(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101511
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】フッ素化アクリレート系コポリマー及びそれを含む感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/22 20060101AFI20220629BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220629BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20220629BHJP
C08F 220/32 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C08F220/22
G03F7/004 501
G03F7/40 501
C08F220/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207271
(22)【出願日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0182741
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク・キョンチェ
(72)【発明者】
【氏名】キム・スンクン
(72)【発明者】
【氏名】イ・キョチョル
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H196AA30
2H196BA05
2H196HA01
2H225AC21
2H225AC36
2H225AD06
2H225AE13P
2H225AN39P
2H225BA22P
2H225BA32P
2H225CA22
2H225CA24
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J100AB02S
4J100AJ02Q
4J100AL08P
4J100AL08S
4J100AL10R
4J100BB17P
4J100BB18P
4J100BC04S
4J100BC37S
4J100CA03
4J100CA06
4J100JA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フッ素化アクリレート系コポリマー及びそれを含む感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(b1)式1a又は1bによって表される構造単位と、(b2)式2によって表される構造単位と、(b3)式3によって表される構造単位と、(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位と、を含むフッ素化アクリレート系コポリマーとする。該コポリマーは、無極性環含有単位を導入することにより、比較的低いフッ素含有量を有する場合であっても非常に優れた撥水性を有することができるため、コーティングの不均衡を防ぐことができ、またフッ素含有量が高いときに起こり得るパターン強度の低下を防ぐことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(b1)以下の式1a又は1bによって表される構造単位と、
(b2)以下の式2によって表される構造単位と、
(b3)以下の式3によって表される構造単位と、
(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位と、
を含むフッ素化アクリレート系コポリマー:
【化1】
(上の式において、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、水素であるか1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;
L
1、L
2、及びL
3は、それぞれ独立して、単結合であるか、N、S、及びOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖であり;
Cyは、1つ以上の置換基を含む又は含まない4~13個の炭素原子を有する芳香族又は非芳香族炭化水素環であり;
C
nF
mは、n個の炭素原子とm個のフッ素原子とを有するフルオロアルキルであり、nは1~10の整数であり、mは1以上の整数であり、2n-2≦m≦2n+1である)。
【請求項2】
前記構造単位(b1)の含有量が、前記フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として10~40モル%である、請求項1に記載のフッ素化アクリレート系コポリマー。
【請求項3】
前記構造単位(b2)の含有量が、前記フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として10~50モル%である、請求項1に記載のフッ素化アクリレート系コポリマー。
【請求項4】
式1a及び1bにおいて、Cyが、それぞれ1つ以上の置換基を有する又は有さないフェニル、シクロヘキシル、及びジシクロペンタニルからなる群から選択される、請求項1に記載のフッ素化アクリレート系コポリマー。
【請求項5】
前記構造単位(b1)~(b4)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位(b5)を更に含む、請求項1に記載のフッ素化アクリレート系コポリマー。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和化合物が、少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸エステル系化合物を含む、請求項5に記載のフッ素化アクリレート系コポリマー。
【請求項7】
5,000~15,000の重量平均分子量及び10~75KOHmg/gの酸価を有する、請求項1に記載のフッ素化アクリレート系コポリマー。
【請求項8】
アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物であって、
前記アルカリ可溶性樹脂が、(b1)以下の式1a又は1bによって表される構造単位と、(b2)以下の式2によって表される構造単位と、(b3)以下の式3によって表される構造単位と、(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位とを含むコポリマーを含む、感光性樹脂組成物:
【化2】
(上の式において、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、水素であるか1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;
L
1、L
2、及びL
3は、それぞれ独立して、単結合であるか、N、S、及びOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖であり;
Cyは、1つ以上の置換基を含む又は含まない4~13個の炭素原子を有する芳香族又は非芳香族炭化水素環であり;
C
nF
mは、n個の炭素原子とm個のフッ素原子とを有するフルオロアルキルであり、nは1~10の整数であり、mは1以上の整数であり、2n-2≦m≦2n+1である)。
【請求項9】
前記アルカリ可溶性樹脂が、(a1)エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、又はそれらの組み合わせに由来する構造単位、(a2)芳香環を含有するエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位、(a3)エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位、並びに(a4)(a1)、(a2)、及び(a3)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位、からなる群から選択される少なくとも2つの構造単位を含むコポリマーを更に含む、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
接着補助剤及び界面活性剤を更に含有する、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
70℃~150℃の温度で硬化される、請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化アクリレート系コポリマー、及びそれを含む感光性樹脂組成物に関する。より具体的には、本発明は、インクジェット用のトップコーティングバリアリブに塗布され、撥水性、パターン形成、及び強度が優れたフッ素化アクリレート系コポリマー、及びそれを含む感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、半導体デバイスを選択的に加工するために使用される感光性樹脂組成物である。半導体デバイスを製造するプロセスでは、フォトレジストが基板上にコーティングされ、フォトマスクを介して活性化放射源に曝露され、その後現像されてパターンが得られる。近年、ナノメートルスケールの最小のフィーチャ幅を達成するために、液浸リソグラフィーが使用されている。フォトレジスト成分が浸漬液に浸出すことを防止するために、フォトレジスト層上にトップコーティングが形成され、浸漬液とフォトレジスト層との間のバリアとして機能する。
