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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101492
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】振動ダンパのためのバルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20220629BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20220629BHJP
   F16F 9/508 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/46
F16F9/508
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021202025
(22)【出願日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】10 2020 134 820.7
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516256272
【氏名又は名称】ケーティーエム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KTM AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ヴィマー
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA46
3J069CC13
3J069EE02
3J069EE35
3J069EE64
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バルブディスクの傾斜の問題を解消し、ばねたわみ運動の間、及びリバウンド運動の間の両方において、メインバルブのスムーズで均等な開放を可能にするバルブ装置を提供する。
【解決手段】バルブディスクが、バルブピストンに対して軸方向に移動可能であるとともに半径方向にガイドされるように、バルブディスクは、ガイドピンを介してバルブピストン上に配置され、バルブ装置は、パイロットバルブ(B)に作用する電機子(17)を有する電磁石(4)を有し、可撓性支持ディスクが、バルブディスクの接触面側を背にするバルブディスクのベアリング面側に配置され、支持ディスク上に、バルブディスクは、バルブディスクの周方向に延びる部分的な周辺領域に沿って当接する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動ダンパのためのバルブ装置(1)であって、
環状バルブシート(16a)を有し、減衰流体を受け入れるように設けられたバルブハウジング(14)を有し、
前記バルブハウジング(14)の内部空間(39)内に前記バルブシート(16)に対して軸方向に変位可能に配置されたバルブピストン(13)を有し、
前記バルブピストン(13)は、前記バルブシート(16)上の接触面側(74)と着脱可能に接触することができる可撓性円形バルブディスク(12a)を有するメインバルブ(11)を有し、
前記バルブディスク(12a)が前記バルブピストン(13)に対して軸方向に移動可能であるとともに半径方向にガイドされるように、前記バルブディスク(12a)は、前記ガイドピン(37)を介して前記バルブピストン(13)上に配置され、
前記バルブ装置(1)は、パイロットバルブ(B)に作用する電機子(17)を有する電磁石(4)を有し、
可撓性支持ディスク(12b)が、前記バルブディスク(12a)の接触面側(74)を背にする前記バルブディスク(12a)のベアリング面側(75)に配置され、支持ディスク(12b)上に、前記バルブディスク(12a)は、前記バルブディスク(12a)の周方向に延びる部分的な周辺領域に沿って当接することを特徴とする、バルブ装置(1)。
【請求項2】
前記支持ディスク(12b)は、前記周方向に少なくとも1つのクリアランス(76)を有し、
前記少なくとも1つのクリアランス(76)においては、前記バルブディスク(12a)は前記支持ディスク(12b)による支持がなく、
前記支持ディスク(12b)の方向に圧力が加えられたときに、前記バルブディスク(12a)は、前記クリアランス(76)のない前記支持ディスク(12b)の領域よりも強く撓む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のバルブ装置(1)。
【請求項3】
前記支持ディスク(12b)は、
平面視で円形であり、前記バルブディスク(12a)の外径よりも小さい第1の直径を有する第1の領域(59)と、
第2の直径を有する少なくとも1つの第2の領域(60)であって、前記第1の領域(59)の外周から半径方向外側に延在する、前記少なくとも1つの第2の領域(60)と、
を有し、
前記第2の領域(60)は、前記支持ディスク(12b)の周辺部の一部の領域に沿って、前記支持ディスク(12b)の周方向に延在することを特徴とする、請求項1又は2に記載のバルブ装置(1)。
【請求項4】
前記支持ディスク(12b)は、前記支持ディスク(12b)の中心から見て、前記バルブディスク(12a)の外径以下の半径方向延在部を有する少なくとも2つの突出部(58)であって、半径方向外側に延び、相互に対向する前記少なくとも2つの突出部(58)を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項5】
前記バルブ装置(1)は、前記支持ディスク(12b)が、その側面が前記バルブディスク(12a)を背にしながら当接する少なくとも1つのベアリングディスク(12c)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項6】
前記バルブ装置(1)は、
管状スリーブボディ(10)であって、その長手方向延在部の一部の領域に沿って、互いに対向する凹部(54)を有する前記スリーブボディ(10)の壁(51)を形成するスロット(77)を有する、前記管状スリーブボディ(10)を有し、
前記凹部(54)に隣接して、前記スリーブボディ(10)の基部から離れるように延在し、前記スリーブボディ(10)の長手方向に延びる円筒状チューブセグメント(56)が形成される、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項7】
前記バルブディスク(12a)及び/又は前記支持ディスク(12b)は、前記外周内に2つの凹部(63、61)を備え、これらの間に中央ウェブ(55)が形成され、前記凹部(63、61)は、前記チューブセグメント(56)によって貫通されることを特徴とする、請求項6に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記パイロットバルブ(B)は、外側コーン(47)を備えるシールボディ(19)であって、ばね(20)によってドレインバルブ(29)の環状バルブシート(21)に接触可能な前記シールボディ(19)を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項9】
前記パイロットバルブ(3)は、前記電磁石(4)の非導通状態において、前記バルブハウジング(14)を介して、前記パイロットバルブ(B)の予備制御チャンバ(25)からの流体の流れを許容するバルブディスク(18)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項10】
前記バルブディスク(12a)は、前記バルブ装置(1)の垂直軸方向における下方に配置された支持ディスク(12b)よりも大きい直径を有する内側凹部(78)を有し、
前記内側凹部(78)の縁領域(68)は、減衰流体で加圧されると、前記支持ディスク(12b)から前記バルブハウジング(14)の前記内部空間(39)外側の方向に持ち上がることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項11】
前記バルブディスク(12a)は、前記内部空間の方向に減衰流体で加圧されたときに、前記バルブシート(16)から前記内部空間(39)内への方向に持ち上がる、前記外径上に配置された縁領域(62)を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
【請求項12】
チューブ(3)及びピストンロッド(2)を有する振動ダンパであって、
前記チューブ(3)は、減衰流体を受け入れるように設計された内部空間(43)を有し、
請求項1から11のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)、圧力ステージチャンバ(PD)、及びリバウンドチャンバ(PZ)によって特徴付けられ、
前記2つのチャンバは、前記バルブ装置(1)から物理的に分離され、流体的に接続されるように設計されたそれぞれの内部空間を有する、振動ダンパ。
