は、前記停止させた状態から再び上流側の退避位置へ移動させ(ステップSt115)、一連の折り処理動作を終了する。
【0085】
ステップSt107で、シートの剛性や厚さが前記所定の値以下と判断された場合(ステップSt107のNo)、突き板115が折りローラ対111付近の第1突き位置に到達すると、折りローラ対111を搬送方向に回転駆動して、シートを搬送方向に搬送する(ステップSt114)。これにより、突き板115に突き押しされたシートの折り目位置を折りローラ対111にニップさせ、シートにZ折りの1つ目の折りを形成する。この場合、折りローラ対111を、突き板115が第1突き位置より手前の前記所定の位置まで進んだところで搬送方向へ回転駆動させ、シートを下流側へ搬送する前記補助動作は行わない。この後、突き板115は、前記停止位置から再び上流側の退避位置へ移動させ(ステップSt115)、一連の折り処理動作を終了する。
【0086】
ここまでの一連の折り処理動作の中で、突き板115の先端を第2突き位置で一時的に停止させ、その後、第1突き位置に移動させる事を説明した。しかし、突き板115はこの順番に移動する事に限らず、第1突き位置に移動して停止し、折りローラ対を逆転搬送してシートの先端を戻すタイミングで第2突き位置に移動させるようにしても良い。突き板115の先端が第2突き位置に移動する事により、突き板115の先端と折りローラ対111のニップ部との間に所定の間隔が確保され、シート先端のみを搬送方向とは反対方向へ戻す際に、シートにかかる負荷を軽減することができる。
【0087】
また、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値より更に大きいと判断した場合について説明する。ここでは、シートの剛度や厚さが所定の値より更に大きいと判断する基準としては、例えばシートの坪量が105g/m2を超える場合を設定することができる。シートの剛性や厚さを所定の値より更に大きいと判断した場合、ステップSt112にて突き板115は移動させず、搬送ローラ対110だけを搬送方向に回転開始し、1つ目の折り目を折りローラ対111のニップ部に向けて搬送しても良い。シートの剛度や厚さが所定の値より更に大きいと、シートの剛度が高く、突き板115を用いずに搬送ローラ対110だけで搬送することが可能となり、突き板115を移動させることなく、1つ目の折り目を折りローラ対111に向けて搬送可能となる。
【0088】
また、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値より更に大きいと判断した場合、ステップSt112にて突き板115の移動開始よりも先に、搬送ローラ対110の搬送方向への回転を開始しても良い。シートの剛度や厚さが所定の値より更に大きいと、シートの剛度が高く、搬送ローラ対110だけで搬送することが可能となり、突き板115搬送経路の平行部で一時的に停止した1つ目の折り目を突き押しする時の初動にかかる負荷を軽減することができる。
【0089】
また、折り制御部301のシート厚認識手段312が、シートの剛性や厚さを所定の値より更に大きいと判断した場合、ステップSt110で突き板115を停止させた状態のまま、折りローラ対111を逆転即ち搬送方向とは反対方向に回転駆動する際、突き板115を駆動するモータを保持する保持電流を増やし、突き板115が停止する保持力を大きくしても良い。これにより、折りローラ対111を逆転させ、搬送方向と反対の方向にシートを搬送した場合も、突き板115を第2突き位置に保持することが可能となる。
【0090】
[後処理装置]
後処理装置Cは、シート折り装置Bの折り下ガイド117の下流側に連続する後処理経路38が設けられている。後処理経路38には、ステープルユニットや整合ユニットなどの後処理機器が配置され、画像形成装置Aからのシートを、シート折り装置Bから折り下ガイド117を介して受け取り、ステープル処理、整合処理などを施して、排紙トレイ37に排出する。このような後処理を施す必要が無い場合、画像形成装置Aからシート折り装置Bを介して搬送されたシートは、そのまま後処理装置Cを通過させて排紙トレイ37に収納する。
【0091】
以上、本発明に好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲内において、適宜の変更が可能なものである。上記説明では、シート折り装置を画像形成装置とは別個の独立した装置として説明したが、本発明のシート折り装置を実現する一連の構成を、画像形成装置の一部として構成しても良く、後処理装置の一部として構成しても良い。
【符号の説明】
【0092】
A 画像形成装置
B シート折り装置
C 後処理装置
110 搬送ローラ対
111 折りローラ対
113 搬送上ガイド
114 搬送下ガイド
115 突き板
116 折り上ガイド
117 折り下ガイド
118 センサ