【0003】
(特許文献1)には、フッ素を含むトップコーティング組成物及びそれを使用してフォトレジストパターンを形成する方法が開示されている。上記特許による組成物は、1~6個の炭素原子を有するフッ素置換炭化水素基を有するアクリレートと、無水マレイン酸と、オレフィンモノマーとに由来する単位を含む、5,000~100,000の重量平均分子量のコポリマー;及び有機溶媒から構成される。
【0004】
一方で、ディスプレイデバイスの製造プロセスで主に使用されているフォトリソグラフィー法に代わるものとして、近年、様々な新しいプロセスが採用されている。インクジェット方式が代表的なものである。インクジェット方式では、基板上にトップコーティングが形成され、露光及び現像プロセスを受けてバリアリブが形成され、その後バリアリブ間にインクが注入される。インクジェット方式は、プロセスに必要な材料を削減し、プロセスを簡素化できるため、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ディスプレイ(OLED)、量子ドットディスプレイ(QLED)などに利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許第688569号明細書
【特許文献2】韓国特許出願公開第2004-0007700号明細書
【特許文献3】韓国特許出願公開第2005-0084149号明細書
【特許文献4】韓国特許出願公開第2008-0083650号明細書
【特許文献5】韓国特許出願公開第2008-0080208号明細書
【特許文献6】韓国特許出願公開第2007-0044062号明細書
【特許文献7】韓国特許出願公開第2007-0091110号明細書
【特許文献8】韓国特許出願公開第2007-0044753号明細書
【特許文献9】韓国特許出願公開第2009-0009991号明細書
【特許文献10】韓国特許出願公開第2009-0093933号明細書
【特許文献11】韓国特許出願公開第2010-0097658号明細書
【特許文献12】韓国特許出願公開第2011-0059525号明細書
【特許文献13】韓国特許出願公開第2011-0091742号明細書
【特許文献14】韓国特許出願公開第2011-0026467号明細書
【特許文献15】韓国特許出願公開第2011-0015683号明細書
【特許文献16】韓国特許出願公開第2013-0124215号明細書
【特許文献17】韓国特許第10-1435652号明細書
【特許文献18】国際公開第2010/10102502号パンフレット
【特許文献19】国際公開第2010/133077号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット方式を実行可能にするためには、バリアリブ間にインクを安定に閉じ込めることができるようにバリアリブのパターン形状、表面均一性、及び強度が優れていなければならず、またバリアリブ間に注入されたインクが浸出しないようにバリアリブの撥水性が保証されなければならない。しかしながら、この方式で使用されるトップコーティング用の従来のフッ素系樹脂組成物は、フッ素の高い含有量のため経済的実現可能性を欠いており、或いは製造における障害又は硬化品質の問題を有している。
【0007】
本発明者らにより行われた研究の結果、フッ素系バインダーの中に無極性環含有単位を導入することにより、フッ素含有量を低減した場合であっても低い表面張力を維持できること、及び他の光重合性化合物とブレンドすることにより、パターン形成、表面均一性、及び強度を向上できることが見出された。
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術と比較してフッ素含有量が少なく、撥水性が改善されたコポリマーを提供すること、並びにこれを含みインクジェット用トップコーティングバリアリブの製造に適したパターン形成、表面均一性、及び強度を有する感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、(b1)以下の式1a又は1bによって表される構造単位と、(b2)以下の式2によって表される構造単位と、(b3)以下の式3によって表される構造単位と、(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位と、を含むフッ素化アクリレート系コポリマーを提供する:
【化1】
【0010】
上の式において、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素であるか1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;L1、L2、及びL3は、それぞれ独立して、単結合であるか、N、S、及びOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖であり;Cyは、1つ以上の置換基を含む又は含まない4~13個の炭素原子を有する芳香族又は非芳香族炭化水素環であり;CnFmは、n個の炭素原子とm個のフッ素原子とを有するフルオロアルキルであり、nは1~10の整数であり、mは1以上の整数であり、2n-2≦m≦2n+1である。
【0011】
更に、本発明は、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物を提供し、アルカリ可溶性樹脂は、(b1)上の式1a又は1bによって表される構造単位と、(b2)上の式2によって表される構造単位と、(b3)上の式3によって表される構造単位と、(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位と、を含むコポリマーを含む。
【0012】
発明の有利な効果
本発明によるフッ素化アクリレート系コポリマーは、無極性環含有単位を導入することにより、フッ素含有量が比較的少なくても優れた撥水性を有し、それによって従来技術と比較して製造コストが低減される。加えて、フッ素化アクリレート系コポリマーは、コーティングの不均衡を防ぎ、フッ素含有量が高いときに起こり得るパターン強度の低下を防ぐことができる。
【0013】
したがって、フッ素化アクリレート系コポリマーを含む感光性樹脂組成物は、優れた撥水性を有しており、そのため、インクジェット用トップコーティングのバリアリブに使用された場合に、インク液の浸出を防止することができる。加えて、感光性樹脂組成物は、コーティング後の膜凝集現象を抑制しながら安定したパターンを形成することを期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較例1及び実施例1~6の現像後の組成物の画像を示す。
【
図2】比較例1及び実施例1~6のポストベーク後の組成物の画像を示す。
【
図3】比較例1及び実施例1~6の組成物のコーティング表面の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、下記で説明されているものに限定されない。むしろ、それは、本発明の趣旨が変更されない限り様々な形態に修正され得る。
【0016】
本明細書の全体にわたり、ある部分がある要素を「含む」と言われる場合、特に明記しない限り、他の要素が除外されるよりもむしろ、他の要素が含まれ得ると理解される。加えて、本明細書で用いられる成分の量、反応条件等に関する全ての数字及び表現は、特に明記しない限り、用語「約」で修飾されていると理解されるべきである。
【0017】
本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指し、用語「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を指す。
【0018】
本明細書では、分子量又は重量平均分子量は通常単位を伴わないが、g/モル又はDaの単位を有すると理解することができる。
【0019】
フッ素化アクリレート系コポリマー
本発明によるフッ素化アクリレート系コポリマーは、無極性環含有単位を導入することにより、フッ素含有量が比較的少なくても優れた撥水性を有し、それによって従来技術と比較して製造コストが低減される。加えて、フッ素化アクリレート系コポリマーは、コーティングの不均衡を防ぎ、フッ素含有量が高いときに起こり得るパターン強度の低下を防ぐことができる。
【0020】
本発明によるフッ素化アクリレート系コポリマーは、(b1)以下の式1a又は1bによって表される構造単位と、(b2)以下の式2によって表される構造単位と、(b3)以下の式3によって表される構造単位と、(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位とを含む:
【化2】
【0021】