【請求項13】
前輪(82)および後輪(83)を有する車両であって、請求項12に記載の振動ダンパ(42)を特徴とする、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の振動ダンパのためのバルブ装置に関する。本発明はさらに、請求項12に記載の振動ダンパ、および請求項13に記載のこのような振動ダンパを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
振動ダンパは、例えば、オートバイのテレスコピックサスペンションフォークレッグ、又は、例えば乗用車のような複数の軌道(track)を有する車両のためのショックアブソーバとすることができる。振動ダンパは、産業分野で使用するために設けることもできる。
【0003】
このような振動ダンパの減衰挙動に影響を及ぼすために、バルブ装置は、圧力調整器として作用するパイロットバルブを有することができる。
ダンパ装置又は振動ダンパは、通常、2つの流体チャンバを有し、その間で減衰流体が交換される。流体チャンバは、第1のチャンバ又は圧力ステージチャンバ、及び第2のチャンバ又はリバウンドチャンバである。減衰流体は、ダンパ装置の圧縮中に、圧力ステージチャンバから第2チャンバ又はリバウンドチャンバに向かって流れる。ばね減圧処理又はリバウンドの間、減衰流体は、リバウンドチャンバから圧力ステージチャンバに向かって流れ、ここで、減衰流体は、バルブ装置を通って流れ、これは、減衰作業を、及び減衰装置に作用する振動振幅の減衰を手助けする。
【0004】
パイロットバルブは、メインバルブのバルブピストン又はバルブピストンに配置されたバルブアセンブリに作用する制御圧力を予備制御チャンバ内に形成することによって、バルブアセンブリ又は予備制御バルブの開放挙動に影響を及ぼすために使用することができる。
【0005】
ダンパ力は、バルブピストンが配置されているピストンロッドの移動速度とともに変化する。
【0006】
予備制御バルブを有する振動ダンパが設けられた車両が道路のこぶ上を走行すると、これによってピストンロッドがある速度で移動する。例えば、ピストンロッドに加えられる力の量に応じてこの速度が増大する場合、これは、より高いダンパ力につながり、バルブピストン上に配置されたメインバルブは、次いで、突然又は急に開き、ピストンロッド速度又はダンパ速度に対してプロットされるダンパ力の形状に鋭い曲がりが生じる。ダンパ速度に対してプロットされた力特性曲線のこの鋭い曲がりは、快適性の喪失という形で車両を運転するときに顕著となるが、これは、予備制御バルブを装備した振動ダンパでよく現れる。
【0007】
EP3208489B1によると、2つの制御エッジ、即ち、減衰流体が隣接する凹部25に流入することができ、半径方向外側の制御エッジ27に載っている領域までバルブボディに作用することができるようなフロースルー開口を備えた半径方向内側の制御エッジ26と接触させることができるディスク形状のバルブボディを有するパイロットバルブを有するバルブ装置が知られている。
このようにして、ディスク形状のバルブボディ9は、それを備えた振動ダンパのばねたわみ運動中に、半径方向外側の制御エッジからわずかに持ち上がることができるが、これは、振動ダンパに作用するリバウンド運動中ではなく、メインバルブの発作的な(jerky)又は急激な開放を防止するためである。リバウンド運動が始まると、ディスク形状のバルブボディは、2つの制御エッジから離れた位置で上方に持ち上げられ、減衰流体が流れる2つの開口部の間のフロースルー開口部は開いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、この公知のバルブ装置は、ディスク形状のバルブボディが、バルブボディの半径方向外側領域を有するバルブハウジングの内側凹部に対して載るという欠点を有する。従って、バルブディスクの形態のバルブボディは、ハウジング内で外部からガイドされる。バルブボディが制御エッジから上昇した位置にあり、リバウンド運動が始まると、ディスク形状のバルブボディは減衰流体によって上側から加圧される。この加圧が、バルブボディに内側凹部に対してねじれ及び傾斜を生じさせ、従って、バルブボディは不安定な姿勢をとる。
【0009】
これに基づいて、本発明の目的は、一方では、バルブディスクの傾斜の問題を解消し、他方では、ばねたわみ運動の間、及びリバウンド運動の間の両方において、メインバルブのスムーズで均等な開放を可能にするバルブ装置を提供することである。ばねたわみ運動からリバウンド運動への快適な移行を提供する振動ダンパが提供される。このような振動ダンパを有する車両も提供される。
【0010】
この問題を解決するために、本発明は、バルブ装置に関して、請求項1に特定された特徴を有する。その有利な実施形態は、さらなる請求項に記載されている。さらに、振動ダンパに関して、本発明は、請求項12に特定された特徴を有する。提供される車両に関して、本発明は、請求項13に特定された特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、環状バルブシートを有し、減衰流体を受け入れるために設けられたバルブハウジングを有し、バルブハウジングの内部空間内にバルブシートに対して軸方向に変位可能に配置されたバルブピルトンを有し、バルブピストンは、バルブシート上の接触面側と着脱可能に接触することができる可撓性円形バルブディスクを有するメインバルブを有し、バルブディスクがバルブピストンに対して軸方向に移動可能であるとともに半径方向にガイドされるように、バルブディスクはガイドピンを介してバルブピストン上に配置され、バルブ装置は、パイロットバルブに作用する電機子を有する電磁石を有し、可撓性支持ディスクが、バルブディスクの接触面側を背にするバルブディスクのベアリング面側に配置され、支持ディスク上に、バルブディスクは、バルブディスクの周方向に延びる部分的な周辺領域に沿って載っている。
【0012】
このように支持ディスクは、バルブディスク上に載っており、圧力または力が支持ディスクの方向にバルブディスクに加えられると、バルブディスクを支持する。しかしながら、バルブディスクは、バルブディスクの周方向に延在する部分的な周縁領域に沿ってのみ支持ディスク上に載っているので、バルブディスクは、周方向から見たときに、部分的な領域又はセグメント又は表面領域を有し、圧力がバルブディスクに加えられたときに、支持ディスクがバルブディスクに作用する力とは反対方向にバルブディスクを支持することができない、即ち、前記領域においてバルブディスクを支持する力を吸収することができない、即ち、当接力を蓄積することができず、これは、支持ディスクによって支持されていないこれらの領域においてバルブディスクの曲がりまたは変形につながる。
【0013】
バルブディスクが支持ディスク上に載っていない、バルブディスクの上述の部分領域又はセグメント又は表面領域では、減衰流体を介してバルブディスクに減衰圧力が加わることによって、部分領域又はセグメント又は表面領域の領域内のバルブディスクが、減衰圧力によって加えられる力の結果として変形又は曲がる。
【0014】
その結果、バルブディスクは、変形された一部の領域又はセグメント又は表面領域に力が加わることによって、非負荷状態でバルブディスクが平らに載っている環状バルブシートとの接触から分離され、バルブディスクが一部の領域でバルブシートから持ち上がる結果として、バルブディスクの変形された領域とバルブシートとの間に隙間が形成され、減衰流体が隙間を通過することができ、このように減衰作業が行われる。
【0015】
既知の予備制御バルブの場合、メインバルブのバルブディスクは、メインピストン又はバルブピストンがバルブディスク又はメインピストンの加圧の結果として加圧の力の方向にわずかな運動を実行するまで、その全表面にわたって環状バルブシート上に載っている。これは、バルブシートからのバルブディスクの発作的な又は急激な持ち上げ運動につながり、メインピストンの質量慣性のために、バルブディスク及び/又はメインピストンに作用する圧力とパイロットバルブの予備制御チャンバ内の圧力から生じる反力との間の結果として生じる力の差に対応する距離よりも大きい距離だけ、力の方向へバルブディスクとともにメインピストンが移動することにつながる。従って、オーバーシュート(過活動)が生じる。
【0016】
パイロットバルブの予備制御チャンバの方向へのメインピストンのこのオーバーシュート動作のために、予備制御チャンバ内の圧力はそれに対応して増加し、これは、メインバルブとのメインピストンの対向運動につながり、その結果、時間依存の振動振動コース(oscillating vibration course)が、前述の快適性の喪失の結果として経時的にプロットされたシステム圧力コースに生じる。
【0017】