上の式において、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素であるか1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;L1、L2、及びL3は、それぞれ独立して、単結合であるか、N、S、及びOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖であり;Cyは、1つ以上の置換基を含む又は含まない4~13個の炭素原子を有する芳香族又は非芳香族炭化水素環であり;CnFmは、n個の炭素原子とm個のフッ素原子とを有するフルオロアルキルであり、nは1~10の整数であり、mは1以上の整数であり、2n-2≦m≦2n+1である。
【0022】
式1a~3において、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素であるか1~6個の炭素原子を有するアルキルであり、具体的には、これは水素であるか1~3個の炭素原子を有するアルキルであってよい。
【0023】
式1a~3において、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立して、単結合であるか、N、S、及びOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖であり、具体的には、これは単結合であるか、1つ以上のOを含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖(例えばアルキレン、オキシアルキレン、アルキレングリコール等)であってよい。鎖中の炭素原子の数は、1~10、1~6、1~3、3~10、又は6~10であってよい。
【0024】
式1a及び1bにおいて、Cyは、それぞれ1つ以上の置換基を含む又は含まない4~13個の炭素原子を有する芳香族又は非芳香族の炭化水素環である。炭化水素環はヘテロ原子を含まず、その結果無極性であるため、コポリマーの撥水性を高めることができる。
【0025】
芳香族炭化水素環は、例えば、6~13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素環、すなわち6~13個の炭素原子を有するアリールであってよい。芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の数は、具体的には6~13又は6~10であってよい。芳香族炭化水素環は、単一の環であっても複数の環であってもよく、具体的には、フェニルやナフタレニルなどであってよい。
【0026】
非芳香族炭化水素環は、例えば、4~13個の炭素原子を有するシクロアルキル及びシクロアルケニルなどの脂環式基であってよい。非芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の数は、具体的には4~13又は4~8であってよい。非芳香族炭化水素環は、単一の環であっても複数の環であってもよく、具体的には、シクロペンチル、シクロヘキシル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニルなどであってよい。
【0027】
具体例として、式1a及び1bにおいて、Cyは、それぞれ1つ以上の置換基を有する又は有さない、フェニル、シクロヘキシル、及びジシクロペンタニルからなる群から選択することができる。
【0028】
芳香族又は非芳香族炭化水素環は、1つ以上の置換基、例えば、1~3個の置換基を有し得る。置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アセチル、ビニル、C1~12アルキル、C1~12アルコキシ、及びC1~6アルコキシC1~6アルキルからなる群から選択される1つ以上であってよい。置換基の具体例としては、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシル、アセチル、ビニル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどを挙げることができる。
【0029】
式2において、CnFmは、n個の炭素原子とm個のフッ素原子とを有するフルオロアルキルであり、nは1~10の整数であり、mは1以上の整数であり、2n-2≦m≦2n+1である。これはフッ素を含んでいることから、コポリマーの撥水性を高めることができる。フルオロアルキル中の炭素原子の数は、1~10、例えば、1~8、1~6、1~3、3~10、又は6~10であってよい。加えて、フルオロアルキルは直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0030】
構造単位(b1)は、上で例示した式1a又は1bで表される1つ又は2つ又はそれ以上の構造単位を含み得る。
【0031】
構造単位(b1)は、芳香族又は非芳香族の炭化水素環を含むエチレン性不飽和化合物に由来し得る。
【0032】
芳香族炭化水素環を含有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、プロポキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、アセチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、及びp-ビニルベンジルメチルエーテルを挙げることができる。
【0033】
非芳香族炭化水素環を含むエチレン性不飽和化合物の具体例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
構造単位(b1)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として10~40モル%であってよい。具体的には、構造単位(b1)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として10~30モル%、10~20モル%、15~40モル%、20~40モル%、又は15~35モル%であってよい。
【0035】
構造単位(b2)は、上に例示した式2によって表される1つ又は2つ又はそれ以上の構造単位を含み得る。
【0036】
一例として、構造単位(b2)は、mが2n-1である構造単位と、mが2n+1である構造単位とを含み得る。これらの間のモル比は、1:5~5:1、例えば1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、1:1~1:4、1:1~4:1、1:1~3:1、1:1~1:3、1:1~1:2、又は1:1~2:1であってよい。
【0037】
構造単位(b2)は、フルオロアルキル基を含むエチレン性不飽和化合物に由来し得る。
【0038】
フルオロアルキル基を含むエチレン性不飽和化合物の具体的な例としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、デカフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロノニル(メタ)アクリレート、及びパーフルオロデシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0039】
構造単位(b2)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として、10~50モル%であってよい。具体的には、構造単位(b2)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として、10~45モル%、10~40モル%、10~35モル%、10~30モル%、又は10~20モル%であってよい。
【0040】
構造単位(b3)は、上に例示した式3によって表される1つ又は2つ又はそれ以上の構造単位を含み得る。
【0041】
構造単位(b3)は、エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物に由来し得る。
【0042】
エポキシ基を含むエチレン性不飽和化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0043】
構造単位(b3)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として、10~40モル%であってよい。具体的には、構造単位(b3)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として、10~35モル%、10~30モル%、15~40モル%、20~40モル%、又は15~35モル%であってよい。
【0044】
構造単位(b4)は、エチレン性不飽和カルボン酸に由来する1つ又は2つ又はそれ以上の構造単位を含み得る。
【0045】
エチレン性不飽和カルボン酸は、分子内に1つ以上のカルボキシル基を有する重合可能な不飽和モノマーである。その具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、及び桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸などの不飽和ジカルボン酸;並びに三価以上の不飽和ポリカルボン酸を挙げることができる。上記例示された化合物に由来する構造単位は、単独で又は2種以上の組み合わせで本コポリマーに含まれ得る。
【0046】
構造単位(b4)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として5~30モル%であってよい。具体的には、構造単位(b4)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として、5~25モル%、5~20モル%、10~30モル%、10~25モル%、又は10~20モル%であってよい。
【0047】
フッ素化アクリレート系コポリマーは、構造単位(b1)~(b4)を含むランダムコポリマーであってもよい。
【0048】
一実施形態によれば、構造単位(b1)~(b4)を有するコポリマーの例としては、スチレン/トリフルオロエチル(メタ)アクリレート/パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸のコポリマー、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート/トリフルオロエチル(メタ)アクリレート/パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸のコポリマー、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート/トリフルオロエチル(メタ)アクリレート/パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸のコポリマーを挙げることができる。1つ、2つ又はそれ以上のコポリマーが感光性樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0049】
加えて、フッ素化アクリレート系コポリマーは、構造単位(b1)~(b4)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位(b5)を更に含んでいてもよい。例えば、エチレン性不飽和化合物は、少なくとも1種のエチレン性不飽和カルボン酸エステル系化合物を含み得る。
【0050】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル系化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、プロピルα-ヒドロキシメチルアクリレート、ブチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0051】
構造単位(b5)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として5~30モル%であってよい。具体的には、構造単位(b5)の含有量は、フッ素化アクリレート系コポリマーを構成する構造単位100モル%を基準として、5~25モル%、5~20モル%、10~30モル%、10~25モル%、又は10~20モル%であってよい。
【0052】
フッ素化アクリレート系コポリマーの重量平均分子量は、5,000~15,000、好ましくは5,500~10,000であってよい。重量平均分子量は、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリメチルメタクリレート換算値とすることができる。上記分子量範囲内において、基板への接着性はより優れており、物理的及び化学的特性は向上し、粘度は適切なレベルである。
【0053】
例えば、フッ素化アクリレート系コポリマーは、5,000~15,000の重量平均分子量と、10~75KOHmg/gの酸値とを有し得る。
【0054】
フッ素化アクリレート系コポリマーは、ラジカル重合開始剤と、溶媒と、構造単位を得るためのモノマーとを混合し、ゆっくりと撹拌しながら窒素雰囲気下で混合物を重合することによって調製することができる。
【0055】
ラジカル重合開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、;又はベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどであってよいが、これらに限定されない。ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上の組み合わせで使用され得る。
【0056】
溶媒は、フッ素化アクリレート系コポリマーの調製に一般的に使用される任意の従来の溶媒であってよく、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を挙げることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物
本発明による感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する。
【0058】
アルカリ可溶性樹脂は、フッ素化アクリレート系コポリマーを含むことができ、更に追加のコポリマーを含み得る。すなわち、アルカリ可溶性樹脂は2種以上のコポリマーを含み得る。
【0059】
一実施形態によれば、本発明による感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂としてコポリマーA及びコポリマーBを含む。
【0060】
(A)コポリマーA
コポリマーAは、現像性を得るためのアルカリ可溶性樹脂であり、またこれは被覆時に膜を形成するためのベース及び最終パターンを形成するための構造体の役割を果たし得る。
【0061】
コポリマーAは、(a1)エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、又はそれらの組み合わせに由来する構造単位、(a2)芳香環を含有するエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位、(a3)エポキシ基を含有するエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位、並びに(a4)(a1)、(a2)、及び(a3)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位、からなる群から選択される少なくとも2種の構造単位を含み得る。
【0062】
構造単位(a1)は、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸無水物、又はそれらの組み合わせに由来する。エチレン性不飽和カルボン酸及びエチレン性不飽和カルボン酸無水物は、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を含有する重合性不飽和モノマーである。それの特定の例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、及び桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸、シトラコン酸無水物、及びメサコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそれらの無水物;3価以上の不飽和ポリカルボン酸及びそれらの無水物;並びにモノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]スクシネート、モノ[2-(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタレートなどの2価以上のポリカルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステル等が挙げられ得る。上に例示された化合物に由来する構造単位は、単独で又は2つ以上の組み合わせでコポリマーに含まれ得る。
【0063】
構造単位(a1)の含有量は、コポリマーAを構成する構造単位の合計モル数を基準として5~65モル%、又は10~50モル%であってよい。上記範囲内では、現像性に有利にすることができる。
【0064】
構造単位(a2)は、芳香環を含有するエチレン性不飽和化合物に由来する。芳香環を含有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート;スチレン;アルキル置換基を含有するスチレン、例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、及びオクチルスチレン;ハロゲンを含有するスチレン、例えばフルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、及びヨードスチレン;アルコキシ置換基を含有するスチレン、例えばメトキシスチレン、エトキシスチレン、及びプロポキシスチレン;4-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン、アセチルスチレン;並びにビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、p-ビニルベンジルメチルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。上記で例示された化合物に由来する構造単位は、単独で又は2種以上の組み合わせで本コポリマーに含まれ得る。本組成物の重合性のために、これらの例の中でも、スチレン系化合物に由来する構造単位が好ましい。
【0065】
構造単位(a2)の含有量は、コポリマーAを構成する構造単位の総モル数を基準として、1~50モル%、又は3~40モルであってよい。上記範囲内では、耐薬品性の点でより有利にすることができる。