本発明による解決法は、メインバルブに作用する圧力と、パイロット圧力による反力と、他の任意の追加のばね力成分と、の間の力の平衡が確立される前のある時点で既に、そのような時点において、メインバルブがバルブシートから持ち上げられてそれ自体が開くことによって、メインバルブが開く、即ち、減衰流体層の体積流がメインバルブを通って流れ始めるような方法で、メインバルブの開放挙動に影響を及ぼすことによって、これを解決する。この体積流は、支持ディスクによって支持されていないバルブディスクの表面の領域内でバルブシートから、バルブディスクのある領域又はセクション内において、バルブディスクが持ち上がる動作によるものである。
【0018】
従って、メインバルブの発作的な又は急激な開放が回避され、上述したシステム圧力における振動振動コースが回避され、上述した快適性の喪失も回避される。
【0019】
本発明の発展によると、支持ディスクは、周方向に少なくとも1つのクリアランスを有し、少なくとも1つのクリアランスにおいては、バルブディスクは支持ディスクによる支持がなく、支持ディスクの方向に圧力が加えられたときに、バルブディスクは、クリアランスのない支持ディスクの領域よりも強く撓む、ことが提供される。
【0020】
支持ディスクの少なくとも1つの周方向のクリアランスにより、バルブ装置又は圧力ステージチャンバ又はリバウンドチャンバ内で発生するシステム圧力による加圧が起こる場合に、支持ディスクとバルブディスクとの間に、クリアランスの領域及びそれにわずかに隣接する領域において支持力が確立されず、従って、バルブディスクは、加圧の結果として支持ディスクに対して曲がるか、撓むか、または変形することができ、従って、バルブディスクとバルブシートとの間の隙間が開き、それを通して圧力を解放することができ、減衰流体が流れることができ、従って、減衰作業を実行できることが達成される。
【0021】
従って、クリアランスは、支持ディスクのある領域又は表面領域又はセクション又はセグメントであることができ、そこでは、支持ディスクがバルブディスクに当接せず、従って、バルブディスクが支持ディスクに対して曲がる又は変形又は撓むことができ、従って、バルブディスクと、バルブディスクが当接するか、又は接触させることができるシール面のセクション又は表面領域又はセグメントと、の間に隙間が生成される。シール面は、前述の環状バルブシート、又はバルブディスクと別の部品との間に生成される別のシール面とすることができる。
【0022】
従って、バルブディスクは、メインピストンに作用する力、つまりメインピストン上のメインバルブの完全な開放を引き起こす力がメインピストンの変位移動をもたらす前でさえも、クリアランスの領域内に減衰流体の流れを提供することができる。次に、メインピストンに作用する力が、メインピストンの変位運動をもたらし、従って、メインピストン上に設けられたメインバルブの開放運動に至ると、メインバルブがバルブシートから持ち上げられる直前に、メインバルブのバルブディスクと、バルブシートと、の間の領域において、減衰流体の流れがすでに生じ、このようにして、メインバルブがバルブシートから持ち上げられたときに、減衰流体の流れはすぐには始まらず、このようにして、上述したメインピストンのオーバーシュート動作は回避される。
【0023】
本発明の発展によると、支持ディスクは、平面視で円形であり、バルブディスクの外径よりも小さい第1の直径を有する第1の領域と、第1の領域の外周から始まって、半径方向外側に延在し、支持ディスクの周辺部の一部の領域に沿って、支持ディスクの周方向に延在する第2の領域と、を有することが提供される。
【0024】
従って、平面図では、支持ディスクは、円形の第1の領域を有する。この第1の領域から始まって、少なくとも1つの第2の領域が外側に延び、この領域は、支持ディスクの中心から見た外縁において、第1の領域の直径よりも大きい外側寸法を有する。
【0025】
円形の第1の領域を有する支持ディスクを上述したが、この支持ディスクは、円形から逸脱した外形、例えば、長方形、多角形、楕円形(oval)、楕円体(ellipsoidal)、又は類似のものを有することもできる。第1の領域の外周領域から、第2の領域又は第2の延在部が外向きに延在し、その外縁は、支持ディスクの中間又は中心から見て、支持ディスクの中間又は中心からより離れた距離にある。この場合、この第2の領域は、第1の領域の外周方向に、第1の領域の外周領域よりも小さい延在部を有する。
【0026】
第2の領域は、例えば、ウィング又はタブの形態で、第1の領域から離れていくように延びる領域とすることができる。2つ以上のこのような第2の領域は、第1の領域の外周領域に設けることができ、例えば、支持ディスクの中間又は中心から見て互いに対向するか、又は互いにある角度でオフセットされた2つのこのような第2の領域を設けることができる。
【0027】
本発明の発展によると、支持ディスクは、支持ディスクの中心から見て、バルブディスクの外径以下の半径方向延在部を有する少なくとも2つの突出部であって、半径方向外側に延び、相互に対向する少なくとも2つの突出部を有することも提供される。
【0028】
このような構成により、支持ディスクの第1の領域部分において支持ディスク上に載るバルブディスクは、支持ディスクの方向に減衰流体によって力が加えられたときに第1の領域によって支持され、支持ディスクの突出部上に載るバルブディスクの領域も支持ディスクによって支持され、一方、支持ディスクの第1の領域の外側に位置し、支持ディスクの突出部上にも載らないバルブディスクの領域は、減衰流体によって力が加えられたときに大部分が自由に変形又は撓むことが達成される。次いで、バルブディスクのこれらの変形する又は曲がる領域は、バルブディスクの曲がらない領域が依然として存在するシール面に対してもはや存在しない。
【0029】
このようにして、バルブディスクは、その外周の一部の領域に沿ってシール面から持ち上がるだけであるという事実により、減衰流体の体積流は、シール面から持ち上がる領域に沿って発生する。このように、バルブディスクは、湾曲したばねワッシャに類似した構成をとっている。
【0030】
本発明の発展によると、バルブ装置は、支持ディスクが、その側面がバルブディスクを背にしながら載っている少なくとも1つのベアリングディスクを有することが提供される。
【0031】
このベアリングディスクは、バルブディスク及び/又は支持ディスクよりも剛性が高く、支持ディスクの方向にバルブディスクに圧力が加えられたときに、支持ディスクがベアリングディスクによって支持されるようになっている。従って、ベアリングディスクは、バルブディスクが支持ディスクの方向に減衰圧力で加圧されると、バルブディスクに作用し従って支持ディスクに作用する圧縮力を吸収する。支持ディスクによって支持されていないバルブディスクの領域は、バルブディスクの曲がった又は変形した領域が剛性のベアリングディスクと接触するまで圧力が加えられたときにのみ、ベアリングディスクの方向に曲がるか又は変形することができるので、支持ディスクはまた、バルブディスク及び/又は支持ディスクの過負荷を防止する。
【0032】
バルブディスクは可撓性であるように設計されており、減衰圧力が増加すると、支持ディスクのクリアランスの領域でわずかに変形することができ、減衰流体が通過するための1つ又は複数の隙間を開くことができる。ピストンロッドの移動速度に応じて、バルブディスクに作用する減衰圧力は高い値を持つことがあり、可撓性バルブディスクの過負荷の可能性につながる。
【0033】
しかしながら、バルブディスクは、支持ディスクによってベアリングディスク上に支持され、支持ディスクを、従ってバルブディスクを支持するための2つ以上のベアリングディスクを設けることができるので、減衰圧力が高い値をとるときに、バルブディスクが所定の程度を超えて変形しないことが達成される。さらに、この構成は、高い減衰圧力による可撓性バルブディスクへのいかなる損傷も防止する。
【0034】
本発明の発展によると、バルブ装置は、管状スリーブボディであって、対向する凹部を有するスリーブボディの壁を形成するその長手方向延在部の一部の領域に沿ったスロットを有する管状スリーブボディを有し、凹部に隣接して、スリーブボディの基部から離れるように延在し、スリーブボディの長手方向に延びる円筒状チューブセグメントが形成される、ことも提供される。
【0035】
このように、スリーブボディは、円筒状に形成されたチューブセクションの前側端部領域に基部を有する管状の構成を有している。基部の領域、又は基部からある距離をおいておおよそ始まる円筒状チューブセクションボディは、互いに対向する2つの凹部を有し、これらの凹部は、平面図では、従って、両側で互いに対向するチューブセクションボディの壁(wall)又は壁材(walling)を貫通し、基部、又は基部からある距離をおいて始まり、チューブセクションボディの反対側の前側端部領域まで延在する長方形の凹部として形成される。
【0036】
このようにして、2つの細長いチューブセグメントが生成され、それらは互いに対向して配置することができ、それによって、2つの凹部は互いにある距離だけ離れて配置される。
【0037】
本発明の発展によると、バルブディスク及び/又は支持ディスクは、外周内に2つの凹部を備え、これらの間に中央ウェブが形成され、凹部は、チューブセグメントによって貫通されること、が提供される。
【0038】