【0066】
構造単位(a3)は、エポキシ基を含むエチレン性不飽和化合物由来である。エポキシ基を含むエチレン性不飽和化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジルアクリレート、α-n-プロピルグリシジルアクリレート、α-n-ブチルグリシジルアクリレート、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルプロピル)アクリルアミド、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテルなどを挙げることができる。上記例示された化合物に由来する構造単位は、単独で又は2種以上の組み合わせで本コポリマーに含まれ得る。上記の中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルに由来する構造単位から選択される少なくとも1つが共重合性及び硬化膜の強度の向上の観点からより好ましい。
【0067】
構造単位(a3)の含有量は、コポリマーAを構成する構造単位の総モル数を基準として、1~40モル%、又は5~20モル%であってよい。上記範囲内では、処理中の残留物及びプリベーク時のマージンの点でより有利にすることができる。
【0068】
コポリマーAは、(a1)、(a2)、及び(a3)に加えて、(a1)、(a2)、及び(a3)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位を更に含み得る。
【0069】
構造単位(a1)、(a2)、及び(a3)とは異なるエチレン性不飽和化合物に由来する構造単位の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、プロピルα-ヒドロキシメチルアクリレート、ブチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、及びN-ビニルモルホリンなどのN-ビニル基を含む三級アミン;ビニルメチルエーテル及びビニルエチルエーテルなどの不飽和エーテル;N-フェニルマレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどの不飽和イミド;等を挙げることができる。上で例示した化合物に由来する構造単位は、単独で又は2種以上の組み合わせで本コポリマーに含まれ得る。
【0070】
構造単位(a4)の含有量は、コポリマーAを構成する構造単位の総モル数を基準として、0~80モル%、30~70モル%、又は30~50モル%であってよい。上記範囲内では、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を維持することができ、また膜保持率をより有利に高めることができる。
【0071】
一実施形態によれば、構造単位(a1)~(a4)を有するコポリマーの例としては、(メタ)アクリル酸/スチレン/メチル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレートのコポリマー、(メタ)アクリル酸/スチレン/メチル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート/N-フェニルマレイミドのコポリマー、(メタ)アクリル酸/スチレン/メチル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート/N-シクロヘキシルマレイミドのコポリマー、(メタ)アクリル酸/スチレン/n-ブチル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート/N-フェニルマレイミドのコポリマー、(メタ)アクリル酸/スチレン/グリシジル(メタ)アクリレート/N-フェニルマレイミドのコポリマー、(メタ)アクリル酸/スチレン/4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル/N-フェニルマレイミドのコポリマーなどを挙げることができる。1種、2種、又はそれ以上のコポリマーが感光性樹脂組成物に含まれ得る。
【0072】
コポリマーAの重量平均分子量は、4,000~20,000又は6,000~15,000であり得る。コポリマーAの重量平均分子量が上記の範囲内にある場合、より低いパターンによる段差を有利に改善することができ、また現像後のパターンプロファイルを有利にすることができる。
【0073】
コポリマーAの含有量は、溶媒を除いた感光性樹脂組成物の総重量を基準として、30~80重量%、好ましくは35~65重量%であってよい。上記範囲内では、現像時のパターンプロファイルを有利にすることができ、また膜保持率及び耐薬品性のような特性を更に向上させることができる。
【0074】
コポリマーAは、ラジカル重合開始剤、溶媒、並びに構造単位(a1)、(a2)、(a3)、及び(a4)のうちの少なくとも2つを反応器に入れ、続いて窒素雰囲気下で重合のために混合物をゆっくり撹拌することによって調製することができる。
【0075】
ラジカル重合開始剤は、アゾ化合物、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル);又はベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、又は同様のものであってよいが、これらに限定されない。ラジカル重合開始剤は、単独で又は2種以上の組み合わせで使用され得る。
【0076】
溶媒は、コポリマーAの調製に一般的に使用される任意の従来の溶媒であってよく、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を挙げることができる。
【0077】
(B)コポリマーB
コポリマーBは、感光性樹脂組成物の撥水性を高めるフッ素化アクリレート系コポリマーであり、そのため、インクジェット用トップコーティングのバリアリブに使用された場合に、インク液の浸出を防止することができる。加えて、フッ素化アクリレート系コポリマーは、感光性樹脂組成物のコーティング後の膜凝集現象を抑制し、それによって安定したパターン形成を促進することが見込まれる。
【0078】
コポリマーBは、(b1)以下の式1a又は1bによって表される構造単位と、(b2)以下の式2によって表される構造単位と、(b3)以下の式3によって表される構造単位と、(b4)エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位とを含むコポリマーを含む:
【化3】
【0079】
上の式において、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素であるか1~6個の炭素原子を有するアルキルであり;L1、L2、及びL3は、それぞれ独立して、単結合であるか、N、S、及びOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む又は含まない1~10個の炭素原子を有する鎖であり;Cyは、1つ以上の置換基を含む又は含まない4~13個の炭素原子を有する芳香族又は非芳香族炭化水素環であり;CnFmは、n個の炭素原子とm個のフッ素原子とを有するフルオロアルキルであり、nは1~10の整数であり、mは1以上の整数であり、2n-2≦m≦2n+1である。
【0080】
式1a~3において、特定のタイプのR1、R2、R3、L1、L2、L3、Cy、及びCnFmは、フッ素化アクリレート系コポリマーについて上で例示したものと同じである。
【0081】
具体例として、式1a及び1bにおいて、Cyは、それぞれ1つ以上の置換基を有する又は有さない、フェニル、シクロヘキシル、及びジシクロペンタニルからなる群から選択することができる。
【0082】
更に、コポリマーBの構成、特徴、及び調製プロセスは、フッ素化アクリレート系コポリマーについて上で例示したものと同じである。
【0083】
コポリマーBの含有量は、溶媒を除いた感光性樹脂組成物の総重量を基準として、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは1~3重量%であってよい。上記含有量の範囲内では、表面粗さの改善の観点から有利であり、また樹脂組成物の適合性の問題を生じにくい。
【0084】
(C)光重合性化合物
本発明で用いられる光重合性化合物は、光重合開始剤の作用によって重合可能である化合物である。それには、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する一官能性又は多官能性のエステル化合物が含まれ得る。それは、好ましくは、耐薬品性の観点から2つ以上の官能基を有する多官能性化合物とすることができる。
【0085】
重合性化合物は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとコハク酸とのモノエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとコハク酸とのモノエステル、カプロラクトン修飾ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート-ヘキサメチレンジイソシアネート(ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物)、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、及びエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであり得るが、それらに限定されない。
【0086】
加えて、それには、直鎖アルキレン基と脂環式構造とを有する化合物を2つ以上のイソシアネート基と反応させることによって得られる多官能性ウレタンアクリレート化合物及び分子中に1つ以上のヒドロキシル基と3、4又は5つのアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基とを有する化合物が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0087】
市販されている光重合性化合物の例としては、単官能(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-101、M-111、及びM-114(東亞合成株式会社製)、AKAYARAD T4-110S及びT4-120S(日本化薬株式会社製)、並びにV-158及びV-2311(大阪有機化学工業株式会社製);二官能(メタ)アクリレート、例えばAronix M-210、M-240、及びM-6200(東亞合成株式会社製)、KAYARAD HDDA、HX-220、及びR-604(日本化薬株式会社製)、並びにV-260、V-312、及びV-335HP(大阪有機化学工業株式会社製);並びに3つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレート、例えばAronix M-309、M-400、M-403、M-405、M-450、M-7100、M-8030、M-8060、及びTO-1382(東亞合成株式会社製)、KAYARAD TMPTA、DPHA、DPH1-40H、DPC1-20、DPC1-30、DPC1-60、及びDPC1-120(日本化薬株式会社製)、並びにV-295、V-300、V-360、V-GPT、V-3PA、及びV-400(大阪有機化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0088】
光重合性化合物は、単独で又はそれらの2種以上の組み合わせで使用され得る。
【0089】
組成物中の光重合性化合物の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(すなわちコポリマーAとコポリマーBの合計含有量)の100重量部(固形分基準)に対して、10~200重量部、10~150重量部、10~100重量部、好ましくは50~150重量部、又は90~130重量部であってよい。上記含有量の範囲内で、一定の膜保持率を維持することができ、またより優れたパターン現像性及びコーティング膜特性を得ることができる。
【0090】
(D)光重合開始剤
本発明において使用される光重合開始剤は、可視光、紫外線照射、深紫外線照射などによって硬化させることが可能なモノマーの重合を開始させるために機能することができる。
【0091】
光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾイル系、キサントン系、トリアジン系、ハロメチルオキサジアゾール系、及びロフィンダイマー系の光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1つであってよいが、それらに限定されない。
【0092】
光重合開始剤の具体例としては、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ジエチルチオキサントン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-p-メトキシフェニル-s-トリアジン、2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキソジアゾール、9-フェニルアクリジン、3-メチル-5-アミノ-((s-トリアジン-2-イル)アミノ)-3-フェニルクマリン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾリルダイマー、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-オクタン-1,2-ジオン-2-(o-ベンゾイルオキシム)、o-ベンゾイル-4’-(ベンズメルカプト)ベンゾイルヘキシルケトキシム、2,4,6-トリメチルフェニルカルボニル-ジフェニルホスホニルオキシド、ヘキサフルオロホスホロ-トリアルキルフェニルスルホニウム塩、2-メルカプトベンズイミダゾール、2,2’-ベンゾチアゾリルジスルフィド、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0093】
別の例として、光重合開始剤は、少なくとも1種のオキシム系化合物を含み得る。
【0094】
オキシム系化合物は、それがオキシム構造を含むラジカル開始剤である限り、特に限定されない。例えば、これはオキシムエステル系化合物、好ましくは、オキシムエステルフルオレン系化合物とすることができる。
【0095】
高い感度の観点から、オキシム系化合物として、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、及び(特許文献19)に開示されている少なくとも1種のオキシム系化合物を使用することが好ましい。
【0096】
これらの商品名は、OXE-01(BASF)、OXE-02 (BASF)、N-1919(ADEKA)、NCI-930(ADEKA)、NCI-831(ADEKA)、SPI-02(Samyang EMS)、SPI-03(Samyang EMS)などであってよい。
【0097】
組成物中の光重合開始剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部(固形分基準)に対して0.1~20重量部、好ましくは1~10重量部であってよい。上記含有量の範囲内では、優れた現像性及びコーティング膜特性と共に高感度を実現することができる。
【0098】
(E)接着補助剤
本発明の感光性樹脂組成物は、基板への接着性を増進させる接着補助剤を更に含み得る。
【0099】
接着補助剤は、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、イソシアネート基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を有し得る。
【0100】
接着補助剤の種類は、特に限定されない。これは、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0101】
好ましいものは、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、又はN-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランであり、これらは膜保持率及び基板への接着性を高めることができる。
【0102】
組成物中の接着補助剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂の100重量部(固形分基準)に対して0.001~10重量部、好ましくは0.01~6重量部であってよい。上記含有量の範囲内では、基板への接着性を更に有利にすることができる。
【0103】
(F)界面活性剤
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、コーティング性を向上させるために且つ欠陥の発生を防ぐために界面活性剤を更に含み得る。
【0104】
界面活性剤の種類は、特に限定されない。好ましくは、それには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、非イオン界面活性剤、及びその他の界面活性剤等が含まれ得る。好ましくは、上記の中でもBYK製のBYK-333が分散性の観点から用いられ得る。
【0105】