この構成は、中央ウェブがスリーブボディの2つの凹部を通過し、バルブディスク及び/又は支持ディスクが、2つのチューブセグメントと凹部の内周領域との間の物理的接触を介して、回転を防止する方法でガイドされるように、2つの凹部を有するバルブディスクをスリーブボディ上に配置できることを保証する。さらに、ディスクは、ガイドピンによって半径方向にガイドされる。この半径方向のガイドは、バルブディスク及び/又は支持ディスクは、接触面側およびベアリング面側の両方を介して減衰圧力によって加圧されたときに、ガイドピン及び/又はスリーブボディに対して傾斜せず、軸方向に移動可能にガイドされるようにバルブディスク及び/又は支持ディスクに配置され、半径方向にガイドされて傾斜につながるスリーブボディの長手方向軸に対して傾斜した位置をとらない、ことを保証する。同様に、この半径方向内側ガイドは、対応する圧力が加えられたときに、支持ディスク及び/又はベアリングディスクがスリーブボディの長手方向軸に対して傾斜しないことを意味する。
【0039】
その結果、バルブディスク及び支持ディスク、並びにベアリングディスクは、スリーブボディ上で半径方向にガイドされ、スリーブボディの長手方向軸に対して傾斜すること(cant)も傾くこと(tilt)もできず、その結果、圧力が加えられたときに、バルブディスク及び/又は支持ディスクがスリーブボディの長手方向軸に対して傾く危険性が回避される。
【0040】
本発明の発展によると、パイロットバルブは、外側コーンを備えるシールボディであって、ばねによってドレインバルブの環状バルブシートに接触可能なシールボディを有することも提供される。
【0041】
この構成により、電磁石に電力が供給されていない位置で、シールボディをドレインバルブの環状バルブシートに接触させることができる。この目的のために、シールボディを環状バルブシート上に押圧するディスクばねが設けられている。
【0042】
電磁石が導通する場合、バルブボディは、ディスクばねの作用に抗してドレインバルブを開放する位置に持ってくることができ、その結果、ドレインバルブを介して、予備制御チャンバからの減衰流体の流体流が可能になる。
【0043】
本発明の発展によるとパイロットバルブは、電磁石の非導通状態において、バルブハウジングを介して、パイロットバルブの予備制御チャンバからの流体の流れを許容するバルブディスクを備えることも提供される。
【0044】
パイロットバルブの電磁石が非導通位置にある場合、パイロットバルブの安全位置はこの構成によってとることができる。次いで、シールボディは、パイロットバルブのドレインバルブの環状バルブシートに対してその外側コーンと共に存在し、その結果、ドレインバルブを介した減衰流体の排出が防止される。このような位置では、減衰流体は、次に、バルブシート、即ち、減衰流体のシステム圧力によって開放される非常バルブディスクに、バルブディスクが当接する方向にガイドされ、その結果、減衰流体は排出されることができ、システム圧力が非常バルブディスクの所定の開放圧力を超えることは、発生しない。この構成により、パイロットバルブ、従ってバルブ装置の非常作動位置を達成することができる。
【0045】
本発明の発展によると、バルブディスクは、バルブ装置の垂直軸方向における下方に配置された支持ディスクよりも大きい直径を有する内側凹部を有し、内側凹部の縁領域は、減衰流体で加圧されると、支持ディスクからバルブハウジングの内部空間外側の方向に持ち上がることも提供される。
【0046】
この構成によると、本発明によるバルブ装置が設けられた振動ダンパの減圧運動又はリバウンド運動中にバルブハウジング内の圧力が上昇した場合に、減衰流体の第1の小さな体積流が、ピストンロッドの低速で既に圧力ステージチャンバの方向にリバウンドチャンバから流出することができ、従って、減衰作業が、ピストンロッドの低速で、即ち、圧力ステージチャンバ内の圧力が依然として低すぎて、メインピストンおよびそれに結合されたバルブ装置のメインバルブの変位運動を引き起こすことができないときに、既に行われていることが達成される。
【0047】
このようにして、ここで概説した、引き続くメインバルブ又はメインピストンの振動運動を伴うオーバーシュートの問題は、減圧運動又はリバウンド運動の場合にも防止することができる。
【0048】
本発明の発展において、バルブディスクは、内部空間の方向に減衰流体で加圧されたときに、バルブシートから内部空間の方向に持ち上がる、外径上に配置された縁領域を有することも提供される。
【0049】
低いピストンロッド速度では、このバルブディスクのバルブシートからの持ち上げ運動は、高いピストンロッド速度のためにバルブディスクがバルブシートから完全に持ち上げられる時間より十分前に減衰作業を引き起こす。
【0050】
また、本発明は、チューブ及びピストンロッドを有する振動ダンパであって、チューブは、減衰流体を受け入れるように形成された内部空間を有し、振動ダンパは、上述したようなバルブ装置を有し、振動ダンパは、圧力ステージチャンバとリバウンドチャンバとを有し、2つのチャンバは、バルブ装置から物理的に分離されたそれぞれの内部空間を有する振動ダンパを生成する。本発明によるバルブ装置は、従って、2つのチャンバを物理的に分離するが、両方のチャンバは、バルブ装置を介して、流体的に互いに接続される、即ち、バルブ装置を介して流体交換するように設計されている。
【0051】
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの前輪及び少なくとも1つの後輪を有する車両を生成し、車両は上述のような振動ダンパを有する。
【0052】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。以下に示す:
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明によるバルブ装置の一実施形態を有する自動二輪車のテレスコピックサスペンションフォークレッグの断面図。
図2図1におけるセクションIIの拡大図。
図3図1による実施形態によるバルブ装置の断面図。
図4図3におけるセクションAの拡大図。
図5図3におけるセクションBの拡大図。
図6】第1の実施形態によるバルブ装置の支持ディスクの平面図。
図7】第2の実施形態におけるバルブ装置の支持ディスクの平面図。
図8】ピストンロッドの低速における圧力ステージ内の流体の流れを描くためのバルブ装置の拡大断面図。
図8a図8におけるセクションIIIの拡大図。
図9】ピストンロッドの高速における圧力ステージ内の流体の流れを描くためのバルブ装置の拡大断面図。
図10】ピストンロッドの低速におけるリバウンドステージ内の流体の流れを描くためのバルブ装置の拡大断面図。
図11】ピストンロッドの高速におけるリバウンドステージ内の流体の流れを描くためのバルブ装置の拡大断面図。
図12】パイロットバルブの緊急機能を説明するためのパイロットバルブの一部の拡大図。
図13】本発明の一実施形態によるバルブ装置の分解図。
図14】本発明によるバルブ装置を有する自動二輪車の側面図。
図15】減衰流体の体積流のコースと、時間に対してプロットされた圧力コースと、を説明するための図。
図16】ピストンロッドの速度に対してプロットされたダンパ力の図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、バルブ装置1の実施形態によるオートバイ80のテレスコピックサスペンションフォークレッグ40の断面図を示す。
【0055】
テレスコピックサスペンションフォークレッグ40は、図1の図中下端に、図14に描かれたオートバイ70の前輪82の全浮動式車軸81を受け入れるためのアクスルクランプ41を有する。
【0056】
テレスコピックサスペンションフォークレッグ40は、テレスコピックサスペンションフォークレッグ40の垂直軸方向Hにおいてバルブ装置1の下方に圧力ステージチャンバPDが配置され、リバウンドチャンバPZがバルブ装置1の上方に配置される、上下逆構成で設計されたテレスコピックサスペンションフォークレッグである。バルブ装置1は、詳細には描かれていないテレスコピックフォークレッグにおいても使用することができ、この場合、圧力ステージチャンバPDは、垂直軸方向Hにおいてバルブ装置の上方に配置され、リバウンドチャンバPZは、バルブ装置1の下方に配置される。
【0057】
また、図1には、図2により詳細に描かれているセクションIIが示されている。
【0058】
従って、バルブ装置1は、例えば、図2により詳細に描かれているように、テレスコピックサスペンションフォークレッグ40として形成された振動ダンパ42上で使用することができる。振動ダンパ42は、チューブ3と、バルブ装置1と共にチューブ3の内部空間43に配置されているピストンロッド2と、を有する。内部空間43は、詳細には図示されない減衰流体を受け入れるように設計されており、図示の実施形態ではフォークオイルである。
【0059】
図2から分かるように、リバウンドチャンバPZおよび圧力ステージチャンバPDは、バルブ装置1から物理的に分離されているが、フォークオイルの交換、即ち減衰流体の流体交換のために、バルブ装置1を介して流体的に接続されている。