界面活性剤の例としては、BM CHEMIE Co.,Ltd.製のBM-1000及びBM-1100、Dai Nippon Ink Chemical Kogyo Co.,Ltd.製のMegapack F142D、F172、F173、F183、F-470、F-471、F-475、F-482、及びF-489、Sumitomo 3M Ltd.製のFlorad FC-135、FC-170C、FC-430、及びFC-431、Asahi Glass Co.,Ltd.製のSufron S-112、S-113、S-131、S-141、S-145、S-382、SC-101、SC-102、SC-103、SC-104、SC-105、及びSC-106、Shinakida Kasei Co.,Ltd.製のEftop EF301、303、及び352、Toray Silicone Co.,Ltd.製のSH-28 PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、及びDC-190、Dow Corning Toray Silicone Co.,Ltd.製のDC3PA、DC7PA、SH11PA、SH21PA、SH8400、FZ-2100、FZ-2110、FZ-2122、FZ-2222、及びFZ-2233、GE Toshiba Silicones Co.,Ltd.製のTSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4460、及びTSF-4452、並びにBYK Corporation製のBYK-333などのフッ素及びシリコーン系界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル;並びにポリオキシエチレンジラウレート及びポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル;などの非イオン性界面活性剤;並びにオルガノシロキサンポリマーKP341(Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.製)、(メタ)アクリレート系コポリマーPolyflow No.57及び95(Kyoei Yuji Chemical Co.,Ltd.製)等を挙げることができる。これらは、単独で又はこれらの2種以上の組み合わせで使用され得る。
【0106】
組成物中の界面活性剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100重量部(固形分基準)に対して0.001~5重量部、好ましくは0.01~2重量部であってよい。上記含有量の範囲内では、組成物のコーティングをよりスムーズに行うことができる。
【0107】
加えて、本発明の感光性樹脂組成物は、その物理的特性に悪影響を及ぼさない限り、酸化防止剤や安定剤などの他の添加剤を含むことができる。
【0108】
(G)溶媒
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは、上記の成分が溶媒と混合されている液体組成物として調製され得る。
【0109】
感光性樹脂組成物中の成分と相溶性であるが反応しない、当技術分野において公知の任意の溶媒を、感光性樹脂組成物の調製において溶媒として使用することができる。
【0110】
そのような溶媒の例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、及びプロピレングリコールジブチルエーテルなどのプロピレングリコールジアルキルエーテル;ジプロピレングリコールヂメチルエーテルなどのジプロピレングリコールジアルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;エチルセロソルブ及びブチルセロソルブなどのセロソルブ;ブチルカルビトールなどのカルビトール;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル及び乳酸イソプロピルなどの乳酸エステル;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、及びプロピオン酸イソブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、及びピルビン酸エチルなどのエステル;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、及び4-ヘプタノンなどのケトン;N-ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンなどのアミド;γ-ブチロラクトンなどのラクトン;並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。溶媒は、単独又は2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0111】
本発明による感光性樹脂組成物において、溶媒の含有量は特に限定されない。溶媒の含有量は、組成物のコーティング性や安定性などの観点から、感光性樹脂組成物の総重量を基準として、固形分が5~70重量%、好ましくは10~55重量%となるように調整することができる。
【0112】
特徴及び用途
上述したように、感光性樹脂組成物は無極性環含有単位が導入されたフッ素化アクリレート系コポリマーを含んでいるため、フッ素含有量が比較的少なくても優れた撥水性を有しており、それによって先行技術と比較して製造コストが低減される。加えて、感光性樹脂組成物は、フッ素含有量が高い場合に生じ得るコーティングの不均衡及びパターン強度の低下を防止することができる。
【0113】
感光性樹脂組成物は、ディスプレイ装置などの電気デバイス用の硬化膜を作製するために使用することができる。例えば、感光性樹脂組成物は、70℃~150℃又は80℃~120℃の温度で硬化させることができる。
【0114】
硬化膜は、当該技術分野において公知の方法、例えば、感光性樹脂組成物を基板上にコートし、次いで硬化させる方法によって形成することができる。より具体的には、硬化工程において、基板上にコートされた感光性樹脂組成物は、溶媒を除去するために、例えば、70℃~150℃の温度でのプリベークにかけられ;次いで所望のパターンを有するフォトマスクを使用して露光させられ;コーティング層上にパターンを形成するために現像液(例えば水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を使用する現像にかけられ得る。その後、パターン化コーティング層は、所望の硬化膜を作製するために、必要ならば、例えば、10分~5時間、150℃~300℃の温度で、ポストベークにかけられる。露光は、200nm~500nmの波長域において365nmの波長をベースとして10mJ/cm2~200mJ/cm2の照射線量で実施され得る。
【0115】
基板への感光性樹脂組成物のコーティングは、例えば、2~25μmの所望の厚さで、スピンコーティング法、スリットコーティング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などによって行われ得る。加えて、曝露(照射)のために使用される光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザー等が使用され得る。必要に応じて、X線や電子線なども使用されてもよい。本発明の感光性樹脂組成物は、耐熱性、透明性、比誘電率、耐溶剤性、耐酸性、及び耐アルカリ性に関して優れた硬化膜を形成することができる。したがって、そのように形成された本発明の硬化膜は、これが熱処理に供されるか、又は溶媒、酸、塩基などに浸漬されるか、又は溶媒、酸、塩基などと接触したとき、表面粗さを欠いている優れた光透過率を有する。したがって、硬化膜は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイの薄膜トランジスタ(TFT)基板のための平坦化膜;有機ELディスプレイのバリアリブ;半導体デバイスの層間絶縁体;光導波路のコア又はクラッド材などとして効果的に使用することができる。更に、本発明は、硬化膜を含む電子部品を提供する。
【0116】
特に、本発明による感光性樹脂組成物は、フッ素化アクリレート系コポリマーを含んでいることから、優れた撥水性を有しており、そのため、インクジェット用トップコーティングのバリアリブに使用された場合に、インク液の浸出を防止することができる。更に、この感光性樹脂組成物は、コーティング後の膜凝集現象を抑制しながら安定なパターンを形成することが期待できる。したがって、感光性樹脂組成物は、インクジェット用のトップコーティングのバリアリブの製造に使用することができる。
【実施例0117】
以降において、以下の実施例を参照しながら、本発明を更に詳しく説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明の範囲は、これらのみに限定されない。
【0118】
以降の調製実施例に記載される重量平均分子量は、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された、ポリメチルメタクリレート換算値である。
【0119】
調製実施例1:コポリマーB-1
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、10モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、50モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、30モル%のメタクリル酸と、10モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての5モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が15,000であり、多分散度(Mw/Mn)が2.9であるコポリマーが得られた。
【0120】
調製実施例2:コポリマーB-2
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、25モル%のスチレンと、30モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、10モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、20モル%のメタクリル酸と、15モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての5モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が10,000であり、多分散度(Mw/Mn)が2.9であるコポリマーが得られた。
【0121】
調製実施例3:コポリマーB-3
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、25モル%のスチレンと、25モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、15モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、20モル%のメタクリル酸と、15モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての5モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が9,200であり、多分散度(Mw/Mn)が2.56であるコポリマーが得られた。
【0122】
調製実施例4:コポリマーB-4
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、25モル%のジシクロペンタニルメタクリレートと、25モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、15モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、20モル%のメタクリル酸と、15モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての5モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が8,600であり、多分散度(Mw/Mn)が3.0であるコポリマーが得られた。
【0123】
調製実施例5:コポリマーB-5
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、30モル%のジシクロペンタニルメタクリレートと、25モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、10モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、20モル%のメタクリル酸と、15モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての2モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が8,400であり、多分散度(Mw/Mn)が2.9であるコポリマーが得られた。
【0124】
調製実施例6:コポリマーB-6
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、20モル%のシクロヘキシルメタクリレートと、20モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、25モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、20モル%のメタクリル酸と、15モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての2モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が7,400であり、多分散度(Mw/Mn)が2.2であるコポリマーが得られた。
【0125】
調製実施例7:コポリマーB-7
還流冷却器と撹拌機を備えた250mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、140gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒として入れ、温度を65℃まで上げた。これに、30モル%のシクロヘキシルメタクリレートと、25モル%のトリフルオロエチルメタクリレートと、10モル%のパーフルオロヘキシルメタクリレートと、20モル%のメタクリル酸と、15モル%のグリシジルメタクリレートとのモノマー混合物を、100重量部のモノマー混合物を基準として3モル部のラジカル重合開始剤(V-65、Wako)及び分子量制御剤としての2モル部のドデカンチオールと共に入れた。その後、重合を18時間行った。その結果、重量平均分子量(Mw)が8,400であり、多分散度(Mw/Mn)が2.8であるコポリマーが得られた。
【0126】
【0127】
実施例1~6及び比較例1:感光性樹脂組成物の調製
以下の表2及び3に示されている通り、48重量部のコポリマー(A)、2重量部のコポリマー(B-1~B-7のいずれか)、50重量部の光重合性化合物(C)、0.6重量部の光重合開始剤(D)、2.8重量部の接着補助剤(E)、及び0.15重量部の界面活性剤(F)をブレンドした。これに、固形分が19重量%になるように100重量部の溶媒(H)を添加した。その後、それらをシェーカーを使用して3時間混合して、液体感光性樹脂組成物を調製した。
【0128】
【0129】
【0130】
試験実施例
実施例及び比較例で得られた感光性樹脂組成物をスピンコーターを用いてガラス基板にそれぞれコーティングして、100℃で60秒間プリベークして、コーティングされた膜を形成した。このようにして形成されたコーティングされた膜上に、基板とのギャップが25μmに維持されるように、10cm×10cmの領域に100%露光可能なラインパターンを有するマスクを配置した。その後、この膜を、200nm~450nmの波長を有する光を発するアライナー(モデル名:MA6)を用いて、365nmの波長を基準にして30mJ/cm2の露光量で一定時間露光した。露光した膜を、露光されていない部分が完全に洗い流されるまで、23℃で2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液で現像した。このようにして形成したパターン化された膜を、180℃のオーブン中で20分間ポストベークすることで、最終厚さ2.5(±0.2)μmの硬化膜サンプルを得た。
【0131】
図1は、現像後の比較例1及び実施例1~6の組成物の画像を示す。
図2は、ポストベーク後の比較例1及び実施例1~6の組成物の画像を示す。
図3は、プリベーク後の比較例1及び実施例1~6の組成物から形成された膜の表面の画像を示す。
【0132】
(1)接触角の測定
硬化した膜サンプルの表面に脱イオン水を一滴垂らした。5秒後、接触角測定装置(DM300、Kyowa Interface Science)を用いて接触角を3回測定し、平均値を得た。更に、硬化膜サンプルの接触角を、グリセロールとジヨードメタンがそれぞれ使用されたことを除いて同じ方法で測定した。
【0133】
(2)表面エネルギーの測定
表面エネルギーは、3つの流体(脱イオン水、グリセロール、及びジヨードメタン)を用いて測定された硬化膜サンプルの接触角を使用して、間接計算法(酸/塩基法-幾何学的結合規則によるルイス酸/塩基)によって計算した。
【0134】
(3)膜厚の測定
硬化膜サンプルの作製プロセスにおいて、現像前の初期膜厚、現像後の膜厚、及びポストベーク後の膜厚を、膜厚測定装置(SNU 3Dプロファイラー、SNU)を使用して測定した。膜保持率(%)は、以下の式に従って計算した:
現像後の膜厚保持率(%)=(現像後の膜厚/初期膜厚)×100
ポストベーク後の膜保持率(%)=(ポストベーク後の膜厚/初期膜厚)×100
【0135】
(4)光学的CD測定(総CD)
硬化した膜サンプルのパターンを、光学顕微鏡(STM6-LM、OLYMPUS)を使用して50倍の倍率で観察した(
図2を参照)。パターンのCD(限界寸法)は、光学顕微鏡画像から測定した。
【0136】
(5)リソグラフィー性能の評価
硬化膜サンプルの作製過程で、現像後のパターンの状態を観察した(
図1を参照)。よく貼り付いているパターンが剥がれなかった場合に、合格と評価した。
【0137】
(6)コーティングの粗さ
硬化膜サンプルの作製プロセスで、ポストベーク後の膜表面の粗さを目視で観察した(
図3を参照)。表面が滑らかな場合に良いと評価し、それ以外を悪いと評価した。
【0138】
(7)硬度の測定
硬化膜サンプルの硬度は、表面硬度測定器(Fischerscope HM2000 XYP、Fischer)を使用して測定した(硬度測定条件:100mN、D1)。硬度は合計5回測定し、平均値を得た。
【0139】
【0140】
【0141】
表4及び表5に示されているように、実施例1~6の組成物は、比較例1の組成物よりもフッ素含有量が少ないにもかかわらず、表面エネルギー値を維持し、優れた撥水性を有していた。更に、実施例1~6の組成物は、優れたパターン形成及び硬度を示した。特に、これらは、比較例1の組成物と比較して、表面均一性が非常に優れていた(
図1、2、及び3を参照)。したがって、実施例1~6の組成物は、インクジェット用のトップコーティングのバリアリブを作製するために使用されると同時に、インク液の浸出を防ぎ、安定したパターンを形成することが期待される。