【0060】
バルブ装置1は、図1及び図2に見られるように、当接部45上のばね44によって支持されている。
【0061】
以下では、図示及び説明を容易にするために、テレスコピックサスペンションフォークレッグ40内のバルブ装置1の設置位置と比較して、180度回転した位置のバルブ装置1及びさらなる部品を示す図3をより詳細に記載する。
【0062】
図4及び図5により詳細に示される詳細A及びBも記載され、詳細Aは、バルブ装置1の要素を示し、詳細Bは、バルブ装置1上に設けられたパイロットバルブBの要素を示す。
【0063】
バルブ装置1は、環状バルブシート16aと、上述のフォークオイルの形態の減衰流体を受け入れるように設計されたバルブハウジング14を有する。さらに、バルブ装置1は、バルブピストン13を有し、その上に、図13に示されるバルブディスク12a、12b及び12cを備えるバルブディスク12を有するメインバルブ11が配置される。
【0064】
バルブディスク12c又はベアリングディスク12cは、バルブピストン13の上側に配置された環状バルブシート16b上に支持されている。
【0065】
バルブ装置1は、リバウンドステージの絞りとして作用する通路27と、圧力ステージの絞りとして作用する通路26と、を有する。
【0066】
バルブディスク12は、ガイドピン37上に配置され、バルブピストン13に対して軸方向に移動可能であるとともに、半径方向にガイドされ、この目的のために、図13により詳細に見ることができるスリーブボディ10が設けられ、バルブディスク12は、スリーブボディ10上に、ガイドピン37の長手軸38に対して傾くことができないように、従ってバルブ装置1の長手軸38に対して傾くことができないように、半径方向にガイドされる。
【0067】
バルブ装置1は、また、後述するが、いくつかのチェックバルブ7、8、9、10を有し、ここで、スリーブボディ10もチェックバルブとして作用することをこの時点で既に言及する。
【0068】
また、バルブ装置1は、図13の描写から分かるように、蛇行設計のばねワッシャ15を有している。
【0069】
バルブピストン13は、バルブハウジング14の内部空間39内に軸方向に変位可能に配置され、内部空間39内に予備制御チャンバ25もまた形成され、この予備制御チャンバ内に予備制御圧力またはパイロット圧力を形成することができる。
【0070】
ガイドピン37は、ストップディスク34上に配置され、また、溝付きのスリーブボディ10を受け入れ、スリーブボディ10上にバルブディスク12が半径方向にガイドされ、変位可能な方法で軸方向に受け入れられる。
【0071】
バルブハウジング14は、シール装置46を介して、半径方向に支持されたシール方法で、振動ダンパ42のチューブ3内に受け入れられる。
【0072】
図5は、シールボディ19を有するパイロットバルブBを示しており、図示の実施形態では、断面が円錐台形であり、ドレインバルブ24の環状バルブシート21にばね20によって押しつけられる外側コーン47を有している。
【0073】
図3は、パイロットバルブBが電磁石4を有していることを示し、電磁石4の電機子17は、電流印加によって、即ちバルブばね18の作用に抗して、垂直軸方向H1に変位させることができることを示している。
【0074】
電磁石4が、図5及び図12に示されている非導通位置にあるとき、バルブハウジング14の内部空間39内のシステム圧力は、バルブシート21またはドレインバルブ24を介して解放されることができない。
【0075】
パイロットバルブBは、バルブシート30の支持縁48とバルブばね18との間の貫通開口として、図8aに見られる作動バルブ22を有する。パイロットバルブBが非導通位置にあるとき、システム圧力によって誘導される流体の流れは、作動バルブ22を介して発生する。システム圧力は、非圧縮性フォークオイルを介して、図12に破線で描かれているように、流体の流れを引き起こす。なぜなら、非常バルブディスク23はシステム圧力によって開くことができ、所定の圧力解放をもたらすことができるからである。
【0076】
図3及び図13でより詳細に見ることができるハウジング5にはコイル6が配置されており、これを介して、電磁石4の電機子17は、バルブばね又はバルブディスク18がそのばね力に抗して開くことができるように通電されることができ、そしてこのようにして、通電が増大するにつれて、作動バルブ22は、バルブばね18の作用に抗して連続的に閉じられ、それによって、より高い圧力降下を生じさせる。
【0077】
電磁石4が、非導通位置から最小電流が供給される位置まで通電されると、電機子17は、パイロットバルブBの方向に推力を発生させ、ばね20の力の作用に抗してドレインバルブ24を開き、これにより、非常バルブディスク23によって形成される非常バルブを短絡させる。
【0078】
図13に見られるバルブばね18は、減衰流体(フォークオイル)の通路のために設けられた凹部49を有する。上記のバルブシート30は、スペーサディスク28を間に挟んで、バルブばね18上に配置されている。カバーディスク33は、調節ディスク31とOリング32とが間に挟まれている状態で、当該カバーディスクは、ばねワッシャ15上の半径方向内側カラー50上に支持されている。
【0079】
チェックバルブ7、8及びチェックバルブ9ならびにチェックバルブとしても機能するスリーブボディ10を介して、バルブ装置1の移動方向にかかわらず、即ち、振動ダンパ2の内向き運動又はリバウンド運動の有無にかかわらず、パイロットバルブBには常に圧力発生面から減衰流体が供給され、減衰流体は圧力に背を向ける方向に流れることができることが達成される。
【0080】
図13に描かれたばねワッシャ35は、チェックバルブ9に作用し、スナップリング36によって固定される。
【0081】
図4に見られるスリーブボディ10は、図13に斜視図で描かれている。
【0082】
図13から容易に明らかなように、スリーブボディ10は、壁51を有する管状の構成となっており、壁51は中空の円筒形ボディ52で形成され、この円筒形ボディ52は、端面を有する円形ベース53上に着座状態で配置されており、そしてそれぞれ平面図では矩形であるとともにそれぞれスロット77を形成する互いに対向する凹部54を有する。
【0083】
矩形の凹部54又はスロット77は、図13にも示されているバルブディスク12a、支持ディスク12b、及び2つのベアリングディスク12cのそれぞれの中央ウェブ55を受け入れる働きをする。それぞれの中央ウェブ55は、凹部54内に受け入れられ、ばね29を介してスリーブ本体10の基部53上に支持される。
【0084】
バルブディスク12aは、例えば図9に見られるように接触面側74を有し、また、これも図9に描かれているが接触面側74に対向するベアリング面側75を有し、バルブディスク12aは、ある領域において、その下に配置された支持ディスク12b上にベアリング面側75を載せている。
【0085】
支持ディスク12bは、支持ディスク12bのクリアランス76の領域ではバルブディスク12aを支持することができない。図6及び図7に示す支持ディスク12bの場合、クリアランス76は、一点鎖線で示す領域、即ち、支持ディスク12bがバルブディスク12aを支持しない領域である。
【0086】
凹部54の両側では、壁51は、それに直角で基部53から離れるように延在する2つの円筒状管状セグメントの形状である。
【0087】
2つのベアリングディスク12cは、剛性を有するように設計され、スリーブボディ10のチューブセグメント56を受け入れるために設けられた2つの凹部57を有する。加えて、減衰流体は、2つの凹部57を通っても流れることができる。
【0088】
図13に示される支持ディスク12bは、図6及び図7の2つの実施形態に基づくと拡大されて示されている。
【0089】
図6は、2つの突出部58を有する支持ディスク12bの第1の実施形態を示し、図7は、4つの突出部58を有する支持ディスク12bの第2の実施形態を示す。
【0090】
それぞれの平面図に描かれた支持ディスク12bは、平面図において円形である第1の領域59を有し、図6において、第1の領域59の外周から半径方向外側に延在する2つの第2の領域60を有し、それらは図示された実施形態においては、突出部またはウィング58の形態である。
【0091】
同様に、第2の実施形態によれば、図7に描かれた支持ディスク12bは、第1の円形領域59を有し、そこから、4つの第2の領域60が半径方向外側方向に離れるように伸び、その各々は、突出部またはウィング58の形態である。
【0092】
支持ディスク12bの第1の領域59は、それぞれ、それに当接するように配置されるバルブディスク12aよりも小さい外径を有する。
【0093】
これは、一方では、図13に、また、例えば、図4及び図8図11にも見ることができる。
【0094】
また、支持ディスク12bは、スリーブボディ10の円筒形チューブセグメント56が通る凹部61を有し、これも減衰流体の通過のために設計されている。
【0095】
図13から容易に分かるように、バルブディスク12aは、外周領域に縁領域62を有し、この縁領域は、バルブハウジング14の環状バルブシート16aに当接するように設けられ、バルブディスク12aとバルブシート16aとの間に隙間を形成するためにそこから持ち上げることもでき、また、バルブピストン13がバルブシート16aから離れる方向に軸方向に動かされるときに、バルブシート16aから完全に分離することもでき、その詳細は以下でより詳細に説明される。
【0096】
図8は、ピストンロッド2の低速時の圧力ステージの流体の流れを描くためのバルブ装置1の拡大断面図を示す。
【0097】
本発明によるバルブ装置1が設けられたオートバイ80が、前輪82で道路のこぶの上を走行するとき、これは、テレスコピックサスペンションフォークレッグ40の圧縮運動につながる。道路のこぶの高さと、オートバイ80がこぶの上を走行する速度に応じて、ピストンロッド2の互いに異なるピストンロッド速度が発生し得る。振動ダンパ42は、オートバイ80の後輪83の動きを減衰させるために使用することもできる。
【0098】
ピストンロッド速度とその結果生じるダンパ力は、図16で見ることができ、これらは定性的な表示である。
【0099】
ピストンロッド2の速度の分類は以下のように可能である:
-0~0.05m/sの低速
-0.05~0.3m/sの平均速
-0.3~1.5m/sの高速
【0100】
ピストンロッド2に取り付けられたバルブ装置1は、例えばフォークオイルの形態の減衰流体が充填されたチューブ3内を前後に移動する。
【0101】
また、バルブ装置1は、上述の電磁石4を含み、例えば図4に描かれたバルブ装置1は、それが圧縮方向および張力方向の両方に移動するときに、それを通って流れる減衰流体を有する。圧縮方向への移動は、説明のみのためにテレスコピックサスペンションフォークレッグ40として形成されている振動ダンパ42が圧縮移動をする際に発生し、一方、張力方向への移動は、振動ダンパ42が減圧運動又はリバウンド運動をする際に発生する。用語「圧力ステージ」は、圧縮運動中に生じる状態に対応し、一方、移動したリバウンドステージは、たわみ運動中に生じる状態に対応する。
【0102】
電磁石4の助けを借りて、圧力降下は、バルブディスク18の対応する変位移動によって、移動の両方向に影響を受けることができる。
【0103】
それぞれの場合、それぞれの動きから生じるオイル流の一部がパイロットバルブBに供給され、パイロットバルブBは電磁石4によって作用される。上述した4つのチェックバルブ7、8、9、10のシステムにより、パイロットバルブBには常に圧力生成側から減衰流体が供給され、減衰流体は圧力には背を向ける側へ流れ去っていくことが可能となる。
【0104】
パイロットバルブBによって生成される予備制御圧力は、メインバルブ11の後面に作用し、従って、メインバルブ11又はバルブ装置1で生じる圧力降下に影響を及ぼす。バルブピストン13は、油圧嵌合でバルブハウジング14に対してシールされ、従って、半径方向にガイドされ、軸方向に取り付けられる。さらに、バルブピストン13は、ディスクばね又はばねワッシャ15によってバルブハウジング14内のバルブシート16aに押し付けられる。
【0105】
電磁石4がコイル6からの電流のない位置にある場合、パイロットバルブBは、図12に描かれた安全位置をとる。ここで、外側コーン19は、ばね20を介してドレインバルブ24のバルブシート21に接触し、確立されたオイル流が、非常バルブディスク23によって形成された非常バルブの方向に、開いた作動バルブ22を通って流れる。
【0106】
最小作動電流で電磁石4を導通することにより、電磁石4の電機子17がパイロットバルブBの方向にスラスト力を発揮し、それにより、ばね20の力に抗してドレインバルブ24が開かれ、非常バルブ23が短絡されることが保証される。作動バルブ22は依然として広い開位置にあり、このようにして僅かな圧力降下しか生じない。電磁石4の通電が増加していくと、作動バルブ22はさらに閉じていき、従って、より高い圧力降下を発生する。
【0107】
既に説明した圧縮プロセスの間、ピストンロッド2は、バルブ装置1と一緒にダンパ内に移動し、従って、圧力ステージチャンバPDの方向に移動する。
【0108】
図8は、ピストンロッド低速時の減衰流体の流れを示す。減衰流体の流れを矢印と破線で示す。
【0109】
ピストンロッド2の低速では、メインバルブ11は閉じたままであり、バルブディスク12aの凹部63、支持ディスク12bの凹部61、およびディスク12cの凹部57を通ることでメインバルブ11を介してわずかなオイルの流れしか生じず、減衰流体は絞り26を通過して予備制御チャンバ25に入り、そこから作動バルブ(図8a)及び開いたバルブシート21、チェックバルブ9、ならびにハウジング14を介して、リバウンドチャンバPZの方向に流れる。
【0110】
これは、曲線コースにおいてセグメント「A」とマークされている、図16に描かれているピストンロッド速度又はダンパ速度にわたるダンパ力のコースをもたらす。
【0111】
図16では、ダンパ速度に対してプロットされたダンパ力のコースは、完全な一面を有するように設計された、即ち、バルブディスク12aがその接触面全体に沿って接することになる、突出部またはウィングを備えていない仮想的な支持ディスクについて、Iで表されている。
【0112】
一方、IIで記されたダンパ力のコースは、支持ディスク12bに図7の図示に対応する4つの突出部が形成された場合のダンパ力のコースを示しているのに対し、IIIで記されたダンパ力のコースは、支持ディスク12bに図6の図示に対応する2つの突出部58が形成された場合のダンパ力のコースを示している。
【0113】
低ピストンロッド速度の範囲では、ダンパ速度に対してプロットされたダンパ力の3つのコースI、II、IIIはほぼ同じである。
【0114】
しかしながら、異なる描像が、平均ピストンロッド速度におけるダンパ力のそれぞれのコースに対応するセグメント「B」に描かれた曲線コースにおいて見られる。
【0115】
平均ピストンロッド速度では、上述の減衰流体の流れのコースに加えて、図8にも描かれ、ケース65として示される減衰流体のさらなる流れも生じる。
【0116】
圧力ステージチャンバPDにおける圧力増加のために、減衰流体の一部は、上記のように、バルブディスク12aの凹部63、支持ディスク12bの凹部61、及びディスク12cの凹部57を介して依然として流れる。バルブディスク12aの凹部63は、互いに対向する湾曲した外周領域の部分に、バルブ装置1の垂直軸方向下側に配置された支持ディスク12bよりも大きな直径を有する内側凹部78を有し、内側凹部78の縁領域68は、図10に示されるように、バルブハウジング14の内部空間39から出る方向に減衰流体で加圧されると、支持ディスク12bから離れるように持ち上がる。
【0117】
しかしながら、圧力ステージチャンバPD内の圧力上昇は、可撓性バルブディスク12aの縁領域62がバルブシート16aから持ち上げられて、縁領域62とバルブシート16aとの間の隙間を開くことも保証する。
【0118】
支持ディスク12bは、バルブディスク12aの外径よりも小さい円形の第1の領域59を有し、バルブディスク12aは、第1の領域59の外側の支持ディスク12b上に突出部58のところのみで載っているが、これらは、円形の第1の領域59の周縁全体に沿っては存在しないので、バルブディスク12aは、突出部58によって下方から支持されていない領域において、ばねワッシャと同様に、支持ディスク12bに対して変形することができ、このようにして、バルブディスク12aの縁領域62と環状バルブシート16aとの間に、バルブディスク12aの周縁領域の一部に沿って隙間が形成され、矢印65によって示されるオイル流が、チャネル64を介して、リバウンドチャンバPZの方向に直接生じる。
【0119】
ある領域のみにおいて、バルブディスク12aのベアリング側の支持ディスク12b上のバルブディスク12aを支持する半径方向外側に突出する突出部58を有する支持ディスク12bを有する本発明によるバルブ装置1の構成により、バルブディスク12aは、バルブディスク12aの縁領域62の周方向に延びる他の縁領域、即ち、支持ディスク12bの突出部58に支持または支えられている他の縁領域がバルブシート16aに隣接するときに、一度に環状バルブ16aに隙間(gap or gaps)を開けることができることが達成される。
【0120】
バルブディスク12aの縁領域62をバルブシート16aから一部において持ち上げることによって、バルブディスク12a全体が環状バルブシート16aから離脱する前に、縁領域62とバルブシート16aとの間に生じる隙間を通って圧力ステージチャンバPDからリバウンドチャンバPZの方向に減衰流体の流れが生じ、従ってメインバルブ11の突然の開放が回避され、公知のバルブ装置の欠点が排除される。
【0121】
図16におけるセグメント「B」のコースIから分かるように、仮想的な丸い支持ディスク、即ち、突出部58及びより小さな直径を有する第1の領域59を有さない支持ディスクの場合には、約0.12m/sのピストンロッド速度で曲線コースの曲がりが生じる。
【0122】
全面円形の中間ディスク又は支持ディスクの代わりに、図7に描かれている4つの突出部58を有する支持ディスク12bが使用される場合、ダンパ速度に対してプロットされたダンパ力の曲線コースIIが生じ、ダンパ力曲線の急激な曲がりは既に回避される。
【0123】
図6に描かれているように、2つの突出部を有する支持ディスク12bが使用される場合、IIIで記されたダンパ力コースが発生し、従って、平均ピストンロッド速度の全速度範囲にわたってほぼ直線的なコースが発生する。
【0124】
図15は、減衰流体の体積流のコースと、時間に対してプロットされた圧力コースと、を説明する図を示す。
【0125】
冒頭に記載された公知のバルブ装置では、冒頭に記載されたように、メインバルブの急激又は発作的な開放によって引き起こされる、P2で示された振動圧力コースが生じる。このような振動圧力コースは、上述したように、快適性の低下につながる。
【0126】
P1で示される圧力コースは、バルブ装置1を通るQ1で示される減衰流体の体積流の結果として、本発明によるバルブ装置において生じる。容易に明らかなように、振動圧力コースは排除され、既知のバルブ装置に関連する快適性損失も排除される。
【0127】
例えば、道路のこぶ上を走行することによって、バルブ装置1に作用する力衝撃形状の加振が、ピストンロッド速度をさらに増加させ、高いピストンロッド速度の範囲の値をとる場合、これは、図9に描かれた圧力ステージのオイル流を導く。
【0128】
加振のために、メインバルブ11の上にさらに増加する圧力が確立され、これがメインバルブ11に作用する。圧力ステージチャンバPD内の圧力上昇によって引き起こされるこの力が、メインバルブ11の後側の反力を超えると、図9に示されるように、メインバルブの(複数の)バルブディスク12、即ちバルブディスク12a、支持ディスク12b、およびベアリングディスク12cが、バルブシート16aから完全に分離する。
【0129】
メインバルブ11の後部の反力は、バルブピストン13の後部加圧面積に、パイロットバルブBによって形成される圧力及びばね15の力を乗じたもので決定する。
【0130】
支持ディスク12bの構成により、可撓性バルブディスク12aは、上述した力の平衡にはまだ到達していないので、たとえメインバルブ11がまだ完全に開いていなくても、圧力依存的に環状バルブシート16aにおける通路断面を解放することができる。
【0131】
この構成は、セグメント「B」による図16の曲線コースII、IIIに従って、メインバルブ11の連続的な開放動作を保証する。
【0132】
図16によるセグメント「C」における曲線コースに対応する高いピストンロッド速度では、ダンパ速度に対してプロットされた減衰力のほぼ直線的なコースが維持される。
【0133】
ばね減圧又は振動ダンパ42のリバウンド運動に伴って、バルブ装置1が配置されたピストンロッド2は、リバウンドチャンバPZの方向に圧力ステージチャンバPDの領域外に移動する。この運動は、リバウンドチャンバ内のシステム圧力の増加につながり、従って、圧力ステージチャンバの方向へのオイル流につながる。
【0134】
図10は、リバウンド運動中に設定されるピストンロッドの低速及び平均速度におけるリバウンド段階の流体流を描くためのバルブ装置1の拡大断面図を示す。
【0135】
低い運動速度では、バルブディスク12を有するメインバルブ11は閉じたままであり、オイル流がパイロットバルブBを介して行われ、これは、再び、図16のセグメント「A」による曲線コースに対応する。
【0136】
減衰流体は、リバウンドチャンバからメインバルブ11の絞り27と、システム圧力によって開くチェックバルブ7と、を介して、パイロットバルブBの予備制御チャンバ25に流入し、そこからパイロットバルブBとハウジング14又はオイルダクト66と凹部57、61、63(図13参照)とを介して、圧力ステージチャンバPDの方向に流れる。
【0137】
スリーブボディ10は、バルブディスク12a、支持ディスク12b、並びにストップディスク12cを互いに対して位置合わせされた位置に保持するように設計されている。これは、スリーブボディ10の円筒形チューブセグメント56がディスク12a、12b、12cのそれぞれの凹部57、61及び63を通過することで、複数のディスクが互いに対して回転できないように配置されることを確実にすることによって達成される。このようにして、互いに積み重ねられたディスクのそれぞれの凹部57、61、63の断面積は一定のままであり、ディスク12a、12b、12cの中央ウェブ55が互いに対して回転することができ、その結果、(流体が)流れることができる断面積が変化することが防止される。従って、凹部によって形成される所定の有効流れ断面は、所定の方法で維持される。ある可能な実施形態において、支持ディスク12bがクリアランスのない全面ディスクである場合でさえ、スリーブボディ10のこの機能は維持されるであろう。
【0138】
ピストンロッド速度が増加すると、これは、リバウンドチャンバ内のシステム圧力の増加につながり、図10の矢印67に従ったオイル流にもつながる。
【0139】
図10から、図13に示す支持ディスク12bおよびバルブディスク12aの構成と関連して分かるように、システム圧力の増加は、オイル流矢印67に従って、図10の切り抜き部(cut-out)68の領域に入る減衰流体をもたらす。
【0140】
システム圧力は、バルブディスク12aの底部と第1の下側のベアリングディスク12cの頂部との間のスペース70に入り込むことができるので、システム圧力の上昇は、バルブディスク12aの半径方向内側領域69が支持ディスク12bから離れるように移動することを引き起こし、このスペースは支持ディスク12bの外周領域によって閉じられておらず、後者はこの領域の全面にわたって形成されておらず、クリアランス76を有しているので、バルブディスク12aは突出部58の領域において支持ディスク12bの上側にのみ隣接する。
【0141】
このようにして確立されたオイル流71は、システム圧力を緩和させ、バルブディスク12(即ち、バルブディスク12a、支持ディスク12b、ベアリングディスク12c)の環状バルブシート16aからの突然の又は急激な又は発作的な持ち上げが回避される。第2の又は下方のベアリングディスク12cは、図10に見られるように、環状バルブシート16bに依然として接触している。
【0142】
これは、図面の図16のセグメント「B」によるダンパ速度に対してプロットされた減衰力のコースに対応している。
【0143】
ピストンロッド速度が上昇し続けると、図11に示される減衰流体コースが発生する。
【0144】
容易に明らかなように、バルブディスク12aは、環状バルブシート16aと接触し続ける。バルブピストン13がその制御エッジ72をベアリングディスク12cから離すので、バルブピストン13の後側に作用する反力を超え、環状バルブシート16bが開くので、システム圧力が上昇すると、メインバルブ11が開いて隙間ができ、図11に示される矢印73に従って減衰流体の通過につながる。
【0145】
バルブピストン13に作用する反力は、バルブピストン13の後部の加圧される面積に、パイロットバルブBによって形成される圧力とばねワッシャ15との予圧力とを乗じたもので決まる。
【0146】
リバウンドチャンバPZ内のシステム圧力の増加により、優勢になり、メインバルブ11に作用する力が上述した反力より大きくなると、制御エッジ72とベアリングディスク12cとの間の隙間が開き、図11のオイルの流れの矢印73によって描かれているように、オイル流が、ベアリングディスク12c、支持ディスク12bおよびバルブディスク12aの凹部57、61および63を通って生じることができる。
【0147】
これは、図16のセグメント「C」に対応するダンパ速度に対してプロットされた減衰力の形成につながる。
【0148】
従って、本発明によるバルブ装置は、たとえメインバルブ11が環状バルブシート16からまだ持ち上がりきっていなくても、システム圧力に依存するリバウンド運動の間にメインバルブ11の通路断面を解放することもできる。
【0149】
これはまた、セグメント「B」の領域における、即ち、リバウンド運動中の平均ダンパ速度又はピストンロッド速度におけるメインバルブの連続的な開放挙動に寄与し、ダンパ速度に対してプロットされたダンパ力のコースは、2つ以上の突出部58を有する支持ディスク12bの構成によって影響を受けることができる。
【0150】
2つの突出部またはウィング58を有する支持ディスク12bの構成は、平均ピストンロッド速度の範囲でダンパ速度に対してプロットされたダンパ力のより真っ直ぐなコースIIIにつながり、一方、4つの突出部またはウィング58を有する支持ディスク12bの設計は、ダンパ力のわずかに丸いコースIIにつながる。
図16は、電磁石4への大電流供給におけるダンパ力のダンパ速度にわたるコースを示しており、それぞれの曲線II、IIIのコースは、電磁石4のコイル6への電流供給の対応する変化によって変化させることができる。
【0151】
図15に見られるように、本発明によるバルブ装置は、システム圧力コースの過活動の問題および結果として生じる快適性の欠点を効果的に回避することができる。
【0152】
上記に詳細に説明されていない本発明の特徴に関しては、特許請求の範囲および図面が明確に参照される。
【0153】
以下の項目は、出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
振動ダンパのためのバルブ装置(1)であって、
環状バルブシート(16a)を有し、減衰流体を受け入れるように設けられたバルブハウジング(14)を有し、
前記バルブハウジング(14)の内部空間(39)内に前記バルブシート(16)に対して軸方向に変位可能に配置されたバルブピストン(13)を有し、
前記バルブピストン(13)は、前記バルブシート(16)上の接触面側(74)と着脱可能に接触することができる可撓性円形バルブディスク(12a)を有するメインバルブ(11)を有し、
前記バルブディスク(12a)が前記バルブピストン(13)に対して軸方向に移動可能であるとともに半径方向にガイドされるように、前記バルブディスク(12a)は、前記ガイドピン(37)を介して前記バルブピストン(13)上に配置され、
前記バルブ装置(1)は、パイロットバルブ(B)に作用する電機子(17)を有する電磁石(4)を有し、
可撓性支持ディスク(12b)が、前記バルブディスク(12a)の接触面側(74)を背にする前記バルブディスク(12a)のベアリング面側(75)に配置され、支持ディスク(12b)上に、前記バルブディスク(12a)は、前記バルブディスク(12a)の周方向に延びる部分的な周辺領域に沿って当接することを特徴とする、バルブ装置(1)。
(項目2)
前記支持ディスク(12b)は、前記周方向に少なくとも1つのクリアランス(76)を有し、
前記少なくとも1つのクリアランス(76)においては、前記バルブディスク(12a)は前記支持ディスク(12b)による支持がなく、
前記支持ディスク(12b)の方向に圧力が加えられたときに、前記バルブディスク(12a)は、前記クリアランス(76)のない前記支持ディスク(12b)の領域よりも強く撓む、
ことを特徴とする、項目1に記載のバルブ装置(1)。
(項目3)
前記支持ディスク(12b)は、
平面視で円形であり、前記バルブディスク(12a)の外径よりも小さい第1の直径を有する第1の領域(59)と、
第2の直径を有する少なくとも1つの第2の領域(60)であって、前記第1の領域(59)の外周から半径方向外側に延在する、前記少なくとも1つの第2の領域(60)と、
を有し、
前記第2の領域(60)は、前記支持ディスク(12b)の周辺部の一部の領域に沿って、前記支持ディスク(12b)の周方向に延在することを特徴とする、項目1又は2に記載のバルブ装置(1)。
(項目4)
前記支持ディスク(12b)は、前記支持ディスク(12b)の中心から見て、前記バルブディスク(12a)の外径以下の半径方向延在部を有する少なくとも2つの突出部(58)であって、半径方向外側に延び、相互に対向する前記少なくとも2つの突出部(58)を有することを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目5)
前記バルブ装置(1)は、前記支持ディスク(12b)が、その側面が前記バルブディスク(12a)を背にしながら当接する少なくとも1つのベアリングディスク(12c)を有することを特徴とする、項目1から4のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目6)
前記バルブ装置(1)は、
管状スリーブボディ(10)であって、その長手方向延在部の一部の領域に沿って、互いに対向する凹部(54)を有する前記スリーブボディ(10)の壁(51)を形成するスロット(77)を有する、前記管状スリーブボディ(10)を有し、
前記凹部(54)に隣接して、前記スリーブボディ(10)の基部から離れるように延在し、前記スリーブボディ(10)の長手方向に延びる円筒状チューブセグメント(56)が形成される、
ことを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目7)
前記バルブディスク(12a)及び/又は前記支持ディスク(12b)は、前記外周内に2つの凹部(63、61)を備え、これらの間に中央ウェブ(55)が形成され、前記凹部(63、61)は、前記チューブセグメント(56)によって貫通されることを特徴とする、項目6に記載のバルブ装置。
(項目8)
前記パイロットバルブ(B)は、外側コーン(47)を備えるシールボディ(19)であって、ばね(20)によってドレインバルブ(29)の環状バルブシート(21)に接触可能な前記シールボディ(19)を有することを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目9)
前記パイロットバルブ(3)は、前記電磁石(4)の非導通状態において、前記バルブハウジング(14)を介して、前記パイロットバルブ(B)の予備制御チャンバ(25)からの流体の流れを許容するバルブディスク(18)を有することを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目10)
前記バルブディスク(12a)は、前記バルブ装置(1)の垂直軸方向における下方に配置された支持ディスク(12b)よりも大きい直径を有する内側凹部(78)を有し、
前記内側凹部(78)の縁領域(68)は、減衰流体で加圧されると、前記支持ディスク(12b)から前記バルブハウジング(14)の前記内部空間(39)外側の方向に持ち上がることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目11)
前記バルブディスク(12a)は、前記内部空間の方向に減衰流体で加圧されたときに、前記バルブシート(16)から前記内部空間(39)内への方向に持ち上がる、前記外径上に配置された縁領域(62)を有することを特徴とする、項目1から10のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)。
(項目12)
チューブ(3)及びピストンロッド(2)を有する振動ダンパであって、
前記チューブ(3)は、減衰流体を受け入れるように設計された内部空間(43)を有し、
項目1から11のいずれか一項に記載のバルブ装置(1)、圧力ステージチャンバ(PD)、及びリバウンドチャンバ(PZ)によって特徴付けられ、
前記2つのチャンバは、前記バルブ装置(1)から物理的に分離され、流体的に接続されるように設計されたそれぞれの内部空間を有する、振動ダンパ。
(項目13)
前輪(82)および後輪(83)を有する車両であって、項目12に記載の振動ダンパ(42)を特徴とする、車両。
【符号の説明】
【0154】
1.バルブ装置
2.ピストンロッド
3.チューブ
4.電磁石
5.ハウジング
6.コイル
7.チェックバルブ
8.チェックバルブ
9.チェックバルブ
10.チェックバルブ、スリーブボディ
11.メインバルブ
12.バルブディスク
12a.バルブディスク
12b.支持ディスク
12c.ベアリングディスク
13.バルブピストン
14.バルブハウジング
15.ばねワッシャ
16a.環状バルブシート
16b.環状バルブシート
17.電機子
18.バルブばね
19.シールボディ
20.ばね
21.バルブシート
22.作動バルブ
23.非常バルブディスク、非常バルブ
24.ドレインバルブ
25.予備制御チャンバ
26.通路
27.通路
28.スペーサディスク
29.ばね
30.バルブシート
31.調整ディスク
32.Oリング
33.カバーディスク
34.ストップディスク
35.ばねワッシャ
36.スナップリング
37.ガイドピン
38.長手軸
39.バルブハウジングの内部空間
40.テレスコピックサスペンションフォークレッグ
41.アクスルクランプ
42.振動ダンパ
43.内部空間
44.ばね
45.当接部
46.シール装置
47.外側コーン
48.支持縁
49.ディスク18の凹部
50.カラー
51.壁
52.ボディ
53.基部
54.凹部
55.中央ウェブ
56.チューブセグメント
57.ベアリングディスクの凹部
58.支持ディスクの突出部
59.支持ディスクの円形領域
60.支持ディスクの第2の領域
61.凹部
62.縁領域
63.凹部
64.オイル流、矢印
65.矢印
66.オイルダクト
67.オイル流
68.切り抜き部
69.半径方向内側領域
70.スペース
71.オイル流
72.制御エッジ
73.矢印
74.接触面側
75.ベアリング面側
76.クリアランス
77.スロット
78.内側凹部
80.モーターバイク
81.全浮動式車軸
82.前輪
83.後輪
PD:圧力ステージチャンバ
PZ:リバウンドチャンバ
H:垂直軸方向
H1:垂直軸方向
B:パイロットバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8a
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】